JP7420487B2 - 包装用フィルムおよび包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、包装用フィルムおよび包装体に関する。より具体的には、包装用フィルムと、その包装用フィルムにより構成された包装体に関する。
包装用フィルムの分野において、使用素材や層構成などを工夫して種々の性能を向上させる試みが知られている。
一例として、特許文献1には、片面に塩化ビニリデン系共重合体層を有する二枚の二軸延伸プラスチックフィルムを、塩化ビニリデン系共重合体層の面同士を重ね合わせて熱圧着した積層フィルムが記載されている(二枚のフィルムの接着強度は10~50gf/15mm)。特許文献1には、この積層フィルムは、磨耗や突き刺しに対して強く(ピンホールが発生しにくく)、また、ガスバリア性に優れると記載されている。
別の例として、特許文献2には、熱可塑性樹脂にて構成された基材層の少なくとも一方の面上に、無機層状化合物および水溶性高分子を含む分散液を塗布して形成されたガスバリア層と、カチオン性樹脂と水酸基を有する樹脂とを含むオーバーコート層と、接着剤層と、シーラント層とが順次積層された多層フィルムが記載されている。特許文献2には、この多層フィルムは、ヒートシール性およびガスバリア性に優れると記載されている。
さらに別の例として、特許文献3には、基材層と、無機物層と、ポリ塩化ビニリデン系樹脂層とをこの順に備えるバリア性フィルムが記載されている。このバリア性フィルムのポリ塩化ビニリデン系樹脂層の赤外線吸収スペクトルを測定したとき、1070cm-1の近傍の波数における吸収ピーク高さA(1070)に対する1046cm-1の近傍の波数における吸収ピーク高さA(1046)のピーク比(A(1046)/A(1070))は、1.3以下である。特許文献3には、このバリア性フィルムは、耐ブロッキング性に優れると記載されている。
特開平10-337825公報 特開2009-241359号公報 特開2017-114079号公報
近年の環境意識の高まり、とりわけ海洋プラスチック汚染の問題のクローズアップ等により、包装用フィルムには社会の厳しい目が向けられている。そして、従来にも増して、包装用フィルムのリサイクル推進が求められるようになってきている。換言すると、「リサイクルしやすさ」を考慮して包装用フィルムを設計・製造することが求められつつある。
これまでの包装用フィルムの多くは、多種の素材を積層させることで所望の効果(強度、気体バリア性など)を得ていた。例えば、特許文献2に記載の多層フィルムは、ガスバリア層、オーバーコート層、接着剤層およびシーラント層の4層を少なくとも備える。しかし、多種の素材が積層されることで、リサイクルのしにくさに繋がっていた。
包装用フィルムをリサイクルしやすいようにする観点からは、例えば、包装用フィルムをできるだけ単純な層構成とすることが考えられる。
層構成の単純化の点では、極論的には、包装用フィルムを「単層」とすることが考えられる。
本発明者らは、比較的低コストで汎用的な包装材料であるポリエチレンフィルムを用いて、包装用フィルムに求められることがある諸特性について予備検討した。検討の結果、ポリエチレン「単層」のフィルムは、耐ブロッキング性や酸素バリア性の点で十分な性能を示さなかった。また、そのような包装用フィルムを用いて包装体を製造したとき、その包装体の開封性(開封のしやすさ)などに改善の余地があった。
本発明は、ポリエチレン単層のフィルムでは不十分な、耐ブロッキング性および酸素バリア性が改善された包装用フィルム、および、そのような包装用フィルムにより構成された、開封性の優れた包装体を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
1.
ポリエチレンを含む基材層と、
ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含み、かつ、前記基材層の片面に接して設けられているかまたはアンカーコート層を介して設けられているコーティング層と、
を備え、前記コーティング層の厚みは前記基材層の厚みより小さい包装用フィルム。
2.
1.に記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層の厚みは0.3~2.0μmである包装用フィルム。
3.
1.または2.に記載の包装用フィルムであって、
前記基材層の厚みは10~150μmである包装用フィルム。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×10mL/(m・day・MPa)未満である、かつ/または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×10mL/(m・day・MPa)未満である包装用フィルム。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層のガラス転移温度をTgcとし、前記基材層のガラス転移温度をTgsとしたとき、
Tgcの値は-25~120℃であり、Tgc-Tgsの値は90~245℃である包装用フィルム。
6.
5.に記載の包装用フィルムであって、
Tgsは-130~-120℃である包装用フィルム。
7.
1.~6.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層は、融点を有しないか、または、120~230℃の融点を有する包装用フィルム。
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
当該包装用フィルムの最表面に前記コーティング層は存在し、
前記コーティング層表面の、三次元測定により得られる十点平均粗さSRzは0.50μm以上である包装用フィルム。
10.
1.~9.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
包装用フィルムの最表面に前記コーティング層は存在し、
前記コーティング層表面の、三次元測定により得られるクルトシスSRkuは25以上である包装用フィルム。
11.
1.~10.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記基材層の前記片面同士の静摩擦係数は0.08~2.50である包装用フィルム。
12.
1.~11.のいずれか1つに記載の包装フィルムであって、
前記コーティング層の表面抵抗率は1×1012~1×1015Ωである包装用フィルム。
13.
1.~12.のいずれか1つに記載の包装用フィルムであって、
前記コーティング層は界面活性剤を含み、
前記コーティング層中の前記界面活性剤の割合は0.8~7.5質量%である包装用フィルム。
13.
1.~12.のいずれか1つに記載の包装用フィルムにより構成された包装体。
14.
13.に記載の包装体であって、
前記コーティング層が外表面にある包装体。
本発明は、ポリエチレン単層のフィルムでは不十分な、耐ブロッキング性および酸素バリア性が改善された包装用フィルム、および、そのような包装用フィルムにより構成された、開封性等に優れた包装体を提供するものである。
包装用フィルムの層構成を模式的に示した図である。 「合掌袋」の製造方法を説明するための図である。 図2のαの部分を、同図中に示された矢印の方向から見たときの状態を模式的に表した図である(合掌袋が単層フィルムで構成されている場合)。 図2のαの部分を、同図中に示された矢印の方向から見たときの状態を模式的に表した図である(合掌袋が二層構成のフィルムで構成されている場合)。 図1とは異なる包装用フィルムの層構成を模式的に示した図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
<包装用フィルム>
図1は、本実施形態の包装用フィルムの層構成を模式的に示した図である。本実施形態の包装用フィルムは、
・ポリエチレン含む基材層1A(以下、基材層1Aとも記載する)と、
・ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むコーティング層1B(以下、コーティング層1Bとも記載する)と、
を備える。
コーティング層1Bの厚みは、基材層1Aの厚みより小さい。
コーティング層1Bは、基材層1Aの片面に接するように設けられているか、または、コーティング層1Bと基材層1A間の間には、アンカーコート層が設けられている(アンカーコート層は図1に図示せず)。
ポリエチレンを含む基材層1Aは、単層であっても、2以上の層が積層された積層体であってもよい。
本実施形態の包装用フィルムは、ポリエチレン単層のフィルムでは不十分な耐ブロッキング性や酸素バリア性を改善するために、適切な素材によるコーティングをポリエチレンフィルム上に設けるものである。
特に、ポリエチレンフィルムの酸素バリア性は低い(ポリエチレンフィルムの酸素透過率は大きい)。よって、本実施形態では、酸素バリア性を付与するためにポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むコーティング層1Bを、基材層1Aの片面に接するように、またはアンカーコート層を介して設けている。
コーティング層1Bにより、酸素バリア性を高めることができる。また、コーティング層1Bにより、表面状態が調整され、基材層1A同士の接触が抑えられて耐ブロッキング性を向上させることができる。
また、本実施形態において、コーティング層1Bの厚みは、基材層1Aの厚みよりも小さい。換言すると、コーティング層1Bを設けるための材料は比較的少量である。さらに、基材層1Aとコーティング層1Bの間には他の層が存在しない。これらのことは、環境性能やリサイクル適性などの点で好ましい。
ちなみに、コーティング層1Bの「厚み」を適切に調整すること等により、耐ブロッキング性を一層高めることができる。このことについて追って詳しく説明する。
本実施形態の包装用フィルムは、酸素バリア性や耐ブロッキング性の改善に加え、開封性の優れた包装袋を得ることができるものでもある。特に、製袋のヒートシール工程で、既にヒートシールした部分と重なる状態でヒートシールを行う合掌袋やスタンディングパウチ等のパウチ包装(以下、「合掌袋等」ということがある)に供するフィルムとして好適である。
以下、合掌袋の製造を例にとって、「開封性」について説明する。
合掌袋とは、1枚のフィルムを背中と底で貼り合わせた袋であり、菓子等の食品の包装に多用される。合掌袋の製造(製袋)は、通常、図2に示されるように、
I.まず、横長のフィルム1を筒状に折り曲げ、
II.次に、背面をヒートシールして背面ヒートシール部10を設け、
III.その後、底面をヒートシールして底面ヒートシール部15を設ける、
という手順で製造される。
上記のような手順で合掌袋を製造する場合、図2において破線で囲われた部分αには、2回、ヒートシールによる熱が加わる。よって、フィルム1が、ポリエチレンを含む基材層1Aのみの単層フィルムである場合、図3に示されるように、αの部分において、背面ヒートシール部10の外面の一部は、図中に破線で示した場所で、ポリエチレンを含む基材層1Aと熱融着してしまう。このような背面ヒートシール部10の熱融着の有無を本明細書においては「背面ヒートシール部の熱融着性」とも呼ぶ。
(図3は、フィルム1が、ポリエチレンを含む基材層1Aのみの単層フィルムである場合の、図2のαの部分を、同図中に示された矢印の方向から見たときの状態を模式的に表した図である。)
このような熱融着は、消費者が合掌袋を開封する際の開封容易性の観点や、合掌袋等の美観の観点から望ましくない。
しかし、本実施形態の包装用フィルムのように、基材層1Aの片面にコーティング層1Bが存在することで、上記問題を改善することができる。具体的には、本実施形態の包装用フィルムを用い、コーティング層1Bの側が外表面側になるように、上記I.~III.のように合掌袋を製造する。こうすることで、図4に示されるように、αの部分において、背面ヒートシール部10の外面が融解したり、他の部位と熱融着したりすることが抑えられる。
(図4は、フィルム1が、基材層1Aおよびコーティング層1Bを備える場合の、図2のαの部分を、同図中に示された矢印の方向から見たときの状態を模式的に表した図である。)
コーティング層1Bが含むポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンは、通常、基材層1Aが含むポリエチレンよりも、熱により融解しにくい。よって、上記III.のヒートシールの際に適切な温度でヒートシールを行うことで、基材層1Aのみが融解し、コーティング層1Bは融解しないようにすることができる。
まとめると、本実施形態の包装用フィルムにより、「開封しやすく美観に優れた合掌袋等を得ることができる」という効果が得られる。
基材層1Aは、ヒートシールによる製袋にも重要な役割を果たすため、基材層1Aは、「基材層」であり、かつ「ヒートシール層」でもありうる(基材層がヒートシール層を兼ねることができる)と言える。さらに言うと、本実施形態の包装用フィルムは、ヒートシール層を別途設けなくても、ヒートシールによる製袋や密封ができるものである。ヒートシール層を別途設けなくてもよいということは、層構成の単純化や使用素材の種類を少なくする点で好ましい。ただし、本実施形態において基材層1Aが多層構成であることは必ずしも妨げられない。
以上、本実施形態の包装用フィルムは、比較的単純な構成にもかかわらず、耐ブロッキング性が良好である。また、本実施形態の包装用フィルムは、例えば開封しやすい合掌袋を製造することができるというメリットを有することができる。さらに、本実施形態の包装用フィルムには、ヒートシール層を別途設けることを要しない。
本実施形態の包装用フィルムに関する説明を続ける。
(基材層1A)
・基材層1Aの素材等について
基材層1Aは、1種または2種以上のポリエチレンを含む。
ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン等のいずれであってもよい。これらの中でも、包装用途への適用性やヒートシール性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)が好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)は、通常、エチレンと、若干量のα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンの種類は特に限定されない。典型的なα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテンなどを挙げることができる。
耐熱性、透明性、機械的特性、剛性等の各種性能のバランスをより一層良好にする観点から、ポリエチレンの密度は、900~965kg/mが好ましく、900~940kg/mがより好ましい。ポリエチレンの密度はJIS K 7112(1999)に準じて測定することができる。
流動性や成形性の観点から、ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上である。また、成形性をより安定化させる観点から、MFRは、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下である。MFRは、ASTMD1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される。
基材層1Aは、各種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤、などを挙げることができる。
基材層1Aは、延伸フィルムにより構成されていても、無延伸フィルムにより構成されていても、延伸フィルムおよび無延伸フィルムの双方により構成されていてもよい。フィルムの機械的強度を高める点では、基材層1Aは延伸フィルムから構成されていることが好ましく、そのなかでも二軸延伸フィルムから構成されていることがより好ましい。一方、ヒートシール強度を高める点では、基材層1Aのコーティング層とは反対面は無延伸フィルムから構成されていることが好ましい。
一態様として、基材層1Aは、2以上の層が積層された積層体であってもよい。
基材層1Aが積層体である場合、基材層1Aは、2種以上の異なるポリエチレン樹脂含んでいてもよいし、各層は互いに異なるポリエチレン樹脂の組成を有していてもよい。
積層体である基材層1Aはどのような方法で製造されてもよい。例えば、接着剤で貼り合わせるドライラミネート法、接着剤を用いず押出加工等の製膜時に貼り合わせる方法、これらの併用、などにより製造される。
基材層1Aを構成するポリエチレン含有フィルムは、例えば、三井化学東セロ株式会社などから入手することができる。
・基材層1Aの厚み
基材層1Aの厚みは、好ましくは10~150μm、より好ましくは15~80μm、さらに好ましくは30~60μmである。基材層1Aの厚みを10μm以上とすることで、包装用フィルムの機械的強度を高めることなどができる。基材層1Aの厚みを150μm以下とすることで、包装用フィルムの取り扱い性、製袋適性、軽量性等を高めることができる。
・基材層1Aの物性、性状など
基材層1Aの表面の静摩擦係数μは、好ましくは0.08~2.50、より好ましくは0.09~2.00、さらに好ましくは0.10~1.50、特に好ましくは0.10~1.30、とりわけ好ましくは0.10~0.60、最も好ましくは0.10~0.35である。静摩擦係数が適切な値であることにより、例えば、塗布によって基材層1Aの片面にコーティング層1Bを設ける場合、薄くて均一なコーティング層1Bを形成しやすいというメリットが期待できる。また、静摩擦係数が適切な値であることで、フィルムの取り扱い性を高めることができるというメリットも期待できる。
基材層1Aの片面が表面処理(例えば後述のコロナ処理)されている場合、静摩擦係数の測定は、非処理面同士、処理面同士、非処理面と処理面のいずれであってもよい。
特に、「薄くて均一なコーティング層1Bを形成しやすい」というメリットの点では、基材層1Aのコーティング層1Bと接する面同士の静摩擦係数μが、上記μで説明した数値範囲にあることが好ましい。μは、より好ましくは0.10~0.80、さらに好ましくは0.12~0.75、特に好ましくは0.14~0.68である。
基材層1Aの静摩擦係数は、例えば、(i)コーティング層1Bが設けられる前の基材層1A(ポリエチレン含有フィルム)に対して表面処理を施したり、(ii)基材層1A(ポリエチレン含有フィルム)中の各種添加剤の種類や量を調整したりすることで、調整することができる。
(i)の具体例としては、コロナ放電照射による表面改質(コロナ処理)等を挙げることができる。
(ii)の具体例としては、基材層1Aに含まれるスリップ剤の量や種類を調整すること等を挙げることができる。
静摩擦係数の測定は、例えば、後述の実施例のようにして行うことができる。
基材層1Aの、コーティング層1Bと接している面の、三次元測定により得られる十点平均粗さSRzは、好ましくは1.8μm以上、より好ましくは1.8~3.5μm、さらに好ましくは1.9~3.2μmである。
また、同面の、三次元測定により得られるクルトシスSRkuは、好ましくは120~300である。
SRzやSRkuの測定方法については、コーティング層1Bの説明の項で詳述する。
詳細は追って述べるが、コーティング層1Bの表面粗さなどを適切に調整することで、耐ブロッキング性を一層向上させることができる。基材層1Aの表面粗さを調整することで、その上に塗布により形成されるコーティング層1Bの表面性状を適切に調整しやすい。
コーティング層1Bが薄い場合には、基材層1Aの表面粗さがコーティング層1Bの表面粗さに反映されやすい。よって、例えば基材層1Aの表面粗さを上記数値程度に調整することで、コーティング層1Bの表面粗さを適切な値としやすい。
基材層1Aの表面粗さは、その製造方法(ポリエチレン含有フィルムの製膜方法)、適切な添加剤の使用、適切な表面処理(コロナ処理等)により調整することができる。また、市販のポリエチレン含有フィルムから、適当な表面粗さを有するものを選択して基材層1Aとしてもよい。
(コーティング層1B)
・コーティング層1Bの素材
コーティング層1Bは、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む。
コーティング層1B中の樹脂の比率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
コーティング層1Bがポリウレタンを含む場合、そのポリウレタンの種類は特に限定されない。ポリウレタンは、ポリオールに由来する構造単位とポリイソシアネートに由来する構造単位とを含むものであればよい。
ポリウレタンは、公知または市販の熱可塑性ポリウレタンであってもよい。そのようなポリウレタンとしては、アジペート・エステル系熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン、ポリカプロラクトン系熱可塑性ポリウレタン等を挙げることができる。
コーティング層1Bがポリビニルアルコールを含む場合、そのポリビニルアルコールの種類は特に限定されない。
ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られる。酢酸基が数十%残存しているいわゆる部分ケン化ポリビニルアルコールや、酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化ポリビニルアルコールなども、使用可能なポリビニルアルコールに含まれる。
もちろん、ポリビニルアルコールの製法は特に限定されない。
ポリビニルアルコールは、モノマーとして酢酸ビニルのみを用いて重合された単独重合体であってもよいし、酢酸ビニル以外のモノマーに由来する構造単位を含む共重合体であってもよい。ポリビニルアルコールが共重合体である場合、共重合成分としては、(1)エチレン、プロピレン、1-ブテンなどのオレフィン類、(2)(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類、そのエステル、塩、無水物およびアミド、(3)(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(4)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、等が挙げられる。
ポリビニルアルコールは、例えば、クラレ社などから入手することができる。
コーティング層1Bがポリ塩化ビニリデンを含む場合、そのポリ塩化ビニリデンは、塩化ビニリデンモノマーに対応する構造単位を含むものである限り特に限定されない。ポリ塩化ビニリデンは、(i)塩化ビニリデンモノマーに由来する構造単位のみを含んでもよいし、(ii)塩化ビニリデンモノマーと、塩化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
(ii)の共重合体としては、塩化ビニリデンモノマーに由来する構造単位の比率が60~99質量%であり、塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーに由来する構造単位の比率が1~40質量%である共重合体を上げることができる。塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1~18)、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン等を挙げることができる。
ポリ塩化ビニリデンは、例えば、旭化成社などから入手することができる。
・コーティング層1Bの厚み
コーティング層1Bの厚みは、好ましくは0.3~2.0μm、より好ましくは0.4~1.8μm、さらに好ましくは0.5~1.7μmである。
この厚みが適切であることにより、(i)耐ブロッキング性を十二分に向上させることができ、また、(ii)ヒートシール部同士の融着が十二分に抑えられた合掌袋等を得ることができる。(ii)についてより具体的には、合掌袋においては開封容易性を高めることができ、パウチ包装においてはヒートシール部の重なり部分の融着により包装袋の容積を大きくすることができる。
意外にも、コーティング層1Bが単に厚いほど耐ブロッキング性が良好となるのではなく、コーティング層1Bが薄すぎず厚すぎないことにより、耐ブロッキング性を一層向上させることができる。これは、例えばコーティング層1Bの厚みと基材層1Aが有する凹凸との絶妙なバランス等によるものと推測される。より具体的には以下のとおりである。
コーティング層1Bが薄い場合、コーティング層1Bは、基材層1Aの表面の凹凸を「埋め切らず」、よってコーティング層1Bの表面(基材層1Aと反対側の面)の表面粗さは、基材層1Aの表面の性状をある程度反映したものとなると考えられる。別の言い方として、コーティング層1Bが適度に薄い場合、コーティング層1Bは、基材層1Aの表面の凹凸や粗さを「適度に残す」とも言える。
かつ/または、塗布によりコーティング層1Bを設ける場合に、塗布液の塗布量が少ないと、塗布された塗布液が十分にレベリング即ち平坦化する前に揮発性成分が揮発してしまうため、形成されるコーティング層1Bの表面が比較的粗くなりやすいと考えられる。
ちなみに、実験事実として、塗布によりコーティング層1Bを設ける場合に、塗布液の塗布量を多くするとコーティング層1Bの表面粗さが小さくなりがちである。このことは、後掲の実施例でも示される。
要するに、コーティング層1Bが適度に薄いことによって、コーティング層1Bの表面が適度に粗くなると考えられる。
この「粗さ」により、フィルム同士が接触する際、フィルム同士がべったりと接触することが避けられ(フィルム同士の接触面積を小さくすることができ)、耐ブロッキング性が一層高まると考えられる。
・コーティング層1Bの粗さ等
コーティング層1Bは、通常、包装用フィルムの最表面に存在する。換言すると、コーティング層1Bの片面は、通常、「露出」している。
そして、包装用フィルムの最表面に存在するコーティング層1Bの、三次元測定により得られる十点平均粗さSRzは、好ましくは0.50μm以上、より好ましくは0.80μm以上、さらに好ましくは1.20μm以上、特に好ましくは1.40μm以上である。SRzの上限は特にないが、現実的には、SRzは例えば3.2μm以下、好ましくは2.7μm以下である。
また、包装用フィルムの最表面に存在するコーティング層1Bの、三次元測定により得られるクルトシスSRkuは、好ましくは25以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは200以上、とりわけ好ましくは220以上、最も好ましくは240以上である。SRkuの上限は特にないが、現実的には、SRkuは例えば400以下、好ましくは300以下、より好ましくは250以下である。
コーティング層1Bの「厚み」の説明部分で述べたように、コーティング層1Bの表面が粗いことで、耐ブロッキング性が一層高まると考えられる。
また、表面粗さのパラメータのうち、特にSRzやSRkuが耐ブロッキング性と相関していることと推定される。
本実施形態では、とりわけ、SRzとSRkuの両方が、それぞれの好適数値範囲にあることで、耐ブロッキング性が一層良好となる。換言すると、SRzとSRkuを一体的な指標と考えて包装用フィルムを設計することで、耐ブロッキング性を一層向上させることができる。
SRzやSRkuは、三次元表面性状(面粗さ)が測定可能な市販の測定装置により、コーティング層1Bの表面を測定することで求めることができる。測定装置としては、例えば、株式会社小坂研究所の三次元表面粗さ測定機SE-3500や、これと同様の測定原理による測定装置を用いることができる。
付言するに、SRzやSRkuは、二次元表面性状(線粗さ)ではなく、三次元表面性状(面粗さ)に関するパラメータである。ブロッキング発生やその低減には、「フィルムの面同士での接触」を考慮することが重要と考えられるから、二次元表面性状ではなく三次元表面性状に基づきコーティング層1Bの表面性状を設計・最適化することは理にかなっている。
・コーティング層1Bの均一性/酸素透過度
本実施形態の包装用フィルムにおいては、フィルムの酸素透過度を、コーティング層1Bが均一に設けられていることの指標とすることができる。ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンは、ポリエチレンに比べると酸素透過性が小さい素材であるためである。
具体的には、本実施形態の包装用フィルムの、温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度は1.0×10mL/(m・day・MPa)未満である、かつ/または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度は1.0×10mL/(m・day・MPa)未満であることが好ましい。
酸素透過度が小さいことにより、本実施形態の包装用フィルムは、例えば食品の包装袋に好ましく適用することができる。もちろん、本実施形態の包装用フィルムは、食品以外の種々の用途に用いることができる。
酸素透過度(温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下、または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下)の上限は、より好ましくは5.0×10mL/(m・day・MPa)以下、さらに好ましくは1.0×10mL/(m・day・MPa)以下である。
バリア性という点では、基本的には、酸素透過度は小さいほど好ましい(理想的には0)。ただし、フィルムの現実的な設計の点からは、酸素透過度(温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下、または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下)は、例えば0.1mL/(m・day・MPa)以上である。
ちなみに、酸素透過度を、コーティング層1Bが均一に設けられているか否かの指標とすることもできる。つまり、コーティング層1Bが均一に設けられず、コーティング層1Bに塗布ムラやピンホール等がある場合、酸素透過度は大きめの値を示す傾向がある。従って、上記の条件で測定された酸素透過度が1.0×10mL/(m・day・MPa)未満であることにより、コーティング層1Bが適切に形成されていること、そして、包装用フィルムとして適度な酸素バリア性を得ることができる。
酸素透過度は、JIS K 7126に基づき測定することができる。
・コーティング層1Bの同定について(素材、厚み等)
コーティング層1Bが、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むか否かは、一例として、コーティング層1Bの赤外吸収スペクトルを分析することで判断することができる。特に、コーティング層1Bのような薄膜の赤外吸収スペクトルを得るためには、全反射測定法(ATR法)を適用することが好ましい。
各樹脂においては、通常、以下の波数領域に吸収ピークが見られ、これら吸収ピークによりコーティング層1Bに含まれる樹脂を特定することができる。
・ポリウレタン:3300±50cm-1、1700±50cm-1、および、1500±50cm-1
・ポリビニルアルコール:1450±50cm-1、1350±50cm-1、1110±50cm-1、および、900±50cm-1
・ポリ塩化ビニリデン:1500±50cm-1、および、650~800cm-1
当然ながら、コーティング層1Bを構成する素材の同定は、赤外吸収スペクトルの分析以外の方法により行われてもよい。
コーティング層1Bの厚みは、例えば、公知の膜厚測定計を用いて求めることができる。膜厚測定計としては、例えば、フィルムメトリクス社製のF20シリーズなどを挙げることができる。
(各層のガラス転移温度や融点、大小関係など)
本実施形態の包装用フィルムにおいて、コーティング層1Bのガラス転移温度をTgcとし、基材層1Aのガラス転移温度をTgsとしたとき、Tgcの値は、好ましくは-25~120℃、より好ましくは-22~115℃、さらに好ましくは-20~110℃である。
また、Tgc-Tgsの値(TgcとTgsの差)は、好ましくは90~245℃、より好ましくは100~240℃、さらに好ましくは107~235℃である。
また、Tgsは、通常、-130~-120℃である。
Tgc-Tgsが90~245℃であること、つまり、コーティング層1Bと基材層1Aとのガラス転移温度の「差」が十分大きいことで、前述の「開封しやすい合掌袋等を得ることができる」といった効果をより確実に得ることができる。また、Tgcが-25~120℃であることで、量産の際に通常適用されるヒートシール条件(温度、時間等)において、その効果をより確実に得ることができる。
ガラス転移温度は、例えば、JIS K 7121に基づき、示差走査熱量測定(DSC)を通じて求めることができる。もし、DSCチャートに2以上のガラス転移点が認められる場合には、より低いほうの値をガラス転移温度として採用する。
ちなみに、コーティング層1Bが融点を有する場合、その値は、好ましくは120~230℃、より好ましくは130~230℃、さらに好ましくは135~230℃である。
また、基材層1Aの融点は、好ましくは110~133℃、さらに好ましくは112~131℃である。
融点は、ガラス転移温度と同様、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
(アンカーコート層)
本実施形態の包装用フィルムは、コーティング層1Bと基材層1Aの間にアンカーコート層を備えていてもよい。別の言い方として、本実施形態において、基材層1Aの片面にコーティング層1Bを形成する際、基材層1Aの片面にあらかじめアンカーコート層を設けておいてもよい。
アンカーコート層の存在により、コーティング層1Bと基材層1Aの接着力を安定化することができ、また、酸素バリア性を向上させることができる。
アンカーコート層を形成するための材料としては、ウレタン樹脂や(メタ)アクリル樹脂等を含むアンカーコート剤が挙げられる。アンカーコート剤としては市販のものを適宜用いることができる。
アンカーコート層を設ける場合、その厚さは、不揮発分換算で、通常0.01~3g/m、好ましくは0.05~1g/m、より好ましくは0.05~0.5g/mである。
(層構成について補足)
本実施形態の包装用フィルムは、例えば、上述の図1のような2層構成である。
一方、別の例として、本実施形態の包装用フィルムは、基材層1Aと、その基材層1Aの片面に接しているコーティング層1Bとを備え、かつ、コーティング層1Bの厚みが基材層1Aの厚みより小さい限り、追加の層を備えてもよい。
さらに別の例として、本実施形態の包装用フィルムは、例えば、2以上の基材層1Aを備えていてもよいし、かつ/または、2以上のコーティング層1Bを備えていてもよい。具体的には、図5に示されるように、基材層1A-コーティング層1B-基材層1A-コーティング層1Bの4層構成であってもよい。このような4層構成のフィルムも、ポリエチレン単層のフィルムでは不十分な耐ブロッキング性が良好なことは明らかである。また、4層構成ではあるが用いられている素材は少ないため、リサイクルしやすさ等の点でも好ましい。
図5に示される4層構成の包装用フィルムにおいて、2つの基材層1Aは、互いに異なるポリエチレン(例えば、分子量や物性が異なるポリエチレン)を含んでもよい。もちろん、2つの基材層1Aは同一のポリエチレン樹脂を含んでもよい。
図5に示される4層構成の包装用フィルムにおいて、2つのコーティング層1Bは、互いに異なる原料に基づき構成されていてもよい。例えば、2つのコーティング層1Bのうち、一方がポリウレタンを含み、他方がポリ塩化ビニリデンを含んでもよい。もちろん、2つのコーティング層1Bは同一樹脂を含んでもよい。
<包装用フィルムの製造方法>
本実施形態の包装用フィルムは、好ましくは、ポリエチレン含有フィルムの片面に、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む塗布液(樹脂溶液または樹脂分散液)を塗布すること等により製造される。
アンカーコート層を設ける場合には、まず、ポリエチレン含有フィルムの片面にアンカーコート剤を塗布し、硬化させてアンカーコート層を形成後、上記塗布液(樹脂溶液または樹脂分散液)を塗布する。
塗布液は、水系であっても有機溶剤系であってもよい。すなわち、通常、塗布液は、不揮発成分として、ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含み、かつ、揮発成分として、水および/または有機溶剤を含む。
塗布液が有機溶剤を含む場合、その有機溶剤は、樹脂の種類等に応じて適宜選択すればよい。有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)等のアルコール類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;これらの混合溶媒;等が挙げられる。
ポリウレタンを含む塗布液として、例えば、三井化学株式会社の「タケネート」、「タケラック」、「MT-オレスター」(これらは全て登録商標)などのラインアップを挙げることができる。これらラインアップの中には、水系のもの(水分散タイプのもの)もあれば、有機溶剤系のものもある。
もちろん、市販の塗布液を用いずに、適当なポリウレタンを、水/有機溶剤に溶解/分散させて塗布液としてもよい。
ポリビニルアルコールを含む塗布液としては、ポリビニルアルコールを水/有機溶剤に溶解/分散させたものが挙げられる。ポリビニルアルコールは、通常、親水的であるため、水を用いることが好ましい。ただし、ポリエチレン含有フィルム上に均一なコーティング層1Bを設けるために、水と有機溶剤を併用したほうがよい場合もある。
ポリ塩化ビニリデンを含む水系の塗布液としては、ポリ塩化ビニリデンの微粒子を含むラテックス(乳濁液)を挙げることができる。このラテックスの市販品として、旭化成社製のサランラテックスシリーズ等がある。
ポリ塩化ビニリデンを含む有機溶剤系の塗布液としては、ポリ塩化ビニリデンを有機溶剤に溶解または分散したものが挙げられる。使用可能な有機溶剤の例は前述のとおりである。
塗布液は、環境負荷の観点からは水系が好ましい。ただし、塗布液が揮発性溶剤として水のみを含む場合、均一なコーティング層1Bを形成しにくい場合がある。そのような場合には、水系の塗布液に有機溶剤を加えてもよい。このときに使用可能な有機溶剤は特に限定されないが、水との相性の点で、好ましくはアルコール系溶剤、具体的にはメタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)等の1価アルコールや、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。
水系の塗布液に有機溶剤を加える場合、有機溶剤の量は、全揮発成分(水および有機溶剤の総和)中、好ましくは10~50質量%である。
種々の目的のため、塗布液は各種の添加成分を含んでもよい。添加成分としては接着性樹脂、シランカップリング剤、界面活性剤などを挙げることができる。
特に、塗布ムラやピンホール等が抑えられた均一なコーティング層1Bを形成するため、界面活性剤の量は適切に調整されることが好ましい。界面活性剤の量は、塗布液の不揮発成分全体中、好ましくは0.8~7.5質量%、より好ましくは1.25~7.0質量%、さらに好ましくは1.30~6.8質量%、特に好ましくは1.30~1.80質量%、最も好ましくは1.30~1.55質量%である。
換言すると、揮発性成分が揮発した後のコーティング層1B中には、好ましくは0.8~7.5質量%の界面活性剤が存在する。
ちなみに、塗布液が界面活性剤を含むことで、コーティング層1Bの表面抵抗率は小さくなる。コーティング層1Bの表面に存在する界面活性剤が空気中の水分を吸着するためである。よって、コーティング層1Bの表面抵抗率を、層中の界面活性剤の含有量の指標とすることができる。
具体的には、コーティング層1Bの表面抵抗率は、例えば1×1012~1×1015Ω、好ましくは1×1012~1×1014Ωである。
表面抵抗率は、例えば、JIS K 6911の規定に基づき測定される。
塗布液の不揮発成分濃度は、好ましくは2~15質量%、より好ましくは3~12質量%である。不揮発成分濃度を適切に調整することで、適切な厚みのコーティング層1Bを形成しやすい。
塗布量は特に限定されないが、コーティング層1Bを所望の厚みとするために適宜調整することが好ましい。一例として、前述のように比較的薄い(0.3~2.0μm程度の)コーティング層1Bを得るためには、塗布量は、好ましくは不揮発成分換算で0.3~4.0g/m、好ましくは0.3~3.0g/m、好ましくは0.3~2.5g/m、好ましくは0.3~2.0g/m、最も好ましくは0.4~1.8g/mである。
本実施形態の包装用フィルムは、(1)まず、ポリエチレン含有フィルムの片面に、モノマーおよび/またはプレポリマーを含む塗布液を塗布し、(2)その後、そのモノマーおよび/またはプレポリマーを、ポリエチレン含有フィルム上で反応させることで製造してもよい。
塗布の具体的方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーター等の公知の装置を用いる方法が挙げられる。
塗布後の乾燥の具体的方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、タワードライヤー、ドラムドライヤー、フローティングドライヤー等の公知の装置を用いて乾燥する方法が挙げられる。
乾燥温度は、基材層1Aの耐熱性などを考慮すると、50~95℃、好ましくは55~90℃、より好ましくは60~85℃である。乾燥時間は、通常5秒~10分、好ましくは5秒~3分、より好ましくは5秒~1分である。
塗布および乾燥の後、さらにエージング処理を行ってもよい。エージング処理により、例えば基材層1Aとコーティング層1Bとの接着力が強まると考えられる。
乾燥後のフィルムを、常温で静置してエージング処理を行うことも可能であるが、好ましくはオーブン等によってエージング処理を行う。
処理時間の短縮と加熱によるフィルムの毀損防止の観点から、エージング処理の温度は、フィルム基材の耐熱性や融点を鑑みて設定すればよい。エージング処理の温度は、好ましくは30~80℃、より好ましくは30~60℃、さらに好ましくは30~50℃である。
エージング処理の時間は温度条件によっても異なるが、好ましくは6~168時間、より好ましくは12~120時間、さらに好ましくは12~96時間、特に好ましくは12~72時間である。
<包装用フィルムの用途/包装体>
本実施形態の包装用フィルムは、具体的には、食品、医薬品、日常雑貨等を包装するための包装用フィルム;真空断熱パネル用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
本実施形態の包装用フィルムは、包装体を構成するフィルムとして好適に用いることもできる。包装体は、例えば、物品を包装することを目的として使用される、本実施形態の包装用フィルムにより構成された包装袋自体、または、その包装袋で物品を包装したものである。また、用途に応じて、包装体の一部のみが本実施形態の包装用フィルムで構成されていてもよいし、包装体の実質上全部が本実施形態の包装用フィルムで構成されていてもよい。
包装体の形態は、例えば前述した合掌袋やスタンディングパウチ(パウチ包装)であることができる。合掌袋は前述のように開封容易性や外観の点で好ましい。パウチ包装については包装袋の容積を十二分に確保することができる点で好ましい。
包装対象の物品は特に限定されない。物品の例としては、食品、医薬品、半導体素子や有機EL等の電子部品などを挙げることができる。
念のため述べておくと、本実施形態の包装用フィルムにより包装体(包装袋など)を構成する場合、「合掌袋の製造に好ましい」という特性を確実に得るためには、基材層1Aが内表面側であり、コーティング層1Bが外表面側であることが好ましい。
包装対象の食品としては、特に、乾燥した物品(吸湿が問題となりうる物品)、例えば、焼き菓子(クッキーやビスケットなど)、煎餅、おかき、あられ、ぽん菓子等の米菓、野菜チップ、スナック菓子、ふりかけ、穀物粉末(小麦粉、米粉など)が挙げられる。
ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂は、少なくともポリエチレンに比べて、酸素などの気体を通しにくい傾向がある。この点からも、本実施形態の包装用フィルムにより構成された包装袋を用いて、食品(とりわけ、上記のような乾燥した食品)を包装することが好ましい。
包装用フィルムから包装体を製造する方法は特に限定されない。ヒートシールや溶断など、包装用フィルム/包装袋の分野で公知の方法を適宜用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
以下において、指数表記を記号「E」で示す場合がある。例えば、1.1E-06とは、1.1×10-6を意味する。
<材料の準備>
以下材料を準備した。
以下の記載で、「エルスマート」「T.U.X.」および「タケラック」は、登録商標である。
(基材層を構成するためのポリエチレン含有フィルム)
・C-1
三井化学東セロ株式会社製、エルスマートC-1(厚み:40μm)
・C-1a(厚み:40μm)
上記C-1のスリップ剤を減量したもの
・FC-S
三井化学東セロ株式会社製、T.U.X.FC-S(厚み:50μm)
・HZ
三井化学東セロ株式会社製、T.U.X.HZ(厚み:50μm)
・HZR-2
三井化学東セロ株式会社製、T.U.X.HZR-2(厚み:50μm)
各フィルムの厚み、融点、SRz、SRku、表面抵抗率および動摩擦係数は後掲の表のとおりである。SRzおよびSRkuの値については、各フィルムのコロナ処理面側の値である。
(アンカーコート層形成用塗布液)
三井化学社製のタケラックA-310と、三井化学社製のタケネートA-3と、酢酸エチルとを、各々5.3質量%、0.1質量%、94.6質量%となるように混合して調製した塗布液
(コーティング層形成のための塗布液)
・PU
三井化学株式会社製のタケラックWPB-341(ポリウレタン樹脂を含む水系の分散液)に、2-プロパノールを加えて、水と2-プロパノールの質量比率を同じにしたもの
・PVA
クラレ社製のポバール105MCと水とを、質量比率10:90で混合して作液した塗布液
・PVDC
三井化学エムシー株式会社製のポリ塩化ビニリデンを含む有機溶剤系の塗布液(ポリ塩化ビニリデンは、旭化成株式会社製のサランレジンF216)
各塗布液の不揮発成分濃度については、PU:9質量%、PVA:10質量%、PVDC:5質量%とした。
<包装用フィルムの製造(コーティング層の形成)>
基材層とコーティング層との間にアンカーコート層を設ける場合には、メイヤーバー(番手#3)を用いて、アンカーコート層形成用塗布液を、0.2g/mの量(不揮発分換算)で基材層フィルムの表面(コロナ処理面側)に塗布した。そして、100℃の条件下で15秒間放置して乾燥させて、アンカーコート層を形成した。
準備したポリエチレン含有フィルムのコロナ処理面、または、アンカーコート層を設けた場合にはアンカーコート層の表面に、メイヤーバーを用いて、コーティング層形成のための塗布液を塗布した。メイヤーバーについては、塗布液がPUまたはPVAの場合には#9のものを、塗布液がPVDCの場合には#18のものを用いた。塗布量は、後掲の表に記載の量(g/m)となるように調整した。
ポリエチレン含有フィルムと塗布液の組合せは、後掲の表のとおりである。
塗布後、熱風による乾燥処理を行った。塗布液がPUまたはPVDCの場合には、熱風の温度は100℃で時間は15秒、塗布液がPVAの場合には、熱風の温度は70℃で時間は15秒とした。
乾燥処理の後、塗布液がPUまたはPVAの場合には40℃で24時間、塗布液がPVDCの場合には40℃で48時間のエージング処理を行った。
以上のようにして、包装用フィルムを製造した。
<各種数値の測定>
(ガラス転移温度(Tgs、Tgc)、融点(Tm))
包装用フィルムから、コーティング層の部分と基材層の部分を、それぞれ約3.0mg採取して、測定用サンプルとした。それぞれのサンプルをDSC測定して、ガラス転移温度および融点を求めた。DSC測定の詳細は以下のとおりである。
・測定温度ステップ:(i)-50℃で10分保持→(ii)昇温して250℃で10分保持→(iii)降温して-50℃で10分保持→(iv)250℃まで昇温
・(i)~(iv)の各ステップ間の昇温速度、降温速度:5℃/min
・測定雰囲気:窒素ガス
上記における(iii)と(iv)の間の昇温(2nd run)の際に得られたDSC曲線に基づき、ガラス転移温度および融点を求めた。
ガラス転移温度については、補外ガラス転移開始温度を採用した。
融点については、融解ピークのピークトップ温度を採用した。
(SRzおよびSRku)
コーティング層表面およびポリエチレン含有フィルム(コーティング層形成前)のコロナ処理面の三次元表面性状を、株式会社小坂研究所の三次元表面粗さ測定機SE-3500を用いて測定した。測定の具体的条件(装置の設定など)は以下のとおりである。そして、測定で得られたデータをソフトウェアで解析することで、SRzおよびSRkuを求めた。
・測定長:MD方向;400μm、TD方向;1000μm
・測定本数:TD方向ライン数;201本
・測定ピッチ:MD方向;0.5μm、TD方向;2μm
・Z測定倍率:5000
・X送り速さ:0.2mm/s
・低域カット:0.25mm
・高域カット:R+W
・レベリング:最小二乗法
・Z原点:最小二乗法による0点合わせ
・触針先端曲率半径:2.0μm/60℃
・測定方向:MD方向に平行に触針移動
・解析ソフトウェア:装置内蔵の「3次元表面粗さ解析プログラム」
(基材層の静摩擦係数)
以下手順により測定した。
(1)50mm×75mmのサイズに切断した各ポリエチレン含有フィルムを2枚(以下、フィルム1および2とする)準備した。
(2)フィルム1を、傾斜角度を自由に調整可能な板(以下、傾斜板という)に固定した。
(3)フィルム2に、底面が真鍮から構成されている矩形の部材(底面の大きさは41mm×26mm)を固定した。そして、その部材の上に重りを取り付け、フィルム2にかかる質量が150gとなるようにした。
(4)フィルム1の上にフィルム2を重ねた。
(5)傾斜板を、1°/secの速度で、0°から徐々に傾斜させた。そして、上部のフィルム2が滑りだしたときの角度θから静摩擦係数を求めた(静摩擦係数=tanθ)。
今回用いたポリエチレン含有フィルムの片面は、コロナ処理されていた。よって、静摩擦係数は、非コロナ処理面同士、非コロナ処理面-コロナ処理面、および、コロナ処理面同士の3通りで測定した(前述のとおり、塗布液は、コロナ処理面に塗布された)。
(表面抵抗率)
包装用フィルムを、温度23℃、湿度50%RHの環境下で24時間保管した。その後、アドバンテスト社製デジタル超高抵抗/微量電流計(R8340A)とレジスチビティチェンバ(R12704)を用いて、表面抵抗率を測定した。測定条件については、印加電圧560V、印加時間30秒、温度23℃、湿度50%RHとした。
(コーティング層の厚み)
フィルムメトリクス社製の膜厚測定計F20-UV(光源:ハロゲン、測定スポット径:1.5mm)を用いて、コーティング層の厚みを測定した。
今回は、1つの資料について任意の3箇所で厚みを測定した。そして、それら3箇所の厚みの平均値をコーティング層の厚みとした。
(塗布量(不揮発成分換算))
・塗布液がPUであった場合
DMF(ジメチルホルムアミド)を用いて、包装用フィルムに設けられたコーティング層をふき取った。そして、ふき取り前後での質量変化から、塗布量(不揮発分換算)を計算した。
・塗布液がPVAであった場合
包装用フィルムを沸騰水に浸漬して、包装用フィルムに設けられたコーティング層を溶かした。そして、浸漬前後での質量変化から、塗布量(不揮発分換算)を計算した。
・塗布液がPVDCであった場合
蛍光X線分析で得られるCl由来のピークの強度に基づき算出した。この際、Cl量が既知の物質を用いて得られた検量線を利用した。
上記の各種情報をまとめて、表1と表2に示す。表1には基材層に関する情報をまとめた。表2にはコーティング層とフィルム全体に関する情報をまとめた。また、表2には、アンカーコート層の有無についても記載した。
比較例のフィルムは、全てコーティング層を有しない。よって、表2に比較例のフィルムに関する項目は無い。
表1および表2において、表面抵抗率の欄の「-」は、表面抵抗率を測定しなかったことを表す。
表2において、界面活性剤割合の欄の「-」は、塗布液が界面活性剤を含まなかったことを表す。
表2において、融点Tmの欄の「-」は、DSC測定において融点に対応するピークが観察されなかったことを表す。
Figure 0007420487000001
Figure 0007420487000002
<性能評価>
(耐ブロッキング性)
以下手順により評価した。
(1)各実施例または各比較例のフィルムを2枚ずつ準備した。
(2)(i)各実施例の2枚のフィルムを、コーティング層表面とコーティング層表面が接するように重ねた。または、(ii)各比較例の2枚のサンプルを、コロナ処理面とコロナ処理面が接するように重ねた。このとき、2枚のサンプルのMD/TD方向が一致するようにした。
(3)重ね合わせた2枚のサンプルを、シールコテを用いて、温度70℃、圧力2.0kgf、シール時間60秒、シール幅10mmの条件で加熱した。これにより、2枚のサンプルを意図的にブロッキングさせたサンプルを得た。
(4)加熱後終了後のサンプルを、室温下で自然冷却した。
(5)サンプルの表裏両面に、市販の粘着テープを貼って補強した(これは、ブロッキング強度が強すぎる場合、以下(6)の引張試験において、測定サンプルが伸びてしまい、正確なブロッキング強度が測定できなくなるためである)。
(6)室温に冷却されたサンプルを引張試験機にセットし、引張速度5mm/分で、基材フィルムのMD方向に引っ張った。そして、サンプルが1枚1枚に分離するまでの荷重を記録した。
後掲の表の「耐BL強度」の欄に、記録された荷重の最大値を記載した。この値が小さいほど、耐ブロッキング性は良好である。
(合掌袋等の製造適性:背面ヒートシール部の熱融着性の評価)
以下では、通常のヒートシール条件におけるコーティング層同士の熱融着のしにくさを評価することで、合掌袋等を製造する際の「背面ヒートシール部の熱融着性」について評価した。具体的な評価手順は以下のとおりである。
(1)各実施例または各比較例のフィルムのサンプルを2枚ずつ準備した。
(2)(i)各実施例の2枚のサンプルを、コーティング層の表面同士が接するように重ねた。または、(ii)各比較例の2枚のサンプルを、基材層に用いるフィルムのコロナ処理した表面同士が接するように重ねた。このとき、2枚のサンプルのMD/TD方向が一致するようにした。
(3)重ねられた2枚のサンプルを、シールコテを用いて、温度140℃、圧力1.5kgf、シール時間1.0秒、シール幅10mmの条件で加熱した。
(4)加熱後終了後のサンプルを、室温下で自然冷却した。
室温に冷却されたサンプルの状態、および、2枚のサンプルの分離のしやすさを、以下3段階で評価した。
◎(極めて良好):2枚のサンプルの間に熱融着は認められない。
○(良好):2枚のサンプルの間にわずかに熱融着が認められるが、手で容易に分離することができる。
×(悪い):2枚のサンプルが明らかに熱融着している。分離しようとすると、基材層が伸びてしまう。
ちなみに、上記(2)(i)において、各実施例の2枚のサンプルを、基材層に用いたポリエチレン含有フィルムの表面(コーティング層と反対側の面)同士が接するように重ねた以外は、上記(1)~(4)と同様の手順を行った。すると、全ての実施例で、ポリエチレンが十分に融解してヒートシール部を形成することができた。
(酸素透過度)
モコン社製の装置OX-TRAN2/21を用い、JIS K 7126に準じて、(i)温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下、または、(ii)温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下での、包装用フィルムの酸素透過度を測定した。
測定において、コーティング層がポリウレタンを含む場合には、アルミニウム製マスクを用いて測定面積を1/10または1/50にして酸素透過度を測定し、その後、得られた酸素透過度の値(生データ)を10倍または50倍したものを酸素透過度とした。ポリウレタンはポリビニルアルコールやポリ塩化ビニリデンに比べると酸素を通しやすく、マスクをせずに酸素透過度を測定すると適切な測定ができないおそれがあるためである。
性能評価の結果をまとめて下表に示す。
性能評価のうち、酸素透過度については、温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下で測定された値と、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下で測定された値の片方のみを示す。
Figure 0007420487000003
各実施例においては、基材層の片面に、ポリウレタンポリビニルアルコールまたはポリ塩化ビニリデンを含むコーティング層を設けることにより、耐ブロッキング性を良化させることができた。例えば、基材フィルムC-1aの片面にコーティング層が設けられた実施例3~8のフィルムの耐ブロッキング強度は、比較例2(基材フィルムC-1aのみ)の耐ブロッキング強度よりも小さくなった。
また、各実施例において、基材層の片面に、ポリウレタンポリビニルアルコールまたはポリ塩化ビニリデンを含むコーティング層を設けることにより、合掌袋等の製造適性を良好とすることができた。
さらに、各実施例において、基材層の片面に、ポリウレタンポリビニルアルコールまたはポリ塩化ビニリデンを含むコーティング層を設けることにより、酸素透過度を小さくすることができた(基材層が共通する実施例と比較例を参照されたい)。
実施例をより詳細に分析すると、例えば以下のようなことが読み取れる。
実施例3~6においては、基材フィルムおよび塗布液は同じで、コーティング層の厚みが異なっている。コーティング層の厚みが比較的大きい実施例5および6では、耐ブロッキング強度は比較的大きい。一方、コーティング層の厚みが比較的小さい実施例3および4では、耐ブロッキング強度は比較的小さい。
通常の感覚からすると、コーティング層が厚ければ厚いほど耐ブロッキング強度は小さくなるようにも思われる。しかし、実施例3~6からは、コーティング層が「適度に薄い」ほうが、耐ブロッキング強度は小さかった(つまり、耐ブロッキング性はより良好だった)。
1 フィルム
1A 基材層
1B コーティング層
10 背面ヒートシール部
15 底面ヒートシール部

Claims (14)

  1. ポリエチレンを含む基材層(ただし、架橋度がフイルムの厚さ方向において、内側に低下したポリエチレン系樹脂延伸フイルムを除く)と、
    ポリウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含み、かつ、前記基材層の片面に接して設けられているかまたはアンカーコート層を介して設けられているコーティング層(ただし、水性印刷インキおよび無機層状化合物を有するガスバリア層を除く)と、
    を備え、前記コーティング層の厚みは前記基材層の厚みより小さい包装用フィルムであって、前記コーティング層の前記基材層とは反対側の面は露出面となっている包装用フィルム。
  2. 請求項1に記載の包装用フィルムであって、
    前記コーティング層の厚みは0.3~2.0μmである包装用フィルム。
  3. 請求項1または2に記載の包装用フィルムであって、
    前記基材層の厚みは10~150μmである包装用フィルム。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
    温度23±2℃、湿度90±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×10mL/(m・day・MPa)未満である、かつ/または、温度23±2℃、湿度50±1.0%RHの条件下で測定される酸素透過度が1.0×10mL/(m・day・MPa)未満である包装用フィルム。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
    前記コーティング層のガラス転移温度をTgcとし、前記基材層のガラス転移温度をTgsとしたとき、
    Tgcの値は-25~120℃であり、Tgc-Tgsの値は90~245℃である包装用フィルム。
  6. 請求項5に記載の包装用フィルムであって、
    Tgsは-130~-120℃である包装用フィルム。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
    前記コーティング層は、融点を有しないか、または、120~230℃の融点を有する包装用フィルム。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって
    記コーティング層表面の、三次元測定により得られる十点平均粗さSRzは0.50μm以上である包装用フィルム。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
    前記コーティング層表面の、三次元測定により得られるクルトシスSRkuは25以上である包装用フィルム。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
    前記基材層の前記片面同士の静摩擦係数は0.08~2.50である包装用フィルム。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の包装フィルムであって、
    前記コーティング層の表面抵抗率は1×1012~1×1015Ωである包装用フィルム。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の包装用フィルムであって、
    前記コーティング層は界面活性剤を含み、
    前記コーティング層中の前記界面活性剤の割合は0.8~7.5質量%である包装用フィルム。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の包装用フィルムにより構成された包装体。
  14. 請求項13に記載の包装体であって、
    前記コーティング層が外表面にある包装体。
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