JP2021095459A - 導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ジオール化合物を高濃度で含まずとも耐光性に優れた導電層を形成することが可能な導電性高分子分散液及びその製造方法と、その導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた導電性フィルム及びその製造方法を提供する。【解決手段】π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、特定のヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒とを含む導電性高分子分散液。前記ヒドロキシピリジン化合物は、例えば、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリジン、及び2−ヒドロキシニコチン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性フィルム及びその製造方法に関する。
導電層を形成するための塗料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸がドープした導電性複合体を含む導電性高分子分散液を使用することがある。特許文献1には、ジオール化合物を85〜100質量%の割合で含む導電性高分子分散液から形成された導電層は、耐光性に優れることが開示されている。
特開2019−116537号公報
しかし、特許文献1に記載された導電性高分子分散液はジオール化合物を高濃度で含むので粘度が高く、フィルム基材への塗布が難しくなる問題があった。
本発明は、ジオール化合物を高濃度で含まずとも耐光性に優れた導電層を形成することが可能な導電性高分子分散液及びその製造方法と、その導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた導電性フィルム及びその製造方法を提供する。
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒と、を含有する、導電性高分子分散液。
[2] 前記ヒドロキシピリジン化合物が、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリジン、及び2−ヒドロキシニコチン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4] 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[3]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[5] 前記分散媒が有機溶剤を含み、前記分散媒の総質量に対する前記有機溶剤の含有量が60質量%以上100質量%以下である、[1]〜[4]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[6] 前記有機溶剤がイソプロパノールまたはメチルエチルケトンを含む、[5]に記載の導電性高分子分散液。
[7] 前記アミン化合物が3級アミンを含む、[1]〜[6]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[8] 前記3級アミンがトリオクチルアミン、又はトリブチルアミンである、[7]に記載の導電性高分子分散液。
[9] バインダ成分をさらに含有する、[1]〜[8]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[10] 前記バインダ成分が、アクリル樹脂の光硬化性モノマー又は光硬化性オリゴマーを含む、[9]に記載の導電性高分子分散液。
[11] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液と、有機溶剤とを混合した混合液を得て、前記混合液中に高導電性複合体を析出させ、前記高導電性複合体を分取した後、分取した前記高導電性複合体に、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒とを混合することを含む、導電性高分子分散液の製造方法。
[12] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を凍結乾燥し、前記導電性複合体の凍結乾燥体を得て、前記凍結乾燥体に、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒とを混合することを含む、導電性高分子分散液の製造方法。
[13] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[10]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工し、塗膜を乾燥することを含む、導電性フィルムの製造方法。
[14] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[10]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた、導電性フィルム。
Figure 2021095459
[式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基またはアルキル基であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。]
本発明の導電性高分子分散液によれば、ジオール化合物を高濃度で含まずとも耐光性に優れた導電層を形成することができる。
本発明の導電性フィルムにあっては、耐光性に優れた導電層を備えているので、ディスプレイや光学部材の用途にも適している。
本発明の導電性フィルムの製造方法にあっては、バーコーター等の汎用的な塗布方法により導電性高分子分散液を塗布することができ、導電層を容易に形成することができる。
≪導電性高分子分散液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、後述の式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒と、を含有する、導電性高分子分散液である。
[導電性複合体]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
本態様の導電性複合体は、後述する方法で得た高導電性複合体であることが好ましい。高導電性複合体を含む導電性高分子分散液から形成された導電層の導電性が向上し、表面抵抗値がより低い導電性フィルムを製造することができる。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、導電性高分子分散液の総質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子分散液を塗布して形成する導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高め、均一な導電層を形成することができる。
上記の好適な含有量の範囲は、導電性複合体が高導電性複合体である場合も同様に好適である。
[ヒドロキシピリジン化合物]
本態様の導電性高分子分散液に含まれている1種以上のヒドロキシピリジン化合物は、下記式(1)で表される化合物(以下、「ヒドロキシピリジン化合物(1)」ということがある。)である。
Figure 2021095459
上記式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基またはアルキル基であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。
本発明の効果をより高める観点から、式(1)は下記の構成であることが好ましい。
前記アルキル基は直鎖状でもよいし、分岐鎖状でもよい。
前記アルキル基の炭素数は、例えば1〜18が挙げられ、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3がより一層好ましく、1又は2が特に好ましく、1が最も好ましい。前記分散媒が有機溶剤を含む場合には、炭素数の大きいアルキル基を有するヒドロキシピリジン化合物(1)も容易に溶解され得る。
前記Rの官能基数を表すmは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
前記Rの官能基数を表すnが0である場合、mは1であることが好ましい。
前記Rの官能基数を表すnが1である場合、Rはカルボキシル基であることが好ましく、mは1であることが好ましい。
前記Rの官能基数を表すnが2である場合、2つのRのうち少なくとも一方はメチル基であることが好ましく、mは1であることが好ましい。
ヒドロキシピリジン化合物(1)の好適な具体例として、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシ−6−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−5−メチルピリジン、2−ヒドロキシイソニコチン酸、2−ヒドロキシニコチン酸、6−ヒドロキシニコチン酸、及び3−ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸が挙げられる。本態様の導電性高分子分散液は、この群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記で例示した中でも、形成される導電層の耐光性が向上し易いことから、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリジン、及び2−ヒドロキシニコチン酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体100質量部に対するヒドロキシピリジン化合物(1)の含有量は、0.1質量部以上1000質量部以下が好ましく、0.5質量部以上500質量部以下がより好ましく、1質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電層の耐光性をより向上させることができる。
上記の好適なヒドロキシピリジン化合物(1)及び好適な含有量の範囲は、導電性複合体が高導電性複合体である場合も同様に好適である。
[アミン化合物(2)]
本明細書において、ヒドロキシピリジン化合物(1)以外のアミン化合物をアミン化合物(2)と記すことがある。
アミン化合物(2)としては、第一級アミン(1級アミン)、第二級アミン(2級アミン)及び第三級アミン(3級アミン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
アミン化合物(2)は1種のみが含まれてもよいし、2種以上が含まれていてもよい
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
以上で例示した中でも、導電性複合体のポリアニオンの余剰のアニオン基に対する配位し、導電性複合体を疎水化することにより、表面抵抗値が低い導電層が形成され易いことから、3級アミンが好ましく、トリブチルアミン、又はトリオクチルアミンが特に好ましい。
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体100質量部に対するアミン化合物(2)の含有量は、1質量部以上5000質量部以下が好ましく、5質量部以上1000質量部以下がより好ましく、10質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電性に優れた導電層を形成することができる。
上記の好適なアミン化合物(2)及び好適な含有量の範囲は、導電性複合体が高導電性複合体である場合も同様に好適である。
[分散媒]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体は、アミン化合物(2)が配位して疎水化されているので、分散媒は有機溶剤を含むことが好ましく、有機溶剤のみからなることがより好ましい。
前記有機溶剤は、疎水化された導電性複合体を分散又は溶解することができるので、分散媒又は溶媒ということができる。本明細書において、分散と溶解とを区別せずに単に分散ということがあり、分散媒と溶媒とを区別せずに単に分散媒ということがある。
前記有機溶剤は、水溶性有機溶剤でもよいし、非水溶性有機溶剤でもよいし、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の混合溶剤でもよい。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。また、非水溶性有機溶剤の1種以上と混合した有機溶剤を使用してもよい。
導電性高分子分散液の塗工性が良好になることから、水溶性有機溶剤としてはアルコール系溶剤又はケトン系溶剤が好ましく、アルコール系溶剤がより好ましい。
非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
非水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水溶性有機溶剤のなかでも、バインダ成分の分散性が良好になる観点から、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、トルエンがより好ましい。
前記有機溶剤のなかでも、アミン化合物(2)が配位した導電性複合体の分散性をより高められることから、アルコール系溶剤から選択される1種以上が好ましい。
本態様の導電性高分子分散液が含む分散媒の総質量に対する有機溶剤の含有量は、60質量%以上100質量%であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の含有割合が上記範囲であると、疎水化された導電性複合体およびバインダ成分を容易に分散させることができる。
なお、導電性高分子分散液に含まれる分散媒の総質量は、導電性高分子分散液の総質量から不揮発成分の質量を引いた質量として求められる。
上記の好適な分散媒及び好適な含有量の範囲は、導電性複合体が高導電性複合体である場合も同様に好適である。
[バインダ成分]
バインダ成分は、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、ヒドロキシピリジン化合物(1)、及びアミン化合物(2)以外の化合物であり、例えば、導電層形成時に硬化する硬化性モノマー、硬化性オリゴマー、硬化性シリコーン等が挙げられる。硬化性モノマー、硬化性オリゴマー、及び硬化性シリコーンは、硬化により形成した硬化物がバインダ(結着材)となる。
バインダ成分由来のバインダの具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン、アルコキシシランの縮合物、シリケートの縮合物等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれるバインダ成分は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー、エポキシモノマー、オルガノシロキサン、アルコキシシラン、シリケート等が挙げられる。
硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。
硬化性シリコーンとしては、オルガノシロキサン、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。硬化性シリコーンは縮合硬化型でもよいし、付加硬化型でもよい。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーが含まれる場合、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。バインダ成分としてオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーが含まれる場合、導電層に離型性を付与することができる。
硬化性のモノマー又はオリゴマーを用いた場合には、硬化触媒を添加してもよい。熱硬化性のモノマー又はオリゴマーの場合、加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤が好ましい。光硬化性のモノマー又はオリゴマーの場合、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。また、オルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いた場合には、硬化用の白金触媒を用いることが好ましい。
本態様の導電性高分子分散液において、バインダ成分の固形分(不揮発成分)の含有割合は、導電性複合体の固形分100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、500質量部以上8000質量部以下がより好ましく、1000質量部以上5000質量部以下がさらに好ましい。バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であれば、導電層の強度を向上させることができる。一方、バインダ成分の含有割合が過剰であると、導電性複合体の含有割合が低下するため、導電層の導電性が低下することがある。
上記の好適なバインダ成分及び好適な含有量の範囲は、導電性複合体が高導電性複合体である場合も同様に好適である。
[高導電化剤]
本態様の導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、ヒドロキシピリジン化合物(1)、アミン化合物(2)、及びバインダ成分は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
前記高導電化剤としては、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物(2価アルコール)又はアミド基を有する化合物が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
本態様の導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本態様の導電性高分子分散液における高導電化剤の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100,000質量部以下が好ましく、10質量部以上10,000質量部以下がより好ましく、50質量部以上5000質量部以下がさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
上記の好適な高導電化剤及び好適な含有量の範囲は、導電性複合体が高導電性複合体である場合も同様に好適である。
[その他の添加剤]
本態様の導電性高分子分散液には、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記導電性複合体、ヒドロキシピリジン化合物(1)、アミン化合物(2)、前記分散媒、前記高導電化剤、及び前記バインダ成分以外の化合物である。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
《導電性高分子分散液の製造方法》
本発明の第二態様は、第一態様の導電性高分子分散液を製造する方法である。
本態様の第一実施形態は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液と、有機溶剤とを混合した混合液を得て、前記混合液中に高導電性複合体を析出させ、前記高導電性複合体を分取した後、分取した前記高導電性複合体に、ヒドロキシピリジン化合物(1)と、アミン化合物(2)と、分散媒とを混合することを含む。
第一実施形態にあっては、アミン化合物(2)が高導電性複合体のポリアニオンの余剰のアニオン基に配位し、高導電性複合体を疎水化して、有機溶剤に対する分散性を高める。この結果、第一態様で説明したように有機溶剤を含む導電性高分子分散液を得ることができる。上記配位を形成する際の分散媒が有機溶剤であると、疎水化された導電性複合体がその有機溶剤に容易に分散され、導電性高分子分散液が容易に得られるので好ましい。
本態様の第二実施形態は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を凍結乾燥し、前記導電性複合体の凍結乾燥体を得て、前記凍結乾燥体に、ヒドロキシピリジン化合物(1)と、アミン化合物(2)と、分散媒とを混合することを含む。
第二実施形態にあっては、アミン化合物(2)が、凍結乾燥された導電性複合体のポリアニオンの余剰のアニオン基に配位し、導電性複合体を疎水化して、有機溶剤に対する分散性を高める。この結果、第一態様で説明したように有機溶剤を含む導電性高分子分散液を得ることができる。上記配位を形成する際の分散媒が有機溶剤であると、疎水化された導電性複合体がその有機溶剤に容易に分散され、導電性高分子分散液が容易に得られるので好ましい。
本態様で原料として用いる導電性複合体の水系分散液は、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得てもよいし、市販のものを使用しても構わない。
前記化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
本態様の水系分散媒には有機溶剤が含まれてもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、温度20℃において水100gに対して溶解量が1g以上の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられ、アルコール系溶剤が好ましい。具体的な水溶性有機溶剤の例示は、第一態様の説明と同様であるので省略する。
本態様の水系分散媒の総質量に対する水の含有割合は、例えば、70質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。
[高導電性複合体の製造方法]
前記高導電性複合体は、次に説明する分取工程により得ることができる。
分取工程は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する導電性高分子水系分散液と、有機溶剤とを混合した混合液を得て、前記混合液中に高導電性複合体を析出させ、析出した高導電性複合体を分取する工程である。
高導電性複合体と導電性複合体との化学的組成の明確な違いは現状見出せていないが、析出を経た高導電性複合体は、導電性に優れる。
以下、分取工程について詳細に説明する。
(分取工程)
本工程で材料として用いる導電性高分子水系分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水と、を含有する。この水系分散液は、液中の導電性複合体が分散状態にある範囲で、有機溶剤を含んでいても構わない。
前記ポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープし、導電性を有する導電性複合体を形成している。前記ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有する。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水に対する分散性を有する。
本工程で用いる導電性高分子水系分散液において、導電性複合体は分散状態にある。分散状態と析出状態の区別は、簡便には目視で行うことができる。分散状態の分散液の透明性は高く、分散液中に固体の浮遊物は見当たらない。一方、析出状態の液の透明性は低く、液中に固体の浮遊物が観察される。通常、分散状態の導電性複合体は容易には沈殿せず、例えば12時間静置したとしても、沈殿は生じ難い。一方、析出状態の液中の浮遊物は、沈降し易く、例えば12時間程度静置することにより、沈殿を生じ易い。
本工程で用いる導電性高分子水系分散液を、保留粒子径7μmのフィルターに通すと、分散状態の導電性複合体は分散媒とともにフィルターを通過する。一方、析出状態の導電性複合体は上記フィルターに捕捉され得る。
ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。
導電性複合体を構成するπ共役系導電性高分子およびポリアニオンの説明は、前述の説明と重複するので省略する。
本工程で用いる導電性高分子水系分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得ることができる。また、市販の導電性高分子水分散液を使用しても構わない。
前記化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒及び酸化剤の説明は前述と同様であるので、ここでは省略する。
本工程の導電性高分子水系分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、水系分散液の総質量に対して、例えば、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、有機溶剤の添加後の高導電性複合体の析出が容易になる。上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子水系分散液における導電性複合体の分散性が高まるので、導電性高分子水系分散液の保存中に意図しない凝集を防ぎ、有機溶剤の添加後に析出する高導電性複合体の質を均一にすることができる。
本工程で用いる導電性高分子水系分散液には、導電性複合体が分散状態にある範囲において、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤の含有量は少ない程好ましく、実質的に含まれないことがより好ましく、例えば、水系分散液の総質量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
本工程で用いる導電性高分子水系分散液が含有してもよい有機溶剤としては、水に対する混和性が高いものが好ましく、例えば、後述のアルコール系溶剤が挙げられる。
なお、本明細書において、「導電性高分子水分散液」の用語は、分散媒として水を含み、有機溶剤を実質的に含んでいないことを明示する用語である。
(混合液の調製)
導電性高分子水系分散液と、有機溶剤とを混合し、混合液を得る方法としては、例えば、導電性高分子水系分散液に有機溶剤を添加する方法、有機溶剤に導電性高分子水系分散液を添加する方法等が挙げられる。好適な実施形態としては、導電性高分子水系分散液を攪拌しながら有機溶剤を徐々に添加する方法が挙げられる。この添加方法であると、導電性高分子水系分散液における有機溶剤濃度が局所的に急上昇することを防止して、高導電性複合体を穏やかに析出させることができる。有機溶剤濃度が急激に高まると、高導電性複合体の不均質な凝集体が生じることがある。
前記混合液に含まれる前記有機溶剤の含有量は、前記混合液の総質量に対して、50質量%以上100質量%未満が好ましく、55質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましく、65質量%以上80質量%以下が特に好ましい。ここで、前記有機溶剤の含有量は、混合する前の導電性高分子水系分散液に含まれていた有機溶剤を含む量である。
上記範囲の下限値以上であると、高導電性複合体の析出がより容易になり、導電性複合体の収率が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、混合液に含まれる導電性高分子水系分散液を相対的に増やすことができるので、分取する高導電性複合体の量を増やすことができる。
導電性高分子水系分散液と、有機溶剤とを混合し、得られた混合液を静置した後の外観は、水と有機溶剤とが完全に相溶していてもよいし、互いに分離していても構わないが、高導電性複合体の析出を容易にする観点から、充分に相溶していることが好ましい。
本工程の混合液を構成する有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、温度20℃において水100gに対して溶解量が1g以上の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本工程の混合液を構成する有機溶剤は、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤のうち、少なくとも一方を含むことが好ましい。
ケトン系溶剤として、メチルエチルケトンを含むことが好ましい。
アルコール系溶剤として、メタノール又はイソプロパノールが好ましい。
上記の好適な有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
本工程の混合液において、メチルエチルケトンは、メタノール又はイソプロパノールと組み合わせて含まれることが好ましい。この場合、メチルエチルケトン100質量部に対するメタノール又はイソプロパノールの含有量は、1質量部以上100質量部以下が好ましく、3質量部以上50質量部以下がより好ましく、6質量部以上20質量部以下がさらに好ましい。
上記の好適な組み合わせの有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
上記の好適な範囲で有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより一層容易に析出させ、収率をより一層向上させることができる。
本工程の混合液において、イソプロパノールは、酢酸メチル又は酢酸エチルと組み合わせて含まれることが好ましい。この場合、イソプロパノール100質量部に対する酢酸メチル又は酢酸エチルの含有量は、10質量部以上300質量部以下が好ましく、30質量部以上200質量部以下がより好ましく、60質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。
上記の好適な組み合わせの有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
上記の好適な範囲で有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより一層容易に析出させ、収率をより一層向上させることができる。
本工程の混合液において、メチルエチルケトンと、イソプロパノールと、酢酸メチル又は酢酸エチルとが組み合わせて含まれることが好ましい。この場合、イソプロパノール100質量部に対する酢酸メチル又は酢酸エチルの含有量は、10質量部以上300質量部以下が好ましく、30質量部以上200質量部以下がより好ましく、60質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。且つ、イソプロパノール100質量部に対するメチルエチルケトンの含有量は、100質量部以上3000質量部以下が好ましく、200質量部以上2000質量部以下がより好ましく、500質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
上記の好適な組み合わせの有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより容易に析出させ、収率をより向上させることができる。
上記の好適な範囲で有機溶剤が含まれると、前記混合液中に高導電性複合体をより一層容易に析出させ、収率をより一層向上させることができる。
本工程の混合液には、前記ポリアニオン以外の酸、又は、塩基の含有量が、前記混合液の総質量に対して0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。
前記酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
前記塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基、トリオクチルアミン、オクチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
上記の酸又は塩基は、本態様の混合液中に高導電性複合体が析出することを阻害する原因になり得る。
(高導電性複合体の析出)
調製した混合液中に高導電性複合体を析出させる方法は特に制限されず、前記混合液を静置するだけでも、析出させることができる。また、完全に静置させる必要はなく、穏やかに攪拌しながら析出させてもよい。
前記混合液に高導電性複合体を析出させる際には、前記混合液を加熱することが好ましい。加熱温度としては、40℃以上が好ましく、50℃以上100℃以下がより好ましく、60℃以上80℃以下がさらに好ましい。上記の好適な加熱温度における加熱時間としては、例えば、1時間以上10時間以下とすることができる。
前記混合液を加熱すると、混合液中に高導電性複合体を容易に析出させることができ、導電性複合体の収率を向上させることができる。
(高導電性複合体の分取)
混合液中に析出した高導電性複合体を分取する(回収する)方法は特に制限されず、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。
なかでも、混合液に含まれる高導電性複合体以外の成分と高導電性複合体とを分離することが容易であることから、濾過又はデカンテーションが好ましい。ここで、濾過とは、混合液を通過させたフィルターに、高導電性複合体を捕捉する操作である。また、デカンテーションとは、析出した高導電性複合体を沈殿させ、上澄み液を除去する操作である。
濾過で分取する場合にはフィルターの目詰まりに対処する必要があるので、デカンテーションの方がより容易に分取できる。また、フィルター上で高導電性複合体の固形物が濾過圧により圧縮されるので、濾過で分取した高導電性複合体は、デカンテーションで分取した場合よりも固い状態となり易い。デカンテーションで得た高導電性複合体は比較的柔らかいパウダー状態で得られるので、後で分散媒に容易に分散させることができる。従って、デカンテーションにより高導電性複合体を分取することがより好ましい。
分取した高導電性複合体は、高導電性複合体を溶解し難い有機溶剤を用いて洗浄することが好ましい。具体的には、例えば、高導電性複合体を捕捉したフィルターに有機溶剤をかけ流してもよいし、デカンテーション後に容器の底に残った高導電性複合体に有機溶剤を添加し、攪拌した後、再度デカンテーション等により分取してもよい。
分取した高導電性複合体に付着した有機溶剤等を乾燥して除去することにより、高導電性複合体の乾燥体を得ることができる。
本工程で得た高導電性複合体は水に対する分散性が高いので、水を含有する水系分散媒に容易に分散させることができる。
本工程で用いる高導電性複合体は、分取工程で得た後、乾燥して保存されていてもよいし、保存を経ずに直ちに使用されてもよい。
≪導電性フィルムの製造方法≫
本発明の第三態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の導電性高分子分散液、又は第二態様の製造方法で得た導電性高分子分散液を塗工し、形成された塗膜を乾燥することを含む、導電性フィルムの製造方法である。
本態様において使用するフィルム基材としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
フィルム基材用樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
また、フィルム基材には、形成する導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の平均厚みとしては、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
(塗工工程)
導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工することができる。
前記分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、良好な導電性を得る観点から、固形分として、0.1g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
(乾燥工程)
フィルム基材に形成された塗膜を乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定され、例えば、50℃以上150℃以下に設定できる。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記温度で乾燥する場合の乾燥時間としては、例えば、30秒以上3分以下とすることができる。
前記塗膜が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合、乾燥後の塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電層の形成速度を速くでき、導電性フィルムの生産性が向上する。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は、導電層を充分に硬化させる観点から、100mW/cm以上が好ましい。また、導電層を充分に硬化させる観点から、積算光量は50mJ/cm以上が好ましい。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
≪導電性フィルム≫
本発明の第四態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の導電性高分子分散液、又は第二態様で製造した導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた、導電性フィルムである。本態様の導電性フィルムは、第三態様の製造方法によって製造することができる。
本態様により得られる導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える。導電層は、ヒドロキシピリジン化合物(1)と、導電性複合体または高導電性複合体とを含有しており、導電性複合体または高導電性複合体を構成するポリアニオンの一部のアニオン基には、アミン化合物(2)が配位している。
塗布した上記有機溶剤分散液がバインダ成分を含む場合には、導電層にバインダ成分又はバインダ成分が硬化した硬化物が含まれる。
本態様の導電性フィルムが有する導電層の平均厚さとしては、例えば、10nm以上50000nm以下であることが好ましく、20nm以上40000nm以下であることがより好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
本態様の導電性フィルムの導電層の表面抵抗値は、良好な導電性の目安として、例えば、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下が好ましく、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下がより好ましく、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下がさらに好ましい。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
(製造例2)導電性高分子水分散液の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
次いで、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)が水に分散された導電性高分子水分散液を得た。
(製造例3)凍結乾燥体の製造
製造例2で得たPEDOT−PSSの水分散液1000gを凍結乾燥して、12gのPEDOT−PSS(導電性複合体)の凍結乾燥体を得た。
(製造例4)
製造例2のPEDOT−PSS水分散液1000gに、メタノール150gと、メチルエチルケトン2000gとを加えた混合液を、60℃で4時間攪拌した。次に、混合液を静置し、混合液内に析出したPEDOT−PSSからなる高導電性複合体をろ取し、イソプロパノール1000gで洗浄し、乾燥して高導電性複合体12gを得た。
(実施例1)
イソプロパノール500gに、1.5gのPEDOT−PSSの凍結乾燥体と、1.325gのトリオクチルアミンと、1.068gの4−ヒドロキシピリジンを加え、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、トリオクチルアミンと4−ヒドロキシピリジンのうち、少なくともトリオクチルアミンが配位した導電性複合体を含む導電性高分子分散液を得た。
次に、得られた溶液を#8のバーコーターを用いてPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に塗布し、100℃で1分間乾燥して導電性フィルムを得た。
(実施例2)
4−ヒドロキシピリジンを0.712gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例3)
4−ヒドロキシピリジンを0.356gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例4)
4−ヒドロキシピリジンを0.178gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例5)
4−ヒドロキシピリジンを0.0356gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例6)
トリオクチルアミンを1.1925g、4−ヒドロキシピリジンを0.0356gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例7)
トリオクチルアミンを0.6625g、4−ヒドロキシピリジンを0.178gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例8)
4−ヒドロキシピリジン0.178gを2−ヒドロキシピリジン0.356gに変えたこと以外は実施例4と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例9)
4−ヒドロキシピリジン0.178gを3−ヒドロキシピリジン0.356gに変えたこと以外は実施例4と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例10)
4−ヒドロキシピリジン0.178gを2,4−ジヒドロキシピリジン0.356gに変えたこと以外は実施例4と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例11)
4−ヒドロキシピリジン0.178gを2−ヒドロキシニコチン酸0.356gに変えたこと以外は実施例4と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例12)
4−ヒドロキシピリジン0.178gを2,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリジン0.356gに変えたこと以外は実施例4と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例13)
トリオクチルアミン1.325gをトリブチルアミン0.694gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例14)
イソプロパノールをメチルエチルケトンに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例15)
1.5gのPEDOT−PSSの凍結乾燥体を1.5gのPEDOT−PSSの高導電性複合体に変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(実施例16)
実施例1で得た導電性高分子分散液50gにペンタエリスリトールトリアクリレート50gとイルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)2.0gを加えて塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し100℃で1分間乾燥し、400mJの紫外線照射を行い、導電性フィルムを得た。
(比較例1)
4−ヒドロキシピリジンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例2)
トリオクチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例3)
トリオクチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例4)
トリオクチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例8と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例5)
トリオクチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例9と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例6)
トリオクチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例10と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例7)
トリオクチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例11と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例8)
トリオクチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例12と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例9)
4−ヒドロキシピリジンを添加しなかったこと以外は実施例13と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例10)
比較例1で得た導電性高分子分散液50gにペンタエリスリトールトリアクリレート50gとイルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)2.0gを加えて塗料を作製した。得られた塗料を#8のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し100℃で1分間乾燥し、400mJの紫外線照射を行い、導電性フィルムを得た。
<評価>
各例で作製した導電性フィルムについて以下のように評価した。結果を表1に示す。なお、表1において、1.0E+03は1.0×10を表し、他も同様である。
[耐光性の評価]
各例で作製した導電性フィルムについて、導電層の初期の表面抵抗値Rと、紫外線照射後の表面抵抗値Rを測定し、その変化割合(R/R)を算出した。この変化割合が1に近いほど耐光性が高いことを示す。
導電層の表面抵抗値は、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製ロレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。
導電層の紫外線照射は、カーボンアーク式の耐光性試験機を用い、48時間照射した。
Figure 2021095459
<結果>
ヒドロキシピリジン化合物(1)及びアミン化合物(2)を含む実施例1〜16の導電性高分子分散液から形成された導電性フィルムの導電層は、耐光性に優れていた。高導電性複合体を使用した実施例15では、耐光性試験前後の表面抵抗値が何れも低く、特に優れていた。
一方、ヒドロキシピリジン化合物(1)を含まない比較例1,9,10では、導電性フィルムの耐光性が劣っており、アミン化合物(2)を含まない比較例2〜8では、初期の表面抵抗値Rが極端に高く、機能する導電層を形成することができなかった。

Claims (14)

  1. π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒と、を含有する、導電性高分子分散液。
    Figure 2021095459
    [式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基またはアルキル基であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。]
  2. 前記ヒドロキシピリジン化合物が、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリジン、及び2−ヒドロキシニコチン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
  3. 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
  4. 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜3の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
  5. 前記分散媒が有機溶剤を含み、
    前記分散媒の総質量に対する前記有機溶剤の含有量が60質量%以上100質量%以下である、請求項1〜4の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
  6. 前記有機溶剤がイソプロパノールまたはメチルエチルケトンを含む、請求項5に記載の導電性高分子分散液。
  7. 前記アミン化合物が3級アミンを含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
  8. 前記3級アミンがトリオクチルアミン、又はトリブチルアミンである、請求項7に記載の導電性高分子分散液。
  9. バインダ成分をさらに含有する、請求項1〜8の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
  10. 前記バインダ成分が、アクリル樹脂の光硬化性モノマー又は光硬化性オリゴマーを含む、請求項9に記載の導電性高分子分散液。
  11. π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液と、有機溶剤とを混合した混合液を得て、前記混合液中に高導電性複合体を析出させ、前記高導電性複合体を分取した後、分取した前記高導電性複合体に、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒とを混合することを含む、導電性高分子分散液の製造方法。
    Figure 2021095459
    [式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基またはアルキル基であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。]
  12. π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を凍結乾燥し、前記導電性複合体の凍結乾燥体を得て、前記凍結乾燥体に、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、前記ヒドロキシピリジン化合物以外のアミン化合物と、分散媒とを混合することを含む、導電性高分子分散液の製造方法。
    Figure 2021095459
    [式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基またはアルキル基であり、mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数である。]
  13. フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜10の何れか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工し、塗膜を乾燥することを含む、導電性フィルムの製造方法。
  14. フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜10の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた、導電性フィルム。
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