JP7454097B1 - 結晶性ポリマーの粉体造粒物及びその製造方法 - Google Patents

結晶性ポリマーの粉体造粒物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本実施形態の目的は、成形加工において結晶化特性に優れた結晶性ポリマー粉体の造粒物を提供することである。【解決手段】本実施形態は、結晶性ポリマー粉体の粉体造粒物であって、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第1のDSC測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れる第1のホールド温度TH1が存在し、第1のホールド温度TH1は、前記第1のDSC測定の昇温時に最も高温側に現れる結晶性ポリマーの融解ピーク温度TMより高い温度である、粉体造粒物である。【選択図】図3

Description

本開示は、結晶性ポリマーの粉体造粒物及びその製造方法に関する。
結晶性の熱可塑性ポリマー(以下、「結晶性ポリマー」とも称す)では、その製法に由来したり、再生粉砕品であったりすることで、粉体状の形状のものがある。このような熱可塑性樹脂粉体は、通常、取り扱い性が悪いので、取り扱い性を良くし、さらに生産性を高めるために、溶融押出機で可塑化溶融させて、ダイスを介して押出を行い、冷却固化させて、ペレット状の形態(以下、溶融混練ペレットとも称す)にして、各種の熱可塑性樹脂の加工機械に供し、製品化されることが一般的である。すなわち、粉体状の熱可塑性樹脂では、溶融混練ペレット化が通常行われる。
また、結晶性ポリマーの成形加工において、可塑化溶融状態から冷却固化させる際の「結晶化速度」が遅い結晶性ポリマーでは、各種の成形加工において、生産性が阻害されることがある。一例としては、射出成形において短時間に金型内で固化させることができないため、成形サイクルが長くなる弊害をもたらす。また、成形品での結晶化度が不十分であるため、成形品の剛性、寸法安定性、透明性等の物性が不安定となる等の問題をもたらし得る。
このため、結晶性ポリマーに対して、「結晶化核剤」が使用されることがある。結晶化核剤は結晶性ポリマーの結晶化を促進する添加剤であり、溶融混練によって配合される。
結晶化核剤は均一で微細な結晶核を短時間に生成させる作用効果を発揮するものが好ましく、剛性の向上、寸法安定性の向上、透明性の向上、成形サイクル向上等、多岐にわたる物性改質効果をもたらし得る。
例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)等の、微生物がその体内で産生するバイオポリエステル樹脂においては、一般的に結晶化速度が遅いため、結晶化核剤が添加される場合がある。
特許文献1では、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)に対し、結晶化核剤としてペンタエリスリトールを含む樹脂組成物が開示されている。
特許文献2では、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)に対し、それ以外の生分解性ポリマーと成核剤(結晶化核剤に相当)を含む生分解性ポリマー組成物が開示されている。
WO2014/020838 特表2023-536152号公報
しかしながら、十分な作用効果を発揮する結晶化核剤は、その種類が限られている。更には、医療用、食品用の用途、即ち、生体や食品に接触し得る用途では、結晶化核剤の溶出が起こり得るため、結晶化核剤をできるだけ使用しないことが望まれている。そのため、結晶化核剤を配合せずとも、成形加工における結晶化速度を速めることができれば、産業上きわめて有用な技術となる。
そこで、本開示の目的は、成形加工において結晶化特性に優れた結晶性ポリマー粉体の造粒物を提供することである。
(1) 結晶性ポリマー粉体の粉体造粒物であって、
前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第1のDSC測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れる第1のホールド温度TH1が存在し、
第1のホールド温度TH1は、前記第1のDSC測定の昇温時に最も高温側に現れる結晶性ポリマーの融解ピーク温度Tより高い温度である、粉体造粒物。
(2) 前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第2のホールド温度TH2まで昇温させてから第2のホールド温度TH2で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第2のDSC測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れない第2のホールド温度TH2が存在し、
第2のホールド温度TH2は、第1のホールド温度TH1よりも高い温度である、(1)に記載の粉体造粒物。
(3) 前記第1のDSC測定の降温時に現れる再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tc15と、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で2分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第3のDSC測定を行った場合において、降温時に現れる結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tcとが、下記式(A)を満たす、(1)又は(2)に記載の粉体造粒物:
式(A):0.95≦Tc15/Tc≦1.05。
(4) 結晶化核剤を実質的に含まない、(1)~(3)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(5) 木屋式硬度計の測定に基づく破壊強度が、10.0kg以上である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(6) 下記式(B)で計算される見かけ密度比が、0.85以上0.95以下である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の粉体造粒物:
式(B):「見かけ密度比」=「粉体造粒物の見かけ密度」/「前記結晶性ポリマーの溶融混練ペレットの見かけ密度」。
(7) 造粒前の結晶性ポリマー粉体の嵩密度をρ、粉体造粒物の嵩密度をρとしたとき、ρ/ρの値が、0.90以上3.00以下である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(8) 結晶性ポリマーの重量平均分子量が、20万以上300万以下である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(9) 粉体造粒物の形状が、略円柱状又は略角柱状である、(1)~(8)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(10) 融解ピーク温度Tが70℃以上200℃以下の温度範囲にある結晶性ポリマー粉体を含む、(1)~(9)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(11) 結晶性ポリマー粉体が、生分解性樹脂を含む、(1)~(10)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(12) 生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂又は脂肪族・芳香族ポリエステル系樹脂を含む、(1)~(11)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(13) 生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂を含む、(1)~(12)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(14) 脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリヒドロキシアルカノエートを含む、(1)~(13)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(15) 第1のホールド温度TH1として180℃が存在し、第2のホールド温度TH2として200℃が存在する、(1)~(14)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(16) 前記第1のDSC測定を、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温させてから180℃で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れ、
前記第2のDSC測定を、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で200℃まで昇温させてから200℃で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れない、(1)~(15)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(17) 前記第1のDSC測定の降温時に現れる再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tc15と、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温させてから180℃で2分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第3のDSC測定を行った場合において、降温時に現れる結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tcとが、下記式(A)を満たす、(1)~(16)のいずれか1つに記載の粉体造粒物:
式(A):0.95≦Tc15/Tc≦1.05。
(18) 圧縮造粒物である、(1)~(17)のいずれか1つに記載の粉体造粒物。
(19) (1)~(18)のいずれか1つに記載の粉体造粒物を製造する方法であって、
結晶性ポリマー粉体を圧縮造粒法により造粒する圧縮造粒工程を含み、
造粒直後の造粒物温度Tp(℃)が、結晶性ポリマーの融解ピーク温度T以下となる条件で圧縮造粒工程が行われる、方法。
(20) 圧縮造粒が、ディスクペレッター方式の圧縮造粒装置を用いて行われる、(19)に記載の方法。
本開示により、成形加工において結晶化特性に優れた結晶性ポリマー粉体の造粒物を提供することができる。
実施例1で得られた結晶性ポリマーの粉体造粒物(PHBH粉体造粒物)の「メルトメモリー効果」を示すDSC測定(降温)の結果を示すグラフである。 参考例1で得られた結晶性ポリマーの溶融混練ペレット(結晶化核剤含有)のDSC測定(降温)の結果を示すグラフである。 実施例2で得られた結晶性ポリマーの粉体造粒物(PHBH粉体造粒物)の断面を観察した写真である。 参考例2で得られた結晶性ポリマーの溶融混練ペレット(結晶化核剤を含まない)のDSC測定(降温)の結果を示すグラフである。 参考例3に示す結晶性ポリマー粉体(バイオポリエステル粉体A1)に対するDSC測定(降温)の結果を示すグラフである。 実施例4で得られたPLA粉体造粒物に対するDSC測定(降温)の結果を示すグラフである。
本実施形態は、結晶性ポリマー粉体の粉体造粒物であって、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第1の示差走査熱量(DSC)測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れる第1のホールド温度TH1が存在し、第1のホールド温度TH1は、前記第1のDSC測定の昇温時に最も高温側に現れる結晶性ポリマーの融解ピーク温度Tより高い温度である、粉体造粒物である。
尚、本明細書中における「再結晶化」とは、結晶性ポリマーを融解ピーク温度Tより高い温度に昇温した後、冷却する過程において、結晶性ポリマーが再び結晶化する現象、もしくはその操作を示すものとする。
本実施形態により、成形加工において結晶化特性に優れた結晶性ポリマー粉体の造粒物を提供することができる。
本実施形態においては、結晶性ポリマーが有する「メルトメモリー効果」を有効に引き出し得る状態において粉体造粒物を製造することにより、結晶性ポリマー(とりわけ結晶化速度が遅い結晶性ポリマー(例えば、前記バイオポリエステル樹脂))の結晶化を促進させることができる。これにより、本実施形態に係る粉体造粒物は、成形加工において優れた結晶化特性を奏することができる。例えば、本実施形態に係る粉体造粒物は、結晶化核剤を使用せずとも、成形加工において、優れた結晶化特性を奏することができる。また、本実施形態に係る粉体造粒物は、優れた成形性を奏することのみならず、成形品の物性の改質も可能とし得る。
更に、本実施形態の粉体造粒物は、溶融混練ペレット化の工程を経ずとも、形状が安定し、嵩密度が高く、作業環境の良化をもたらし、加工機へのフィード特性(安定性、流動性)に優れ、また、溶融混練によるペレット化に比べて、製造に要する電気使用量の削減、即ち、二酸化炭素の発生量を低減させることに寄与し得る。
結晶化核剤の多くは人工合成物あるいは無機化合物であり、結晶性ポリマーに対して添加剤として配合されることができ、本実施形態に係る粉体造粒物も結晶化核剤を含有してもよい。しかし、本実施形態に係る粉体造粒物は、結晶化核剤を使用せずとも結晶化促進効果を得ることができる。結晶化核剤を使用しない形態は、樹脂組成物の組成を簡素化でき、コストダウンや生産合理化をもたらし得る他、生体接触にかかわる使用用途において配慮すべき「安全性」に対する観点からも好ましい。
本実施形態により、溶融混練ペレット化の工程を経ずとも、形状が安定し、嵩密度が高く、作業環境の良化をもたらし、加工機へのフィード特性(安定性、流動性)に優れ、また、溶融混練ペレット化に比べて、製造に要する電気使用量の削減、即ち、二酸化炭素の発生量を低減させることに寄与し得る、結晶性ポリマーの粉体造粒物が提供される。本実施形態に係る粉体造粒物は、メルトメモリー効果の作用によって結晶化が促進され得るため、結晶化核剤の配合を要せずに、成形加工性や物性面での改質を図ることが可能となる。なお、当業者であれば、本実施形態に係る粉体造粒物は、結晶化核剤を含み得ること又は結晶化核剤とともに使用し得ることを理解するはずである。本実施形態に係る粉体造粒物が結晶化核剤を含む又は結晶化核剤とともに使用する場合、メルトメモリー効果による結晶化促進作用に加え、結晶化核剤による結晶化促進作用を得ることができる。
また、本実施形態に係る粉体造粒物は、メルトメモリー効果によって、比較的高い温度領域で再結晶化温度(Tc)を観測することができるため、優れた結晶化促進効果を発揮し得る。また、本実施形態に係る粉体造粒物は、溶融滞留時間に対する効果の持続性に優れるため、更に優れた結晶化促進効果を発揮し得る。
本実施形態に係る粉体造粒物は、とりわけ、結晶化が遅いポリヒドロキシアルカノエート(PHA)等のバイオポリエステル樹脂において、その有用性を発揮し、射出成形、圧縮成形、熱成形、注入成形、ブローフィルム(インフレーション)成形、押出コーティング、インジェクションブロー成形、射出延伸ブロー成形等の成形加工性を大きく改善することができる。また、本実施形態に係る粉体造粒物は、メルトメモリー効果を有効に活用できる温度領域において成形加工を行うことにより、追加成分としての結晶化核剤の配合がなくとも、各種の成形加工を有利に改善し得る。
A.粉体造粒物の概要
本実施形態に係る粉体造粒物に関し、以下1)~12)に説明を列挙する。
1)「メルトメモリー効果」とは、「結晶性ポリマーが加熱溶融(熱可塑化)した際に、溶融体中に結晶相の構造秩序が残存している現象」を表す。「メルトメモリー効果」は、融点以上の温度領域にありながら、熱擾乱によるランダムな凝集状態へ変化する緩和時間が長いために、短時間では無秩序なランダムな状態となるに至らない領域が残存する、結晶性ポリマーに発現し得る特有の現象である。
2)「メルトメモリー効果」によって生じた、ポリマー溶融体の中に残存する擬似的な結晶相構造秩序(以下、「メルトメモリー構造」とも称す)は、「結晶化核剤効果」を発現し得る。「メルトメモリー構造」が溶融樹脂内に残存する場合、これらを起点として、結晶成長核の発生速度(発生頻度、造核速度、とも称す)が増す。即ち、短時間に結晶核を多数発生させることができることになり、結晶化速度が速くなり、成形加工時間が短縮化できる利点がある。メルトメモリー効果は、例えば、DSC測定において、結晶性ポリマーの融点以上の温度にまで昇温し、その後、一定の降温速度で降温させた場合に得られる再結晶化温度が、比較対象(例えば、結晶性ポリマーそのものからなる溶融混練ペレット)における再結晶化温度に対して、高温側にシフトする現象によって容易に確認することができる。
3)結晶性ポリマー粉体の造粒物(好ましくは、ディスクペレッターによる圧縮粉体造粒物)では「メルトメモリー効果」を発現させる上で有利となる。とりわけ、結晶性ポリマー粉体を圧縮造粒法(例えば、ディスクペレッターによる圧縮粉体造粒物)によって所定の条件下で造粒することで「メルトメモリー効果」を効果的に発現し得る。例えば、具体的には、融点以下の温度で、ダイスを介して、結晶性ポリマー粉体を圧縮造粒させることで、ポリマー粉体はダイス壁面から強いせん断応力を受け、特にダイス壁面付近の結晶性ポリマー粉体に対して固相変形(融点以下の温度領域での変形)が生じ、強制的な固相変形により、部分的に配向結晶化が進行し得るものと考えられる。一般に結晶性ポリマーでは、ガラス転移温度以上融点以下の温度領域に存在する「結晶緩和温度域」において、「延伸操作」を行うことで配向結晶化が効率的に進行することが知られている。この効果は、繊維やフィルムでの延伸強化で利用されている。この延伸配向効果に類似する効果が、結晶性ポリマー粉体の固相変形によって生じているものと推測される。
4)固相変形により配向結晶化が進行した結晶相は、流動変形場での結晶化であり、結晶相ドメインの大きさ(配向秩序領域の空間的大きさ)が、溶融状態から自然冷却して得られ得る溶融混練ペレットの結晶相ドメインと比較して、その構造単位が大きくなり得るため、融点よりもやや高い温度に過熱昇温した場合においても、結晶相の配向秩序構造が比較的維持・温存されやすい状態となり、その結果、「メルトメモリー効果」が発現しやすくなると考察される。
5)また、固相変形による配向結晶化では、結晶性ポリマーの分子量が「メルトメモリー効果」の発現に影響し得る。即ち、メルトメモリー効果は、ポリマー分子鎖が、溶融状態において結晶秩序状態からランダム状態へ移行する過程での時間的遅れによって発現する現象であるので、分子量が大きいほど、緩和時間(ランダム鎖への移行時間)が長くなり、その効果の持続性において有利となる。メルトメモリー効果を発現する上で有利となる観点から、結晶性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは20万以上、好ましくは30万以上、好ましくは50万以上、好ましくは70万以上である。結晶性ポリマーの重量平均分子量は、例えば、300万以下である。
6)結晶性ポリマー粉体の粉体造粒物における、上記「メルトメモリー効果」の発現は、圧縮造粒法により有利となる。即ち、ダイス等を介して、結晶性ポリマー粉体が強制的な変形作用を受けることで発現し得る。そのため、メルトメモリー効果の発現には、加工温度や変形時間が関与し、例えば、ディスクペレッターによる圧縮造粒法では、適切な加工温度(ガラス転移点以上、融点以下)で、ローラーの回転速度を低速にして造粒することが、メルトメモリー効果を発現させる上で有利となり得る。
7)また、結晶性ポリマーからなる粉体造粒物では、粉体原料として、射出成形品や延伸加工品(例えば、繊維や延伸フィルム、ブロー成形品)等を粉砕して得た粉体原料を使用することにより、上記「メルトメモリー効果」を有利に発現し得る。即ち、成形加工プロセスにおいて、配向結晶化された結晶相を含む成形品を粉砕して得た粉体原料では、「メルトメモリー効果」を発現させる上で有利となる。ここで、「配向結晶化」とは、流動、延伸などの外部作用で生ずる流動場で結晶化が進行し、特定方向に秩序性を有し、結晶化度が向上する現象を表すものとする。
8)一般に、結晶化核剤を配合して、結晶化核剤の作用効果を引き出すには、対象となる結晶性ポリマーと結晶化核剤の両者の結晶構造が類似することにより、結晶核成長が進行しやすくなり得る。この観点から、「メルトメモリー構造」は結晶性ポリマーそれ自体からなる結晶核の生成起点となり得るため、結晶化核剤としての機能を発揮する上で有利となり得る。即ち、結晶性ポリマーそれ自身の「メルトメモリー構造」は、基本的に最も優れた結晶化核剤となり得る。
9)本実施形態に係る粉体造粒物は、溶融混練ペレットと同様に、射出成形、圧縮成形、熱成形、注入成形、ブローフィルム(インフレーション)成形、押出コーティング、インジェクションブロー成形、射出延伸ブロー成形等の成形に用いることができる。本実施形態に係る粉体造粒物を用いて、「メルトメモリー効果」を有効に活用できる温度領域において成形加工を行うことにより、追加成分としての結晶化核剤の配合がなくとも、各種の成形加工を改善し得る。
10)別の観点からは、本実施形態に係る粉体造粒物は、溶融状態からの造粒(溶融混練ペレット)とは異なる製法で得る方法であり、「ヒーター加熱が不要」、「ストランドカットが不要」であり得る造粒法であり、溶融混練ペレットの製造と比べて、造粒工程で要するトータルの使用電力量を大きく削減し得る。
11)溶融混練造粒法による溶融混練ペレットの製造では、「結晶化が遅く、短時間でストランドが十分に固化しないためにペレタイズが容易でない」、「溶融混練ペレットの結晶化が不充分なため、ペレットが余熱、あるいは乾燥時の再加熱により、ペレット同士の自己凝集が進行してブロック化してしまう」等のプロセス上で発生する問題が、本実施形態に係る粉体造粒法では解消され得る。
12)無機物質(例えば、タルク等)を結晶化核剤として少量含む溶融混練ペレットでは、無機結晶化核剤とベースポリマーの接触界面は構造欠陥となり得るため、フィルムやシートの成形において破壊起点となって生産性を損なう場合がある。特に、フィルム等の薄肉の成形品を得る場合に不利となる。また、結晶化核剤とベースポリマーの接触界面は異種界面であるため、その親和性が悪い場合は、様々な成形加工品において物性低下をもたらし得ることがある。しかしながら、本実施形態に係る粉体造粒物は、結晶性ポリマーそれ自身の「メルトメモリー構造」に基づく結晶化核剤作用により結晶化を促進することができるため、結晶化核剤の配合を不要とすることができ、これらの心配が無い。
本実施形態に係る粉体造粒物は、粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第1のDSC測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れる第1のホールド温度TH1が存在する。第1のDSC測定は、窒素気流下で行われることが好ましい。
図1は、実施例1で得られた結晶性ポリマーの粉体造粒物(PHBH粉体造粒物)の「メルトメモリー効果」を示すDSC測定(降温)の結果を示すグラフである。具体的には、図1は、実施例1の粉体造粒物(結晶化核剤の添加なし)を室温から10℃/minの昇温速度で、結晶性ポリマーの融解ピーク温度T(実施例1では147℃付近)より高温域にある第1のホールド温度TH1(図1では180℃)まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で2分間、5分間、15分間、又は30分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第1のDSC測定を行った結果(降温時)を示すグラフである。図1に示されるように、本実施形態に係る粉体造粒物に相当する実施例1の粉体造粒物において、第1のDSC測定の降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れることが確認される。本実施形態に係る粉体造粒物は、結晶性ポリマー粉体の粉体造粒物であるが、造粒された結晶性ポリマー粉体の一部は、固相変形によって結晶化が進行することで、効果がより顕著となると推測される「メルトメモリー構造」を有しているため、成形加工において、たとえ結晶化核剤を配合せずとも、メルトメモリー構造に基づく結晶化作用により結晶化が促進される。そのため、図1に示されるように、第1のDSC測定の降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れることが確認される。本実施形態において、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れる第1のホールド温度TH1が存在することは、造粒された結晶性ポリマー粉体にメルトメモリー構造が存在することを示している。第1のホールド温度TH1は、第1のDSC測定の昇温時に最も高温側に現れる結晶性ポリマーの融解ピーク温度Tより高い温度である。
また、本実施形態に係る粉体造粒物は、粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第2のホールド温度TH2まで昇温させてから第2のホールド温度TH2で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第2のDSC測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れない第2のホールド温度TH2が存在することが好ましい。第2のホールド温度TH2は、第1のホールド温度TH1よりも高い温度である。第2のDSC測定は、窒素気流下で行われることが好ましい。
また、本実施形態に係る粉体造粒物は、上記第1のDSC測定の降温時に現れる再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tc15と、上記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で2分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第3のDSC測定を行った場合において、降温時に現れる再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tcとが、下記式(A)を満たすことが好ましい。なお、第3のDSC測定は、窒素気流下で行われることが好ましい。
式(A):0.95≦Tc15/Tc≦1.05
式(A)は、第1のホールド温度TH1で15分間保持した場合の再結晶化発熱ピークのピーク温度(Tc15)が、第1のホールド温度TH1で2分間保持した場合の再結晶化発熱ピークのピーク温度(Tc)に対してシフトせずに(好ましくは低温側にシフトせずに)、溶融時間に対してメルトメモリー効果が保持されることを示す条件式である。式(A)を満たす場合、粉体造粒物は、優れた再結晶化特性を示すことが認められる。式(A)を満たす第1のホールド温度TH1は少なくとも1点存在すればよい。例えば、式(A)を満たす第1のホールド温度TH1が、融解ピーク温度Tより高く、且つ第2のホールド温度TH2より低い温度範囲において少なくとも1点存在すればよい。比Tc15/Tcは、好ましくは0.96以上1.04以下であり、好ましくは0.97以上1.03以下であり、好ましくは0.98以上1.02以下であり、好ましくは0.99以上1.01以下である。
本実施形態に係る粉体造粒物の構造等について、以下にさらに説明する。
本実施形態に係る粉体造粒物では、当該粉体造粒物の外縁に位置する結晶性ポリマー粉体の少なくとも一部が溶融して構成された外壁部を有し、外壁部の内側に圧縮された結晶性ポリマー粉体が収まっている、粉体造粒物であり得る。
本実施形態に係る粉体造粒物において、外壁部は造粒物の外縁に位置する。本明細書において、外壁部をシェル部とも称す。外壁部の内側には、圧縮された結晶性ポリマー粉体が収まっており、該結晶性ポリマー粉体は、少なくとも一部が溶融していてもよく、少なくとも一部が溶融していなくてもよい。
外壁部の内側の圧縮された結晶性ポリマー粉体は、未溶融状態であってもよい。すなわち、外壁部の内側の圧縮された結晶性ポリマー粉体の少なくとも一部が、溶融していない圧縮された粉体状形態を含んでいてもよく、部分的に溶融している形態を含んでいてもよい。部分的に溶融している形態とは、結晶性ポリマー粉体の構成成分が部分的に溶融しているが、外壁部のように結晶性ポリマー粉体を保持できるほどに強固な溶着構造とはなっていない形態を意図している。なお、本明細書において、外壁部の内側をコア部とも称す。外壁部の内側のコア部には、圧縮された結晶性ポリマー粉体が収まっているが、本明細書において、「圧縮された」とは、造粒前の結晶性ポリマー粉体の嵩密度に比べて、コア部に位置する結晶性ポリマー粉体の密度が高くなっていることを指す。
本実施形態に係る粉体造粒物における外壁部(シェル部)は、結晶性ポリマー粉体の溶融物を含む密な構造を有し、一方、その内側のコア部は、圧縮されてはいるものの、溶融物を含む外壁部の密な構造(溶着構造)に比べて、疎な構造を有する。本発明の結晶性ポリマー粉体の造粒物では、結晶性ポリマー粉体の溶融物が外壁となり、コア部に存在する圧縮された結晶性ポリマー粉体を保持するため、粉体造粒物でありながら、構造が安定し、粉落ちが少なく、取扱い性及び安全性に優れ、かつ、作業環境の良化をもたらし得る。
外壁部(シェル部)は、粉体造粒物の外縁に位置する結晶性ポリマー粉体の少なくとも一部が溶融した溶着構造を有する。外壁部は、光沢面外観を有する程に平滑面となっていてもよい。また、平滑面となる程までには溶融していないものの、結晶性ポリマー粉体の構成成分の一部が溶融して隣接する成分と部分的に溶着することにより、外壁部が構成されていてもよい。詳細は後述するが、外壁部は、圧縮造粒において、例えばダイスとの接触面で、壁面との摩擦熱もしくは壁面からの伝熱によって結晶性ポリマー粉体の少なくとも一部が溶融することで形成されることができる。外壁部の厚みは、結晶性ポリマー粉体の造粒物の製造条件により、様々な厚みを取り得る。
コア部は、外壁部の内側に位置する部分であって、圧縮された結晶性ポリマー粉体が収まっている部分である。コア部に位置する結晶性ポリマー粉体は、多孔質状となっていてもよいし、造粒時に熱がコア部までには伝わらずに、非溶着構造となっていてもよい。コア部は、ダイス接触面からの距離が遠いために、結晶性ポリマー粉体原料が粉体形状を維持した構造(すなわち非溶着構造又は粉体状構造)、あるいは、一部が溶着しているが粉体ポリマー原料の形状が残存する構造を有し得る。
また、本明細書において、説明の簡便化のために「外壁部(シェル部)」や「コア部」との用語を用いているが、上述の通り、外壁部は、造粒時の熱によって結晶性ポリマー粉体が溶融して形成されるものであるため、実際には、外壁部(シェル部)とコア部の境界は明確に存在するものではない。外壁部(シェル部)は、結晶性ポリマー粉体の溶着構造を含み、粉体造粒物の外縁に位置して粉体造粒物の一定の形状を保つのに寄与する部分を指し、コア部は、その外壁部(シェル部)の内側に位置する部分を指す。
粉体造粒物の形状は、略円柱状又は略角柱状であることが好ましく、粉体造粒物は、粉体造粒物の側面に外壁部を有することが好ましい。本発明において、粉体造粒物は、略円柱状又は略角柱状を有し、略円柱状又は略角柱状を有する粉体造粒物の側面に外壁部が形成されていることが好ましい。
上記の構造を有する本発明の結晶性ポリマー粉体造粒物では、熱可塑性樹脂用の射出成形機、押出成形機など各種の成形機への直接供給や、成形用材料としての使用が可能となる。
本実施形態に係る粉体造粒物は、溶融コンパウンドによる樹脂組成物の製造において、熱可塑性樹脂の原料として使用され得る。コンパウンド用原料として使用する場合においては、原料供給能力、供給安定性、及び供給精度を向上させることができ、生産性向上に寄与し得る。具体的には、粉体造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れるため、当該粉体造粒物を用いれば、樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。また、粉塵による作業環境汚染を著しく改善し、作業者の労働安全衛生環境を向上させることができ、さらに、設備の切り替え清掃の時間を大幅に短縮できる。
本実施形態に係る粉体造粒物は、粉体圧縮造粒法を用いることで好ましく得ることができるが、製造方法の詳細については後述する。
本実施形態に係る粉体造粒物は、任意の適切な形状であり得る。代表的には、粉体の圧縮造粒で製造され、円形状のダイス孔を通過させて造粒を行う場合、基本的な形状は円柱状のペレット形状である。
尚、本明細書における「ダイス」とは、粉体造粒物を圧縮して形状付与するための「型」に相当する工具を総称するものとする。
粉体造粒物が円柱状である場合、粉体造粒物の直径は、例えば、2mm~7mmであり、好ましくは、3mm~5mmである。粉体造粒物の長さ(高さ)は、例えば、1mm~10mmであり、好ましくは、2mm~7mmである。このような形状であれば、ハンドリングしやすい粉体造粒物となる。粉体造粒物の直径は、例えば、造粒の際のディスクプレート(ダイスプレート)のダイス孔の径により調整でき、長さはディスクプレートとカッター間の距離で調整できる。当該距離は任意の適切な距離とされ得る。ディスクプレートとカッター間の距離は、例えば、1mm~30mmであり、好ましくは2mm~20mmであり、好ましくは3mm~10mmである。
本実施形態に係る粉体造粒物の木屋式硬度計の測定に基づく破壊強度は、好ましくは1.0kg以上であり、好ましくは2.0kg以上であり、好ましくは3.0kg以上であり、好ましくは4.0kg以上であり、好ましくは5.0kg以上であり、好ましくは6.0kg以上であり、好ましくは7.0kg以上であり、好ましくは8.0kg以上であり、好ましくは9.0kg以上であり、好ましくは10.0kg以上である。上限は木屋式硬度計の測定限界(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」では10kgが測定限界)を超えてもよい。このような範囲であれば、ハンドリング性と溶融加工性に優れる粉体造粒物を得ることができる。ここで、破壊強度とは、20粒以上(好ましくは25粒以上)について、粉体造粒物の長手方向(押出方向)に対して垂直な方向に粉体造粒物を圧し潰すことで測定した平均の破壊応力(破壊荷重)を示す。粉体造粒物では、シェル部が溶融樹脂で構成されるため、粉体造粒物であるにもかかわらず、造粒物として安定な形状を維持することが可能となる。木屋式硬度計の加圧アタッチメントの加圧面の直径は、例えば、5mmである。
本実施形態に係る粉体造粒物の見かけ密度比は、例えば0.85以上0.95以下であり、好ましくは0.87以上0.94以下であり、好ましくは0.89以上0.93以下であり、好ましくは0.90以上0.92以下である。見かけ密度比が1に近づくほど気泡の含有量が少ない粉体造粒物であることを示すが、粉体造粒物の見かけ密度比が0.95以下である場合、粉体造粒物の造粒生産性を効率的に高めることができる。また、見かけ密度比が0.85以上である場合、メルトメモリー効果を有効に発現させる上で有利となり得る。
ここで、見かけ密度比は以下の式で表される。
「見かけ密度比」=「粉体造粒物の見かけ密度」/「溶融混練ペレットの見かけ密度」
「粉体造粒物の見かけ密度」又は「溶融混練ペレットの見かけ密度」は、比重計(エー・アンド・デイ社製、商品名「ELECTRONIC DENSIMETER MDS-300」)を使用し、「粉体造粒物」又は「溶融混練ペレット」の10粒以上(好ましくは15粒以上)について見かけ密度を計測し、それらの平均値を算出することにより得ることができる。「溶融混練ペレットの見かけ密度」の測定は、粉体造粒物を構成する組成物を、結晶性ポリマーの融点以上の温度で2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、気泡混入のない溶融混練ペレットを作製し、当該溶融混練ペレットに対して、見かけ密度測定を行う。
本実施形態に係る粉体造粒物に関し、造粒前の結晶性ポリマー粉体の嵩密度をρ、粉体造粒物の嵩密度をρとしたとき、嵩密度比ρ/ρの値は、例えば0.90以上3.00以下であり、好ましくは1.00以上2.50以下であり、好ましくは1.10以上2.00以下であり、好ましくは1.10以上1.80以下である。嵩比重比ρ/ρが0.90以上である場合、粉体造粒物のメルトメモリー効果が有効に発現し得る。嵩比重比ρ/ρが3.00以下である場合、造粒生産性を向上でき、また、破壊強度に優れた粉体造粒物を効果的に得ることができる。
粉体造粒物の嵩密度は、任意の適切な嵩密度とされ得るが、好ましくは0.3kg/L~2.0kg/Lであり、好ましくは0.5kg/L~1.0kg/Lである。嵩密度を高くすることで、各種加工機への粉体造粒物の供給速度と供給安定性が高まる。
造粒前の原料としての結晶性ポリマー粉体としては、任意の嵩密度のものを使用することができるが、結晶性ポリマー粉体の嵩密度は、好ましくは0.05kg/L~1.0kg/Lであり、好ましくは0.1kg/L~0.8kg/L、好ましくは0.2kg/L~0.6kg/Lである。結晶性ポリマー粉体の嵩密度がこの範囲にある場合、圧縮造粒が行い易い。
嵩密度は、「造粒前の結晶性ポリマー粉体」又は「粉体造粒物」を升に自然落下させてすり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その質量を測定することで算出される(単位:kg/L)。
粉体造粒物の水分量は、任意の適切な水分量であり得る。粉体造粒物の水分量は、原料粉体が元々保有する水分の他に、造粒を円滑化するために粉体に水を加えることもある。造粒時に水を加える場合の、水の配合量については後述する。
粉体造粒物の造粒工程において、局所的な発熱はダイス詰まりを生じることに繋がるために、造粒において適度な水分を含ませて水の気化熱により、造粒時の過度の昇温を抑制することが連続的に造粒する上で有利となる場合がある。
粉体造粒物は造粒後に乾燥処理を行うこともできるが、最終的な粉体造粒物の水分量は、好ましくは10質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下である。最終的な粉体造粒物の水分量は、使用目的に応じて適宜選択され得る。
粉体造粒物は、「水の添加なし」で造粒されたものであることが好ましい。粉体造粒物の水分量が低い場合は、造粒後の乾燥工程が不要となり得る。水を使用せずに造粒できれば、乾燥工程が不要となるので、粉体造粒工程で発生する二酸化炭素の排出量を大きく削減できる。
「水の添加なし」で造粒された粉体造粒物の水分量は、例えば1.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以下である。
粉体造粒物の水分量は、後述の通り、赤外線水分計を用いて測定される。
原料として使用される結晶性ポリマー粉体は、任意の適切な結晶性熱可塑性樹脂であり得る。
結晶性ポリマーの具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PUR)、フッ素系樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリエステル(PET、PBT、脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル等)等が挙げられる。結晶性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
メルトメモリー効果を効果的に発現させる上で有利となる結晶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、20万以上、好ましくは30万以上、好ましくは50万以上、好ましくは70万以上である。メルトメモリー効果は、ポリマー分子鎖が、溶融状態において結晶秩序状態からランダム状態へ移行する過程での時間的遅れによって発現するので、分子量が大きいほど、緩和時間(ランダム鎖への移行時間)が長くなり、その効果の持続性において有利となる。結晶性ポリマーの重量平均分子量が20万以上である場合、熱擾乱によるメルトメモリー効果の低下又は失活を効果的に抑制することができるため好ましい。一方、結晶性ポリマーの分子量が大きくなり過ぎると、粘度が高くなり過ぎて、固相変形を生じさせるのに不利となり、また、粉体造粒自体が困難となる傾向にある。そのため、結晶性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは300万以下であり、好ましくは200万以下、好ましくは150万以下、好ましくは100万以下である。
結晶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエンションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。例えば、GPC装置として、昭和電工社製「ショーデックスGPC-101」を用い、カラム充填剤としてポリスチレンゲル(昭和電工社製「ショーデックスK-804」)を用い、有機溶媒移動相(例えば、クロロホルム)を用いたGPCにより評価することができる。なお、カラム装置、カラム充填剤及び有機溶媒移動相は、結晶性ポリマーに応じて適宜選択し得る。
結晶性ポリマー粉体は、その製造プロセスを経て得られた粉体状樹脂、すなわち、製造プロセスを要因とした粉体状であってもよく、ペレット状の樹脂、塊状の樹脂もしくは樹脂成形体等の非粉体状の樹脂を粉砕して得られた粉体状樹脂であってもよい。粉砕された粉体状樹脂は、成形品、ペレット、射出成形において発生するスプルやランナー等を室温下、あるいは、必要に応じてドライアイスや液体窒素を用いて冷却した後、粉砕機(例えば、ダルトン社製、商品名「ネアミル」、「シルフィードミル」、「アトマイザー」、又は「インパクトミル」等)を使用して得ることができる。
粉体原料として、射出成形品、あるいは延伸加工工程を含むフィルム、繊維、ブロー容器等のような、成形加工プロセスに起因して生じる、配向結晶化された結晶相を含む成形品を粉砕して得た粉体原料では、「メルトメモリー効果」を発現させる上で有利となる。ここで、「配向結晶化」とは、流動、延伸などの外部作用下で結晶化が進行し、特定方向に秩序性を有し、結晶化度が向上する現象を表す。
本実施形態に係る粉体造粒物は、第1のDSC測定の昇温時に最も高温側に現れる融解ピーク温度(T[℃])が70℃以上200℃以下の温度範囲にある少なくとも1種の結晶性ポリマー粉体を含むことが、各種の粉体造粒装置を用いて、安定に連続生産する観点から、好ましい。結晶性ポリマー粉体の上記T[℃]は、70℃以上200℃以下が好ましく、75℃以上190℃以下が好ましく、80℃以上180℃以下が好ましく、90℃以上170℃が好ましい。この範囲に記T[℃]が存在する結晶性ポリマー粉体を使用することで、メルトメモリー効果がより有利に発揮され得る。
結晶性ポリマーとして、生分解性樹脂を用いてもよい。生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーあるいはコポリマー、これらのホモポリマーあるいはコポリマーの変性物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル系樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーあるいはランダムポリマー等)等が挙げられる。生分解性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、例えば、微生物が、糖質、油脂類等を餌として、体内で生成した化合物であり得る。このようなポリヒドロキシアルカノエートは、一次的には粉体状のポリマーとして取り出される。
ポリヒドロキシアルカノエートは、原料成分であるヒドロキシアルカン酸を重合成分として含み、ヒドロキシアルカン酸から誘導された繰り返し単位を少なくとも有する。ポリヒドロキシアルカノエートは、人工的に合成したものであってもよいし、微生物により生合成されたものであってもよい。ヒドロキシアルカン酸の例としては、グリコール酸、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシプロピオネート、3-ヒドロキシバレレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシヘプタノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、3-ヒドロキシナノエート、3-ヒドロキシデカノエート、3-ヒドロキシテトラデカノエート、3-ヒドロキシヘキサデカノエート、3-ヒドロキシオクタデカノエート、4-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシバレレート、5-ヒドロキシバレレート、又は6-ヒドロキシヘキサノエート等が挙げられる。ヒドロキシアルカン酸の炭素数は2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上であってよく、好ましくは3以上である。ヒドロキシアルカン酸の炭素数は15以下、12以下、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってよく、好ましくは10以下、特に6以下である。ヒドロキシアルカン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリヒドロキシアルカノエートとしては、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)やポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が好ましく挙げられる。
原料としての結晶性ポリマー粉体の粒子径は、本実施形態の効果が得られる限り、その形態に応じて、任意の適切な粒子径とされ得る。結晶性ポリマー粉体の粒子の最大径は5mm以下であることが好ましく、また最小径は、0.0001mm以上が好ましい。
結晶性ポリマー粉体の平均粒子径は、例えば、0.001mm以上1.0mm以下である。結晶性ポリマー粉体の平均粒子径は、好ましくは1.0mm以下であり、好ましくは0.01mm以上0.8mm以下であり、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下である。本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折法で測定され得る。樹脂粉体の平均粒子径は、体積基準での累積粒度分布における累積50%となる粒子径(d50)であり得る。結晶性ポリマー粉体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリマー粉体は、その製造プロセスを経て得られた粉体状樹脂、すなわち、製造プロセスを要因として粉体状であってもよく、ペレット状の樹脂、塊状の樹脂もしくは樹脂成形体等の非粉体状の樹脂を粉砕して得られた粉体状樹脂であってもよい。粉砕された粉体状樹脂は、成形品、ペレット、射出成形において発生するスプルやランナー等を室温下、あるいは、必要に応じてドライアイスや液体窒素を用いて冷却した後、粉砕機(例えば、ダルトン社製、商品名「ネアミル、シルフィードミル、アトマイザー、インパクトミル」等)により粉砕して得ることができる。
本実施形態に係る粉体造粒物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤は、粉体等の固体状であってもよく、液体状であってもよい。添加剤としては、例えば、結着剤、分散剤、結晶化核剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、相溶化剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、加水分解抑制剤、脱酸素剤、又は着色剤(染顔料)等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記添加剤は、粉体等の固体状であってもよいし、液体状であってもよい。
粉体造粒物中の添加剤の含有量は、例えば10.0質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
本実施形態に係る粉体造粒物は、添加剤として、結着剤(バインダー)を含み得る。ここで、「結着剤」とは、原料の結晶性ポリマー粉体の構成成分以外に、結晶性ポリマー粉体間に存在して、粉体同士を結着させ、造粒物の破壊強度を高める作用効果を発揮させ得る化合物を総称して表すものとするが、必要に応じて、結着効果を奏する様々な化合物、好ましくは、水分散系あるいは水溶性のポリマー化合物、多糖類等を結着剤として適宜選択して使用することができる。
一実施形態において、結晶性ポリマー粉体の構成成分の一部を融解・結着させて粉体造粒物とすることが好ましく、結着剤を配合しないことが好ましい。
結着剤の含有量は、粉体造粒物の全質量に対して、通常、10.0質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、好ましくは0質量%(検出不可)である。
一実施形態においては、添加剤として、分散剤が好ましく使用される。分散剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。分散剤(界面活性剤)における親水性/疎水性バランスは、分散剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度等を調整することにより、制御することができる。分散剤の使用により、「粉体造粒物の生産性(吐出速度)を向上させる」、「造粒時の摩擦熱を低下させる」、「造粒装置の清掃性を高めることができる」、等の効用をもたらし得ることがある。
分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸スルホン酸塩、脂肪酸アマイド、アクリルアミド、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一実施形態においては、分散剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸及び縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールと炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸のエステル類が用いられる。
脂肪酸アマイドとは、脂肪酸とアンモニアあるいは1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つ化合物である。脂肪酸アマイドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。
分散剤の含有量は、粉体造粒物の全質量に対して、通常、0質量%~10.0質量%であり、好ましくは0.01質量%~9.0質量%であり、好ましくは0.1質量%~7.0質量%であり、より好ましくは0.3質量%~5.0質量%である。また、分散剤の含有量は、粉体造粒物の全質量に対して、通常、10.0質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、好ましくは0質量%(検出不可)である。
本発明の粉体造粒物では、添加剤として、結晶化核剤を配合することが可能であるが、このような結晶化核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、シュウ酸金属塩、脂肪酸金属塩等の有機金属塩化合物類、脂肪族有機エステル、リン酸トリアリル、ポリアルキレングリコールもしくはその誘導体や脂肪族ポリエステル、ベンジリデンソルビトール等の有機化合物類、ペンタエリスリトール、キナクドリン、シアニンブルー、カーボンブラック等の染顔料類、タルク、マイカ、カオリン、クレー、炭酸塩鉱物、金属酸化物、金属硫酸塩等の鉱物類、アイオノマー、又は高融点ポリアミド等の高分子化合物類等が挙げられる。一実施形態において、結晶化核剤として、タルク、マイカ、カオリン、又は炭酸カルシウム等が用いられる。結晶化核剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶化核剤の粉体造粒物中の含有量は、例えば0.1質量%以上10.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%超10.0質量%未満であり、好ましくは0.2質量%以上7.0質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以上5.0質量%以下である。
一実施形態において、粉体造粒物は、結晶化核剤を実質的に含有しない。本実施形態に係る粉体造粒物は、「メルトメモリー効果」を奏することができるため、結晶性ポリマー(とりわけ結晶化速度が遅い結晶性ポリマー(例えば、前記生分解性樹脂))を用いた場合において結晶化核剤を使用せずとも、成形加工において、優れた結晶化特性を奏することができる。
「結晶化核剤を実質的に含有しない」とは、例えば、粉体造粒物中の結晶化核剤の含有量が0.1質量%以下であることを意味し、好ましくは、粉体造粒物中の結晶化核剤の含有量が0.1質量%未満であることを意味し、好ましくは、粉体造粒物中の結晶化核剤の含有量が0.01質量%以下であることを意味し、好ましくは、粉体造粒物中の結晶化核剤の含有量が0.005質量%以下であることを意味し、好ましくは、粉体造粒物中の結晶化核剤の含有量が0.001質量%以下であることを意味し、好ましくは、粉体造粒物中の結晶化核剤の含有量が0質量%(検出不可)であることを意味する。
B.結晶性ポリマー粉体造粒物の製造方法
本実施形態に係る粉体造粒物は、例えば、原料である結晶性ポリマーのガラス転移温度以上、融点以下の温度領域において製造され得る。
本実施形態に係る粉体造粒物は、「ダイス」を介して、粉体造粒物を圧縮し、ダイス接触部を介して結晶性ポリマー粉体の一部を固相変形させることで好ましく得られ得るが、好ましくは、結晶性ポリマー粉体をダイス孔から押し出す圧縮造粒法で得ることができ、シェル部は、結晶性ポリマー粉体がダイス孔から押し出される際、すなわち押出造粒時、ダイス孔の壁面との接触面にて、壁面との摩擦熱もしくは壁面からの伝熱によって結晶性ポリマー粉体の構成成分が固相変形し、一部溶融することで形成される。
シェル部を形成することで、粉体造粒物としての一定の形状(例えば円柱状、角柱状)を保つことができ、品質安定性(形状安定性、硬度の均一性)、低微粉性、高硬度性、ハンドリング性に優れる粉体造粒物を得ることができる。
本実施形態に係る粉体造粒物は、溶融混練によるペレット化(溶融混練ペレット法)とは異なる造粒方法で得られる造粒物であり、溶融混練加工設備と異なる機械設備で造粒するが、工程に使用する電力量を低減でき、粉体造粒物の製造に要する二酸化炭素の発生量を大きく減じることが可能となる。また、本実施形態に係る粉体造粒物は、可塑化溶融を可能とする高温に至らない工程で造粒が行えるので、結晶性ポリマーに対して少ない熱履歴を有し得ることも利点となる。
一実施形態において、粉体造粒物は、水を使用せずに造粒して得ることができる。その場合、乾燥工程が不要となるため、造粒に使用される電力量を削減でき、工程で発生する二酸化炭素の排出量を更に大きく削減できる。
粉体造粒物の圧縮造粒時に結晶性ポリマー粉体がダイスに接触する際、ダイスの壁面と粉体との間で摩擦熱を発し得る。この際、摩擦熱によって粉体造粒物は、温度が上昇するが、造粒直後の造粒物温度(Tp;単位℃)が、結晶性ポリマーの融点Tm[℃](上述の、粉体造粒物のDSC測定において最も高温側に現れる結晶性ポリマーの融解ピーク温度T[℃]とは異なる場合がある)よりも高くなり過ぎると、結晶性ポリマー粉体が過剰に溶融して、ダイス壁面に付着したり、ダイス孔詰まりを発生してしまうために、連続造粒が不能となる。一方、造粒直後の造粒物温度(Tp)が、結晶性ポリマーのTmよりも低くなり過ぎると、原料樹脂粉体は、結着力を持たずに、粉体の状態で造粒物とならないか、もしくは容易に圧縮崩壊してしまう造粒物となり、安定な形状で造粒物を得難くなる。
メルトメモリー効果を有する結晶性ポリマー粉体造粒物を安定に得るためには、造粒直後の造粒物温度(Tp)と、結晶性ポリマーの融点Tmが特定範囲にあることが好ましい。一実施形態において、造粒物温度Tpが、ガラス転移温度Tg以上、融点Tm以下の温度範囲となる条件において圧縮造粒が行われる。好ましくは、ガラス転移温度Tg以上融点Tm以下の温度範囲に存在する「結晶緩和温度域」と呼ばれる、融点以下の固相状態にある結晶性ポリマーの結晶相が外部応力により変形可能となる温度領域内にTpが存在する条件において圧縮造粒が行われる。
ここで、ガラス転移温度Tg、融点Tm、及び「結晶緩和温度域」は、動的粘弾性測定又はDSC測定等の測定方法で測定することが可能である。
本実施形態に係る粉体造粒物の好ましい製造方法は、結晶性ポリマー粉体を圧縮造粒法により造粒する圧縮造粒工程を含み、造粒直後の造粒物温度Tp(℃)が、結晶性ポリマーの融解ピーク温度T以下となる条件で圧縮造粒工程が行われる方法である。圧縮造粒法は、結晶性ポリマー粉体をダイス孔から押し出す圧縮造粒法であることが好ましい。圧縮造粒工程は、造粒直後の造粒物温度Tp(℃)と結晶性ポリマーの融点Tm(℃)とが式(1)を満たす条件下で行われることが好ましく、式(2)を満たす条件下で行われることが好ましく、式(3)を満たす条件下で行われることが好ましい。
式(1):Tm-100≦Tp≦Tm
式(2):Tm-90≦Tp≦Tm
式(3):Tm-80≦Tp≦Tm
造粒直後の造粒物温度(Tp)は、接触式熱電対により測定することができる。造粒直後の造粒物温度(Tp)の測定は、粉体造粒装置において、造粒が安定に行える状態とした後、造粒中に装置を停止させ、ダイス部、もしくはダイス孔内部の粉体造粒物内へ熱電対を直接挿入して、その温度を素早く計測することにより行うことができる。測定は、最低3回以上(好ましくは5回)行い、その平均値をTpとする。この際、粉体がダイス壁面に付着したり、あるいはダイス孔の目詰まりを生じて、造粒不能となった場合も、同様に粉体内部へ熱電対を直接挿入して、その温度を計測する。
本実施形態に係る粉体造粒物を効率よく得るためには、粉体と直接接するダイスの温度を制御することが最も効果的である。即ち、ダイスに温度調整のためのヒーターや熱媒流路を設けて加温できる仕組み、更には冷却用媒体の流路を設けて冷却する仕組み等を設けることにより、式(1)の温度条件となるように、ダイスの温度を制御することが好ましい。
一般の圧縮造粒装置では、装置の簡便性から、ダイスの温度制御を直接的に行うことができない単純な構造である場合が多いが、このような場合においても、造粒装置のローラーの回転数、ダイス孔の孔径、ダイス孔の加圧有効長、原料粉体の供給速度、原料粉体とダイス表面との接触面積及び接触時間、造粒設備への断熱もしくは冷却等の方法により、造粒直後の造粒物温度(Tp)を変化させ、制御することができる。
ダイスの温度調整装置がない場合においては、造粒時の摩擦熱による昇温と外部への熱発散とのバランスによる温度制御を採用し得るが、式(1)を満たす条件に設定して粉体造粒物を効率よく得るためには、結晶性ポリマー粉体の融点Tmが、70℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上180℃以下であることが好ましく、90℃以上170℃以下であることが好ましい。この範囲に上記Tを有する結晶性ポリマー粉体を使用することで、メルトメモリー効果がより有利に発揮されやすい。
結晶性ポリマー粉体は単一成分でも良いし、2種以上の複数の成分の組み合わせでも良い。特に、対象の結晶性ポリマー粉体の融点Tmと造粒物温度(Tp)の差が大きく、造粒物温度を上記式(1)~(3)のいずれかの条件を満たすように設定し難い場合には、造粒物温度よりも融点が低い熱可塑性樹脂を配合し、混合物としての造粒物を得ることもできる。
結晶性ポリマー粉体が2種以上の複数成分で構成される場合、あるいは2つ以上の融点が観察される場合は、融点Tmが最も低い結晶性ポリマー粉体の構成成分の融点Tmを式(1)のTmとして、造粒直後の造粒物温度(Tp)が式(1)を満たす範囲となる条件(例えばダイス温度)を設定することで、造粒することが好ましい。好ましくは、結晶性ポリマー粉体の構成成分のいずれの融点Tmについても式(1)を満たす条件(例えばダイス温度)を設定することである。
結晶性ポリマー粉体の粉体造粒物中の含有量は、例えば90質量%以上、好ましくは95質量%以上、好ましくは96質量%以上、好ましくは97質量%以上、好ましくは98質量%以上、好ましくは99質量%以上、好ましくは99質量%以上である。
結晶性ポリマー粉体が2種以上の複数成分で構成される場合は、最も融点が低い結晶性ポリマー粉体の構成成分は、結晶性ポリマー粉体の全量に対し、例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
本明細書において、結晶性ポリマー粉体の融点Tmは、示差走査熱量計(DSC)で測定され得る。DSC測定において、通常5mg程度の結晶性ポリマー粉体の試料を試料皿に測り取り、窒素気流下で10℃/分で昇温させて、融点Tmを求める。本明細書中における結晶性ポリマー粉体の融点Tmは10℃/分で昇温させて観測される結晶融解の「吸熱ピーク温度」を融点とする。
尚、結晶融解の吸熱ピークが複数現れてもよいが、バイオポリエステルにおいて、しばしば複数の吸熱ピークが現れることがあり得る。
粉体造粒物は、各種の粉体造粒機により製造することができるが、例えば、ディスクペレッター方式、スクリュー押出方式、ブリケッティング方式、コンパクション方式、タブレッティング方式等の圧縮造粒機が好ましい造粒機として挙げられる。上記に例示する中で、造粒生産性と、得られる粉体造粒物の品位や形状均一性の観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。ディスクペレッター方式では、適度な水分を含有させる「半湿式造粒法」も採用され得るが、本実施形態では、水を使用することなく、造粒を行うことも可能となる場合がある。この場合、乾燥工程が不要となり得る。水を使用せずに造粒できれば、乾燥工程で必要となるエネルギー量を削減でき、工程で発生する二酸化炭素の排出量を大きく削減できる。
結晶性ポリマー粉体が2種以上の粉体原料を含む混合物である場合は、任意の適切な混合機を用いて、均一に混合することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)等を挙げることができる。造粒性に優れた好ましい混合物を得るために、混合攪拌装置の攪拌羽根が適切であること好ましい。例えば、ヘンシェルミキサータイプの混合機を使用する場合、ミキサーの羽根は上羽根と下羽根の組み合わせとし、上羽根はY1羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、下羽根はS0羽根(商品名、日本コークス(株)製)を使用することが好ましい。また、撹拌槽内にデフレクターを装着し、混合することが好ましい。すなわち、混合物全体にわたって各成分を均一に分散させることが可能な混合工程とすることにより、最終的に得られる粉体造粒物の生産性と品質安定性を高めることに有利となる。
「半湿式造粒法」も採用することができるが、水の配合量は、粉体の特性(吸水性等)により、任意の適切な量とされ得る。この場合、水の配合量は、結晶性ポリマー粉体100質量部に対して、3質量部~30質量部であり、好ましくは5~25質量部、好ましくは5~20質量部である。半湿式法は造粒工程で造粒性が安定しない場合に採用することができる。
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個(平板状ダイス)又は2個のディスク(円筒状ダイスを示す)と、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された結晶性ポリマー粉体(水分を含んでもよい)が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。押し出された造粒物は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状の粉体造粒物を得ることができる。造粒物の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数等によって調整が可能である。ディスクプレートとカッター間の距離は、任意の適切な距離とされ得る。ディスクプレートとカッター間の距離は、例えば、1mm~30mmであり、より好ましくは2mm~20mmであり、さらに好ましくは3mm~10mmである。
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
以下に、本実施形態を実施例により具体的に説明するが、本実施形態はこれら実施例により何ら限定されるものではない。尚、部及び%は特に断りのない限り質量基準に基づく。
[評価]
実施例及び比較例で得られた結晶性ポリマー粉体造粒物(粉体造粒物)の評価は以下の方法で行った。
(1)造粒性(造粒可否)
得られた粉体造粒物の確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
A:コア・シェル構造の粉体造粒物が得られ、シェル部に溶融ポリマーが明確に観察される。
B:コア・シェル構造の粉体造粒物が得られ、シェル部に溶融ポリマーが部分的に観察される。
C:不安定であるがコア・シェル構造の粉体造粒物が得られ、シェル部に溶融ポリマーがわずかながら観察される。
D:造粒物が不安定で崩壊しやすい。
E:「粉体状形状のまま」、もしくは「ダイス詰まり」で造粒不能。
(2)造粒物の断面観察写真
得られた結晶性ポリマー粉体造粒物から、剃刀刃を用いて、ダイスからの押出方向に対して垂直に切片を切り出し(厚み:0.5mm)、切り出し断面を光学顕微鏡により観察した。
(3)嵩密度
乾燥後の粉体造粒物を1リットルの升に自然落下させ、すり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その質量を測定することで、粉体造粒物の嵩密度(単位:kg/L)を算出した。
(4)水分量
赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、粉体造粒物に残存する水分量(単位:質量%)を測定した。
(5)破壊強度
木屋式硬度計(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」)を用いて、粉体造粒物の破壊応力(単位:kg)を測定した。測定値は粉体造粒物25粒の平均値とした。即ち、粉体造粒物の側面が底面となるように硬度計にセットし、5mmφの円柱状の押し具を用いて、粉体造粒物の側面を圧し潰すことで、破壊応力の測定を行った。さらに換言すると、粉体造粒物を長手方向(押出方向)に対して垂直方向に圧し潰すことで、破壊応力の測定を行った。
(実施例1)
粉体造粒物(水添加なし)
PHAの一種としての、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合ポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH、ヒドロキシヘキサノエート含有率6%、60メッシュ篩に100%パス、嵩密度0.40kg/L)粉体A1(バイオポリエステル粉体A1)を原料として用いた。粉体A1に対し、室温から窒素気流中10℃/分の昇温速度でDSC測定を行ったところ、観測された最も高温側に現れる融解ピーク温度T[℃]は146.8℃であった。なお、以下において、特段の説明がない限り、DSC測定は窒素気流中で行った。
バイオポリエステル粉体A1を用いて、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ローラー回転数108rpmの条件で略円柱状の粉体造粒物を作製した。尚、ディスクペレッターのダイスプレートの厚みは15mmとし、孔径は3mmφとした。粉体がダイスプレート内部において、ダイス壁面から圧縮応力を受ける長さ(有効長と称す)は10mmとした。
実施例1における造粒速度は47kg/Hrであった。
造粒直後の粉体造粒物の温度は、造粒が安定化した後、装置を停止させ、ダイス孔の内部へ熱電対を直接挿入して、ダイス内部の圧縮された粉体の温度を素早く計測することにより測定した。当該測定を5回行い、その平均値を造粒直後の造粒物温度(Tp)とした。
実施例1での造粒直後の造粒物温度(Tp)は81℃であり、安定して略円柱状の造粒物を得ることができた。得られた粉体造粒物の側面は、結晶性ポリマー粉体の構成成分が溶融して溶融ポリマーからなる外壁構造(シェル構造)を有し、その外壁構造の内側(コア部)には、溶融していない粉体状外観が確認された。
実施例1の粉体造粒物は、上記の造粒性の基準で「A」判定、嵩密度が0.53kg/L、水分量が0.48質量%、造粒物の破壊強度が10kg以上であり、ハンドリング性に優れた粉体造粒物であった。
また、実施例1の粉体造粒物の「見かけ密度比」は、「結晶性ポリマー粉体造粒物の見かけ密度」が1.106[kg/L]であり、「溶融混練ペレットの見かけ密度」が1.200[kg/L]であり、「見かけ密度比」は0.92であった。
上記「溶融混練ペレットの見かけ密度」は、実施例1の粉体造粒物を構成する組成物(この場合はA1のみ)を、140℃設定の2軸押出機(下記参考例1と同様)を用いて、気泡混入のない溶融混練ペレットを作製し、測定を行った。
また、実施例1の粉体造粒物の造粒前の結晶性ポリマー粉体の嵩密度ρは0.40[kg/L]であり、粉体造粒物の嵩密度ρは0.53[kg/L]であり、ρ/ρ値は1.33であった。
図1は、実施例1で得られた粉体造粒物の降温DSC(示差走査熱量計)測定結果である。具体的には、図1は、実施例1の粉体造粒物(結晶化核剤の添加なし)を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1(図1では180℃)まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で2分間、5分間又、15分間、又は30分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件において第1のDSC測定を行った結果を示すグラフである。なお、DSC測定用サンプルは、実施例1の粉体造粒物から切り出して用意した。
DSC測定用サンプルの切り出しは、粉体造粒物の長手方向(押出方向)に対して垂直方向から、粉体造粒物の外縁部(シェル部)に剃刀刃を挿入し、重量約5mgとなる薄片を切り出し、試料とした。
また、上記DSC測定の、窒素気流中、室温から10℃/minの昇温速度での昇温測定時において、最も高温側に現れた結晶性ポリマーの融解ピーク温度(T[℃])は146.8℃であった。
図1において、室温から10℃/minで180℃まで昇温し、180℃で2分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時の再結晶化発熱ピークのピーク温度(Tc)は91.0℃に観測される。
図1において、室温から10℃/minで180℃まで昇温し、180℃で5分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時の再結晶化発熱ピークのピーク温度(Tc)は92.5℃に観測される。
図1において、室温から10℃/minで180℃まで昇温し、180℃で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時の再結晶化発熱ピークのピーク温度(Tc15)は92.4℃に観測される。
図1において、室温から10℃/minで180℃まで昇温し、180℃で30分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時の再結晶化発熱ピークのピーク温度(Tc30)は91.9℃に観測される。
実施例1の再結晶化発熱ピークの結果が示すように、再結晶化発熱ピークが観測される第1のホールド温度TH1として180℃が存在することを表している。
これら図1に示されるDSC測定の挙動は、結晶性ポリマーの「メルトメモリー効果」によってもたらされる代表的挙動であり、本実施形態に係る粉体造粒物の特徴を表している。
なお、図1に示されるように、所定のホールド温度での保持時間を2分、5分、15分及び30分に設定してDSC測定を行ったが、それらの保持時間で得られた再結晶化発熱ピークの温度値は、保持時間の増加に伴う低温側へのシフトは観察されなかった。具体的には、保持時間15分における再結晶化発熱ピークの温度は92.4℃であり、保持時間2分における再結晶化発熱ピークの温度は91.0℃であるところ、それらの比(「保持時間15分における再結晶化発熱ピークの温度Tc15」/「保持時間2分における再結晶化発熱ピークの温度Tc」)は、1.02であり、0.95~1.05の範囲内であった。
また、本実施例では、保持時間を2分、5分、15分及び30分に設定してDSC測定を行ったが、本実施形態を特定する保持時間の条件としては、実際の各種の成形加工機における一般的な溶融滞留時間に十分に対応し得る時間の基準として15分を選択した。
図1の最下段に、実施例1で得られた粉体造粒物に対し、室温から10℃/minで200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線を示すが、再結晶化発熱ピークが観測されなかった。即ち、図1は、再結晶化発熱ピークが現れない第2のホールド温度TH2として、200℃が存在することを表している。なお、5分間の保持時間で再結晶化発熱ピークが観測されなければ、15分間の保持時間でも再結晶化発熱ピークが観測されないはずであることは、当然に理解される。
図1の再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc、Tc、Tc15及びTc30の結果は、180℃の溶融温度に対して、成形加工に必要な滞留時間で保持された後でも、メルトメモリー構造が熱擾乱されずに維持されることを示唆しており、実際の成形加工においても結晶化核剤効果が維持され得ることを示唆する。
(実施例2)
粉体造粒物(水添加あり)
FMミキサー(日本コークス工業(株)製、商品名「5FM5C/I」;処理容積:5L)に、100質量部のバイオポリエステル粉体A1(実施例1と同じ)を投入し、攪拌羽を回転数2,000rpmで回転させながら、バイオポリエステル粉体A1に対して噴霧状に上水(水道水)20質量部を、10分間で連続的に噴霧注入し、含水粉体を得た。
FMミキサーの羽根は上羽根と下羽根の組み合わせとし、上羽根はY1羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、下羽根はS0羽根(商品名、日本コークス(株)製)を使用した。また、撹拌槽内には邪魔板を装着した。
この含水粉体を、実施例1と同様にディスクペレッターに投入し、円柱状の造粒物前駆体を得た。
実施例2は、半湿式での造粒方法となるが、適度な水分の存在は、粉体の嵩密度を上げ、粉体のダイス孔への喰いこみを良くし、また、造粒時の過剰な発熱を抑え、ダイス詰まりを抑制する作用があり、これらの作用効果の結果、造粒速度の向上をもたらすことができ、造粒物前駆体造粒物の造粒速度は88kg/Hrに至った。
実施例2においては、造粒直後の造粒物前駆体温度(Tp)が54℃となり、安定して円柱状の造粒物を得ることができた。
得られた造粒物前駆体は、熱風式循環型乾燥機(エスペック製、商品名「PH-402」)を用いて、140℃で乾燥し、水分量が0.27wt%の粉体造粒物を得た。
得られた粉体造粒物は、実施例1と同様にコア・シェル構造の粉体造粒物であった。実施例2の粉体造粒物の外観を写した写真を図3に示す。
実施例2の粉体造粒物は、上記の造粒性の基準で「A」判定、嵩密度が0.49kg/L、水分量が0.27質量%、造粒物の破壊強度が10.0kg以上であり、ハンドリング性に優れた粉体造粒物であった。
また、実施例2の粉体造粒物の「見かけ密度比」は、「結晶性ポリマー粉体造粒物の見かけ密度」が1.087[kg/L]であり、「溶融混練ペレットの見かけ密度」として、実施例1と同様に1.200[kg/L]の値を使用し、「見かけ密度比」は0.91であった。
また、実施例2の粉体造粒物の造粒前の結晶性ポリマー粉体の嵩密度ρは実施例1と同じく0.40[kg/L]であり、粉体造粒物の嵩密度ρは0.49[kg/L]であり、嵩密度比ρ/ρ値は1.23であった。
実施例1と同様にDSC測定を行ったところ、再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc、Tc、Tc15及びTc30の結果は、それぞれ、91.5℃、92.1℃、92.5℃、及び92.8℃となった。
また、Tc15/Tcの値は、1.01であり、0.95~1.05の範囲内であり、実施例1と同様に180℃の溶融温度に対して、メルトメモリー効果の溶融滞留時間に対する安定性が高いことが示される。
(参考例1)
溶融混練ペレット(結晶化核剤の添加有り)
100質量部のバイオポリエステル粉体A1に対し、結晶化核剤としてペンタエリスリトール粉体(大成火薬(株)製、商品名「ノイライザーP」、融点260℃)を1質量部、加工助剤としてベヘン酸アミド(日本精化(株)製、商品名「BNT―22」、融点110℃)を0.5質量部添加し、粉体状で予備混合した後、得られた混合物を、二軸押出機(テクノベル社製、商品名「KTZ15」、下記実施例3のTダイスを3mmφの2穴ダイスに変更、L/D=42、シリンダー設定温度:140℃)に連続投入し、主スクリュー回転数を80rpmに設定して、溶融混練を行い、ストランドを60℃で水冷カットして、溶融混練ペレットを製造した。参考例1での造粒速度は1.0kg/Hrであった。
参考例1で得られた溶融混練ペレットから、DSC測定用剥片(約5mg)を切り出し、実施例1と同様にDSC測定を行った。DSC測定結果を図2に示す。
参考例1の溶融混練ペレットに関するDSC測定において、室温から10℃/minの昇温速度での昇温測定時において、最も高温側に現れた結晶性ポリマーの融解ピーク温度(T[℃])は146.8℃であり、実施例1の粉体造粒物と同じであった。
図2は、参考例1の溶融混練ペレット(結晶化核剤含有)に対し、図1(実施例1)と同様に、室温から10℃/minで180℃まで昇温し、180℃で、保持時間2分、5分、15分又は30分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線である。図2に示す再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc、Tc、Tc15及びTc30は、それぞれ、93.2℃、87.3℃、83.9℃、及び85.1℃であった。同条件でDSC測定を行った図1(実施例1)に対し、再結晶化発熱ピークは低温側にシフトしており、結晶化核剤効果が図1(実施例1)と比べて、劣っていることが認められる。
図2(参考例1)の溶融混練ペレットについて、保持時間15分における再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc15は83.9℃であり、保持時間2分における再結晶化発熱ピークのピーク温度Tcは93.2℃であり、それらの比(Tc15/Tc)は0.90であり、0.95~1.05の範囲外であった。
図2の最下段に、参考例1の溶融混練ペレット(結晶化核剤含有)に対し、室温から10℃/minで200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線である。再結晶化発熱ピークが観測されているが、そのピーク温度は72.0℃にまで低下しており、結晶化核剤効果が大きく弱まっていることが認められる。
(参考例2)
溶融混練ペレット(結晶化核剤の添加無し)
ペンタエリスリトール、及びベヘン酸アミドを配合しなかったこと以外は、参考例1と同じ条件で溶融混練ペレットを製造した。
参考例2の溶融混練ペレットに対し、同様にDSC測定を行った。
図4は、参考例2の溶融混練ペレットについて、室温から10℃/minで180℃まで昇温し、180℃で保持時間、2分、5分又は15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線である。図4に示す再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc、Tc、及びTc15は、それぞれ、79.5℃、78.7℃、及び77.8℃であった。
参考例2では、再結晶化発熱ピークが観察されたが、実施例1(図1)に比べて、低温側にシフトしており、結晶化核剤効果が実施例1に比べて、大きく弱まっていることが認められる。
図4の最下段は、参考例2の溶融混練ペレットについて、室温から10℃/minで200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線である。図4に示されるように、この条件において再結晶化発熱ピークは認められなかった。
(参考例3)
結晶性ポリマー粉体(そのもの)
バイオポリエステル粉体A1に対して、造粒を行わずに、実施例1と同様にDSC測定を行った。
図5は参考例3のバイオポリエステル粉体A1について、室温から10℃/minで180℃まで昇温し、180℃で保持時間、2分、5分又は15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線である。図5に示す再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc、Tc及びTc15は、それぞれ、75.3℃、67.7℃及び67.8℃であった。
参考例3では再結晶化発熱ピークが観察されたが、図1(実施例1)に比べて、大きく低温側にシフトしており、また、発熱ピーク面積もブロードとなっており、結晶化核剤効果が図1(実施例1)に比べて、大きく弱まっていることが認められる。実施例1との対比で、本実施態様の粉体造粒物の構成を採用することにより、結晶化核剤効果が著しく向上することが明らかである。
実施例1~2及び参考例1~3の結果を表1に示す。
Figure 0007454097000002
(実施例3)
粉体造粒物を使用するシート押出成形
実施例2で得た粉体造粒物をシート押出機(テクノベル社製、商品名「KTZ15」)に投入し、シリンダー及びTダイスの設定温度140℃、押出速度2kg/Hrで、T型ダイスを介して、厚み0.5mm、幅100mmの単層押出シートを得た。ロール温度は20℃とし、巻き取り速度は5m/分とした。
実施例3により、粉体造粒物から直接押出シート成形を行うことが可能であることが確認された。
(実施例4)
PLA粉体造粒物
トタル・コービオン社製のポリ乳酸(PLA)(商品名「L130」)を用いて、射出成形機(東洋機械金属社製「SI-80W」、型締め80トン)を使用し、シリンダー設定温度200℃、金型温度30℃(固定側、稼働側共に)、冷却時間30秒で成形したダンベル形試験片(1A型多目的試験片)を成形した。当該試験片は金型内で急冷した状態で得ており、結晶化が十分に進行していない成形体であった。
上記ダンベル形試験片を粉砕処理し、60メッシュの篩をパスさせ、ポリ乳酸(PLA)の粉体原料(A2、嵩密度0.60kg/L)を準備した。当該ポリ乳酸粉体を用いて、実施例1と同様に、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ローラー回転数108rpmの条件でペレット状の粉体造粒物を得た。
実施例4で得られたPLA粉体造粒物は、嵩密度が0.58kg/L、水分量が0.57質量%、造粒物の破壊強度は10kg以上であった。
また、実施例4の造粒前の結晶性ポリマー粉体A2の嵩密度ρは0.60[kg/L]であり、粉体造粒物の嵩密度ρは0.58[kg/L]であり、ρ/ρ値は0.97であった。
当該PLA粉体造粒物に対し、窒素気流中、室温から10℃/分の昇温速度でDSC測定を行ったところ、最も高温側に現れる融解ピーク温度T[℃]は175.7℃であった。
図6のグラフの2段目以下は、実施例4のPLA粉体造粒物について、室温から10℃/minで200℃まで昇温し、200℃で保持時間2分、5分又は15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線である。図6に示す再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc、Tc、及びTc15は、それぞれ、103.1℃、98.9℃、及び99.8℃であり、メルトメモリー効果による結晶化核剤機能が存在することを示している。
更に、実施例4では、保持時間15分における再結晶化発熱ピークのピーク温度Tc15は99.8℃であり、保持時間2分における再結晶化発熱ピークのピーク温度Tは103.1℃であり、それらの比(Tc15/Tc)は、0.97であり、0.95~1.05の範囲内であり、実施例4のPLA粉体造粒物では、結晶化核剤効果の保持時間耐性に優れることが示される。
一方、図6の最上段は、市販のPLA溶融混練ペレット(商品名「L130」)(参考例4)に対し、DSC測定用サンプル片を切り出して、同様にDSC測定を行った結果である。すなわち、図6の最上段は、市販のPLA溶融混練ペレットについて、室温から10℃/minで200℃まで昇温し、200℃で2分間保持した後に、10℃/minの降温速度で冷却を行った際に得られた、降温時のDSC曲線である。図6の最上段において、再結晶化発熱ピークは観測されなかった。この結果は、市販のPLA溶融ペレットは、再結晶化が極めて遅いことを示す。実施例4と参考例4の対比で、本実施形態の粉体造粒物の構成を採用することにより、結晶化核剤効果が著しく向上することが明らかである。
実施例4と参考例4の結果を表2に示す。
Figure 0007454097000003
実施例4の結果より、PLA射出成形品の粉砕粉体からなる造粒物では、配向結晶化物が含まれ、メルトメモリー効果を発揮しているものと推察される。
本明細書中に記載した数値範囲の上限値及び/又は下限値は、それぞれ任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。例えば、数値範囲の上限値及び下限値を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、数値範囲の上限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、また、数値範囲の下限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。
以上、本実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本開示に含まれるものである。

Claims (20)

  1. 結晶性ポリマー粉体の粉体造粒物であって、
    前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第1のDSC測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れる第1のホールド温度TH1が存在し、
    第1のホールド温度TH1は、前記第1のDSC測定の昇温時に最も高温側に現れる結晶性ポリマーの融解ピーク温度Tより高い温度である、粉体造粒物。
  2. 前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第2のホールド温度TH2まで昇温させてから第2のホールド温度TH2で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第2のDSC測定を行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れない第2のホールド温度TH2が存在し、
    第2のホールド温度TH2は、第1のホールド温度TH1よりも高い温度である、請求項1に記載の粉体造粒物。
  3. 前記第1のDSC測定の降温時に現れる再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tc15と、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で第1のホールド温度TH1まで昇温させてから第1のホールド温度TH1で2分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第3のDSC測定を行った場合において、降温時に現れる結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tcとが、下記式(A)を満たす、請求項1に記載の粉体造粒物:
    式(A):0.95≦Tc15/Tc≦1.05。
  4. 結晶化核剤を実質的に含まない、請求項1に記載の粉体造粒物。
  5. 木屋式硬度計の測定に基づく破壊強度が、10.0kg以上である、請求項1に記載の粉体造粒物。
  6. 下記式(B)で計算される見かけ密度比が、0.85以上0.95以下である、請求項1に記載の粉体造粒物:
    式(B):「見かけ密度比」=「粉体造粒物の見かけ密度」/「前記結晶性ポリマーの溶融混練ペレットの見かけ密度」。
  7. 造粒前の結晶性ポリマー粉体の嵩密度をρ、粉体造粒物の嵩密度をρとしたとき、ρ/ρの値が、0.90以上3.00以下である、請求項1に記載の粉体造粒物。
  8. 結晶性ポリマーの重量平均分子量が、20万以上300万以下である、請求項1に記載の粉体造粒物。
  9. 粉体造粒物の形状が、略円柱状又は略角柱状である、請求項1に記載の粉体造粒物。
  10. 融解ピーク温度Tが70℃以上200℃以下の温度範囲にある結晶性ポリマー粉体を含む、請求項1に記載の粉体造粒物。
  11. 結晶性ポリマー粉体が、生分解性樹脂を含む、請求項1に記載の粉体造粒物。
  12. 生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂又は脂肪族・芳香族ポリエステル系樹脂を含む、請求項11に記載の粉体造粒物。
  13. 生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂を含む、請求項11に記載の粉体造粒物。
  14. 脂肪族ポリエステル系樹脂が、ポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項13に記載の粉体造粒物。
  15. 第1のホールド温度TH1として180℃が存在し、第2のホールド温度TH2として200℃が存在する、請求項2に記載の粉体造粒物。
  16. 前記第1のDSC測定を、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温させてから180℃で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れ、
    前記第2のDSC測定を、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で200℃まで昇温させてから200℃で15分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて行った場合において、降温時に、結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークが現れない、請求項15に記載の粉体造粒物。
  17. 前記第1のDSC測定の降温時に現れる再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tc15と、前記粉体造粒物を室温から10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温させてから180℃で2分間保持した後に、10℃/minの降温速度で降温させる条件にて第3のDSC測定を行った場合において、降温時に現れる結晶性ポリマーの再結晶化による発熱ピークのピーク温度Tcとが、下記式(A)を満たす、請求項16に記載の粉体造粒物:
    式(A):0.95≦Tc15/Tc≦1.05。
  18. 圧縮造粒物である、請求項1~17のいずれか1項に記載の粉体造粒物。
  19. 請求項18に記載の粉体造粒物を製造する方法であって、
    結晶性ポリマー粉体を圧縮造粒法により造粒する圧縮造粒工程を含み、
    造粒直後の造粒物温度Tp(℃)が、結晶性ポリマーの融解ピーク温度T以下となる条件で圧縮造粒工程が行われる、方法。
  20. 圧縮造粒が、ディスクペレッター方式の圧縮造粒装置を用いて行われる、請求項19に記載の方法。
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