JP2007101859A - 偏光分離素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】屈折率の異なる材料の積層数が少なく、簡単な構成で、所望のまたはより高い偏光分離機能を得ることができる偏光分離素子および高い生産性で、より容易にかつ低コストで低価格の偏光分離素子の製品を製造できる偏光分離素子の製造方法を提供する。
【解決手段】断面が矩形形状または楔型状である凸部が設計または使用波長より短い周期で配列された凹凸構造を上面に有する基板と、共に、凸部より高い屈折率を持ち、凹凸構造の凸部に堆積された第1被覆膜と、凹部に充填され、膜厚が凸部の高さより薄い第2被覆膜とを備えること、および、さらに、凹凸構造の全面を覆うように、第1被覆膜の上面に形成された透明な第3被覆膜を備えることにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、入射光を互いに直交する2つの偏光成分に分離する偏光分離素子およびその製造方法に関する。
光通信デバイス、光ディスクのピックアップ、液晶ディスプレイ、光応用計測などに利用される光学素子の一つとして偏光分離素子が知られている。偏光分離素子は、不特定の方向に電磁界が振動する無偏光光または楕円偏光光を入射した場合に、ある特定方向の振動成分の光だけを透過させて直線偏光として出射する光学素子である。
入射光を互いに2つの直交する偏光成分に分離するために、材料の複屈折性(屈折率の偏光依存性)を利用する方法や、等方性材料の表面に設計波長または使用波長より短い周期構造に現れる構造性複屈折性を利用する方法などが用いられており、これらの方法を利用した偏光分離素子が作製されている。また、このような偏光分離素子においては、偏光分離機能を向上させるために、物性が異なる複数の材料を交互に積層する必要がある。
ここで、構造性複屈折性を用いた偏光分離素子は、透明の基板上に設計波長より短い凹凸周期構造を作製することにより得られるものである。波長より短い周期を持つ凹凸構造(サブ波長構造)に光が入射すると、周期的な凹凸構造の溝方向と平行な方向に振動する偏光成分(電界が長さの方向に平行であるTE波)と溝方向と垂直な方向に振動する偏光成分(磁界が長さの方向に平行であるTM波)に対して凹凸構造の実効屈折率(構造を透明薄膜と見なす時の平均屈折率)は異なる。そのため、凹凸構造の界面での反射率は、入射光の各偏光成分に依存する。多層のサブ波長構造を設計することで、一方の偏光成分を反射させ、この偏光と垂直な他方の偏光成分を透過させることができる。このような多層構造のサブ波長構造の偏光子およびその作製方法が、例えば、特許文献1、非特許文献1および2に提案されている。
非特許文献1および2には、平板ガラス基板上に予め屈折率の異なる2種類以上の透明材料、例えば、SiとSiOとの2種、もしくは、SiとSiOとの2種を、それぞれ所望の厚みで3〜5層に成膜した後、これらの多層膜をパターンニングおよびエッチングを行って、凹凸構造を形成し、多層のサブ波長構造を持つ複屈折性多層偏光分離素子や複屈折性多層格子に基づく波長板偏光分離素子を形成する技術が開示されている。
一方、特許文献1には、矩形状に形成した石英ガラス基板上に電子ビームリソグラフィとドライエッチングにより、使用される光の波長以下の周期的な溝を形成し、例えば、V字形、方形、波形などの周期的凹凸構造を形成し、この基板上に、SiO2およびSiのターゲットを用い、バイアス・スパッタリング法により、下層(基板)の周期的な凹凸の形状、例えば、波形(V字形)を保存しながら成膜を行い、屈折率の高いアモルファス透明材料と屈折率の低いアモルファス透明材料、例えば、屈折率の異なるSiO2層とSi層を、例えば、波形(V字形)の、所定厚みの連続な透明薄膜として、交互に積層して多層構造、例えば5層構造を形成して、偏光子を製造する技術が開示されている。
特開2001−83321号公報 R. C. Tyan et al. "design, fabrication, and characteriza-tion of form-birefringent multilayer polarizing beam splitter," Journal of the Optical Society of America A, Vol. 14, P1627-1636 (1997) A. G. Lopez and H. G. Craighead, "Wave-plate polarizing beam splitter based of a form-birefringent multilayer grating," Optics Letters, Vol. 23, No. 20, P1627-1629 (1998)
ところで、非特許文献1および2に開示の偏光分離素子の技術は、平板ガラス基板上への屈折率の異なる2種類以上の透明材料の多層膜の成膜、パターンニングおよびエッチングというプロセスを経て、多層膜に、使用される光の波長以下の周期的な溝を形成し、周期的な凹凸構造を形成する必要がある。
また、特許文献1に開示の偏光子は、多層構造の層間における屈折率の変化が小さく、所望の偏光分離機能をもたせるためには、積層する層数を多くすることが必要である。
このため、これらの先行文献に開示された技術では、基板上に多層膜を形成する際に、屈折率の異なる材料を交互に積層する層数が少ないと、所望の偏光分離機能が得られないという問題があった。すなわち、これらの先行文献に開示の偏光分離素子では、簡単な構成で所望の偏光分離機能を得ることができないという問題があった。
したがって、これらの先行文献に開示された方法で、所望の偏光分離機能を持つ偏光分離素子を得るためには、基板上に多層膜を成膜した後に多層膜に周期的な溝を形成する必要があるし、また、基板上に形成された波形などの周期的な凹凸構造に沿わせて所定厚みの連続膜を多数積層して多層膜とする必要があるので、偏光分離素子の生産性が悪く、低価格の製品が得られないという問題があった。
本発明の第1の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、屈折率の異なる材料の積層の層数が少なく、簡単な構成で、使用される設計波長の入射光に対して所望の偏光分離機能を得ることができ、さらには、より高い偏光分離機能を得ることができ、液晶ディスプレイのバックライトや、液晶プロジェクタや、光ピックアップ系デバイス等への応用で光利用効率を向上させることのできる偏光分離素子を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、屈折率の異なる材料の積層の層数が少なく、簡単な構成で、使用される設計波長の入射光に対して所望の、あるいは、より高い偏光分離機能を得るための偏光分離素子の設計を容易に行うことができ、量産技術の適用が可能であり、高い生産性で、より容易に、かつ低コストで、従って、低価格の偏光分離素子の製品を得ることができる偏光分離素子の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記第1および第2の目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、
1)屈折率の低い基板上に設計波長または使用波長より短い周期的凹凸構造を作製する、
2)凹凸構造上に屈折率の高い材料を成膜することで、三層構造を生成する、
3)カバー層を形成し、偏光分離効果を高める、
4)屈折率の低い基板は、可塑性材料を用い、基板上の波長より短い凹凸構造を量産技術である成形法やプレス加工によって作製する、
5)屈折率の高い薄膜の製膜手段として、量産性の高い電子ビーム蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などで行う、
ことにより、所望の偏光分離機能を持つ偏光分離素子を作製することができることを知見し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明の第1の態様は、断面形状が矩形形状、または楔型状である凸部が設計波長または使用波長より短い周期で配列された凹凸構造を上面に有する基板と、前記凸部より高い屈折率を有し、前記凹凸構造の前記凸部に形成(堆積)された第1被覆膜と、前記凸部より高い屈折率を有し、前記凹凸構造上の凹部に形成(充填)された第2被覆膜とを備え、前記第2被覆膜の膜厚は、前記基板上の前記凹凸構造の前記凸部の高さより薄いことを特徴とする偏光分離素子を提供するものである。
ここで、前記第1被覆膜の膜厚は、前記基板上の前記凹凸構造の前記凸部の高さより薄いのが好ましい。
また、前記第1および第2被覆膜の膜厚は、略同一であるのが好ましい。
また、さらに、前記凹凸構造を覆うように、前記第1被覆膜の上面に形成された透明な第3被覆膜を備えるのが好ましい。
また、前記第1および第2被覆膜は、それぞれ、前記凹凸構造の前記凸部および前記凹部に積層され、前記第3被覆膜は、前記第1被覆膜の上面に積層されるのが好ましい。
また、前記凸部、前記第1および第2被覆膜の屈折率に対して、前記第1被覆膜およびその間の空気層からなる第1実効層と、前記凸部の高さ方向においてその側面が前記第2被服膜で覆われていない部分およびその間の空気層からなる第2実効層と、前記第2被服膜およびその間の前記凸部からなる第3実効層とするとき、前記第1、第2および記第3実効層の各層の厚みは、前記凸部、前記第1および第2被覆膜の屈折率に対して、前記設計波長または使用波長を持つ入射光から分離される互いに直交する2つの偏光成分について求められる各層の有効屈折率を用いて、前記設計波長または使用波長の垂直入射光に対して、各層における前記2つの偏光成分の一方の偏光波成分の位相遅れが前記設計波長または使用波長の1/4の奇数倍となるように、設計された厚みであるのが好ましい。
また、上記第2の目的を達成するために、本発明の第2の態様は、基板上面に、断面形状が矩形形状または楔型状である凸部が設計波長または使用波長より短い周期で配列された凹凸構造を形成し、前記凸部より高い屈折率を持つ第1および第2被覆膜を、それぞれ前記凹凸構造の前記凸部および凹部に、少なくとも該凹部上の前記第2被覆膜の膜厚が前記凸部の高さより低くなるように、成膜することを特徴とする偏光分離素子の製造方法を提供するものである。
ここで、前記凹凸構造は、射出成形法、プレス成形法、エッチング処理法のいずれかによって形成されるのが好ましい。
また、前記第1および第2被覆膜の成膜は、それぞれ電子ビーム蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法のいずれかによって行なわれるのが好ましい。
また、前記第1被覆膜は、前記基板上の前記凹凸構造の前記凸部の高さより薄い膜厚となるように成膜されるのが好ましい。
また、前記第1および第2被覆膜は、同時に、同一の成膜法により、略同一の膜厚に成膜されるのが好ましい。
また、さらに、前記凹凸構造を覆うように、前記第1被覆膜の上面に透明な第3被覆膜を形成するのが好ましい。
また、前記第3被覆膜の形成は、前記基板上の前記凹凸構造上への塗布によって行われるのが好ましい。
また、前記凸部、前記第1および第2被覆膜の屈折率に対して、前記第1被覆膜およびその間の空気層からなる第1実効層と、前記凸部の高さ方向においてその側面が前記第2被服膜で覆われていない部分およびその間の空気層からなる第2実効層と、前記第2被服膜およびその間の前記凸部からなる第3実効層との各層における前記2つの偏光成分の有効屈折率を求め、求めたこれらの有効屈折率を用いて、前記設計波長または使用波長の垂直入射光に対して、各層における前記2つの偏光成分の一方の偏光波成分の位相遅れが前記設計波長または使用波長の1/4の奇数倍となるように、各層の厚みを設計し、前記凹凸構造は、前記凸部の高さが前記第2および第3実効層の各層の合計厚みとなるように前記基板上に形成され、前記第1および第2被覆膜は、それぞれ前記第1および第3実効層の各層の厚みとなるように成膜されるのが好ましい。
本発明の第1の態様によれば、屈折率の異なる材料の積層の層数が少なく、簡単な構成で、使用される設計波長の入射光に対して所望の偏光分離機能、さらには、より高い偏光分離機能を得ることができる。また、本態様によれば、液晶ディスプレイのバックライトや、液晶プロジェクタや、光ディスクのピックアップなどの光ピックアップ系デバイス、光通信デバイス、光応用計測デバイス等に応用した場合には、光利用効率を向上させることができる。
また、本発明の第2の態様によれば、屈折率の異なる材料の積層の層数が少なく、簡単な構成で、使用される設計波長の入射光に対して所望の、あるいは、より高い偏光分離機能を得るための偏光分離素子の設計を容易に行うことができ、量産技術の適用が可能であり、高い生産性で、より容易に、かつ低コストで、従って、低価格の偏光分離素子の製品を得ることができる。
本発明に係る偏光分離素子およびその製造方法を添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る偏光分離素子の一実施形態(第1実施形態)の一部を模式的に示す断面図である。なお、図1に示す偏光分離素子の第1実施形態の断面構造は、図中紙面に垂直方向においても連続しており、また、図中左右方向に畝状の表面形状が基板上に形成され、周期凹凸構造が連続している。
図1に示す偏光分離素子10は、断面形状が矩形形状である凸部12aが設計波長または使用波長より短い周期Tで配列され、隣接する凸部12a間に凹部12bが形成された周期的な凹凸構造(サブ波長構造)12を上面に有する基板14と、基板14の凹凸構造12の凸部12aの屈折率より高い屈折率を有し、凸部12aのみの上面に堆積(形成)された第1被覆膜16と、基板14の凹部12bの屈折率より高い屈折率を有し、凹凸構造12の凹部12bの基板14の本体14aの上面に充填(形成)され、凸部12aの高さ(D)より膜厚(D’)の薄い第2被覆膜18とを備える。
すなわち、本発明の第1の実施形態の偏光分離素子10は、断面視略矩形形状の低屈折率の凸部12aが設計(使用)波長より短い周期Tで配列された凹凸構造12を基板本体14aの上面に有する低屈折率の基板12と、この基板の凹凸構造12の上に、凸部12aの屈折率より高い屈折率を有する少なくとも一種類の被覆膜20、図示例では第1被服膜16および第2被服膜18を被覆することによって得られた多層構造(図示例では、3層構造)28とを備えるものであるということができる。ここで、高屈折率の被覆膜20は、基板14の凹凸構造12の凸部12aに第1被服膜16として堆積し、凹部12bに第2被服膜18として充填され、第1被服膜16および第2被服膜18によって構成される。
すなわち、本発明の偏光分離素子10は、凸部12aの上面の高屈折率の第1被覆膜16とその間の空気層によって形成される第1実効層22と、凸部12aの高さ方向において凸部12aの側面が第2被服膜18で覆われていない低屈折率の凸部12aの部分およびその間の空気層によって形成される第2実効層24と、凹部12bに充填される高屈折率の第2被服膜18およびその間の凸部12aの部分によって形成される第3実効層26とを有する3層構造28の偏光分離素子である。
例えば、被覆膜20が、一種類の被覆膜材料によって被覆された場合には、図1に示すように、第1実効層22、第2実効層24および第3実効層26の3層構造28になる。したがって、第1実効層22は、堆積した第1被覆膜16の被覆膜材料(厚さD2、屈折率n2)と空気(屈折率n=1.0)によって構成され、第2実効層24は、凸部12aの基板材料(厚さD−D’、屈折率n1)と空気(屈折率n=1.0)によって構成され、第3実効層26は、凸部12aの基板材料と充填した第2被服膜18の被服膜材料(厚さD’、屈折率n2)によって構成されることになる。
基板12は、屈折率の低い透明光学材料、例えば、アクリル樹脂(屈折率1・5)やメタクリル樹脂などにより構成することができるが、屈折率の低い透明光学材料であれば、特に制限的ではなく、石英ガラス、熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂などのプラスチック、光の吸収の少ない誘電体基板などによっても構成することもできる。本発明においては、基板12の上面に設計波長または使用波長より短い周期で配列された凹凸構造を作製する際に、射出成形法などの成形法やプレス加工法などの量産技術が適用できるように、屈折率の低い基板12には、アクリル樹脂やメタクリル樹脂などのアクリル系樹脂、光硬化性樹脂などの可塑性材料を用いるのが好ましい。
基板14の本体14aの上面に形成される凹凸構造12の周期Tは、使用する光の波長(設計波長)λより短く設計される。
また、凸部12aの周期方向の幅tと凹凸構造12の周期Tとの比である凸部占有率t/Tが0.2から0.8までのいずれかの値であるのが好ましい。
なお、後述する例では、周期Tは、220nmに設定し、可視光の中心波長である550nmを設計波長λとして、実施例の評価では、He−Neレーザー(波長633nm)を用いた。なお、これらの近傍の波長域を使用光として想定しているが、設計波長λおよび周期Tの値はこれに制限されない。
本発明では、このような凹凸構造12は、コスト面および生産性を考慮して、射出成形法やプレス成形法などの量産可能な成形法により形成されるのが望ましい。しかし、本発明はこれに限定されず、格子パターンを形成したフォトレジストをマスクとしたエッチング処理によっても形成可能である。
また、本実施形態では、基板14の上面の凹凸構造12を形成している凸部12aは、基板14の本体14aと同一の基板材料で一体に形成されているが、基板14の本体14aの表面上に本体14aと異なる材料の誘電体層、光硬化性樹脂層(例えば、紫外線(UV)硬化樹脂層)または熱硬化性樹脂層を形成し、これをエッチング加工またはプレス加工などによりパターニングして、基板本体14aと異なる材料で凸部12aを形成し、凹凸構造12を有する基板14を作製してもよい。
高屈折率の被覆膜20は、凸部12aの上面に形成された第1被覆膜16と、凹部12bの上面に形成された第2被覆膜18から構成される。
本実施形態では、第1被覆膜16と第2被覆膜18とを、同じ被覆膜材料で、かつ同じ条件で同時に形成していることから、第1被覆膜16の厚さDと第2被覆膜18の厚さD’とは、同じ厚さとなっているが、凸部12aの高さDより薄い必要がある。
なお、このような場合においても、基板14の凹凸構造12の形状効果等により成膜条件に差が生じてしまい、第1被覆膜16の厚さDと第2被覆膜18の厚さD’とが、異なる高さとなっていても良い。すなわち、第1被覆膜16の厚さDと第2被覆膜18の厚さD’とは、必ずしも同じ厚さである必要はないが、この場合でも、第2被覆膜18の厚さD’は、凸部12aの高さDより薄い必要があるし、第1被覆膜16の厚さDも、凸部12aの高さDより薄いのが好ましい。
ここで、高屈折率の被覆膜20の第1被覆膜16および第2被覆膜18は、生産性および製造の容易性から同じ被覆膜材料で、かつ同じ条件で同時に形成するのが好ましいが、異なる被覆膜材料で形成しても良いし、または異なる条件で形成しても良いし、あるいは異なるタイミングで行っても良いし、もしくは異なるプロセスで形成しても良い。
この場合においても、本発明においては、第2被覆膜18の厚さD’は、凸部12aの高さDより薄い必要がある。なお、第1被覆膜16の厚さDも、凸部12aの高さDより薄いのが好ましい。
本発明においては、第1被覆膜16および第2被覆膜18などの被覆膜20を、Si(屈折率2.1)、Nb(屈折率2.5)またはシリコン(Si)(屈折率3.5)などの高屈折率の被覆膜材料によって構成するのが好ましいが、本発明はこれらに限定されず、他の高屈折率の被覆膜材料で構成しても良い。例えば、ZnSnOやTiOなど屈折率の高い他の誘電体材料により構成することもできる。
第1被覆膜16および第2被覆膜18などの被覆膜20は、量産性の高い電子ビーム蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、またはイオンビーム蒸着法などにより形成することができる。
本発明では、このような成膜方法によって、一種類の被覆膜材料(屈折率n2)を用いて一工程で成膜を行うことができる。以下では、第1被覆膜16および第2被覆膜18などの被覆膜20は、一種類の被覆膜材料(屈折率n2)を用いて一工程で成膜されたものとして、すなわち、第1被覆膜16および第2被覆膜18は、同じ屈折率n2を持ち、それぞれの厚さ(膜厚)は、等しい(D=D’)ものとして説明する。
このようにして、基板14(屈折率n)の凹凸構造12上に基板14より屈折率の高い被覆膜20(屈折率n2>n)を設けることにより、図1に示すような第1、第2、第3の実効層22、24、26からなる3層構造28が形成される。上述したように、この3層構造28の第1の実効層22(j=1)は、第1被覆膜16(屈折率n)および空気(屈折率1.0)、第2の実効層24(j=2)は、凸部12a(屈折率n)および空気(屈折率1.0)、第3の実効層26(j=3)は、凸部12a(屈折率n)および第2被覆膜(屈折率n)によってそれぞれ構成される。ここで、基板14の凹凸構造12の周期Tは、上述のように入射光に対する回折波を発生させないくらいに短いので、第1〜第3の実効層22、24、26のそれぞれは、人工的な複屈折による光学的異方性を具備した薄膜と見なすことができる。
このような基板14の凹凸構造12の溝(凹部12b)と平行な方向に振動する光波(TE波)と溝に垂直な方向に振動する光波(TM波)とを含む入射光が、各実効層22〜26に入射すると、TE波とTM波とは、それぞれ異なる有効屈折率(実効屈折率)を持つ。
以下では、j(=1、2、3)をそれぞれ第1、第2、第3の実効層22、24、26に対応させて、第1〜第3の実効層22〜26におけるTE波、TM波の有効屈折率を、nTE(j)、nTM(j)と表し、各実効層22〜26の光学的異方性によって生じる偏光分離効果を詳細に説明する。
基板14の表面の凹凸構造12の周期Tは、各実効層22〜26に対して垂直に入射した光の各実効層22〜26における波長λより短いため、光が各実効層22〜26に入射する際には0次光以外の回折光が発生しない。このような周期Tの条件は、凸部12aの屈折率n、被覆膜20の有効屈折率nTE(j),nTM(j)を用いて下記式(1)で与えられる。
Figure 2007101859
図1に示す偏光分離素子10は、各実効層22〜26間の有効屈折率の差によって4つの反射界面を持っている。界面間の反射率は、各実効層22〜26間の屈折率の差に依存する。このため、屈折率の差が大きければ大きいほど、大きな反射率が得られる。
偏光分離素子10の3層構造28全体の反射率または反射強度は、各界面の反射率および界面間の光路長、すなわち各実効層22、24、26の厚さD、D−D、Dに依存する。このため、各界面の反射光を強め合う条件としては、各実効層22〜26を通過する光の位相差が0.5πとすればよい。
各実効層22〜26(j=1〜3)における有効屈折率nTE0(j)およびnTM0(j)は、下記式(2)〜(7)を用いて表すことができる。下記式中、fは、凸部12aの周期方向の幅tと凹凸構造12の周期Tとの比である凸部占有率t/Tを略記したものである。すなわち、f=t/Tである。
Figure 2007101859
しかし、図1に示す偏光分離素子10の3層構造28、すなわち基板14の凹凸構造12の周期Tが、前述した高次回折光を発生しない条件(上記式(1))を満足しつつも、使用光の設計波長λより十分短いという条件を満足しない場合には、各実効層22〜26(j=1〜3)における有効屈折率は、設計波長λに依存し、上記式(2)〜(7)を用いて位相差を求めることができない。
この場合には、各実効層22〜26における有効屈折率は、上記式(2)〜(7)よりも精度の高い「Rytovの2次近似式」と呼ばれる有効屈折率の式を用いて求める必要がある(非特許文献3:S. M. Rytov, "Electromagnetic Properties of Finely Stratified Medium, Sov. Phys. JETP 2, 466-475 (1956) 参照)。ここで用いられる2次近似式としては、3層構造28(凹凸構造12)の周期をTとして、入射光のTE波とTM波に対する各実効層22〜26(j=1〜3)における有効屈折率nTE(j)およびnTM(j)は、下記式(8)および(9)で表すことができる。
Figure 2007101859
ここで、nおよびnは、第1実効層22(j=1)の場合にはn=1およびn=n、第2実効層24(j=2)の場合にはn=1.0およびn=n、第3実効層26(j=3)の場合にはn=nおよびn=nとなる。
上記式(8)および(9)から明らかなように、各実効層22〜26の有効屈折率は、設計波長以下の3層構造28(凹凸構造12)を構成する種々の材料の屈折率に依存しており、各実効層22〜26間の屈折率の差を大きくするため、基板14の本体14aおよび凹凸構造12の凸部12aに屈折率が低い基板材料を用いることが好ましく、さらに、被覆膜20に屈折率が高い被覆膜材料を用いることが好ましい。
本発明に係る偏光分離素子10は、以下に示す手順に従って設計されたものであるのが好ましい。
まず、基板14の凹凸構造12の凸部12aおよび被覆膜20の屈折率(第1被服膜16と第2被服膜18とが異なる場合はそれぞれの屈折率)に対して、上記式(8)および(9)を用いて、入射光のTE波とTM波に対する各実効層22〜26(j=1〜3)における有効屈折率nTE(j)およびnTM(j)を求める。
次に、求められた各実効層22〜26の有効屈折率nTE(j)およびnTM(j)を用いて、設計波長λの光が垂直に入射した場合に各実効層22〜26におけるTE波の位相遅れがλ/4の奇数倍になるように、各実効層22〜26の厚さ(D、D−D、D)を求めて、偏光分離素子10を設計する。
こうして、上記式(2)から(9)を用いて各実効層22〜26の有効屈折率nTE(j)およびnTM(j)を計算し、垂直入射光に対して各偏光成分(TE波、TM波)の透過率および反射率を算出することができる。
しかしながら、斜に入射した光に対して、各実効層22、24、26における有効屈折率nTE(j)およびnTM(j)は、上記式(2)〜(9)によって正確に計算することができないため、斜入射光の各偏光成分(TE波、TM波)の透過率および反射率を求めることができない。このため、このような多層構造膜の透過率および反射率の正確な計算法として格子厳密電磁界解析法がある。格子厳密電磁界解析法としては、例えば、非特許文献4:F. Montiel and M. Neviere "Differential theory of gratings: extension to deep gratings of arbitrary profile and permittivity through the R-matrix propagation algorithm," Journal of the Optical Society of America A, Vol. 11, P3241-3252に詳しく記述されているものを用いることができる。
本発明においては、各実効層22、24、26における有効屈折率nTE(j)およびnTM(j)は、この格子厳密電磁界解析法を用いて数値計算で求めることができる。
以下では、非特許文献4に記載された格子厳密電磁界解析法による計算法をプログラム化にして、各偏光成分(TE波、TM波)の反射率および透過率を求めた。
図2は、こうして求められた設計波長λの入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率と入射角度との関係を示すグラフである。図2において、設計波長λは、550nm、基板14の凸部12aの屈折率nは、1.5、被覆膜20(第1、第2被服膜16、18)の屈折率nは、2.5、基板14の凹凸構造12の周期Tは、220nm、凸部12aの幅tは、110nm、凸部12aの高さDは、180nm、被覆膜20(第1、第2被服膜16、18)の厚さDは、70nmであり、3層構造28の各実効層22、24、26の膜厚D、D−D、Dは、それぞれ、70nm、110nm、70nmであった。
図2から明らかなように、波長550nmの垂直入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率は、それぞれ約64%および77%で最も低く、入射角度が大きくなるにつれて波長550nmの斜入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率は、大きくなり、45度の斜入射光で、それぞれ約89%および91%となり、TE波の反射率は、55度以上で略100%となり、TM波の透過率は、50度で92%のピークとなった。
図3は、図2と同様の3層構造28を用いているが、設計波長λを変化させた場合における、すなわち、垂直入射光の設計波長λに対する垂直入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率を示すグラフである。
図3から明らかなように、垂直入射光のTE波の反射率は、上に凸の曲線となり、480nmで略60%に近づき、500nmで60%を超え、530nm〜560nmで約64%のピークとなり、620nmで60%となり、650nmでも略56%であった。これに対し、垂直入射光のTM波の透過率は、TE波の反射率に比べて変化は大きくないが逆に下に凸の曲線となり、480nm〜520nmで約75%ボトム(底)となり、550nmでは約77%となり、590nmで略80%となり、650nmでも略85%であった。
以上の結果から、ここで、設計波長550nmに対して設計された本発明の第1の実施形態の偏光分離素子10は、480nm〜650nmの波長の入射光に対して、良好な偏光分離機能を持つことが分かる。
本実施形態の偏光分離素子10は、このように優れた偏光分離機能を持つものであるので、液晶ディスプレイのバックライト等や、液晶プロジェクタや、光ピックアップ系デバイス、光通信デバイス、光応用計測デバイスなどに応用した場合に、光利用効率を向上させることができる。
図4は、本発明に係る偏光分離素子の他の実施形態(第2実施形態)の一部を模式的に示す断面図である。なお、図4に示す偏光分離素子の第2実施形態の断面構造も、図中紙面に垂直方向においても連続しており、また、図中左右方向に畝状の表面形状が基板上に形成され、周期凹凸構造が連続しているものである。
図4に示す偏光分離素子30は、図1に示す偏光分離素子10と、第3被服膜32が設けられている点を除いて、同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図4に示す偏光分離素子30は、凸部12aおよび凹部12bからなる周期的な凹凸構造(サブ波長構造)12を上面に有する低屈折率の基板14と、凸部12aの上面に堆積(形成)された高屈折率の第1被覆膜16と、凹部12bの基板14の本体14aの上面に充填(形成)され、凸部12aの高さ(D)より膜厚(D’)の高屈折率の薄い第2被覆膜18と、第1被覆膜16の上面に、すなわち、3層構造28の上にその全面を覆う(カバーする)ように設けられる第3被服膜32とを備える。
したがって、本第2の実施形態の偏光分離素子30も、基板14の本体14aと第3被服膜32との間に、上述の第1の実施形態の偏光分離素子10と同様に、凸部12aの上面の高屈折率の第1被覆膜16とその間の空気層によって形成される第1実効層22と、その側面が第2被服膜18で覆われていない低屈折率の凸部12aの部分およびその間の空気層によって形成される第2実効層24と、凹部12bに充填される高屈折率の第2被服膜18およびその間の凸部12aの部分によって形成される第3実効層26とを有する3層構造28を有する。
ここで、第3被覆膜32は、基板14の凸部12aの第1被覆膜16の上面に全面に、すなわち、3層構造28上に全面にカバーするように形成されるカバー層であって、基板14の上面の凹凸構造12、ならびに第1被覆膜16および第2被覆膜18などの被覆膜20からなる3層構造28を保護するとともに、TM波の透過率を向上させる、すなわち改善させるためのものである。第3被覆膜32は、基板14の凸部12aの第1被覆膜16の上面に、凹部12bの第2被覆膜18の上方も含めて全面に透明なカバー層として形成できれば、特に制限的ではなく、どのようなものであっても良いし、どのような透明材料を用いて形成しても良いし、どのような方法によって形成しても良い。
例えば、第3被覆膜32としては、基板14の3層構造28上(凸部12aの第1被覆膜16の上面)に全面に透明性材料を塗布することにより形成されるが、この他、例えば真空蒸着法、CVD法、スパッタ法等を用いて成膜することにより、形成しても良い。
また、第3被覆膜32を形成する透明性材料としては、カバー層として機能できる材料であれば、特に制限的ではなく、例えば、アクリル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリエチルアクリレート、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネット等の樹脂およびSiO2、TiO2、HfO2等の誘電体材料などを挙げることができる。
なお、本実施形態の偏光分離素子30においても、上述した第1実施形態の偏光分離素子10の場合と同様にして、入射光の各偏光成分(TE波、TM波)の反射率および透過率を求めた。
図5は、こうして求められた設計波長λの入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率とカバー層の厚み(第3被覆膜32の膜厚)との関係を示すグラフ、すなわち、第3被覆膜32の膜厚Dを0nmから400nmまで変化させた場合における、入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率を示すグラフである。
図5において、使用される設計波長λは、550nm、基板14の凸部12aの屈折率nは、1.5、被覆膜20(第1、第2被服膜16、18)の屈折率nは、2.5、第3被覆膜32の屈折率nは、1.5、基板14の凹凸構造12の周期Tは、220nm、凸部12aの幅tは、110nm、凸部12aの高さDは、180nm、被覆膜20(第1、第2被服膜16、18)の厚さDは、70nmであり、3層構造28の各実効層22、24、26の膜厚D、D−D、Dは、それぞれ70nm、110nm、70nmであり、第3被覆膜32の厚さDは、0nm〜400nmまで変化させた。
図5から明らかなように、第3被覆膜32の厚さDが、70nm〜170nmおよび260nm〜350nmの範囲で、波長550nmの垂直入射光のTE波の反射率の改善が見られたが、第3被覆膜32を設けると、垂直入射光のTM波の透過率の改善は見られず、むしろ低下したが、140nm〜200nmおよび320nm〜390nmでは、あまり低下が見られず、140nm〜170nmおよび320nm〜350nmでは、TE波の反射率の改善のみを享受できることが分かる。
図6は、本実施形態の偏光分離素子30の設計波長λの入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率と入射角度との関係を示すグラフである。図6において、図5と同様の3層構造28を用いているが、第3被覆膜32の厚さDを320nmに固定した。
図6から明らかなように、波長550nmの垂直入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率は、それぞれ約58%および93%であり、波長550nmの斜入射光のTE波の反射率は、入射角度が大きくなるにつれて大きくなり、45度の斜入射光で約73%、57度で略100%となり、一方、斜入射光のTM波の透過率は、20度近傍で約95%のピークとなり、45度の斜入射光で約87%、50度近傍で約86%のボトム(底)となった。
図7は、図6と同様の構造の偏光分離素子30を用いているが、垂直入射光の設計波長λに対する垂直入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率を示すグラフである。
図3から明らかなように、垂直入射光のTE波の反射率は、略上に凸の曲線となり、490nmで60%となり、510nm〜520nmで約64%のピークとなり、550nmで58%となり、630nmで急激に低下して約31%のボトム(底)となり、650nmでは33%であった。これに対し、垂直入射光のTM波の透過率は、TE波の反射率に比べて変化は大きくないが、480nmで約74%ボトム(底)となり、550nmでは約93%となり、560nm〜570nmで略95%のピークとなり、650nmでは略74%であった。
以上の結果から、設計波長550nmに対して設計された本発明の第2の実施形態の偏光分離素子30は、480nm〜560nmの波長の入射光に対して、良好な偏光分離機能を持つことが分かる。
なお、本実施形態の偏光分離素子30は、偏光分離機能を発揮する3層構造28の上面に第3被覆膜32を備えており、3層構造28の全面が第3被覆膜32でカバーされているので、3層構造28が保護され、偏光分離機能を保護できるのが分かる。
また、本実施形態の偏光分離素子30も、このように優れた偏光分離機能を持つものであるので、液晶ディスプレイのバックライト等や、液晶プロジェクタや、光ピックアップ系デバイス、光通信デバイス、光応用計測デバイスなどに応用した場合に、光利用効率を向上させることができる。
以下に、本発明に係る偏光分離素子およびその製造方法を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
石英基板を用いて、図1に示す第1実施形態の偏光分離素子10を作製した。
まず、石英基板上に周期Tが220nm、凸部の周期方向の幅が120nm、溝深さが180nmの凹凸構造を形成した。
次に、この凹凸構造を、紫外線硬化樹脂上に転写した。具体的には、基板本体14aとなるアクリル基板と石英基板の凹凸構造との間に厚さ500nmの紫外線硬化樹脂を配置し、石英基板側から紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂を硬化させ、硬化後に紫外線硬化樹脂を剥離した。この処理によって、アクリル基板上の紫外線硬化樹脂に周期Tが220nm、凸部12aの周期方向の幅tが100nm、凸部12aの高さDが180nmの凹凸構造12を転写した。こうして、上面に凹凸構造12が形成された、紫外線硬化樹脂およびアクリル基板からなる基板14を容易に、かつ良好な生産性で製造することができた。
最後に、スパッタ装置を用いて、被覆膜20として、酸化ニオブ(Nb:屈折率2.5)を紫外線硬化樹脂の凹凸構造12上に70nmの厚さで成膜した。
こうして、低屈折率の紫外線硬化樹脂製の凸部12aが配列され、その簡に凹部12bが形成された凹凸構造12を持ち、紫外線硬化樹脂の凹凸構造12の下側部分とアクリル基板とを基板本体14aとし、凹凸構造12の上面に高屈折率の酸化ニオブ被覆膜20を持つ本実施形態の偏光分離素子10を作製することができた。
上記のようにして作製された偏光分離素子10に、He−Neレーザ光(波長633nm)を入射光として照射し、入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率を測定した。その結果、TE波の反射率およびTM波の透過率は、垂直入射光に対して、それぞれ、60%および80%であり、45度の入射角度に対して、それぞれ、86%および91%であり、良好な偏光分離機能を示した。
(実施例2)
実施例1において作製された偏光分離素子10の第1の被覆膜16の上部に塗布工程でアクリル透明材料を塗布して乾燥させ、透明薄膜を第3の被覆膜32として形成して、図4に示す第2の実施形態の偏光分離素子30を作製した。第3の被覆膜(透明薄膜)32の屈折率は、1.5であり、その厚みは、320nmであった。
上記のようにして作製された偏光分離素子30に、He−Neレーザ光を入射光として照射し、入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率を測定した。その結果、TE波の反射率およびTM波の透過率は、垂直入射光に対して、それぞれ61%および88%であった。45度の入射角度に対してそれぞれ90%および95%であり、実施例1の偏光分離素子10より、さらに、良好な偏光分離機能を示した。
以上の実施例1および2の結果から明らかなように、本発明の効果は明らかである。
以上、本発明に係る偏光分離素子およびその製造方法について種々の実施形態および種々の実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
本発明に係る偏光分離素子の一実施形態の一部を模式的に示す断面図である。 図1に示す偏光分離素子における、入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率と入射角度との関係を示すグラフである。 図2と同様の構造の偏光分離素子における、垂直入射光の設計波長に対する垂直入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率を示すグラフである。 本発明に係る偏光分離素子の他の実施形態の一部を模式的に示す断面図である。 図4に示す偏光分離素子における、入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率とカバー層の厚みとの関係を示すグラフである。 図4に示す偏光分離素子における、入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率と入射角度との関係を示すグラフである。 図6と同様の構造の偏光分離素子における、垂直入射光の設計波長に対する垂直入射光のTE波の反射率およびTM波の透過率を示すグラフである。
符号の説明
10,30 偏光分離素子
12 凹凸構造
12a 凹凸構造の凸部
12b 凹凸構造の凹部
14 基板
16 第1被覆膜
18 第2被覆膜
20 被覆膜
22 第1実効層
24 第2実効層
26 第3実効層
28 3層構造
32 第3被覆膜(カバー層)

Claims (14)

  1. 断面形状が矩形形状または楔型状である凸部が設計波長または使用波長より短い周期で配列された凹凸構造を上面に有する基板と、
    前記凸部より高い屈折率を有し、前記凹凸構造の前記凸部に形成された第1被覆膜と、
    前記凸部より高い屈折率を有し、前記凹凸構造上の凹部に形成された第2被覆膜とを備え、
    前記第2被覆膜の膜厚は、前記基板上の前記凹凸構造の前記凸部の高さより薄いことを特徴とする偏光分離素子。
  2. 前記第1被覆膜の膜厚は、前記基板上の前記凹凸構造の前記凸部の高さより薄い請求項1に記載の偏光分離素子。
  3. 前記第1および第2被覆膜の膜厚は、略同一である請求項1または2に記載の偏光分離素子。
  4. さらに、前記凹凸構造を覆うように、前記第1被覆膜の上面に形成された透明な第3被覆膜を備える請求項1〜3のいずれかに記載の偏光分離素子。
  5. 前記第1および第2被覆膜は、それぞれ、前記凹凸構造の前記凸部および前記凹部に積層され、前記第3被覆膜は、前記第1被覆膜の上面に積層される請求項1〜4のいずれかに記載の偏光分離素子。
  6. 前記凸部、前記第1および第2被覆膜の屈折率に対して、前記第1被覆膜およびその間の空気層からなる第1実効層と、前記凸部の高さ方向においてその側面が前記第2被服膜で覆われていない部分およびその間の空気層からなる第2実効層と、前記第2被服膜およびその間の前記凸部からなる第3実効層とするとき、前記第1、第2および記第3実効層の各層の厚みは、前記凸部、前記第1および第2被覆膜の屈折率に対して、前記設計波長または使用波長を持つ入射光から分離される互いに直交する2つの偏光成分について求められる各層の有効屈折率を用いて、前記設計波長または使用波長の垂直入射光に対して、各層における前記2つの偏光成分の一方の偏光波成分の位相遅れが前記設計波長または使用波長の1/4の奇数倍となるように、設計された厚みである請求項1〜5のいずれかに記載の偏光分離素子。
  7. 基板上面に、断面形状が矩形形状または楔型状である凸部が設計波長または使用波長より短い周期で配列された凹凸構造を形成し、
    前記凸部より高い屈折率を持つ第1および第2被覆膜を、それぞれ前記凹凸構造の前記凸部および凹部に、少なくとも該凹部上の前記第2被覆膜の膜厚が前記凸部の高さより低くなるように、成膜することを特徴とする偏光分離素子の製造方法。
  8. 前記凹凸構造は、射出成形法、プレス成形法、エッチング処理法のいずれかによって形成される請求項7に記載の偏光分離素子の製造方法。
  9. 前記第1および第2被覆膜の成膜は、それぞれ電子ビーム蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法のいずれかによって行なわれる請求項7または8に記載の偏光分離素子の製造方法。
  10. 前記第1被覆膜は、前記基板上の前記凹凸構造の前記凸部の高さより薄い膜厚となるように成膜される請求項7〜9のいずれかに記載の偏光分離素子の製造方法。
  11. 前記第1および第2被覆膜は、同時に、同一の成膜法により、略同一の膜厚に成膜される請求項7〜10のいずれかに記載の偏光分離素子の製造方法
  12. さらに、前記凹凸構造を覆うように、前記第1被覆膜の上面に透明な第3被覆膜を形成する請求項7〜11のいずれかに記載の偏光分離素子の製造方法。
  13. 前記第3被覆膜の形成は、前記基板上の前記凹凸構造上への塗布によって行われる請求項7〜12のいずれかに記載の偏光分離素子の製造方法。
  14. 前記凸部、前記第1および第2被覆膜の屈折率に対して、前記第1被覆膜およびその間の空気層からなる第1実効層と、前記凸部の高さ方向においてその側面が前記第2被服膜で覆われていない部分およびその間の空気層からなる第2実効層と、前記第2被服膜およびその間の前記凸部からなる第3実効層との各層における前記2つの偏光成分の有効屈折率を求め、
    求めたこれらの有効屈折率を用いて、前記設計波長または使用波長の垂直入射光に対して、各層における前記2つの偏光成分の一方の偏光波成分の位相遅れが前記設計波長または使用波長の1/4の奇数倍となるように、各層の厚みを設計し、
    前記凹凸構造は、前記凸部の高さが前記第2および第3実効層の各層の合計厚みとなるように前記基板上に形成され、
    前記第1および第2被覆膜は、それぞれ前記第1および第3実効層の各層の厚みとなるように成膜される請求項7〜13のいずれかに記載の偏光分離素子の製造方法。
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