以下、本発明に係る再帰反射シートの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る再帰反射シートの厚さ方向断面の一部を概略的に示す図である。図1及び以下に示す他の図のそれぞれにおいて、理解のし易さのため、各構成要素の大きさは誇張される等して正確に示されていない場合がある。また、図1及び以下に示す他の図のそれぞれにおいて、同様の構成のものについては参照符号が一つだけ付され、繰り返しとなる参照符号は省略されている場合がある。
図1に示すように、本実施形態の再帰反射シート10は、いわゆるカプセル型の再帰反射シートとされ、表面保護層1、再帰反射層2、結合部5、背面層6、粘着剤層7および剥離層8を備える。以下、再帰反射シート10に備えられるこれらの構成要素についてより詳細に説明する。
表面保護層1は、再帰反射層2のうち再帰反射シート10の使用時に観察者側となる面F1を保護する層であり、再帰反射シート10の使用時において再帰反射シート10の最も外側となる層である。再帰反射シート10に優れた再帰反射性を備えさせる観点から、本実施形態の表面保護層1は透明な樹脂層であり、表面保護層1の全光線透過率は例えば80%以上とされることが好ましい。
このような表面保護層1を構成する材料として、例えば、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類が単独で用いられてもよく、複数種類が混合して用いられてもよい。表面保護層1に耐候性や加工性を備えさせる観点からは、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂が好ましい。さらに塗工適性や着色する際の着色剤の分散性等を考慮するとアクリル系樹脂が好ましい。なお、表面保護層1には、透明性を著しく損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、防カビ剤、着色剤等の様々な添加剤を適宜添加することができる。
再帰反射層2は、板状の保持体部3と複数の再帰反射素子4とを有する。保持体部3の一方の面F1は表面保護層1で覆われ、保持体部3の他方の面F2には複数の再帰反射素子4が設けられている。本実施形態の再帰反射層2では、保持体部3と複数の再帰反射素子4とが一体に形成され、再帰反射層2は一層の樹脂層とされる。
複数の再帰反射素子4は、入射した光を再帰反射させるのに適した反射面を有している限り特に限定されるものではない。例えば、三角錐などの多面体状や所謂キューブコーナー形状の再帰反射素子4が最密充填状に配置される場合、再帰反射性が優れるので好ましい。
再帰反射シート10に優れた再帰反射性を備えさせる観点から、再帰反射層2は、透明な樹脂層である。再帰反射層2を構成する材料として、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類が単独で用いられてもよく、複数種類が混合して用いられてもよい。また、再帰反射層2の透明性や耐候性等を高める観点からは、再帰反射層2は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等からなることが好ましい。また、再帰反射層2には、透明性を著しく損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、防カビ剤、着色剤等の様々な添加剤を適宜添加することができる。
結合部5は、複数の再帰反射素子4の一部と背面層6の一部とを結合する部位である。再帰反射層2と背面層6との間に結合部5が介在することによって、複数の再帰反射素子4の一部と背面層6の一部とが結合部5によって結合されるとともに、複数の再帰反射素子4の他の一部と背面層6の他の一部との間には空隙9が形成される。
結合部5は、所定の樹脂組成物からなる。この樹脂組成物は、所定のエネルギーの紫外線が照射されることによって再帰反射層2及び背面層6に接着可能な接着可能状態となり、この接着可能状態から所定の時間を経過した後に硬化を完了して硬化完了状態となる。このように、結合部5を形成する樹脂組成物は、接着可能状態から所定の時間経過後に硬化完了状態となる遅延硬化性を有する。上述のように、「硬化が完了」とは、樹脂組成物を介して再帰反射層2及び背面層6を貼り合わせることができない程度まで当該樹脂組成物の粘度が高くなる状態をいう。上記所定の時間は、例えば、所定のエネルギーの紫外線が照射されてから10秒以上とされる。
また、結合部5によって再帰反射層2と背面層6とを強固に結合させる観点から、結合部5を構成する樹脂組成物は、硬化が完了した後の接着力が10N/25mm以上の接着剤であることが好ましい。なお、前記接着力は、再帰反射層2と結合部5との接着部が破断するとき、結合部5が凝集破壊するとき、または背面層6と結合部5との接着部が破断するときの値である。
このような樹脂組成物は、多官能エポキシ樹脂と、炭素数7~20の長鎖炭化水素骨格の単官能エポキシ化合物とを、それぞれ、30~95質量部及び5~70質量部の割合で含有する。なお、この樹脂組成物には、例えば、樹脂組成物の硬化を促進させる硬化促進剤などの他の化合物が含まれてもよい。
上記多官能エポキシ樹脂は、1分子に2以上のエポキシ基を有する樹脂であり、固形状、液状を問わない。このような多官能エポキシ樹脂として、例えば、ポリブタジエンエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ、グリシジルアミン型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物などのアルコール型エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、異節環状型エポキシ化合物、多官能性エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン化エポキシ化合物、ゴム変成エポキシ化合物、ウレタン変成エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル化合物、エポキシ基含有ポリウレタン化合物、エポキシ基含有アクリル化合物などを挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されたものでもよい。
上記単官能エポキシ化合物は、炭素数7~20の長鎖炭化水素骨格の1分子につき1つのエポキシ基が結合した化合物である。この1つのエポキシ基は、当該長鎖炭化水素骨格において、鎖構造の内部に結合してもよく、鎖構造の端部に結合してもよい。また、この単官能エポキシ化合物は、固形状であってもよく、液状であってもよい。このような単官能エポキシ化合物が、当該単官能エポキシ化合物と上記多官能エポキシ樹脂との合計量100質量部当たり5~70質量部の割合で含有することによって、樹脂組成物が上記遅延硬化性を示す。例えば、この樹脂組成物に500mJ/cm2程度の紫外線が照射された場合、常温において2分以上経過してから硬化が開始し得る。
このような単官能エポキシ化合物として、例えば、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシエイコサン、1,2-エポキシデカン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、グリシジルラウリルエーテルなどを挙げることができる。
また、結合部5を構成する樹脂組成物は、チクソ性を有することが好ましい。樹脂組成物がチクソ性を有する場合、樹脂組成物をパターン印刷した際に当該パターンの形状が維持され易い傾向がある。このため、例えば、上記のように再帰反射シートがカプセル型である場合、樹脂組成物がチクソ性を有さない場合に比べて、所望のカプセル形状が形成され易い。また、樹脂組成物がチクソ性を有することによって、当該樹脂組成物は、スクリーン印刷によって塗工される際に圧力を加えられて柔軟性を有し、塗工された後には粘度が回復して形状を維持し易い。例えば、結合部5を構成する樹脂組成物は、圧力を加えられていないときに1万mPa・s以上であることが好ましく、4万mPa・s以上であることがより好ましく、10万mPa・s以上であることが更に好ましい。また、スクリーン印刷によって樹脂組成物が塗工されることによって、樹脂組成物を厚く塗工することが容易になり得る。よって、樹脂組成物がチクソ性を有することによって、複数の再帰反射素子4と背面層6との間の空隙9が所望の広さの再帰反射シートが構成され易い。
背面層6は、再帰反射層2の再帰反射素子4側の面に対向して設けられる樹脂層である。背面層6を構成する材料に含まれる樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類が単独で用いられてもよく、複数種類が混合して用いられてもよい。また、背面層6の透明性や耐候性等を高める観点からは、背面層6は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等からなることが好ましい。
また、背面層6を構成する材料は、着色剤を含んでもよい。背面層6を構成する材料に含まれる着色剤として、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料、パール顔料等を用いることができる。背面層6には、これらの着色剤のうち1種類が単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
上記無機顔料の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、群青、コバルトブルー、弁柄、酸化クロム、鉄黒、カドミウムイエロー、チタンイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、黄鉛、黄色酸化鉄、クロムオレンジ、カドミウムオレンジ、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等を挙げることができる。また、上記有機顔料及び有機染料の例として、アントラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、キノイミン系、ペリレン系、ペリノン系、アゾ系、キノリン系、メチン系、インジゴ系、ナフトールイミド系などの有機化合物を挙げることができる。また、上記パール顔料の例として、酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛等を挙げることができる。
また、本実施形態では、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、架橋剤、酸化防止剤、防カビ剤等の様々な添加剤を背面層6に適宜添加することができる。
粘着剤層7は、背面層6の再帰反射層2側とは反対側に設けられ、再帰反射シート10を使用する際に被着体に貼り付けられる層である。
粘着剤層7を構成する材料として、例えば、感圧接着剤、感熱型接着剤、架橋型接着剤などから適宜選択することができる。感圧接着剤として、例えば、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレートなどのアクリル酸エステルをアクリル酸、酢酸ビニルなどと共重合して得られるポリアクリル酸エステル感圧接着剤、シリコーン系樹脂感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤等が挙げられる。感熱型接着剤として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。粘着剤層7に優れた耐候性及び粘着性を備えさせる観点からは、アクリル系樹脂またはシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。
剥離層8は、粘着剤層7の背面層6側とは反対側に設けられる層である。再帰反射シート10の使用前に剥離層8が粘着剤層7を覆うことによって、粘着剤層7にゴミ等が付着したり、粘着剤層7が意図しない場所に付着したりすることが抑制される。一方、再帰反射シート10が使用されるときには、剥離層8は粘着剤層7から剥離される。
このような剥離層8は、特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等で構成される。
以上のように、本実施形態の再帰反射シート10は、一方の面に複数の再帰反射素子4を有する再帰反射層2と、複数の再帰反射素子4に対向して設けられる背面層6と、複数の再帰反射素子4の一部と背面層6の一部をと結合する結合部5と、を備え、複数の再帰反射素子4の他の一部と背面層6の他の一部との間に空隙9を有している。また、結合部5は、多官能エポキシ樹脂と、炭素数7~20の長鎖炭化水素骨格の単官能エポキシ化合物とを、それぞれ、30~95質量部及び5~70質量部の割合で含有する樹脂組成物からなる。
このような構成によれば、再帰反射シート10の表面保護層1から再帰反射層2に入射する光は、再帰反射素子4と空隙9との界面で再帰反射される。したがって、観察者は、再帰反射素子4と空隙9との界面で再帰反射された光を視認する。
また、本実施形態の再帰反射シート10の結合部5を構成する樹脂組成物は、上記のように、炭素数7~20の長鎖炭化水素骨格の単官能エポキシ化合物を5~70質量部の割合で含有する。このような単官能エポキシ化合物が上記のような割合で含有することによって、当該樹脂組成物は、所定のエネルギーの紫外線が照射されることで再帰反射層2を背面層6に接着可能な接着可能状態となり、この接着可能状態から所定の時間が経過した後に硬化を完了して硬化完了状態となる。このように本実施形態の樹脂組成物が遅延硬化性を有することにより、再帰反射層2と背面層6とを貼り合わせる前に当該樹脂組成物に所定のエネルギーの紫外線を照射し、当該樹脂組成物を介して再帰反射層2と背面層6とを貼り合わせ、その後、当該樹脂組成物の硬化を完了させる工程によって、再帰反射層2と背面層6とを結合させることができる。このため、本実施形態の再帰反射シート10によれば、再帰反射層2及び背面層6を、紫外線を透過しない材料、あるいは、紫外線を透過し難い材料から構成し得る。例えば、再帰反射層2及び背面層6を、紫外線を50%以上透過しない材料から構成し得る。
したがって、上述のように再帰反射層2や背面層6に紫外線吸収剤を添加する場合であっても、再帰反射層2や背面層6を上記樹脂組成物によって貼り合わせること可能である。このため、本実施形態の再帰反射シート10によれば、再帰反射層2や背面層6に紫外線吸収性を持たせて耐候性を向上させることができる。
また、上述のように再帰反射層2や背面層6を着色する場合、再帰反射層2及び背面層6が紫外線を透過し難くなり得る。しかし、このように再帰反射層2や背面層6が着色された場合であっても、再帰反射層2や背面層6を上記樹脂組成物によって貼り合わせること可能である。したがって、本実施形態の再帰反射シート10によれば、着色された再帰反射層2及び背面層6によって意匠性を向上させることができる。
次に、再帰反射シート10の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る再帰反射シートの製造方法の工程を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態の再帰反射シート10の製造方法は、準備工程P1、塗工工程P2、エネルギー付与工程P3、貼合工程P4、硬化促進工程P5を備える。また、図3は、本実施形態に係る再帰反射シート10の製造装置100を概略的に示す図である。
(準備工程P1)
本工程は、所定のエネルギーが付与されてから所定の時間にわたって接着可能な粘度とされ、上記所定の時間の経過後に硬化を完了する樹脂組成物を準備する工程である。本実施形態では、このような樹脂組成物として、500mJ/cm2程度の紫外線を照射してから概ね2分以上経過した後に硬化し始める樹脂組成物を準備し、これを後述する印刷装置120内に充填する。また、本工程において、再帰反射層2を有するシート12及び背面層6を有するシート16を準備する。具体的には、再帰反射層2を有するシート12が巻かれてなるシートロール102と、背面層6を有するシート16が巻かれてなるシートロール106とを用意する。
(塗工工程P2)
本工程は、結合部5となる樹脂組成物を背面層6に塗工する工程である。シートロール106から巻き出されたシート16は、ローラー111,112に架けられることよってテンションを加えられながら印刷装置120の下まで所定の搬送速度で搬送される。印刷装置120の下まで搬送されたシート16に印刷装置120によって結合部5となる樹脂組成物が塗工される。すなわち、背面層6に結合部5となる樹脂組成物が塗工される。
本工程において結合部5となる樹脂組成物を背面層6に塗工する方法は特に限定されない。例えば、印刷装置120は、スクリーン印刷やグラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等のいずれかの印刷方法で樹脂組成物を背面層6に塗工する装置である。上述したとおり、これらの印刷方法の中でも特にスクリーン印刷が好ましく、樹脂組成物を厚く塗工することが容易になり得る。よって、複数の再帰反射素子4と背面層6との間に空隙9を形成することが容易になり得る。スクリーン印刷の方法としては、版とスキージーによる方法や、ロータリースクリーン装置による方法が挙げられる。
図4は、結合部5となる樹脂組成物15の塗工工程P2後の様子を示す断面図である。なお、エネルギー付与工程P3より前に再帰反射層2は樹脂組成物15上に配置されていないが、図4では樹脂組成物15の塗工厚さt等の説明を容易にするために、参考として再帰反射層2を示している。
塗工工程P2において、樹脂組成物15は背面層6に塗工される。このときの樹脂組成物15の厚さtは、樹脂組成物15に接着される再帰反射素子4の高さhの2/3以上4/3以下とされることが好ましい。また、厚さtは一定であることが好ましい。このように樹脂組成物15を塗工することによって、後の工程において再帰反射層2と背面層6とで樹脂組成物15を挟んで押圧したときに互いに隣り合う再帰反射素子4同士の間の溝が樹脂組成物15によって埋められ得る。よって、樹脂組成物15が背面層6と再帰反射層2とを強固に接着し得る。
また、樹脂組成物15が塗工される領域の面積は、背面層6の平面視において、背面層6の面積の30%~70%とされることが好ましく、50%~60%程度とされることがより好ましい。樹脂組成物15がこのように塗工されることによって、再帰反射層2と背面層6とを樹脂組成物15によって十分に結合しつつ、空隙9を十分に形成し得る。
(エネルギー付与工程P3)
本工程は、結合部5となる樹脂組成物15に所定のエネルギーの紫外線を照射する工程である。
塗工工程P2後、樹脂組成物15が塗工されたシート16は、紫外線照射装置130の下方に搬送される。紫外線照射装置130から樹脂組成物15に紫外線が照射されると、樹脂組成物15は紫外線によって所定のエネルギーが付与され、所定の時間が経過すると樹脂組成物15が硬化し始める。具体的には、500mJ/cm2程度の紫外線が樹脂組成物15に照射される。したがって、この樹脂組成物15は、上述のように、紫外線が照射されてから概ね2分以上経過した後に硬化し始める。
樹脂組成物15が塗工され、所定のエネルギーが樹脂組成物15に付与された状態のシート16は、上記所定の搬送速度で、紫外線照射装置130から押圧ロール113の下まで搬送される。本実施形態では、シート16が紫外線照射装置130から押圧ロール113まで搬送されるのに要する時間は、概ね10秒から2分の間とされる。上記のように、本実施形態における樹脂組成物15は、紫外線が照射されてから2分以上経過した後に硬化が始まる。したがって、樹脂組成物15は、押圧ロール113に達した際、概ね硬化が始まる前の状態とされる。
(貼合工程P4)
本工程は、エネルギー付与工程P3の後、樹脂組成物15を介して再帰反射層2と背面層6とを貼り合わせる工程である。シートロール102から巻き出されるシート12は、押圧ロール113を用いることによって、樹脂組成物15を介してシート16と重ねられる。上述のように、樹脂組成物15は、押圧ロール113に達した際、概ね硬化が始まる前の状態であり、接着可能な粘度とされる。したがって、本工程において、シート12が樹脂組成物15を介してシート16と重ねられた後、押圧ロール113によってシート12がシート16側に押圧されることによって、樹脂組成物15を介して再帰反射層2と背面層6とが貼り合わせられる。このとき、再帰反射層2に加えられる圧力は、再帰反射素子4の変形が抑制される圧力とされる。再帰反射素子4と背面層6とに挟まれる樹脂組成物15は、再帰反射素子4と背面層6との距離が近付くにつれて再帰反射素子4と背面層6とに押されて流動する。再帰反射層2に加えられる圧力が再帰反射素子4の変形が抑制される圧力とされる場合、再帰反射素子4と背面層6とが接するまで樹脂組成物15が押圧されると、樹脂組成物15に圧力が加えられなくなり、樹脂組成物15の流動が止まる。
上記のように再帰反射素子4と背面層6とに樹脂組成物15が挟まれることによって、再帰反射素子4の一部と背面層6の一部とが樹脂組成物15によって接着され、再帰反射素子4の他の一部と背面層6の他の一部との間に空隙9が形成される。
ところで、本実施形態では、押圧ロール113に達した際に硬化が始まる前の状態である樹脂組成物15を用いて、樹脂組成物の硬化が始まる前に本工程が行われる例を説明した。しかし、所定のエネルギーが付与されてから所定の時間にわたって接着可能な粘度とされ、所定の時間の経過後に硬化を完了する特性を有するのであれば、他の樹脂組成物を用いることも可能である。すなわち、所定のエネルギーが付与されてから押圧ロール113に達するまでに硬化が始まる樹脂組成物であっても、所定のエネルギー付与後押圧ロール113に達するまでの所定の時間にわたって接着可能な粘度とされるのであれば、押圧ロール113に達するまでに硬化が始まる樹脂組成物を用いてもよい。なお、押圧ロール113に達するまでに硬化が始まる樹脂組成物を用いる場合には、所定のエネルギーが付与された際の当該樹脂組成物の粘度を基準として当該樹脂組成物の粘度が30%以上大きくなる前に、本工程を行うことが好ましい。こうすることで、再帰反射層2と背面層6とを効果的に貼り合わせることができる。
ただし、本工程は、樹脂組成物15の硬化が始まる前に行われることがより好ましい。樹脂組成物15の硬化が始まる前に樹脂組成物15を介して再帰反射層2と背面層6とが重ねられることによって、樹脂組成物15が再帰反射層2と背面層6とにより接着し易くなり得る。
こうして、本工程では、所定の時間が経過する前に、エネルギーが付与された樹脂組成物を介して再帰反射層2と背面層6とが重ねられて貼り合わせられる。
なお、本工程において、所定のエネルギーが付与された後接着可能な状態が維持される上記所定の時間は、上述の概ね2分でなくてもよい。例えば、1分以内であってもよいし、2分よりも長い時間であってもよい。上記所定の時間が2分よりも長い場合、樹脂組成物15にエネルギーを付与してから再帰反射層2と背面層6とを貼り合わせるまでの時間を十分に確保し得る。また、上記所定の時間が1分以内の場合、当該時間は例えば10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましい。上述したような再帰反射シートの製造方法では、樹脂組成物15に所定のエネルギーを付与してから再帰反射層2と背面層6とを貼り合せるまでに、概ね10秒以上の時間を要する傾向にある。したがって、所定の時間を10秒以上とすることで、再帰反射層2と背面層6とを効果的に貼り合わせることができる。
(硬化促進工程P5)
本工程は、貼合工程P4の後に樹脂組成物15の硬化速度を速める工程である。本実施形態の硬化促進工程P5では、樹脂組成物15を介して重ねられたシート12及びシート16が加熱装置150の下を通過する際に加熱される。なお、加熱装置150は、樹脂組成物15を上から加熱するものに限定されず、樹脂組成物15を下から加熱するものであっても良く、樹脂組成物15を上下方向から加熱するものであっても良い。樹脂組成物15は加熱装置150によって加熱されて硬化が促進される。加熱装置150による樹脂組成物15の加熱温度は、再帰反射層2及び背面層6の変形が抑制され得る十分に低い温度であることが好ましく、例えば、60℃~80℃程度とされる。加熱装置150による樹脂組成物15の加熱温度が高い程、樹脂組成物15の硬化が促進され易くなる傾向にある。また、加熱装置150による樹脂組成物15の加熱時間は、例えば、3分~10分程度とされる。
なお、樹脂組成物15の硬化速度を調整する方法としては、硬化促進工程P5における加熱温度の調整及び加熱時間の調整の他、エネルギー付与工程P3において樹脂組成物15に照射する紫外線のエネルギー量を調整する方法も挙げられる。樹脂組成物15に照射される紫外線のエネルギーが高い程、樹脂組成物15の硬化速度が速くなる傾向にある。
加熱装置150に加熱されたシート12及びシート16は、ローラー114,115に架けられることよってテンションを加えられながら巻き取りロール160によって巻き取られる。樹脂組成物15はシート12及びシート16が巻き取りロール160によって巻き取られる前に硬化が完了して結合部5とされ、結合部5の変形が抑制される。よって、再帰反射層2と背面層6との相対的な位置ずれが抑制される。このようにして巻き取られたシート12及びシート16が適切な大きさに裁断されることによって、再帰反射シート10が得られる。
なお、上記再帰反射シート10の製造方法の説明では表面保護層1、粘着剤層7および剥離層8の積層方法について触れていないが、これらの層の積層方法は特に限定されない。例えば、表面保護層1は、準備工程P1において再帰反射層2に積層されてもよく、貼合工程P4後に再帰反射層2に積層されてもよい。また、粘着剤層7及び剥離層8は、準備工程P1において背面層6に積層されてもよく、貼合工程P4後に背面層6に積層されてもよい。
以上に説明した再帰反射シート10の製造方法は、塗工工程P2、エネルギー付与工程P3、貼合工程P4を備え、樹脂組成物15は、所定のエネルギーが付与されてから所定の時間にわたって接着可能な粘度とされ、上記所定の時間の経過後に硬化を完了する。そのため、樹脂組成物15を介して再帰反射層2と背面層6とを貼り合わせる前に樹脂組成物15に所定のエネルギーの紫外線を照射し、樹脂組成物15を介して再帰反射層2と背面層6とを貼り合わせた後に樹脂組成物15の硬化を完了させることができる。よって、再帰反射層2及び背面層6は、結合部5となる樹脂組成物15を硬化させるためエネルギー源となる紫外線を透過する必要がない。そのため、再帰反射層2及び背面層6の少なくとも一方を、紫外線を例えば50%以上透過しない材料、或いは紫外線を透過しない材料によって構成することができる。
以上のように、本実施形態の再帰反射シート10の製造方法は、再帰反射層2及び背面層6の構成材料の選択の幅を広げ得る。
また、上記の通り、本実施形態の再帰反射シート10の製造方法において、樹脂組成物15は紫外線硬化性樹脂であり、エネルギー付与工程P3において樹脂組成物15は紫外線を照射される。樹脂組成物15が紫外線硬化性樹脂であることによって、熱を加えなくても樹脂組成物15を硬化し得るため、再帰反射層2及び背面層6の熱による変形が抑制され得る。
また、本実施形態の再帰反射シート10の製造方法は、貼合工程P4の後に樹脂組成物15の硬化速度を速める硬化促進工程P5を含む。樹脂組成物15の硬化を促進させることによって、再帰反射シート10の製造にかかる時間を短縮し得る。
なお、本実施形態の再帰反射シート10の製造方法では、硬化促進工程P5において再帰反射層2及び背面層6に熱が加えられているが、上記の通り、硬化促進工程P5にける再帰反射層2及び背面層6の加熱温度は十分に低い温度とされる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る再帰反射シートを図1と同様の視点で示す図である。図5に示すように、本実施形態の再帰反射シート10は、背面層6のうち再帰反射層2と対向する側の面上に形成される印刷層20をさらに備える点において、このような印刷層を備えない第1実施形態の再帰反射シート10と異なる。
印刷層20は、通常、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、及びインクジェット印刷などの手段によって形成され、所定の模様や色彩を有している。図5に示すように、印刷層20は、再帰反射層2と背面層6との間に形成されており、印刷層20の少なくとも一部が、結合部5と背面層6との間に形成されている。
このような本実施形態の再帰反射シート10は、例えば、上記準備工程P1の後、上記塗工工程P2の前に、背面層6のうち再帰反射層2と対向する側の面上に印刷層20を形成する印刷層形成工程を行うことによって製造することができる。
以上のように、本実施形態の再帰反射シート10は、再帰反射層2と背面層6との間に形成される印刷層20をさらに備える。このように背面層6のうち再帰反射層2と対向する側の面上に印刷層20を形成する場合、光が再帰反射をしない非再帰反射条件下では、光が印刷層20まで達して当該印刷層20で反射するため、印刷層20が鮮明に映し出され得る。一方、光が再帰反射をする再帰反射条件下では、光が印刷層20に達する前に再帰反射層2で再帰反射するため、印刷層20が映し出されにくくなる。したがって、本実施形態の再帰反射シート10によれば、非再帰反射条件下と再帰反射条件下とで図柄の見え方を異ならせることができ、意匠性を向上させ得る。
ところで、結合部5と背面層6とが一体的に形成される場合、背面層6のうち結合部5との境界の形状が曲線状になる傾向にある。したがって、この場合に背面層6に印刷層を形成すると、上記境界及び当該境界近傍に形成された印刷層が歪む懸念がある。しかし、本実施形態の再帰反射シート10では、結合部5と背面層6とが別体として形成されており、この背面層6の面上に印刷層20が形成されるため、結合部5と背面層6とが一体的に形成される場合と異なり、印刷層20が概ね平らに形成される。このため、本実施形態の再帰反射シート10によれば、印刷層の歪みを効果的に抑制することができる。
また、背面層6に印刷層20が形成されている場合、この印刷層20によって紫外線が遮られて樹脂組成物15に十分に伝わらない場合がある。この場合、再帰反射層2と背面層6との接着が不十分になり得る。しかし、本実施形態の再帰反射シート10では、第1実施形態の再帰反射シート10と同様に、炭素数7~20の長鎖炭化水素骨格の単官能エポキシ化合物が5~70質量部の割合で含有される樹脂組成物によって、再帰反射層2と背面層6とが接着される。このような構成によれば、上述のように、再帰反射層2と背面層6とを重ね合わせる前に樹脂組成物15に紫外線を照射することができるため、再帰反射層2と背面層6とを重ね合わせ後に紫外線を照射する場合に比べて、多量の紫外線を樹脂組成物15に照射することができる。このため、紫外線の一部が印刷層20によって遮られた場合でも、樹脂組成物15に十分な紫外線を照射し得る。したがって、本実施形態の再帰反射シート10によれば、背面層6に形成された印刷層20によって意匠性を向上させ得るとともに、再帰反射層2と背面層6とが剥がれることが効果的に抑制され得る。
なお、本実施形態において、上記印刷層20に赤外線吸収性又は赤外線反射性を付与してもよい。また、上記印刷層20をホログラムや透かし模様としてもよい。
以上、本発明について好適な実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、表面保護層1を備える例を挙げて説明したが、表面保護層1は必須の構成要素ではない。粘着剤層7も必須の構成要素ではない。例えば、背面層6が粘着剤からなる場合、粘着剤層7が設けられなくとも再帰反射シート10を対象物に貼り付けることができるため、再帰反射シート10の層構成を簡単にすることができ、再帰反射シート10の生産コストの上昇を抑制することができる。
また、本発明の再帰反射シートには、上記実施形態で例示された層以外の層が備えられてもよい。例えば、表面保護層1と再帰反射層2との間に着色層や印刷層が設けられてもよい。
また、背面層6が赤外線吸収性を有してもよい。このような構成により、赤外線カメラ等による再帰反射シート10の認識のされ方を、赤外線吸収性を有しない再帰反射シートの認識のされ方と異ならせ得、偽造し難い再帰反射シートを実現し得る。
また、背面層6が赤外線反射性を有してもよい。このような構成により、赤外線カメラ等による再帰反射シート10の認識のされ方を、赤外線反射性を有しない再帰反射シートの認識のされ方と異ならせ得、偽造し難い再帰反射シートを実現し得る。
また、再帰反射層2が赤外線吸収性を有してもよい。この場合、赤外線が再帰反射シート10で再帰反射することを抑制することができる。再帰反射シートをナンバープレート用途で用いる場合、自動ナンバープレート認識システム(ALPR)等で画像化すると、ハレーションにより視認性が低くなり得、ナンバープレートの文字を読み取れなくなることがある。再帰反射層2に赤外線吸収性を付与することで、赤外線でシートを見た場合に再帰反射シートの色彩が暗く見え、ハレーションが抑制され得る。その結果、ALPRシステム等による読み取り性、検出性を向上させ得る。
また、再帰反射層2が赤外線反射性を有してもよい。この場合、再帰反射シート10における赤外線の再帰反射性を向上させ得る。再帰反射層に赤外線反射性を付与することで、再帰反射シートを例えば対象物検出システム等に用いる場合において、赤外線カメラ等による検出性を大幅に向上させ得る。また、赤外線視認装置等によってのみ検知される人の目に視認され難い標識を実現し得る。
また、上記実施形態において、結合部5を着色し、この着色された結合部5によって再帰反射シートに模様を形成してもよい。この場合、例えば、日中と夜間とで異なる色や模様として視認される再帰反射シートを構成し得る。
また、上記第1実施形態において、表面保護層1、再帰反射層2、結合部5、背面層6、及び粘着剤層7の全てを透明に形成してもよい。この場合、例えば窓などに取り付けた際に再帰反射条件下と非再帰反射条件下との間で視認性の異なる再帰反射シートを構成することができ、室内に対する目隠しとして機能させることができる。
また、上記第2実施形態において、結合部5と印刷層20との接合強度が背面層6と印刷層20との接合強度よりも大きくなるように印刷層20を形成してもよい。この場合、結合部5と印刷層20との接合強度が背面層6と印刷層20との接合強度よりも大きいため、背面層6から結合部5を剥がそうとした場合に、背面層6と印刷層20との間で剥離や凝集破壊が生じ得る。このため、印刷層20の複製や変更が防止され、改ざん防止機能を高めることができる。
また、上記実施形態では、樹脂組成物15がスクリーン印刷によって塗工される例を挙げて説明したが、樹脂組成物15の塗工方法は特に限定されない。ただし、樹脂組成物15をスクリーン印刷で塗工することによって、樹脂組成物15を厚く塗工することが容易になり得る。
また、上記実施形態では、塗工工程P2において樹脂組成物15が背面層6に塗工される例を挙げて説明したが、樹脂組成物15は再帰反射層2に塗工されてもよい。
また、上記実施形態では、硬化促進工程P5を備える例を挙げて説明したが、硬化促進工程P5は必須の工程ではない。