以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。なお、画像形成装置としては、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機などであってもよい。
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部である4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体103に対して着脱可能に構成され、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5と、を備える。
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置9と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10と、を備える。
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13と、を有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
次に、図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
続いて、定着装置9の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着部材としての無端状のベルト部材から成る定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触してニップ部Nを形成する対向部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱装置19と、を備えている。また、加熱装置19は、加熱部材としての面状のヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を長手方向に渡って補強する補強部材としてのステー24等で構成されている。
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられ、定着ベルト20の内周面に接触するように配置されている。ヒータ22は、定着ベルト20に対して非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、ヒータ22を定着ベルト20に対して直接接触させる方が定着ベルト20への熱伝達効率がよくなる。また、ヒータ22を定着ベルト20の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト20の外周面がヒータ22との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ22は定着ベルト20の内周面に接触している方がよい。ヒータ22は、基材層50と、基材層50のニップ部N側に順次積層される、第1絶縁層51、発熱部60を有する導体層52、第2絶縁層53と、基材層50の反対側に積層された第3絶縁層54と、で構成されている。
ヒータホルダ23及びステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側壁部に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23のヒータ22側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ22及びヒータホルダ23は加圧ローラ21の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
加圧ローラ21と定着ベルト20は、付勢部材としてのバネによって互いに圧接されている。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ21は、画像形成装置本体103に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。一方、定着ベルト20は、加圧ローラ21の回転に伴って従動回転するように構成されている。回転時、定着ベルト20はヒータ22に対して摺動する。定着ベルト20の摺動性を高めるために、ヒータ22と定着ベルト20との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。また、ヒータ22に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
図3は、定着装置の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
図3及び図4に示すように、定着装置9の装置フレーム40は、一対の側壁部28と前壁部27とから成る第1装置フレーム25と、後壁部29から成る第2装置フレーム26と、を備えている。一対の側壁部28は、定着ベルト20の幅方向(以下、「ベルト幅方向」という。)の一端部側と他端部側とに配置されており、両側壁部28によって、加圧ローラ21及び加熱装置19の両端部側が支持される。各側壁部28には、複数の係合突起28aが設けられ、各係合突起28aが後壁部29に設けられた係合孔29aに係合することで、第1装置フレーム25と第2装置フレーム26とが組み付けられる。
また、各側壁部28は、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、後壁部29側で開口し、これとは反対側では開口しない突き当て部となっている。この突き当て部側の端部には、加圧ローラ21の回転軸を支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21は、その回転軸の両端部がそれぞれ軸受30に装着されることで、両側壁部28によって回転可能に支持される。
また、加圧ローラ21の回転軸の一端部側には、駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が設けられている。駆動伝達ギヤ31は、加圧ローラ21が両側壁部28に支持された状態で、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体103に搭載された際、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体103に設けられているギヤと連結し、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。
加熱装置19の長手方向の両端部には、定着ベルト20などを支持する一対の支持部材32が設けられている。この支持部材32は、加熱装置19の装置フレームであると共に、定着装置9の装置フレーム40の一部でもある。定着ベルト20は、支持部材32によって、非回転状態では基本的に周方向の張力が付与されない状態、いわゆるフリーベルト方式で支持されている。また、各支持部材32には、ガイド溝32aが設けられており、このガイド溝32aを側壁部28の挿通溝28bの縁に沿って進入させることで、側壁部28に対して組み付けられる。
また、各支持部材32と後壁部29との間には、付勢部材としての一対のバネ33が設けられている。各バネ33によって支持部材32が加圧ローラ21側に付勢されることで、定着ベルト20が加圧ローラ21に押し当てられ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。
図5は、加熱装置19の斜視図、図6は、その分解斜視図である。
図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23の定着ベルト20側(ニップ部N側)の面には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。ヒータ22は、その収容凹部23a内に収容された状態で、後述のコネクタによってヒータホルダ23と一緒に挟まれることで保持される。
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内周に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触してベルト幅方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の両端部側が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。
図7は、ヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
なお、以下の説明において、ヒータ22に対する、定着ベルト20側(ニップ部N側)を「表側」と称し、ヒータホルダ23側を「裏側」と称して説明する。
図7及び図8に示すように、ヒータ22は、板状の基材層50と、基材層50の表側に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51の表側に設けられた導体層52と、導体層52の表側を被覆する第2絶縁層53と、基材層50の裏側に設けられた第3絶縁層54との、複数の構成層が積層されて構成されている。導体層52は、面状の抵抗発熱体で構成された一対の発熱部60と、各発熱部60の長手方向一端部側に設けられた一対の電極部61と、電極部61と発熱部60との間及び発熱部60同士を接続する複数の給電線62とで構成されている。また、図7に示すように、各電極部61は、後述のコネクタとの接続を確保するため、少なくとも一部が第2絶縁層53に被覆されておらず露出した状態となっている。
各発熱部60は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材層50に塗工し、その後、当該基材層50を焼成することによって形成することができる。発熱部60の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。本実施形態では、各発熱部60が互いに平行に基材層50の長手方向に伸びるように設けられている。各発熱部60の一端部(図7における右端部)同士は、給電線62を介して互いに電気的に接続され、各発熱部60の他端部(図7における左端部)は、それぞれ別の給電線62を介して電極部61に対して電気的に接続されている。給電線62は、発熱部60よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。給電線62や電極部61の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって給電線62や電極部61が形成されている。
基材層50は、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成されている。また、基材層50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材層50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材層50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
各絶縁層51,53,54は、耐熱性ガラスで構成されている。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミド(PI)等を用いることも可能である。
また、図9に示すように、基材層50の裏側の面に基材層50よりも熱伝導率が高い高熱伝導層55を設けてもよい。この場合、ヒータ22の熱が高熱伝導層55を介して分散することで、ヒータ22の温度ムラを抑制することができる。また、効果的に温度ムラを抑制できるようにするため、高熱伝導層55は、発熱部60が設けられている領域全体(長手方向及び短手方向)に渡って配置されていることが望ましい。
本実施形態では、発熱部60や電極部61及び給電線62に銀やパラジウムなどの合金を用い、PTC特性を有するものとした。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部60とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。TCR係数は、25度と125度とで抵抗値を測定することにより算出することができる。例えば、100度温度上昇して抵抗値が10%上昇していれば、TCR係数は1000ppm/度である。
また、本実施形態では、発熱部60の長さ(長手方向の幅)を用紙幅よりも長くしている。このようにすることで、立ち上げ直後に、用紙幅方向の端部付近での温度低下による定着不良の発生を防止できる。反対に、発熱部60の長さを長くしすぎると、連続通紙時の非通紙領域における過昇温が発生する虞があるので、発熱部60の長さは適切に設定する必要がある。具体的には、本実施形態において、通紙可能な最大用紙サイズ(最大記録媒体通過幅)のレターサイズ216mm幅に対して、発熱部60は幅方向の片側で0.5mm~7mm大きい範囲(発熱長217mm~230mm)に設定されることが望ましい。さらに望ましくは、最大用紙サイズに対して、発熱部60が幅方向の片側で1mm~5mm大きい範囲(発熱長219mm~226mm)に設定されるのがよい。本実施形態では、発熱部60の長さを221mmとしている。
図10は、ヒータ22及びヒータホルダ23にコネクタ70を装着した状態を示す斜視図である。
図10に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に固定された板バネのコンタクト端子72と、を有している。コンタクト端子72はヒータ22の各電極部61に接触する一対の接点部72aを有する。また、コネクタ70(コンタクト端子72)には、給電用のハーネス73が接続されている。
図10に示すように、コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側とから一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、コンタクト端子72の各接点部72aがヒータ22の電極部61に対して弾性的に接触(圧接)することで、コネクタ70を介して発熱部60と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続され、電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。
ところで、ヒータ22は、発熱部60の発熱により温度上昇することで、熱膨張が生じる。このような温度変化に伴うヒータ22の伸縮は、特にヒータ22の長手方向において顕著となる傾向にある。そのため、ヒータ22が収容されるヒータホルダ23の収容凹部23aは、ヒータ22が温度変化しても長手方向に自由に伸縮できるように、予めヒータ22よりも長手方向に大きく形成し、長手方向の隙間S(図22参照)を確保しておく必要がある。
しかしながら、ヒータ22と収容凹部23aとの間に長手方向の隙間Sがあると、ヒータ22が熱膨張していない場合に収容凹部23a内でのヒータ22のがたつきが発生する。そして、これが原因で、電極部61とコネクタ70(コンタクト端子72)との接触位置がずれて摩耗や接触不良が起きる虞がある。また、ヒータ22の発熱領域が長手方向に変化することで定着品質が低下する懸念もある。
特に、加工性や低コスト化などの観点から、基材層50の材料としてセラミックよりも安価な金属材料を用いた場合は、温度変化に伴うヒータ22の長手方向の伸縮量はより一層大きくなる傾向にあるため、ヒータ22と収容凹部23aとの間の長手方向の隙間Sを大きく確保する必要が生じる。従って、この場合は、収容凹部23a内でのヒータ22のがたつきがより大きくなってしまう。
さらに、本実施形態のように、発熱部60の長さK(図22参照)が最大用紙サイズWmaxよりも長く設定されている場合は、非通紙領域での温度上昇が顕著になるため、その部分での熱膨張が大きくなる傾向にある。また、発熱部60がPTC特性を有する場合は、非通紙領域で温度上昇すると、その部分の抵抗値が上昇し、通紙領域内に比べて発熱量が多くなるので、非通紙領域での熱膨張が促進される。これらの場合、上述のヒータ22のがたつきはより深刻なものとなる。なお、PTC特性に起因する熱膨張の事象は、図7に示すような2つの発熱部60同士が直列に接続されているパターンに限らず、例えば図11に示すような発熱部60同士が並列に接続されているパターンにおいても、少なくとも長手方向に電流が流れる成分Ixを有する場合、同様に発生する。すなわち、図11の一点鎖線で囲まれた拡大図に示すように、1つの発熱部60の一端部から他端部の間で用紙Pの幅方向端部hが通過するように搬送されると、当該発熱部60のうち、用紙Pが通過しない高温の非通紙領域60aから用紙Pが通過する低温の通紙領域60bへ電流が流れるため(直列の場合と同様になるため)、非通紙領域60aの発熱量が多くなり、熱膨張が促進されることになる。
そのため、本実施形態においては、ヒータ22が収容凹部23a内でがたつかないように、ヒータ22を長手方向に位置決めするようにしている。以下、ヒータ22とヒータホルダ23との位置決め構造について説明する。
[ヒータとヒータホルダとの位置決め構造]
図5及び図6に示すように、ヒータ22の長手方向一端部側には、位置決め部としての位置決め孔22aが設けられている。本実施形態では、位置決め孔22aが、ヒータ22の長手方向に対して交差する方向(短手方向)に窪むように形成された凹部で構成されている。一方、ヒータホルダ23の収容凹部23aには、位置決め孔22aと嵌合する位置決め部としての位置決め突起23bが設けられている。ヒータ22を収容凹部23a内に収容する際、位置決め孔22aを位置決め突起23bに対して嵌合させることで、ヒータ22をヒータホルダ23に対して長手方向に位置決めすることができる。これにより、収容凹部23a内でのヒータ22の長手方向のがたつきを防止できるようになる。
なお、ヒータ22及びヒータホルダ23において、それぞれの位置決め部(位置決め孔22a及び位置決め突起23b)が設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。このようにすることで、温度変化に伴うヒータ22の長手方向に伸縮が拘束されないようにしている。
上述の位置決め部を有するヒータ及びヒータホルダの効果を確認する試験を行った。試験では、位置決め部を有するヒータ及びヒータホルダと、位置決め部を有しないヒータ及びヒータホルダとを用意し、それぞれを同じ定着装置及び同じ画像形成装置に搭載して、レターサイズの普通紙を縦方向に、1分当たりの出力枚数50枚(50ppm)で、100枚通紙した。
その結果、位置決め部を有しない例では、通紙開始後2枚目で用紙の幅方向一端部側に定着不良が生じ、50枚目で定着ベルトの離型層(PFA層)に剥離が生じた。これは、図12に示すように、ヒータ22が正規の位置(点線で示す位置)より左側に位置ずれした結果、ヒータ22の発熱分布も左側にずれて温度ムラが発生したためと考えられる。すなわち、ベルト幅方向の右側では、定着ベルトの温度(実線)が本来の温度(点線)に比べて低い温度となったため、用紙の右端部側で定着不良が発生したものと考えられる。一方、ベルト幅方向の左側では、反対に定着ベルトの温度上昇が過剰になってしまい、定着ベルトの表層が剥離したものと考えられる。
これに対して、位置決め部を有する例においては、定着不良、定着ベルトの損傷(表層剥離)はいずれも生じなかった。従って、位置決め部を有することで、ヒータホルダに対するヒータの位置精度が向上し、定着不良やベルト損傷が生じるような温度分布ムラを回避できることが確認できた。
また、図7に示すように、本実施形態では、位置決め孔22aがヒータ22の長手方向における電極部61側に設けられているため、電極部61側を基準にヒータ22の位置決めがなされる。従って、ヒータ22が熱膨張しても、電極部61の位置はヒータ22の長手方向に変化しにくいので、電極部61とコネクタ70とのずれが効果的に抑制され、摩耗や接触不良の発生を防止できる。
また、図13に示す例のように、ヒータ22の長手方向の両端部側にそれぞれ電極部61があり、一端部側と他端部側とで電極部61の数が異なる場合は、できるだけ多くの電極部61とコネクタ70とのずれを抑制するために、電極部61の数の多い側に位置決め孔22aを設けるとよい。
また、図14に示す例のように、ヒータ22の一端部側と他端部側とでヒータ22の長手方向における電極部61の幅が異なる場合は(L1<L2)、短い方の電極部61側(L1側)に位置決め孔22aを設けるのがよい。このようにすることで、幅の小さい電極部61とコネクタ70とのずれを抑制することができ、導通性を確保することができる。別の見方をすると、位置決め孔22aが設けられた側では、電極部61を長手方向に短くすることができるので、小型化及び低コスト化を図れる。
また、図7に示すように、本実施形態では、位置決め孔22aが、ヒータ22の長手方向における給電線62の箇所に対応して設けられている。給電線62以外の箇所、例えば、発熱部60や電極部61の箇所に対して位置決め孔22aを設けることも可能であるが、その場合、ヒータ22(基材層50)が短手方向(図7における上下方向)に大きくなる可能性がある。発熱部60では、用紙に対して十分な熱を供給するために短手方向に所定以上の幅(例えば5mm以上)を確保する必要があり、電極部61も、コネクタ70との位置ずれを考慮して短手方向に所定以上の幅(例えば5mm以上)を確保しければならない。一方、給電線62にはこのような事情がないため、通電可能であれば短手方向の幅は比較的小さくすることが可能である。このため、ある程度設計自由度の高い給電線62の箇所に対応して位置決め孔22aを設けることで、ヒータ22の短手方向の大型化を回避することが可能となる。
図15は、位置決め孔22a及び位置決め突起23bを拡大して示す図である。図15において、上側がヒータ22の表側、下側がヒータ22の裏側である。
図15に示すように、位置決め突起23bの根元部には、隅曲面部23cが形成されている場合がある。このような隅曲面部23cが存在する場合、位置決め突起23bを位置決め孔22aに嵌合すると、図15に示すように、隅曲面部23cの箇所では位置決め突起23bの幅が広がっているため、位置決め孔22aに対して位置決め突起23bを完全に挿入できずに、ヒータ22の裏面と収容凹部23aの底面との間に隙間が生じる。その結果、ヒータ22が収容凹部23aの底面から浮いてしまい、ヒータ22を安定して保持することができなくなる。
このようなヒータ22の浮きを抑制するため、図16に示すように、位置決め孔22aにおける位置決め突起23bの根元部が挿入される開口部側の箇所を、幅広に形成してもよい。図16に示す例では、裏面側の第3絶縁層54の開口幅を、基材層50の開口幅よりも、幅方向の片側で(幅α)0.1mm以上5mm以下の範囲で大きく形成している。これにより、位置決め突起23bの根元部(隅曲面部23c)が位置決め孔22a内に完全に挿入されるようになり、収容凹部23aの底面に対するヒータ22の浮きを抑制することができるようになる。
本実施形態では、位置決め部として、ヒータ22に位置決め孔22aを設け、ヒータホルダ23に位置決め突起23bを設けているが、これとは反対に、図17に示すように、ヒータ22に位置決め突起22bを設け、ヒータホルダ23に位置決め孔23dを設けることでも、ヒータ22とヒータホルダ23との長手方向の位置決めを行うことが可能である。しかしながら、この場合は、ヒータ22に位置決め突起23bを設ける分、ヒータ22の外形が大きくなるため、小型化に不利となる。また、ヒータ22を金属板などの板状の部材から切り出す場合、ヒータ22に突起を設けると材料を余分に切り出さなければならず、歩留まりが悪くなるため、製造コストも高くなってしまう。従って、小型化や低コスト化の観点からすれば、ヒータ22の外形が大きくならないように、ヒータ22に設けられる位置決め部は位置決め孔22aであることが好ましい。
また、位置決め孔22aとしては、上述の凹部に限らず、図18に示すような貫通孔であってもよい。この貫通孔は、ヒータ22の表側から裏側へ厚さ方向に貫通し、開口部がヒータ22の表側の面と裏側の面にのみに形成されている。すなわち、貫通孔は、上述の凹部とは異なり、ヒータ22の側面部(ヒータ22の表側の面又は裏側の面とは交差する面)には開口していない。このような貫通孔で位置決め孔22aを構成することで、ヒータ22の外形(側面部)を凹凸の無い矩形に形成することができる。これにより、ヒータ22の製造コストを低減できるようになる。
上述のように、温度変化に伴うヒータ22の伸縮は、特にヒータ22の長手方向において顕著となる傾向にあるが、短手方向においてもヒータ22の伸縮は発生する。そのため、短手方向においても、ヒータ22と収容凹部23aとの間には隙間が介在するように構成されている。従って、ヒータ22を収容凹部23aに収容したときは、短手方向に若干のガタがある。このように、ヒータ22を収容凹部23aに収容した時点では、短手方向のガタがあるが、定着ベルト20が回転した際は、その回転力によってヒータ22の短手方向の位置決めがなされる。すなわち、図19に示すように、定着ベルト20が回転すると、その回転力によってヒータ22が定着ベルト20の回転方向Q(以下、「ベルト回転方向」という。)の下流側へ押し動かされるので、ヒータ22のベルト回転方向下流側の側面部22xがこれに対向する収容凹部23aの側面部23xに突き当たることで、ヒータ22の短手方向の位置決めがなされる。
ここで、本実施形態では、図20に示すように、ヒータ22の位置決め孔22a及びヒータホルダ23の位置決め突起23bは、ベルト回転方向上流側(図の下側)の側面部22y,23yに設けられている。このため、本実施形態では、ベルト回転方向下流側(図の上側)の側面部22x,23xを、凹凸の無い直線状の平面に形成することができる。これにより、定着ベルト20が回転した際のヒータ22の短手方向の位置決めを、凹凸の無い側面部22x,23x同士で行うことができ、短手方向の位置精度が向上する。また、図18に示す例のように、位置決め孔22aを貫通孔で構成した場合も、同様にベルト回転方向下流側の側面部22x,23xを、凹凸の無い直線状の平面に形成することができる。要するに、ヒータ22の短手方向の位置精度を高めるには、位置決め部をヒータ22及びヒータホルダ23のベルト回転方向下流側の側面部22x,23x以外の部分に設けるとよい。
また、図21に示す例のように、反対に、位置決め孔22a及び位置決め突起23bが、ベルト回転方向下流側の側面部22x,23xに設けられている場合は、定着ベルト20の回転によって、位置決め孔22aと位置決め突起23bとの嵌合を確実に行わせることが可能である。
次に、ヒータホルダ23と定着装置本体(装置フレーム40)との位置決め構造について説明する。
[ヒータホルダと定着装置本体との位置決め構造]
図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向一端部側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5及び図6の左側に示される支持部材32の嵌合部32eが嵌合することで、ヒータホルダ23と支持部材32との長手方向の位置決めがなされる。なお、本実施形態とは反対に、支持部材32に位置決め凹部が設けられ、ヒータホルダ23にその位置決め凹部と嵌合する凸状の嵌合部が設けられていてもよい。一方、図5及び図6の右側に示される支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。これにより、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
また、図4に示すように、支持部材32は、そのガイド溝32aを側壁部28の挿通溝28bに沿って進入させることで、両側壁部28に対して組み付けられる。図4に示す2つの支持部材32のうち、ヒータホルダ23に対して長手方向の位置決めがなされる支持部材32は、奥側の支持部材32である。この奥側の支持部材32が側壁部28に対して組み付けられることで、側壁部28に対するヒータホルダ23の長手方向の位置決めがなされる。このように、側壁部28及び支持部材32は、ヒータホルダ23の長手方向の位置決めを行う定着装置本体の位置決め部として機能する。
ステー24は、支持部材32に対して長手方向の位置決めはされない。図6に示すように、ステー24は、その両端部側に、各支持部材32に対する長手方向の移動(脱落)を規制する段差部24aが設けられているが、各段差部24aは各支持部材32の少なくとも一方に対して長手方向の隙間を介して配置される。すなわち、ステー24は、温度変化に伴う長手方向の伸縮が拘束されないように、両方の支持部材32に対して長手方向にガタを有するように組み付けられており、支持部材32の一方に対して位置決めされるようには構成されていない。
続いて、定着装置本体(装置フレーム40)と画像形成装置本体103との位置決め構造について説明する。
[定着装置本体と画像形成装置本体との位置決め構造]
図4に示すように、第2装置フレーム26を構成する後壁部29の長手方向の一端部側には、画像形成装置本体103に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。定着装置本体を画像形成装置本体103に取り付ける際、画像形成装置本体103に設けられた位置決め部としての突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体103に対する定着装置本体の長手方向(ベルト幅方向)の位置決めがなされる。なお、本実施形態とは反対に、定着装置本体に位置決め部としての突起が設けられ、画像形成装置本体103にその突起が嵌合する孔部が設けられていてもよい。さらに、位置決め部としての孔部は、貫通孔であってもよいし、底部を有する凹部であってもよい。また、後壁部29の孔部29bが設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。これにより、温度変化に伴う定着装置本体の長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
以上のように、本実施形態においては、ヒータとヒータホルダとの間、ヒータホルダと定着装置本体との間、及び定着装置本体と画像形成装置本体との間のそれぞれにおいて、長手方向の位置決めがなされる。以下、これら位置決め部同士の位置関係について説明する。また、以下の説明において、ヒータとヒータホルダとの位置決め部を「第1の位置決め部」、ヒータホルダと定着装置本体との位置決め部を「第2の位置決め部」、定着装置本体と画像形成装置本体との位置決め部を「第3の位置決め部」と、称することにする。
[位置決め部同士の位置関係]
図22は、定着装置9を分解した模式図である。なお、図22において、定着ベルト20は図示省略している。
図22に示すように、第1の位置決め部A(位置決め孔22a及び位置決め突起23b)と、第2の位置決め部B(位置決め凹部23e及び嵌合部32e)と、第3の位置決め部C(孔部29b及び突起101)は、いずれもヒータ22の長手方向における発熱部60の中央部Mを基準に同じ側(図22では左側)に設けられている。このように、各位置決め部A,B,Cが全て同じ側に設けられていることで、ヒータ22やヒータホルダ23、定着装置本体(装置フレーム40)の相対的な位置精度が向上する。すなわち、ヒータ22やヒータホルダ23、定着装置本体が熱膨張しても、これらは同じ端部側(位置決めされている端部側)が基準となって伸縮するため、基準となる端部側での相対的な位置ずれを抑制することができる。特に、本実施形態では、ヒータ22の長手方向における、第1の位置決め部Aの位置と第2の位置決め部Bの位置とが同じ位置(長手方向おいて重なる位置)となっていることで、図22における、左側の側壁部28に対するヒータ22及びヒータホルダ23の位置精度が向上する。従って、位置決めされる端部側において、用紙に対する発熱部60の位置精度を高めることができ、定着性を向上させることができる。
また、図22に示すように、定着ベルトの温度を検知する温度センサとしてのサーミスタ34も、ヒータ22の長手方向における発熱部60の中央部Mを基準に各位置決め部A,B,Cと同じ側に設けることで、ヒータ22に対するサーミスタ34の位置精度も向上させることができる。これにより、サーミスタ34の検知結果に基づく定着ベルト20の温度制御を高精度に行うことができるようになる。なお、定着ベルトの温度を検知する温度センサは、接触式あるいは非接触式のいずれであってもよい。また、定着ベルトの温度を検知する代わりに、加圧ローラ21の温度を検知する温度センサを用いることも可能である。温度センサをヒータ22の裏側の面に接触又は近接させて配置する場合は、本実施形態のように、基材層50の裏側の面に絶縁層(第3絶縁層54)を設けることが望ましい。
また、図23に示すように、異なる幅サイズの用紙P1,P2,P3がそれぞれの幅方向の一端部(図の左端部側)を位置決め基準Gとして揃えて供給される場合は、用紙の位置決め基準Gも、上記発熱部60の中央部Mを基準に各位置決め部A,B,Cと同じ側に設けられていることが望ましい。これにより、ヒータ22に対する用紙の位置精度が向上し、定着品質を向上させることができる。
本実施形態では、各位置決め部A,B,Cの全てを同じ側に設けているが、これらのうちのいずれか2つのみを同じ側に設けることでも、位置精度を向上させることが可能である。例えば、第1の位置決め部Aと第2の位置決め部Bのみ、あるいは、第1の位置決め部Aと第3の位置決め部Cのみを、発熱部60の中央部Mを基準に同じ側に配置してもよい。
続いて、第1の位置決め部Aと加圧ローラ21の駆動伝達ギヤ31との位置関係について説明する。
[第1の位置決め部と駆動伝達ギヤとの位置関係]
図22に示すように、本実施形態では、駆動伝達ギヤ31に対するヒータ22やヒータホルダ23の干渉を回避するため、第1の位置決め部Aと駆動伝達ギヤ31とを、発熱部60の中央部Mを基準に互いに反対側に設けている。これに対して、第1の位置決め部Aと駆動伝達ギヤ31とを同じ側に設けると、ヒータ22やヒータホルダ23が駆動伝達ギヤ31と干渉する虞がある。すなわち、ヒータ22及びヒータホルダ23に位置決め部Aを設けると、第1の位置決め部Aの設置スペース分、ヒータ22及びヒータホルダ23が長くなるので、それぞれの端部が駆動伝達ギヤ31の位置まで伸ばされると、駆動伝達ギヤ31と干渉する問題が生じる。
また、駆動伝達ギヤ31は、その径が小さいと、画像形成装置本体103側のギヤから受ける力が大きくなり、加圧ローラ21の回転軸が撓む虞があるため、駆動伝達ギヤ31の径は大きい方が望ましい。しかしながら、駆動伝達ギヤ31の径を大きくすると、ますますヒータ22やヒータホルダ23との干渉が生じやすくなる。さらに、本実施形態のように、ヒータ22がヒータホルダ23の加圧ローラ21側(ニップ部N側)の面に保持されている場合は(図2参照)、ヒータ22と駆動伝達ギヤ31と距離が近くなるため、これらの干渉は一層生じやすくなる。
このような干渉を回避する対策として、例えば、加圧ローラ21の軸を伸ばし、駆動伝達ギヤ31をヒータ22やヒータホルダ23と干渉しない位置にずらして配置する方法が考えられる。しかしながら、加圧ローラ21の軸を伸ばすと、加圧ローラ21と定着ベルト20との間での加圧力に対する剛性(曲げ強度)が低下し、撓みが生じやすくなる。そのため、加圧ローラ21の剛性を確保できるように回転軸を太く形成する必要が生じ、重量が増えたり高コスト化したりするといった別の課題が発生する。従って、加圧ローラ21の軸を伸ばす方法は好ましい解決策とは言えない。
そこで、本実施形態においては、上述のように、第1の位置決め部Aと駆動伝達ギヤ31とを、発熱部60の中央部Mを基準に互いに反対側に設けるようにしている。このように、第1の位置決め部Aと駆動伝達ギヤ31とを互いに反対側に設けることで、加圧ローラ21の軸を伸ばさなくても、駆動伝達ギヤ31に対するヒータ22及びヒータホルダ23の干渉を回避することができるようになる。
また、図22に示すように、電極部61も、発熱部60の中央部Mを基準に駆動伝達ギヤ31とは反対側に設けられることで、ギヤの噛み合い部で発生する熱によって電極部61やこれに接続されるコネクタ70が温度上昇するのを抑制できるようになる。これにより、コネクタ70の温度上昇に伴う電極部61に対する接触圧の低下などを防止できるようになる。
なお、ヒータ22の小型化及び低コスト化の観点からすれば、上述のように、ヒータ22に設けられる位置決め部は、図17に示す位置決め突起22bではなく、位置決め孔22aであることが好ましいが、位置決め部がいずれの場合でもヒータ22及びヒータホルダ23に設けられると、これらを長くする必要があるので、駆動伝達ギヤ31に対するヒータ22及びヒータホルダ23の干渉の問題は同様に生じ得る。従って、ヒータ22及びヒータホルダ23に位置決め部を設けることによる駆動伝達ギヤ31との干渉を回避する観点からすれば、ヒータ22に設けられる位置決め部は、凹部、凸部、貫通孔のいずれかに限定されるものではない。また、加圧ローラ21の一端部側に設けられる駆動伝達部材は、駆動伝達ギヤ31のほか、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などであってもよい。
さらに続いて、ヒータ22における電極部61への熱伝達を抑制する構成について説明する。
[電極部への熱伝達抑制構造]
上述の説明では、ヒータ22の長手方向の位置決めを行うために、ヒータ22に位置決め孔22aを設けた構成ついて述べたが、このような位置決め孔22aを、発熱部60が設けられた部分と電極部61が設けられた部分との間に形成することで、発熱部60から電極部61への熱伝達を抑制する手段として利用することができる。すなわち、図7に示すように、位置決め孔22aが設けられている部分は、発熱部60が設けられた部分よりも断面積の小さい小断面部22zとなっているため、この小断面部22zにおいて発熱部60から電極部61への熱伝達を抑制することができる。
これにより、電極部61に接触するコネクタ70の温度上昇を抑制することができ、コネクタ70の温度上昇に伴う電極部61に対する接触圧の低下を防止できるようになる。このように、本実施形態によれば、発熱部60が発熱しても、電極部61やコネクタ70が温度上昇しにくくなり、電極部61に対するコネクタ70の接触圧を良好に維持することができるので、信頼性が向上する。特に、本実施形態のように、発熱部60の長さを最大用紙サイズよりも長く設定している場合や、発熱部60がPTC特性を有し、発熱部60の少なくとも一部においてヒータ22の長手方向に電流が流れるように構成されている場合は、非通紙領域で発熱量が多くなるため、このような小断面部22zを設けることによる効果を大きく期待できる。
また、本実施形態の構成の場合、位置決め孔22aが、発熱部60から電極部61への熱伝達を抑制する小断面部22zとしての機能も兼ねることで、位置決め部と熱伝達抑制部とを別個に設けなくてもよくなり、ヒータ22の小型化を図れるようになる。また、ヒータ22に小断面部22zを形成するだけで、電極部61への熱伝達を抑制できるので、ヒータ22に放熱部材などの別部材を新たに追加する必要がなく小型化に有利である。
また、小断面部22zは、発熱部60が設けられた部分よりも断面積が小さければ、任意の形状に形成することが可能である。例えば、図18に示す例のような、貫通孔から成る位置決め孔22aを設けることでも小断面部22zを形成することが可能である。
さらに、図24に示す例のように、発熱部60が設けられた部分と電極部61が設けられた部分との間で、基材層50を部分的に薄くすることで、小断面部22zを形成することも可能である。
以下、他の定着装置の構成について説明する。
[他の定着装置の構成]
図25に示す例では、上述の実施形態とは反対に、駆動伝達ギヤ31を、発熱部60の中央部Mを基準として各位置決め部A,B,Cと同じ側に設けている。この場合、駆動伝達ギヤ31の位置精度が向上するので、画像形成装置本体103に設けられたギヤとの噛み合いを精度良くに行うことができるようになり、耐久性に関する信頼性が向上する。
また、図25に示す例では、定着装置本体(装置フレーム40)と画像形成装置本体103とを位置決めする第3の位置決め部Cを、定着装置9の一方の側壁部28の端部28cと、これと嵌合する画像形成装置本体103側の孔部102(又は凹部)と、で構成している。この場合、各位置決め部A,B,Cの全てを、ヒータ22の長手方向において同じ位置(長手方向おいて重なる位置)にすることができる。このように、各位置決め部A,B,Cの全てを、ヒータ22の長手方向において同じ位置にすることで、画像形成装置本体103に対するヒータ22の位置精度がより一層向上する。
また、図26に示す例のように、ヒータ22に設けられた位置決め部としての孔部22c(小断面部22z)に対して側壁部28の挿通溝28bの縁を直接嵌合させたり、あるいは、図27に示す例のように、ヒータ22に設けられた孔部22c(小断面部22z)に対してステー24に設けられた突起24bを直接嵌合させたりして、ヒータ22を長手方向に位置決めすることも可能である。このように、ヒータ22の位置決め部に嵌合して位置決めを行う相手部材は、上述のヒータホルダ23以外に、側壁部28やステー24であってもよい。しかもこの場合、ヒータ22の熱は、ヒータ22に直接接触する側壁部28やステー24へ伝達されやすくなるので、ヒータ22の温度上昇を抑制することが可能である。また、図26及び図27に示すように、このような側壁部28やステー24がヒータ22に直接接触する箇所を、ヒータ22の長手方向における発熱部60と電極部61との間に設けることで、発熱部60から電極部61への熱の伝達をより一層抑制することができるようになる。また、側壁部28やステー24の材料を、ヒータホルダ23よりも熱伝導率の高い材料、より好ましくはヒータ22(基材層50)よりも熱伝導率の高い材料で構成することで、ヒータ22の温度上昇を効率的に抑制することができる。
ただし、ヒータ22の熱をその長手方向の一端部側において、側壁部28やステー24に伝達しやすくすると、反対の端部側との放熱量の差が大きくなることで、ヒータ22の一端部側と他端部側とで温度が不均一になる可能性がある。これに対する対策として、例えば、図28に示すように、ヒータ22の孔部22c(小断面部22z)が設けられた端部とは反対の端部側に、基材層50よりも熱伝導率の高い高熱伝導部材74を設けるとよい。これにより、側壁部28やステー24が直接接触する端部側とは反対の端部側においても伝熱効果(放熱効果)が増すようになるので、ヒータ22の一端部側と他端部側とでの温度不均一を緩和することができる。また、温度不均一を効果的に緩和するために、発熱部60の中央部Mからの孔部22cまでの距離E1と、発熱部60の中央部Mから高熱伝導部材74までの距離E2は、差が2mm以下、望ましくは同じ距離(対称位置)であるのがよい。また、高熱伝導部材74を板バネ形状などに形成し、高熱伝導部材74がヒータ22とヒータホルダ23とを一緒に挟んで保持する挟持部材としての機能を兼ねるようにしてもよい。これにより、ヒータ22の均熱化と脱落防止の2つの機能を一部品で実現することができ、低コスト化を図れる。
また、本発明は、上述の定着装置のほか、図29~図31に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図29~図31に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
まず、図29に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されており、この押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
次に、図30に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図29に示す定着装置9と同じ構成である。
最後に、図31に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とを分けて構成している。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側に、ニップ形成部材91とステー93とを配置し、これらニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト92と加圧ローラ21との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱及び加圧して画像を定着する。その他は、図2に示す定着装置9と同じ構成である。
以上、種々の定着装置の構成について説明したが、本発明に係る加熱装置は、定着装置に適用される場合に限らない。例えば、本発明に係る加熱装置は、用紙に塗布されたインクを乾燥させるために、インクジェット方式の画像形成装置に搭載される乾燥装置にも適用可能である。さらに、本発明に係る加熱装置は、ベルト部材によって用紙などのシートを搬送しながら、そのシートの表面に被覆部材としてのフィルムを熱圧着する被覆装置(ラミネータ)にも適用可能である。また、本発明に係る加熱装置は、ベルト部材を加熱するベルト加熱装置に限らず、ベルト部材を備えていない加熱装置であってもよい。