JP7338929B1 - 表面処理炭酸カルシウムフィラー、ならびにそれを用いた樹脂組成物および成形品 - Google Patents

表面処理炭酸カルシウムフィラー、ならびにそれを用いた樹脂組成物および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 樹脂組成物中で略均一に分散させることができ、かつ当該樹脂組成物に対して高い熱的な安定性を付与することのできる表面処理炭酸カルシウムフィラー、ならびにそれを用いた樹脂組成物および成形品を提供すること。【解決手段】 本発明の表面処理炭酸カルシウムは、脂肪酸類およびリン酸類で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、以下の式(a)、(b)および(c)を満足する:(a)3≦Sw≦20(m2/g)(b)300≦Pw≦5000(ppm)(c)50≦Ca化率≦95(質量%)ここで、Swは、表面処理炭酸カルシウム粒子のBET比表面積(m2/g)であり、Pwは、表面処理炭酸カルシウム粒子における誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)で測定したリン元素の含有量(ppm)であり、Ca化率は、表面処理炭酸カルシウム粒子の総表面処理量(g)に対する脂肪酸カルシウムを構成する脂肪酸の質量(g)の百分率である。【選択図】 なし

Description

本発明は、表面処理炭酸カルシウムフィラー、ならびにそれを用いた樹脂組成物および成形品に関し、より詳細には、得られる樹脂組成物の耐熱性を改善することができる表面処理炭酸カルシウムフィラー、ならびにそれを用いた樹脂組成物および成形品に関する。
ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、塩化ビニル系などの合成樹脂組成物は、剛性、耐衝撃性、耐熱性、成形性、透明性、および耐薬品性に優れるという特徴により、炭酸カルシウム無機顔料等と組み合わせ、各種工業材料、自動車関連部品、医療向けまたは化粧品等の各種容器、日用品または産業用等の各種フィルム、繊維など、様々な用途に幅広く使用されている。
これらの樹脂組成物には、熱安定性、耐摩耗性、剛性、耐衝撃性やチクソ性付与など様々な目的で無機フィラーが配合されている。ここで、無機フィラーが配合された樹脂製品が所望の性能を発揮するためには、樹脂組成物中で無機フィラーが十分に分散している必要がある。このために混練機械や混練条件に様々な改良が加えられる一方、無機フィラー自体についても樹脂組成物中での分散性を改善するために様々な表面処理が施され、当該表面処理に使用するための表面処理剤および表面処理方法が検討されてきた。
例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物から製造される多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂組成物をフィルム化かつ延伸し、ポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとの間の力学的性質の違いを利用して樹脂とフィラーとの界面に空隙を形成することにより製造される。このような多孔質フィルムは、合成紙、衛生材料、医療用材料、建築用材料、農業用透気性シート、電池セパレーター等の多種多様な用途に向けて研究開発がなされ、一部実用化されている。しかし、さらなる高機能を発揮するフィルムを得るためには、フィルム中に形成される空隙の大きさのバラツキが少なく、かつフィルム面内における空隙の分布が一様であることが求められている。さらに、多孔質フィルムは、その製法上、延伸により多数形成された空隙構造のために耐熱性に劣る傾向にあり、耐熱性の向上が望まれている。
このように、樹脂組成物中で無機フィラーを均一に分散させることは極めて重要である。ただし、当該分散を機械的手段のみに頼った場合、たとえある程度の分散ができたとしても、生産コストが増大する、樹脂の劣化を引き起こす、さらには樹脂が分解してガスや粉塵が発生し、作業環境が劣悪になるという問題を生じる危険性がある。また、樹脂組成物の耐熱性が不十分であると、混錬や押出の操作の際に樹脂および/または樹脂組成物中に残存する表面処理剤と、無機フィラーとが焦げ付き、これが凝集物(樹脂焼け)となって押出機のダイの内部に取り付けたストレーナーを目詰まりさせる原因となる。フィルム用途では、メッシュの細かいストレーナーが用いられるので、特に目詰まりを起こしやすい。ストレーナーの交換は人手を必要とするばかりでなく、使用する樹脂組成物のロス、製造に要する時間のロスなどを引き起こし、多大なコストアップの原因となる。
これらの問題の解決のため、従来から、ステアリン酸カルシウムのような金属石鹸や、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤がこれら樹脂に添加され、得られる樹脂組成物の安定化が高められてきた。また、ステアリン酸、ステアリン酸石鹸等の脂肪酸類で処理した炭酸カルシウムを添加することにより、炭酸カルシウム自体に樹脂組成物の安定性を高める機能を兼備させることが行われてきた。
さらなる改良のために、特許文献1は、無機粒子に対して界面活性剤とキレート剤との併用した表面処理を行うことにより、樹脂組成物への分散性が改善された無機フィラーを記載している。特許文献2および3は、さらに分級等の操作を組み合わせることにより凝集物を除去することを記載している。
これら特許文献1~3に記載の技術はいずれも、表面処理炭酸カルシウムの分散性は向上する。しかし、その一方で、このような無機フィラーの製造では、キレート能を有する化合物がカルシウムイオンを捕捉することにより、脂肪酸類とカルシウムイオンとの反応も妨げられることになる。その結果、生成される脂肪酸のカルシウム塩の割合が減少し、脂肪酸類が残存する割合を増加させている。
これら脂肪酸や脂肪酸のアルカリ金属塩は、脂肪酸のカルシウム塩と比べて、熱的に不安定である。それにより、これら表面処理炭酸カルシウムを用いたポリオレフィン系樹脂組成物では、耐熱性や耐久性を十分満足できない場合がある。
また、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤を、これら樹脂に添加することにより、得られる樹脂組成物の安定化を計ることは可能ではある。ただし、これらの添加量は非常に微量なため、樹脂全体に均一分布させることが困難であり、局所的な濃度ムラが生じるといった問題点も指摘されている。
近年、ポリオレフィン系樹脂は、比較的環境に優しい樹脂としても知られ、グリーンインフラ用途の基材とする試みにも期待されている。その一方で、上記のように熱的な安定性が不十分であると指摘されており、さらなる耐熱性や耐久性を要望されることが多い状況となってきている。
特開2002-363443号公報 特開2006-169421号公報 国際公開第2007/088707号
本発明は上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、樹脂組成物中で略均一に分散させることができ、かつ当該樹脂組成物に対して高い熱的な安定性を付与することのできる表面処理炭酸カルシウムフィラー、ならびにそれを用いた樹脂組成物および成形品を提供することにある。
本発明は、脂肪酸類およびリン酸類で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、以下の式(a)、(b)および(c)を満足する、表面処理炭酸カルシウムフィラー:
(a)3≦Sw≦20(m/g)
(b)300≦Pw≦5000(ppm)
(c)50≦Ca化率≦95(質量%)
(該Swは、該表面処理炭酸カルシウム粒子のBET比表面積(m/g)であり、
該Pwは、該表面処理炭酸カルシウム粒子における誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置で測定したリン元素の含有量(ppm)であり、
該Ca化率は、該表面処理炭酸カルシウム粒子の総表面処理量(g)に対する脂肪酸カルシウムを構成する脂肪酸の質量(g)の百分率である)、である。
1つの実施形態では、本発明の表面処理炭酸カルシウムフィラーはさらに以下の式(d)、(e)および(f)を満足する:
(d)0.1≦D50≦1.5(μm)
(e)0.9≦(D90-D10)/D50≦2.0
(f)Da≦5.0(μm)
ここで、D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した前記表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布において、小粒子側から累積した50%直径(μm)であり、
D90は、該レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した該表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布において、小粒子側から累積した90%直径(μm)であり、
D10は、該レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した該表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布において、小粒子側から累積した10%直径(μm)であり、
Daは、該レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した該表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布における最大粒子径(μm)である。
1つの実施形態では、上記脂肪酸類は、飽和脂肪酸および飽和脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
1つの実施形態では、本発明の表面処理炭酸カルシウムフィラーはポリオレフィン系樹脂組成物を構成するために用いられる。
本発明はまた、樹脂と、上記表面処理炭酸カルシウムフィラーとを含有する、樹脂組成物である。
1つの実施形態では、上記樹脂はポリオレフィン系樹脂である。
本発明はまた、上記樹脂組成物から構成されている、成形品である。
1つの実施形態では、本発明の成形品はフィルムの形態を有する。
本発明によれば、樹脂組成物への分散性が良好であるとともにそれ自体が優れた耐熱性を有する。これにより、本発明の表面処理炭酸カルシウムフィラーを含有する樹脂組成物は、例えば、混錬や押出の操作の際にフィラーと樹脂や残存する表面処理剤との間で生じる焦げ付きを抑制し、かつ押出機のダイ内部に取り付けたストレーナーの目詰まりの発生を防止また低減することができる。さらに、このようにして得られた樹脂組成物はそれ自体も優れた耐熱性を有する。
1.表面処理炭酸カルシウムフィラー
本発明の表面処理炭酸カルシウムフィラーは表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、好ましくは主成分として当該表面処理炭酸カルシウム粒子から構成されている。
(a)BET比表面積(Sw)
本発明において表面処理炭酸カルシウム粒子は、窒素吸着法による所定のBET比表面積(Sw;m/g)を有する。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のSwは3≦Sw≦20(m/g)であり、好ましくは4≦Sw≦16(m/g)であり、より好ましくは5≦Sw≦12(m/g)である。表面処理炭酸カルシウム粒子のSwが3(m/g)を下回ると、その一次粒子が大き過ぎることになり、樹脂組成物中に配合された際に当該樹脂組成物の強度低下を引き起こす。また、表面処理炭酸カルシウム粒子のSwが20(m/g)を越えると、樹脂組成物への均一な分散が困難となる。
(Swの測定方法)
表面処理炭酸カルシウム粒子のSwは、例えば、株式会社マウンテック社製Macsorb HM model-1201を使用して以下のようにして測定され得る。
具体的には、測定に供される表面処理炭酸カルシウムフィラー0.2~0.3gを測定装置にセットし、前処理として窒素とヘリウムとの混合ガス雰囲気下で200℃にて10分間の加熱処理を行った後、液体窒素の環境下で低温低湿物理吸着を行うことによりSwが測定される。
Swは、本発明のフィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子を製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。Swを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、後述するような炭酸化反応で使用する石灰乳の濃度、炭酸化反応に採用される温度、使用する炭酸ガスの濃度、および炭酸化反応の際に使用する添加剤の種類、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記Swの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウム粒子を得ることが困難となることがある。
(b)誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置で測定したリン元素の含有量(Pw)
本発明において表面処理炭酸カルシウム粒子は、ICP発光分光分析装置にて測定した所定のリン含有量(Pw;ppm)を有する。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のPwは、300≦Pw≦5000(ppm)であり、好ましくは、400≦Pw≦3500(ppm)であり、より好ましくは、500≦Pw≦2000(ppm)である。Pwが300(ppm)を下回ると、当該粒子それ自体は十分な耐熱性を有さないものとなる。Pwが5000(ppm)を上回ると、当該粒子の耐熱性をそれ以上向上させることができず、むしろそのような表面処理炭酸カルシウム粒子の作製で行われる脱水時の排水にリンが多量に含まれることになり、排水処理設備への過剰な負荷を強いることになる。
(Pwの測定方法)
Pwは、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製ICP発光分光分析装置SPS3500を使用して以下のようにして測定され得る。
(1)まず、るつぼに測定に供される表面処理炭酸カルシウムフィラー1.0gが仕込まれ、電気炉で300℃にて3時間焼成される。
(2)焼成後ビーカーに約60mLの蒸留水および1.38規定の硝酸(有害金属測定用硝酸(1.38)、富士フイルム和光純薬株式会社製)7.5mLが入れられ、この混合物を電気コンロで煮沸して徐冷される。
(3)100μgのイットリウムが入った100mLのメスフラスコに、上記徐冷後の混合物が添加され、さらに100mLまで蒸留水でメスアップされる。
(4)次いで、5Cの濾紙で濾過し、得られた濾液からICP測定用の試料が調製される。
(5)その後、この試料を用いて、上記ICP発光分光分析装置により当該試料に含まれるリン元素の含有量(ppm)が測定される。
(c)Ca化率
本発明において表面処理炭酸カルシウム粒子は、所定のCa化率を満足するものである。ここで、本明細書中に用いられる用語「Ca率」とは、表面処理炭酸カルシウム粒子の総表面処理量(g)に対する脂肪酸カルシウムを構成する脂肪酸の質量(g)の百分率を指して言う。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のCa化率は、50≦Ca化率≦95(質量%)であり、好ましくは55≦Ca化率≦85(質量%)であり、より好ましくは60≦Ca化率≦80(質量%)である。表面処理炭酸カルシウム粒子のCa化率が50質量%を下回ると、必要な耐熱性を有する表面処理炭酸カルシウム粒子を得ることができず、混錬や押出の操作の際に樹脂および/または樹脂組成物中に残存する表面処理剤と、無機フィラーとが焦げつく樹脂焼けを引き起こすことがある。表面処理炭酸カルシウム粒子のCa化率が95質量%を上回ると、樹脂組成物中での分散性が低下することがある。
(Ca化率の測定方法)
Ca化率は、一般的な抽出方法によって測定することができる。すなわち、表面処理炭酸カルシウム粒子を得るため使用され得る表面処理剤のうち、脂肪酸カルシウムは、95質量%のエタノール溶媒に不溶であるが、脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩は95質量%のエタノール溶媒に可溶である。その結果、このような溶解性の相違を利用することにより、表面処理炭酸カルシウム粒子のCa化率を以下のようにして測定することができる。
(1)まず、300mLの三角フラスコに、試料となる表面処理炭酸カルシウム粒子5.0gおよび95質量%のエタノール80gが添加される。
(2)次に90℃以上のウォーターバスに三角フラスコを浸漬し、1時間還流させることにより表面処理炭酸カルシウム粒子に残存する表面処理剤が抽出される。
(3)20℃になるまで十分冷却した後、三角フラスコ内の内容物を0.5μm以下のテフロン(登録商標)フィルターで吸引濾過される。
(4)得られた濾液を乾燥かつ定量済みの200mLビーカーにとり、90℃以上のウォーターバス上で蒸発乾固させて溶剤を除去して、得られた残渣の質量が測定される(この残渣の質量が表面処理炭酸カルシウム粒子に残存する表面処理剤中の脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩の合計量に相当する)。
(5)上記(4)で得られた質量は、表面処理炭酸カルシウム粒子5.0g当たりの当該表面処理剤中の脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩の質量であるから、この値を1/5倍することにより、表面処理炭酸カルシウム粒子1.0g当たりの当該表面処理剤中の脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量が、質量%(X)として算出され得る。なお、この(X)は、脂肪酸のアルカリ金属塩等から由来するアルカリ金属元素を含む数値である。このため、脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩由来の脂肪酸の質量%を算出するには、原子吸光分析法により該表面処理炭酸カルシウム粒子に含まれるアルカリ金属元素の含有量(質量%;Y)が減算される。
(6)このX(質量%)およびY(質量%)と、200℃~500℃までの炭酸カルシウム1g当たりの熱減量TG(質量%)から、表面処理炭酸カルシウム粒子の総表面処理量(g)に対する脂肪酸カルシウムを構成する脂肪酸の質量(g)の百分率(すなわちCa化率)が以下の式により算出される:
Ca化率(質量%)={(Tg(質量%)-(X(質量%)-Y(質量%))}/TG(質量%)×100
ここで、上記表面処理炭酸カルシウム粒子に含まれるアルカリ金属元素の含有量(質量%;Y)は、以下のようにして測定される。
(原子吸光分析法によるアルカリ金属の測定方法)
るつぼに表面処理炭酸カルシウム粒子1.0gを秤量し、マッフル炉(増田理化工業株式会社製NMF-120)に入れ、300℃で2時間焼成した後、デシケータで常温まで冷却する。その後、200mLのビーカーに試料を入れ、蒸留水60mLが注がれる。次いで、1.38規定の硝酸(有害金属測定用 硝酸(1.38)、富士フイルム和光純薬株式会社製)7.5mLを投入した後、時計皿でフタをし、電熱ヒーターで煮沸させる。これを常温で冷却させた後、100mLのメスフラスコに入れ、蒸留水で100mLにメスアップすることにより、測定試料が調製される。このようにして得られた測定試料を用いて、原子吸光分光光度計(株式会社島津製作所製AA-6700F)によりアルカリ金属元素の含有量(質量%;Y)が測定される。
また、上記Ca化率の算出にあたり使用される200℃~500℃までの炭酸カルシウム1g当たりの熱減量TG(質量%)は、以下のようにして測定される。
(TGの測定方法)
白金製の試料パンに、約30mgの表面処理炭酸カルシウム粒子が秤取られ、その後昇温速度30℃/分で200~500℃まで昇温した際の当該粒子の熱減量が、例えば、示差熱分析装置(株式会社島津製作所製DTG-60A)を用いて測定される。これにより、表面処理炭酸カルシウム1g当りの熱減量TG(質量%)が測定される。
Ca化率は、本発明のフィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子を製造する際の表面処理工程および乾燥工程における温度履歴を制御することにより調整され得る。この温度履歴は、例えば、表面処理工程および乾燥工程のそれぞれに採用した温度および当該温度に晒した時間が挙げられる。温度履歴の具体的な例としては、湿式炭酸化合法等によって得られた合成炭酸カルシウムを表面処理剤(脂肪酸類およびリン酸類)で表面処理する際に使用する炭酸カルシウム水スラリーの温度およびその表面処理に要する時間;表面処理剤と炭酸カルシウムとの結合(表面処理)時の温度およびその表面処理に要する時間;表面処理後の脱水に要する温度およびその脱水時間;その後の乾燥工程に要する時間およびその乾燥時間;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。例えば、表面処理炭酸カルシウム粒子の製造の際に伝導伝熱乾燥機を選定すれば、スプレードライヤーなどの瞬間乾燥機よりも乾燥には長時間要するが、表面処理時にCa化率が不十分である場合、乾燥温度と乾燥時間を調節してCa化率を増やすことができる場合がある。表面処理時にCa化率が不十分で乾燥時間も十分に維持できなかった場合は、上記Ca化率の範囲を満たす表面処理炭酸カルシウム粒子を得ることが困難となることがある。
さらに、本発明の表面処理炭酸カルシウムフィラーに含まれる表面処理炭酸カルシウム粒子は、上記(a)~(c)に加え、以下の(d)、(e)および(f)のうちの1つまたはそれ以上を満足するものであることが好ましく、(d)、(e)および(f)のすべてを満足するものであることがより好ましい。
(d)体積粒度分布における小粒子側から累積した50%直径(D50)
本発明において表面処理炭酸カルシウム粒子は、好ましくはレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した50%直径(D50;μm)が所定の範囲内を満足する。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のD50は好ましくは0.1≦D50≦1.5(μm)であり、より好ましくは0.2≦D50≦1.2(μm)であり、さらにより好ましくは0.3≦D50≦0.8(μm)である。表面処理炭酸カルシウム粒子のD50が0.1(μm)を下回るものは技術的に得ることは可能であるが、より高度かつ精密な技術を必要とすることから製造コストが増加するおそれがある。D50が1.5μmを上回ると、ストレーナーの目詰まりを起こし易くなることがある。
(D50の測定方法)
D50は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製MT-3300EX II)を使用して、後述のD10、D90およびDaとともに以下のようにして測定され得る。
(1)まず100mLのビーカーに、表面処理炭酸カルシウム粒子の試料0.3gと媒体50mLとが添加される。
(2)次いで、ビーカー内の内容物に対して、例えば株式会社日本精機製作所製超音波分散機US-300Tを用いて300μAで60秒間、超音波を照射して内容物の分散が行われる。
(3)その後、レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製MT-3300EX II)により試料中の表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布が測定される。
なお、上記測定において使用され得る媒体としては、メタノールおよびエタノール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
D50は、本発明のフィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子を製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。従来から、炭酸カルシウム粒子を分散させる種々の方法が知られており、例えば、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、ホモジナイザー、ダイノーミル等の機械的手法を用いることで粒子を細かく砕いてD50を小さくする方法もあるが、湿式合成の炭酸ガス化合法においては、炭酸カルシウム粒子の粒子径を制御する方法としては、一定の粒子径に成長させ、且つ分散させる、オストワルド熟成を用いることが好ましい。
(e)体積粒度分布のシャープネス指数((D90-D10)/D50)
本発明において表面処理炭酸カルシウム粒子は、好ましくはレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した体積粒度分布におけるシャープネス指数((D90-D10)/D50)が所定の範囲内を満足する。ここで、D50は上記の通りであり、D90は、当該レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した90%直径(μm)であり、D10は、当該レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した10%直径(μm)であり、Daは、当該レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した体積粒度分布における最大粒子径(μm)である。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のシャープネス指数((D90-D10)/D50)は好ましくは0.9≦(D90-D10)/D50≦2.0であり、より好ましくは1.0≦(D90-D10)/D50≦1.6である。表面処理炭酸カルシウム粒子のシャープネス指数が0.9を下回るものは技術的に得ることは可能であるが、より高度かつ精密な技術を必要とすることから製造コストが増加するおそれがある。表面処理炭酸カルシウム粒子のシャープネス指数が2.0を上回ると、得られる表面処理炭酸カルシウムフィラーと樹脂とを混練して得られた成形品(例えばフィルム)中に形成される空隙の大きさのバラツキが大きくなり、面内の空隙の分布が一様な多孔質フィルムを得ることが困難になることがある。
(シャープネス指数((D90-D10)/D50)の測定方法)
シャープネス指数を構成するD10、D90およびDaは、例えば、上記D50の測定のために記載したレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製MT-3300EX II)を使用して、上記D50の測定と同様にして測定され得る。
シャープネス指数は、本発明のフィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子を製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。炭酸カルシウム粒子のシャープネス指数を低下させる(例えば、粗粒子と微粒子を少なくして粒度分布をシャープにする)方法は、前述の、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、ホモジナイザー、ダイノーミル、等の機械的手法や、水簸(スイヒ)といって、粒径による水中の沈降速度の差を利用して微粒子と粗粒子を分離する方法を用いることでも可能ではあるが、炭酸カルシウム粒子の粒子径の均一性が向上することでシャープネス指数が低下させやすい観点からオストワルド熟成を用いることが好ましい。
(f)体積粒度分布における最大粒子径(Da)
本発明において表面処理炭酸カルシウム粒子は、好ましくはレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した体積粒度分布において、最大粒子径(Da)が所定の範囲内を満足する。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のDaは好ましくはDa≦5.0(μm)(すなわち、0<Da≦5.0(μm))であり、より好ましくはDa≦4.0(μm)(すなわち、0<Da≦4.0(μm))である。Daが5.0μmを上回ると、例えば、得られる表面処理炭酸カルシウムフィラーと樹脂との混練時に分散が不十分となり、ストレーナーの目詰まりを起こし易くなることがある。
(Daの測定方法)
Daは、例えば、上記D50の測定のために記載したレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製MT-3300EX II)を使用して、上記D50の測定と同様にして測定され得る。
Daは、本発明のフィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子を製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。体積粒度分布における最大粒子径(Da)を低減させる方法としては、水スラリー形態の時点で、不純物および粗大粒子除去の目的から、デカンテーションといった重力や遠心力、浮力選鉱等を利用した分級、ならびに篩・フィルター等での除去を施したり、また、粉体形態の時点で、空気分級等の分級操作を行い、乾燥によって生じた凝集体を除去することが好ましい。
(表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子)
上記のように本発明の表面処理炭酸カルシウムフィラーに含まれる表面処理炭酸カルシウム粒子は、式(a)、(b)および(c)のすべて、ならびに必要に応じて(d)、(e)および(f)を満たすものである。このような表面処理炭酸カルシウム粒子は、表面処理剤で表面処理されている。なお、本明細書で用いられる用語「表面処理されている」とは、表面処理炭酸カルシウム粒子の表面の「状態」を表す意味で用いられる、一方、本明細書で用いられる用語「表面処理される/表面処理された」とは、表面処理が行われていない(すなわち、表面処理前の)炭酸カルシウム粒子の表面が改質(表面処理)されるプロセスを経たことを表す意味で用いられ、上記「表面処理されている」とは明確に区別される。
本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子は、未改質(表面処理前)の炭酸カルシウム粒子が表面処理剤で表面処理されたものである。
ここで、未改質の炭酸カルシウム粒子は、樹脂との混練時の脱気性の観点から、微粉粒子を多く含有している天然品(重質炭酸カルシウム)よりもむしろ、粒子を均一に制御できる合成炭酸カルシウム(例えば、軽質・コロイド炭酸カルシウム)の粒子である。結晶形態は、結晶安定性の観点からカルサイトが主成分であるものが好ましく、特にコロイド炭酸カルシウムは、微粒子や粗粒子が少なく粒子の均一性が比較的保持されているという点で好ましい。
また、炭酸カルシウム粒子は、合成炭酸カルシウム粒子の均一性をより高める目的で、合成炭酸カルシウム粒子を得るために使用される水スラリー、あるいは合成炭酸カルシウム粒子を製造する前の水酸化カルシウムを含有する水スラリーに対して、液体サイクロン機等の分離装置を用いて、軽液(微粒側)と重液とを適切な比率で分離することにより得られたものであってもよい。
上記表面処理剤は、脂肪酸類およびリン酸類を主成分として含有する。
上記表面処理剤に含有され得る脂肪酸類は、上記未改質の炭酸カルシウム粒子の少なくとも一部、好ましくは全部の表面において置換反応により脂肪酸カルシウムを形成し、当該炭酸カルシウム粒子の表面を改質し得る能力を有するものである。
脂肪酸類には、脂肪酸、および脂肪酸塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
脂肪酸としては、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、および脂環族カルボン酸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
飽和脂肪酸の例としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。不飽和脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。脂環族カルボン酸の例としては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環の末端にカルボキシル基を有するナフテン酸等が挙げられる。
脂肪酸塩には、上記脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニウム塩、およびアミン塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。水に対する溶解度が高く、 炭酸カルシウム表面を処理し易いとの理由から、脂肪酸のアルカリ金属塩を使用することが最も好ましい。
脂肪酸塩の例としては、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の飽和脂肪酸塩、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の不飽和脂肪酸塩、およびナフテン酸鉛、シクロヘキシル酪酸鉛等の脂環族カルボン酸塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
上記脂肪酸類は、例えば、動物または植物由来の変性または未変性の脂肪酸であってもよい。例えば、当該技術分野において汎用されている、牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸等の混合脂肪酸;そのアルカリ金属塩;あるいはこれらの混合脂肪酸の不飽和度を低減させるために水素添化された、いわゆる水添混合脂肪酸やそのアルカリ金属塩であってもよい。
なお、脂肪酸類として脂肪酸がそのまま使用される場合、未改質の炭酸カルシウム粒子へのより均一な表面処理を可能にするとの理由から、使用する脂肪酸の融点以上に加温された熱水に予め溶解させ、これにアニオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の公知の乳化剤を適宜添加し、ホモミキサーやホモジナイザーなどの乳化分散機にて、脂肪酸を乳化させてから上記未改質の炭酸カルシウムに添加することが好ましい。
また、上記脂肪酸類のうち、不飽和脂肪酸は、水に対する溶解度が高いだけでなく、融点が低いことから、未改質の炭酸カルシウム粒子の表面に対してより均一表面処理がなされ易い一方で、耐熱性の観点からは、不飽和脂肪酸は不飽和二重結合の存在により熱劣化を受け易いという特徴を有する。このため、本発明においては、上記不飽和脂肪酸のような熱劣化の懸念が予め払拭されているとの理由から、脂肪酸類は飽和脂肪酸および/または飽和脂肪酸塩であることが好ましい。あるいは、飽和脂肪酸および飽和脂肪酸塩の合計量が、脂肪酸類の全質量に対して90質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
なお、本発明の表面処理炭酸カルシウムフィラー内に存在する脂肪酸類の割合は、当該フィラーについてのガスクロマトグラフィーを測定することにより、例えば以下のようにして容易に測定することができる。
(1)まず、表面処理炭酸カルシウムフィラーとして含まれる表面処理炭酸カルシウム粒子の試料1.0mgと、エステル化剤としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(10質量%メタノール溶液)10μmLとをサンプルセルに秤取り、例えば熱分解装置(フロンティア・ラボ株式会社製マルチショット・パイロライザー MODEL EGA/PY-3030D)にて、300℃にて30秒間かけて熱分解して、気化される。
(2)次いで、気化させた成分を、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(株式会社島津製作所製GCMS-QP2010Ultra)を用いて、下記の条件にて脂肪酸類の組成分析を行うことができる:
(ガスクロマトグラフィーの条件)
気化室温度:250℃、
使用カラム:Rtx-5MSカラム(長さ30m、膜圧0.25μm、内径0.25mmD)、
カラム条件:昇温速度10℃/分、40~300℃、300℃ホールドタイム10分、
キャリアガス:He、
圧力:80KPa、
全流量:76.5mL/分、
カラム流量:1.5mL/分、
スプリット比:46。
(質量分析の条件)
イオン源温度:230℃、
インターフェイス温度:250℃、
溶媒溶出時間:1.5分。
上記表面処理剤に含有され得るリン酸類としては、例えば、無機リン酸類、および有機リン酸類、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
無機リン酸類の例としては、亜リン酸、ホスフィン酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、および縮合リン酸、これらの塩類(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。有機リン酸の例としては、ホスホン酸、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、これら塩類(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明においては、リン酸類はカルシウムイオンに対しキレート能を有する化合物であることが好ましい。
一般に、炭酸カルシウム粒子の水スラリー中に表面処理剤として、例えば脂肪酸のアルカリ金属塩を適当量溶解すると、その一部は既に炭酸カルシウム粒子から水スラリー中に溶出していたカルシウムイオンと反応し脂肪酸のカルシウム塩となって遊離する。この遊離した脂肪酸のカルシウム塩は、炭酸カルシウム粒子の表面処理に寄与しないため、炭酸カルシウムの表面処理が不十分となる。
これに対して、当該水スラリーに、リン酸類としてキレート能を有する化合物が添加されていると、これがカルシウムイオンを優先的に捕捉して上記遊離した脂肪酸のカルシウム塩の発生を阻止することができる。その結果、脂肪酸のアルカリ金属塩の大部分が炭酸カルシウム粒子の表面処理に寄与し、脂肪酸のアルカリ金属塩の添加量を抑えた状態で得られる表面処理炭酸カルシウム粒子の耐熱性の向上が期待できる。また、炭酸カルシウム粒子をより均一に表面処理することができるため、得られる表面処理炭酸カルシウム粒子の分散性の向上が期待できる。
また、上記のようにカルシウムイオンが捕捉されることで、脂肪酸のカルシウム塩の生成が妨げられるため、耐熱性に劣る脂肪酸や脂肪酸のアルカリ金属塩として残存する割合が上昇する、すなわちCa化率が低下することになるが、表面処理時あるいは乾燥時に十分な熱量あるいは時間を加え低下したCa化率を向上させることで、より耐熱性に優れた脂肪酸カルシウムの割合を増やすことができる。
このようなキレート能を有するリン酸類の例としては、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸ナトリウム等の無機縮合リン酸塩および酸性リン酸エステル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
ここで、リン酸類のキレート能は、Dow Chem.法によるキレート価(Chelation Value;C.V.)を用いて表現することができる。本発明において、リン酸類のキレート価は、好ましくは50mg CaCO/g≦キレート価であり、より好ましくは100mg CaCO/g≦キレート価≦500mg CaCO/gである。リン酸類のキレート価が50mg CaCOを下回ると、未改質の炭酸カルシウム粒子に対して均一に表面処理することが困難となることがある。リン酸類のキレート価が500mg CaCO/gを上回ると、未改質の炭酸カルシウム粒子を構成するカルシウムイオンを封鎖するためには少量で済む一方で、上記Pwに関係する表面処理炭酸カルシウム粒子に含まれるリン元素の含有量が不十分となり、所望の耐熱性を得ることが困難となることがある。
本発明では、得られる表面処理炭酸カルシウム粒子が有する効能を阻害しない範囲において、上記表面処理剤は他の表面処理剤と含有していてもよい。他の表面処理剤の例としては、芳香族スルフォン酸およびその塩またはエステル、樹脂酸およびその塩またはエステル;およびアルコール系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルフォン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩等の界面活性剤;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
(未改質の炭酸カルシウム粒子の表面処理)
上記表面処理剤を用いた未改質の炭酸カルシウム粒子の表面処理は、例えば以下のようにして行われる。
未改質の炭酸カルシウム粒子を含む水スラリーに、上記表面処理剤として脂肪酸類およびリン酸類、ならびに必要に応じて他の表面処理剤が添加される。このような方法は、一般に湿式処理と呼ばれるものであり、炭酸カルシウム粒子に対して表面処理の程度と製造効率とを適度に両立し得る点で好ましい。
脂肪酸類の使用量は、表面処理に供される前の、いわゆる未改質の炭酸カルシウム粒子のBET比表面積によって変動させることができる。例えば、未改質の炭酸カルシウム粒子のBET比表面積が大きいほど、脂肪酸類の使用量は増大させることが好ましい。脂肪酸類の使用量は、未改質の炭酸カルシウム粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。脂肪酸類の使用量が0.1質量部を下回ると、未改質の炭酸カルシウム粒子に対して脂肪酸類がより均一に分散することが困難となることがある。脂肪酸類の使用量が10質量部を上回ると、得られる表面処理炭酸カルシウムフィラーと樹脂とを混錬して得られる樹脂組成物を用いた成形品の表面にブリードを生じる、得られた成形品の強度が低下することに加え、上記Ca化率が50質量%を超えることが困難になる場合がある。
リン酸類の使用量は、未改質の炭酸カルシウム粒子のBET比表面積および/または量、リン酸類自体に含まれるリン元素の含有量、最終的に混錬する樹脂の種類や混練条件等によって変動するため特に限定されず、上記Pwの範囲を満足するようにリン酸類の使用量が当業者によって適宜選択され得る。
未改質の炭酸カルシウム粒子に対して、上記脂肪酸類およびリン酸類で処理する順序は特に限定されない。例えば、未改質の炭酸カルシウム粒子に対して、まずは脂肪酸類で処理した後にリン酸類で処理を行ってもよい。あるいは、未改質の炭酸カルシウム粒子に対して、まずはリン酸類で処理した後に脂肪酸類で処理を行ってもよい。あるいは、未改質の炭酸カルシウム粒子に対して、脂肪酸類およびリン酸類で一緒に、すなわち同時に、処理を行ってもよい。
本発明においては、得られる表面処理炭酸カルシウム粒子の表面状態をより均一にすることができ、かつ優れた分散性を付与することができるという理由から、未改質の炭酸カルシウム粒子に対して、脂肪酸類およびリン酸類を同時に添加して処理を行うことが好ましい。あるいは、水スラリー中のカルシウムイオンを捕捉させることにより、炭酸カルシウム粒子の表面処理状態を一層均一化することができ、かつ優れた分散性を付与することができるとう理由から、まずはリン酸類で処理した後に脂肪酸類で処理を行うことが最も好ましい。
水スラリー中で表面処理する場合の表面処理温度については、表面処理剤として用いる脂肪酸類の融点以上の温度で表面処理することが好ましい。
表面処理温度が脂肪酸類の融点を下回ると、炭酸カルシウム粒子に対する表面処理が不均一になるだけでなく、Ca化率が低下し過ぎることがある。他方、表面処理温度が脂肪酸類の融点を上回ることにより、表面処理の均一性や、Ca化率が上昇するだけでなく、表面処理を短時間で行うことが可能になる。
1つの実施形態では、この表面処理温度は、用いる脂肪酸類の融点の温度に対して、好ましくは0℃~70℃を加えた温度、より好ましくは10℃~60℃を加えた温度、さらにより好ましくは20℃~50℃を加えた温度である。
1つの実施形態では、この表面処理温度は、好ましくは20℃~98℃、より好ましくは40℃~90℃、さらにより好ましくは60℃~80℃である。
上記表面処理の後、得られた粒子は、例えば常法に従って、脱水、乾燥、粉砕等の任意操作を経て粉末化されてもよい。
なお、本発明においては、熱的におよび/または時間的に、上記表面処理が不十分であった場合でも、表面処理炭酸カルシウム粒子を含むスラリーを脱水した脱水ケーキを乾燥する際に、伝導伝熱乾燥機等の熱量を十分に付与できる乾燥機を用いることによっても、得られる表面処理炭酸カルシウム粒子の表面処理の均一性の向上や、Ca化率の上昇を図ることができる。
このようにして、脂肪酸類およびリン酸類で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、式(a)、(b)および(c)のすべて、ならびに必要に応じて(d)、(e)および(f)を満たす表面処理炭酸カルシウムフィラーを得ることができる。
2.樹脂組成物
次に、本発明の樹脂組成物について説明をする。
本発明の樹脂組成物は、樹脂と上記表面処理炭酸カルシウムフィラーとを含有する。
樹脂組成物に含まれる樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、およびポリビニルアルコール系樹脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、超高分子ポリエチレン(UHMWPE)などのポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンまたはプロピレンと他のモノマーの共重合体等が挙げられる。当該樹脂は、石油由来、植物由来(例えばバイオプラスチック)、またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。本発明においては、エンジニアリングプラスチック等に比べて成形温度が比較的低く、上記表面処理炭酸カルシウム粒子が耐熱性を発揮し得る温度において十分耐え得る耐熱性を有しているとの理由から、当該樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
樹脂組成物に含まれる表面処理炭酸カルシウムフィラーの含有量は、併用する樹脂の種類、得られる樹脂組成物の用途および所望される物性等によって変動するため、必ずしも限定されないが、例えば樹脂100質量部に対して0.05質量部~100質量部であり、好ましくは50質量部~100質量部であり、より好ましくは70質量部~100質量部である。樹脂組成物に含まれる表面処理炭酸カルシウムフィラーの含有量が100質量部を超えると(すなわち樹脂の含有量を上回ると)、樹脂との混練性の低下や樹脂劣化により色相(白色度)の低下が起こり易くなることがある。樹脂組成物に含まれる表面処理炭酸カルシウムフィラーの含有量が0.05質量部を下回ると、得られる樹脂組成物が十分な耐熱性を有さないことがある。
なお、本発明の樹脂組成物では、他の添加剤として、脂肪酸、脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ソルビタン脂肪酸エステル等の滑剤;可塑剤;熱安定剤、光安定剤等の安定剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;中和剤;防曇剤;アンチブロッキング剤;帯電防止剤;スリップ剤;および着色剤;ならびにそれらの組み合わせ:等を含有していてもよい。他の添加剤の含有量は特に限定されず、上記表面処理炭酸カルシウムフィラーによる効果を阻害しない範囲において、適切な量が当業者によって選択され得る。
樹脂および表面処理炭酸カルシウムフィラー、ならびに必要に応じて含まれるその他の添加剤は、例えば。当該技術分野において公知の手段(例えば、一軸または二軸押出機、ニーダー、またはバンバリーミキサー)を用いて加熱下で混錬され得る。
これにより本発明の樹脂組成物を得ることができる。
当該樹脂組成物は、例えばマスターバッチとしてペレット状に加工されてもよい。あるいは混錬した状態のまま、後述の成形品を得るために使用されてもよい。
3.成形品
本発明の成形品は、上記樹脂組成物から構成されている。
例えば上記にして混錬された樹脂組成物を、Tダイ等でシートの形態に作製した後、に一軸または二軸延伸することにより表面に微細な孔を有する多孔質フィルムを得ることができる。あるいは上記混練後にTダイ押出またはインフレーション成形等の公知の成形機を用いて製膜し、それらを酸処理することにより、内部に存在する上記表面処理炭酸カルシウムフィラーを溶解させて、表面に微細な孔を有する多孔質フィルムを得ることもできる。さらに必要に応じて、上記工程中のTダイ押出機を複数個重ねたり、あるいは延伸後の張り合わせを通じて多層フィルムの形態に成形されてもよく、また上記フィルムに印刷適性を付与する目的で、フィルム表面にプラズマ放電等の表面処理を施しインク受理層をコーティングしてもよい。
このように本発明の成形品は、好ましくはフィルムの形態を有する。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、特に断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
各実施例および比較例に記載の材料、表面処理炭酸カルシウムフィラー、およびペレットの評価を以下のようにして行った。
(未改質の炭酸カルシウムのBET比表面積)
各実施例および比較例で使用した未改質の炭酸カルシウム粒子0.2~0.3gを測定装置(株式会社マウンテック社製Macsorb HM model-1201)に配置し、前処理として窒素とヘリウムとの混合ガス雰囲気下で200℃にて10分間の加熱処理を行った後、液体窒素の環境下で低温低湿物理吸着を行うことにより、当該未改質の炭酸カルシウム粒子のBET比表面積(m/g)を測定した。
(1)表面処理炭酸カルシウムフィラーのBET比表面積(Sw)
各実施例および比較例で得られた表面処理炭酸カルシウムフィラー0.2~0.3gを測定装置(株式会社マウンテック社製Macsorb HM model-1201)に配置し、前処理として窒素とヘリウムとの混合ガス雰囲気下で200℃にて10分間の加熱処理を行った後、液体窒素の環境下で低温低湿物理吸着を行うことにより、当該フィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子のBET比表面積(m/g)を測定した。
(2)表面処理炭酸カルシウムフィラーの誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置で測定したリン元素の含有量(Pw)
るつぼに各実施例および比較例で得られた表面処理炭酸カルシウムフィラー1.0gを仕込み、電気炉で300℃にて3時間焼成した。焼成後、その混合物を含むビーカーに約60mLの蒸留水および1.38規定の硝酸(有害金属測定用硝酸(1.38)、富士フイルム和光純薬株式会社製)7.5mLを入れ、電気コンロで煮沸して徐冷した。100μgのイットリウムが入った100mLのメスフラスコに、上記徐冷後の混合物を添加し、さらに100mLまで蒸留水でメスアップした。次いで、5Cの濾紙で濾過し、得られた濾液からICP測定用の試料を調製した。その後、この試料を用いて、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製ICP発光分光分析装置SPS3500)により当該試料に含まれるリン元素の含有量(ppm)を測定した。
(3)表面処理炭酸カルシウムフィラーのCa化率
300mLの三角フラスコに、各実施例および比較例で得られた表面処理炭酸カルシウムフィラー5.0gおよび95容量%のエタノール80gを添加した。次に90℃以上のウォーターバスに三角フラスコを浸漬し、1時間還流させることにより当該フィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子に残存する表面処理剤を抽出した。
20℃になるまで十分冷却した後、三角フラスコ内の内容物を0.5μm以下のテフロン(登録商標)フィルターで吸引濾過することにより濾液を得た。この濾液を乾燥かつ定量済みの200mLビーカーに入れ、90℃以上のウォーターバス上で蒸発乾固させて溶剤を除去することにより、残渣を得、その質量を測定した。ここで、当該質量は、上記表面処理炭酸カルシウム粒子5.00g当たりの当該表面処理剤中の脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩の質量であるから、この値を1/5倍することにより、表面処理炭酸カルシウム粒子1.0g当たりの当該表面処理剤中の脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量を、質量%(X)として算出した。
なお、この含有量(X)は、脂肪酸のアルカリ金属塩等から由来するアルカリ金属を含む数値である。このため、脂肪酸および脂肪酸のアルカリ金属塩由来の脂肪酸の質量%を算出するために、原子吸光分析法により表面処理炭酸カルシウム粒子中に含まれるアルカリ金属の含有量(質量%;Y)を以下のようにして測定した。
るつぼに表面処理炭酸カルシウム粒子1.0gを秤量し、マッフル炉(増田理化工業株式会社製NMF-120)に入れ、300℃で2時間焼成した後、デシケータで常温まで冷却した。その後、200mLのビーカーに試料を入れ、蒸留水60mLを注いだ。次いで、1.38規定の硝酸(有害金属測定用硝酸(1.38)、富士フイルム和光純薬株式会社製)7.5mLを投入した後、時計皿でフタをし、電熱ヒーターで煮沸させた。これを常温で冷却させた後、100mLのメスフラスコに入れ、蒸留水で100mLにメスアップすることにより、測定試料を調製した。このようにして得られた測定試料を用いて、原子吸光分光光度計(株式会社島津製作所製AA-6700F)によりアルカリ金属元素の含有量(質量%;Y)を測定した。
この含有量X(質量%)、およびY(質量%)と、200℃~500℃までの炭酸カルシウム1g当たりの熱減量TG(質量%)から、表面処理炭酸カルシウムフィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子の総表面処理量(g)に対する脂肪酸カルシウムを構成する脂肪酸の質量(g)の百分率(すなわちCa化率)を以下の式により算出した:
Ca化率(質量%)={(Tg(質量%)-(X(質量%)-Y(質量%))}/TG(質量%)×100
なお、上記Ca化率の算出にあたり使用される200℃~500℃までの炭酸カルシウム1g当たりの熱減量TG(質量%)を、以下のようにして測定した。
白金製の試料パンに、各実施例および比較例で得られた表面処理炭酸カルシウムフィラー約30mgを秤取り、その後昇温速度30℃/分で200~500℃まで昇温した際の当該フィラーを構成する表面処理炭酸カルシウム粒子の熱減量を、示差熱分析装置(株式会社島津製作所製DTG-60A)を用い、表面処理炭酸カルシウム1g当りの熱減量TG(質量%)として測定した。
(4)表面処理炭酸カルシウムフィラーのD50、シャープネス指数((D90-D10)/D50)およびDa
100mLのビーカーに、各実施例および比較例で得られた表面処理炭酸カルシウムフィラー0.3gとメタノール50mLとを添加した。次いで、ビーカー内の内容物に対して、例えば株式会社日本精機製作所製超音波分散機US-300Tを用いて300μAで60秒間、超音波を照射して内容物を分散させて試料を得た。その後、レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製MT-3300EX II)を用いて試料中の表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布を測定した。得られた体積粒度分布の結果から、D50、D10、D90およびDa、ならびにそれを用いて算出されたシャープネス指数((D90-D10)/D50)の各値を得た。
(5)ペレットの熱酸化安定性
各実施例および比較例で得られた2度練りペレットから、200℃に調整した株式会社神藤金属工業所社製圧縮成形機SFA-37にて、5cm×5cm×厚み1mmの金型を用いて試験片を作製した。
この試験片を、日本工業規格JIS K7368(プラスチック-ポリプロピレンおよびプロピレン共重合体-空気中での熱酸化安定性の測定方法-オーブン法)に基づいて、140℃の強制通風式オーブンで試験片を空気中で加熱することにより劣化を促進させ、試験開始から、局部的なひび割れ、崩れおよび/または変色を目視観察できるまでに要した日数を記録し、下記の基準により評価した。
◎ :10日間が経過しても目立った変化がなかった。
○ :10日間経過後に変色が認められた。
△ :10日間経過後に、変色とひび割れが認められた。
× :5日間経過後に、すでに変色とひび割れが認められた。
(6)ペレットの耐熱性評価
各実施例および比較例で得られたペレットについて、140℃の強制通風式オーブンを用いて、各ペレットを10日間空気中で加熱して劣化を促進させた。得られた加熱劣化したペレット、および(加熱劣化させていない)初期状態のペレットについて、東洋精機製作所株式会社製MELT INDEXER F-F01を用いて、230℃でのメルトフローレート(MFR)値(g/10分)を測定した。さらに得られた結果から、以下の式にしたがってMFRの変化率(%)を算出した。
Figure 0007338929000001
(7)ペレットの分散性評価
目開き100μm、60μm、および400μmを有する3枚構成のストレーナーを装着した二軸混練機(東洋精機株式会社製2D25W)に、各実施例および比較例で得られたペレットを180℃にて150rpmかつ3kg/時のフィード量で混練押出して60分後の樹脂圧力の測定し、下記の基準により分散性の評価を行った。
◎:混練60分後の樹脂圧が、3MPa未満であった。
○:混練60分後の樹脂圧が、3MPa以上5MPa未満であった。
△:混練60分後の樹脂圧が、5MPa以上8MPa未満であった。
×:混練60分後経過前に、ストレーナーの目詰まりによりベントアップが発生した。
(実施例1-1:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E1)の作製)
BET比表面積8.0m/gの沈降製炭酸カルシウムを10質量%含有する水スラリーを調製し、このスラリーの温度を60℃に調整した。これに、炭酸カルシウム固形分に対して0.60質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製メタリン酸ナトリウム:キレート価125mg CaCO/g)を、10質量%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液水に溶解したものを添加し、さらに脂肪酸類として、炭酸カルシウム固形分に対して2.20質量%の日本油脂株式会社製ノンサールSK-1(飽和脂肪酸率100質量%)を、10質量%濃度になるように70℃の湯で溶解したものを添加した。
なお、上記で使用した日本油脂株式会社製ノンサールSK-1は、以下の成分組成を有するものであった(ミリスチン酸カリウム3質量%、パルミチン酸カリウム27質量%、ステアリン酸カリウム66質量%、およびその他4質量%)。
次いで、表面処理のため60℃にて一昼夜撹拌した後、フィルタープレスにて脱水し、瞬間乾燥機(ホソカワミクロン株式会社社製気流式乾燥機ドライマイスタDMR-1)を用いて乾燥し、解砕することにより、表面処理炭酸カルシウムフィラー(E1)を得た。得られたフィラー(E1)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-2:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E2)の作製)
実施例1-1で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し0.40質量%のウルトラリン酸ナトリウム(太平化学株式会社製:ウルトラポリン;キレート価406mg CaCO/g)を10%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥したこと以外は、実施例1-1と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E2)を得た。得られたフィラー(E2)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-3:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E3)の作製)
実施例1で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し0.25質量%のポリリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社社製トリポリリン酸ナトリウム;キレート価130mg CaCO/g)を10質量%の濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥したこと以外は、実施例1-1と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E3)を得た。得られたフィラー(E3)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-4:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E4)の作製)
実施例1-1で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し0.20質量%のピロリン酸カリウム(ラサ工業株式会社製:キレート価50mg CaCO/g)を10質量%の濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥したこと以外は、実施例1-1と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E4)を得た。得られたフィラー(E4)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-5:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E5)の作製)
実施例1-1で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し、純分として1.50質量%のオルトリン酸(ラサ工業株式会社社製、75%リン酸:キレート価0mg CaCO/g)を10質量%の濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、実施例1-1で使用した脂肪酸類の代わりに、脂肪酸類として炭酸カルシウム固形分に対して1.60質量%のミヨシ油脂株式会社製ラウリン酸50(飽和脂肪酸率84%)を、10%濃度になるように70℃の湯にて溶解し、当量の水酸化ナトリウムでケン化したもの用い、表面処理のために60℃にて4時間撹拌したこと、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥したこと以外は、実施例1-1と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E5)を得た。得られたフィラー(E5)の各物性値を表1および表3に示す。
なお、上記で使用したミヨシ油脂株式会社製ラウリン酸50は、以下の成分組成を有するものであった(ラウリン酸54質量%、ミリスチン酸17質量%、パルミチン酸10質量%、ステアリン酸2質量%、オレイン酸14質量%およびその他3質量%)。
(実施例1-6:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E6)の作製)
実施例1-1で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し1.80質量%の第一リン酸アルミニウム(太平化学株式会社製:キレート価0mg CaCO/g)を10質量%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、実施例1-1で使用した脂肪酸類の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対して1.60質量%の日本油脂株式会社製ラウリン酸NAAR-122(飽和脂肪酸率100%)を、10%濃度になるように70℃の湯にて溶解し、当量の水酸化ナトリウムでケン化したものを用い、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥したこと以外は、実施例1-1と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E6)を得た。得られたフィラー(E6)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-7:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E7)の作製)
実施例1-1で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し0.30質量%のニトリロトリスメチレンホスホン酸(キレスト株式会社製PH320:キレート価200mg CaCO/g)を10質量%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、実施例1-1で使用した脂肪酸類の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対して1.60質量%の日本油脂株式会社製ラウリン酸NAAR-122(飽和脂肪酸率100%)と、炭酸カルシウム固形分に対して0.03質量%の乳化剤(第一工業製薬株式会社製ハイテノールNF-08)とを、その合計が10質量%濃度になるように70℃の湯にて溶解させ、T.K.ロボミックス(ホモミキサーMARKII 特殊機化工業株式会社製)を用いて、10000rpmにて5分間乳化したものを用い、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥したこと以外は、実施例1-1と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E7)を得た。得られたフィラー(E7)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-8:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E8)の作製)
BET比表面積13.0m/gの沈降製炭酸カルシウムを10質量%含有する水スラリーを調製し、このスラリーの温度を60℃に調整した。これに、炭酸カルシウム固形分に対し1.00質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製メタリン酸ナトリウム:キレート価125mg CaCO/g)を、10質量%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を添加し、さらに、脂肪酸類として、炭酸カルシウム固形分に対して3.00%の日本油脂株式会社製ノンサールSK-1(飽和脂肪酸率100%)を、10%濃度になるように70℃の湯にて溶解したものを添加したこと以外は実施例1-1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムフィラー(E8)を得た。得られたフィラー(E8)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-9:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E9)の作製)
実施例1-8で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し1.00質量%のウルトラリン酸ナトリウム(太平化学株式会社製:ウルトラポリン;キレート価406mg CaCO/g)を、10%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、実施例1-8で使用した脂肪酸類の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対して2.20質量%の日本油脂株式会社製ラウリン酸NAAR-122(飽和脂肪酸率100%)を、10質量%濃度になるように70℃の湯にて溶解して当量の水酸化ナトリウムでケン化したもの用い、表面処理のため60℃にて4時間撹拌した後フィルタープレスにて脱水したこと、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥後したこと以外は実施例1-8と同様にして、表面処理炭酸カルシウムフィラー(E9)を得た。得られたフィラー(E9)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-10:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E10)の作製)
BET比表面積16.8m/gの沈降製炭酸カルシウムを10質量%含有する水スラリーを調製し、このスラリーの温度を60℃に調整した。これに、炭酸カルシウム固形分に対し1.20質量%のウルトラリン酸ナトリウム(太平化学株式会社製ウルトラポリン;キレート価406mg CaCO/g)を、10%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を添加し、さらに、脂肪酸塩として、炭酸カルシウム固形分に対して4.00質量%の日本油脂株式会社製ノンサールSK-1(飽和脂肪酸率100%)を、10%濃度になるように70℃の湯にて溶解したものを添加したこと以外は、実施例1-8と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E10)を得た。得られたフィラー(E10)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-11:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E11)の作製)
実施例1-10で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し1.20質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製メタリン酸ナトリウム:キレート価125mg CaCO/g)を、10%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、表面処理のため80℃にて6時間撹拌した後、フィルタープレスにて脱水したこと、かつ伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥したこと以外は、実施例1-10と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E11)を得た。得られたフィラー(E11)の各物性値を表1および表3に示す。
(実施例1-12:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E12)の作製)
実施例1-11で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、脂肪酸塩として、炭酸カルシウム固形分に対して4.00質量%の、下記組成に調製した混合脂肪酸塩B(飽和脂肪酸率92%)を、10%濃度になるように70℃の湯にて溶解したものを用い、瞬間乾燥機(ホソカワミクロン株式会社製気流式乾燥機ドライマイスタDMR-1)を使用したこと以外は、実施例1-11と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(E12)を得た。得られたフィラー(E12)の各物性値を表2および表4に示す。
なお、上記で使用した混合脂肪酸塩Bは、以下の成分組成を有するものであった(ラウリン酸ナトリウム10質量%、ミリスチン酸ナトリウム2質量%、パルミチン酸ナトリウム20質量%、ステアリン酸カリウム60質量%、およびオレイン酸ナトリウム8質量%)。
(比較例1-1:表面処理炭酸カルシウムフィラー(C1)の作製)
表面処理のため80℃にて30分間撹拌したこと以外は、実施例1-12と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(C1)を得た。得られたフィラー(C1)の各物性値を表2および表4に示す。
(比較例1-2:表面処理炭酸カルシウムフィラー(C2)の作製)
表面処理のため60℃にて4時間撹拌したこと以外は、実施例1-12と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(C2)を得た。得られたフィラー(C2)の各物性値を表2および表4に示す。
(比較例1-3:表面処理炭酸カルシウムフィラー(C3)の作製)
実施例1-11で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し3.60質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製メタリン酸ナトリウム:キレート価125mg CaCO/g)を10質量%の濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用いたこと以外は、実施例1-11と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(C3)を得た。得られたフィラー(C3)の各物性値を表2および表4に示す。
(比較例1-4:表面処理炭酸カルシウムフィラー(C4)の作製)
リン酸類の水溶液を添加しなかったこと以外は、実施例1-11と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(C4)を得た。得られたフィラー(C4)の各物性値を表2および表4に示す。
(比較例1-5:表面処理炭酸カルシウムフィラー(C5)の作製)
実施例1-11で使用したリン酸類の水溶液の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対し0.30質量%のニトリロトリスメチレンホスホン酸(キレスト株式会社製PH320:キレート価200mg CaCO/g)を10%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を用い、実施例1-11で使用した脂肪酸類の代わりに、炭酸カルシウム固形分に対して2.00質量%の、日本油脂株式会社製ステアリン酸さくら(飽和脂肪酸率100%)と、炭酸カルシウム固形分に対して0.03質量%の乳化剤(第一工業製薬株式会社製ハイテノールNF-08)とを、その合計が10質量%濃度になるように80℃の湯にて溶解させ、T.K.ロボミックス(特殊機化工業株式会社製ホモミキサーMARKII)を用いて、10000rpmにて5分間乳化したものを用い、かつ表面処理のため90℃にて一昼夜撹拌したこと以外は、実施例1-11と同様にして実施例1-11と同様にして表面処理炭酸カルシウムフィラー(C5)を得た。得られたフィラー(C5)の各物性値を表2および表4に示す。
なお、上記で使用した日本油脂株式会社製ステアリン酸さくらは、以下の成分組成を有するものであった(ミリスチン酸2質量%、パルミチン酸31質量%、ステアリン酸66質量%、およびその他1質量%)。
(実施例1-13:表面処理炭酸カルシウムフィラー(E13)の作製)
BET比表面積20.5m/gの沈降製炭酸カルシウムを10質量%含有する水スラリーを調製し、このスラリーの温度を60℃に調整した。これに、炭酸カルシウム固形分に対し3.00質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製メタリン酸ナトリウム:キレート価125mg CaCO/g)を、10質量%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を添加し、さらに、脂肪酸塩として、炭酸カルシウム固形分に対して5.00質量%の日本油脂株式会社製ノンサールSK-1(飽和脂肪酸率100%)を、10%濃度になるように70℃の湯にて溶解したものを添加した。次いで、これを表面処理のため60℃にて一昼夜撹拌した後、フィルタープレスにて脱水し、伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥し、解砕することにより、表面処理炭酸カルシウムフィラー(E13)を得た。得られたフィラー(E13)の各物性値を表2および表4に示す。
(比較例1-6:表面処理炭酸カルシウムフィラー(C6)の作製)
BET比表面積2.0m/gの重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製スーパー#2000)を、ヘンシェルミキサーで撹拌しながら、炭酸カルシウム固形分に対し0.20質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製メタリン酸ナトリウム:キレート価125mg CaCO/g)を、10%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を添加し、さらに、脂肪酸として、炭酸カルシウム固形分に対して1.00質量%の日本油脂株式会社製ステアリン酸さくら(飽和脂肪酸率100%)を添加した。次いで、これを表面処理のため110℃にて30分間撹拌して水分を蒸発させることにより、表面処理炭酸カルシウムフィラー(C6)を得た。得られたフィラー(C6)の各物性値を表2および表4に示す。
(比較例1-7:表面処理炭酸カルシウムフィラー(C7)の作製)
BET比表面積28.0m/gの沈降製炭酸カルシウムを10質量%含有する水スラリーを調製し、このスラリーの温度を60℃に調整した。これに、炭酸カルシウム固形分に対し1.20質量%のヘキサメタリン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製メタリン酸ナトリウム:キレート価125mg CaCO/g)を、10%濃度になるように溶解したリン酸類の水溶液を添加し、さらに、脂肪酸塩として、炭酸カルシウム固形分に対して7.00質量%の日本油脂株式会社製ノンサールSK-1(飽和脂肪酸率100%)を、10%濃度になるように70℃の湯にて溶解したものを添加した。これを表面処理のため60℃にて一昼夜撹拌した後、フィルタープレスにて脱水し、伝導伝熱乾燥機として栗本鐵工所株式会社製CDドライヤを用いて蒸気圧0.25MPaにて2時間乾燥し、解砕することにより、表面処理炭酸カルシウムフィラー(C7)を得た。得られたフィラー(C7)の各物性値を表2および表4に示す。
Figure 0007338929000002
Figure 0007338929000003
Figure 0007338929000004
Figure 0007338929000005
(実施例2-1~2-13および比較例2-1~2-7:2度練りペレット(NE1)~(NE13)および(NC1)~(NC7)の作製)
実施例1-1~1-13および比較例1-1~1-7でそれぞれ作製した表面処理炭酸カルシウムフィラー30質量部と、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP FB3B、MFR7.5)70質量部を混合して得られた樹脂混合物10kgを、目開き100μmストレーナーを装着した二軸混練機(東洋精機株式会社製2D25W)に仕込み、180℃にて150rpmかつ3kg/時のフィード量で混練押出した後、ペレタイザーにてカットすることにより粗ペレットをそれぞれ作製した。さらに、これらの粗ペレットを60℃にて一昼夜乾燥した後、同様の条件にて混練乾燥することにより、2度練りペレット(NE1)~(NE13)および(NC1)~(NC7)をそれぞれ得た。
得られた2度練りペレット(NE1)~(NE13)および(NC1)~(NC7)の評価結果を表5および6に示す。
Figure 0007338929000006
Figure 0007338929000007
表5および表6に示すように、実施例2-1~2-13で作製した2度練りペレット(NE1)~(NE13)は、比較例2-1~2-7の2度練りペレット(NC1)~(NC7)と比較して、熱酸化安定性が同等またはそれ以上であり、耐熱性試験による変化率を比較的低く抑えることができた。また、分散性評価の結果についても、実施例2-1~2-13のペレット(NE1)~(NE13)は、比較例2-1~2-7のペレット(NC1)~(NC7)と同等またはそれ以上であった。
このことから、実施例2-1~2-13で作製した2度練りペレット(NE1)~(NE13)で使用した実施例1-1~1-13で作製した表面処理炭酸カルシウムフィラー(E1)~(E13)はいずれも、比較例2-1~2-7の2度練りペレット(NC1)~(NC7)で使用した比較例2-1~2-7の表面処理炭酸カルシウムフィラー(C1)~(C7)よりも安定性および耐熱性に優れたものであり、樹脂中に十分かつ均一に分散する性質を有していたことがわかる。
本発明によれば、例えば、樹脂成形分野、建築・住宅分野、塗料分野、ならびにこれらに関連する広範な技術分野において有用である。

Claims (8)

  1. 脂肪酸類およびリン酸類で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、以下の式(a)、(b)および(c)を満足する、表面処理炭酸カルシウムフィラー:
    (a)3≦Sw≦20(m/g)
    (b)300≦Pw≦5000(ppm)
    (c)50≦Ca化率≦95(質量%)
    該Swは、該表面処理炭酸カルシウム粒子のBET比表面積(m/g)であり、
    該Pwは、該表面処理炭酸カルシウム粒子における誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置で測定したリン元素の含有量(ppm)であり、
    該Ca化率は、該表面処理炭酸カルシウム粒子の総表面処理量(g)に対する脂肪酸カルシウムを構成する脂肪酸の質量(g)の百分率である。
  2. さらに以下の式(d)、(e)および(f)を満足する、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウムフィラー:
    (d)0.1≦D50≦1.5(μm)
    (e)0.9≦(D90-D10)/D50≦2.0
    (f)Da≦5.0(μm)
    D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した前記表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布において、小粒子側から累積した50%直径(μm)であり、
    D90は、該レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した該表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布において、小粒子側から累積した90%直径(μm)であり、
    D10は、該レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した該表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布において、小粒子側から累積した10%直径(μm)であり、
    Daは、該レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した該表面処理炭酸カルシウム粒子の体積粒度分布における最大粒子径(μm)である。
  3. 前記脂肪酸類が、飽和脂肪酸および飽和脂肪酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウムフィラー。
  4. ポリオレフィン系樹脂組成物を構成するために用いられる、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウムフィラー。
  5. 樹脂と、請求項1から3のいずれかに記載の表面処理炭酸カルシウムフィラーとを含有する、樹脂組成物。
  6. 前記樹脂がポリオレフィン系樹脂である、請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項5に記載の樹脂組成物から構成されている、成形品。
  8. フィルムの形態を有する、請求項7に記載の成形品。
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