以下の実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
[実施形態1]
本発明の実施形態に係る樹脂封止装置は、概略すると、供給部と収納部との間にプレス部を備えて構成されている。プレス部は、一対の金型が型閉じして形成されるキャビティ内で樹脂封止を行う機構で構成される。また、供給部は、プレス部にワーク(被成形品)や樹脂を供給する公知の機構で構成される。また、収納部は、プレス部から樹脂封止されたワーク(成形品)を収納する公知の機構で構成される。以下では、本実施形態に係る樹脂封止装置のプレス部を中心に説明する。なお、ワークとしては、リードフレーム、多層基板、セラミック基板、ウエハ等樹脂成形されるものであれば、特に限定されない。
図1および図2を参照して、本実施形態に係る樹脂封止装置10の構成について説明する。この樹脂封止装置10では、プレス部に設けられた一対の金型11において、位置固定されたワークWに対してキャビティ23a内で圧縮成形により樹脂封止が行われる。なお、圧縮成形の場合、樹脂使用率が略100%であり、無駄な樹脂供給を行わなくて済む。
図1には、樹脂封止装置10の要部の断面が示されている。図2には、樹脂封止装置10の要部の平面が示されている。ここで、図1は、図2に示すX−X線に対応する樹脂封止装置10の断面を示している。ただし、図1では、説明を明解にするために、X−X線に対応していないワーク吸引孔44や通気孔46も合わせて示している。また、図2は、ワークWが搭載される側の金型11Aのパーティング面11a(金型表面)を示している。
また、樹脂封止されるワークWは、平面視矩形状の配線基板21である。この配線基板21では、複数の電子部品22(例えば、半導体チップやコンデンサチップなど)がワイヤボンディング実装されている。また、封止用の樹脂20は、例えば、熱硬化性樹脂(エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂など)であって、樹脂組成物(シリカ、アルミナなどの充填剤、離型剤、着色剤、フィラー含有率など)が均一に調整されたものである。
本実施形態に係る樹脂封止装置10は、一対の金型11を備えている。一対の金型11は、一方の金型11Aと他方の金型11Bとが対向して設けられており、型閉じによってキャビティ23aを形成するものである。樹脂封止装置10では、金型11Aが下型、金型11Bが上型とした構成となっている。なお、一対の金型11のうち一方の金型11Aは、型開きの際にワークWが載置され、固定されるものである。
下型11Aは、可動プラテン(図示せず)に固定して組み付けられる。また、上型11Bは、固定プラテン(図示せず)に固定して組み付けられる。なお、可動プラテンと固定プラテンは、複数のタイバーに組み付けられ、例えば、電動モータやトグルリンクなどによって、固定プラテンに対して可動プラテンが接離動するように構成されている。
下型11Aは、例えば合金工具鋼から形成された複数のブロック(部材)として、樹脂封止装置10では、ベース41と、サポート42と、プレート43とを備えている。また、上型11Bは、例えば合金工具鋼から形成された複数のブロック(部材)として、樹脂封止装置10では、ベース24と、サポート25と、インサート26と、クランパ27とを備えている。
本実施形態に係る下型11Aでは、可動プラテンに固定して組み付けられるベース41の上面に、サポート42が固定して組み付けられている。また、サポート42の上面に、プレート43が固定して組み付けられている。図2に示すように、ベース41、サポート42、プレート43は平面視矩形状に形成されている。プレート43の上面が下型11Aのパーティング面11aであるので、パーティング面11aの領域も平面視矩形状となっている。
図2においては、パーティング面11a内でポーラスフィルム12が設けられる領域(一点鎖線で閉じられた領域)を示している。また、型閉じによってキャビティ23aが形成されるが、パーティング面11a内でキャビティ凹部23の開口部が設けられる領域(二点鎖線で閉じられた領域)を示している。また、下型11Aのパーティング面11a上にはポーラスフィルム12を介してワークWが設けられるが、ワークWが載置(搭載)されるワーク載置領域16(破線で閉じられた領域)を示している。また、ワーク載置領域16を取り囲む周囲領域17(パーティング面11a内であってワーク載置領域16を除いた領域)を示している。
このように、下型11Aのパーティング面11aにワーク載置領域16およびその周囲領域17が確保されて設けられた樹脂封止装置10は、下型11Aのパーティング面11aを覆うように設けられるポーラスフィルム(多孔質フィルム)12を備えている。ポーラスフィルム12は、一対の金型11に内蔵されたヒータの加熱温度に耐えられる耐熱性、柔軟性を有するとともに、多孔質を有するフィルム材からなる。例えば、ポリプロピレンと有機フィラーで構成した微細孔の孔径が0.3μm以下のマイクロスポンジ構造のフィルムからなる。
このようなマイクロスポンジ構造に限定することなく、ポーラスフィルム12は、水分子の1個の大きさ約0.3nmを通しにくく、かつ、空気を通し易い大きさの目(微細孔)を有するフィルム、すなわち高防水性かつ高通気性のフィルムであれば良い。水分子を通しにくいということは、樹脂成分も通しにくいということである。また、ポーラスフィルム12の材質は上記に限定することなく、エステルフィルム、延伸ポリプロピレン、延伸ナイロン、延伸ポリスチレン、延伸硬化塩ビ、ポリカーボネート、ポリスチレン、ETFE、PTFEなどであっても良い。ポーラスフィルム12は、マイクロスポンジ構造に限定されず、単層または複層のフィルムであっても良い。
高防水性かつ高通気性を確保するため、微細孔の目の大きさが変わらないように、特にキャビティ23a内において、ポーラスフィルム12を伸ばさないで使用する。このため、本実施形態では、下型11Aのパーティング面11aを平坦にし、この平坦なパーティング面11aを覆うようにポーラスフィルム12を設けている。
このようなポーラスフィルム12を用いることで、樹脂封止時において下型11Aのパーティング面11aに溶融した樹脂20が流れ込むことを防止することができる。また、ポーラスフィルム12を用いることで、樹脂封止前において下型11Aのパーティング面11a側からワークWを吸引することができ、ワークWを固定することができる。
また、樹脂封止装置10は、ポーラスフィルム12を介して下型11Aに載置されたワークWを吸引して固定する吸引固定部13を備えている。吸引固定部13は、吸引経路として、ワークWが載置されるワーク載置領域16内に形成されたワーク吸引孔44を有している。この吸引固定部13には、ワーク載置領域16を取り囲む周囲領域17内に形成されたフィルム吸引孔45が接続されている。このフィルム吸引孔45はポーラスフィルム12をプレート43に吸着するためのものである。これらワーク吸引孔44およびフィルム吸引孔45は、下型11Aのプレート43に形成される。
ワーク吸引孔44は、ポーラスフィルム12を介してワークWを吸引するために、下型11Aの外部からプレート43の上面中央部のワーク載置領域16まで通じるように形成されている。ワーク吸引孔44の一端は、下型11Aの外部に設けられた吸引固定部13(例えば真空ポンプなどの減圧装置)と接続されている。ワーク吸引孔44の他端は、経路部より径大となってプレート43の上面中央部で露出している。このワーク吸引孔44の他端は、ワーク載置領域16内で所定の位置に配置(図2では、一例としてワーク載置領域16の中心から放射状に20個配置)されている。
フィルム吸引孔45は、ポーラスフィルム12を吸引するために、下型11Aの外部からプレート43の上面外周部まで通じるように形成されている。フィルム吸引孔45の一端は、下型11Aの外部に設けられた吸引固定部13(例えば真空ポンプなどの減圧装置)と接続されている。フィルム吸引孔45の他端は、経路部より径大となってプレート43の上面外周部で露出している。具体的には、フィルム吸引孔45の他端は、プレート43のワーク載置領域16より外側の周囲領域17内であって、キャビティ23a(キャビティ凹部23)に連通可能な所定の位置に配置(図2では、一例として平面視矩形状のポーラスフィルム12の外周に沿って24個配置)されている。
なお、フィルム吸引孔45に接続される減圧装置がワーク吸引孔44にと共用できるように設けることで、言い換えると、吸引固定部13がフィルム吸引孔45も有する構成とすることで、装置構成を簡易とすることができる。その一方で、フィルム吸引孔45に接続される減圧装置と、ワーク吸引孔44に接続される減圧装置とを別に設けることで、例えば、フィルム吸引孔45からポーラスフィルム12を吸引・固定、すなわち吸着した状態においてポーラスフィルム12上にワークWを吸着したり、開放したりすることができる。
このように構成される吸引固定部13は、減圧装置を作動させることによって、ワーク吸引孔44からポーラスフィルム12の微細孔を通じてワークWを吸引する。したがって、吸引固定部13は、下型11Aのパーティング面11a上にワークWを固定することができる。
また、吸引固定部13は、減圧装置を作動させることによって、ワーク吸引孔44がワークWを吸引すると共に、フィルム吸引孔45からポーラスフィルム12を吸引する。したがって、吸引固定部13は、下型11Aのパーティング面11a上にポーラスフィルム12およびワークWを吸着することができる。ワーク吸引孔44の他に、さらにフィルム吸引孔45からポーラスフィルム12を吸引することで、より確実に下型11Aのパーティング面11aにポーラスフィルム12を吸着して、下型11Aのパーティング面11aに樹脂20が付着するのを防止できる。
また、型閉じによって形成されたキャビティ23a内を減圧するために、樹脂封止装置10は、圧調整部14を備えている。圧調整部14は、空気経路として、サポート42およびプレート43に形成された通気孔46を有している。この通気孔46は、下型11Aに形成される。
通気孔46は、下型11Aの外部からプレート43の上面中央部のキャビティ23aまで通じるように形成されている。このため、圧調整部14により、通気孔46からポーラスフィルム12の微細孔を通じてキャビティ43a内を減圧することで、樹脂20に混入した気泡を除去し、キャビティ23a内の樹脂20の充填性を向上させて成形不良などを防止することができる。
通気孔46の一端は、下型11Aの外部に設けられた圧調整部14(例えば真空ポンプなどの減圧装置)と接続されている。通気孔46の他端は、経路部より径大となってプレート43の上面中央部で露出している。具体的には、通気孔46の他端は、プレート43のワーク搭載領域16の外側の周囲領域17内であって、キャビティ23a(キャビティ凹部23)に連通可能な所定の位置に配置(図2では、平面視矩形状のキャビティ凹部23の開口縁部に沿って12個配置)されている。
ここで、通気孔46に接続される圧調整部14の減圧装置は、ワーク吸引孔44およびフィルム吸引孔45に接続される吸引固定部13の減圧装置とは別に設けている。これにより、ワークWやポーラスフィルム12を吸引・固定させることと、キャビティ23a内を減圧することとを別系統で行うことができ、また、キャビティ23a内を容易に減圧することができる。
また、通気孔46は、ワーク吸引孔44やフィルム吸引孔45より少なく配置されている。これにより、吸引固定部13によるワークWやポーラスフィルム12を吸引・固定する作用に対して影響ない程度に圧調整部14を作動させることができる。
なお、通気孔46とワーク吸引孔44とフィルム吸引孔45はそれぞれ独立して吸引することにより吸引力および吸引タイミングもそれぞれ別に調整することもできる。また、キャビティ23aと連通するオーバーフローキャビティが上型11Bに形成される場合は、通気孔46と同様の、オーバーフローキャビティ内に通じる通気孔(減圧孔)を下型11Aに形成しても良い。
一方、本実施形態に係る上型11Bでは、固定プラテンに固定して組み付けられるベース24の下面中央部に、サポート25が固定して組み付けられている。また、サポート25の下面中央部に、インサート26がスプリング31を介して吊り下げ支持されて組み付けられている。また、サポート25の下面外周部に、クランパ27がスプリング32を介して吊り下げ支持されて組み付けられている。このクランパ27には、貫通孔27aが形成されており、この貫通孔27a内にインサート26が組み付けられている。
インサート26を吊り下げ支持するスプリング31は、一端がサポート25下面に形成された凹部25aに嵌め込まれるようにしてサポート25と接続され、他端がインサート26上面側でインサート26と接続されている。また、クランパ27を吊り下げ支持するスプリング32は、一端がサポート25下面に形成された凹部25bに嵌め込まれるようにしてサポート25と接続され、他端がクランパ27上面でクランパ27と接続されている。
上型11Bは、キャビティ23aを構成するキャビティ凹部23を有している。キャビティ凹部23は、インサート26とクランパ27とで構成される。キャビティ凹部23の側部は、クランパ27の貫通孔27aの内面で構成される。キャビティ凹部23の底部は、インサート26の下面で構成される。キャビティ凹部23の側部は、底部から開口部側に拡がるようなテーパ状となっている。なお、上型11Bのキャビティ凹部23に対して、下型11Aには、キャビティ凹部23の開口部を閉じるのに用いられるプレート43が設けられている。
キャビティ凹部23の底部、すなわちインサート26下面は、下型11Aに設けられるワーク載置領域16(パーティング面11a)と平行となるようにして対向している。インサート26は、スプリング32によって吊り下げ支持されているので、樹脂20に加えられる成形圧によってインサート26に対して相対的に可動する。このインサート26の可動によって、厚さにばらつきのある複数のワークWを繰り返して樹脂封止していく際に、ワークWの表面から所定の樹脂厚を確保することができる。特に、基板21上で実装されている電子部品22の表面から所定の樹脂厚を確保することで、電子部品22の信頼性を確保した樹脂封止を行うことができる。
また、クランパ27は、スプリング32によって吊り下げ支持されているので、樹脂20に加えられる成形圧によってインサート26に対して相対的に可動する。このクランパ27の可動によって、キャビティ凹部23内の樹脂20が、キャビティ凹部23の深さが浅く、すなわち容積が小さくなって、キャビティ凹部23の隅々まで行き渡らせて充填することができる。
また、本実施形態に係る樹脂封止装置10は、リリースフィルム15(可撓性フィルム)を備えている。リリースフィルム15は、キャビティ凹部23の底部および側部を含む上型11Bのパーティング面11b(金型表面)を覆うように設けられる。リリースフィルム15は、一対の金型11に内蔵されたヒータの加熱温度に耐えられる耐熱性、柔軟性および伸展性を有するフィルム材からなる。このようなフィルム材は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)などのフッ素系樹脂フィルムからなる。なお、本実施例はキャビティ内可動部からの樹脂漏れを効率よく抑えるためリリースフィルムを使用した例だが、可動部隙間をシビアにすることで樹脂漏れを押さえられる場合は、リリースフィルムは必ずしも必要ではない。
リリースフィルム15を用いることで、樹脂封止時においてインサート26とクランパ27との間に、溶融した樹脂20が流れ込むことを防止することができる。すなわち、上型11Bのパーティング面11bに樹脂が付着するのを防止することができる。また、キャビティ凹部23内にリリースフィルム15を吸着することで、樹脂封止後においてワークWの離型を容易にすることができる。
また、樹脂封止装置10は、フィルム固定部33は、リリースフィルム15を吸引して、上型11Bのパーティング面11b上にリリースフィルム15を固定(吸着)するために、フィルム固定部33を備えている。フィルム固定部33は、サポート25の下面外周部とクランパ27の上面外周部との間に設けられたシール部材34(例えばOリング)を有している。また、フィルム固定部33は、空気経路として、サポート25に形成された通気孔35と、クランパ27に形成された通気孔36とを有している。
シール部材34は、サポート25と、インサート26およびクランパ27との間の空間領域37をシールするために設けられている。この空間領域37は、インサート27の側面とクランパ27の貫通孔27aの内面との間に形成される間隙を含むものであって、キャビティ凹部23の底部と側部との際に通じている。
通気孔35は、空間領域37を介してリリースフィルム15を吸引するために、上型11Bの外部からサポート25の下面中央部、すなわち空間領域37まで通じるように形成されている。通気孔35の一端は、上型11Bの外部に設けられた図示しない減圧装置(例えば真空ポンプ)と接続されている。通気孔35の他端は、経路部より径大となってサポート25の下面中央部で露出している。
通気孔36は、リリースフィルム15を吸引するために、上型11Bの外部からクランパ27の下面外周部まで通じるように形成されている。通気孔36の一端は、上型11Bの外部に設けられた図示しない減圧装置(例えば真空ポンプ)と接続されている。通気孔36の他端は、経路部より径大となってクランパ27の下面外周部で露出している。
なお、通気孔36に接続される減圧装置は、通気孔35に接続される減圧装置と別に設けることもできるが、共用できるように設けることで、装置構成を簡易とすることができる。
このように構成されるフィルム固定部33は、減圧装置を作動させることによって、通気孔35および空間領域37を介してリリースフィルム15の中央部、また通気孔36を介してリリースフィルム15の外周部を吸引する。したがって、フィルム固定部33は、キャビティ凹部23の底部および側部を含む上型11Bのパーティング面11bに沿ってリリースフィルム15を張り付けて固定することができる。空間領域37がキャビティ凹部23の底部と側部との際にまで通じているので、リリースフィルム15をキャビティ凹部23の隅まで張設することができる。
次に、図1〜図5を参照して、本実施形態に係る樹脂封止装置10を用いた樹脂封止方法について説明する。
図3〜図5には、連続した樹脂封止工程中の樹脂封止装置10の要部の断面が示されている。ここで、図3〜図5も図1と同様に、図2に示すX−X線に対応する樹脂封止装置10の断面を示している。また、図1は、図5に続く樹脂封止工程中の樹脂封止装置10の要部の断面を示している。
まず、図3に示すように、型開きした下型11Aのパーティング面11aを覆ってポーラスフィルム12を吸着する。このように、型開きした状態の一対の金型11では、下型11Aのパーティング面11aに設けられているポーラスフィルム12が吸引固定部13によって吸引・固定される。また、上型11Bのパーティング面11bに設けられているリリースフィルム15がフィルム固定部33によって吸引・固定される。
そして、図示しない搬送装置によってワークWを搬送し、下型11Aのワーク載置領域16上にワークWを供給する。次いで、吸引固定部13によって、ワーク吸引孔44からポーラスフィルム12の微細孔を通じてワークWを吸引して、ワークWを固定する。ここで、ワークWは、下型11Aに直に接触せずに、ポーラスフィルム12(主として例えばポリプロピレンから構成されている)を介して下型11Aのワーク載置領域16上に固定されるため、ワークWへの損傷を防止することができる。
続いて、図4に示すように、図示しない搬送装置によって、成形品を構成する樹脂量分の樹脂20(例えば液状または顆粒状の樹脂)を搬送し、ワークW上に樹脂20を供給する。なお、一対の金型11へワークWおよび樹脂20を別々に供給するのではなく、予めワークWに樹脂20をセットした状態でワーク載置領域16上にワークWを供給しても良い。
続いて、ワークWを吸引して固定したまま、一対の金型11を型閉じしてキャビティ23a内で樹脂封止する。
具体的には、まず、図5に示すように、下型11Aに対して上型11Bを近接していき、下型11A(プレート43)と上型11B(クランパ27)とを、ポーラスフィルム12およびリリースフィルム15を介して当接させることで、型閉じを行う。この型閉じによってキャビティ23aが形成される。型閉じによってワークW全体を包んでキャビティ23aを形成する。また、キャビティ23aの形成前から圧調整部14によって吸引を行い続け、キャビティ23aの形成後はキャビティ23a内を減圧する。
次いで、図1に示すように、更に、下型11Aに対して上型11Bを近接させて型閉じを行うことで、クランパ27に対してインサート26が相対的に下動(下型11A側に移動)することで、キャビティ23a内で溶融した樹脂20が圧縮される。このとき、成形品が所望の高さになるように調整される。
なお、型開きするまで圧調整部14から減圧し続けても良いが、圧縮の際に停止することも考えられる。通気性のみが確保され、樹脂20の染み込みが防止されているポーラスフィルム12ではあるが、圧縮の際に圧調整部14を停止することで、ポーラスフィルム12への樹脂20の染み込みをより確実に防止することができるからである。
次いで、一対の金型11を樹脂モールド温度に加熱することによって溶融した樹脂20を硬化(キュア)し、吸引固定部13によって固定されたワークWに対して、キャビティ23a内で樹脂封止する。なお、予め所定の温度を金型に加えても良い。
その後、上型11Bを上動させて型開きを行ない、ワークWを上型11Bから離間した後、図示しない搬送装置によってワークW(成形品)を下型11Aより取り出して1回分の成形動作が終了する。
このような樹脂封止装置10によれば、ポーラスフィルム12によって、通気性を確保しつつ、樹脂20の染み込みを防止して、ワークWを下型11Aに吸引・固定できると共に、下型11Aのパーティング面11aに樹脂20が付着するのを防止することができる。例えば、下型11Aに搭載されたワークW(基板21)の裏面(パーティング面11aとの接触面)側で樹脂フラッシュが発生するのを防止して、樹脂封止することができる。また、ワークW全体を包んで樹脂封止することもできる。すなわち、ワークWの基板周縁部まで電子部品22を搭載した樹脂封止によって、個々の製品の取り個数の増加、製品歩留まりの向上、メンテナンス回数の低減などから製品コストを低減することができる。
なお、本実施形態では、ワークWを配線基板21として説明しているが、リードフレームでも良い。リードフレームにおいて露出する部分、例えばダイパッドが露出する場合は、このダイパッドの下にワーク吸引孔44を設けることで、マップ状のQFNも樹脂封止することができる。
[実施形態2]
前記実施形態1(図1に示す樹脂封止装置10)では、インサート26が可動する場合について説明した。これに対して、本実施形態では、インサート26を固定した場合について、図6を参照して説明する。この図6には、本実施形態に係る樹脂封止装置10Aの要部の断面が示されている。樹脂封止装置10Aでは、金型11Aが下型(可動型)、金型11Bが上型(固定型)とした構成となっている。
樹脂封止装置10Aでは、サポート25の下面中央部に、インサート26が固定して組み付けられている。インサート26下面は、下型11Aに設けられるワーク載置領域16(パーティング面11a)と平行となるようにして対向している。インサート26は、固定して組み付けられているので、厚さにばらつきのある複数のワークWを繰り返して樹脂封止していく際に、一定の厚さで各成形品を樹脂封止することができる。このため、ワークWが大判であっても、面内全体の厚さを均一とすることができる。
[実施形態3]
前記実施形態1(図1に示す樹脂封止装置10)では、吸引固定部13によってのみワークWを固定する場合について説明した。これに対して、本実施形態では、吸引固定部13および一対の金型11によるクランプによってワークWを固定する場合について、図7を参照して説明する。この図7には、本実施形態に係る樹脂封止装置10Bの要部の断面が示されている。樹脂封止装置10Bでは、金型11Aが下型(可動型)、金型11Bが上型(固定型)とした構成となっている。
樹脂封止装置10Bでは、ワークWの基板サイズ(ワーク載置領域16)をキャビティ23a内から外にまで拡げて設けることで、型閉じによってワークWの基板周縁部を一対の金型11でクランプしている。このように、吸引固定部13および一対の金型11によるクランプによって、より確実にワークWを固定することができる。
また、樹脂封止装置10Bでは、ワーク吸引孔44のうち、ワーク載置領域16内であってキャビティ23a外に通じるもの(ワーク吸引孔44A)が設けられている。このワーク吸引孔44Aを有する吸引固定部13によってワークW(基板21)の周縁部を吸引・固定することができる。
なお、樹脂封止装置10Bでは、ワーク載置領域16がキャビティ23a外まで設けられることによって、樹脂封止装置10のようなキャビティ23a内に通じる通気孔46を設けていない。
[実施形態4]
前記実施形態1(図1に示す樹脂封止装置10)では、ワークWが搭載される金型11Aを下型とし、キャビティ凹部23が形成される金型11Bを上型とした場合について説明した。これに対して、本実施形態では、ワークWが搭載される金型11Aを上型(固定型)とし、キャビティ凹部23が形成された金型11Bを下型(可動型)とした場合について、図8および図9を参照して説明する。この図8および図9には、それぞれ本実施形態に係る樹脂封止装置10C、10Dの要部の断面が示されている。
樹脂封止装置10C、10Dは、一対の金型11を備えている。一対の金型11は、一方の上型11Aと他方の下型11Bとが対向して設けられており、型閉じによってキャビティ23aを形成するものである。
樹脂封止装置10C、10Dでは、下型11Bにキャビティ凹部23が形成されているので、液状、顆粒状またはタブレット状の樹脂20をキャビティ凹部23内へ確実に供給することができる。このため、樹脂供給の際に樹脂20のはみ出しを防止して、正確な樹脂量で樹脂封止することができる。
なお、下型11Bにキャビティ凹部23を設け、上型11AにワークWを搭載する場合であっても、前記実施形態3で説明したように、吸引固定部13および一対の金型11によるクランプによってワークWを固定することもできる。
[実施形態5]
前記実施形態1(図1に示す樹脂封止装置10)では、一方金型11AにワークWを搭載し、他方金型11Bにキャビティ凹部23が形成された場合について説明した。これに対して、本実施形態では、金型11Aにキャビティ凹部23を形成し、このキャビティ凹部23の底部にワークWを搭載する場合について、図10を参照して説明する。この図10には、本実施形態に係る樹脂封止装置10Eの要部の断面が示されている。樹脂封止装置10Eでは、金型11Aが下型(可動型)、金型11Bが上型(固定型)とした構成となっている。
樹脂封止装置10Eでは、下型11Aがキャビティ23aを構成するキャビティ凹部23を有している。このキャビティ凹部23の底部の面内にワークWが搭載されるワーク載置領域16が設けられている。そして、キャビティ凹部23の底部および側部を含む下型11Aのパーティング面11a(金型表面)上にポーラスフィルム12が設けられている。なお、上型11Bのパーティング面11b(プレート43の下面)は、平坦面であるため、ワークWを離型するためのリリースフィルムを用いなくとも良い。
この樹脂封止装置10Eでは、ワーク載置領域16に通じるワーク吸引孔44を有し、ワーク吸引孔44からポーラスフィルム12を介してワークWを吸引して、ワークWを固定し、固定されたワークWに対してキャビティ23a内で樹脂封止する。樹脂封止装置10Eによれば、ポーラスフィルム12によって、通気性を確保しつつ、樹脂の染み込みを防止して、ワークWを下型11Aに吸引・固定できると共に、キャビティ凹部23からワークWの離型を容易に行うことができる。
[実施形態6]
前記実施形態1(図1に示す樹脂封止装置10)では、圧縮成形で樹脂封止を行う場合について説明した。これに対して、本実施形態では、トランスファ成形で樹脂封止を行う場合について説明する。本実施形態に係る樹脂封止装置10Fについて、図11を参照して説明する。この図11には、樹脂封止装置10Fの要部の断面が示されている。樹脂封止装置10Fでは、金型11Aが上型(固定型)、金型11Bが下型(可動型)とした構成となっている。
樹脂封止装置10Fは、一対の金型11を備えている。一対の金型11は、一方の上型11Aと他方の下型11Bとが対向して設けられており、型閉じによってキャビティ23aを形成するものである。
上型11Aは、例えば合金工具鋼から形成された複数のブロック(部材)として、樹脂封止装置10Fでは、チェイス51と、カルインサート52と、キャビティインサート53とを備えている。また、下型11Bは、例えば合金工具鋼から形成された複数のブロック(部材)として、樹脂封止装置10Fでは、チェイス61と、ポットインサート62と、インサート63と、ポット64と、プランジャ65とを備えている。
上型11Aでは、チェイス51の溝部(凹部)にカルインサート52およびキャビティインサート53が固定して組み付けられている。この上型11Aには、ワークWが搭載されるワーク搭載部54およびカル55が形成されている。
下型11Bでは、チェイス61の溝部(凹部)にポットインサート62およびインサート63が固定して組み付けられている。この下型11Bには、キャビティ凹部23、ランナゲート66が形成されている。また、チェイス61およびポットインサート62には、中央部でポット64が設けられる貫通孔が形成されており、この貫通孔にポット64が固定して組み付けられている。このポット64は、上型11Aのカル55と対向するように設けられる。このポット64内には、上下動可能なプランジャ65が設けられ、そのプランジャ65の先端面とポット64の内壁面で形成された空間に樹脂20(樹脂タブレット)が装填(供給)される。
また、樹脂封止装置10Fは、ワーク搭載部54およびカル55の表面を含むパーティング面11a上に設けられるポーラスフィルム12と、ポーラスフィルム12上でワークWを吸引して固定する吸引固定部13とを備えている。吸引固定部13は、チェイス51およびキャビティインサート53(上型11A)に形成され、ワークWが搭載されるワーク載置領域16に通じるワーク吸引孔44を有し、ワーク吸引孔44からポーラスフィルム12の微細孔を介してワークWを吸引して、ワークWを固定する。
この樹脂封止装置10Fでは、一対の金型11が型開きした状態でワークWおよび樹脂20がセットされ、型閉じしてキャビティ23aを形成した後、プランジャ65を上昇させて、キャビティ23aに連通するポット64、カル55およびランナゲート66を介してキャビティ23aへ溶融した樹脂20が圧入される。そして、ワークWに対して、キャビティ23a内で樹脂20を加熱・硬化させて樹脂封止が行われる。
樹脂封止装置10と同様に、樹脂封止装置10Fにおいても、ポーラスフィルム12によって、通気性を確保しつつ、樹脂の染み込みを防止して、ワークWを金型11Aに吸引・固定できると共に、金型11Aのパーティング面11aへの樹脂の付着を防止することができる。したがって、メンテナンス回数の低減などにより、製品コストを低減することができる。
[実施形態7]
前記実施形態1(図1に示す樹脂封止装置10)では、キャビティ凹部23(キャビティ23a)内に1つのワーク載置領域16を設けた場合について説明した。これに対して、本実施形態では、1つのキャビティ23a内に複数のワーク載置領域16を設けた場合について、図12を参照して説明する。この図12には、本実施形態に係る樹脂封止装置10Gの要部の断面が示されている。樹脂封止装置10Gでは、金型11Aが下型(可動型)、金型11Bが上型(固定型)とした構成となっている。
樹脂封止装置10Gでは、下型11Aのパーティング面11aにおいて複数のワーク載置領域16が配置(例えばマトリクス配置)されている。すなわち、樹脂封止装置10Gでは、1つのキャビティ23a内で別々のワークW(配線基板21)を一度の圧縮成形(樹脂封止工程)によって一括して樹脂封止することができる。なお、樹脂封止工程後のダイシング工程によって、一括して樹脂封止された複数のワークWは個片化されて複数の半導体製品(成形品)が製造される。
[実施形態8]
前記実施形態1(図1に示す樹脂封止装置10)では、一対の金型11に1つのキャビティ23aが形成される場合について説明した。これに対して、本実施形態では、一対の金型11に複数のキャビティ23aが形成される場合について、図13を参照して説明する。この図13には、本実施形態に係る樹脂封止装置10Hの要部の断面が示されている。樹脂封止装置10Hでは、金型11Aが下型(可動型)、金型11Bが上型(固定型)とした構成となっている。
樹脂封止装置10Hでは、下型11Aのパーティング面11aにおいて複数のワーク載置領域16が配置(例えばマトリクス配置)されている。また、上型11Bのパーティング面11bにおいて複数のキャビティ凹部23(キャビティ23a)が配置(例えばマトリクス配置)されている。複数のワーク搭載領域16と複数のキャビティ凹部23とは対応する位置に配置されている。すなわち、樹脂封止装置10Hでは、複数のキャビティ23a内でそれぞれ複数のワークW(配線基板21)を一度の圧縮成形(樹脂封止工程)によって複数のワークWに対して樹脂封止することができる。これによれば、樹脂封止工程後のダイシング工程を経なくとも、複数の半導体製品(成形品)が製造される。
[実施形態9]
前記実施形態6(図11に示す樹脂封止装置10F)では、ワークWが載置される一方の金型11Aにワーク搭載部54およびカル55を形成した場合について説明した。これに対して、本実施形態では、ワークWが載置される一方の金型11Aに対向する他方の金型11Bにワーク搭載部54およびカル55を形成する場合について、図14を参照して説明する。
図14には、本実施形態に係る樹脂封止装置10Iの要部の断面が示されている。樹脂封止装置10Iでは、金型11Aが上型(固定型)、金型11Bが下型(可動型)とした構成となっている。なお、ワークWの配線基板21のサイズは、図14中の中心線(1点鎖線)を挟んで左側でキャビティ23aのサイズより小さく、右側でキャビティ23aのサイズより大きい。これは説明上小さい配線基板21と大きい配線基板21を記載したが、両方とも小さい配線基板21又は両方とも大きい配線基板21であっても良い。
また、説明を明解にするために、図14では、ワーク吸引孔44、フィルム吸引孔45および通気孔46を同一の断面で示している。このため、図14中の中心線から左側において、ワーク吸引孔44は、上型11A内で途切れているように図示されているが、パーティング面11aから上型11Aの外部まで通じている。
樹脂封止装置10Iでは、上型11Aのパーティング面11aにはワーク搭載部やカルなどの凹部が形成されておらず平坦面である。この平坦な上型11Aのパーティング面11aにポーラスフィルム12が覆うように設けられることで、樹脂封止の際にポーラスフィルム12が伸びて微細孔の目の大きさが変化するのを防止することができる。
本実施形態に係るトランスファ成形では、下型にポットを配置し、上型にポーラスフィルムを配置させたが、同様に下型にポットを配置し、下型にポーラスフィルムを配置させても良く、また、上型にポットを配置させ、上型にポーラスフィルムを配置させても良い。更に上型にポットを配置させ、下型にポーラスフィルムを配置させても良いことは言うまでも無い。これらの場合であっても、ポーラスフィルムを介してワークを吸引・固定することができる。
[実施形態10]
前記実施形態6(図11に示す樹脂封止装置10F)では、トランスファ成形時においてキャビティ23aの容積を固定した場合について説明した。これに対して、本実施形態では、トランスファ成形時においてキャビティ23aの容積を可変させる場合について説明する。本実施形態に係る樹脂封止装置10Jについて、図15を参照して説明する。この図15には、樹脂封止装置10Jの要部の断面が示されている。なお、説明を明解にするために、図15では、ワーク吸引孔44、フィルム吸引孔45および通気孔46を同一の断面で示している。
樹脂封止装置10Jは、一対の金型11を備えている。この一対の金型11は、一方の下型11A(可動型)と他方の上型11B(固定型)とが対向して設けられており、型閉じによってキャビティ23aを形成するものである。
上型11Bでは、キャビティ23aの底部を形成するインサート26とこれを囲んで配置されるクランパ27によってキャビティ凹部23が形成され、キャビティ凹部23を含むパーティング面11bにリリースフィルム15が張設されている。また、上型11Bでは、クランパ27がスプリング32を介してベース24に吊り下げ支持され、インサート26がベース24に固定されている。すなわち、型閉じによってキャビティ23aを形成した後、更なる型閉め動作によりインサート26を押し出してキャビティ23aの容積を可変させる構成となっている。また、クランパ27の中央部下面には、カル55およびランナゲート66となる凹部が形成されている。
下型11Aでは、チェイス61の凹部内でポット64が設けられる貫通孔が形成されており、この貫通孔にポット64が固定して組み付けられている。そして、チェイス61の凹部にインサート63が固定して組み付けられている。ポット64内には、上下動可能なプランジャ65が設けられ、そのプランジャ65の先端面とポット64の内壁面で形成された空間に樹脂20が装填される。
トランスファ成形が行われる樹脂封止装置10Jでは、下型11Aに設けられたポット64から上型11Bに設けられたキャビティ23aへ、溶融した樹脂20が加圧されて送られる。しかしながら、樹脂封止装置10Jでは、ポーラスフィルム12が下型11Aのパーティング面11aを覆うように設けられ、型閉じした状態のときに下型11Aと上型11Bとでポーラスフィルム12が挟まれる。このため、パーティング面11a上にポーラスフィルム12が設けられたとしても、樹脂送りできるための工夫が必要となる。例えば、図15に示すように、ポット64の開口部が露出するように、例えばポット64の径寸法に合わせた貫通孔をポーラスフィルム12に形成することが考えられる。この貫通孔は、ポット64へ樹脂20(樹脂タブレット)を供給する際の投入孔となる。
なお、このような投入孔を有しないポーラスフィルム12を用いる場合は、ポット64の内壁を含んでパーティング面11aを覆うようにポーラスフィルム12を設けられることも考えられる。この場合、タブレット状の樹脂20をポーラスフィルム12と共にポット64に押し込むことで、ポット46内へ樹脂20を供給することができる。また、カル55の形状に合わせた樹脂20を用いることも考えられる。この場合、ポーラスフィルム12を介してポット64上に樹脂20を供給し、プランジャ65の先端面がカル55内まで進入するようにプランジャ65を作動させることで、キャビティ23a内に溶融した樹脂20を加圧して送ることができる。これらの場合では、ポット64周辺を覆うポーラスフィルム12の部分では伸びが生じてしまうが、キャビティ23a内のポーラスフィルム12の部分が伸びなければ、微細孔の目の大きさが変わらず、高防水性かつ高通気性を確保して樹脂封止することができる。
このような樹脂封止装置10Jでは、次の工程が行われる。まず、一対の金型11が型開きした状態で、下型11Aのパーティング面11aを覆うようにポーラスフィルム12を吸引固定部13(フィルム吸引孔45)によって吸着する。次いで、型開きの状態の一対の金型11に搬入されたワークWを、吸引固定部13によって、ワーク吸引孔44からポーラスフィルム12の微細孔を通じてワークWを吸引して、ワークWを固定する。
次いで、ワークWを吸引して固定したまま、インサート26がワークWの成形品の厚さ寸法より所定厚だけ後退した退避位置まで移動するように一対の金型11を型閉じした後、プランジャ65を作動させてキャビティ23a内へ溶融した樹脂20を充填する。所定の第1保圧を維持してキャビティ23a内を樹脂20で充填した後、インサート26を成形品の厚さ寸法に対応する成形位置までさらに押し出してキャビティ23a内の余剰となる樹脂20をランナゲート66からカル55、ポット64側へ押し戻す。次いで、プランジャ65を再度作動させて第1保圧より高い第2保圧を維持したまま樹脂20を加熱・硬化させて樹脂封止を行う。
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、代表的なものの新規な特徴およびこれによって得られる作用、効果を説明すれば、次のとおりである。
樹脂封止装置10は、ワークWが載置される一方の金型11Aと、これに対向する他方の金型11Bとでキャビティ23aが形成される一対の金型11と、一方の金型11Aのパーティング面11aを覆うポーラスフィルム12と、ポーラスフィルム12を介して一方の金型11Aに載置されたワークWを吸引して固定する吸引固定部13とを備えている。吸引固定部13は、ワークWが載置されるワーク載置領域16内に形成されたワーク吸引孔44を有している。ワーク吸引孔44からポーラスフィルム12の微細孔を通じてワークWを吸引して固定したまま、一対の金型11を型閉じして樹脂封止する。
このような樹脂封止装置10によれば、ポーラスフィルム12によって、通気性を確保しつつ、樹脂の染み込みを防止して、ワークWを金型11Aに吸引・固定できると共に、金型11Aのパーティング面11aへの樹脂20の付着を防止することができる。例えば、金型11Aに搭載されたワークW(基板21)の裏面(パーティング面11aとの接触面)側へ樹脂の回り込みが発生するのを防止して、樹脂封止することができる。また、ワークW全体を包んで樹脂封止することもできる。すなわち、ワークWからの個々の製品の取り個数の増加、製品歩留まりの向上、メンテナンス回数の低減などにより、製品コストを低減することができる。
そして、ワーク載置領域16を取り囲む周囲領域17内にフィルム吸引孔45が形成され、フィルム吸引孔45からポーラスフィルム12を吸引して一方の金型11Aのパーティング面11aにポーラスフィルム12が吸着されている。このような場合、より確実に金型11Aのパーティング面11aにポーラスフィルム12を吸着することで、金型11Aのパーティング面11aへ樹脂の付着を防止できる。
そして、ワーク載置領域16を取り囲む周囲領域17内に通気孔46が形成され、通気孔46からポーラスフィルム12の微細孔を通じてキャビティ23a内を減圧または加圧の少なくともいずれか一方を行う圧調整部14を備えている。このような場合、キャビティ23a内の異物(浮遊物)を除去し、製品不良を低減することができる。すなわち、製品歩留まりを向上させて、製品コストを低減することができる。
そして、他方の金型11Bは、キャビティ23aを構成するキャビティ凹部23を有し、キャビティ凹部23を含む他方の金型11Bのパーティング面11bを覆うリリースフィルム15を備えている。このような場合、金型11Bのパーティング面11bへの樹脂の付着を防止することができる。
また、ワークWが載置される一方の金型11Aと、これに対向する他方の金型11Bとでキャビティ23aが形成される一対の金型11を用いた樹脂封止方法であって、(a)型開きした一方の金型11Aのパーティング面11aを覆ってポーラスフィルム12を吸着する工程と、(b)ポーラスフィルム12上にワークWを載置し、ポーラスフィルム12の微細孔を通じてワークWを吸引して固定する工程と、(c)ワークWを吸引して固定したまま、一対の金型11を型閉じしてキャビティ23a内で樹脂封止する工程とを含む。
このような樹脂封止方法によれば、ワークWからの個々の製品の取り個数の増加、製品歩留まりの向上、メンテナンス回数の低減などにより、製品コストを低減することができる。
そして、(c)工程では、一対の金型11が型開きした状態で、ワークW上またはキャビティ23aを構成するキャビティ凹部23内に樹脂20を供給し、一対の金型11を型閉じして圧縮成形により樹脂封止する。
そして、(c)工程では、一対の金型11を型閉じしてキャビティ23aを形成した後、キャビティ23aに連通するポット64に装填された樹脂20を加圧してキャビティ23aに供給し、トランスファ成形により樹脂封止する。
さらに、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、圧調整部が減圧を行う場合について説明したが、圧調整部が加圧を行うこともできる。具体的には、加圧装置(例えばコンプレッサ)を用いて加圧することで、キャビティ内からポーラスフィルム、リリースフィルムをパーティング面に押し付け、所望の形状に樹脂封止することができる。また、離型時にも使用できる。
また、圧調整部が減圧および加圧を行うこともできる。例えば、型閉じにより形成されたキャビティ内を減圧して気泡を除去した後、更なる型閉じによりキャビティ内を樹脂充填する際に加圧することで、ポーラスフィルムに樹脂が染み込むのを防止することができる。
例えば、ワークとして平面視矩形状の配線基板を適用した場合について説明したが、ワークとして平面視円形状のものや、半導体ウエハ、セラミック基板にも適用することができる。
例えば、一方の金型にポーラスフィルムを用い、他方の金型にリリースフィルムを用いた場合について説明したが、リリースフィルムの代わりにポーラスフィルムを用いることができる。
例えば、圧縮成形とトランスファ成形を別々に行う樹脂封止装置について説明したが、圧縮成形とトランスファ成形を組み合わせた樹脂封止装置にも適用することができる。具体的には、一対の金型が型開きした状態で、キャビティを構成するキャビティ凹部内に樹脂を供給し、一対の金型を型閉じしてキャビティを形成した後、キャビティに連通するポットに装填された樹脂を加圧してキャビティに供給しながら、樹脂を圧縮して樹脂封止することができる。
例えば、上型を固定型とし、下型を可動型とした場合について説明したが、上型を可動型とし、下型を固定型として、型開きおよび型閉じする一対の金型を構成することができる。