JP7422708B2 - 熱可塑性ポリマー造粒物およびその製造方法 - Google Patents

熱可塑性ポリマー造粒物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性ポリマー造粒物およびその製造方法に関する。
ポリマー(例えば、熱可塑性ポリマー)の製造においては、その方法を一因として、粉体状のポリマーが得られることがある。また、ポリマー製品等のリサイクルにおいては、ポリマーを粉体状に再生することがある。粉体状のポリマーは、一般に嵩比重が小さく、流動性が悪いことから、ハンドリング性が悪い。また、粉塵が舞いやすい、粉塵爆発の可能性がある等の安全上の課題も多い。そのため、ペレット状の樹脂、すなわち、粉体状のポリマーを加熱溶融し、溶融物をダイスから押出し、固化させることによりペレット化された樹脂が多用される。しかしながら、粉体状ポリマーの中には、ペレット化が難しいものが存在する。例えば、近年、微生物が体内で合成するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類が、バイオポリマーとして注目されているが、このようなバイオポリマーは、結晶化速度が遅く、ペレット化が難しい場合がある。また、溶融物を強制的に急冷してペレタイズを行うと、ペレタイズ後にペレット同士のブロッキングが起こることがあり、生産性が阻害されることがある。
一方、樹脂組成物の各種特性を改良するため、当該樹脂組成物に、フィラーを添加することがある。フィラーもまた粉体状であることが多い。粉体状のフィラーは、一般に嵩比重が小さく、移送における流動性が悪いために、輸送、貯蔵、梱包、加工機への供給安定性、等のハンドリング上の問題や、作業環境や人体に対する安全性において解決すべき課題が多い。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、粉体状フィラーおよび粉体状ポリマーを含み、これらを溶融させることなく得られるポリマー造粒物であって、取扱い性および安全性に優れ、かつ、作業環境の良化およびポリマー造粒物を原料として得られる樹脂組成物ならびに樹脂成型品の生産性向上に寄与し得るポリマー造粒物を提供することにある。
本発明の熱可塑性ポリマー造粒物は、粉体状熱可塑性ポリマーと、フィラーと、結着剤とを含み、該粉体状熱可塑性ポリマーの嵩密度が、0.01kg/L~1kg/Lであり、該粉体状熱可塑性ポリマーの含有割合が、該粉体状熱可塑性ポリマーと該フィラーと該結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~98重量部であり、該フィラーの含有割合が、該粉体状熱可塑性ポリマーと該フィラーと該結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~98重量部であり、該結着剤の含有割合が、該粉体状熱可塑性ポリマーと該フィラーと該結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~30重量部である。
1つの実施形態においては、上記粉体状熱可塑性ポリマーを構成する熱可塑性ポリマーが、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類およびコアシェル型ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記フィラーが、層状ケイ酸塩化合物である。
1つの実施形態においては、上記結着剤が、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、多糖類および膨潤性粘土鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物は、分散剤をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記分散剤の含有割合が、上記粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、0.1重量部~30重量部である。
1つの実施形態においては、上記分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の別の局面によれば、上記熱可塑性ポリマー造粒物の製造方法が提供される。この製造方法は、前記粉体状熱可塑性ポリマーと、上記フィラーと、前記結着剤を含む水系液とを混合する混合工程と、該混合工程を経て得られた混合物を造粒して、造粒物前駆体を得る造粒工程と、該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物の製造方法は、上記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物の製造方法は、上記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒することを含む。
本発明のさらにべつの局面によれば、上記熱可塑性ポリマー造粒物の、熱可塑性樹脂コンパウンドの原料としての使用が提供される。
本発明によれば、粉体状フィラーおよび粉体状ポリマーを含み、これらを溶融させることなく得られるポリマー造粒物(熱可塑性ポリマー造粒物)であって、取扱い性および安全性に優れ、かつ、作業環境の良化およびポリマー造粒物を原料として得られる樹脂組成物ならびに樹脂成型品の生産性向上に寄与し得るポリマー造粒物を提供することができる。本発明によれば、多様な熱可塑性ポリマーをペレット化することができる。また、本発明の熱可塑性ポリマー造粒物を用いれば、ハンドリング性よく、また、安全に、フィラーを樹脂組成物に添加することが可能となる。
実施例で得られた熱可塑性ポリマー造粒物の外観写真図である。
A.熱可塑性ポリマー造粒物の概要
本発明の熱可塑性ポリマー造粒物は、粉体状熱可塑性ポリマーと、フィラーと、結着剤とを含む。当該熱可塑性ポリマー造粒物は、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとが結着剤により結合して構成される。上記粉体状熱可塑性ポリマーの嵩密度は、0.01kg/L~1kg/Lである。上記粉体状熱可塑性ポリマーの含有割合は、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~98重量部である。上記フィラーの含有割合は、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~98重量部である。上記結着剤の含有割合は、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~30重量部である。
本発明の熱可塑性ポリマー造粒物は、樹脂組成物の溶融コンパウンド(溶融混練)をはじめ、各種の可塑化溶融加工において、当該樹脂組成物に添加して用いられ得る。このようにして、本発明の熱可塑性ポリマー造粒物を用いれば、フィラー由来の機能を有するフィラー含有樹脂組成物が得られ得る。本発明の熱可塑性ポリマー造粒物は、予め、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとが混合され粒状化されて構成されているため、当該熱可塑性ポリマー造粒物を用いれば、組成均一性に優れたフィラー含有樹脂組成物を高い生産性で得ることができる。
また、樹脂組成物の可塑化溶融加工(代表的には、溶融混練)の際に、上記熱可塑性ポリマー造粒物を添加すれば、生産性向上を図ることができる。具体的には、上記熱可塑性ポリマー造粒物は、押出機等の装置へのフィード安定性(供給量と安定性)に著しく優れるため、当該熱可塑性ポリマー造粒物を用いれば、樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。また、粉塵による作業環境汚染を著しく改善し、作業者の労働安全衛生環境を向上させることができ、さらに、設備の切り替え清掃の時間を大幅に短縮できる。また、粉塵爆発の危険性を低減させることができる。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物は、上記粉体状熱可塑性ポリマーと、フィラーと、結着剤とを含む混合物(例えば、結着剤は水溶液または水系分散液として配合され得る)を任意の適切な方法により加工して、得ることができる。1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物は、半湿式造粒法により製造される。半湿式造粒法によれば、後述の効果が顕著となる。
本発明においては、結着剤を添加して、粉体状熱可塑性ポリマーを造粒することにより、優れた効率で生産され得、かつ、品質安定性(形状安定性、硬度の均一性、低微粉混入)に優れる熱可塑性ポリマー造粒物を得ることができる。また、上記熱可塑性ポリマー造粒物は、熱可塑性ポリマーを溶融させることなく製造され得るため、原料としての熱可塑性ポリマーの種類についての選択の幅が広い点で有利である。また、熱可塑性ポリマーを溶融させることなく造粒物を得るため、当該熱可塑性ポリマーの熱劣化を防止することができる。
上記熱可塑性ポリマー造粒物は、任意の適切な形状であり得る。代表的には、上記熱可塑性ポリマー造粒物は円筒状(ペレット状)である。
上記熱可塑性ポリマー造粒物が円筒状である場合、上記熱可塑性ポリマー造粒物の直径は、例えば、2mm~5mmである。また、熱可塑性ポリマー造粒物の長さ(高さ)は、例えば、1mm~5mmである。このような形状であれば、ハンドリングしやすい熱可塑性ポリマー造粒物を得ることができる。熱可塑性ポリマー造粒物の直径は、造粒の際のディスクプレートのダイス孔の径により調整でき、長さはディスクプレートとカッター間の距離で調整できる。当該距離は、所望とする熱可塑性ポリマー造粒物のサイズ等に応じて、任意の適切な距離とされ得る。ディスクプレートとカッター間の距離は、例えば、1mm~30mmであり、より好ましくは2mm~20mmであり、さらに好ましくは3mm~10mmである。
上記熱可塑性ポリマー造粒物の木屋式硬度計における破壊応力は、好ましくは0.05kg~10kgであり、より好ましくは0.5kg~7kgであり、さらに好ましくは1.0kg~5kgである。このような範囲であれば、ハンドリング性と溶融加工性に優れる熱可塑性ポリマー造粒物を得ることができる。ここで、破壊応力とは、20粒以上(好ましくは25粒以上)について測定した平均の崩壊応力を示す。
上記熱可塑性ポリマー造粒物の水分量は、任意の適切な水分量とされ得る。上記熱可塑性ポリマー造粒物の水分量は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下であり、最も好ましくは0.5重量%以下である。
上記熱可塑性ポリマー造粒物の嵩密度は、粉体状熱可塑性ポリマーの種類に応じて、任意の適切な嵩密度とされ得る。上記熱可塑性ポリマー造粒物の嵩密度は、好ましくは0.3kg/L~2.0kg/Lであり、より好ましくは0.5kg/L~1.0kg/Lである。嵩密度を上げることで、溶融混練を行う際に、熱可塑性ポリマー造粒物の供給速度と供給安定性が高まる。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物は、分散剤をさらに含む。
A-1.粉体状熱可塑性ポリマー
上記粉体状熱可塑性ポリマーの嵩密度は、上記のとおり0.01kg/L~1kg/Lであり、好ましくは0.05kg/L~0.8kg/Lであり、より好ましくは0.1kg/L~0.5kg/Lである。粉体状熱可塑性ポリマーの嵩密度は、升を用いて、粉体状熱可塑性ポリマーを当該升に自然落下させてすり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで算出される(単位:kg/L)。
上記粉体状熱可塑性ポリマーは、その製造プロセスを経て得られた粉体状ポリマー、すなわち、製造プロセスを要因として粉体状であってもよく、ペレット状のポリマー、塊状のポリマー、ポリマー成形体等の非粉状のポリマーを粉砕して得られた粉体状ポリマーであってもよい。粉砕された粉末状ポリマーは、成形品、ペレット、射出成型において発生するスプルやランナー等を室温下、あるいは、必要に応じてドライアイスや液体窒素を用いて冷却した後、粉砕機(例えば、ダルトン社製、商品名「ネアミル、シルフィードミル、アトマイザー、インパクトミル」等)を使用して得ることができる。
上記粉体状熱可塑性ポリマーは、任意の適切な形状およびサイズであり得る。上記粉体状熱可塑性ポリマーの数平均粒子径は、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは0.001mm~3mmであり、特に好ましくは0.1mm~0.5mmである。本明細書において、数平均粒子径は、レーザー回折法で測定され得る。
粉体状熱可塑性ポリマーは、任意の適切な熱可塑性ポリマーから構成される。当該熱可塑性ポリマーの具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、フッ素系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等の汎用樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエステル類(PET、PBT等)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチック類、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等のスーパーエンジニアリングプラスチック類、乳化重合あるいは懸濁重合で得られるコアシェルゴム類等が挙げられる。
また、上記熱可塑性ポリマーとして、生分解性ポリマーを用いてもよい。生分解性ポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーあるいはコポリマー、これらのホモポリマーあるいはコポリマーの変性した物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーあるいはランダムポリマー等)、ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等)等が挙げられる。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマーとして、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)またはポリカーボネート(PC)が用いられる。
超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンを意味する。超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量は、例えば、200万(150万~250万)である。粘度平均分子量は、ASTMD4020に規定の粘度法により測定することができる。具体的には、ASTMD4020の粘度法に基づき極限粘度(η[dl/g])を測定し、次式(1)から粘度平均分子量(Mv)を求めることができる。
Mv=5.37×104η1.37 ・・・(1)
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマーとして、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類が用いられる。ポリヒドロキシアルカノエートは、例えば、微生物が、糖質、油脂類等を餌として、体内で生成した化合物であり得る。このようなポリヒドロキシアルカノエートは、一次的には粉体状のポリマーとして取り出される。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマーとして、コアシェル型ポリマーが用いられる。コアシェル型ポリマーとしては、例えば、乳化重合あるいは懸濁重合で得られるコアシェルゴム類が用いられる。
上記粉体状熱可塑性ポリマーの含有割合は、熱可塑性ポリマー造粒物中の粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、上記のとおり1重量部~98重量部であり、好ましくは10重量部~90重量部であり、より好ましくは20重量部~80重量部であり、さらに好ましくは30重量部~70重量部である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
上記粉体状熱可塑性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。
A-2.フィラー
上記フィラーとしては、フィラー含有樹脂組成物および/または当該フィラー含有樹脂組成物から得られる成形体に要求される特性に応じて、任意の適切なフィラーを用いることができる。
上記フィラーによって付与できる特性・効果としては、例えば、増量化または軽量化、補強(高剛性化、高弾性率化、高強度化)、寸法安定性、成形サイクル(結晶化速度)、結晶化度、熱伝導性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、断熱性、電磁波吸収性、光反射性、光散乱性、熱線輻射性、難燃性、放射線防護、紫外線防護、脱湿、脱水、脱臭、ガス吸収、ガスバリア、アンチブロッキング、吸油、抗菌性、生分解促進性、バイオ度向上(天然物由来成分量の比率向上)等が挙げられる。
例えば、増量の目的では、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレーが好適である。補強の目的では、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、繊維状マグネシウム化合物(MOS)、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー等が好適である。抗菌付与の目的では、カテキン、銀イオン担持ゼオライト、銅フタロシアニン、等が好適である。ガスバリア性付与の目的では、合成マイカ系、クレー・合成マイカのナノフィラー、等が好適である。軽量化の目的では、シリカバルーン、ガラスバルーン、セノスフィア、パーライト、シラスバルーン、等のバルーン系が好適である。導電性付与の目的では、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔、が好適である。磁性付与の目的では、各種磁性材料、各種フェライト系、磁性酸化鉄、サマコバ(Sm-Co)、Nd-Fe-B、等が好適である。熱伝導性付与の目的では、アルミナ、AlN、BN、BeO、等が好適である。圧電性付与の目的では、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、等が好適である。制振性付与の目的では、マイカ、黒鉛、チタン酸カリウム、ゾノトライト、炭素繊維、フェライト、等が好適である。遮音性付与の目的では、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。摺動性付与の目的では、黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、テフロン(登録商標)粉、タルク、高分子量ポリエチレン、等が好適である。電磁波吸収付与の目的では、電磁波吸収フェライト、黒鉛、木炭粉、カーボンマイクロコイル(CMC)、カーボンナノチューブ(CNT)、PZT、等が好適である。光反射、光散乱付与の目的では、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ、等が好適である。熱線輻射付与の目的では、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、MOS、アルミナ、木炭粉末、等が好適である。難燃化の目的では、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、赤燐、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、等が好適である。放射線防護の目的では、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。「紫外線防護」の目的では、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、等が好適である。脱湿、脱水の目的では、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。脱臭、ガス吸収の目的では、ゼオライト、等が好適である。アンチブロッキング(フィルムの圧着防止)の目的では、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、球状微粒子(シリコーンやアクリルビーズ)、等が好適である。吸油(印刷インク吸収、速乾性等)の目的では、毬藻状炭酸カルシウム、毬藻状ゾノトライト、等が好適である。吸水の目的では、吸水用の高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。バイオ度向上の目的には、セルロース系材料(木粉、木繊維、おがくず、木屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、麦わら、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツの殻、大豆の外皮、等)、でんぷん、天然ゴム、等が好適である。
上記フィラーによって付与できる特性・効果の中で、成形サイクル(結晶化速度)、結晶化度の改良については、結晶化核剤機能を有するフィラーの使用が有効であり、層状ケイ酸塩化合物が特に好ましい。具体例として、カオリン、タルク、マイカが好ましい。
上記フィラーのサイズは、任意の適切なサイズとすることができる。フィラーの数平均粒子径は、例えば、10nm~100μmである。フィラーのサイズはレーザー回折法により求めることができる。
上記フィラーの含有割合は、熱可塑性ポリマー造粒物中の粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、上記のとおり1重量部~98重量部であり、好ましくは10重量部~90重量部であり、より好ましくは20重量部~80重量部であり、さらに好ましくは30重量部~70重量部である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
A-3.結着剤
1つの実施形態においては、上記結着剤は、任意の適切な樹脂により構成され得る。結着剤を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。別の実施形態においては、上記結着剤として、多糖類が用いられる。さらに別の実施形態においては、上記結着剤として、膨潤性粘土鉱物(例えば、スメクタイト、バーミキュライト等)が用いられる。結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。
上記結着剤として、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、三井化学社製のケミパール(登録商標)、ダウ・ケミカルカンパニーのHYPOD(登録商標)、ビックケミー・ジャパン社製のAQUACER(登録商標)、住友精化社製のザイクセン、セポルジョン、セポレックス(登録商標)、マイケルマン・ジャパン社製のMichem(登録商標)、DIC社のボンディック(登録商標)、サイデン化学社製のサイビノール、サイデングルー(登録商標)等を挙げることができる。他の好ましい例として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH;クラレ社製のエバール(登録商標))、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH;三菱ケミカル社製のニチゴーGポリマー(登録商標))が挙げられる。さらに他の好ましい例として、イーストマンケミカル社製のイーストマンAQ(登録商標)で販売されている水性スルホポリエステル分散液、Ascend Performanceから販売されている、水で希釈されて水性ポリマー分散液を形成する、ヘキサン-1、6-ジアミンおよびアジピン酸の塩(AH塩)が挙げられる。
1つの実施形態において、上記粉体状熱可塑性ポリマーが生分解性ポリマーである場合、結着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、水溶性多糖類等が好ましく用いられる。
上記結着剤の含有割合は、上記粉体状熱可塑性ポリマーのサイズ、形状、吸水性、吸油性、嵩密度等に応じて、任意の適切な割合とされ得る。上記結着剤の含有割合は、上記粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、上記のとおり1重量部~30重量部であり、好ましくは2重量部~20重量部であり、より好ましくは3重量部~18重量部であり、さらに好ましくは5重量部~15重量部である。このような範囲であれば、上記粉体状熱可塑性ポリマーおよびフィラーに対する結着力が好ましく発揮され、ハンドリング性に優れた熱可塑性ポリマー造粒物を得ることができる。
A-4.分散剤
上記分散剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。分散剤(界面活性剤)における親水性/疎水性バランスは、分散剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度を調整することにより、制御することができる。分散剤を使用することにより、熱可塑性ポリマー造粒物の生産性(吐出速度)を向上させることができ、さらには、加工機の清掃性を高めることができる。
また、分散剤を含む熱可塑性ポリマー造粒物を用いて、樹脂組成物の溶融混練を行い、フィラー含有樹脂組成物を製造すれば、分散剤の界面活性剤的作用により、フィラー分散性を高めることができる。
上記分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸スルホン酸塩、脂肪酸アマイド、アクリルアミド、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。
1つの実施形態においては、分散剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールと炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸のエステル類が用いられる。
上記脂肪酸アマイドとは、脂肪酸とアンモニアあるいは1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つ化合物である。上記脂肪酸アマイドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類が挙げられる。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。
上記分散剤の含有割合は、上記粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~30重量部であり、より好ましくは0.1重量部~20重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~18重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~15重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~15重量部であり、最も好ましくは3重量部~15重量部である。
A-5.その他の成分
上記熱可塑性ポリマー造粒物は、必要に応じて、任意の適切なその他の成分(添加剤)さらに含み得る。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤、脱酸素剤、着色剤等が挙げられる。
B.熱可塑性ポリマー造粒物の製造方法
上記熱可塑性ポリマー造粒物は、任意の適切な方法により、製造することができる。例えば、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤とを含む混合物を、半湿式造粒法に供することにより得ることができる。
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物の製造方法は、上記粉体状熱可塑性ポリマーと、フィラーと、結着剤を含む水系液(水溶液または水系分散液)とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
結着剤を含む水系液が水溶液(均一系)である場合、結着剤を含む水系液中の結着剤の含有割合は、水系液100重量部に対して、好ましくは1重量部~70重量部であり、より好ましくは3重量部~50重量部であり、さらに好ましくは5重量部~30重量部である。このような範囲であれば、水系液と粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとを混合する際に、好ましく粘度調整され、結着剤の分散性に優れた混合物を得ることができる。このような混合物を用いれば、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとが好ましく結着して構成された熱可塑性ポリマー造粒物を安定して得ることができる。
結着剤を含む水系液が水系分散液(不均一系)である場合、結着剤を含む水系液中の結着剤の固形分濃度は、好ましくは1重量%~70重量%であり、より好ましくは3重量%~60重量%であり、さらに好ましくは5重量%~50重量%である。このような範囲であれば、水系液と粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとを混合する際に、好ましく粘度調整され、結着剤の分散性に優れた混合物を得ることができる。このような混合物を用いれば、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとが好ましく結着して構成された熱可塑性ポリマー造粒物を安定して得ることができる。
結着剤を含む水系液の混合割合は、粉体状熱可塑性ポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部~70重量部であり、より好ましくは5重量部~50重量部であり、さらに好ましくは10重量部~30重量部である。
混合工程においては、その他の成分(例えば、上記添加剤)、溶媒(好ましくは、水)等をさらに混合してもよい。1つの実施形態においては、これらの成分を添加することにより、結着剤を含む水系液と粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとの混合が適正化される。添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
混合工程においては、常温下で各成分を配合し、任意の適切な混合機を用いて、均一化することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)、等を挙げることができる。
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。好ましくは、粉体状熱可塑性ポリマーおよびフィラーの表面が結着剤で十分かつ均一に被覆されるように、混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、タブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。生産性と得られる熱可塑性ポリマー造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。ここで、ディスク孔にはテーパーが設けられており、上記混合物が孔を通過する過程で、ダイス孔の外周から圧縮応力が与えられる仕組みになっている。このテーパーのついた孔の長さを有効長と呼ぶ。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状の熱可塑性ポリマー造粒物を得ることができる。造粒物前駆体(結果として熱可塑性ポリマー造粒物)の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。ディスクプレートとカッター間の距離は、粉体状熱可塑性ポリマーの種類等に応じて、任意の適切な距離とされ得る。ディスクプレートとカッター間の距離は、例えば、1mm~30mmであり、より好ましくは2mm~20mmであり、さらに好ましくは3mm~10mmである。
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
乾燥工程における乾燥方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。乾燥工程後、振動ふるい等で処理を行うことで、微粉を除去した熱可塑性ポリマー造粒物が得られ得る。乾燥工程では、任意の適切な乾燥設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。
C.熱可塑性樹脂と熱可塑性ポリマー造粒物の溶融コンパウンド
1つの実施形態においては、上記熱可塑性ポリマー造粒物は、その用途として熱可塑性樹脂コンパウンドの原料として供される。また、上記熱可塑性ポリマー造粒物と、その他の熱可塑性樹脂との溶融コンパウンドが提供される。当該その他の熱可塑性樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂が用いられる。
溶融コンパウンドの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは2軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、二軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練して得られた組成物はペレット化される。
上記熱可塑性ポリマー造粒物の用途として、例えば、以下のような用途を例示することができる。
1)超高分子量ポリエチレン粉末とフィラーとを含む熱可塑性ポリマー造粒物のコンパウンド用原料としての使用
超高分子量ポリエチレン粉末と各種のフィラー粉末を組成物化するにあたり、予め熱可塑性ポリマー造粒物とした後に、各種の溶融混練加工機に投入して、溶融混練を行えば、組成均一性、ハンドリング性、生産性(吐出性)を高めると共に、作業環境の改善を図ることができる。
2)生物が産生する粉体状バイオポリエステルとフィラーとを含む熱可塑性ポリマー造粒物のコンパウンド原料としての使用
生物が生産するバイオポリエステルは一次的には粉体状のポリマーとして取り出される。粉体状のバイオポリエステルとフィラー(結晶化核剤としての機能を有するタルクやマイカなどのケイ酸塩化合物が好ましい)の熱可塑性ポリマー造粒物を原料として、溶融混練機に投入し可塑化混練し、溶融物をダイスから押し出して、冷却し、固化させてペレタイズする方法により、粉体状原料のフィードネックを解消でき、押出機への原料投入速度を向上できるのみならず、溶融状態からの結晶化を促進させることができ、更にはストランドのカット特性が向上するとともに、ペレットのブロッキングを防止することができ、生産性を大きく高めることができる。
3)粉体状エンジニアリングプラスチック原料とフィラーとを含む熱可塑性ポリマー造粒物のコンパウンド原料としての使用
粉体状の、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド等のいわゆるエンプラ類、スーパーエンプラ類の溶融コンパウンドにおいて、粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーを、予め熱可塑性ポリマー造粒物とすることにより、組成均一性、ハンドリング性、生産性(吐出性)を高めると共に、作業環境の改善を図ることができる。好ましい例として、ポリフェニレンエーテルとマイカとを含む熱可塑性ポリマー造粒物、ポリフェニレンサルファイドと炭酸カルシウムとを含む熱可塑性ポリマー造粒物、を例示することができる。
4)リサイクルにおける、熱可塑性ポリマー造粒物のコンパウンド原料としての使用
ペレット、塊状ポリマー、成形品、更には回収プラスチックスの再使用において、粉砕処理により得られる粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとから熱可塑性ポリマー造粒物を構成することによりハンドリング性を高めることができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
[実施例1]粉体状超高分子量ポリエチレンの造粒
粉体用ニーダー(ダルトン社製、商品名「KDHJ-10」;処理量:6L)に、粉体状熱可塑性ポリマー(超高分子量ポリエチレン粉体、旭化成株式会社製、商品名「サンファインUH850」;嵩比重:0.5(嵩密度:0.5kg/L);表中、「A-1」)65重量部と、フィラー(タルク、浅田製粉社製、商品名「J300」;嵩比重:0.17(嵩密度:0.17kg/L);表中、「B-1」)35重量部とを投入し、回転数30rpmで6分間の攪拌処理を行った。
その後、結着剤の分散液(ポリオレフィン分散液(水性PEディスパージョン);三井化学社製、商品名「ケミパールA100」;ポリオレフィン固形分濃度:40重量%;ポリオレフィン粒子の平均粒子径4μm;表中、「C-1」)20重量部と、分散剤(ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル;太陽化学社製、商品名「チラバゾールH818」;表中、「D-1」)1.0重量部とを投入し、更に、20重量部の水道水を配合して、回転数30rpmで、更に6分間の攪拌処理を行い、混合物Aを得た。
この混合物Aを、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ペレット状の熱可塑性ポリマー造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスクの裏面とカッター間の距離は10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、100℃で4時間乾燥させて、熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-1)を得た。得られた熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-1)の外観写真を図1に示す。
[実施例2~6、比較例1、2]
表1に示す、粉体状熱可塑性ポリマー、フィラー、結着剤、および分散剤を、表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-2~MPG-6)を得た。必要に応じて、表1に示す量の水を配合して造粒を行った。
実施例5と6で使用するPP粉体とPLA粉体は、ペレットを冷凍粉砕したものを使用した。
実施例2は、UPE50/タルク50混合粉体造粒物(結着剤:A100)の例である。
実施例3は、UPE25/タルク75混合粉体造粒物(結着剤:A100)の例である。
実施例4は、PPE50/マイカ50混合粉体造粒物(結着剤:ポリウレタン)の例である。
実施例5は、PP70/タルク30混合粉体造粒物(結着剤:A100)の例である。
実施例6は、PLA粉砕物70/タルク30混合粉体造粒物(結着剤:BVOH)の例である。
比較例1は、実施例1において、A100を欠く例である。(造粒不能)
比較例2は、実施例6において、PVAを欠く例である。(造粒不能)
実施例1~6、比較例1~2で用いた各成分の具体的な内容は、表2に示すとおりである。
Figure 0007422708000001
Figure 0007422708000002
<評価>
実施例1~6および比較例1~2で得られた熱可塑性ポリマー造粒物を下記の評価に供した。結果を表3に示す。

(1)造粒性
得られた熱可塑性ポリマー造粒物の確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 直径3mmφの造粒物が得られる。
△: 熱可塑性ポリマー造粒物の形態になるが、結着力が不足して、崩壊しやすい。
×: 熱可塑性ポリマーがダイスに目詰まりする、もしくは、熱可塑性ポリマーの結着性がなく、粒状物にならない。

(2)造粒速度
時間当たりの熱可塑性ポリマー造粒物の製造速度(kg/Hr)を算出した。

(3)嵩密度
乾燥後の熱可塑性ポリマー造粒物を1リットルの升に自然落下させ、すり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで、熱可塑性ポリマー造粒物の嵩密度(単位:kg/L)を算出した。

(4)ペレットサイズ
熱可塑性ポリマー造粒物を20粒取り出し、ノギスを用いて、粒状物の長さと直径を測定し、平均値を算出した。

(5)水分量
赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、熱可塑性ポリマー造粒物に残存する水分量(単位:重量%)を測定した。

(6)崩壊強度測定
木屋式硬度計(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」)を用いて、乾燥後の熱可塑性ポリマー造粒物の崩壊応力(単位:kg)を測定した。測定値は熱可塑性ポリマー造粒物20粒の平均値とした。

(7)微粉量
熱可塑性ポリマー造粒物を1kg計量し、12メッシュの篩にかけ、微粉量の質量割合(単位:重量%)を測定した。
Figure 0007422708000003
表3に示す通り、MPG-1~MPG-6では、安定したペレット形状、高い造粒速度、適切な硬度のペレット状の熱可塑性ポリマー造粒物を得ることができる。
一方、比較例としてのMPG-C1及びMPG-C2では、結着剤を欠く例であるが、ペレット状の熱可塑性ポリマー造粒物を得ることができない。
[実施例7]
実施例1で得られた熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-1)30重量部と、高密度ポリエチレン樹脂のペレット(旭化成社製、商品名「サンテックJ300」、MFR:42g/10min)70重量部とを、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、樹脂組成物のペレットを製造した。
熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-1)と高密度ポリエチレン樹脂は、それぞれ独立に、重量式フィーダーを介して、定量的に二軸押出機に投入するが、熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-1)は押出機の最上流部のホッパー位置から投入し、高密度ポリエチレン樹脂(J300)は押出機の中流部に設けた2カ所の投入口からサイドフィードにより、35重量部ずつ(合計70重量部)を連続的に投入した。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を200℃に設定し、二軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとして、連続的に溶融混練を行った。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られるフィラー含有樹脂組成物は、押出機への原料の供給安定性に優れ、安定した吐出速度で生産を行うことができ、ストランドの引き取り安定性に優れていた。
[実施例8]
実施例4で得られた熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-4)50重量部と、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)のペレット(PSジャパン製、商品名「PSJポリスチレンHT-60」、MFR:6.2g/10min)50重量部とを、二軸押出機(実施例7と同じ)に投入して、連続的に溶融混練を行い熱可塑性樹脂のペレットを製造した。
熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-4)とHIPSは予めペレット混合物とし、当該混合物を重量式フィーダーを介して、定量的に二軸押出機に押出機の最上流部のホッパー位置から投入した。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を250℃に設定した。また、二軸押出機の主スクリューの回転数を200rpmとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られるフィラー含有樹脂組成物は、吐出速度が高く、生産性に優れていた。
[実施例9]
実施6で得られた熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-6)を、二軸押出機(実施例7と同じ)に投入して、連続的に溶融混練を行いペレットを製造した。
熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-6)は、重量式フィーダーを介して、定量的に、二軸押出機の最上流部のホッパー位置から投入した。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を170℃に設定した。また、二軸押出機の主スクリューの回転数を200rpmとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られるフィラー含有樹脂組成物は、結晶化が進行し、ペレタイズを安定に行うことができ、吐出速度も大きく、生産性に優れていた。
[比較例3]
熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-1)を使用せずに、粉体状ポリエチレン(表2のA-1に示す)20重重量部と、タルク(表2のB-1に示す)10重量部とを、予備混合を行って粉体混合物とした後、当該混合物を重量式フィーダーを介して、一定速度で二軸押出機の最上流部のホッパー位置から投入し、それ以外の条件は実施例7と同様にして、高密度ポリエチレン樹脂(J300)は押出機の中流部に設けた2カ所の投入口からサイドフィードにより、35重量部ずつ(合計70重量部)を連続的に投入して樹脂組成物のペレットを製造した。
二軸押出機の最上流部のホッパー位置から投入した粉体原料が押出機投入口においてブリッジを生じてしまい、連続して生産することができなかった。
[比較例4]
熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-4)を使用せずに、PPE粉体(表2のA-2に示す)25重量部と、マイカ(表2のB-2に示す)25重量部と、ハイインパクトポリスチレン樹脂(PSJポリスチレンHT-60)のペレット50重量部とを、予備混合を行って混合物とした後、当該混合物を、重量式フィーダーを介して、一定速度で二軸押出機の最上流部のホッパー位置から連続的に投入して樹脂組成物のペレットを製造した。
二軸押出機の最上流部のホッパー位置から投入した粉体原料が押出機投入口においてブリッジを生じてしまい、連続して生産することができなかった。
[比較例5]
熱可塑性ポリマー造粒物(MPG-6)を使用せずに、粉体状PLA樹脂(表2のA-4に示す)70重量部と、タルク(表2のB-1に示す)30重量部とを、予備混合を行って混合物とした後、当該混合物を、重量式フィーダーを介して、一定速度で二軸押出機の最上流部のホッパー位置から連続的に投入して樹脂組成物のペレットを製造した。
二軸押出機の最上流部のホッパー位置から投入した粉体原料が押出機投入口においてブリッジを生じてしまい、連続して生産することができなかった。
<評価>
実施例7~9および比較例3~5で得られたフィラー含有樹脂組成物のペレットを下記の評価に供した。結果を表4に示す。
(a)樹脂組成物の吐出速度(単位:kg/Hr)
時間当たりのフィラー含有樹脂組成物の吐出量である。

(b)押出機負荷(単位:%)
二軸押出機、単軸押出機の実測の動力負荷%(許容最大モーター負荷に対する割合)の表示値である。

(c)ダイス部での溶融樹脂温度(単位:℃)
ダイスから押し出されるフィラー含有樹脂組成物の温度を接触式熱電対で測定した。

(d)押出機への原料のフィード特性
原料の連続投入状況を確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 安定に供給できる。
×: 粉体状の原料(ポリマーもしくはフィラー)の供給でブリッジが生じることがあり、フィードが不安定。

(e)分散性
樹脂と熱可塑性ポリマー造粒物の溶融混練における分散性を、溶融混合物のストランド表面の感触より、以下の基準で評価した。
〇: 表面が滑らかで分散性が良い。
×: 表面が荒れており、分散性が悪い。

(f)樹脂ペレットの造粒性(ペレット結晶化)
樹脂と熱可塑性ポリマー造粒物の溶融混練物の造粒性を、以下の基準で評価した。
〇: 溶融混練後に速やかに結晶化が進行し、樹脂組成物のペレットが容易に得られる。
×: 結晶化が遅いためにペレタイズが困難。
Figure 0007422708000004

Claims (10)

  1. 粉体状熱可塑性ポリマーと、フィラーと、結着剤とを構成成分として含む熱可塑性ポリマー造粒物であって、
    該粉体状熱可塑性ポリマーの嵩密度が、0.01kg/L~1kg/Lであり、
    該粉体状熱可塑性ポリマーの含有割合が、該粉体状熱可塑性ポリマーと該フィラーと該結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~98重量部であり、
    該フィラーの含有割合が、該粉体状熱可塑性ポリマーと該フィラーと該結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~98重量部であり、
    該結着剤の含有割合が、該粉体状熱可塑性ポリマーと該フィラーと該結着剤との合計量100重量部に対して、1重量部~30重量部であり、
    該熱可塑性ポリマー造粒物が、該構成成分の混合物であり、
    該熱可塑性ポリマー造粒物の直径が、2mm~5mmである、
    熱可塑性ポリマー造粒物。
  2. 前記粉体状熱可塑性ポリマーを構成する熱可塑性ポリマーが、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)類およびコアシェル型ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー造粒物。
  3. 前記フィラーが、層状ケイ酸塩化合物である、請求項1または2に記載の熱可塑性ポリマー造粒物。
  4. 前記結着剤が、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、多糖類および膨潤性粘土鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性ポリマー造粒物。
  5. 分散剤をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性ポリマー造粒物。
  6. 前記分散剤の含有割合が、前記粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、0.1重量部~30重量部である、請求項5に記載の熱可塑性ポリマー造粒物。
  7. 前記分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5または6に記載の熱可塑性ポリマー造粒物。
  8. 前記粉体状熱可塑性ポリマーと、前記フィラーと、前記結着剤を含む水系液とを混合する混合工程と、
    該混合工程を経て得られた混合物を造粒して、造粒物前駆体を得る造粒工程と、
    該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含み、
    造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む、
    請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性ポリマー造粒物の製造方法。
  9. 前記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒することを含む、請求項8に記載の熱可塑性ポリマー造粒物の製造方法。
  10. 請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性ポリマー造粒物の、熱可塑性樹脂コンパウンドの原料としての使用。
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