図面を参照して、光学デバイスの一実施形態を説明する。光学デバイスは、入射光から取り出した光を検出する光検出装置に用いられる。入射光の波長域は特に限定されないが、例えば、入射光は可視領域の光である。以下において、可視領域の光の波長は、400nm以上800nm以下とする。
[光学デバイスの構成]
図1が示すように、光学デバイス100は、フィルタ層110と、受光層120とを備えている。フィルタ層110は、互いに異なる波長域の光を透過する複数のフィルタ領域111を備えている。フィルタ領域111は、導波モード共鳴現象を生じさせる構造を有している。フィルタ領域111は、導波モード共鳴現象によって、入射光のうちの特定の波長域の光を選択的に反射し、当該反射光の波長域を除く波長域の光を透過する。
図1は、一例として、光学デバイス100が、カラーの画像データを出力するイメージセンサである光検出装置に用いられる場合のフィルタ層110の構成を示している。図1においては、フィルタ層110は、赤色光を反射する赤反射フィルタ領域111Rと、緑色光を反射する緑反射フィルタ領域111Gと、青色光を反射する青反射フィルタ領域111Bとを有している。本実施形態においては、赤色光は、600nm以上700nm以下の波長域に強度ピークを有する光であり、緑色光は、520nm以上580nm以下の波長域に強度ピークを有する光であり、青色光は、400nm以上500nm以下の波長域に強度ピークを有する光である。
図1においては、各フィルタ領域111R,111G,111Bを1つずつ示しているが、赤反射フィルタ領域111Rと、緑反射フィルタ領域111Gと、青反射フィルタ領域111Bとは、所定の並びで繰り返し配列されている。なお、互いに隣接するフィルタ領域111は接していてもよいし、互いに隣接するフィルタ領域111の間にこれらを区画する領域が設けられていてもよい。
受光層120は、複数の受光素子121を備えている。受光素子121は、光電変換素子であり、受光素子121に入射した光の強度に応じた電気的な出力を発する。受光素子121は、例えば、フォトダイオードに具体化される。複数の受光素子121は、互いに同一の構造を有し、すなわち、互いに同一の感度および特性を有する。受光素子121は、検出対象とする入射光の波長域に感度を有していればよい。複数の受光素子121は、各フィルタ領域111R,111G,111Bに対して1つずつ、すなわち、1つのフィルタ領域111の下方に1つの受光素子121が配置されるように配列されている。
光検出装置は、フィルタ層110および受光層120に加えて、例えば、受光素子121の電荷の転送あるいは増幅のための素子や、信号処理回路、配線部等を備えている。こうした素子等は、受光素子121と同一の基板に形成されていてもよいし、受光素子121とは異なる基板に形成されて受光層120に積層されていてもよい。また、フィルタ層110と受光層120との間には、配線部や、平坦化、遮蔽、絶縁等のため膜等が配置されていてもよい。
図2が示すように、光学デバイス100に対する入射光Ioは、フィルタ層110に向けて入射する。赤反射フィルタ領域111Rでは、赤色の波長域の光Irが反射され、入射光Ioのなかで赤色の波長域を除く波長域の光I1が赤反射フィルタ領域111Rを透過して、赤反射フィルタ領域111Rの下方の受光素子121に入る。緑反射フィルタ領域111Gでは、緑色の波長域の光Igが反射され、入射光Ioのなかで緑色の波長域を除く波長域の光I2が緑反射フィルタ領域111Gを透過して、緑反射フィルタ領域111Gの下方の受光素子121に入る。青反射フィルタ領域111Bでは、青色の波長域の光Ibが反射され、入射光Ioのなかで青色の波長域を除く波長域の光I3が青反射フィルタ領域111Bを透過して、青反射フィルタ領域111Bの下方の受光素子121に入る。
赤反射フィルタ領域111Rの下方の受光素子121の出力と、緑反射フィルタ領域111Gの下方の受光素子121の出力と、青反射フィルタ領域111Bの下方の受光素子121の出力とを総合することによって、入射光Ioの波長域および強度が算出される。例えば、入射光Ioが青色光である場合、赤反射フィルタ領域111Rの下方の受光素子121の出力と、緑反射フィルタ領域111Gの下方の受光素子121の出力とは同程度であり、青反射フィルタ領域111Bの下方の受光素子121の出力が最も低くなる。このように、入射光Ioは、相対的に出力が低い受光素子121に対応するフィルタ領域111で反射される波長域の光を相対的に多く含むため、各受光素子121の出力の比較によって、入射光Ioの波長域の算出が可能である。これにより、赤反射フィルタ領域111Rと緑反射フィルタ領域111Gと青反射フィルタ領域111Bとに対向する1つの単位領域からの入射光の波長域の検出が可能であり、これに基づき、例えば、単位領域の色が規定できる。光検出装置は、各受光素子121からの出力に基づく演算を行って入射光の波長域を算出する演算部を備えている。
図3が示すように、光学デバイス100は、マイクロレンズアレイ130を備えていてもよい。マイクロレンズアレイ130は、フィルタ層110の上方に位置する。マイクロレンズアレイ130は、複数のマイクロレンズ131を備えている。複数のマイクロレンズ131は、各フィルタ領域111R,111G,111Bに対して1つずつ、すなわち、1つのフィルタ領域111の上方に1つのマイクロレンズ131が位置するように配置されている。マイクロレンズ131は、入射光をフィルタ領域111および受光素子121に向けて集光させる。マイクロレンズ131が設けられていることにより、より多くの光が受光素子121に入るため、光の検出の感度が高められる。
光検出装置は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等のイメージセンサであってもよいし、こうしたイメージセンサに限らず、入射光の分光スペクトルを得るための装置であってもよい。要は、光検出装置は、入射光を分解して検出することにより、入射光の波長域および強度を算出する装置であればよく、その算出結果の利用態様は限定されない。フィルタ領域111が反射する波長域は、光検出装置の用途や検出対象とする入射光の波長域に応じて設定されていればよく、単位領域に対応するフィルタ領域111の数も限定されない。フィルタ層110は、反射特性の異なる2以上のフィルタ領域111、すなわち、互いに異なる波長域の光を反射する複数のフィルタ領域111を備えていればよい。
[フィルタ領域の構成]
以下、フィルタ領域111の詳細な構成を説明する。
<第1形態>
(フィルタ領域の構造)
図4(a)が示すように、フィルタ領域111は、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16を備えている。これらの各領域は、層状に広がっており、基材11に近い位置から、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16がこの順に並んでいる。各領域の並ぶ方向が第1方向であり、第1方向は、すなわち、フィルタ領域111の厚さ方向である。また、基材11に対して第2低屈折率領域16の位置する側がフィルタ領域111の表面側、すなわち、光の入射側であり、第2低屈折率領域16に対して基材11の位置する側が、フィルタ領域111の裏面側である。図4(b)は、第1格子領域13における第1方向と直交する断面を示し、図4(c)は、中間領域14における第1方向と直交する断面を示し、図4(d)は、第2格子領域15における第1方向と直交する断面を示す。
基材11は板状を有し、基材11が有する面のうち、フィルタ領域111の表面側に位置する面が基材11の表面である。基材11は、検出対象とする入射光の波長域に対して吸収の無い材料から構成される。検出対象の入射光が可視領域の光である場合には、基材11としては、例えば、合成石英基板や、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂からなる透明なフィルムが用いられる。
第1低屈折率領域12は、基材11の表面に接し、基材11の表面に沿って一様に広がっている。第1格子領域13は、第1格子高屈折率部13aと第1格子低屈折率部13bとを有する。基材11の表面と対向する位置から見て、すなわち、第1方向に沿った方向から見て、第1格子高屈折率部13aと第1格子低屈折率部13bとは、共通の方向である第2方向に沿って帯状に延び、第2方向と直交する第3方向に沿って交互に並んでいる。第2方向と第3方向との各々は、第1方向に直交する。
中間領域14は、中間高屈折率部14aと第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとを有する。これらの各部は、第1方向に沿った方向から見て、第2方向に沿って延び、第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとは、その間に中間高屈折率部14aを挟みつつ、第3方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、第3方向に沿って、第1中間低屈折率部14b、中間高屈折率部14a、第2中間低屈折率部14c、中間高屈折率部14aが、この順に繰り返し並んでいる。第1中間低屈折率部14bは、第1格子低屈折率部13b上に位置する。中間高屈折率部14aは、第1格子高屈折率部13aの幅方向における端部上に位置し、第2中間低屈折率部14cは、第1格子高屈折率部13aの幅方向における中央部上に位置する。
第2格子領域15は、第2格子高屈折率部15aと第2格子低屈折率部15bとを有する。第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aと第2格子低屈折率部15bとは、第2方向に沿って帯状に延び、第3方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、2つの格子領域13,15において、高屈折率部および低屈折率部の配列方向は一致している。第2格子高屈折率部15aは、第1中間低屈折率部14b上および中間高屈折率部14a上に位置し、第2格子低屈折率部15bは、第2中間低屈折率部14c上に位置する。
第2低屈折率領域16は、第2格子領域15に対して中間領域14とは反対側で第2格子領域15に沿って一様に広がっている。
フィルタ領域111を構成する上記の各領域において、第1方向に沿って互いに隣接する領域は、その一部において互いに連続している。具体的には、第1低屈折率領域12と第1格子低屈折率部13bとは互いに連続し、さらに、第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。また、第1格子高屈折率部13aと中間高屈折率部14aとは互いに連続し、さらに、中間高屈折率部14aと第2格子高屈折率部15aとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。また、第2中間低屈折率部14cと第2格子低屈折率部15bとは互いに連続し、さらに、第2格子低屈折率部15bと第2低屈折率領域16とは互いに連続し、これらは互いに同一の材料から構成される。
すなわち、フィルタ領域111は、基材11と、基材11上に位置し、複数の凸部21aが構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層21と、凹凸構造層21の表面に沿って配置された高屈折率層22と、高屈折率層22の表面の凹凸を埋める埋込層23とを備える構造体であるとも捉えられる。複数の凸部21aは、第2方向に沿って延び、第3方向に沿って並ぶ。高屈折率層22は、凹凸構造層21の凹凸に追従した表面形状を有する。埋込層23の表面は平坦である。
凹凸構造層21は、第1低屈折率領域12と第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとから構成され、凸部21aは、第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとから構成される。
高屈折率層22は、第1格子高屈折率部13aと中間高屈折率部14aと第2格子高屈折率部15aとから構成される。第1格子高屈折率部13aは、複数の凸部21aの間、すなわち、凹凸構造層21が有する凹凸構造の底部に位置する。中間高屈折率部14aは、凸部21aの側面に接し、第1方向に沿った方向から見て互いに隣り合う第1格子高屈折率部13aと第2格子高屈折率部15aとの端部間を繋ぐように、中間領域14の厚さ方向に延びている。第2格子高屈折率部15aは、凸部21aの頂面を覆い、すなわち、凹凸構造層21が有する凹凸構造の頂部に位置する。
埋込層23は、第2中間低屈折率部14cと第2格子低屈折率部15bと第2低屈折率領域16とから構成される。埋込層23は、第2低屈折率領域16から基材11に向けて第2中間低屈折率部14cおよび第2格子低屈折率部15bが突出した形状を有する。
高屈折率層22の材料の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、かつ、凹凸構造層21および埋込層23の各々の材料の屈折率よりも大きい。すなわち、第1格子高屈折率部13a、中間高屈折率部14a、第2格子高屈折率部15aの各々の屈折率は、第1低屈折率領域12、第1格子低屈折率部13b、第1中間低屈折率部14b、第2中間低屈折率部14c、第2格子低屈折率部15b、第2低屈折率領域16の各々の屈折率よりも大きい。
凹凸構造層21を構成する材料、および、埋込層23を構成する材料の屈折率は、空気の屈折率よりも大きい。凹凸構造層21と埋込層23とは、例えば、同一の材料から構成される。
凹凸構造層21、高屈折率層22、および、埋込層23の各々は、検出対象とする入射光の波長域に対して吸収の無い材料から構成される。例えば、検出対象の入射光が可視領域の光である場合には、凹凸構造層21および埋込層23を構成する低屈折率材料としては、合成石英等の無機物や、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂材料を用いることが好ましい。この場合、高屈折率層22を構成する高屈折率材料としては、TiO2(酸化チタン)、Nb2O5(酸化ニオブ)、Ta2O5(酸化タンタル)、ZrO(酸化ジルコニウム)、ZnS(硫化亜鉛)、ITO(酸化インジウムスズ)、AlN(窒化アルミニウム)等の無機化合物材料を用いることができる。
(フィルタ領域の作用)
第1格子領域13における格子構造の周期、すなわち、第1格子高屈折率部13aの配列の周期が、第1周期P1であり、第1周期P1は、検出対象の入射光の波長よりも小さい。同様に、第2格子領域15における格子構造の周期、すなわち、第2格子高屈折率部15aの配列の周期が、第2周期P2であり、第2周期P2は、検出対象の入射光の波長よりも小さい。すなわち、第1周期P1および第2周期P2はサブ波長周期であり、第1格子領域13および第2格子領域15の各々は、高屈折率材料からなるサブ波長周期の格子構造であるサブ波長格子を含む。
フィルタ領域111において、領域ごとの平均屈折率は、各領域における高屈折率部と低屈折率部との体積比率に応じて、高屈折率部の屈折率と低屈折率部の屈折率とを均した値に近似される。第1格子領域13における第1格子高屈折率部13aの割合、および、第2格子領域15における第2格子高屈折率部15aの割合の各々よりも、中間領域14における中間高屈折率部14aの割合は小さい。したがって、中間領域14の平均屈折率は、第1格子領域13の平均屈折率、および、第2格子領域15の平均屈折率の各々よりも小さい。すなわち、フィルタ領域111は、第1格子領域13および第2格子領域15の各々に位置するサブ波長格子が、低屈折率の領域に埋め込まれた構造を有している。
上記フィルタ領域111の表面側からフィルタ領域111に光が入射すると、第2格子領域15のサブ波長格子が低屈折率の領域に囲まれていることから、第2格子領域15では、表面側への回折光の射出が抑えられ、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第2格子領域15を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、フィルタ領域111の表面側に反射光として射出される。
第2格子領域15を透過し、さらに中間領域14を透過した光は、第1格子領域13に入る。第1格子領域13に光が入射すると、第1格子領域13のサブ波長格子が低屈折率の領域に囲まれていることから、第1格子領域13でも、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第1格子領域13を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、フィルタ領域111の表面側に反射光として射出される。
第1格子領域13を透過した光は、第1低屈折率領域12および基材11を透過して、フィルタ領域111の裏面側に出る。
結果として、フィルタ領域111の表面側には、第2格子領域15で強められた波長域の光と、第1格子領域13で強められた波長域の光とが反射光として射出される。そして、入射光に含まれる波長域のなかで、上記反射光として射出された波長域を除く波長域の光が、透過光としてフィルタ領域111の裏面側に射出される。
色素を利用したフィルタが、分子間の相互作用によって幅広い吸収帯を有することに対し、導波モード共鳴現象を利用したフィルタは、材料の屈折率や格子構造の周期等によって定まる狭帯域の波長選択性を有する。したがって、導波モード共鳴現象を利用したフィルタの波長選択性は、色素を利用したフィルタよりも高い。すなわち、透過光に選択対象以外の波長域の光が混ざることが抑えられる。例えば、色素を利用して赤色を透過するフィルタの透過光には、赤色以外の色の波長域の光が少なからず混ざってしまう。これに対し、導波モード共鳴現象を利用したフィルタであれば、赤色光を反射するフィルタ領域111Rの透過光に、赤色の波長域の光が混ざることが好適に抑えられている。
したがって、導波モード共鳴現象を利用したフィルタ領域111を用いることによって、光学デバイス100における光の選別の精度を高めることが可能であり、その結果、光検出装置による波長検出の精密さが高められる。
また、構造色を利用した他のフィルタとして、プラズモン共鳴を利用したフィルタが挙げられるが、導波モード共鳴現象を利用したフィルタは、プラズモン共鳴を利用したフィルタよりも透過率が高いため、光学デバイス100の感度が高められる。
また、導波モード共鳴現象には、フィルタ領域111に対して直交する方向からの光が作用する。そのため、隣接するフィルタ領域111に対向する位置からの斜めの光の作用が抑えられる結果、光検出装置による波長検出の精確さが高められる。
フィルタ領域111の反射光および透過光の波長域は、サブ波長格子の周期、格子領域13,15の厚さT1,T2、凹凸構造層21、高屈折率層22、および、埋込層23の各層の材料によって調整可能である。このうち、サブ波長格子の周期のみを変えることによって、複数のフィルタ領域111における反射光および透過光の波長域を変える形態であれば、凸部21aの形成時にその周期を変えることによって、複数のフィルタ領域111を同一の製造工程で一括して形成することができる。
なお、基材11の位置する側からフィルタ領域111に光が入射した場合も、第1格子領域13および第2格子領域15にて共鳴を起こした波長域の光が、反射光として射出され、入射光に含まれる波長域のなかで上記反射光として射出された波長域を除く波長域の光が、透過光として射出される。したがって、フィルタ領域111は、第2低屈折率領域16に対して基材11の位置する側を光の入射側として、すなわち、第2低屈折率領域16を受光素子121に向けて、配置されてもよい。
(フィルタ領域の詳細構成)
上述のフィルタ領域111において、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とは、所望の反射光および透過光の波長域に応じて設定されればよい。波長選択性をより高めるためには、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とが近いほど好ましい。
例えば、第2格子領域15で特定の波長域の光が共鳴を起こしたとき、第2格子領域15と中間領域14との屈折率の差が小さい場合等には、上記特定の波長域の光の一部が、第2格子領域15内での反射ごとに、中間領域14に漏れ出る。こうした場合にも、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域が一致していれば、中間領域14に漏れ出た上記特定の波長域の光が第1格子領域13に入って共鳴を起こし、反射光として射出される。したがって、透過光に、上記特定の波長域の光が混ざることがより的確に抑えられる。
第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域を一致させるためには、第1格子領域13と第2格子領域15とにおいて、平均屈折率と膜厚とを乗じた値として表されるパラメータである光学膜厚を一致させればよい。つまり、第1格子領域13と第2格子領域15とにおいて、光学膜厚が近いほど、共鳴を起こす光の波長域が近くなり、波長選択性が高められる。本願の発明者は、シミュレーションによって、反射光についての良好な波長選択性を得られる第1格子領域13と第2格子領域15との光学膜厚の比の範囲を見出した。以下、この内容について詳細に説明する。
第1格子領域13の全体に対する第1格子高屈折率部13aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第1格子領域13の全体に対する第1格子高屈折率部13aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第1格子高屈折率部13aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第1格子高屈折率部13aが占める面積比率である。断面の位置によって第1格子高屈折率部13aの面積が変化する場合には、第1格子高屈折率部13aの面積が最大となる断面での第1格子高屈折率部13aの面積比率が採用される。
第1格子高屈折率部13aの上記面積比率をR1とするとき、上記断面における第1格子低屈折率部13bの面積比率は1-R1で表される。
高屈折率層22の材料の屈折率をn1、凹凸構造層21の材料の屈折率をn2とするとき(n1>n2)、第1格子領域13の平均屈折率NA1は、下記式(1)によって表される。
NA1=n1×R1+n2×(1-R1) ・・・(1)
そして、第1格子領域13の光学膜厚OT1は、第1格子領域13の平均屈折率NA1および厚さT1を用いて、下記式(2)によって表される。
OT1=T1×NA1
=T1×{n1×R1+n2×(1-R1)} ・・・(2)
第2格子領域15において、格子構造の周期である第2周期P2は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
ただし、第1方向に沿った方向から見て、第2格子領域15における第2格子高屈折率部15aの幅は、第1格子領域13における第1格子低屈折率部13bの幅よりも大きい。そして、第2格子低屈折率部15bの幅は、第1格子高屈折率部13aの幅よりも小さい。
第2格子領域15の全体に対する第2格子高屈折率部15aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第2格子領域15の全体に対する第2格子高屈折率部15aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第2格子高屈折率部15aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第2格子高屈折率部15aが占める面積比率である。断面の位置によって第2格子高屈折率部15aの面積が変化する場合には、第2格子高屈折率部15aの面積が最大となる断面での第2格子高屈折率部15aの面積比率が採用される。
第2格子高屈折率部15aの上記面積比率をR2とするとき、上記断面における第2格子低屈折率部15bの面積比率は1-R2で表される。
高屈折率層22の材料の屈折率をn1、埋込層23の材料の屈折率をn3とするとき(n1>n3)、第2格子領域15の平均屈折率NA2は、下記式(3)によって表される。
NA2=n1×R2+n3×(1-R2) ・・・(3)
そして、第2格子領域15の光学膜厚OT2は、第2格子領域15の平均屈折率NA2および厚さT2を用いて、下記式(4)によって表される。
OT2=T2×NA2
=T2×{n1×R2+n3×(1-R2)} ・・・(4)
第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比(OT2/OT1)が1に近いほど、第1格子領域13と第2格子領域15とのそれぞれにおいて共鳴を起こす光の波長域が近くなる。一方で、上記比が1から離れるにつれ、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域が異なるようになる。第1格子領域13と第2格子領域15とで意図的に共鳴する光の波長域を変える場合は、上記比は例えば2.0より大きい、あるいは0.5より小さくてもよい。しかしながら、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴する光の波長域が異なっていると、第1格子領域13および第2格子領域15の一方において所望の波長域の光を共鳴させた場合に、他方において共鳴する波長域の光の影響により、フィルタ領域111の波長選択性が低下することが懸念される。
したがって、高い波長選択性を得るためには、OT2/OT1の値は0.5以上2.0以下であることが好ましく、より高い波長選択性を得るためには、OT2/OT1の値は0.625以上1.6以下であることが好ましい。
上記のOT2/OT1の値の好ましい範囲は、本願の発明者がシミュレーションにより検討した結果、得られた範囲である。このシミュレーション結果について、図5を参照して説明する。
図5(a)~(d)は、厳密結合波解析(Rigorous Coupled-Wave Analysis:RCWA)を用いて計算した、反射シミュレーションスペクトルを示す。なお、以下に記載する各パラメータの値は、小数第4位を四捨五入している。
シミュレーションにおいて、光の入射方向は、第2低屈折率領域16の位置する側からフィルタ領域111に入る方向であり、入射角度は0°である。また、サブ波長格子の格子次数は1次、P1=P2=300nm、R1=0.537、R2=0.6である。T2=70nmであり、凹凸構造層21の凸部21aの側面に成膜される高屈折率材料の膜厚、すなわち、中間高屈折率部14aの第3方向に沿った幅は、14nmとした。
図5(a)は、T1=T2(OT2/OT1=0.895)の場合、図5(b)は、T1=0.8×T2(OT2/OT1=1.119)の場合、図5(c)は、T1=0.6×T2(OT2/OT1=1.491)の場合、図5(d)は、T1=0.4×T2(OT2/OT1=2.237)の場合のスペクトルである。
なお、計算に用いた各層の波長420nmにおける屈折率は、基材11が1.683、凹凸構造層21および埋込層23が1.504、高屈折率層22が2.620である。消衰係数は各層のすべての材料で0であるため、100-反射率=透過率となる。
図5(a)~(d)から、OT2/OT1の値が1から離れるにつれ、反射ピークが分裂することが確認され、ピーク反射率も減少する傾向を有することが判明した。これにより、OT2/OT1の値が1から離れることによって、波長選択性が低下する傾向があることが確認された。
図5(a)~(c)のスペクトルでは、いずれもピーク反射率は90%以上を示したが、OT2/OT1=2.237である図5(d)のスペクトルでは、ピーク反射率は60%より小さい。すなわち、OT2/OT1が2を超えると、波長選択性が顕著に低下することが確認された。
OT2/OT1の値が1.0、すなわち、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致すると、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とが一致し、波長選択性が特に高められる。例えば、第1格子領域13の厚さT1と第2格子領域15の厚さT2とが等しく、凹凸構造層21の材料の屈折率n2と埋込層23の材料の屈折率n3とが等しい場合には、第1格子高屈折率部13aの面積比率R1と第2格子高屈折率部15aの面積比率R2とが等しいと、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致するため好ましい。
上述のように、第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aは第1格子低屈折率部13bよりも大きくなる。そのため、第1格子高屈折率部13aの面積比率R1と第2格子高屈折率部15aの面積比率R2とを近づけるためには、第1格子領域13にて第1格子低屈折率部13bの面積比率が第1格子高屈折率部13aの面積比率よりも小さくなり、第2格子領域15にて第2格子高屈折率部15aの面積比率が第2格子低屈折率部15bの面積比率よりも大きくなるように、凸部21aの幅を設定することが好ましい。この場合、第1格子高屈折率部13aの面積比率R1と第2格子高屈折率部15aの面積比率R2との各々は、0.5よりも大きく、R1+R2は1よりも大きくなる。
面積比率R1,R2が0.5よりも大きいことにより、面積比率R1,R2が0.5以下である形態と比較して、格子領域13,15の平均屈折率が高くなるため、各格子領域13,15と、隣接する領域12,14,16との平均屈折率の差が大きくなる、その結果、各格子領域13,15にて生じる多重反射での損失が小さくなり、波長選択性が高められる。
中間領域14における第1中間低屈折率部14bの配列の周期である第3周期P3は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。第1方向に沿った方向から見て、第1中間低屈折率部14bの幅は、第1格子低屈折率部13bの幅と一致する。
第1方向に沿った方向から見た平面視での中間領域14の全体に対する中間高屈折率部14aの面積比率は、第2格子高屈折率部15aの上記面積比率と第1格子低屈折率部13bの上記面積比率との差以下であることが好ましい。すなわち、上記中間高屈折率部14aの面積比率をR3とするとき、R3は、下記式(5)を満たすことが好ましい。なお、当該面積比率は、言い換えれば、中間高屈折率部14aを含みその厚さ方向と直交する断面にて中間高屈折率部14aが占める面積比率である。断面の位置によって中間高屈折率部14aの面積が変化する場合には、中間高屈折率部14aの面積が最大となる断面での中間高屈折率部14aの面積比率が採用される。
R3≦R2-(1-R1)=R1+R2-1 ・・・(5)
第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aが位置する領域が、第1中間低屈折率部14bおよび中間高屈折率部14aが位置する領域と一致するとき、中間高屈折率部14aの上記面積比率R3は、右辺と一致し、R1+R2-1となる。そして、第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aが位置する領域が、第1中間低屈折率部14bおよび中間高屈折率部14aが位置する領域よりも大きいとき、言い換えれば、中間高屈折率部14aが第2格子高屈折率部15aの外縁よりも内側の領域に位置するとき、上記面積比率R3は、R1+R2-1よりも小さくなる。
上述のように、導波モード共鳴現象による波長選択性の向上ためには、各格子領域13,15について、格子領域13,15の平均屈折率と、格子領域13,15を挟む領域12,14,16の平均屈折率との差が大きいことが望ましい。したがって、中間領域14の平均屈折率は小さいほど好ましく、すなわち、中間高屈折率部14aの面積比率が小さいほど好ましい。上記式(5)が満たされている構成であれば、中間高屈折率部14aの幅が、第2格子高屈折率部15aよりも外側まで広がらない程度に抑えられるため、中間高屈折率部14aの面積比率が大きくなりすぎない。したがって、波長選択性が高められる。
導波モード共鳴現象による波長選択性の向上ためには、第1格子領域13の平均屈折率と、第1低屈折率領域12および中間領域14の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。同様に、第2格子領域15の平均屈折率と、中間領域14および第2低屈折率領域16の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。
(フィルタ領域の製造方法)
図6~図8を参照して、フィルタ領域111の製造方法について説明する。
図6が示すように、まず、基材11の表面に、低屈折率材料からなる層を形成し、この層の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。凹凸構造層21は、基材11に沿って広がる平坦部21cと、平坦部21cから突き出た複数の凸部21aとを有するとともに、凸部21a間に位置する部分である複数の凹部21bを有する。凸部21aおよび凹部21bは、第2方向に沿って帯状に延びる。
凹凸構造の形成には、ナノインプリント法やドライエッチング法等の公知の微細加工技術が用いられる。なかでも、ナノインプリント法は、微細な凸部21aおよび凹部21bを簡便に形成できるため好ましい。
例えば、低屈折率材料として紫外線硬化性樹脂を用い、光ナノインプリント法によって凹凸構造層21を形成する場合、まず、基材11の表面に、紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、形成対象の凸部21aおよび凹部21bからなる凹凸の反転された凹凸を有する凹版である合成石英モールドを押し当て、塗工層および凹版に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から凹版を離型する。これによって、凹版の有する凹凸が紫外線硬化性樹脂に転写されて凸部21aおよび凹部21bが形成されるとともに、凸部21aおよび凹部21bと基材11との間には、紫外線硬化性樹脂からなる残膜として、平坦部21cが形成される。
次に、図7が示すように、凹凸構造層21の表面に、高屈折率材料からなる高屈折率層22を形成する。高屈折率層22の形成方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法等の公知の成膜技術が用いられる。高屈折率層22の厚さは、凸部21aの高さよりも小さく、所望の厚さT1および厚さT2に応じて設定される。
真空蒸着法やスパッタリング法を含む物理気相成長法を用いて高屈折率層22を形成する場合、凹凸構造層21の凸部21a上には、凸部21aよりも広がるように膜が形成される。すなわち、第2格子高屈折率部15aの幅が、凸部21aである第1格子低屈折率部13bおよび第1中間低屈折率部14bの幅よりも大きく形成される。したがって、物理気相成長法が採用される場合に、凹凸構造層21の表面における凸部21aと凹部21bとの面積比率を1対1に設定したとしても、第1格子高屈折率部13aと第2格子高屈折率部15aとの面積比率にはずれが生じてしまう。
また、成膜中に第2格子高屈折率部15aの幅が拡大していくと、凹部21b上に蒸着材料の粒子が付着し難くなるため、第1格子高屈折率部13aの厚さT1と第2格子高屈折率部15aの厚さT2とにずれが生じる場合がある。
フィルタ領域111の波長選択性を高めるためには、こうした第2格子高屈折率部15aの幅の拡大に起因した面積比率や厚さのずれを補填しつつ、上記光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下となるように、凸部21aの幅、すなわち、凸部21aと凹部21bとの面積比率を設定することが望ましい。
また、物理気相成長法を用いて高屈折率層22を形成する場合、凹凸構造層21の凸部21aの側面にも高屈折率材料が付着する場合が多く、中間高屈折率部14aの形成は避け難い。そこで、上述のように、上記式(5)が満たされるように、中間高屈折率部14aの幅を制御することで、中間高屈折率部14aが形成される製造方法を採用しながらも、各格子領域13,15からの反射光の強度を良好に得ることができる。
中間高屈折率部14aの幅は、成膜方法や成膜の条件によって制御することが可能である。例えば、真空蒸着法とスパッタリング法とでは、粒子の飛来方向についての角度依存性が異なるため、いずれの方法を用いるかによって、中間高屈折率部14aの幅を変えることができる。また、高屈折率層22の形成後にエッチングを行うことによって、中間高屈折率部14aの幅を縮小させてもよい。
次に、図8が示すように、凹凸構造層21と高屈折率層22とからなる構造体の表面を覆うように、低屈折率材料からなる埋込層23を形成して、高屈折率層22の表面の凹凸を第2格子高屈折率部15a上まで埋める。
埋込層23の形成方法としては、各種の塗布法等の公知の成膜技術が用いられる。例えば、低屈折率材料として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、まず、高屈折率層22の表面に紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、紫外線を透過する材料で構成された平板を押し当て、塗工層に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から平板を離型する。
本実施形態のフィルタ領域111の構造であれば、格子領域に接する層を導波層として用いる構造と比較して、格子領域に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、波長選択性の高められたフィルタ領域111を製造することができる。具体的には、ナノインプリント法を用いてフィルタ領域111を形成する場合には、残膜の膜厚の精密な制御を要さずに、波長選択性の高められたフィルタ領域111を製造することができる。したがって、フィルタ領域111の製造が容易である。
また、フィルタ領域111は、光ナノインプリント法と真空蒸着法等とを組み合わせた製造方法によって形成可能であるため、ロール・トゥ・ロール法による製造に適している。したがって、フィルタ領域111の構成は、大量生産にも適している。
なお、上述の製造方法において、紫外線硬化性樹脂に代えて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いて、ナノインプリント法により凹凸構造層21を形成してもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を加熱に変更すればよく、熱可塑性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を、加熱および冷却に変更すればよい。
ただし、熱可塑性樹脂を用いて凹凸構造層21を形成した場合、埋込層23の形成に際して、凹凸構造層21が加熱されて変形することを抑えるために、熱可塑性樹脂とは異なる材料を用いて埋込層23を形成することが好ましい。例えば、凹凸構造層21を熱可塑性樹脂から形成し、埋込層23を紫外線硬化性樹脂から形成してもよい。
フィルタ層110の互いに隣り合うフィルタ領域111において、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16の各々は連続している。すなわち、互いに隣り合うフィルタ領域111は、共通した1つの基材11と、これらの領域間で相互に連続した凹凸構造層21と、これらの領域間で相互に連続した高屈折率層22と、これらの領域間で相互に連続した埋込層23とを有している。
互いに異なる波長域の光を反射するフィルタ領域111における凹凸構造層21は、例えば、ナノインプリント法を利用して、各フィルタ領域111に対応する部分で凹凸の周期を変えた合成石英モールドを用いることによって、同時に形成することができる。また、高屈折率層22および埋込層23も、各フィルタ領域111に対応する部分を同時に形成することができる。したがって、複数のフィルタ領域111を備えるフィルタ層110を容易に形成することができる。
(変形例)
第1形態のフィルタ領域111は以下のように変更してもよい。
図9が示すように、フィルタ領域111は、基材11を備えていなくてもよい。この場合、低屈折率材料からなる板状体の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。例えば、熱可塑性樹脂からなるシートを用いて、当該シートの表面に凹凸構造を形成してもよいし、合成石英からなる基板を用いて、当該基板の表面に凹凸構造を形成してもよい。合成石英基板に対する凹凸構造の形成には、ドライエッチング法等の公知の技術が用いられればよい。
図10が示すように、基材11の表面に凸部21aが直接に形成されていてもよい。すなわち、凹凸構造層21は、凸部21aに連続する平坦部21cを有さなくてもよい。この場合、凸部21aと基材11とが凹凸構造層21を構成し、基材11のなかで凸部21aに接する領域が、第1低屈折率領域12として機能する。こうした凹凸構造層21は、例えば、フォトリソグラフィの利用によって形成できる。
図11が示すように、フィルタ領域111は、埋込層23に代えて、高屈折率層22の凹凸に追従した表面形状を有する低屈折率層24を備えていてもよい。この場合、フィルタ領域111は、第2低屈折率領域16上に頂部領域17を備える。
頂部領域17は、第1頂部低屈折率部17aと第2頂部低屈折率部17bとを有する。第1方向に沿った方向から見て、第1頂部低屈折率部17aと第2頂部低屈折率部17bとは、第2方向に沿って帯状に延び、第3方向に沿って交互に並んでいる。頂部領域17における第1頂部低屈折率部17aの配列の周期は、第1格子領域13における第1周期P1と一致する。第1頂部低屈折率部17aは、第2低屈折率領域16を挟んで第2格子高屈折率部15a上に位置し、第2頂部低屈折率部17bは、第2低屈折率領域16を挟んで第2格子低屈折率部15b上に位置する。
第2低屈折率領域16と第1頂部低屈折率部17aとは互いに連続しており、これらは互い同一の材料から構成される。すなわち、低屈折率層24は、第2中間低屈折率部14cと第2格子低屈折率部15bと第2低屈折率領域16と第1頂部低屈折率部17aとから構成される。低屈折率層24は、第2低屈折率領域16から基材11に向けて第2中間低屈折率部14cおよび第2格子低屈折率部15bが突出し、第2低屈折率領域16から基材11とは反対側に向けて第1頂部低屈折率部17aが突出した形状を有する。低屈折率層24の表面は凹凸を有し、その凹部に第2頂部低屈折率部17bが対応する。第2頂部低屈折率部17bは空気で充填されている。
低屈折率層24は、検出対象とする入射光の波長域に対して吸収の無い材料から構成される。低屈折率層24は、低屈折率材料としてSiO2(酸化ケイ素)等の無機化合物材料を用い、真空蒸着法やスパッタリング法等の物理気相成長法によって形成されることが好ましい。低屈折率層24は、各種の塗布法を用いて樹脂材料から形成されてもよいが、低屈折率層24を高屈折率層22に追従した形状に形成するため、言い換えれば、低屈折率層24の表面に好適に凹凸を形成するためには、低屈折率層24は、無機化合物材料を用いて物理気相成長法によって形成されることが好ましい。
導波モード共鳴現象を好適に生じさせるためには、凹凸構造層21を構成する材料、および、低屈折率層24を構成する材料の各々と、高屈折率層22を構成する材料との屈折率差が大きいことが好ましく、凹凸構造層21を構成する材料と低屈折率層24を構成する材料との屈折率差よりも、これらの各材料と高屈折率層22を構成する材料との屈折率差の方が大きいことが好ましい。また、空気層と隣接する低屈折率層24を構成する材料の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、凹凸構造層21を構成する材料の屈折率以下であることが好ましい。
低屈折率層24が設けられていることにより、フィルタ領域111の最表面である低屈折率層24の表面が凹凸を有しているため、フィルタ領域111の最表面が平坦である形態と比較して、フィルタ領域111の表面反射を抑えることができる。したがって、低屈折率層24の位置する側を光の入射側とすることにより、フィルタ領域111に入る光の強度が大きくなり、ひいては、受光素子121に入る光の強度が大きくなる。したがって、光検出装置による検出の精度が高められる。
また、頂部領域17は、フィルタ領域111を構成する各領域での反射や干渉に起因した光であって、各格子領域13,15で強められて表面側に射出される波長域とは異なる波長域の光が、表面側に射出されることを抑える機能を有する。言い換えれば、頂部領域17は、上記異なる波長域の光を打ち消すように構成されている。具体的には、頂部領域17は、上記異なる波長域の光を干渉によって弱めることや、裏面側に反射することによって、表面側に射出される上記異なる波長域の光の強度を低くする。その結果、各格子領域13,15で強められた波長域以外の波長域の光の透過率を高めることもできる。
頂部領域17によって打ち消される光の波長域は、頂部領域17の厚さおよび平均屈折率によって調整可能であり、言い換えれば、低屈折率層24の厚さおよび材料によって調整できる。なお、埋込層23の厚さは、100nm以上20μm以下であることが好ましいことに対し、低屈折率層24の厚さは、10nm以上500nm以下であることが好ましい。また、高屈折率層22の厚さは、10nm以上500nm以下であることが好ましい。
なお、フィルタ領域111が低屈折率層24を備える形態において、フィルタ領域111は、第2低屈折率領域16を有さず、第2格子領域15の直上に頂部領域17が位置してもよい。言い換えれば、低屈折率層24の表面の凹部の底部が、第2方向において、高屈折率層22の頂部、すなわち、第2格子高屈折率部15aの頂部と一致する位置に配置されていてもよい。さらには、第2格子低屈折率部15bの一部もしくは全部は、第2頂部低屈折率部17bから連続し、空気が充填されていてもよい。この場合、低屈折率層24の表面の凹部の底部は、第2格子領域15に位置する。さらには、第2中間低屈折率部14cの一部は、第2頂部低屈折率部17bから連続し、空気が充填されていてもよい。この場合、低屈折率層24の表面の凹部の底部は、中間領域14に位置する。
また、フィルタ領域111が低屈折率層24を備える形態において、頂部領域17を覆う保護層が設けられてもよい。この場合、保護層は樹脂等の低屈折率材料から構成され、低屈折率層24の凹部は保護層によって埋められる。すなわち、第2頂部低屈折率部17bは、低屈折率材料によって充填される。
上記各形態において、中間領域14は、中間高屈折率部14aを有していなくてもよい。すなわち、中間領域14は、第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとから構成されていてもよい。高屈折率層22の製造条件によっては、中間高屈折率部14aを有さないフィルタ領域111、すなわち、凸部21aの側面への高屈折率層22の成膜がないフィルタ領域111の製造が可能である。
第1形態のフィルタ領域111においては、サブ波長格子が、1つの方向に帯状に延び、その延びる方向と直交する方向に沿って並んでいる。すなわち、サブ波長格子が、一次元格子状の配列を有する。そのため、各格子領域13,15では、サブ波長格子の配列方向に依存する特定の方向へ偏光した光、すなわち、TE波もしくはTM波が多重反射して共鳴を起こし、反射光として射出される。したがって、第1形態のフィルタ領域111を備える光学デバイス100は、偏光方向の揃っている入射光を対象とする場合に好適に用いられる。
<第2形態>
第2形態のフィルタ領域111は、第1形態と比較して、サブ波長格子の配列が異なる。図12(a)~(d)が示すように、第2形態のフィルタ領域111において、サブ波長格子は、二次元格子状の配列を有する。
詳細には、図12(b)が示すように、第1格子領域13において、複数の第1格子低屈折率部13bは、二次元格子状に配置されている。二次元格子の種類は特に限定されず、互いに異なる方向に延びる2つの平行線群が交差することによって構成される格子の格子点に第1格子低屈折率部13bが位置していればよい。例えば、第1格子低屈折率部13bが構成する二次元格子は、正方格子であってもよいし、六方格子であってもよい。第1格子領域13における格子構造の周期である第1周期P1は、二次元格子が延びる各方向において一致している。第1格子高屈折率部13aは、複数の第1格子低屈折率部13bの間を埋めており、連続する1つの高屈折率部を構成している。
第1方向に沿った方向から見て、第1格子低屈折率部13bの形状は特に限定されないが、例えば第1格子低屈折率部13bが正方形であると、第1格子領域13の平均屈折率を規定する面積比率の設定が容易である。
図12(c)が示すように、中間領域14において、複数の第1中間低屈折率部14bは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。中間領域14における第1中間低屈折率部14bの配列の周期である第3周期P3は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。第1方向に沿った方向から見て、第1中間低屈折率部14bの大きさは、第1格子低屈折率部13bと一致する。
第1方向に沿った方向から見て、中間高屈折率部14aは枠形状を有し、第1中間低屈折率部14bを1つずつ取り囲んでいる。第2中間低屈折率部14cは、互いに隣接する中間高屈折率部14aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。
図12(d)が示すように、第2格子領域15において、複数の第2格子高屈折率部15aは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。第2格子低屈折率部15bは、複数の第2格子高屈折率部15aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。第2格子領域15における格子構造の周期である第2周期P2は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
ただし、第1方向に沿った方向から見て、第2格子領域15において点在する第2格子高屈折率部15aは、第1格子領域13において点在する第1格子低屈折率部13bよりも大きい。言い換えれば、第2方向および第3方向の各々において、第2格子高屈折率部15aの幅は、第1格子低屈折率部13bの幅よりも大きい。したがって、第2格子低屈折率部15bの幅は、第1格子高屈折率部13aの幅よりも小さい。第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aは、第1格子低屈折率部13bの形状に準じた形状を有する。
第2形態のフィルタ領域111においても、第1形態と同様の原理によって導波モード共鳴現象が起こる。すなわち、第1格子領域13で強められた波長域の光と、第2格子領域15で強められた波長域の光とが、反射光として射出され、入射光のなかで、この強められた反射光の波長域を除く波長域の光が、透過光として射出されて受光素子121に入る。第2形態においても、第1格子領域13の光学膜厚OT1は、第1形態で示した式(2)によって求められ、第2格子領域15の光学膜厚OT2は、第1形態で示した式(4)によって求められる。そして、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下であれば、フィルタ領域111において良好な波長選択性が得られる。
また、第2形態においても、中間高屈折率部14aの面積比率R3について、第1形態で示した式(5)が満たされることが好ましい。式(5)が満たされていれば、中間高屈折率部14aの幅が、第2格子高屈折率部15aよりも外側まで広がらない程度に抑えられるため、中間高屈折率部14aの面積比率が大きくなりすぎない。したがって、波長選択性が高められる。
第2形態のように、サブ波長格子を構成する格子要素が二次元格子状に並ぶ形態であれば、互いに異なる方向へ偏光している光を格子要素が並ぶ方向ごとにそれぞれ共鳴させることができる。したがって、第1形態のように、格子要素が1つの方向のみに沿って並ぶ形態と比較して、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射される。そのため、第2形態のフィルタ領域111を備える光学デバイス100は、偏光方向の揃っていない入射光を対象とする場合に好適に用いられる。
特に、格子要素が六方格子状に並ぶ形態であれば、格子要素が正方格子状に並ぶ形態と比較して、格子領域にて共鳴可能な偏光の方向が多くなるため、様々な方向への偏光成分を含む入射光への適応性が高くなる。
第2形態のフィルタ領域111は、第1形態のフィルタ領域の製造方法において、凸部21aの配列態様を変更することによって製造できる。具体的には、複数の凸部21aが二次元格子状に配置された凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。複数の凸部21aは互いに離間しており、凸部21a間に位置する凹部21bは連続する1つの凹部を構成している。第2形態のように、凸部21aが二次元格子状に並ぶ形態であれば、凸部21aの大きさや配置についての自由度が高いため、凸部21aと凹部21bとの面積比率の設定に際しての細かな調整が容易である。
なお、複数の凸部21aは、互いに離間していなくてもよく、例えば、平面視での正方形の角部等において、凸部21a同士が接していてもよい。この場合、凹部21bは、複数の部分に分割され得る。
また、凹凸構造層21の凹凸構造は、互いに離間した複数の凹部21bと、これらの凹部の間で連続している単一の凸部21aとから構成されてもよい。すなわち、凹凸構造層21の凹凸構造は、凸部もしくは凹部である複数の凹凸要素が二次元格子状に並ぶことにより形成されていればよい。
また、各格子領域13,15において、格子構造の周期は、二次元格子が延びる方向によって異なっていてもよい。こうした構成によれば、二次元格子が延びる方向によって共鳴を起こす波長域を異ならせて、反射光に含まれる波長域や偏光に対する応答性を調整することが可能である。
また、第2形態のフィルタ領域111には、第1形態のフィルタ領域111の各変形例の構成が適用できる。
<第3形態>
図13が示すように、第3形態のフィルタ領域111において、サブ波長格子は、一次元格子状の配列を有する。そして、フィルタ領域111は、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、および、第2低屈折率領域16からなる構造体である共鳴構造部31を、2つ備えている。
2つの共鳴構造部31である第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとは、第1方向に隣り合っており、2つの共鳴構造部31A,31Bは、2つの基材11で挟まれている。換言すれば、第3形態のフィルタ領域111は、第1形態の構成を有する2つのフィルタ領域が、第2低屈折率領域16同士が向かい合うように接合された構造を有する。すなわち、第3形態のフィルタ領域111は、第1方向に間をあけて並ぶ4つのサブ波長格子を有し、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に囲まれた構造を有している。なお、一方の基材11に対する他方の基材11の側がフィルタ領域111の表面側、すなわち、光の入射側であり、他方の基材11に対する一方の基材11の側がフィルタ領域111の裏面側である。
第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとは、これらの境界部分で、低屈折率領域を共有していてもよい。例えば、図13が示す例では、第1共鳴構造部31Aの備える第2低屈折率領域16と、第2共鳴構造部31Bの備える第2低屈折率領域16とは連続しており、これらの領域の境界は存在しない。
第1共鳴構造部31Aの格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bは、第2方向に沿って延び、第3方向に沿って並ぶ。一方、第2共鳴構造部31Bの格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bは、第3方向に沿って延び、第2方向に沿って並ぶ。すなわち、第1共鳴構造部31Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部31Bが有するサブ波長格子の配列方向とは直交している。
第1共鳴構造部31Aにおける凸部21aの配列の周期と、第2共鳴構造部31Bにおける凸部21aの配列の周期とは、同一である。波長選択性を高めるためには、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとの各々において、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.625以上1.6以下であることがより好ましい。さらに、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとで、上記比が一致していることが好ましい。
第3形態のフィルタ領域111では、4つの格子領域13,15の各々で強められた波長域の反射光がフィルタ領域111の表面側に射出されるため、波長選択性がより高められる。このとき、上述のように、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとで、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が一致していれば、4つの格子領域13,15における光学膜厚のばらつきが小さくなり、各格子領域13,15で共鳴を起こす光の波長域がより近くなるため好ましい。
上述のように、サブ波長格子が一次元格子状の配列を有する場合、各格子領域13,15では、特定の方向へ偏光した光が多重反射して共鳴を起こし、反射光として射出される。上記特定の方向は、サブ波長格子の配列方向に依存する。第3形態では、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとでサブ波長格子の配列方向が直交することにより、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15と第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15とで、多重反射する光の偏光方向は互いに異なる。したがって、様々な方向への偏光成分を含む入射光に適応可能である。
第3形態のフィルタ領域111は、先の図7に示した基材11と凹凸構造層21と高屈折率層22とからなる構造体を、高屈折率層22同士が向かい合うように対向させ、2つの構造体の間の領域を低屈折率材料で埋めることによってこれらの構造体を接合することにより形成される。低屈折率材料による埋め込みによって、2つの構造体の間に形成される部分が埋込層23である。埋込層23の形成方法としては、各種の塗布法等が用いられればよい。
一方の構造体における凸部21aの延びる方向と、他方の構造体における凸部21aの延びる方向とが直交するように、これらの構造体を向かい合わせて低屈折率材料により接合することで、第3形態のフィルタ領域111が形成できる。
なお、2つの共鳴構造部31A,31Bは、第2低屈折率領域16同士が向かい合うように配置されることに代えて、第2低屈折率領域16を外側に向けて配置されてもよい。すなわち、2つの上記構造体は、基材11同士が向かい合うように低屈折率材料によって接合されていてもよい。
また、2つの共鳴構造部31A,31Bは、各共鳴構造部31A,31Bの第2低屈折率領域16が、いずれも表面側を向くように配置されてもよい。すなわち、2つの上記構造体は、一方の構造体の高屈折率層22と、他方の構造体の基材11とが向かい合うように低屈折率材料によって接合されていてもよい。
また、2つの共鳴構造部31A,31Bにおけるサブ波長格子の配列方向は、直交していることに限らず、互いに異なっていればよい。サブ波長格子の配列方向の設定によって、フィルタ領域111の偏光応答性を調整することもできる。
また、偏光方向の揃っている入射光を対象とする場合には、図14が示すように、2つの共鳴構造部31A,31Bにおいて、サブ波長格子の配列方向は同一であってもよい。
第1共鳴構造部31Aにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkと、第2共鳴構造部31Bにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkとは、図14が示すように同一であってもよいし、あるいは、互いに異なっていてもよい。
2つの共鳴構造部31A,31Bが同一の構造周期Pkを有する構成では、4つの格子領域13,15において、共鳴を起こす光の波長域のばらつきが小さくなり、4つの格子領域13,15の各々で強められた波長域の反射光がフィルタ領域111の表面側に射出されることにより、波長選択性がより高められる。
一方、2つの共鳴構造部31A,31Bが互いに異なる構造周期Pkを有する構成では、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。その結果、フィルタ領域111の表面側には、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15にて強められた波長域の光と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15にて強められた波長域の光とを含む反射光が射出される。そして、フィルタ領域111の裏面側には、フィルタ領域111への入射光のうち、各共鳴構造部31A,31Bの格子領域13,15にて強められた波長域を除く波長域の光が射出される。各共鳴構造部31A,31Bの構造周期Pkの設定により、透過光の波長域を調整することも可能である。
また、フィルタ領域111は、第1方向に並ぶ3以上の共鳴構造部31を備えていてもよい。様々な方向への偏光成分を含む入射光を対象とする場合には、複数の共鳴構造部31に、サブ波長格子の配列方向が互いに異なる共鳴構造部31が含まれていればよい。こうしたフィルタ領域111は、偶数、すなわち2n(nは3以上の整数)個のサブ波長格子を備え、表面側もしくは裏面側から2m-1番目(mは1以上n以下の整数)のサブ波長格子と2m番目のサブ波長格子とにおいて、配列方向は互いに同一であり、配列周期も互いに同一である。換言すれば、フィルタ領域111は、配列方向および配列周期が同一である二層のサブ波長格子の対が、第1方向に並び、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に囲まれた構造を有している。
こうした構成によれば、共鳴構造部31ごとのサブ波長格子の配列方向の設定や、サブ波長格子の配列方向が同一である共鳴構造部31の数の設定等によって、フィルタ領域111の偏光応答性を調整することもできる。なお、複数の共鳴構造部31には、サブ波長格子の配列周期が互いに異なる共鳴構造部31が含まれていてもよい。
3以上の共鳴構造部31を備えるフィルタ領域111の製造に際しては、基材11と凹凸構造層21とが、凹凸構造層21から基材11を剥離可能な材料から形成され、上記構造体の積層に際して基材11が剥離されてもよい。例えば、基材11と凹凸構造層21と高屈折率層22とからなる2つの構造体が、高屈折率層22同士が向かい合うように低屈折率材料によって接合されたのち、一方の構造体の基材11が剥離され、露出された凹凸構造層21と別の上記構造体とがさらに低屈折率材料を挟んで接合されることが繰り返されることによって、6以上のサブ波長格子を有するフィルタ領域111が形成される。
また、第3形態のフィルタ領域111には、第1形態のフィルタ領域111の各変形例の構成、および、第2形態とその変形例のフィルタ領域111の構成が適用できる。例えば、フィルタ領域111は、二次元格子状のサブ波長格子を有する共鳴構造部31を複数備えていてもよい。
以上、上記実施形態の光学デバイスによれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)光学デバイス100が、導波モード共鳴現象を利用したフィルタ領域111を有するフィルタ層110を備えるため、光学デバイス100における光の選別の精度を高めることができる。
(2)フィルタ領域111が、基材11と、凹凸構造層21と、高屈折率層22と、埋込層23または低屈折率層24とを備える。このように、フィルタ領域111が薄膜の積層構造を有することから、サブ波長格子が低屈折率材料に囲まれた構造が好適に実現され、また、フィルタ領域111の形成が容易である。
(3)フィルタ領域111が、最表面に低屈折率層24を備える形態であれば、表面反射を低減することが可能であるとともに、各格子領域13,15で強められた反射光とは異なる波長域の光が、フィルタ領域111の内部での反射や干渉に起因して当該反射光とともに射出されることを抑えることができる。
(4)サブ波長格子が一次元格子状の配列を有する形態では、その配列方向に依存した特定の方向へ偏光した光が格子領域13,15から反射される。したがって、フィルタ領域111の有するサブ波長格子の配列方向が揃っている形態であれば、偏光方向の揃った入射光を対象とする場合に好適に用いられ、フィルタ領域111が配列方向の互いに異なるサブ波長格子を含む形態であれば、様々な方向への偏光成分を含む入射光を対象とする場合に好適に用いられる。
(5)サブ波長格子が二次元格子状の配列を有する形態では、配列方向ごとに異なる方向へ偏光している光が格子領域13,15から反射される。したがって、様々な方向への偏光成分を含む入射光を対象とする場合に好適に用いられる。
(6)フィルタ領域111が、互いに同一の周期および配列方向を有する二層のサブ波長格子からなる格子対を複数備える形態であれば、波長選択性の向上、偏光応答性の調整、反射光および透過光の波長域の調整等が可能である。
(7)フィルタ層110が、赤反射フィルタ領域111Rと、緑反射フィルタ領域111Gと、青反射フィルタ領域111Bとを含む構成であれば、可視領域の入射光を対象とするイメージセンサ等の光検出装置に適した光学デバイス100が実現される。
なお、サブ波長格子が一次元格子状の配列を有する形態では、その配列方向に依存した特定の方向へ偏光した光が格子領域13,15から反射されることを利用すれば、光検出装置によって、入射光の偏光方向を算出することも可能である。すなわち、サブ波長格子の配列方向が異なるフィルタ領域111に対応する受光素子121の出力を比較することで、入射光に含まれる偏光成分を求めることができる。光学デバイス100のフィルタ層110は、互いに異なる波長域の光を反射する複数のフィルタ領域111、および、サブ波長格子の配列方向が互いに異なる複数のフィルタ領域111の少なくとも一方を含んでいればよく、光検出装置は、入射光の波長域と偏光方向との少なくとも一方を検出する装置であればよい。