JP7334068B2 - 包装用フィルムおよび包装体 - Google Patents
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Description
包装用フィルムをリサイクルしやすいようにする観点からは、例えば、包装用フィルムをできるだけ単純な層構成とすることが考えられる。
本発明者らは、比較的低コストで汎用的な包装材料であるポリエチレンフィルムを用いて、包装用フィルムに求められることがある諸特性について検討した。検討の結果、ポリエチレン「単層」のフィルムは、例えば耐ブロッキング性の点で十分な性能を示さなかった。
ポリエチレンを含む基材層と、
ポリエチレンとは異なる樹脂を含み、かつ、前記基材層の片面に接して設けられているかまたはアンカーコート層を介して設けられているコーティング層と
を備え、
前記コーティング層の片面の一部または全部は、露出面となっており、
前記露出面の、三次元表面測定により得られる十点平均粗さSRzは0.50μm以上である包装用フィルム。
2.
1.に記載の包装用フィルムであって、
前記露出面の、三次元表面測定により得られるクルトシスSRkuは25以上である包装用フィルム。
3.
1.または2.に記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層の厚みは0.3~2.0μmである包装用フィルム。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記基材層の厚みは10~150μmである包装用フィルム。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記ポリエチレンとは異なる樹脂は、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上である包装用フィルム。
6.
1.~5.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×105mL/(m2・day・MPa)未満である、かつ/または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×105mL/(m2・day・MPa)未満である包装用フィルム。
7.
1.~6.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記基材層のガラス転移温度は-130~-120℃である包装用フィルム。
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層は、融点を有しないか、または、120~245℃の融点を有する包装用フィルム。
9.
1.~8.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層は界面活性剤を含み、
前記コーティング層中の前記界面活性剤の割合は0.8~7.5質量%である包装用フィルム。
10.
1.~9.のいずれか1つに記載の包装用フィルムにより構成された包装体。
11.
10.に記載の包装体であって、
前記コーティング層が外表面にある包装体。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
図1は、本実施形態の包装用フィルムの層構成を模式的に示した図である。本実施形態の包装用フィルムは、
・ポリエチレンを含む基材層(以下、基材層1Aとも記載する)と、
・ポリエチレンとは異なる樹脂を含み、かつ、前記基材層の片面に接して設けられているかまたはアンカーコート層を介して設けられているコーティング層(以下、コーティング層1Bとも記載する)と、
を備える。
図1の包装用フィルムにおいては、コーティング層1Bは、基材層1Aの片面に接して設けられている。別の言い方として、図1にはアンカーコート層は示されていない。
この露出面の、三次元表面測定により得られる十点平均粗さSRzは、0.50μm以上である。
この「粗さ」により、フィルム同士が接触する際、フィルム同士がべったりと接触することが避けられる(フィルム同士の接触面積を小さくすることができる)と考えられる。そして、耐ブロッキング性が高まると考えられる。すなわち、フィルム同士を重ねたときやフィルムをロールに巻いたときなどに、フィルム同士の固着が抑えられると考えられる。
具体的には、本実施形態の包装用フィルムは、ヒートシール層を別途設けなくても、ヒートシールによる製袋や密封ができるものである(通常、ポリエチレンの融点は低い)。ヒートシール層を別途設けなくてもよいということは、層構成の単純化や使用素材の種類を少なくする点で好ましい。ただし、本実施形態において基材層1Aが多層構成であることは必ずしも妨げられない。
・基材層1Aの素材等について
基材層1Aは、1種または2種以上のポリエチレンを含む。
ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン等のいずれであってもよい。これらの中でも、包装用途への適用性やヒートシール性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)が好ましい。
基材層1Aが積層体である場合、基材層1Aは、2種以上の異なるポリエチレン樹脂含んでいてもよいし、各層は互いに異なるポリエチレン樹脂の組成を有していてもよい。
積層体である基材層1Aはどのような方法で製造されてもよい。例えば、接着剤で貼り合わせるドライラミネート法、接着剤を用いず押出加工等の製膜時に貼り合わせる方法、これらの併用、などにより製造される。
基材層1Aの厚みは、好ましくは10~150μm、より好ましくは15~80μm、さらに好ましくは30~60μmである。基材層1Aの厚みを10μm以上とすることで、包装用フィルムの機械的強度を高めることなどができる。基材層1Aの厚みを150μm以下とすることで、包装用フィルムの取り扱い性、製袋適性、軽量性等を高めることができる。
基材層1Aの表面の静摩擦係数μは、好ましくは0.08~2.50、より好ましくは0.09~2.00、さらに好ましくは0.10~1.50、特に好ましくは0.10~1.30、とりわけ好ましくは0.10~0.60、最も好ましくは0.10~0.35である。静摩擦係数が適切な値であることにより、例えば、塗布によって基材層1Aの片面にコーティング層1Bを設ける場合、薄くて均一なコーティング層1Bを形成しやすいというメリットが期待できる。また、静摩擦係数が適切な値であることで、フィルムの取り扱い性を高めることができるというメリットも期待できる。
特に、「薄くて均一なコーティング層1Bを形成しやすい」というメリットの点では、基材層1Aのコーティング層1B側の面同士の静摩擦係数μ1が、上記μで説明した数値範囲にあることが好ましい。μ1は、より好ましくは0.10~0.80、さらに好ましくは0.12~0.75、特に好ましくは0.14~0.68である。
(i)の具体例としては、コロナ放電照射による表面改質(コロナ処理)等を挙げることができる。
(ii)の具体例としては、基材層1Aに含まれるスリップ剤の量や種類を調整すること等を挙げることができる。
また、同面の、三次元表面測定により得られるクルトシスSRkuは、好ましくは120~300である。
SRzやSRkuの測定方法については、コーティング層1Bの説明の項で詳述する。
コーティング層1Bが薄い場合には、基材層1Aの表面粗さがコーティング層1Bの表面粗さに反映されやすい。よって、例えば基材層1Aの表面粗さを上記数値程度に調整することで、コーティング層1Bの表面粗さを適切な値としやすい。
基材層1Aの表面粗さは、その製造方法(ポリエチレン含有フィルムの製膜方法)、適切な添加剤の使用、適切な表面処理(コロナ処理等)により調整することができる。また、市販のポリエチレン含有フィルムから、適当な表面粗さを有するものを選択して基材層1Aとしてもよい。
・コーティング層1Bの素材
前述のように、コーティング層1Bは、ポリエチレンとは異なる樹脂を含む。
コーティング層1Bは、好ましくは、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む。これら樹脂は、酸素バリア性の向上、耐ブロッキング性の一層の向上などの点で好ましい。
包装用フィルムには、しばしば、酸素バリア性が要求される。この点で、コーティング層1Bは、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の酸素バリア性の高い樹脂を含むことが好ましい。
ポリウレタンは、公知または市販の熱可塑性ポリウレタンであってもよい。そのようなポリウレタンとしては、アジペート・エステル系熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン、ポリカプロラクトン系熱可塑性ポリウレタン等を挙げることができる。
ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られる。酢酸基が数十%残存しているいわゆる部分ケン化ポリビニルアルコールや、酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化ポリビニルアルコールなども、使用可能なポリビニルアルコールに含まれる。
もちろん、ポリビニルアルコールの製法は特に限定されない。
(ii)の共重合体としては、塩化ビニリデンモノマーに由来する構造単位の比率が60~99質量%であり、塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーに由来する構造単位の比率が1~40質量%である共重合体を上げることができる。塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1~18)、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン等を挙げることができる。
コーティング層1Bの厚みは、好ましくは0.3~2.0μm、より好ましくは0.4~1.8μm、さらに好ましくは0.5~1.7μmである。この厚みが適切であることにより、例えば、耐ブロッキング性を一層向上させることができる。
コーティング層1Bの厚みは、好ましくは、基材層1Aの厚みより小さい。
かつ/または、塗布によりコーティング層1Bを設ける場合に、塗布液の塗布量が少ないと、塗布された塗布液が十分にレベリング即ち平坦化する前に揮発性成分が揮発してしまうため、形成されるコーティング層1Bの表面が比較的粗くなりやすいと考えられる。
ちなみに、実験事実として、塗布によりコーティング層1Bを設ける場合に、塗布液の塗布量を多くするとコーティング層1Bの表面粗さが小さくなりがちである。このことは、後掲の実施例でも示される。
前述のように、コーティング層1Bは、包装用フィルムの最表面に存在する。換言すると、コーティング層1Bの片面の一部または全部は「露出」している。
コーティング層1Bの露出面の、三次元表面測定により得られる十点平均粗さSRzは、0.50μm以上、好ましくは0.80μm以上、より好ましくは1.20μm以上、さらに好ましくは1.40μm以上である。SRzの上限は特にないが、現実的には、SRzは例えば3.2μm以下、好ましくは2.7μm以下である。
本実施形態では、とりわけ、SRzとSRkuの両方が、それぞれの好適数値範囲にあることで、耐ブロッキング性が一層良好となる。換言すると、SRzとSRkuを一体的な指標と考えて包装用フィルムを設計することで、耐ブロッキング性を一層向上させることができる。
本実施形態の包装用フィルムにおいては、フィルムの酸素透過度を、コーティング層1Bが均一に設けられていることの指標とすることができる場合がある。特に、コーティング層1Bが、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂素材を含む場合、フィルムの酸素透過度を、コーティング層1Bの均一性の指標とすることができる。これら樹脂の酸素透過性は、通常、ポリエチレンに比べると小さいためである。コーティング層1Bが均一ではなく、コーティング層1Bに塗布ムラやピンホール等がある場合、酸素透過度は大きめの値を示すと考えられる。
酸素透過度が小さいことにより、本実施形態の包装用フィルムは、例えば食品の包装袋に好ましく適用することができる。もちろん、本実施形態の包装用フィルムは、食品以外の種々の用途に用いることができる。
酸素バリア性という点では、基本的には、酸素透過度は小さいほど好ましい(理想的には0)。ただし、包装用フィルムの現実的な設計の点からは、酸素透過度(温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下、または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下)は、例えば0.1mL/(m2・day・MPa)以上である。
コーティング層1Bが含む樹脂については、一例として、コーティング層1Bの赤外吸収スペクトルを分析することで判断することができる。特に、コーティング層1Bのような薄膜の赤外吸収スペクトルを得るためには、全反射測定法(ATR法)を適用することが好ましい。
・ポリウレタン:3300±50cm-1、1700±50cm-1、および、1500±50cm-1
・ポリビニルアルコール:1450±50cm-1、1350±50cm-1、1110±50cm-1、および、900±50cm-1
・ポリ塩化ビニリデン:1500±50cm-1、および、650~800cm-1
本実施形態の包装用フィルムは、コーティング層1Bと基材層1Aの間にアンカーコート層を備えていてもよい。別の言い方として、本実施形態において、基材層1Aの片面にコーティング層1Bを形成する際、基材層1Aの片面にあらかじめアンカーコート層を設けておいてもよい。
アンカーコート層の存在により、コーティング層1Bと基材層1Aの接着力がより強くなったり、経時によって接着力が低下しにくくなったりする(接着力が安定化される)といったことが期待される。もちろん、接着力やその安定性が実用上十分であれば、アンカーコート層は無くてもよい。
アンカーコート層を設ける場合、その厚さは、不揮発分換算で、通常0.01~3g/m2、好ましくは0.05~1g/m2、好ましくは0.05~0.5g/m2である。
本実施形態の包装用フィルムにおいて、各層のガラス転移温度や融点を適切に設計することで、例えば、開封性の優れた包装袋が得られるという追加的な効果が得られる。
別の言い方として、各層のガラス転移温度や融点が適切に設計された本実施形態の包装用フィルムは、合掌袋やパウチ包装(以下、「合掌袋等」ということがある)に供されるフィルムとして好ましい。
I.まず、横長のフィルム1を筒状に折り曲げ、
II.次に、背面をヒートシールして背面ヒートシール部10を設け、
III.その後、底面をヒートシールして底面ヒートシール部15を設ける、
という手順で製造される。
(図3は、フィルム1が、ポリエチレンを含む基材層1Aのみの単層フィルムである場合の、図2のαの部分を、同図中に示された矢印の方向から見たときの状態を模式的に表した図である。)
このような熱融着は、消費者が合掌袋を開封する際の開封容易性の観点や、合掌袋等の美観の観点から望ましくない。
具体的には、本実施形態の包装用フィルムを用い、基材層1Aよりガラス転移温度が高いコーティング層1Bの側が外表面側になるように、上記I.~III.の手順で合掌袋を製造する。こうすることで、図4に示されるように、αの部分において、背面ヒートシール部10の外面が融解したり、他の部位と熱融着したりすることが抑えられる。
(図4は、フィルム1が、基材層1Aおよびコーティング層1Bを備える場合の、図2のαの部分を、同図中に示された矢印の方向から見たときの状態を模式的に表した図である。)
Tgsは、より好ましくは-25~120℃、さらに好ましくは-22~115℃、特に好ましくは-20~110℃である。
また、Tgc-Tgsの値(TgcとTgsの差)は、好ましくは90~245℃、より好ましくは100~240℃、さらに好ましくは107~235℃である。
また、Tgsは、通常、-130~-120℃である。
また、基材層1Aの融点は、好ましくは110~133℃、さらに好ましくは112~131℃である。
融点は、ガラス転移温度と同様、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
まとめると、本実施形態の包装用フィルムにおいて、各層のガラス転移温度や融点を適切に設計することで、「開封しやすく美観に優れた合掌袋等を得ることができる」という効果を得ることができる。
本実施形態の包装用フィルムは、例えば、上述の図1のような2層構成である。
一方、別の例として、本実施形態の包装用フィルムは、基材層1Aと、その基材層1Aの片面に直接またはアンカーコート層を介して設けられているコーティング層1Bとを備え、かつ、コーティング層1Bの厚みが基材層1Aの厚みより小さい限り、追加の層を備えてもよい。
図5に示される4層構成の包装用フィルムにおいて、2つのコーティング層1Bは、互いに異なる原料に基づき構成されていてもよい。例えば、2つのコーティング層1Bのうち、一方がポリウレタンを含み、他方がポリ塩化ビニリデンを含んでもよい。もちろん、2つのコーティング層1Bは同一樹脂を含んでもよい。
本実施形態の包装用フィルムは、好ましくは、ポリエチレン含有フィルムの片面に、塗布液(樹脂溶液または樹脂分散液)を塗布すること等により製造される。
アンカーコート層を設ける場合には、まず、ポリエチレン含有フィルムの片面にアンカーコート剤を塗布し、硬化させてアンカーコート層を形成後、上記塗布液(樹脂溶液または樹脂分散液)を塗布する。
塗布液は、例えば、不揮発成分として、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の1種以上の樹脂を含み、かつ、揮発成分として、水および/または有機溶剤を含む。
塗布液が有機溶剤を含む場合、その有機溶剤は、樹脂の種類等に応じて適宜選択すればよい。有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)等のアルコール類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;これらの混合溶媒;等が挙げられる。
もちろん、市販の塗布液を用いずに、適当なポリウレタンを、水/有機溶剤に溶解/分散させて塗布液としてもよい。
ポリ塩化ビニリデンを含む有機溶剤系の塗布液としては、ポリ塩化ビニリデンを有機溶剤に溶解または分散したものが挙げられる。使用可能な有機溶剤の例は前述のとおりである。
水系の塗布液に有機溶剤を加える場合、有機溶剤の量は、全揮発成分(水および有機溶剤の総和)中、好ましくは10~50質量%である。
特に、塗布ムラやピンホール等が抑えられた均一なコーティング層1Bを形成するため、界面活性剤の量は適切に調整されることが好ましい。界面活性剤の量は、塗布液の不揮発成分全体中、好ましくは0.8~7.5質量%、より好ましくは1.25~7.0質量%、さらに好ましくは1.30~6.8質量%、特に好ましくは1.30~1.80質量%、最も好ましくは1.30~1.55質量%である。
換言すると、揮発性成分が揮発した後のコーティング層1B中には、好ましくは0.8~7.5質量%の界面活性剤が存在する。
具体的には、コーティング層1Bの表面抵抗率は、例えば1×1012~1×1015Ω、好ましくは1×1012~1×1014Ωである。
表面抵抗率は、例えば、JIS K 6911の規定に基づき測定される。
乾燥温度は、基材層1Aの耐熱性などを考慮すると、50~95℃、好ましくは55~90℃、より好ましくは60~85℃である。乾燥時間は、通常5秒~10分、好ましくは5秒~3分、より好ましくは5秒~1分である。
乾燥後のフィルムを、常温で静置してエージング処理を行うことも可能であるが、好ましくはオーブン等によってエージング処理を行う。
処理時間の短縮と加熱によるフィルムの毀損防止の観点から、エージング処理の温度は、フィルム基材の耐熱性や融点を鑑みて設定すればよい。エージング処理の温度は、好ましくは30~80℃、より好ましくは30~60℃、さらに好ましくは30~50℃である。
エージング処理の時間は温度条件によっても異なるが、好ましくは6~168時間、より好ましくは12~120時間、さらに好ましくは12~96時間、特に好ましくは12~72時間である。
本実施形態の包装用フィルムは、具体的には、食品、医薬品、日常雑貨等を包装するための包装用フィルム;真空断熱パネル用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
包装体の形態は、例えば前述した合掌袋やスタンディングパウチ(パウチ包装)であることができる。合掌袋は前述のように開封容易性や外観の点で好ましい。パウチ包装については包装袋の容積を十二分に確保することができる点で好ましい。
以下において、指数表記を記号「E」で示す場合がある。例えば、1.3E-06とは、1.3×10-6を意味する。
以下材料を準備した。
以下の記載で、「エルスマート」「T.U.X.」および「タケラック」は、登録商標である。
・C-1
三井化学東セロ株式会社製、エルスマートC-1(厚み:40μm)
・C-1a(厚み:40μm)
上記C-1のスリップ剤を減量したもの
・FC-S
三井化学東セロ株式会社製、T.U.X.FC-S(厚み:50μm)
・HZ
三井化学東セロ株式会社製、T.U.X.HZ(厚み:50μm)
・HZR-2
三井化学東セロ株式会社製、T.U.X.HZR-2(厚み:50μm)
三井化学社製のタケラックA-310と、三井化学社製のタケネートA-3と、酢酸エチルとを、各々5.3質量%、0.1質量%、94.6質量%となるように混合して調製した塗布液
・PU
三井化学株式会社製のタケラックWPB-341(ポリウレタン樹脂を含む水系の分散液)に、2-プロパノールを加えて、水と2-プロパノールの質量比率を同じにしたもの
・PVA
クラレ社製のポバール105MCと水とを、質量比率10:90で混合して作液した塗布液
・PVDC
三井化学エムシー株式会社製のポリ塩化ビニリデンを含む有機溶剤系の塗布液(ポリ塩化ビニリデンは、旭化成株式会社製のサランレジンF216)
基材層とコーティング層との間にアンカーコート層を設ける場合には、メイヤーバー(番手#3)を用いて、アンカーコート層形成用塗布液を、0.2g/m2の量(不揮発分換算)でポリエチレン含有フィルムの表面(コロナ処理面側)に塗布した。そして、100℃の条件下で15秒間放置して乾燥させて、アンカーコート層を形成した。
ポリエチレン含有フィルムと塗布液の組合せは、後掲の表のとおりである。
以上のようにして、包装用フィルムを製造した。
(ガラス転移温度(Tgs、Tgc)、融点(Tm))
包装用フィルムから、コーティング層の部分と基材層の部分を、それぞれ約3.0mg採取して、測定用サンプルとした。それぞれのサンプルをDSC測定して、ガラス転移温度および融点を求めた。DSC測定の詳細は以下のとおりである。
・測定温度ステップ:(i)-50℃で10分保持→(ii)昇温して250℃で10分保持→(iii)降温して-50℃で10分保持→(iv)250℃まで昇温
・(i)~(iv)の各ステップ間の昇温速度、降温速度:5℃/min
・測定雰囲気:窒素ガス
ガラス転移温度については、補外ガラス転移開始温度を採用した。
融点については、融解ピークのピークトップ温度を採用した。
コーティング層表面およびポリエチレン含有フィルム(コーティング層形成前)のコロナ処理面の三次元表面性状を、株式会社小坂研究所の三次元表面粗さ測定機SE-3500を用いて測定した。測定の具体的条件(装置の設定など)は以下のとおりである。そして、測定で得られたデータをソフトウェアで解析することで、SRzおよびSRkuを求めた。
・測定本数:TD方向ライン数;201本
・測定ピッチ:MD方向;0.5μm、TD方向;2μm
・Z測定倍率:5000
・X送り速さ:0.2mm/s
・低域カット:0.25mm
・高域カット:R+W
・レベリング:最小二乗法
・Z原点:最小二乗法による0点合わせ
・触針先端曲率半径:2.0μm/60℃
・測定方向:MD方向に平行に触針移動
・解析ソフトウェア:装置内蔵の「3次元表面粗さ解析プログラム」
以下手順により測定した。
(1)50mm×75mmのサイズに切断した各ポリエチレン含有フィルムを2枚(以下、フィルム1および2とする)準備した。
(2)フィルム1を、傾斜角度を自由に調整可能な板(以下、傾斜板という)に固定した。
(3)フィルム2に、底面が真鍮から構成されている矩形の部材(底面の大きさは41mm×26mm)を固定した。そして、その部材の上に重りを取り付け、フィルム2にかかる質量が150gとなるようにした。
(4)フィルム1の上にフィルム2を重ねた。
(5)傾斜板を、1°/secの速度で、0°から徐々に傾斜させた。そして、上部のフィルム2が滑りだしたときの角度θから静摩擦係数を求めた(静摩擦係数=tanθ)。
包装用フィルムを、温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間保管した。その後、アドバンテスト社製デジタル超高抵抗/微量電流計(R8340A)とレジスチビティチェンバ(R12704)を用いて、表面抵抗率を測定した。測定条件については、印加電圧560V、印加時間30秒、温度23℃、湿度50%RHとした。
フィルムメトリクス社製の膜厚測定計F20-UV(光源:ハロゲン、測定スポット径:1.5mm)を用いて、コーティング層の厚みを測定した。
今回は、1つの試料について任意の3箇所で厚みを測定した。そして、それら3箇所の厚みの平均値をコーティング層の厚みとした。
・塗布液がPUであった場合
DMF(ジメチルホルムアミド)を用いて、包装用フィルムに設けられたコーティング層をふき取った。そして、ふき取り前後での質量変化から、塗布量(不揮発成分換算)を計算した。
・塗布液がPVAであった場合
包装用フィルムを沸騰水に浸漬して、包装用フィルムに設けられたコーティング層を溶かした。そして、浸漬前後での質量変化から、塗布量(不揮発成分換算)を計算した。
・塗布液がPVDCであった場合
蛍光X線分析で得られるCl由来のピークの強度に基づき算出した。この際、Cl量が既知の物質を用いて得られた検量線を利用した。
比較例のフィルムは、全てコーティング層を有しないため、表2に比較例のフィルムに関する項目は無い。
表1および表2において、表面抵抗率の欄の「-」は、表面抵抗率を測定しなかったことを表す。
表2において、界面活性剤割合の欄の「-」は、塗布液が界面活性剤を含まなかったことを表す。
表2において、融点Tmの欄の「-」は、DSC測定において融点に対応するピークが観察されなかったことを表す。
(耐ブロッキング性)
以下手順により評価した。
(1)各実施例または各比較例のフィルムを2枚ずつ準備した。
(2)(i)各実施例の2枚のフィルムを、コーティング層表面とコーティング層表面が接するように重ねた。または、(ii)各比較例の2枚のサンプルを、コロナ処理面とコロナ処理面が接するように重ねた。このとき、2枚のサンプルのMD/TD方向が一致するようにした。
(3)重ね合わせた2枚のサンプルを、シールコテを用いて、温度70℃、圧力2.0kgf、シール時間60秒、シール幅10mmの条件で加熱した。これにより、2枚のサンプルを意図的にブロッキングさせたサンプルを得た。
(4)加熱後終了後のサンプルを、室温下で自然冷却した。
(5)サンプルの表裏両面に、市販の粘着テープを貼って補強した(これは、ブロッキング強度が強すぎる場合、以下(6)の引張試験において測定サンプルが伸びてしまい、正確なブロッキング強度が測定できなくなるためである)。
(6)室温に冷却されたサンプルを引張試験機にセットし、引張速度5mm/分で、基材フィルムのMD方向に引っ張った。そして、サンプルが1枚1枚に分離するまでの荷重を記録した。
以下では、通常のヒートシール条件におけるコーティング層同士の熱融着のしにくさを評価することで、合掌袋等を製造する際の「背面ヒートシール部の熱融着性」について評価した。具体的な評価手順は以下のとおりである。
(2)(i)各実施例の2枚のサンプルを、コーティング層の表面同士が接するように重ねた。または、(ii)各比較例の2枚のサンプルを、基材層に用いるフィルムのコロナ処理した表面同士が接するように重ねた。このとき、2枚のサンプルのMD/TD方向が一致するようにした。
(3)重ねられた2枚のサンプルを、シールコテを用いて、温度140℃、圧力1.5kgf、シール時間1.0秒、シール幅10mmの条件で加熱した。
(4)加熱後終了後のサンプルを、室温下で自然冷却した。
◎(極めて良好):2枚のサンプルの間に熱融着は認められない。
○(良好):2枚のサンプルの間にわずかに熱融着が認められるが、手で容易に分離することができる。
×(悪い):2枚のサンプルが明らかに熱融着している。分離しようとすると、基材層が伸びてしまう。
モコン社製の装置OX-TRAN2/21を用い、JIS K 7126に準じて、(i)温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下、または、(ii)温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下での、包装用フィルムの酸素透過度を測定した。
測定において、コーティング層がポリウレタンを含む場合には、アルミニウム製マスクを用いて測定面積を1/10または1/50にして酸素透過度を測定し、その後、得られた酸素透過度の値(生データ)を10倍または50倍したものを酸素透過度とした。ポリウレタンはポリビニルアルコールやポリ塩化ビニリデンに比べると酸素を通しやすく、マスクをせずに酸素透過度を測定すると適切な測定ができないおそれがあるためである。
性能評価のうち、酸素透過度については、温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下で測定された値と、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下で測定された値の片方のみを示す。
実施例3~6においては、基材フィルムおよび塗布液は同じで、コーティング層の厚みが異なっている。コーティング層の厚みが比較的大きい実施例6では、SRzが(0.50μm以上ではあるものの)比較的小さめであり、そして耐ブロッキング強度は比較的大きい。一方、コーティング層の厚みが比較的小さい実施例3および4では、SRzは比較的大きく、そして耐ブロッキング強度は比較的小さい。
通常の感覚からすると、コーティング層が厚ければ厚いほど耐ブロッキング強度は小さくなるようにも思われる。しかし、実施例3~6からは、コーティング層が「適度に薄い」ほうが、耐ブロッキング性はより良好だった。コーティング液の塗布量が適度に少ないことにより、コーティング層の露出面の表面性状などが、ブロッキングを一層抑えやすい性状になったものと推測される。
1A 基材層
1B コーティング層
10 背面ヒートシール部
15 底面ヒートシール部
Claims (11)
- ポリエチレンを含む基材層(ただし、架橋度がフイルムの厚さ方向において、内側に低下したポリエチレン系樹脂延伸フイルムを除く)と、
ポリエチレンとは異なる樹脂を含み、かつ、前記基材層の片面に接して設けられているかまたはアンカーコート層を介して設けられているコーティング層と
を備え、
前記コーティング層の片面の一部または全部は、露出面となっており、
前記露出面の、三次元表面測定により得られる十点平均粗さSRzは0.50μm以上である包装用フィルム。 - 請求項1に記載の包装用フィルムであって、
前記露出面の、三次元表面測定により得られるクルトシスSRkuは25以上である包装用フィルム。 - 請求項1または2に記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層の厚みは0.3~2.0μmである包装用フィルム。 - 請求項1~3のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
前記基材層の厚みは10~150μmである包装用フィルム。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
前記ポリエチレンとは異なる樹脂は、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上である包装用フィルム。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×105mL/(m2・day・MPa)未満である、かつ/または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×105mL/(m2・day・MPa)未満である包装用フィルム。 - 請求項1~6のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
前記基材層のガラス転移温度は-130~-120℃である包装用フィルム。 - 請求項1~7のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層は、融点を有しないか、または、120~245℃の融点を有する包装用フィルム。 - 請求項1~8のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層は界面活性剤を含み、
前記コーティング層中の前記界面活性剤の割合は0.8~7.5質量%である包装用フィルム。 - 請求項1~9のいずれか1項に記載の包装用フィルムにより構成された包装体。
- 請求項10に記載の包装体であって、
前記コーティング層が外表面にある包装体。
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