JP3979146B2 - 1次元フォトニック結晶を用いた光学素子およびそれを用いた光学装置 - Google Patents

1次元フォトニック結晶を用いた光学素子およびそれを用いた光学装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に光通信システム、光計測機器、レーザの外部共振器等に用いられる光学素子および分光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの急速な普及により、光ファイバ通信網の容量の増大が強く求められており、その手段としてWDM(波長多重)通信の開発が急速に進められている。WDM通信においては、わずかな波長差の光が個別の情報を伝達することから、波長選択性の良い光分波器、フィルタ、アイソレータといった光学機能素子が必要である。上記機能素子においては、量産性、小型化、集積化、安定性などが強く求められていることは言うまでもない。
【0003】
波長多重光通信のように人為的に複数の波長が多重化された光信号を分波・検出する目的や、分光測定のように被測定光のスペクトル解析等の目的に光分波器(または分光装置)が用いられる。この光分波器には、プリズム、波長フィルタ、回折格子等の分光素子が必要とされる。とくに回折格子は代表的な分光素子であり、石英やシリコン基板などの表面に周期的な微細凹凸構造を形成したものが用いられている。その周期的凹凸構造によって発生する回折光が互いに干渉し、ある特定波長の光が特定の方向に出射される。この特性が分波素子として利用されている。
【0004】
しかし、回折格子からの出射角の波長による変化量には実用的な限界があり、回折格子を使用した光分波器の性能を向上させるためには装置を大型化せざるを得ないという問題点があった。このような問題点を解決するためには、回折格子より波長に対して大きな角度変化を生じる光学素子が必要となる。回折格子よりも大きい波長分散を示す光学素子としては、屈折率の異なる誘電体を光の波長程度の周期で並べた構造を有するフォトニック結晶がある。フォトニック結晶には、
・フォトニックバンドギャップによる光の閉じ込め
・特異なバンド構造による非常に大きな波長分散
・伝播光の群速度異常
といった特性があることは良く知られており、このような特性を利用した数多くの光学素子が提案あるいは研究されている。
【0005】
このようなフォトニック結晶は、周期構造を有する方向の数によって、1次元、2次元、3次元に分類することができる。最も簡単な1次元フォトニック結晶としては、たとえば平行平面基板に2種類の誘電体薄膜(SiO2とTiO2など)を交互に積層した多層膜フィルタがあり、すでに実用化している。上記構造は周期方向にフォトニックバンドギャップを有するため、特定の波長域の入射光のみを反射するはたらきがある。また、斜め入射光に対するフォトニックバンドギャップの波長域が偏光方向によって異なることから、偏光分離フィルタとして機能させることもできる。
【0006】
2次元フォトニック結晶としては、フォトリソグラフィー技術を応用して、基板上の薄膜に空気孔を並べた構造が良く研究されている。空気孔の配列に線状欠陥をつくれば、その部分を導波路とすることができる。
【0007】
3次元フォトニック結晶では、全方向にわたるフォトニックバンドギャップを実現すると立体的な導波路が実現できることから、1mm角程度の素子中に多くの光学素子を組み込むことができるものと期待されている。
【0008】
1次元、2次元、3次元のなかで、1次元フォトニック結晶は製作しやすいという大きな長所がある反面、上記の多層膜フィルタ以外にフォトニック結晶としての特性を生かす方法が少ないことから、2次元、次元結晶ほどには研究されてこなかった。しかし、1次元結晶において、特異なバンド構造による非常に大きな波長分散を利用することは充分可能であり、その手段として多層膜層の端面、すなわち多層構造が露出している面を、光入射面もしくは光出射面として使用することができる。
【0009】
本発明者らの研究によると、多層膜層の端面に略垂直な入射光を入れると、周期性のない方向に光が伝播して、フォトニック結晶を利用した分光素子としての特性を引き出すことができることが明らかになっている(特願2001−266715)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
後述するように、本発明者らの電磁波シミュレーションによると、1次元フォトニック結晶(周期的多層膜)の端面に単色光の平面波を略垂直に入射させた場合、いくつかのバンドに対応する波動に分かれて多層膜層内を伝播することがわかる。多層膜の周期に対して入射光の波長が充分に長い場合には第1バンドによる波動(以下、第1バンド光と呼ぶ)のみが伝播するが、波長が短くなると第3バンド光、第5バンド光といった高次の波動も順次伝播するようになる。従って、入射波長にかかわらず、入射光のエネルギーの一部は必ず第1バンド光となって伝播することになる。
【0011】
ところが、第3、第5といった高次のバンド光は特異なバンド構造に由来する非常に大きな波長分散を有するが、第1バンド光はそうではなく波長分散性が小さい。したがって、第1バンド光は分光素子として利用価値のほとんど無い無駄な光であり、入射光の利用効率を落とすだけではなく、迷光として素子のS/N比を悪くする恐れもある。
【0012】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、高次のバンド光のみを利用して高い効率の分光性能を有する光学素子およびそれを用いた分光装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では、1次元フォトニック結晶の端面への入射光に、フォトニック結晶と同じ周期と方向の位相変調を与え、フォトニック結晶内において特定の高次バンド光のみを伝播させることにより、分光装置として利用する1次元フォトニック結晶の表面からの出射光の強度を増大させ、すなわち入射光の利用効率を向上させる。また、上記フォトニック結晶に付加する構造の作用により、フォトニック結晶の片側もしくは両側に出射光を配分し、また強度を調整する。
【0014】
上記作用は、以下の手段により達成される。
本発明の光学素子は多層構造体により構成され、この多層構造体は一定周期を有する1次元フォトニック結晶とみなせる周期構造体であり、多層構造体の層面と略垂直な端面を光入射面とする。このような光学素子において、多層構造の方向に周期構造体の周期と同一の周期を有する位相変調波を発生する位相変調手段を光入射面に当接もしくは近接して配設する。そして多層構造体の層面と略平行な一方もしくは両方の表面を光出射面とし、 この光学素子に入射する光の真空中での波長λ 0 に対応する、フォトニック結晶の最低次ではない結合性バンドの波数ベクトルの、層面と平行な方向についての大きさを ks 、多層構造体の両側表面に接する媒体の屈折率をそれぞれn s 1 、n s 2 (ただしn s 2 ≦n s 1 )とするとき、
0<k s ・λ 0 /(2π・n s 2 )<1
の条件を満たすようにする。この場合、出射光は多層構造体の両側に生じる。
【0015】
また、上記とは逆に、多層構造体の層面と略平行な表面を光入射面とし、多層構造体の層面と略垂直な端面を光出射面とすることもできる。
【0016】
また、
0<ks・λ0/(2π・ns1)<1
1<ks・λ0/(2π・ns2
の条件を満たすようにする。この場合、出射光は屈折率ns1を有する媒体側のみに出射光が生じる。
【0017】
また、
0<ks・λ0/(2π・ns)<1
なる条件を満たす屈折率nsの媒体と周期構造部分との間に、第2の周期構造部分を設ける。これによってこの媒体側への出射光強度を低下させることができる。
【0018】
また、
0<ks・λ0/(2π・ns)<1
なる条件を満たす屈折率nsの媒体と前記周期構造部分との間に、反射層を設ける。これによってこの媒体側への出射光の発生を抑えることができる。この反射層は、フォトニック結晶としての周期構造部分とは異なる周期構造によるのが望ましい。
【0019】
上記の多層構造体によって構成される光学素子と、多層構造体の周期構造部分の端面に複数波長の混合した光束を入射させる手段と、多層構造体の光出射面から波長ごとに異なる角度で出射される光線を検知する手段とを用いて分光装置として機能する光学装置を構成することができる。
【0020】
また、上記光学素子と光学的に結合した半導体レーザと、光学素子からの出射光を反射して光学素子に戻す反射鏡とを用いて外部共振器を備えたレーザ発振装置として機能する光学装置を構成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の基本構造をなす周期的多層膜層を模式的に示した断面図である。平行平面基板2(材質は媒体M2とする)の表面に周期的多層膜層1を形成する。多層膜は、例えば厚さtAの物質A(屈折率nA)と厚さtBの物質B(屈折率nB)を交互に積み重ねた周期a=(tA+tB)の構造とする。多層膜層の表面は媒体M1(図1の場合は空気)と接しているものとする。
【0022】
図1における周期的多層膜の端面1aから真空中の波長λ0の光束3を入射させたとき、この光がこの多層膜内でどのように伝搬するかを解析すると、一定条件においてこの周期的多層膜はいわゆるフォトニック結晶として作用し、伝搬する光に特異な効果を発現させることがわかる。
【0023】
フォトニック結晶内を伝播する光の特性は、フォトニックバンドを計算し図示することにより知ることができる。バンド計算の方法は、たとえば、"Photonic Crystals", Princeton University Press (1995) あるいは、Physical Review B 44巻、16号、p.8565、1991年、などに詳しく述べられている。
【0024】
図1に示す周期的多層膜はY方向(積層方向)には無限に続く周期構造を有し、XおよびZ方向(層面の広がる方向)には無限に広がっているものと仮定する。図2、図3は、
nA=1.44(tA=0.5a)
nB=2.18(tB=0.5a)
の層を交互に重ねた周期aの多層構造体について、Z軸方向(X軸方向も同じ)における平面波法によるバンド計算の結果を、TE偏光(図2)及びTM偏光(図3)の第1〜第3バンドについて示したものである。ここで、TE偏光は電場の向きがX軸方向である偏光を、TM偏光は磁場の向きがX軸方向である偏光をそれぞれ表わす。
【0025】
図2、図3の横軸はZ軸方向の波数ベクトルkzの大きさであり、縦軸は規格化周波数
ωa/2πc
である。ここで、ωは入射する光の角周波数、aは構造の周期、cは真空中での光速である。規格化周波数は、真空中の入射光波長λ0を用いて、a/λ0とも表わすことができるので、以下ではa/λ0と記述する。Z軸方向には周期性がないので、図2、図3の横軸にはブリルアンゾーンの境界が存在せず、どこまでも広がっている。
【0026】
図2に示すように、入射光の真空中の波長がλAの場合、フォトニック結晶内では第1バンドに対応する波数ベクトルkA1が存在する。換言すると、波長
λA1=2π/kA1
の波動としてフォトニック結晶内をZ軸方向に伝播する(以下、第1バンド光と呼ぶ)。
ところが、入射光の真空中の波長がλBの場合には、第1、第3バンドに対応する波数ベクトルkB1、kB3が存在する。ここで、第2バンドは「非結合性」であるため無視される。従って、波長λB1=2π/kB1の第1バンド光、および波長λB3=2π/kB3の波動(以下、第3バンド光とする)がそれぞれフォトニック結晶内をZ軸方向に伝播する。なお、非結合性バンドについての理論は、以下の文献に詳しく記述されている。
K.Sakoda “Optical Properties of Photonic Crystals” Springer-Verlag (2001).
【0027】
ここで、真空中での波長(λA、λBなど)を、対応するフォトニック結晶中の波長(λA1、λB3など)で除した数値を「実効屈折率」と定義する。図3から理解できるように、第1バンドのa/λ0(縦軸)とkz(横軸)はほぼ比例するため、実効屈折率もλ0の変化に対してほとんど不変である。しかし、第3バンド光は実効屈折率がλ0により大きく変化し、図2、図3より明らかなように実効屈折率が1未満になることもある。
【0028】
図4は波長λ0の入射光が周期的多層構造体の端面に垂直入射したときのZ軸方向への第3バンド伝播光(実効屈折率をn3する)と、多層構造体の両側の表面に接する媒体M1(屈折率n1)、M2(屈折率n2)を図示したものである。
【0029】
多層膜層1の端面から真空中の波長λ0の光束3を入射させると、一部の光は多層膜層1内部での導波光4となるが、一部の光は媒体M1側への屈折光5あるいは媒体M2への屈折光6となる。この屈折光5および6の方向(角度θ1、θ2)は波長λ0に対してほぼ一定であり、指向性の非常に良い光束となる。また、θ1、θ2の値はλ0が異なると大きく変化するため、高分解能の分光素子として利用することができる。
【0030】
ここで、屈折率が均質な2つの媒体の境界における光の屈折を作図によって表現する方法を図5を用いて説明する。屈折率nAの均質媒体Aと屈折率nBの均質媒体B(nA<nBとする)の媒体A側境界面近傍を、境界面と平行に進む光線RAは、角度θの屈折光RBとなって媒体B側に放出される。この角度θは、半径がnAとnBに比例した2つの円CA、CBを用いた作図によって求めることができる。
【0031】
周期的多層膜の場合でも、実効屈折率neffを用いて同様の作図により屈折角θ1、θ2 を求めることができる(図6)。ここで、 3 1, 2よりも大きければ、第3バンド伝播光は界面での全反射によって多層膜層1の内部に閉じ込めることができ、M1,M2側には出ていかず多層膜層1内を伝播し続けることになる。
【0032】
第1バンド光は通常の均質媒体と同程度の波長分散しか起こさないのに対して、第3バンド光は前述したように実効屈折率が入射波長により大きく変化するため、非常に大きい波長分散を示す。これは、いわゆるスーパープリズム効果の一種である。スーパープリズム効果は、以下の文献等で提唱されている。
Physical Review B、58巻、16号、p.R10096、1998年
【0033】
図2、図3には示していないが、第4以上のバンドも大きい波長分散を示す。しかし、高次のバンドは後述する「節」の数が増えるので、第2、第3といった低次のバンドを利用することが望ましい。ただし、上述したように「非結合性」バンドは利用できないので、望ましいバンドは「最低次から2番目の結合性バンド」であり、図2、図3においては第3バンドがこれに相当する。
【0034】
また、図1の周期的多層膜層はX軸方向とY軸方向の構造に大きな違いがあるため、偏光方向により実効屈折率は異なる値となる。これは、図2(TE偏光)と図3(TM偏光)のグラフが異なることからも明らかである。従って、周期的多層膜層の伝播光には偏光分離の作用があり、たとえば波長による分光と偏光分離を同時に行なう、といった利用のしかたも可能である。このため、回折格子と偏光分離素子の組合せによる機能を単一の素子で実現でき、光学系を単純化することもできる。
ただし、1次元フォトニック結晶の場合、kzが小さい領域(図2、図3では縦軸に近い領域)における高次バンド(第2以上)のTEとTMの差は非常に小さいので、この領域では実質的に偏光特性を無視することも可能となる。
【0035】
図6に示すように、屈折光は多層膜層1の両側から取り出すことができる。媒体M1の屈折率が媒体M2の屈折率より小さい場合、
(1)屈折光は、M1側、M2側ともに発生しない
(2)屈折光は、M2側のみ発生する
(3)屈折光は、M1側、M2側ともに発生する
の3種類に分類することができる。屈折光を片側に集中させたければ(2)の条件、両側で個別に利用したければ(3)の条件を選べば良い。もちろん、両媒体が同じ物であれば同じ角度の屈折光を両側に取り出すことができる。
【0036】
具体的には、M1、M2の屈折率をそれぞれn1, 2(ただし、n1≦n2)とするとき、
0<ks・λ0/(2π・n2)<1
1<ks・λ0/(2π・n1
であれば(2)の条件になり、
0<ks・λ0/(2π・n1)<1
0<ks・λ0/(2π・n2)<1
であれば(3)の条件となる。
【0037】
なお、本発明者らのシミュレーションによると、屈折角θが20°〜60°の範囲とすると特に強い屈折光が得られる。そこで、屈折角が20°〜60°となるための条件
cos60°≦ks・λ0/(2π・n)≦cos20°
がより望ましい範囲である。(nは、ns1あるいはns2を意味する)
【0038】
以上述べたように、高次バンド伝播光を利用すると非常に大きい波長分散を得ることができる。しかし、図2、図3から明らかなように、たとえば第3バンド光が伝播する場合には必ず第1バンド光も伝播している。第1バンド伝播光は上述した波長分散の効果がほとんどないので、第3バンド伝播光を利用する場合には単なる損失でしかなく、入射光エネルギーの利用効率を大きく低下させてしまうのみならず、迷光として素子のS/N比を低下させる原因ともなる。
【0039】
ところが、本発明者らの研究によると、入射光に位相変調を加えると周期的多層膜層内をたとえば第3バンド光といった高次の伝播光のみ伝播させることが可能となる。
図7(a)及び図7(b)は、物質AとBを重ね合わせた周期的多層膜(周期a)内での、Z方向における第1バンド伝播光と第3バンド伝播光の電場の強さを模式的に表わしたものである。電場の山は実線、谷は点線で表わし、線の太さは振幅の大きさを表わすものとする。
【0040】
バンド伝播光は、図7(a)に示すように電場の振幅は媒体A内と媒体B内で異なるものの、電場の山と谷はそれぞれZ軸と垂直な平面となるので、平面波に近い伝播となる。
【0041】
しかし、最低次から2番目の結合性バンド(ここでは、第3バンドであるとする)による伝播光は、図7(b)に示すように電場振幅が0となる「節」が生じ、Z方向の1構造周期は2つの領域に分割される。隣り合う領域では波動の位相が半波長ずれているため、山と谷が入れ違いに現われる。図示はしていないが、さらに高次のバンドによる伝播光では1周期内の節の数が増えて、1周期内での半波長ズレが何回も起こるようになる。
したがって、第1バンドと第3バンドがともに関与する波長(たとえば図2のλB)の入射光に対する伝播光は両者が重なった複雑な電場パターンを示すことになる(図20がその例である)。
【0042】
ところで、図8に示すように、Y方向に周期aで概略半波長差を生じる位相格子8に平面波7を入射させると、図7(b)における第3バンド伝播光に類似した電場パターンを空間10に作ることができる。ここに周期的多層膜層1の端面を置くと、第1バンド伝播光は発生せず、第3バンド伝播光のみが生じることが、本発明者らのシミュレーションにより明らかとなった。以上の結果を一般化すると、
「周期aの多層膜層に対して、同じ方向に周期aを有する適当な位相変調波を入射させると、特定の高次バンドに属する伝播光のみを得ることができる」
ということになる。
【0043】
以下、位相変調手段の条件について具体的に説明する。
最も簡便な位相変調手段は、周期的多層膜層1と同じ周期を有する位相格子8である。一般的には、図9に示すような位相格子8を設置すれば良い。本発明者らのシミュレーションによると、位相変調の特性(図9における厚さtC 、tD 、L,Gの値など)は、周期的多層膜1の特性、すなわち各層の厚さ比率と屈折率などに合わせて最適化する必要がある。また、位相変調と多層膜の周期は同調させる必要があるので、
A+tB=tC+tD
媒体Aと媒体CのY方向中心は一致
媒体Bと媒体DのY方向中心は一致
といった各条件を満たしていなければならない。
【0044】
位相格子8と周期的多層膜1の間の空間11の長さも伝播光に影響するので最適な範囲を選ばなくてはならない。また、多層膜の周期aが真空中の光の波長λ0以下の場合は、両者の間隙を空気層とすると位相格子8による±1次回折光が伝播できなくなり、反射光が多くなる。これを防ぐためには、間隙の空間11を屈折率nGの大きい媒体で満たす方法がある。具体的には、
λ0/nG<a
とすればよい。
【0045】
本発明を実施するにあたっては、周期的多層膜の端面近くに溝を形成して多層膜の一部をそのまま位相格子として用いる方法がより実用的である。この場合は図9における、
媒体Aと媒体Cは同じ
媒体Bと媒体Dは同じ
A=tC
B=tD
の条件に相当する。位相格子の厚さと溝の幅は調整して第3バンド光のみが効率良く伝播するようにしなくてはならない。溝部分は空気層のままでもよいが、上記の条件を満たすために均一媒体としても良い。
【0046】
本発明における多層構造体の周期構造部分は、図1に示すような2種類の物質による構成が最も単純であるが、(1)2層の膜厚比を変える、(2)3層以上とする、(3)膜材質を3種以上とする、といった手段により平均屈折率やバンド構造の調整を行ない、分散特性や偏光特性、入射光の利用効率の改善などに役立てることも可能である。ただし各層の屈折率、厚みが一定の周期をもっている必要がある。
また、多層膜を構成する各層が、連続的に屈折率が変化するものであっても、屈折率差が確保されていれば特性はほとんど同じとなる。
【0047】
周期構造部分は一般的にはm種類(mは自然数)の物質の積層体からなる。1周期を構成する物質1、2、・・・、mの屈折率をn1、n2、・・・,nm、厚さをt1、t2、・・・、tmとする。また使用波長λにおける多層構造体一周期あたりの平均屈折率nMを
nM=(t1・n1+t2・n2+・・・+tn・nm)/a
と定義する。1周期aは、
a=t1+t2+・・・+tm
である。
【0048】
周期構造部分の平均屈折率nMは、概略
a/λ0≦0.5/nM
の範囲では第1バンドしか存在しない(図2、図3参照)。そこで、第2以上のバンドを利用するためには、多層構造の周期aは使用波長λ0に対して
λ0/2nM≦a
の関係を満たす必要がある。周期aが上記条件の範囲よりも小さくなると、第1バンド光しか伝播しないので、多層構造体の特性は平均屈折率を有する均質媒体に近いものとなってしまう。
後述する計算例に示すように、多層膜層が薄くなると波動が特に乱れやすくなるため、多層膜層の周期数は10周期以上、可能であれば15周期以上確保することが望ましい。
【0049】
本発明に用いる多層膜層の材料としては、使用波長域における透明性が確保できるものであれば特に限定はないが、一般的に多層膜の材料として用いられていて耐久性や製膜コストの点で優れたシリカ、シリコン、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、フッ化マグネシウムなどが適する材料である。上記材料は、スパッタリング、真空蒸着、イオンアシスト蒸着、プラズマCVDなどの良く知られた方法により、容易に多層膜とすることができる。
【0050】
多層膜材料の屈折率比は大きくなるほど、波長分散なども大きくなる傾向があるので、そのような特性が必要な用途に対しては高屈折率材料と低屈折率材料を組合せることが望ましい。実用的に実現できる屈折率比は、たとえば低屈折率材料として空気(屈折率:1)、高屈折率材料としてInSb(屈折率:4.21)を用いると4以上にすることができる(「微小光学ハンドブック」224頁、朝倉書店、1995年、参照)。
【0051】
多層膜材料の屈折率比が小さくなると、偏光方向による特性の違いが小さくなる傾向があるので、偏波無依存を実現するためには屈折率比の小さい組合せも有用である。ただし、屈折率比があまり小さくなると変調作用が弱くなり、期待される作用が発揮されないこともあるので、屈折率比として1.2以上確保することが望ましい。
【0052】
多層膜層の端面近傍に設ける溝は、多層膜を積層した後に、レジスト層塗布→パターニング→エッチング→レジスト層の除去、といった一般的な方法により形成することができる。溝部分の空気もしくは真空を低屈折率材料として利用することもできるし、溝部分に媒体を充填してもよい。充填する物質としては、有機樹脂、ゾル状態のガラス、溶融状態の半導体材料などを用いることができる。ゾル状態のガラスはゲル化した後に加熱して透明なガラスとすることができる。
【0053】
材料を適切に選定すれば、本発明の作用は通常使用される200nm〜20μm程度の波長範囲で発揮される。
【0054】
多層膜層の基板の材質は、伝播光の漏れ発生しない屈折率の範囲の材料であれば特に限定はなく、ソーダライムガラス、光学ガラス、シリカ、シリコン、あるいはガリウム砒素などの化合物半導体などが適する材料である。温度特性などの限定が小さければ、プラスチック材料でも良い。
基板を用いず、多層膜層だけから構成される、いわゆるエアーブリッジ構造としてもよい。
【0055】
上述したように、屈折光を多層構造体の片側のみに取り出して利用する場合は、図6における
低屈折率媒体M1(空気層)
高屈折率媒体M2(基板)
として、周期構造の周期aを調整すれば、M1側の屈折光の発生をなくして屈折光を基板側に集中させることができるので最も簡単であるが、多層膜層内の有効屈折率が1を超えていなければならない。多層膜層内の有効屈折率を1以下とし、かつ屈折光を片側のみから取り出すには、多層膜層と片側の媒体の間に何らかの反射層を設ける必要がある。
【0056】
図10は、基板2と多層膜層1の間に反射層12(たとえば金属膜)を挟んだ構造である。このようにすると、入射光3は位相格子8に入射し、その作用を受けたのち、空間11を介して多層膜層1の層面にほぼ垂直な面から入射する。多層膜層1中ではほぼ第3バイド光のみからなる伝搬光4が効率よく層面に平行な方向に伝搬するが、屈折光5は反射層12の作用によって空気側にだけ集中して出射する。
【0057】
図11は、基板2と多層膜層1の間に、第2の多層膜層13を挟みこんだ構造である。その他の各部は図10に示すのと同じ符号で示し、説明は省略する(以下同様)。第1の多層膜層1内の高次バンド伝播光に対応するフォトニックバンドが第2の多層膜層13内に存在しなければ、第2の多層膜層13は伝播光を閉じ込めるはたらきをなす。
【0058】
第2の多層膜層としては、第1の多層膜層と同一の材料を用いて、周期あるいは膜厚比を異なったものとする方法が、成膜工程を単純化できる点から最も簡単である。具体的には、たとえば周期を第1の多層膜層の周期aよりも小さくして、伝播光の周波数に対応する高次バンドをなくせばよい。後述の計算例に示すように、伝播光の電場は第2の多層膜層にもエバネッセント光として浸み出すので、閉じこめを確実なものとするためには、第2の多層膜層の厚み(すなわち周期数)をある程度大きくする必要がある。
【0059】
図12は、屈折光5を取り出す側に第3の多層膜層14を設置した場合である。第3の多層膜層14は、幾分薄く(周期数を少なく)してあるので伝播光の閉じ込めは不完全となり、屈折光5の強度を弱くするはたらきをなす。屈折光の強度が弱くなっても屈折光の総量は変わらないので、Z軸方向での屈折光の放射される範囲が大きくなる。従って、屈折光5の光束がより太くなり回折による広がりが減少するので、波長分解能を大きくする効果がある。
【0060】
次に、多層膜層の表面からの屈折光を取り出す方法について説明する。
屈折光を基板側のみに取り出す場合は、基板と空気との界面を利用して図13〜15に示すような構成とすることができる。図13は、基板2側の屈折光5を基板の端面2aでもう一度屈折させたものであり、波長分散の角度差は基板内部よりも空気中での値のほうが大きくなる。図14は、基板端面2aに傾きをつけたものであり、空気中の波長分散を最大化することも可能となる。平行平面基板に斜め面を有する媒体を接着しても同様な作用が得られる。図15は、図13同様の構造で、空気側表面に反射層12を設けた場合である。
【0061】
図16は上記の光学系を平板状光回路として構成し、光学的な処理を基板表面に平行な方向だけで行えるようにした例を示している。平面基板32上に基板表面と平行な方向に周期を有する多層構造体31を形成する。位相格子38は多層構造体31の端部に溝40を形成することにより設けることができる。入射光3は、多層構造体31の表面31bから波長に依存する角度θ 1 を有する屈折光5となって基板32に平行に出射される。
【0062】
このような多層構造体の一例としては、基板32上の均質な物質に基板表面に垂直で、互いに平行な深い溝を形成した構造があげられる。この場合は、溝部分の空気もしくは真空を低屈折率材料として利用することもできるし、溝部分に何らかの媒体を充填してもよい。充填する物質としては、有機樹脂、ゾル状態のガラス、溶融状態の半導体材料などを用いることができる。ゾル状態のガラスはゲル化した後に加熱して透明なガラスとすることができる。
【0063】
本発明の構成は、入射光と出射光を入れ換えて使用することもできる。すなわち、多層構造体の層面に平行な表面に対し、真空中での波長がλ0の光を入射する場合、所定の角度の方向から入射した場合だけ、多層構造体の層面に平行な方向に光が伝搬し、多層構造体の層面にほぼ垂直な端面から出射光が得られる。
以下、本発明の具体的な構成例について説明する。
【0064】
[計算例]
位相格子と組合せた1次元フォトニック結晶内部の伝播と屈折光とを、有限要素法によりシミュレーションした結果を以下に列挙する。使用したソフトウェアは日本総合研究所製のJMAGである。
【0065】
計算モデルは図9に示すものである。1次元フォトニック結晶は均質の媒体Aと媒体Bを交互に重ね合わせた多層膜1状の構造とし、その周期をa、それぞれの厚さをtA・a、tB・a、屈折率をnA、nBとする。フォトニック結晶の垂直断面から距離Gだけ離して位相格子8を設置する。フォトニック結晶と位相格子の間の空間11は、屈折率nGの均質媒体で満たされている。
【0066】
媒体Cと媒体Dから構成される位相格子8の周期は多層膜1のそれと同じであり、媒体Cと媒体Dの厚さはtC・a、及びtD、屈折率はnCおよびnDであり、Z軸方向の長さはLとする。
位相格子8の外側は屈折率nSの空間であり、ここから真空中の波長λ0の平面波(直線偏光波)を垂直入射させる。
【0067】
[計算例1]
図9の構造について、表1に示す条件で入射光の波長を変えた場合の電磁波シミュレーションを実施した。以下の計算例、比較例では、長さはすべて周期aを基準として規格化している。
【0068】
【表1】
Figure 0003979146
【0069】
シミュレーション結果として、電場の強度分布と屈折光の角度を図17(λ0 =1.2aの場合),図18(λ0=1.3aの場合)に示す。位相格子8の作用により、多層膜層1部分の伝播光は節のある規則的なものであり、第1バンド伝播光がほとんどないことがわかる。伝播光の実効屈折率は1.00と1.44の間にあるので、屈折光6は屈折率の大きい基板2側だけに発生している。また、入射光3のわずかな波長差によって、基板側屈折光6の角度θ2が大きく変化している。
【0070】
入射光波長(λ0/a)に対する屈折角θ 2 の変化についてシミュレーション結果を、上記以外の入射光波長も含めて図19に示す。基板側屈折光6の角度変化は、Δλ0=1%当たり約0.69°であり、大きい波長分散が得られていることがわかる。
なお、図19における「バンド計算値」は、平面波法によるバンド図から求めた実効屈折率による計算値である。
【0071】
[比較計算例1]
計算例1から、位相格子部分を除いたシミュレーション結果を図20に示す。ただし、入射光3の真空波長λ0=1.2aの場合についてのみ示す。
図20では、第1バンドによる波長の短い伝播光と第3バンドによる波長の長い伝播光が重なるため、電場のパターンは図17の場合よりも複雑なものとなっている。また、図17と比較すると第3バンド伝播光が弱い分だけ屈折光6の強度も弱くなっていることがわかる。
【0072】
[計算例2]
周期的多層膜1と基板2の間に周期の短い第2の周期構造13部分を設置して、基板2側への屈折光がでないようにした場合である。多層膜の構成を表2に示す。
【0073】
【表2】
Figure 0003979146
【0074】
シミュレーション結果として、λ0 =1.66aの場合の電場強度分布を図21に示す。伝播光の実効屈折率は概略0.37と1未満であるが、第2の周期構造13により基板2側の屈折光はほとんど無くなり、空気側に強い屈折光5が発生している。
入射光波長(λ0/a)に対する屈折角θ2の変化についてシミュレーション結果を図22に示す。空気側屈折光5の角度変化は、Δλ0=1%当たり約3.1°であり、非常に大きい波長分散が得られていることがわかる。
【0075】
[計算例3]
計算例2の構成に、さらに周期的多層膜1と空気層の間に周期の短い第3の周期構造14部分を設置して、空気側への屈折光強度を弱くした場合である。多層膜の構成を表3に示す。
【0076】
【表3】
Figure 0003979146
【0077】
シミュレーション結果として、λ0=1.66aの場合の電場強度分布を図23に示す。空気側の屈折光5を図21の場合と比較すると、屈折角θ 1 は変化していないが、空気側に設置した第3の周期構造14により強度は大幅に弱くなっていることがわかる。
【0078】
[応用例1:分光装置]
図24は、本発明を応用した、波長多重(WDM)信号における、各波長の強度を個別に測定する波長モニター装置の主要部(a)および受光光学系(b)の模式図である。
多層膜層1の端面近くに溝11をつくり、その外側を位相格子8とする。また、光ファイバ15のコアを直接位相格子8部分の端面に突き当て、入射光3を入射する、入射光3は、位相格子8の作用により第3バンド伝播光として多層膜層1内を伝播しつつ、多層膜層1の表面から除々に屈折光6となって取り出される。図24(a)は、基板2側に屈折光6を取り出す場合である。光ファイバ15からの入射光3が多波長の信号を含むものであれば、各波長の光は角度差のある屈折光の光束となる。
【0079】
屈折光6は、図24(b)に示す受光光学系により波長ごとに異なった焦点を結ぶので、センサアレイ17によってそれぞれの強度を測定することができる。
なお、屈折光6の出射部分6aは図24(a)に示すように著しい楕円状となるので、出射光6bも楕円状の略ガウシアンビームとなる。このため、図24(b)に示すように円筒状のレンズ16により円形に近い焦点スポットが得られるように修正している。
【0080】
[応用例2:レーザの外部共振器]
図25は、本発明を応用した外部共振器つき半導体レーザ装置の模式図である。
基板2上に、導波路状の活性層19と多層膜層1を形成する。活性層19の片側には反射鏡20と両側の電極22を設けて、レーザ発振をさせる(電源部分は図示を省略する)。活性層19の多層膜層側から出射した光は位相格子8,空間11を通して多層膜層1内を伝搬し、多層膜層1の表面1bから屈折光5として出射される。空間に設置して反射鏡21により反射される光のうち、特定波長の光のみが多層膜層1内に戻ることができるので、この波長の光だけが共振して発振光となる。発振波長は、ミラー21の角度によって変えることができる。
【0081】
反射鏡20を部分反射鏡とすればレーザ光23を多層膜層がある側とは反対側に取り出すことができるので、この構成により波長可変レーザ装置が実現できる。また、反射鏡21を部分反射鏡とすれば斜め右上に光束の太いコリメートされたレーザ光24を取り出すことができる。なお、このような外部共振器波長可変半導体レーザの基本構成(分波素子として回折格子を用いた例)は ”The Eighth Microoptics Conference Technical Digest(2001)” の64〜67頁に掲載されている。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、多層構造体からの屈折光が良好な指向性をもち、その方向が大きな波長依存性をもつことを利用して、装置を大型化することなく高分解能の分光装置、偏光分離装置を実現することができる。多層構造の製作は既存の技術を用いて比較的安価に量産することができるので、これらの光学素子の低価格化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 周期的多層膜層内の光の伝播を示す模式図である。
【図2】 周期的多層膜のフォトニックバンド構造(TE偏光)を示す図である。
【図3】 周期的多層膜のフォトニックバンド構造(TM偏光)を示す図である。
【図4】 2種の均質媒体に挟まれた周期的多層膜内の伝播を示す図である。
【図5】 (a)均質媒体界面での屈折および(b)第3バンド伝播光の屈折を示す模式図である。
【図6】 第1バンド伝播光の電場を示す模式図である。
【図7】 第3バンド伝播光の電場を示す模式図である。
【図8】 位相格子を設けた周期的多層膜層内伝播光を示す模式図である。
【図9】 計算例における各種パラメータを示す図である。
【図10】 周期的多層膜の基板側に反射層を設置した構成を示す図である。
【図11】 周期的多層膜の基板側に第2の多層膜層を設けた構成を示す図である。
【図12】 周期的多層膜の両側に第2、第3の多層膜層を設けた構成を示す図である。
【図13】 基板側に屈折光を取り出す場合の実施例を示す模式図である。
【図14】 基板側に屈折光を取り出す場合の他の実施例を示す模式図である。
【図15】 基板側に屈折光を取り出す場合の他の実施例を示す模式図である。
【図16】 本発明の平面光回路構成による実施例を示す図である。
【図17】 計算例1のシミュレーション結果を示す図である。
【図18】 計算例1の他のシミュレーション結果を示す図である。
【図19】 計算例1のシミュレーション結果とバンド計算値とを比較した図である。
【図20】 比較計算例1のシミュレーション結果を示す図である。
【図21】 計算例2のシミュレーション結果を示す図である。
【図22】 計算例2のシミュレーション結果とバンド計算値とを比較した図である。
【図23】 計算例3のシミュレーション結果を示す図である。
【図24】 本発明を応用した分光装置の(a)主要部および(b)受光光学系を示す模式図である。
【図25】 本発明を応用した外部共振器付波長可変レーザ装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 周期的多層膜層
1a 周期的多層膜層の端面
1b 周期構造部分の表面
2 基板
2a 基板の端面
b 基板の表面
3 入射光
4 周期的多層膜層内の伝播光
5 上の媒体側もしくは空気側の屈折光
6 下の媒体側もしくは基板側の屈折光
7a 多層膜を構成する物質A
7b 多層膜を構成する物質B
8 位相格子
9 入射光(平面波)
10 位相変調波の存在する空間
11 周期的多層膜の端面近くに設けた溝
12 反射層
13 第2の多層膜層
14 第3の多層膜層
15 光ファイバ
16 円筒状レンズ
17 センサアレイ
19 活性層
20、21 反射鏡
22 電極
23 反射鏡20を部分反射鏡とした場合のレーザ光
24 反射鏡21を部分反射鏡とした場合のレーザ光

Claims (8)

  1. 多層構造体により構成され、該多層構造体は一定周期を有する1次元フォトニック結晶とみなせる周期構造体であり、該多層構造体の層面と略垂直な端面を光入射面とする光学素子において、
    多層構造の積層方向に前記周期構造体の周期と同一の周期を有する位相変調波を発生する位相変調手段が、前記光入射面に当接もしくは近接して配設され、
    前記光学素子に入射する光の真空中での波長λ 0 に対応する、前記フォトニック結晶の最低次ではない結合性バンドの波数ベクトルの、前記層面と平行な方向についての大きさを ks 、前記多層構造体の両側表面に接する媒体の屈折率をそれぞれn s 1 、n s 2 (ただしn s 2 ≦n s 1 )とするとき、
    0<k s ・λ 0 /(2π・n s 2 )<1
    の条件を満たすことにより、前記多層構造体の層面と略平行な一方もしくは両方の表面を光出射面とすることを特徴とする1次元フォトニック結晶を用いた光学素子。
  2. 多層構造体により構成され、該多層構造体は一定周期を有する1次元フォトニック結晶とみなせる周期構造体であり、該多層構造体の層面と略平行な表面を光入射面とする光学素子において、
    多層構造の積層方向に前記周期構造体の周期と同一の周期を有する位相変調波を発生する位相変調手段が、前記光出射面に当接もしくは近接して配設され、
    前記光学素子に入射する光の真空中での波長λ 0 に対応する、前記フォトニック結晶の最低次ではない結合性バンドの波数ベクトルの、前記層面と平行な方向についての大きさを ks 、前記多層構造体の両側表面に接する媒体の屈折率をそれぞれn s 1 、n s 2 (ただしn s 2 ≦n s 1 )とするとき、
    0<k s ・λ 0 /(2π・n s 2 )<1
    の条件を満たすことにより、前記多層構造体の層面と略垂直な端面を光出射面とすることを特徴とする1次元フォトニック結晶を用いた光学素子。
  3. 前記λ0、ks、ns1、ns2について
    0<ks・λ0/(2π・ns1)<1
    1<ks・λ0/(2π・ns2
    の条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の1次元フォトニック結晶を用いた光学素子。
  4. 前記λ0、ksについて
    0<ks・λ0/(2π・ns)<1
    なる条件を満たす屈折率nsの媒体と前記周期構造部分との間に、第2の周期構造部分を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の1次元フォトニック結晶を用いた光学素子。
  5. 前記λ0、ksについて
    0<ks・λ0/(2π・ns)<1
    なる条件を満たす屈折率nsの媒体と前記周期構造部分との間に、反射層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の1次元フォトニック結晶を用いた光学素子。
  6. 前記反射層は、前記周期構造部分とは異なる周期構造部分を用いたことを特徴とする請求項に記載の1次元フォトニック結晶を用いた光学素子。
  7. 請求項1に記載の多層構造体によって構成される光学素子と、該多層構造体の周期構造部分の端面に複数波長の混合した光束を入射させる手段と、前記多層構造体の光出射面から波長ごとに異なる角度で出射される光線を検知する手段とを用いて構成し分光装置として機能することを特徴とする光学装置。
  8. 請求項1に記載の多層構造体によって構成される光学素子と、該光学素子と光学的に結合した半導体レーザと、前記光学素子からの出射光を反射して該光学素子に戻す反射鏡とを用いて構成し外部共振器を備えたレーザ発振装置として機能することを特徴とする光学装置。
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