JP7333730B2 - 高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法、導電性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、導電性高分子水分散液を3.0~4.5質量%に濃縮したうえでプロピレングリコール等のジオール化合物を混合し、スクリーン印刷に適した導電性高分子分散液を得る方法が開示されている。
[2] 前記混合液に含まれる前記有機溶剤の含有量が、前記混合液の総質量に対して、50質量%以上である、[1]に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[3] 前記有機溶剤が、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤のうち、少なくとも一方を含む、[1]又は[2]に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[4] 前記有機溶剤がケトン系溶剤を含み、前記ケトン系溶剤がメチルエチルケトンを含む、[3]に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[5] 前記有機溶剤がアルコール系溶剤を含み、前記アルコール系溶剤がメタノールを含む、[3]に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[6] 前記有機溶剤がメチルエチルケトン及びメタノールを含む、[1]又は[2]に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[7] 前記混合液に前記高導電性複合体を析出させる際、前記混合液を40℃以上に加熱する、[1]~[6]の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[8] 前記混合液中に前記高導電性複合体を析出させる際、前記混合液中、前記ポリアニオン以外の酸及び塩基のうち少なくとも一方の含有量が、前記混合液の総質量に対して0.1質量%以下である、[1]~[7]の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[9] 前記高導電性複合体を分取する方法が、濾過である、[1]~[8]の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[10] 前記ジオール化合物が、プロピレングリコール、エチレングリコール、又はジエチレングリコールを含む、[1]~[9]の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[11] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、[1]~[10]の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[12] 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]~[11]の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[13] さらにバインダ成分を混合することを含む、[1]~[12]の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[14] 前記バインダ成分が、水分散性樹脂である、[13]に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
[15] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]~[14]の何れか一項に記載の製造方法で得た高導電性複合体の有機溶剤分散液を塗工し、形成された塗膜を乾燥することを含む、導電性フィルムの製造方法。
[16] 前記高導電性複合体の有機溶剤分散液の塗工方法がスクリーン印刷である、[15]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[17] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]~[14]の何れか一項に記載の製造方法で得た高導電性複合体の有機溶剤分散液の硬化層からなる導電層を備えた、導電性フィルム。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、導電性に優れ及び光透過性が良好な導電層をプラスチック基材上に形成することができる。さらに、導電層となる印刷領域と非印刷領域の境界が明確なスクリーン印刷を施すことができる。
本発明の導電性フィルムにあっては、導電性に優れ、光透過性が良好な導電層を備える。導電層がスクリーン印刷により形成された場合には、印刷領域からなる導電層と、非印刷領域からなる絶縁部との境界が従来よりも明確である。
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液と、有機溶剤とを混合した混合液を得て、前記混合液中に高導電性複合体を析出させた後、前記高導電性複合体を分取し、得られた前記高導電性複合体にジオール化合物を添加すること、を含む、高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法である。
本態様で用いる導電性複合体の水系分散液(以下、「導電性高分子水系分散液」ということがある。)は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水と、を含有する。この水系分散液は、液中の導電性複合体が分散状態にある範囲で、有機溶剤を含んでいても構わない。
ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体が水系分散媒に分散されてなる導電性高分子水系分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得ることができる。また、市販の導電性高分子水分散液を使用しても構わない。
上記範囲の下限値以上であると、有機溶剤の添加後の高導電性複合体の析出が容易になる。上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子水系分散液における導電性複合体の分散性が高まるので、導電性高分子水系分散液の保存中に意図しない凝集を防ぎ、有機溶剤の添加後に析出する高導電性複合体の質を均一にすることができる。
本態様で用いる導電性高分子水系分散液が含有してもよい有機溶剤としては、水に対する混和性が高いものが好ましく、例えば、後述のアルコール系溶剤が挙げられる。
なお、本明細書において、「導電性高分子水分散液」の用語は、分散媒として水を含み、有機溶剤を実質的に含んでいないことを明示する用語である。
導電性高分子水系分散液と、有機溶剤とを混合し、混合液を得る方法としては、例えば、導電性高分子水系分散液に有機溶剤を添加する方法、有機溶剤に導電性高分子水系分散液を添加する方法等が挙げられる。好適な実施形態としては、導電性高分子水系分散液を攪拌しながら有機溶剤を徐々に添加する方法が挙げられる。この添加方法であると、導電性高分子水系分散液における有機溶剤濃度が局所的に急上昇することを防止して、高導電性複合体を穏やかに析出させることができる。有機溶剤濃度が急激に高まると、高導電性複合体の不均質な凝集体が生じることがある。
上記範囲の下限値以上であると、高導電性複合体の析出がより容易になり、高導電性複合体の収率が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、混合液に含まれる導電性高分子水系分散液を相対的に増やすことができるので、分取する高導電性複合体の量を増やすことができる。
本態様の混合液を構成する有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、温度20℃において水100gに対して溶解量が1g以上の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ケトン系溶剤として、メチルエチルケトンを含むことが好ましい。
アルコール系溶剤として、メタノール又はイソプロパノールが好ましい。
上記の好適な有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
上記の好適な組み合わせの有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
上記の好適な範囲で有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより一層容易に析出させ、収率をより一層向上させることができる。
上記の好適な組み合わせの有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
上記の好適な範囲で有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより一層容易に析出させ、収率をより一層向上させることができる。
上記の好適な組み合わせの有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
上記の好適な範囲で有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより一層容易に析出させ、収率をより一層向上させることができる。
前記酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
前記塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基、トリオクチルアミン、オクチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
上記の酸及び塩基は、本態様の混合液中に高導電性複合体が析出することを阻害する原因になり得る。
調製した混合液中に高導電性複合体を析出させる方法は特に制限されず、前記混合液を静置するだけでも、析出させることができる。また、完全に静置させる必要はなく、穏やかに攪拌しながら析出させてもよい。
前記混合液を加熱すると、混合液中に高導電性複合体を容易に析出させることができ、高導電性複合体の収率を向上させることができる。
析出した高導電性複合体を前記混合液から分取する際には、常温(20~25℃)に戻して分取することが好ましい。
前記混合液中において析出した高導電性複合体を分取する(回収する)方法は特に制限されず、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。
なかでも、混合液に含まれる高導電性複合体以外の成分と高導電性複合体とを分離することが容易であることから、濾過又はデカンテーションが好ましい。ここで、濾過とは、混合液を通過させたフィルターに、高導電性複合体を捕捉する操作である。また、デカンテーションとは、析出した高導電性複合体を沈殿させ、上澄み液を除去する操作である。
濾過で分取する場合にはフィルターの目詰まりに対処する必要がある。また、フィルター上で高導電性複合体の固形物が濾過圧により圧縮されるので、濾過で分取した高導電性複合体は、デカンテーションで分取した場合よりも固い状態となり易い。デカンテーションで得た高導電性複合体は比較的柔らかいパウダー状態で得られるので、後で分散媒に容易に分散させることができる。
一方、デカンテーションで分取する場合、高導電性複合体が混合液中で沈殿するまで待つ必要がある。高導電性複合体の製造速度を高める観点からすると、濾過で分取することが好ましい。
分取した高導電性複合体に付着した有機溶剤等を乾燥して除去することにより、高導電性複合体の乾燥体を得ることができる。
分取した高導電性複合体に添加するジオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ有する有機化合物である。高導電性複合体の有機溶剤分散液の分散媒としてジオール化合物を含むことにより、高導電性複合体の有機溶剤分散液の印刷適性を向上させることができる。
ジオール化合物としては、直鎖状脂肪族炭化水素の両末端の水素原子の一つがヒドロキシ基で置換された化合物であることが好ましい。また、ジオール化合物は、高導電性複合体を容易に分散できることから、25℃において液体であることが好ましい。さらには、ジオール化合物は、乾燥しやすく、乾燥炉の汚染を防止できることから、標準気圧(1013hPa)における沸点が250℃以下であることが好ましい。また、ジオール化合物の標準気圧における沸点は、ジオール化合物の揮発を抑制する点では、100℃以上であることが好ましい。
ジオール化合物のなかでも、高導電性複合体の有機溶剤分散液の印刷適性をより向上させる点では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びブタンジオール(1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール)よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。なお、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びブタンジオールは、25℃において液体であり且つ標準気圧における沸点が250℃以下のジオール化合物である。
上記範囲の下限値以上であると、有機溶剤分散液から形成した導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、有機溶剤分散液中における高導電性複合体の分散性を高めることができる。
高導電性複合体とジオール化合物とを混合した後に分散処理を施してもよい。分散処理を施せば、有機溶剤分散液における高導電性複合体の分散性が向上するため、有機溶剤分散液の塗布や印刷によって得られる導電層の導電性及び透明性をより向上させることができる。
分散処理は、高導電性複合体とジオール化合物とを含有する混合液に、せん断力を付与して各成分を分散させる処理である。
分散処理に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ビーズミル等が挙げられる。分散機のなかでも、簡便に各成分の分散性を高くできることから、高圧ホモジナイザーが好ましい。
高導電性複合体の有機溶剤分散液には、バインダ樹脂、水溶性有機溶剤、高導電化剤、その他の添加剤等が含まれてもよい。これらの成分は、上記有機溶剤分散液に添加してもよいし、高導電性複合体と混合する前のジオール化合物に添加してもよい。
バインダ樹脂の具体例としては、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、メラミン樹脂等が挙げられる。
高導電性複合体の有機溶剤分散液中における分散性が高くなり、塗膜の強度も向上することから、バインダ樹脂として水分散性樹脂を使用することが好ましい。
水分散性樹脂としては、例えば、水分散性ポリエステル、水分散性アクリル樹脂、水分散性ポリウレタン、水分散性ポリイミド、水分散性メラミン樹脂等が挙げられる。これら水分散性樹脂のなかでも、水分散性ポリエステルが好ましい。バインダ樹脂が水分散性ポリエステルであれば、高導電性複合体の有機溶剤分散液の塗布や印刷によって形成される導電層の導電性を高め、その膜強度を強くすることができる。また、水分散性樹脂が水分散性ポリエステルであれば、高導電性複合体の有機溶剤分散液を塗布又は印刷する基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合に、基材に対する導電層の密着性を高めることができる。
水分散性樹脂は、その分散性を高める観点から、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有することが好ましい。
水分散性樹脂は、水系分散媒中に乳化されたエマルションであってもよい。
水分散性樹脂のなかでも、水分散性が高く、導電層の導電性をより高くできることから、酸基又はその塩を有するポリエステル、酸基又はその塩を有するポリウレタン、エマルション状のポリエステル、エマルション状のポリウレタンが好ましく、酸基又はその塩を有するポリエステルがより好ましい。
水分散性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水溶性有機溶剤は、標準気圧における沸点が前記ジオールの沸点より低いことが好ましい。前記有機溶剤分散液の塗膜の乾燥時に、先に水溶性有機溶剤が揮発することにより、均一な導電層を形成することができる。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、3個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
高導電性複合体の有機溶剤分散液に含まれる高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の製造方法で得られる高導電性複合体の有機溶剤分散液の粘度は、混合するジオール化合物の粘度によって調整することができる。前記有機溶剤分散液の印刷適正を高める観点から、前記有機溶剤分散液の25℃における前記粘度は、300cP(センチポアズ)以上5000cP以下が好ましく、400cP以上3000cP以下がより好ましく、500cP以上1000cP以下がさらに好ましい。ここで、粘度は、B型粘度計を用い、25℃にて測定した値である。前記粘度が上記範囲であると、高導電性複合体の有機溶剤分散液の印刷適性、特にスクリーン印刷の印刷適性がより高くなる。
ここで、1Pa・s(パスカル秒)=1000cP(センチポアズ)である。
本発明の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法によれば、混合液に含ませた導電性複合体の殆ど全てを高導電性複合体の析出体として回収することができる。つまり、90~100質量%という高い収率で高導電性複合体を得ることができる。前記混合液中に高導電性複合体が析出する要因は、ジオール化合物以外の有機溶剤に対して高導電性複合体が溶解し難いことであると推測される。
驚くべきことに、本発明の製造方法において析出した高導電性複合体を用いると、従来の導電性複合体(例えば、導電性高分子水分散液を凍結乾燥することにより得られた導電性複合体)を用いた場合よりも、導電性に優れた導電層を形成することができる(後述の実施例、比較例参照)。析出後の高導電性複合体と、従来の導電性複合体との化学的組成の相違は、有るとしても、高導電性複合体に分子レベルで付着した極微量の有機溶剤の有無だと考えられる。化学的組成よりも、物理化学的な性状の相違が導電性の差異に影響していると考えられる。
さらに、本発明の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法にあっては、高導電性複合体とジオール化合物とを任意の比率で混合できるため、粘度が適度に高く且つ分散性が優れた分散液を容易に得ることができる。前述した好適な範囲の粘度を有する前記有機溶剤分散液は、印刷適性、特にスクリーン印刷の印刷適性が高い。
本発明の第二態様の導電性フィルムの製造方法は、第一態様の製造方法で得た高導電性複合体の有機溶剤分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工し、形成された塗膜を乾燥することを含む、導電性フィルムの製造方法である。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
前記フィルム基材用樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
また、フィルム基材には、形成する導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
本明細書におけるフィルム基材の厚さは、無作為に選択される10箇所の断面について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
高導電性複合体の有機溶剤分散液をフィルム基材に塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工することができる。
前記分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、良好な導電性を得る観点から、固形分として、0.1g/m2以上10.0g/m2以下の範囲であることが好ましい。
フィルム基材に形成された塗膜を乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定され、例えば、50℃以上150℃以下に設定できる。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記温度で乾燥する場合の乾燥時間としては、例えば、30秒以上5分以下とすることができる。
本発明の第三態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の製造方法で得た高導電性複合体の有機溶剤分散液の硬化層からなる導電層を備えた、導電性フィルムである。本態様の導電性フィルムは、第二態様の製造方法によって製造することができる。
導電層の厚さは、任意に選択される箇所の導電層の断面について、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて測定した値である。
導電層は、フィルム基材の表面にパターン状に形成されていてもよいし、フィルム基材の全面に形成されていてもよい。
本発明の導電性フィルムの導電層には、高導電性複合体が含まれているので、従来の導電性複合体が含まれる導電層よりも導電性が優れる。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で撹拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間撹拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間撹拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSS水分散液)溶液を得た。
製造例2で得たPEDOT-PSSの水系分散液100gを凍結乾燥して、1.2gのPEDOT-PSS(導電性複合体)の凍結乾燥体を得た。
製造例2のPEDOT-PSS水分散液100g(固形分1.2g)に、メタノール12.5gと、メチルエチルケトン200gとを加えた混合液を、60℃で3時間加熱攪拌した。次に、前記混合液を常温(20~25℃)に戻し、1時間静置したところ、前記混合液内に析出したPEDOT-PSSからなる高導電性複合体が沈殿し、上層(上澄み)が透明な液体となった。この混合液を濾過し、析出した高導電性複合体1.2gをろ取した。
ろ取した高導電性複合体をアセトン100gで洗浄して乾燥した。この高導電性複合体1.2gにプロピレングリコール60gを添加し、高圧ホモジナイザーで分散し、固形分2質量%の高導電性複合体のプロピレングリコール分散液を得た。この分散液の粘度を後述の方法で測定した結果を表1に示す。
次に、350メッシュのスクリーン版を用いてPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に、上記プロピレングリコール分散液を印刷し、150℃で3分乾燥して導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムについて、後述する方法で測定した表面抵抗値及び光透過率、並びにスクリーン印刷の結果(印刷性)を表1に示す。
実施例1において、プロピレングリコールをエチレングリコールに変更したこと以外は、実施例1と同様にして高導電性複合体の分散液を調製し、導電性フィルムを作製した。その結果を表1に示す。
実施例1において、プロピレングリコールをジエチレングリコールに変更したこと以外は、実施例1と同様にして高導電性複合体の分散液を調製し、導電性フィルムを作製した。その結果を表1に示す。
実施例1で得られた高導電性複合体のプロピレングリコール分散液45g(固形分0.9g)に、水分散性ポリエステルであるプラスコートRZ-105(互応化学社製、固形分25%)5gを加え、混合して塗料を得た。この塗料の粘度を後述する方法で測定した結果を表1に示す。
次に、実施例1と同様にして、上記塗料をPETフィルム上に印刷し、導電性フィルムを得て、評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、プロピレングリコールをメタノールに変更したこと以外は、実施例1と同様にして高導電性複合体の分散液を調製し、導電性フィルムを作製した。その結果を表1に示す。
製造例3で得た導電性複合体の凍結乾燥体1.2gにプロピレングリコール60gを添加し、高圧ホモジナイザーで分散し、固形分2質量%の導電性複合体のプロピレングリコール分散液を得た。この分散液の粘度を後述の方法で測定した結果を表1に示す。
次に、350メッシュのスクリーン版を用いてPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に、上記プロピレングリコール分散液を印刷し、150℃で3分乾燥して導電性フィルムを得た。得られた導電性フィルムについて、後述する方法で測定した表面抵抗値及び光透過率、並びにスクリーン印刷の結果(印刷性)を表1に示す。
[粘度]
各例で調製した高導電性複合体の有機溶剤分散液の粘度を、B型粘度計(A&D社製、型番:SV-10)を用いて25℃で測定した。
各例で作製した導電性フィルムにおける印刷領域の表面抵抗値の測定には、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製ハイレスタ)を用いた。測定において印加電圧を10Vとした。各測定結果を示した表1中の「Ω/□」はオームパースクエアの意味である。
表面抵抗値(単位:Ω/□)が小さい程、導電性が高いことを示す。
各例で作製した導電性フィルムにおける印刷領域の全光線透過率を、JIS K7136:2000に従い、ヘーズメーター(日本電色工業社製、型番:NDH-5000)を用いて測定した。全光線透過率(単位:%)が高い程、導電層の透明性が高く、導電層中における高導電性複合体の分散性が高いことを示す。
各例の導電性フィルムにおけるスクリーン印刷した領域と、非印刷領域との境界線を目視で観察し、にじみの有無を評価した。にじみが無く、境界線が明確である場合には良好と評価した。
Claims (15)
- π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液と、有機溶剤とを混合した混合液を得て、前記混合液中に高導電性複合体を析出させた後、前記高導電性複合体を分取し、得られた前記高導電性複合体にジオール化合物を添加すること、を含む、高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法であり、
前記有機溶剤が、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤を含み、
前記ジオール化合物が、25℃において液体であり且つ標準気圧において250℃以下の沸点を示す、高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。 - 前記混合液に含まれる前記有機溶剤の含有量が、前記混合液の総質量に対して、50質量%以上である、請求項1に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記ケトン系溶剤がメチルエチルケトンを含む、請求項1又は2に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記アルコール系溶剤がメタノールを含む、請求項1又は2に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記有機溶剤がメチルエチルケトン及びメタノールを含む、請求項1又は2に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記混合液に前記高導電性複合体を析出させる際、前記混合液を40℃以上に加熱する、請求項1~5の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記混合液中に前記高導電性複合体を析出させる際、前記混合液中、前記ポリアニオン以外の酸及び塩基のうち少なくとも一方の含有量が、前記混合液の総質量に対して0.1質量%以下である、請求項1~6の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記高導電性複合体を分取する方法が、濾過である、請求項1~7の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記ジオール化合物が、プロピレングリコール、エチレングリコール、又はジエチレングリコールを含む、請求項1~8の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1~9の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1~10の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- さらにバインダ成分を混合することを含む、請求項1~11の何れか一項に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記バインダ成分が、水分散性樹脂である、請求項12に記載の高導電性複合体の有機溶剤分散液の製造方法。
- フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1~13の何れか一項に記載の製造方法で得た高導電性複合体の有機溶剤分散液を塗工し、形成された塗膜を乾燥することを含む、導電性フィルムの製造方法。
- 前記高導電性複合体の有機溶剤分散液の塗工方法がスクリーン印刷である、請求項14に記載の導電性フィルムの製造方法。
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