JP7336980B2 - 磁性合金粉及びその製造方法、並びに磁性合金粉から作られるコイル部品及びそれを載せた回路基板 - Google Patents

磁性合金粉及びその製造方法、並びに磁性合金粉から作られるコイル部品及びそれを載せた回路基板 Download PDF

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Description

本発明は、磁性合金粉及びその製造方法、並びに磁性合金粉をから作られるコイル部品
及びそれを載せた回路基板に関する。
近年、電気電子機器の高性能化に伴い、インダクタ等のコイル部品には、性能の向上と小型化とが求められている。コイル部品の性能は、含有する磁性材料の量に影響されるため、含有する磁性材料の量の減少につながる部品の小型化を、高性能化と両立するためには、磁性材料の高性能化が必要である。
コイル部品のうち、比較的大きな電流が流れるものでは、電流によるインダクタンスの変化を小さくすることが求められる。該要求に応えるために、磁性材料としてFeを主成分とする金属を採用する動きが広がっている。
Feを主成分とする金属材料は、導電性を有するため、その粉末を成形して磁性体とする際には、該粉末を構成する粒子同士を電気的に絶縁する必要がある。このため、金属材料粉末を構成する各粒子の表面に絶縁性の皮膜を形成することが行われている。
例えば、特許文献1には、組成が重量%で9.4Si5.2Albal.Feの金属磁性粉末を、酸素濃度が体積%で2%の酸素-窒素混合ガス雰囲気中にて850℃で1時間の条件で酸化処理して、絶縁性酸化皮膜を形成したこと等が報告されている。
また、特許文献2には、純鉄粉末の粒子表面にシリコーン樹脂層を形成し、成形した後、600~650℃の温度で、非酸化雰囲気中で熱処理を行って、該粒子表面に絶縁皮膜を形成する技術思想が開示されている。
さらに、特許文献3には、Fe-1%Siアトマイズ合金粒子を、窒素ガスに水蒸気を混入して相対湿度100%(常温)となるよう非常に低い酸素濃度の雰囲気中で450℃にて2時間酸化反応させて、結果として粒子表面に膜厚5nmのSiO酸化膜からなる絶縁性ナノ薄膜を形成することが報告されている。
特開2007-299871号公報 特開2015-70222号公報 特開2006-49625号公報
特許文献1のように、金属磁性粉末を酸化雰囲気中で熱処理することにより絶縁性皮膜を形成する場合には、Al等のFe以外の元素をある程度の量で金属中に含有する必要がある。このため、金属中のFeの含有量が相対的に少なくなり、十分な磁気特性が得られない問題があった。
他方、特許文献2のように、純鉄等のFeの含有量が多い金属磁性粉末を採用する場合には、金属中の成分の酸化により絶縁性皮膜を形成することが困難であるため、金属粒子表面の被覆等により別途絶縁性皮膜を形成する必要がある。このため、絶縁性皮膜が厚く形成されてしまい、成形した際に、絶縁性皮膜の厚みにより金属粒子間の距離が大きくなり、磁気特性が低下してしまう問題があった。また、金属粒子と絶縁性皮膜との接着強度が低いことに起因して、成形時に絶縁性皮膜の剥離や欠損等が起こる問題、及び被覆処理のコストが嵩む問題等もあった。
また、特許文献3のように、金属中に少量含まれるFe以外の成分であるSiを弱酸化性雰囲気中で酸化させて絶縁膜を形成する場合には、SiO酸化膜が薄くて脆いため、ハンドリング時に剥離や亀裂が発生し、金属部分が露出することにより、絶縁性が低下することがあった。また、金属部分が大気に曝されることにより、酸素と反応して酸化し易く、これも磁気特性が低下する原因となっていた。このため、成形体を作る場合のプレス圧力に制約が生じ、絶縁性と充填率との両立が困難となっていた。
そこで本発明は、前述の問題点を解決し、Feの含有量が多く、かつ絶縁性に優れる磁性合金粉、及びその簡便な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前述の問題点を解決するために種々の検討を行ったところ、Feの含有量が非常に多く、かつSi及びFeよりも酸化し易いSi以外の元素を含む磁性合金粉を、酸素の存在下で熱処理し、該磁性合金粉を構成する各粒子の表面に、Siに富む酸化物の膜を形成することで、該問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決するための本発明の第1の実施形態は、合金相が酸化膜により被覆された磁性粒子で構成される磁性合金粉であって、前記合金相は、Feの含有量が98質量%以上であるとともに、Siと、Feより酸化し易いSi以外の元素(M元素)を少なくとも1種含み、前記酸化膜は、膜厚方向の元素分布において、質量割合で表したSiの含有量が最大となる箇所での当該Siの含有量が、当該箇所におけるFeの含有量及び前記M元素の含有量のそれぞれよりも多いことを特徴とする、磁性合金粉である。
また、本発明の第2の実施形態は、合金相が酸化膜により被覆された磁性粒子で構成される磁性合金粉の製造方法であって、Feの含有量が96.5質量%~99質量%であるとともに、Siと、Feより酸化し易いSi以外の元素(M元素)を少なくとも1種含む磁性合金の原料粉を準備すること、及び該原料粉を熱処理し、該原料粉を構成する各粒子の表面に酸化膜を形成して磁性合金粉を得ることを含み、前記磁性合金粉は、前記合金相におけるFeの含有割合が前記原料粉より高く、かつ前記酸化膜における膜厚方向の元素分布において、質量割合で表したSiの含有量が最大となる箇所での当該Siの含有量が、当該箇所におけるFeの含有量及びM元素の含有量のそれぞれよりも多いことを特徴とする、磁性合金粉の製造方法である。
本発明によれば、合金中のFeの含有量が多く、かつ絶縁性に優れる磁性合金粉を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る磁性合金粉を構成する磁性粒子の構造を示す模式図 本発明の実施形態に係るコンポジットコイル部品の構造例の説明図 本発明の実施形態に係る巻線コイル部品の構造例の説明図((a):全体斜視図、(b):(a)におけるA-A断面図) 本発明の実施形態に係る積層コイル部品の構造例の説明図((a):全体斜視図、(b):(a)におけるB-B断面図) 本発明の実施形態に係る薄膜コイル部品の構造例の説明図 実施例6に係る磁性合金粉及び原料粉における、酸化膜の膜厚方向の元素分布の測定結果(実線:磁性合金粉、点線:原料粉)
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、数値範囲の記載(2つの数値を「~」でつないだ記載)については、下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
[磁性合金粉]
本発明の第1の実施形態に係る磁性合金粉(以下、単に「第1実施形態」と記載することがある。)は、図1に示すように、合金相1が酸化膜2により被覆された磁性粒子100で構成され、前記合金相1は、Feの含有量が98質量%以上であるとともに、Siと、Feより酸化し易いSi以外の元素(以下、「M元素」と記載することがある。)を少なくとも1種含み、前記酸化膜2は、膜厚方向の元素分布において、質量割合で表したSiの含有量が最大となる箇所での当該Siの含有量が、当該箇所におけるFeの含有量及び前記M元素の含有量のそれぞれよりも多いことを特徴とする。
第1実施形態における合金相1は、構成元素としてFeを98質量%以上含む。合金相部分のFeの含有量が多いことで、磁性体を形成した際に、透磁率等の磁気特性に優れたものとなる。合金相1におけるFeの含有量は、99質量%以上とすることが好ましい。
前記合金相1は、Feに加えて、M元素を少なくとも1種含む。合金相1がSiを含むことで、磁性粒子の表面に電気的絶縁性が高く滑らかな表面を有する酸化膜2を形成できる。また、M元素を含むことで、合金相1の主成分であるFeの酸化を抑制し、磁性体を形成した際に、透磁率等の磁気特性が安定したものとなる。
M元素としては、Cr、Al、Ti、Zr又はMg等が挙げられる。これらのうち、Feの酸化抑制効果が高い点で、Cr又はAlが好ましく、Crが特に好ましい。
M元素は、合金相1中に1種のみ含まれてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
第1実施形態は、前記合金相1が酸化膜2により被覆された磁性粒子100で構成される。
磁性粒子100表面の酸化膜2は、膜厚方向の元素分布において、質量割合で表したSiの含有量が最大となる箇所での当該Siの含有量が、当該箇所におけるFeの含有量及びM元素の含有量のそれぞれよりも多い。このことは、酸化膜2が、構成元素としてSiを最も多く含む薄層を有することを意味する。このような薄層は絶縁性に優れるため、これを有する酸化膜2及び磁性粒子100は、高い絶縁性を示す。
磁性粒子100表面の酸化膜2は、好ましくは、Siの総含有量が、Feの総含有量及び前記M元素の総含有量のそれぞれより多い。酸化膜2が、Siに富むことで、より高い絶縁性が得られる。
また、酸化膜2は、M元素を含むことが好ましい。酸化膜2がM元素を含むことで、その内部に位置する合金相1中のFeの酸化を抑制し、磁性体を形成した際に、透磁率等の磁気特性が安定したものとなる。
ここで、合金相1及び酸化膜2における各元素の質量割合は、以下の方法で測定する。X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社製 PHI Quantera II)を用いて、磁性合金粉を構成する磁性粒子表面における鉄(Fe)を始めとする各元素の含有割合(原子%)の測定と、該粒子表面のスパッタリングとを繰り返すことで、粒子の深さ方向(径方向)における各元素の分布を得る。各元素の含有割合の測定は、X線源として単色化したAlKα線を用い、検出領域を100μmφとして、5nm毎に行う。また、スパッタリングの条件は、スパッタガスとしてアルゴン(Ar)を用い、印加電圧を2.0kVとし、スパッタ速度を約5nm/min(SiOに換算した値)とする。測定により得られたFeの濃度分布(原子%)において、粒子の表面側から見た際に、測定点間の濃度差が初めて1原子%未満となった該測定点間を、合金相1と酸化膜2との境界とする。そして、該境界より浅い領域である酸化膜2及びこれより深い領域である合金相1について、元素の質量割合(mass%)を算出する。
第1実施形態では、Si及びM元素のうち、合金相1に含まれる全元素が、酸化膜2全体に含有されることが好ましい。これらの元素が酸化膜2全体に含有されることは、合金相1中の成分の拡散により酸化膜2が形成されたことを示すものといえる。該過程を経て酸化膜2が形成された磁性合金粉は、これを構成する粒子内で、各元素の分布が粒子内部から粒子の外周面に掛けて連続しているため、粒子内部に生じる応力を小さくできる。これにより、粒子自体の透磁率の低下を抑制できる。
ここで、Si及びM元素のうち、合金相1に含まれる全元素が、酸化膜2全体に含有されることは、上述した合金相1及び酸化膜2における各元素の質量割合の測定によって得られる深さ方向(径方向)の各元素の分布において、酸化膜2とされた領域に位置する全測定点で、該各元素が全て検出されることで確認できる。
Si及びM元素のうち、合金相1に含まれる全元素が、酸化膜2全体に含有される磁性粒子100を得るためには、後述するように、磁性合金の原料粉を低酸素雰囲気中(概ね5ppm~500ppm以下)で熱処理することが有効である。このような酸化雰囲気とすることで、急激な酸化反応は抑制される。これにより、Feより酸化し易い元素を選択的に酸化させることができる。特に、Feより酸化し易い元素として、Siの酸化を進めることができる。また、これ以上低い酸素雰囲気とした場合には、同じような酸化反応は得られるものの、熱処理の時間が長時間必要となり、また酸素の供給される範囲が限定的となり易く、粒子同士の接触の有無による酸化反応のバラツキの原因となってしまう。このためにも、前述のような低酸素雰囲気とすることが好ましい。
第1実施形態では、酸化膜2は10nm以上の厚みを有することが好ましい。酸化膜2の厚みを10nm以上とすることで、磁性粒子100間の電気的絶縁性をより高めることができる。これに加えて、ハンドリング時に酸化膜2が損傷しても合金相1が大気に接することを防止するとともに、大気中の酸素の拡散による金属部分への到達を抑制することで、Feの酸化による磁気特性の低下を抑制できる。酸化膜2の厚みは、20nm以上がより好ましい。
酸化膜2の厚みの上限は特に限定されないが、500nm以下とすることが好ましい。酸化膜2の厚みを500nm以下とすれば、酸化膜2の表面の平滑性を維持できる。500nmより厚くなると、Si以外の成分の割合が多くなり、これに伴い表面に凹凸ができ易くなる。酸化膜2の厚みは、200nm以下とすることがより好ましい。酸化膜2の厚みを200nm以下とすることで、ハンドリング時に、粒子の衝突等による酸化膜2の割れや欠けの発生を抑制できる。また、磁性体を形成した際に、高い透磁率が得られる。酸化膜2の厚みは、100nm以下がより好ましい。さらに、磁性粒子100表面の平滑性を高めて流動性に優れる磁性合金粉とする点からは、酸化膜2の厚みを50nm以下とすることが好ましい。
ここで、酸化膜2の厚みは、磁性合金粉を構成する磁性粒子100の断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)(日本電子株式会社製 JEM-2100F)にて観察し、粒子内部の合金相1とのコントラスト(明度)の差異により認識される酸化膜2について、その厚みを、異なる粒子の10箇所で、倍率500,000倍で測定し、平均値を求めることで算出する。
第1実施形態の粒径は特に限定されず、例えば、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))を0.5μm~30μmとすることができる。平均粒径は、1μm~10μmとすることが好ましい。この平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱法を利用した粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
また、第1実施形態においては、比表面積S(m/g)と平均粒径D50(μm)との関係が下記式(1)を満たすことが好ましい。
この式は、比表面積S(m/g)の常用対数と平均粒径D50(μm)の常用対数とが直線関係になるという経験則に基づいて導出されたものである。粉末の比表面積の値は、これを構成する粒子表面の凹凸に加えて、該粒子の粒径の影響も受けるため、比表面積の値が小さい粉末であれば表面の凹凸の少ない滑らかな粒子で構成されているとは言えない。そこで、前記式(1)により、比表面積に対する粒子の表面状態の影響と粒径の影響とを分離し、前者の影響で小さな比表面積を有する磁性合金粉を、凹凸の少ない滑らかな表面を有するものとしたのである。SとD50との関係が前記式(1)を満たすことで、より流動性に優れる粉末となる。
比表面積S(m/g)と平均粒径D50(μm)との関係は、下記式(2)を満たすことがより好ましく、下記式(3)を満たすことがさらに好ましい。
ここで、比表面積Sは、全自動比表面積測定装置(株式会社マウンテック製 Macsorb)により、窒素ガス吸着法を用いて測定・算出する。まず、ヒーター内で測定試料を脱気した後、測定試料に窒素ガスを吸着・脱離させることにより吸着窒素量を測定する。次いで、得られた吸着窒素量から、BET1点法を用いて単分子層吸着量を算出し、この値から、1個の窒素分子が占める面積及びアボガドロ数の値を用いて試料の表面積を導出する。最後に、得られた試料の表面積を該試料の質量で除すことで、粉末の比表面積Sを得る。
また、平均粒径D50は、レーザー回折/散乱法を利用した粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製 LA-950)により測定・算出する。まず、湿式フローセル中に分散媒としての水を入れ、事前に十分に解砕した粉末を、適切な検出信号が得られる濃度で該セル中に投入して粒度分布を測定する。次いで、得られた粒度分布におけるメジアン径を算出し、この値を平均粒径D50とする。
[磁性合金粉の製造方法]
本発明の第2実施形態に係る磁性合金粉の製造方法(以下、単に「第2実施形態」と記載することがある。)は、Feの含有量が96.5質量%~99質量%であるとともに、Siと、少なくとも1種のM元素とを含む磁性合金の原料粉を準備し、該原料粉を熱処理して、合金相が酸化膜により被覆された磁性粒子で構成される磁性合金粉を得るものである。そして、前記磁性合金粉を、前記合金相におけるFeの含有割合が前記原料粉より高く、かつ前記酸化膜における膜厚方向の元素分布において、質量割合で表したSiの含有量が最大となる箇所での当該Siの含有量が、当該箇所におけるFeの含有量及びM元素の含有量のそれぞれよりも多いものとする。
第2実施形態で使用する磁性合金の原料粉は、構成元素としてFeを96.5質量%~99質量%含む。Feの含有量を96.5質量%以上とすることで、後述する熱処理によりFe含有量の高い合金相を備える磁性合金粉が得られ、磁性体を形成した際に、透磁率等の磁気特性に優れたものとなる。Feの含有量は、97質量%以上とすることが好ましい。他方、Feの含有量を99質量%以下とすることで、後述する熱処理によるFeの酸化を抑制し、透磁率等の磁気特性の低下を抑制できる。合金相におけるFeの含有量は、98質量%以下とすることが好ましい。
前記原料粉は、Feに加えて、Siを含む。原料粉がSiを含むことで、後述する熱処理によって、磁性粒子の表面にSiに富む酸化膜を形成することができ、高い電気的絶縁性が得られる。
また、前記原料粉は、M元素を少なくとも1種含む。原料粉が、M元素を含むことで、後述する熱処理によってM元素が磁性粒子の表面に拡散し、M元素を含む酸化膜が形成される。これにより、Feの酸化を抑制し、透磁率等の磁気特性の低下を抑制できる。M元素の含有量は特に限定されないが、Feの酸化を効果的に抑制する点からは、0.2質量%以上とすることが好ましく、0.5質量%以上とすることがより好ましい。
M元素としては、Cr、Al、Ti、Zr又はMg等が挙げられる。これらのうち、Feの酸化抑制効果が高い点で、Cr又はAlが好ましく、Crが特に好ましい。
M元素は、合金相中に1種のみ含まれてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
原料粉の粒径は特に限定されず、例えば、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))を0.5μm~30μmとすることができる。平均粒径は、1μm~10μmとすることが好ましい。この平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱法を利用した粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
第2実施形態では、原料粉を、酸素濃度が5ppm~500ppmの雰囲気中で熱処理することが好ましい。酸素濃度をこの範囲とすることで、Siの酸化を進めつつ、Si以外の酸化を抑制することになる。これにより、Siを多く含む酸化膜を作ることができ、凹凸の少ない表面状態とすることができる。これに加えて、熱処理雰囲気中の酸素濃度を5ppm以上とすることで、Siの磁性粒子表面への拡散を促進し、Siに富む、電気的絶縁性に優れた酸化膜を形成することができる。また、同時に、M元素の拡散も促進され、M元素を含む酸化膜となることで、合金中のFeの酸化を効果的に抑制できる。熱処理雰囲気中の酸素濃度は、50ppm以上とすることがより好ましく、100ppm以上とすることがさらに好ましい。また、熱処理を低酸素雰囲気下で行うことで、磁性粒子表面に、微細な凹凸の少ない滑らかな表面を有する酸化膜を形成できるため、熱処理雰囲気中の酸素濃度は500ppm以下とすることが好ましく、400ppm以下とすることがより好ましく、300ppm以下とすることがさらに好ましい。
原料粉の熱処理温度は、600℃以上とすることが好ましい。熱処理温度を600℃以上とすることで、原料粉を構成する個々の粒子の表面に、Siが十分に拡散し、電気的絶縁性の高い酸化膜を形成するとともに、合金相中のFeの含有割合が増加し、透磁率等の磁気特性が向上する。また、同時に、M元素も十分に拡散して該元素を含む酸化膜となることで、合金中のFeの酸化を効果的に抑制できる。熱処理温度は、650℃以上がより好ましく、700℃以上がさらに好ましい。熱処理温度の上限は特に限定されないが、Feの過度の酸化を抑制して磁気特性に優れた磁性体を得る点で、850℃以下とすることが好ましく、800℃以下とすることがより好ましく、750℃以下とすることがさらに好ましい。
原料粉の熱処理時間は、4時間以上とすることが好ましい。このような熱処理とすることで、Feの酸化を抑制しつつ、Fe以外の成分の酸化を進め、原料粉に対しFeの含有割合を高めることができる。このため、合金相の内部のFeの含有割合は増加することになり、磁気飽和特性を高めることができる。また、Siの酸化はさせつつも、合金相中にSiを残存させることで、透磁率と損失の特性を維持することができる。これは、微視的には、長時間の熱処理によって、原料粉に含まれるSi及びM元素が磁性粒子表面に十分に拡散し、合金相中のFeの含有割合が増加して、透磁率等の磁気特性が向上することとして説明される。熱処理時間は、5時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましい。熱処理時間の上限については特に限定されないが、熱処理を短時間で終わらせて生産性を向上する点からは、熱処理時間を24時間以下とすることが好ましく、12時間以下とすることがより好ましい。
第2実施形態における熱処理は、バッチ処理であってもフロー処理であってもよい。フロー処理の例としては、磁性合金の原料粉を入れた複数の耐熱容器をトンネル炉中に断続的ないし連続的に投入し、所定の雰囲気及び温度に保持した領域を所定の時間で通過させる方法が挙げられる。
上述した第1実施形態及び第2実施形態によれば、Feの含有量が多く、かつ絶縁性に優れる磁性合金粉が得られる。該磁性合金粉によれば、高性能のコイル部品を得ることが可能となる。磁性合金粉から製造されるコイル部品のうち、いわゆるコンポジットコイル部品、すなわちコイル部と、該コイル部が埋設されたコア部とを有し、該コア部が磁性合金粉と樹脂とを含むものは、第1実施形態及び第2実施形態による前述のメリットが大きいため、磁気特性、耐久性及び信頼性に優れた部品となり、部品の小型化も可能である。また、このようなコイル部品を載せた回路基板の高性能化及び小型化も可能である。そこで、本発明の好ましい態様としてのコンポジットコイル部品及び回路基板について、第3実施形態及び第4実施形態として以下にそれぞれ説明する。
[コイル部品]
本発明の第3実施形態に係るコイル部品(以下、単に「第3実施形態」と記載することがある。)は、金属導体で構成されたコイル部と、軟磁性合金粒子を含む磁性基体とを含むコイル部品であって、前記軟磁性合金粒子が、第1実施形態に係る軟磁性合金粉を構成する軟磁性合金粒子であることを特徴とする。
コイル部の配置については、磁性基体中に埋設されていてもよい。また、磁性基体の周囲に巻回されていてもよい。
磁性基体は、第1実施形態に係る軟磁性合金粉を構成する軟磁性合金粒子を含有する。
磁性基体の構造については、軟磁性合金粒子に加えて樹脂を含有し、当該樹脂の作用で保形されるものでもよい。また、軟磁性合金粒子同士の前記酸化膜を介した結合により保形されるものでもよい。
第3実施形態としては、図2に示すようなコンポジットコイル部品、図3に示すような巻線コイル部品、図4に示すような積層コイル部品及び図5に示すような薄膜コイル部品などが例示される。
第3実施形態の製法としては、例えばコンポジットコイル部品の場合、典型的には、磁性合金粉と樹脂とを混合して混合物を調製した後、予め空心コイルを配置した金型等の成形型に該混合物を投入し、プレス成形した後、樹脂を硬化させて得られる。
使用する磁性合金粉については、上述したため説明を省略する。
使用する樹脂は、磁性合金粉の粒子同士を接着して成形及び保形できるものであれば、その種類に制限はなく、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の各種樹脂が使用できる。樹脂の使用量も制限されず、例えば磁性合金粉100質量部に対して1~10質量部とすることができる。第2実施形態のうち、原料粉を低酸素雰囲気中で熱処理する形態で得られた磁性合金粉を使用する場合は、該磁性合金粉末有する優れた流動性により、樹脂の使用量を低減して磁性合金粉の割合を多くすることができるため、樹脂の使用量は磁性合金粉100質量部に対して3質量部以下とすることが好ましい。
磁性合金粉と樹脂との混合及び成形型への混合物の投入方法についても制限はなく、両者を混練した流動状態の混合物を成形型に投入する方法の他、表面に樹脂をコーティングした磁性合金粉の造粒粉を成形型に投入する方法等を採用できる。また、前記混合物の成形型の投入と後述するプレス成形とを合わせて行う方法として、シート状に成形した前記混合物をプレスにより成形型中に導入する方法を採用してもよい。
プレス成形の温度及び圧力についても制限されず、型内に配置された空心コイルの材質及び形状、投入された磁性合金粉の流動性、並びに投入された樹脂の種類及び量等に応じて適宜決定すればよい。
樹脂の硬化温度についても、使用する樹脂に応じて適宜決定すればよい。
第3実施形態に係る磁性基体は、軟磁性合金粉と樹脂との混合物をプレス成形した後、得られた成形体を樹脂の硬化温度より高い温度で熱処理して形成してもよい。この場合、熱処理によって樹脂が分解すると共に、軟磁性合金粒子表面の酸化膜が成長し、当該酸化膜により軟磁性合金粒子同士が結合する。なお、熱処理により樹脂成分はほぼ分解されるが、部分的に炭素は残っていてもよい。
このようにして得られた磁性基体に巻線を行えば、巻線コイル部品を得ることができる。巻線コイル部品も第3実施形態のコイル部品の1つの例である。
また、コイル部品が積層コイル部品である場合には、シート法を利用して製造することができる。シート法の手順としては、まず、軟磁性合金粉と樹脂とを混合して混合物を調製した後、これをドクターブレード法などでシート状に塗工し、これを裁断した後、レーザーなどで所定の位置にヴィアホールを作成し、所定の位置に内部パターンを印刷する。次いで、これらシートを所定の順序で積層し、熱圧着して積層体を得る。次いで、必要に応じ、当該積層体を、ダイシング機やレーザー切断機等の切断機を用いて、個々の部品のサイズに切断する。最後に、当該積層体を熱処理し、積層コイル部品を得る。積層コイル部品も第3実施形態のコイル部品の1つの例である。
さらに、コイル部品が薄膜コイル部品である場合には、フォトリソグラフィが採用できる。薄膜コイル部品も第3実施形態の1つの例である。
以上例示した製法の他、コイル部品の形状等に応じた公知の製法が採用できることは言うまでもない。
第3実施形態は、磁性合金粉として、Feの含有量が多く、かつ絶縁性に優れるものを用いているため、高性能のコイル部品となる。これにより、同じインダクタンスを得るのに必要な素子体積を小さくできるため、コイル部品を小型化することもできる。
[回路基板]
本発明の第4実施形態に係る回路基板(以下、単に「第4実施形態」と記載することがある。)は、第3実施形態に係るコイル部品を載せた回路基板である。
回路基板の構造等は限定されず、目的に応じたものを採用すればよい。
第4実施形態は、第3実施形態に係るコイル部品を使用することで、高性能化及び小型化が可能である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
Fe96質量%、Si2質量%、Cr1質量%、Al1質量%の組成を有し、平均粒径が4.0μmである磁性合金の原料粉を、ジルコニア製の容器に入れ、真空熱処理炉内に配置した。
次に、炉内を排気して酸素濃度を5ppmとした後、昇温速度5℃/minで650℃まで昇温し、5時間保持して熱処理を行った後、室温まで炉冷し、実施例1に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の合金相における各元素の質量割合を、上述した方法で測定したところ、Fe98.0質量%、Si1.0質量%、Cr0.8質量%及びAl0.2質量%であった。
また、得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の酸化膜における各元素の質量割合を、上述の方法で測定したところ、Si含有量が最大となった測定位置において、最も多く含まれる元素はSiであり、また当該測定位置においてCr及びAlを含有することが確認された。
さらに、得られた磁性合金粉について、磁性粒子の表面に形成された酸化膜の厚みを、上述の方法で測定したところ、20nmであった。
[実施例2]
熱処理時雰囲気の酸素濃度を100ppmとした以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の合金相における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Fe98.1質量%、Si0.8質量%、Cr0.7質量%及びAl0.4質量%であった。
また、得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の酸化膜における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Si含有量が最大となった測定位置において、最も多く含まれる元素はSiであり、また当該測定位置においてCr及びAlを含有することが確認された。
さらに、得られた磁性合金粉について、磁性粒子の表面に形成された酸化膜の厚みを、実施例1と同様の方法で測定したところ、45nmであった。
[実施例3]
熱処理における保持時間を10時間とした以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の合金相における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Fe98.3質量%、Si1.7質量%、Cr0.6質量%及びAl0.4質量%であった。
また、得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の酸化膜における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Si含有量が最大となった測定位置において、最も多く含まれる元素はSiであり、また当該測定位置においてCr及びAlを含有することが確認された。
[比較例1]
Fe96質量%、Si2質量%、Cr2質量%の組成を有し、平均粒径が4.0μmである磁性合金の原料粉を、ジルコニア製の容器に入れ、熱処理炉内に配置した。
次に、大気雰囲気で昇温速度5℃/minで650℃まで昇温し、5時間保持して熱処理を行った後、室温まで炉冷し、比較例1に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の合金相における各元素の質量割合を、上述した方法で測定したところ、Fe97.3質量%、Si1.8質量%及びCr0.9質量%であった。
また、得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の酸化膜における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Si含有量が最大となった測定位置において、最も多く含まれる元素はCrであり、また当該測定位置においてSiを含有することが確認された。
[比較例2]
磁性合金の原料粉として、Fe98質量%及びSi2質量%の組成を有し、平均粒径が4.0μmであるものを使用した以外は実施例3と同様にして、比較例2に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、磁性粒子の表面に形成された酸化膜の厚みを、実施例1と同様の方法で測定したところ、320nmであった。本比較例では、M元素が原料粉中に含まれないことにより、熱処理中にSiの酸化が進行し、酸化膜が厚く形成されたものと解される。
実施例1、2、3における原料粉と磁性合金粉との組成の対比から、熱処理によって合金相におけるFeの質量割合が増加し、逆にSi、CrないしAlの質量割合が減少したことが判る。磁性合金粉を構成する磁性粒子の表面に形成された酸化膜では、Si、CrないしAlの質量割合が合金相よりも高かったことから、熱処理によって合金相中のSi、CrないしAlが磁性粒子表面に拡散して酸化物を形成したといえる。
本実施例に係る磁性合金粉は、磁性粒子の合金相におけるFeの質量割合が高いため、電流に対してインダクタンスの変化が小さいコイル部品を形成可能なものといえる。これに加えて、磁性粒子の表面に、Siに富む酸化膜が形成されていることから、本実施例に係る磁性合金粉は、絶縁性に優れたものといえる。さらに、本実施例に係る磁性合金粉は、酸化膜中に、M元素であるCr又はAlが含まれることで、耐酸化性に優れたものといえる。実際、本実施例に係る磁性合金粉を大気中で数日間放置した後、磁性粒子の組成及び酸化膜の厚みを測定したところ、変化は確認されなかった。
[実施例4](コイル部品における評価)
実施例1に係る磁性合金粉を樹脂と混練した混合物を、空心コイルを配置した成形型中に充填し、プレス成形した後、加熱により樹脂を硬化して磁性体を得た。磁性体の表面に電極を形成し、コイルと導通させることでコイル部品とした。
得られたコイル部品は、磁性合金粉を構成する磁性粒子の構造、すなわち合金相におけるFeの質量割合が高く、粒子表面にSiに富む酸化膜が形成された構造から予想されたとおり、高い比透磁率及び飽和磁束密度、並びに優れた絶縁性を有していた。
[実施例5]
熱処理温度が磁性粒子の元素分布に及ぼす影響を検討するため、実施例5、6では、原料粉の熱処理温度を変更して磁性合金粉を製造した。
熱処理温度を700℃とした以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の合金相における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Fe98.1質量%、Si1.0質量%、Cr0.7質量%及びAl0.2質量%であった。
また、得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の酸化膜における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Si含有量が最大となった測定位置において、最も多く含まれる元素はSiであり、また当該測定位置においてCr及びAlを含有することが確認された。
[実施例6]
熱処理温度を750℃とした以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の合金相における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Fe98.3質量%、Si1.1質量%、Cr0.4質量%及びAl0.2質量%であった。
また、得られた磁性合金粉及び使用した原料粉のそれぞれについて、これを構成する磁性粒子の酸化膜における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を図2に示す。図中では、実施例6に係る磁性合金粉の結果を実線で、使用した原料粉の結果を点線で、それぞれ示している。この結果から、膜厚方向の元素分布において、Siの含有量が最大となった測定位置(表面から6nm付近)での当該Siの含有量が、Fe及びM元素(CrとAlの合量)より多いこと、及び当該測定位置においてM元素を含有することが確認された。
実施例1、5、6の対比から、熱処理温度が高温になるにつれて、磁性粒子の合金相中のFeの含有割合が増加することが確認された。この結果から、Feが過度に酸化しない範囲で熱処理温度を高くすることで、合金相中のFeの含有割合を高めて磁気飽和特性を改善できるといえる。
[実施例7]
本実施例では、原料粉に含まれるM元素が1種類のみでも、所期の微細構造を有する磁性合金粉が得られることを確認した。
原料粉として、Fe96.5質量%、Si2質量%、Cr1.5質量%の組成を有する磁性合金を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る磁性合金粉を得た。
得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の合金相における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Fe98.3質量%、Si1.0質量%及びCr0.7質量%であった。
また、得られた磁性合金粉について、これを構成する磁性粒子の酸化膜における各元素の質量割合を、実施例1と同様の方法で測定したところ、Si含有量が最大となった測定位置において、最も多く含まれる元素はSiであり、また当該測定位置においてCrを含有することが確認された。
本発明は、合金相中のFeの含有量が多く、かつ絶縁性に優れる磁性合金粉が提供される。該磁性合金粉は、磁気特性に優れた磁性体及び高性能なコイル部品が形成できる点で、有用なものである。また、酸化膜がM元素を含む本発明の好ましい形態は、合金相中のFeが酸化しにくいため、安定した磁気特性が得られる点でも、有用なものである。
100 磁性粒子
1 合金相
2 酸化膜

Claims (16)

  1. 合金相が酸化膜により被覆された磁性粒子で構成される磁性合金粉であって、
    前記合金相は、Feの含有量が98質量%以上であるとともに、Siと、Feより酸化し易いSi以外の元素(M元素)を少なくとも1種含み、
    前記酸化膜は、膜厚方向の元素分布において、質量割合で表したSiの含有量が最大となる箇所での当該Siの含有量が、当該箇所におけるFeの含有量及び前記M元素の含有量のそれぞれよりも多い
    ことを特徴とする、磁性合金粉。
  2. 前記酸化膜は、Siの総含有量が、Feの総含有量及び前記M元素の総含有量のそれぞれよりも多い、請求項1に記載の磁性合金粉。
  3. 前記酸化膜は、前記M元素を含む、請求項1又は2に記載の磁性合金粉。
  4. 前記酸化膜は、Si及び前記合金相に含まれる全ての前記M元素を膜全体に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁性合金粉。
  5. 前記M元素が、Cr、Al、Ti、Zr又はMgである、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性合金粉。
  6. 前記M元素がCrを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁性合金粉。
  7. 合金相が酸化膜により被覆された磁性粒子で構成される磁性合金粉の製造方法であって、
    Feの含有量が96.5質量%~99質量%であるとともに、Siと、Feより酸化し易いSi以外の元素(M元素)を少なくとも1種含む磁性合金の原料粉を準備すること、及び
    該原料粉を熱処理し、該原料粉を構成する各粒子の表面に酸化膜を形成して磁性合金粉を得ること
    を含み、
    前記磁性合金粉は、
    前記合金相におけるFeの含有割合が前記原料粉より高く、かつ
    前記酸化膜における膜厚方向の元素分布において、質量割合で表したSiの含有量が最大となる箇所での当該Siの含有量が、当該箇所におけるFeの含有量及び前記M元素の含有量のそれぞれよりも多い
    ことを特徴とする、磁性合金粉の製造方法。
  8. 前記軟磁性合金粉における前記酸化膜は、Siの総含有量が、Feの総含有量及び前記M元素の総含有量のそれぞれよりも多い、請求項7に記載の磁性合金粉の製造方法。
  9. 前記合金相におけるFeの含有量が98質量%以上である、請求項7又は8に記載の製造方法。
  10. 前記熱処理を、酸素濃度が5ppm~500ppmの雰囲気中にて、600℃~850℃の温度で4時間以上行う、請求項7~9のいずれか1項に記載の磁性合金粉の製造方法。
  11. 前記熱処理を、前記酸化膜が前記M元素を含むように行う、請求項7~10のいずれか1項に記載の磁性合金粉の製造方法。
  12. 前記熱処理を、前記酸化膜がSi及び前記合金相に含まれる全ての前記M元素を膜全体に含むように行う、請求項7~11のいずれか1項に記載の磁性合金粉の製造方法。
  13. 前記M元素が、Cr、Al、Ti、Zr又はMgである、請求項7~12のいずれか1項に記載の磁性合金粉の製造方法。
  14. 前記M元素がCrを含む、請求項7~13のいずれか1項に記載の磁性合金粉の製造方法。
  15. 金属導体で構成されたコイル部と、軟磁性合金粒子を含む磁性基体とを含むコイル部品であって、
    前記軟磁性合金粒子が、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁性合金粉を構成する軟磁性合金粒子であることを特徴とする、
    コイル部品。
  16. 請求項15に記載のコイル部品を載せた回路基板。
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