JP7337219B1 - 粉体造粒物 - Google Patents

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Abstract

【課題】取扱い性および安全性に優れ、かつ、作業環境の良化をもたらし得る粉体造粒物であって、樹脂組成物を調製する際の原料供給安定性および供給精度を向上させることができ、樹脂成形品の生産性向上に寄与し得る粉体造粒物を提供すること。【解決手段】本発明の粉体造粒物は、粉体原料Aと、結着剤とを含む、粉体造粒物であって、結着剤が、下記要件(1)~(3)すべてを満たす結着剤粉体Bを含み、該結着剤粉体Bの含有割合が、該粉体造粒物に含有される結着剤の全量100重量部に対して、50重量部以上である。(1)30メッシュの篩をパス(2)軟化温度が50℃~160℃(3)重量平均分子量が1万以上15万以下【選択図】図1

Description

本発明は、粉体造粒物に関する。
熱可塑性樹脂に様々な機能を付与するために行われる溶融コンパウンドでは、粉体状の原料形態で、各種の加工機に投入され、使用されることがある。ここでの原料は、例えば、熱可塑性樹脂の製法に起因していたり、再生粉砕品であったりするために粉体状で使用され得る。また、粉体状の原料としては、各種のフィラー粉体、難燃剤粉体、添加剤粉体、着色剤粉体等が挙げられる。
粉体原料は、一般に嵩比重が小さく、流動性が悪く、加工機へ付着しやすい性質を有するため、加工機へのフィードネック原因による生産性の低下を招くことがある。また、粉塵による作業環境の悪化、他製品へのコンタミ原因、煩雑な清掃作業、粉塵爆発の危険性、等様々な問題を引き起こす原因となる。また、粉体状の熱可塑性樹脂の中には、溶融可塑化によるペレット化が難しいものが存在する。例えば、近年注目されている、微生物が体内で合成するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類等のバイオポリマーは、一般に結晶化速度が遅く、ペレット化が困難な場合が多い。また、分子量が高い粉体状の樹脂(例えば、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン)は、溶融粘度が大きすぎて、ペレット化が難しい。また、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド等のエンプラ類、スーパーエンプラ類は、一次原料が粉体状である場合があり、加工温度が高いために、熱履歴を繰り返すことで物性の低下が生じやすい。また、乳化重合で得られるコアシェルゴムは、各種の樹脂の耐衝撃性改良剤として広く使用されているが、それ自身では熱可塑化ができないという問題がある。
国際公開2017/147465号
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、取扱い性および安全性に優れ、かつ、作業環境の良化をもたらし得る粉体造粒物であって、樹脂組成物を調製する際の原料供給安定性および供給精度を向上させることができ、樹脂成形品の生産性向上に寄与し得る粉体造粒物を提供することにある。
本発明の粉体造粒物は、粉体原料Aと、結着剤とを含む、粉体造粒物であって、結着剤が、下記要件(1)~(3)すべてを満たす結着剤粉体Bを含み、該結着剤粉体Bの含有割合が、該粉体造粒物に含有される結着剤の全量100重量部に対して、50重量部以上である。
(1)30メッシュの篩をパス
(2)軟化温度が50℃~160℃
(3)重量平均分子量が1万以上15万以下
1つの実施形態においては、上記結着剤粉体Bの140℃、荷重2.16kg条件でのメルトフローレートが1g/10min~200g/10minである。
1つの実施形態においては、上記粉体原料Aの含有割合が、上記粉体原料Aと上記結着剤との合計量100重量部に対して、55重量部~99重量部である。
1つの実施形態においては、上記粉体原料Aが、熱可塑性樹脂粉体、フィラー粉体、難燃剤粉体および添加剤粉体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性樹脂粉体が、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類およびコアシェル型ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。
1つの実施形態においては、上記結着剤粉体Bが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。
本発明の別の局面によれば、上記粉体造粒物の製造方法が提供される。この製造方法は、 上記粉体原料Aと上記結着剤粉体Bと水とを混合する混合工程と、該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、該造粒物前駆体を加熱する加熱工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記混合工程において、上記粉体原料Aと上記結着剤粉体Bとを混合して混合物を調製した後、該混合物を攪拌しながら、上記水を加える。
1つの実施形態においては、上記水が、スプレー噴霧状またはシャワー状で添加される。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒を行うことを含む。
1つの実施形態においては、上記加熱工程において、結着剤粉体Bの軟化温度以上の温度で加熱することを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、熱可塑性樹脂コンパウンド用原料または成形用材料としての、上記粉体造粒物の使用が提供される。
本発明によれば、取扱い性および安全性に優れ、かつ、作業環境の良化をもたらし得る粉体造粒物であって、樹脂組成物を調製する際の原料供給安定性および供給精度を向上させることができ、樹脂成形品の生産性向上に寄与し得る粉体造粒物を提供することができる。本発明によれば、多様な粉体原料を造粒化することができる。
実施例1で得られた粉体造粒物の外観写真図である。
A.粉体造粒物の概要
本発明の粉体造粒物は、粉体原料Aと、結着剤とを含む。結着剤は、30メッシュの篩をパスし、軟化温度が50℃~160℃であり、かつ、重量平均分子量が1万以上15万以下である、結着剤粉体Bを含む。すなわち、上記結着剤は、下記要件(1)~(3)すべてを満たす結着剤粉体Bを含む。
(1)30メッシュの篩をパス
(2)軟化温度が50℃~160℃
(3)重量平均分子量が1万以上15万以下
粉体造粒物は、粉体原料Aが結着剤により結合して構成される。結着剤としては、結着剤粉体Bの他、任意の適切な別の結着剤がさらに用いられていてもよい。結着剤粉体B(すなわち、30メッシュの篩をパスする等の結着剤)の含有割合は、粉体造粒物に含有される結着剤の全量100重量部に対して、50重量部以上である。
本発明の粉体造粒物は、樹脂組成物の製造で使用される。上記粉体造粒物は、例えば、樹脂組成物の溶融コンパウンド(溶融混練)時、樹脂成形品の成形等、各種の可塑化溶融工程において、樹脂組成物に添加して用いられ得る。本発明においては、結着剤を用いることにより、優れた効率で生産され得、かつ、品質安定性(形状安定性、硬度の均一性)、低微粉性、高硬度性、ハンドリング性に優れる粉体造粒物を得ることができる。また、上記粉体造粒物は、原料としての熱可塑性樹脂の種類についての選択の幅が広い点で有利である。また、樹脂組成物の可塑化溶融加工(代表的には、溶融混練)の際に、上記粉体造粒物を添加すれば、生産性向上を図ることができる。具体的には、上記粉体造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れるため、当該粉体造粒物を用いれば、樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。また、粉塵による作業環境汚染を著しく改善し、作業者の労働安全衛生環境を向上させることができ、さらに、設備の切り替え清掃の時間を大幅に短縮できる。また、粉塵爆発の危険性を低減させることができる。
1つの実施形態においては、上記粉体造粒物は、半湿式造粒法により製造される。半湿式造粒法によれば、上記効果が顕著となる。1つの実施形態においては、アルコール水溶液を添加しつつ、粉体造粒物を形成する材料が混合される。詳細は後述する。
上記粉体造粒物は、任意の適切な形状であり得る。代表的には、上記粉体造粒物は円柱状(ペレット状)である。
上記粉体造粒物が円柱状である場合、上記粉体造粒物の直径は、例えば、2mm~5mmである。また、粉体造粒物の長さ(高さ)は、例えば、1mm~7mmである。このような形状であれば、ハンドリングしやすい粉体造粒物を得ることができる。粉体造粒物の直径は、例えば、造粒の際のディスクプレートのダイス孔の径により調整でき、長さはディスクプレートとカッター間の距離で調整できる。当該距離は、用いられる粉体原料の種類等に応じて、任意の適切な距離とされ得る。ディスクプレートとカッター間の距離は、例えば、1mm~30mmであり、より好ましくは2mm~20mmであり、さらに好ましくは3mm~10mmである。
上記粉体造粒物の木屋式硬度計における破壊応力は、好ましくは0.05kg~10kgであり、より好ましくは0.5kg~7kgであり、さらに好ましくは1.0kg~5kgである。このような範囲であれば、ハンドリング性と溶融加工性に優れる粉体造粒物を得ることができる。ここで、破壊応力とは、20粒以上(好ましくは25粒以上)について測定した平均の崩壊応力を示す。
上記粉体造粒物の水分量は、任意の適切な水分量とされ得る。上記粉体造粒物の水分量は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下であり、最も好ましくは0.5重量%以下である。粉体造粒物の水分量は、後述のとおり赤外線水分計を用いて測定される。
上記粉体造粒物の嵩密度は、粉体原料Aおよび結着剤粉体Bの種類等に応じて、任意の適切な嵩密度とされ得る。上記粉体造粒物の嵩密度は、好ましくは0.3kg/L~2.0kg/Lであり、より好ましくは0.5kg/L~1.0kg/Lである。嵩密度を高くすることで、溶融混練を行う際に、粉体造粒物の供給速度と供給安定性が高まる。嵩密度は、升を用いて、粉体を当該升に自然落下させてすり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで算出される(単位:kg/L)。
A-1.粉体原料A
上記粉体原料Aは、熱可塑性樹脂粉体等の樹脂組成物の主成分となる原料であってもよく、フィラー粉体、難燃剤粉体、添加剤粉体等の樹脂組成物に所定の機能を付与しうる原料であってもよい。上記粉体原料Aは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。また、熱可塑性樹脂粉体のように結着性を発揮する粉体を粉体原料Aとしてもよい。ただし、本明細書において、軟化温度が50℃~160℃である成分は結着剤と定義する。また、30メッシュの篩をパスし、軟化温度が50℃~160℃であり、かつ、重量平均分子量が1万以上15万以下である成分は、結着剤粉体Bと定義する。
上記粉体原料Aの粒子径は、本発明の効果が得られる限り、その形態に応じて、任意の適切な粒子径とされ得る。粉体原料Aの数平均粒子径は、例えば、0.001mm~1mmである。本明細書において、数平均粒子径は、レーザー回折法で測定され得る。
上記粉体原料Aの嵩密度は、本発明の効果が得られる限り、その形態に応じて、任意の適切な嵩密度とされ得る。上記粉体原料Aの嵩密度は、好ましくは0.01kg/L~1kg/Lであり、好ましくは0.05kg/L~0.8kg/Lであり、より好ましくは0.1kg/L~0.8kg/Lであり、さらに好ましくは0.1kg/L~0.6kg/Lであり、特に好ましくは0.2kg/L~0.5kg/Lである。
本発明の効果が得られる限り、粉体原料Aの含有割合は、任意の適切な割合とされ得る。粉体原料Aの含有割合は、粉体原料Aと結着剤(結着剤粉体Bおよび別の結着剤)との合計量100重量部に対して、例えば、50重量部~99重量部であり、好ましくは55重量部~99重量部であり、好ましくは60重量部~97重量部であり、より好ましくは80重量部~95重量部である。粉体原料Aの含有割合は、上記粉体造粒物中例えば、20体積%~99体積%であり、好ましくは30体積%~99体積%であり、好ましくは40体積%~95体積%であり、より好ましくは50体積%~90体積%である。
(熱可塑性樹脂粉体)
上記熱可塑性樹脂粉体は、その製造プロセスを経て得られた粉体状樹脂、すなわち、製造プロセスを要因として粉体状であってもよく、ペレット状の樹脂、塊状の樹脂、樹脂成形体等の非粉状の樹脂を粉砕して得られた粉体状樹脂であってもよい。粉砕された粉体状樹脂は、成形品、ペレット、射出成形において発生するスプルやランナー等を室温下、あるいは、必要に応じてドライアイスや液体窒素を用いて冷却した後、粉砕機(例えば、ダルトン社製、商品名「ネアミル、シルフィードミル、アトマイザー、インパクトミル」等)を使用して得ることができる。
上記熱可塑性樹脂粉体の嵩密度は、0.01kg/L~1kg/Lであり、好ましくは0.05kg/L~0.8kg/Lであり、より好ましくは0.1kg/L~0.5kg/Lである。
上記熱可塑性樹脂粉体は、任意の適切な形状およびサイズであり得る。上記熱可塑性樹脂粉体の数平均粒子径は、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.01mm~0.8mmであり、特に好ましくは0.1mm~0.5mmである。
熱可塑性樹脂粉体は、任意の適切な熱可塑性樹脂から構成される。当該熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、フッ素系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等の汎用樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエステル類(PET、PBT等)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチック類、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等のスーパーエンジニアリングプラスチック類、乳化重合あるいは懸濁重合で得られるコアシェルゴム類等が挙げられる。
また、上記熱可塑性樹脂として、生分解性樹脂を用いてもよい。生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーあるいはコポリマー、これらのホモポリマーあるいはコポリマーの変性物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーあるいはランダムポリマー等)、ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等)等が挙げられる。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性樹脂として、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類およびコアシェル型ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が用いられる。
上記超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンを意味する。超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量は、例えば、200万(150万~250万)である。粘度平均分子量は、ASTM D4020に規定の粘度法により測定することができる。具体的には、ASTM D4020の粘度法に基づき極限粘度(η[dl/g])を測定し、次式(1)から粘度平均分子量(Mv)を求めることができる。
Mv=5.37×104η1.37 ・・・(1)
上記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類は、例えば、微生物が、糖質、油脂類等を餌として、体内で生成した化合物であり得る。このようなポリヒドロキシアルカノエートは、一次的には粉体状のポリマーとして取り出される。
上記コアシェル型ポリマーとしては、例えば、乳化重合あるいは懸濁重合で得られるコアシェルゴム類が用いられる。
(フィラー粉体)
フィラー粉体は、例えば、コンパウンド工程で溶融せずに、熱可塑性樹脂マトリックス中に分散させることで使用される粉体であり得る。ただし、難燃性の機能を発現するものは、本発明では難燃剤粉体と区分する。上記粉体造粒物は、フィラー粉体(特に、嵩密度が低いフィラー粉体)に対して、供給安定性および供給精度を向上させ得る点で有利であり、当該粉体造粒物を用いれば、高い生産性で安定的にフィラー含有樹脂組成物を得ることが可能となる。本明細書において、「フィラー粉体」は、繊維状、綿状のフィラーも包含する概念とする。
フィラー粉体の嵩密度は、好ましくは0.01kg/L~1kg/Lであり、より好ましくは0.1kg/L~0.8kg/Lであり、さらに好ましくは0.2kg/L~0.6kg/Lである。
上記フィラー粉体のサイズは、任意の適切なサイズとされ得る。フィラー粉体の数平均粒子径は、例えば、10nm~100μmである。フィラーが繊維状または綿状である場合はその断面直径をサイズとする。
上記フィラー粉体としては、樹脂組成物および/または樹脂組成物から得られる成形体に要求される特性に応じて、任意の適切な種類のフィラーを用いることができる。上記フィラー粉体によって付与できる特性・効果としては、例えば、増量化または軽量化、補強(高剛性化、高弾性率化、高強度化)、寸法安定性、成形サイクル(結晶化速度)、結晶化度、熱伝導性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、断熱性、電磁波吸収性、光反射性、光散乱性、熱線輻射性、放射線防護、紫外線防護、脱湿、脱水、脱臭、ガス吸収、ガスバリア、アンチブロッキング、吸油、抗菌性、生分解促進性、バイオ度向上(天然物由来成分量の比率向上)等が挙げられる。例えば、増量の目的では、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレーが好適である。補強の目的では、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、繊維状マグネシウム化合物(MOS)、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー等が好適である。抗菌付与の目的では、カテキン、銀イオン担持ゼオライト、銅フタロシアニン、等が好適である。ガスバリア性付与の目的では、合成マイカ系、クレー・合成マイカのナノフィラー、等が好適である。軽量化の目的では、シリカバルーン、ガラスバルーン、セノスフィア、パーライト、シラスバルーン、等のバルーン系が好適である。導電性付与の目的では、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔、が好適である。磁性付与の目的では、各種磁性材料、各種フェライト系、磁性酸化鉄、サマコバ(Sm-Co)、Nd-Fe-B、等が好適である。熱伝導性付与の目的では、アルミナ、AlN、BN、BeO、等が好適である。圧電性付与の目的では、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、等が好適である。制振性付与の目的では、マイカ、黒鉛、チタン酸カリウム、ゾノトライト、炭素繊維、フェライト、等が好適である。遮音性付与の目的では、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。摺動性付与の目的では、黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、テフロン粉、タルク、高分子量ポリエチレン、等が好適である。電磁波吸収付与の目的では、電磁波吸収フェライト、黒鉛、木炭粉、カーボンマイクロコイル(CMC)、カーボンナノチューブ(CNT)、PZT、等が好適である。光反射、光散乱付与の目的では、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ、等が好適である。熱線輻射付与の目的では、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、MOS、アルミナ、木炭粉末、等が好適である。放射線防護の目的では、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。「紫外線防護」の目的では、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、等が好適である。脱湿、脱水の目的では、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。脱臭、ガス吸収の目的では、ゼオライト、活性白土、等が好適である。アンチブロッキング(フィルムの圧着防止)の目的では、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、球状微粒子(シリコーンやアクリルビーズ)、等が好適である。吸油(印刷インク吸収、速乾性等)の目的では、毬藻状炭酸カルシウム、毬藻状ゾノトライト、等が好適である。吸水の目的では、吸水用の高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。バイオ度向上の目的には、セルロース系材料(木粉、木繊維、おがくず、木屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、麦わら、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツの殻、大豆の外皮、等)、でんぷん、天然ゴム、等が好適である。
(難燃剤粉体)
上記難燃剤粉体としては、任意の適切な難燃剤が用いられ得る。1つの実施形態においては、上記難燃剤粉体として、ゴム、樹脂等に使用される難燃剤が用いられる。1つの実施形態においては、上記難燃剤粉体は、ハロゲン含有化合物系難燃剤、リン含有化合物系難燃剤、窒素含有化合物系難燃剤、無機系難燃剤および金属塩系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、環境対応の観点から、リン含有化合物系難燃剤、窒素含有化合物(後述の通り、リンを含んでいてもよい)系難燃剤および金属塩系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が、特に好ましく使用される。なかでも、環境対応の観点から、リン含有化合物系難燃剤、窒素含有化合物(後述の通り、リンを含んでいてもよい)系難燃剤および金属塩系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が、特に好ましく使用される。
1つの実施形態においては、上記難燃剤粉体として、ハロゲン含有化合物系難燃剤が用いられる。ハロゲン含有化合物系難燃剤を用いれば、難燃性の粉体造粒物として好ましくその効果が引き出せる。ハロゲン含有化合物系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テロラブロモビスフェノールA-ビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)、テロラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ヘキサブロモシクロデカン等のハロゲン化物が挙げられる。また、上記ハロゲン含有化合物系難燃剤として、オリゴマー型ハロゲン化合物を用いてもよい。オリゴマー型ハロゲン化合物としては、例えば、モノブロモフェノール、トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、トリブロモクレゾール、ジブロモプロピルフェノール、テトラブロモビスフェノールS、塩化シアヌル等の化合物の重合体、これらの化合物と上記ハロゲン化物との共重合体等が挙げられる。当該共重合体において、ハロゲン化物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
また、上記ハロゲン含有化合物系難燃剤として、テトラブロモビスフェノールAのオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAのオリゴマー、テトラブロモビスフェノールSのオリゴマー、テトラブロモビスフェノールSとビスフェノールSとのオリゴマー等を用いてもよい。
また、上記ハロゲン含有化合物系難燃剤として、構造中にエポキシ基を有するハロゲン化エポキシオリゴマーを用いてもよい。
また、上記ハロゲン含有化合物系難燃剤として、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、臭素化ポリスチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド等を用いてもよい。
1つの実施形態においては、上記難燃剤粉体として、リン含有化合物系難燃剤が用いられる。リン含有化合物系難燃剤を用いれば、難燃性の粉体造粒物として好ましくその効果が引き出せる。リン含有化合物系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステルを挙げることができ、好ましい例として、トリフェニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェートを例示することができる。
1つの実施形態においては、上記難燃剤粉体として、窒素含有化合物系難燃剤が用いられる。窒素含有化合物系難燃剤を用いれば、難燃性の粉体造粒物として好ましくその効果が引き出せる。窒素含有化合物系難燃剤はリンを含んでいてもよい。窒素含有化合物系難燃剤としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸および/またはその塩、メラミンの縮合生成物、メラミンとリン酸との反応生成物、メラミンの縮合生成物とポリリン酸との反応生成物、ポリリン酸アンモニウム塩、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミド、グアニジン等が挙げられる。他の例として、ホスファゼン類を挙げることができ、具体例として、ホスホニトリル酸フェニルエステルが挙げられる。
1つの実施形態においては、上記難燃剤粉体として、無機系難燃剤が用いられる。無機系難燃剤を用いれば、難燃性の粉体造粒物として好ましくその効果が引き出せる。無機系難燃剤の具体例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズ、酸化アンチモン、ベーマイト、ジヒドロタルサイト、ヒドロカルマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、酸化スズ水和物、水酸化マンガン、ホウ酸亜鉛、塩基性ケイ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、赤燐、等が挙げられる。
1つの実施形態においては、上記難燃剤粉体として、金属塩系難燃剤が用いられる。金属塩系難燃剤を用いれば、難燃性の粉体造粒物として好ましくその効果が引き出せる。金属塩系難燃剤としては、例えば、有機ホスフィン酸金属塩、有機スルホン金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩を挙げることができ、具体例として、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩等が挙げられる。
また、必要に応じて、難燃助剤を添加してもよい。難燃助剤としては、亜リン酸アルミニウム、酸化鉄、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンのほか、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、リン酸アンチモンなどのアンチモン化合物等が挙げられる。難燃助剤は、1種または2種以上で使用することができる。
上記難燃剤粉体のサイズは、任意の適切なサイズとすることができる。難燃剤粉体の数平均粒子径は、例えば、10nm~100μmである。
上記難燃剤粉体の嵩密度は、好ましくは0.01kg/L~1kg/Lであり、より好ましくは0.05kg/L~0.8kg/Lであり、さらに好ましくは0.1kg/L~0.5kg/Lである。上記粉体造粒物においては、嵩密度が低い難燃剤粉体を含みながらも、供給安定性および供給精度を向上させ得る点で有利であり、当該粉体造粒物を用いれば、高い生産性で安定的に難燃剤含有樹脂組成物を得ることが可能となる。
(添加剤粉体)
上記粉体造粒物は、必要に応じて、任意の適切なその他の粉体状の添加剤を含み得る。添加剤粉体としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、分散剤、相溶化剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、結晶化核剤、加水分解抑制剤、脱酸素剤、着色剤(染顔料)等が挙げられる。なお、粉体原料Aは、液状の添加剤と併用されてもよい。添加剤粉体は、少量(通常、数重量%以下)で配合される。
1つの実施形態においては、添加剤粉体として、分散剤が好ましく使用される。上記分散剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。分散剤(界面活性剤)における親水性/疎水性バランスは、分散剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度を調整することにより、制御することができる。分散剤を使用することにより、粉体造粒物の生産性(吐出速度)を向上させることができ、さらには、加工機の清掃性を高めることができる。
上記分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸スルホン酸塩、脂肪酸アマイド、アクリルアミド、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。
1つの実施形態においては、上記分散剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールと炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸のエステル類が用いられる。
上記脂肪酸アマイドとは、脂肪酸とアンモニアあるいは 1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つ化合物である。上記脂肪酸アマイドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類が挙げられる。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。
上記分散剤の含有割合は、粉体造粒物全量に対して、通常、0.01重量%~10重量%であり、好ましくは0.1重量%~7重量%であり、より好ましくは0.3重量%~5重量%である。
1つの実施形態において、上記添加剤粉体として、結晶化核剤が用いられる。結晶化核剤は、粉体造粒物が結晶性の熱可塑性樹脂粉体を主体とする造粒物である場合に好ましく使用される。特に、結晶化核剤は、熱可塑性樹脂粉体として、生物が産生するバイオポリエステル(例えば、上記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類)を用いる場合に、好ましく添加される。結晶化核剤を用いれば、結晶性の熱可塑性樹脂粉体(例えば、バイオポリエステル)の結晶化速度と結晶化度を高めることが可能となり、剛性や耐熱性の向上のみならず、生産性も高めることができる。このような結晶化核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、シュウ酸金属塩、脂肪酸金属塩等の有機金属塩化合物類、脂肪族有機エステル、リン酸トリアリル、ポリアルキレングリコールもしくはその誘導体や脂肪族ポリエステル、ベンジリデンソルビトール等の有機化合物類、キナクドリン、シアニンブルー、カーボンブラック等の染顔料類、タルク、マイカ、カオリン、クレー、炭酸塩鉱物、金属酸化物、金属硫酸塩等の鉱物類、アイオノマー、高融点ポリアミド等の高分子化合物類等が挙げられる。1つの実施形態においては、上記結晶化核剤として、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム等が用いられる。
上記結晶化核剤の含有割合は、粉体造粒物全量に対して、通常、0.01重量%~10重量%であり、好ましくは0.1重量%~7重量%であり、より好ましくは0.3重量%~5重量%である。
1つの実施形態においては、上記粉体造粒物は、添加剤粉体として、粉体状の酸変性ポリマーを含む。酸変性ポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、スチレン・無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。酸変性ポリマーを用いることで、溶融混練する際に、粉体造粒物の分散性改良剤、あるいは相溶化剤としての作用効果を発揮し得る。上記の酸変性ポリマー粉体の含有割合は、粉体造粒物全量に対して、通常、0.1重量%~10重量%であり、好ましくは0.5重量%~7重量%であり、より好ましくは1重量%~5重量%である。
A-2.結着剤粉体B
上記のとおり、結着剤粉体Bは、30メッシュの篩をパスする。ここで、メッシュのサイズはJIS規格に準じ、すなわち、30メッシュの篩は、約500μmの篩隙間を有する篩である。結着剤粉体Bの含有割合は、粉体造粒物に含有される結着剤の全量100重量部に対して、50重量部以上である。結着剤粉体Bの含有割合は、粉体造粒物に含有される結着剤の全量100重量部に対して、好ましくは70重量部以上であり、より好ましくは100重量部である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
結着剤粉体Bの含有割合は、上記粉体原料Aのサイズ、形状、吸水性、吸油性、嵩密度等に応じて、任意の適切な割合とされ得る。結着剤粉体Bの含有割合は、粉体原料Aと結着剤(結着剤粉体Bおよび別の結着剤)合計量100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上であり、より好ましくは1重量部以上であり、さらに好ましくは1.5重量部以上であり、特に好ましくは2.5重量部以上である。また、結着剤粉体Bの含有割合は、粉体原料Aと結着剤(結着剤粉体Bおよび別の結着剤)との合計量100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは40重量部以下であり、さらに好ましくは30重量部以下であり、さらに好ましくは25重量部以下であり、さらに好ましくは20重量部以下であり、特に好ましくは15重量部以下であり、最も好ましくは10重量部以下である。上記のような含有割合で結着剤粉体Bを用いれば、粉体原料Aに対する結着力が好ましく発揮され、ハンドリング性に優れた粉体造粒物を得ることができる。
結着剤粉体Bは、好ましくは50メッシュの篩を50重量%以上パスする。「50重量%以上パスする」とは、所定メッシュの篩隙間を、結着剤粉体Bのうち50重量%以上がパスすることを意味する。結着剤粉体Bは、50メッシュの篩を70重量%以上パスすることがより好ましく、100重量%がパスすることが最も好ましい。結着剤粉体Bは、60メッシュの篩を、50重量%以上パスすることが好ましく、70重量%以上パスすることがより好ましく、100重量%がパスすることが最も好ましい。結着剤粉体Bは、70メッシュの篩を、50重量%以上パスすることが好ましく、70重量%以上パスすることがより好ましく、100重量%がパスすることが最も好ましい。
上記のとおり、結着剤粉体Bは、軟化温度が50℃~160℃である。このような範囲であれば、結着剤粉体Bは、粉体造粒物の造粒工程での摩擦熱および/または加熱工程で加えられる熱により、熱溶融し、粉体原料Aに対する結着剤として好ましく作用し得る。また、結着剤粉体Bの軟化温度が上記範囲であれば、粉体造粒物の生産性と形状安定性において好ましく、造粒物硬度に優れ、ハンドリング性に優れた粉体造粒物を得ることが可能となる。結着剤粉体Bの軟化温度は、好ましくは60℃~140℃であり、より好ましくは70℃~130℃であり、特に好ましくは80℃~120℃である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。本明細書において、軟化温度は、融点またはガラス転移温度を意味し、示差走査型熱量計(DSC)で測定され得る。1つの実施形態においては、上記DSC測定において、吸熱あるいは発熱のピークが観測される場合において軟化温度は融点に相当し、また、ベースラインの不連続性が観測される場合において軟化温度はガラス転移温度に相当する。
上記結着剤粉体Bは、重量平均分子量(Mw)が1万以上15万以下である。このような範囲であれば、結着剤粉体Bは、粉体造粒物の造粒工程での摩擦熱および/または加熱工程で加えられる熱により、熱溶融した際に、好ましい流動性を有するために、粉体原料Aに対し良好に馴染み、結着剤として好ましく作用し得る。また、結着剤として適切な結着力を発揮し得る。結着剤粉体Bの重量平均分子量(Mw)は2万~14万であることが好ましく、3万~13万であることがより好ましく、3万~10万であることがさらに好ましい。結着剤粉体Bの重量平均分子量(Mw)は、結着剤粉体Bを構成する樹脂の重量平均分子量(Mw)を意味し、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエ―ションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
上記結着剤粉体Bは、140℃、荷重2.16kg条件でのメルトフローレート(MFR)が1g/10min~200g/10minであることが好ましく、1.5g/10min~150g/10minであることがより好ましく、2g/10min~100g/10minであることがさらに好ましく、3g/10min~80g/10minであることが特に好ましい。このような範囲であれば、加熱により適度な流動性を有し、粉体原料Aの表面に馴染みやすい結着剤粉体Bを得ることができる。本明細書において、メルトフローレートは、JIS-K7210-1に準ずる方法で140℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
1つの実施形態においては、上記結着剤粉体Bは、任意の適切な樹脂により構成され得る。結着剤粉体Bを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。別の実施形態においては、上記結着剤粉体Bとして、多糖類が用いられる。結着剤粉体Bは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。1つの実施形態においては、上記結着剤粉体Bを構成する樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から好ましく選ぶことができる。これらの樹脂を用いれば、粉体原料に対する結着力に優れ、形状安定性に優れた粉体造粒物を得る点で有利である。これらの中で、とりわけ、ホットメルト接着性機能を有するものを好ましく使用することができる。
1つの実施形態において、粉体原料Aとしての熱可塑性樹脂粉体が生分解性樹脂である場合、結着剤粉体Bとして、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、水溶性多糖類等が好ましく用いられる。これらは、生分解性樹脂との親和性に優れるため、良好な結着性が得られるので好ましい。
1つの実施形態においては、上記結着剤粉体Bに対し、熱可塑性樹脂が水系媒体中に分散した「水性ディスパージョン」を併用することが好ましい。この水性ディスパージョンは、粉体原料Aと結着剤粉体Bの親和性を高める作用を奏すると共に、粉体造粒物の結着性を向上させる効果を発揮するので好ましい。上記の水性ディスパージョンとしては、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、三井化学社製のケミパール(登録商標)、ダウ・ケミカルカンパニーのHYPOD(登録商標)、ビックケミー・ジャパン社製のAQUACER(登録商標)、住友精化社製のザイクセン、セポルジョン、セポレックス(登録商標)、マイケルマン・ジャパン社製のMichem(登録商標)、DIC社のボンディック(登録商標)、サイデン化学社製のサイビノール、サイデングルー(登録商標)等を挙げることができる。
B.粉体造粒物の製造方法
上記粉体造粒物は、任意の適切な方法により、製造することができる。例えば、粉体原料Aと結着剤粉体Bとを含む混合物を、半湿式造粒法に供することにより得ることができる。結着剤粉体Bは、粉体原料Aとの混合工程において、均一な分散状態とすることが好ましく、さらに、適切な量の水を加えて半湿式造粒工程により得られる造粒物前駆体の造粒工程、もしくは当該造粒物前駆体から水分を除去する加熱工程で、結着剤粉体Bを熱溶融させることで、粉体造粒物の結着力を高め得る。
1つの実施形態においては、上記粉体造粒物の製造方法は、上記粉体原料Aと結着剤粉体Bと水とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、造粒物前駆体を加熱する加熱工程とを含む。混合工程においては、別の結着剤がさらに添加されてもよい。加熱工程における加熱により、造粒物前駆体を乾燥させることができる。また、加熱工程を経て、粉体原料Aの結着が促進される。
1つの実施形態においては、上記混合工程において、粉体原料Aと結着剤粉体Bとを混合して混合物を調製した後、当該混合物を攪拌しながら、水を加える。このようにすれば、粉体原料Aと結着剤粉体Bとの混合物全体にわたって、水を適度な配合比率で、均一に分散させることが可能となり、次の半湿式造粒工程において、造粒が安定し、加熱乾燥後の造粒物において、形状と造粒物硬度とに優れた造粒物を得ることに有利となる。水は、例えば、スプレー噴霧状、シャワー状、または、ノズルを使って点滴状に徐々に加えられ得る。なお、スプレー噴霧状とは、圧縮空気等のガスにより、圧力を加えた液体を、ノズルの細い穴から急激に噴出させて、液体の微粒子とさせた状態を意味する。また、シャワー状とは、シャワーヘッド(複数の同じ大きさの穴があけられた治具)から、同じ圧力がかけられた流体が分散されて噴出させた状態を意味する。添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。必要に応じて、粉体原料に対する濡れ性を向上させるためにアルコール等の他の成分と水とを併用してもよい。また、その他の成分(例えば、固体成分)を添加する際には、当該成分は、上記混合物に混合されてもよい。
混合工程においては、任意の適切な混合機を用いて、均一に混合することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)、等を挙げることができる。造粒性に優れた好ましい混合物を得るために、混合攪拌装置の攪拌羽根が適切であること好ましい。例えば、ヘンシェルミキサータイプの混合機を使用する場合、ミキサーの羽根は上羽根と下羽根の組み合わせとし、上羽根はY1羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、下羽根はS0羽根(商品名、日本コークス(株)製)を使用することが好ましい。また、撹拌槽内にデフレクターを装着し、混合することが好ましい。すなわち、混合物全体にわたって各成分を均一に分散させることが可能な混合工程とすることにより、次の半湿式造粒工程における生産性と品質安定性を高め、形状と造粒物硬度に優れた造粒物を得ることに有利となる。
水の配合量は、粉体の特性(吸水性等)により、任意の適切な量とされ得る。水の配合量は、粉体原料Aと結着剤粉体Bの合計量100重量部に対して、例えば、5重量部~100重量部であり、好ましくは8重量部~70重量部であり、より好ましくは10重量部~50重量部であり、さらに好ましくは15重量部~30重量部である。このような範囲であれば、半湿式法による造粒工程で、造粒性に優れた混合物を得ることができる。このような混合物を用いれば、粉体原料Aが好ましく結着して構成された粉体造粒物前駆体を安定して得ることができる。
上記粉体混合物への水の添加は、通常、1~60分、好ましくは3~30分、より好ましくは、5~20分の時間をかけて均一に分散させながら、粉体混合物に水を含ませることが好ましい。
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。好ましくは、粉体原料Aと結着剤粉体Bが十分かつ均一に分散混合されるように混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、タブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。生産性と得られる粉体造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料(水分を含んだ粉体混合物)が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状の粉体造粒物を得ることができる。造粒物前駆体の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。ディスクプレートとカッター間の距離は、粉体原料の種類等に応じて、任意の適切な距離とされ得る。ディスクプレートとカッター間の距離は、例えば、1mm~30mmであり、より好ましくは2mm~20mmであり、さらに好ましくは3mm~10mmである。
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
加熱工程における加熱方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。上記のとおり、加熱工程においては、粉体原料Aの結着が促進される。加熱温度は、例えば、50℃~200℃であり、好ましくは80℃~180℃であり、より好ましくは100℃~150℃である。
1つの実施形態においては、加熱工程における加熱温度は、結着剤(好ましくは結着剤粉体B)の軟化温度以上の温度である。加熱工程における加熱温度と結着剤の軟化温度との差は、例えば、1℃~100℃であり、好ましくは10℃~80℃であり、より好ましくは20℃~60℃である。
加熱工程では、任意の適切な加熱(乾燥)設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。加熱工程後、振動ふるい等で処理を行うことで、微粉を除去した粉体造粒物が得られ得る。
C.粉体造粒物を使用する溶融コンパウンド
1つの実施形態においては、上記粉体造粒物は、熱可塑性樹脂コンパウンド原料または成形用材料として用いられる。また、上記粉体造粒物と、その他の熱可塑性樹脂との溶融コンパウンドが提供され得る。当該その他の熱可塑性樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂が用いられる。粉体造粒物が難燃剤粉体を含む場合、難燃剤粉体の配合量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対し、通常、5重量部~20重量部である。
溶融コンパウンドの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは二軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、二軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練して得られた組成物はペレット化される。
1つの実施形態においては、上記粉体造粒物は、上記粉体造粒物とその他の熱可塑性樹脂との混合物とし、射出成形機、押出成形機等の樹脂の加工装置に直接投入して、各種の樹脂組成物成形品を得ることもできる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
[実施例1]タルク粉体造粒物
FMミキサー(日本コークス工業(株)製、商品名「5FM5C/I」;処理容積:5L)に、粉体原料A(タルク粉体、浅田製粉(株)製、商品名「JM-300」;嵩比重:0.17;表中、「A-1」)90重量部と、結着剤粉体B(高密度ポリエチレン粉体、プライムポリマー(株)製、商品名「エボリューH SP50800P」、30メッシュ篩で100%パス;表中、「B-1」)10重量部とを投入し、回転数2,000rpmで10分間の攪拌処理を行い、粉体混合物を得た。
FMミキサーの羽根は上羽根と下羽根の組み合わせとし、上羽根はY1羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、下羽根はS0羽根(商品名、日本コークス(株)製)を使用した。また、撹拌槽内には邪魔板(バッフル、もしくはデフレクターとも称す)を装着した。
攪拌羽を回転数2,000rpmで回転させながら、上記粉体混合物に対して噴霧状に上水(水道水)20重量部を、10分間で連続的に噴霧注入し、含水粉体混合物を得た。
この含水粉体混合物を、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ペレット状の造粒物前駆体を得た。
この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、140℃で4時間乾燥させて、粉体造粒物(G-1)を得た。得られた粉体造粒物(G-1)の外観写真を図1に示す。
[実施例2~4、比較例1~5] タルク粉体造粒物
表1に示す粉体原料A、結着剤を、表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粉体造粒物(G-2)~(G-4)および(G―C1)~(G―C5)の製造を試みた。
実施例および比較例で用いた各成分の具体的な内容は、表2に示すとおりである。表2に示す結着剤粉体Bの重量平均分子量(Mw)は、高温GPCにより測定されたものである。
[実施例5]バイオポリエステル粉体造粒物
表1に示す粉体原料A、結着剤を、表1に示す配合量で用い、造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、120℃で4時間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして、粉体造粒物(G-5)を得た。実施例5は、生分解性プラスチックスであるPHBHの粉砕物((株)カネカ製、商品名「Green planet X151C」)の造粒例である。
[実施例6]超高分子量ポリエチレン粉体造粒物
表1に示す粉体原料A、結着剤を、表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粉体造粒物(G-6)を得た。
なお、粉体造粒物(G-6)では、水系ポリエチレン共重合体ディスパージョン(三井化学(株)製、商品名「ケミパールA100」;表中「C-1」)10重量部を、超高分子量ポリエチレン粉体(A-3)と高密度ポリエチレン粉体(B-2)との攪拌処理の際に同時に配合し、粉体混合物を得た。
[実施例7]ポリプロピレン粉体とタルク粉体との混合造粒物
表1に示す粉体原料A、結着剤を、表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粉体造粒物(G-7)を得た。実施例7は、ポリプロピレン粉体(A-4)とタルク粉体(A-1)の混合粉体の造粒例である。
なお、粉体造粒物(G-7)の造粒では、ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(太陽化学(株)製、商品名「チラバゾールH818」;表中「C-2」)3重量部を、ポリプロピレン粉体(A-4)とタルク粉体(A-1)と低分子量ポリプロピレン粉体(B-3)との攪拌混合処理の際に同時に配合し、粉体混合物を得た。
Figure 0007337219000002
Figure 0007337219000003
<評価>
実施例および比較例で得られた粉体造粒物を下記の評価に供した。結果を表3に示す。
(1)造粒性
得られた粉体造粒物の確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 直径3mmφの粉体造粒物が得られる。
×: 粉体原料の結着性がなく、粉体造粒物が得られない。

(2)造粒速度
時間当たりの粉体造粒物の製造速度(kg/Hr)を算出した。

(3)嵩密度
乾燥後の粉体造粒物を1リットルの升に自然落下させ、すり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで、粉体造粒物の嵩密度(単位:kg/L)を算出した。

(4)ペレットサイズ
粉体造粒物を20粒取り出し、ノギスを用いて、粒状物の長さと直径を平均値を測定した。

(5)水分量
赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、粉体造粒物に残存する水分量(単位:重量%)を測定した。

(6)崩壊強度
木屋式硬度計(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」)を用いて、乾燥後の粉体造粒物の崩壊応力(単位:kg)を測定した。測定値は粉体造粒物25粒の平均値とした。
Figure 0007337219000004
表3に示す通り、(G-1)~(G-7)では、安定したペレット形状、高い造粒速度、適切な硬度のペレット状の粉体造粒物を得ることができる。一方、比較例1(G-C1)では、結着剤粉体を欠く例であるが、ペレット状の粉体造粒物を得ることができなかった。また、重量平均分子量が低い結着剤粉体を用いた場合も、粉体造粒物を得ることができなかった(比較例2~4)。また、分子量が高すぎる粉体(B-8’)は、結着剤としての機能を果たせず、比較例5においても、粉体造粒物を得ることができなかった。
参考例1では、FMミキサーに装着した攪拌羽根を、上羽根はST羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、下羽根はA0羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、更に邪魔板を外した。これらの上下の攪拌羽根の構成、並びに、邪魔板の排除は、実施例1に較べて粉体攪拌能力が劣る構成となる。
上記の羽根構成としたFMミキサー内に、90重量部のタルク粉体(A-1)と、10重量部の結着剤粉体としての高密度ポリエチレン粉体(B-1)と、20重量部の上水を一度に投入し、回転数1,000rpmで5分間の攪拌処理を行い、粉体混合物とした。この粉体混合物から、実施例1と同様な造粒操作、乾燥操作により粉体造粒物(G-C6)を得た。
参考例1は粉体攪拌能力が劣る場合は、造粒物硬度が低下する場合があることを示す。
[実施例8]
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(ベルポリエステルプロダクツ社製、商品名「EFG70」、融点255℃、Iv値0.75)70重量部と、粉体造粒物(G-1)30重量部とを、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、タルクを含むPET樹脂組成物のペレットを製造した。
粉体造粒物(G-1)とPET樹脂は、事前に予備混合を行い、重量式フィーダーを介して、定量的に押出機の最上流部のホッパー位置から、二軸押出機に投入した。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を250℃に設定した。二軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとした。溶融混練されたPET樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られるPET樹脂組成物の生産において、押出機への粉体造粒物(G-1)の供給安定性に優れ、吐出速度が高く、また、溶融混練分散性にも優れ、ストランドの引き取り安定性に優れていた。
実施例8で得られた樹脂組成物のペレットを下記評価に供した。結果を表4に示す。
(a)吐出速度(単位:kg/Hr)
時間当たりのコンパウンド樹脂組成物の吐出量である。
(b)押出機負荷(単位:%)
二軸押出機の動力負荷%(許容最大モーター負荷に対する割合)である。
(c)ダイス部での溶融樹脂温度(単位:℃)
ダイスから押し出される樹脂組成物の温度を接触式熱電対で測定した。
(d)フィード特性
原料の押出機への連続投入状況である。
〇: 安定に供給できる。
×: 原料供給でブリッジが生じることがあり、フィードが不安定。
(e)分散性
溶融混合物のストランド表面の感触より、以下の基準で評価した。
〇: 表面が滑らかで分散性が良い。
×: 表面が荒れており、分散性が悪い。
(f)樹脂ペレットの造粒性(ペレット結晶化)
樹脂と粉体造粒物の溶融混練物の造粒性を、以下の基準で評価した。
〇: 溶融混練後に速やかに結晶化が進行し、樹脂組成物のペレットが容易に得られる。
×: 結晶化が遅いためにペレタイズが困難。
[比較例6]
粉体造粒物(G-1)を使用せずに、タルク粉体(表2のA-1に示す)を使用して、実施例8と同様にして溶融混練を行い、ペレットを製造した。
比較例6では、タルク粉体がシュート口でブリッジを生じてしまい、連続生産を行うことができなかった。また、粉塵による作業環境の悪化が生じた。
Figure 0007337219000005
[実施例9]
PET樹脂(EFG70)70重量部と粉体造粒物(G-1)30重量部とを、単軸シート押出機(プラスチック工学研究所社製、商品名「GT-40」、L/D=32)に投入して、連続的に溶融混練を行い、タルクを含むPET樹脂組成物のシートを製造した。
ここで、単軸スクリューは溶融可塑化領域(圧縮領域)に「ダブルフライト型スクリュー」、後段の計量領域に「マドック型パーツ」を2箇所装着したスクリュー(プラスチック工学研究所社製)を用いた。
上記シート押出機では、ダイスはダイス幅400mm、スリット幅1.5mmとし、押出機のシリンダー設定温度として、押出機中段部分を280℃、ダイス部分の設定温度は280℃に設定した。スクリュー回転数は100rpmに設定した。ダイス部の樹脂圧は7~10MPaであった。
ロールの構成は横水平の3本の金属ロールとし、ロール温度を30℃に設定した。
吐出は28kg/hr、引き取り速度9m/minとし、連続的にシート成形を行い、最終のシート厚みを0.8mmとし、ロール状に巻きとった。
得られたシートは、連続成形が可能であり、またシート中のタルクの分散性に優れるものであった。

Claims (13)

  1. 粉体原料Aと、結着剤とを含む、粉体造粒物であって、
    該粉体造粒物が、該粉体原料Aを該結着剤により結合して構成され、
    結着剤が、下記要件(1)~(3)すべてを満たす結着剤粉体Bを含み、
    該結着剤粉体Bの含有割合が、該粉体造粒物に含有される結着剤の全量100重量部に対して、50重量部以上である、粉体造粒物;
    (1)30メッシュの篩をパス
    (2)軟化温度が50℃~160℃
    (3)重量平均分子量が1万以上15万以下
  2. 前記結着剤粉体Bの140℃、荷重2.16kg条件でのメルトフローレートが1g/10min~200g/10minである、請求項1に記載の粉体造粒物。
  3. 前記粉体原料Aの含有割合が、前記粉体原料Aと前記結着剤との合計量100重量部に対して、55重量部~99重量部である、請求項1に記載の粉体造粒物。
  4. 前記粉体原料Aが、熱可塑性樹脂粉体、フィラー粉体、難燃剤粉体および添加剤粉体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の粉体造粒物。
  5. 前記熱可塑性樹脂粉体が、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類およびコアシェル型ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、請求項4に記載の粉体造粒物。
  6. 前記結着剤粉体Bが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、請求項1に記載の粉体造粒物。
  7. 前記粉体原料Aと前記結着剤粉体Bと水とを混合する混合工程と、
    該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、
    該造粒物前駆体を加熱する加熱工程とを含む、
    請求項1から6のいずれかに記載の粉体造粒物の製造方法。
  8. 前記混合工程において、前記粉体原料Aと前記結着剤粉体Bとを混合して混合物を調製した後、該混合物を攪拌しながら、前記水を加える、請求項7に記載の粉体造粒物の製造方法。
  9. 前記水が、スプレー噴霧状またはシャワー状で添加される、請求項8に記載の粉体造粒物の製造方法。
  10. 前記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む、請求項7に記載の粉体造粒物の製造方法。
  11. 前記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒を行うことを含む、請求項7に記載の粉体造粒物の製造方法。
  12. 前記加熱工程において、前記結着剤粉体Bの軟化温度以上の温度で加熱することを含む、請求項7に記載の粉体造粒物の製造方法。
  13. 熱可塑性樹脂コンパウンド用原料または成形用材料としての、請求項1から6のいずれかに記載の粉体造粒物の使用。
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