JP7331874B2 - 調質圧延機のバックアップロール、調質圧延機および調質圧延方法 - Google Patents
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〔1〕一対のワークロール間に金属帯を通して調質圧延を行う1つ以上の圧延スタンドを備える調質圧延機のバックアップロールであって、
該バックアップロールの胴部の幅方向断面形状は、平行部とテーパー部とからなり、
前記平行部は、前記バックアップロールの胴部の中央部に形成され、
前記テーパー部は、前記バックアップロールの胴部の端部から前記平行部の端部へ形成されていること、を特徴とする調質圧延機のバックアップロール。
〔2〕〔1〕において、前記ワークロールがダルワークロールであって、前記平行部の端部の位置が前記金属帯の板端部よりも前記胴部の中央部側であることを特徴とする調質圧延機のバックアップロール。
〔3〕〔1〕において、前記ワークロールがブライトワークロールであって、前記平行部の端部の位置が前記金属帯の板端部から前記胴部の端部側に離間していることを特徴とする調質圧延機のバックアップロール。
〔4〕〔3〕において、前記離間の幅が3mm以上であることを特徴とする調質圧延機のバックアップロール。
〔5〕〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つにおいて、前記調質圧延機が、4段式または6段式の調質圧延機であることを特徴とする調質圧延機のバックアップロール。
〔6〕〔1〕ないし〔5〕のいずれか一つに記載のバックアップロールを前記圧延スタンドの少なくとも1つに備えることを特徴とする調質圧延機。
〔7〕〔6〕に記載の調質圧延機を用いて調質圧延を行うことを特徴とする調質圧延方法。
〔8〕前記ダルワークロールと前記ブライトワークロールをそれぞれ1スタンド以上備える複数スタンドによる調質圧延方法において、
前記ダルワークロールを備えたスタンドでは、前記平行部端部の位置が前記金属帯の板端部よりも前記ロール胴部の中央部側にあるバックアップロールを用い、
前記ブライトワークロールを備えたスタンドでは、前記平行部端部が前記金属帯の板端部から前記ロール胴部端部側に3mm以上離間しているバックアップロールを用いて
調質圧延を行うことを特徴とする調質圧延方法。
〔9〕〔7〕または〔8〕において、前記調質圧延が乾式であることを特徴とする調質圧延方法。
[調質圧延機]
本発明に係る調質圧延機の実施形態を、図を用いて説明する。図1は、本発明が適用される調質圧延機のバックアップロール1であって、ロール胴部端部6から平行部端部5へ形成されたテーパー部2を備えた断面形状を有することを示している。図1ではテーパー部2の他に平行部3およびネック部4も記載しているが、平行部3には圧延中の形状を調整するため初期クラウン(膨らみ)が付与されていることがある。ここで、図1中のLTは、テーパー部の長さ、すなわちテーパー長であり、平行部端部5とロール胴部端部6との長さを示している。また、図1中のLRは、バックアップロールの胴部の長さ、すなわちロール幅である。
本発明に係る調質圧延方法を適用する金属帯としては、種々の材質を有する冷延鋼板や缶用鋼板、亜鉛鍍金鋼板のほかに、銅やアルミニウムなども使用することができる。また、金属帯の板厚としては、0.05~4.0mmが好ましく、板幅(LC)は、450~2000mmが好ましい。
前述したように、本発明に係る調質圧延機のバックアップロール1は、ロール胴部とロールを支えるネック部4とからなり、ロール胴部は、胴部の平行部3と、胴部の幅方向端部6に形成されたテーパー部2とからなり、そのテーパー部2は、ロールの胴部の端部(ロール胴部端部)6から平行部3の端部(平行部端部)5にかけてロール径が徐々に増加するように、ほぼ線形状に形成された幅方向断面形状を示している。
続いて、調質圧延機における摩耗粉の発生について考察する。摩耗粉の発生は、バックアップロールに起因するものと推測される。バックアップロールにテーパー部がない従来型の寸胴形状のロールの場合、そのバックアップロールに接触するワークロールまたは中間ロールとの間で、バックアップロールの端部に荷重がかかり、ロール胴部の平行部が端部側から徐々に削れていくことになる。特に、ワークロールにダルワークロールを用いた場合にそれが顕著になる。その削れたものが摩耗粉と呼ばれるものであり、この発生した摩耗粉は、調質圧延機の空間内に飛び散り、例えば、空気中の水分あるいは油分などと結合して、圧延機内の至る所に付着する。つまり、上下各ロールや圧延機入側の金属帯の表面に付着することになる。それらの付着した摩耗粉が転写されて、圧延された金属帯の表面欠陥として現れることになると推測される。
前述したように、ダルワークロールとは、金属帯表面をダル仕上げするために用いるワークロールのことであり、ブライトワークロールとは、金属帯表面をブライト仕上げするために用いるワークロールのことである。ダル仕上げとは、つや消しともいい、その表面を物理的または化学的に粗くしたロールで金属帯表面を仕上げることであり、ブライト仕上げとは、平滑仕上げともいい、その表面を滑らかに仕上げたロールで金属帯表面を仕上げることである。
本発明が適用されるバックアップロールのテーパー部2は、バックアップロールの胴部端部6から平行部端部5へ形成されている。テーパー部の大きさ(領域)としては、前記平行部端部5の位置が、胴部端部6よりもロールの胴部中央部側であり、テーパー長(LT)に置き換えると、LT>0mmである。このように、バックアップロールにテーパー部を設けることにより、摩耗粉起因の金属帯表面欠陥の発生を抑制することができる。
さらに引き続いて、テーパー部について検討を重ねた結果、テーパー長が長い程、摩耗粉の発生を抑制できる一方で、テーパー部と平行部との境界(平行部端部)には偏荷重がかかり、その境界(平行部端部)の位置が金属帯の板端部よりもロール胴部の中央部側に入ると、特にブライトワークロールを使用した場合には、金属帯表面の長手方向に筋状の光沢ムラが発生することを見出した。この光沢ムラを避けるべき金属帯としては、ティンフリースチール用ぶりき原板などが挙げられるが、これらの金属帯をブライトワークロールを使用して調質圧延する際には、用いるバックアップロールの平行部端部の位置が金属帯の板端部よりもロール胴部の端部側に離間していることにより、光沢ムラの発生を抑制することができることが分かった。特に、圧延時の蛇行幅も考慮すると、金属帯の板端部から前記胴部の端部側に離間している幅は、3mm以上が好ましいことが分かった。より好ましくは、5~15mmである。15mmを超えると、摩耗粉起因の表面欠陥の発生を抑制する効果が少なくなるからである。
ここで、ブライトワークロールを使用した場合に、金属帯表面の長手方向に発生する筋状の光沢ムラについて考察する。この光沢ムラとは、バックアップロールのテーパー部の平行部端部5に荷重が集中すると、その部分が金属帯表面に強く押し当てられ、その表面の光沢にムラが生じるものであって、ワークロールがブライトワークロールの場合にはっきりと現れる欠陥のことである。
つまり、調質圧延機のワークロール8がブライトワークロールの場合に発生する光沢ムラを抑制するためには、金属帯表面に必要以上の荷重が集中しないようにすることが重要であり、そのためには、バックアップロールの平行部端部5の位置が金属帯の板端部10のロール胴部端部6側にすることである。その位置にあれば、金属帯表面への荷重集中は無くなり、光沢ムラの発生も防止することができる。ここで、図4は、テーパー部2の形状として、平行部端部5の位置が板端部10よりロール胴部の端部側にあることを示しているが、これは以下に述べるように、ワークロール8として、ブライトワークロールを使用した場合に好適な調質圧延機の一例である。
調質圧延プロセスは、鋼板などの金属帯の材質、降伏点伸びの除去、硬度の調整、表面粗度などの表面性状の作り込みおよび形状矯正などの目的のために実施されるものであって、所定の金属製品とするための重要なプロセスの一つである。利用される金属帯としては、種々の材質を有する冷延鋼板や缶用鋼板、亜鉛鍍金鋼板のほかに、銅やアルミニウムなどの表面処理鋼板などがある。
まず、ダルワークロールと摩耗粉起因の金属帯の表面欠陥の発生に関する実験として、ダルワークロールを用いた調質圧延機についての実験を行った。実験例1では、第1スタンド・第2スタンド共に一対のダルワークロールを使用した場合について実施した。
実験No.1-1は、比較として第1スタンド・第2スタンド共にテーパー部がないバックアップロールNo.Aを用いた。実験No.1-2は、第1スタンド・第2スタンド共に同じバックアップロールNo.Bを用いた。実験No.1-3は、同様に第1スタンド・第2スタンド共に同じバックアップロールNo.Eを用いた。
次に、実験例2として、上記と同様の2基の6段式乾式調質圧延機に対して、第1スタンドに一対のダルワークロールを、第2スタンドに一対のブライトワークロールを使用した場合について実施した。
実験No.2-1は、比較として第1スタンド・第2スタンド共にテーパー部がないバックアップロールNo.Aを用いた。実験No.2-2~2-5は、第1スタンド・第2スタンド共に同じバックアップロールであり、実験No.2-2がバックアップロールNo.Bを用い、実験No.2-3がバックアップロールNo.Cを用い、実験No.2-4がバックアップロールNo.Dを用い、実験No.2-5がバックアップロールNo.Eを用いた。実験No.2-6は、第1スタンドはバックアップロールNo.Eを用い、第2スタンドはバックアップロールNo.Bを用いた。実験No.2-7は、逆に第1スタンドはバックアップロールNo.Bを用い、第2スタンドはバックアップロールNo.Eを用いた。
さらに、筋状の光沢ムラの発生有無に関する実験として、ブライトワークロールを使用した調質圧延機についての実験を行った。
実験例3は、上記と同様の2基の6段式乾式調質圧延機に対して、第1スタンド・第2スタンド共に一対のブライトワークロールを使用した場合について実施した。
実験No.3-1は、比較として第1スタンド・第2スタンド共にテーパー部がないバックアップロールNo.Aを用いた。実験No.3-2は、第1スタンド・第2スタンド共に同じバックアップロールであり、バックアップロールNo.Bを用いた。実験No.3-3は、同様に第1スタンド・第2スタンド共に同じバックアップロールNo.Eを用いた。
なお、表面欠陥の発生率は、目視観察およびCCDカメラによる自動検査により、金属帯表面の凹凸などの異常を発見した場合に、その部分を不良とし、処理した金属帯全体の処理ton数に対する前記の不良とした金属帯の処理ton数の比を%表示して求めた。
また、筋状の光沢ムラの発生の有無は、前述の摩耗粉起因の表面欠陥と同様に、目視観察およびCCDカメラによる自動検査により、処理した金属帯において、表面の一部に筋状の光沢ムラを発見した場合に、発生有りとして「○」と評価し、光沢ムラを発見しなかった場合に、発生なしとして「×」と評価した。
2 テーパー部
3 平行部
4 ネック部
5 平行部端部
6 ロール胴部端部
7 中間ロール
8 ワークロール
8a ダルワークロール
8b ブライトワークロール
9 金属帯(鋼板)
10 板端部
LT テーパー長
LR ロール胴部の長さ(ロール幅)
LC 板幅
θ テーパー角度
Claims (7)
- 一対のワークロール間に金属帯を通して調質圧延を行う1つ以上の圧延スタンドを備える調質圧延機のバックアップロールであって、
該バックアップロールの胴部の幅方向断面形状は、平行部とテーパー部とからなり、
前記平行部は、前記バックアップロールの胴部の中央部に形成され、
前記テーパー部は、前記バックアップロールの胴部の端部から前記平行部の端部へ形成され、
前記ワークロールが、ダルワークロールまたはブライトワークロールであって、
前記ダルワークロールを備えたスタンドでは、前記平行部の端部の位置が前記金属帯の板端部よりも前記胴部の中央部側にあり、
前記ブライトワークロールを備えたスタンドでは、前記平行部の端部が前記金属帯の板端部から前記ロール胴部端部側に離間している
ことを特徴とする調質圧延機のバックアップロール。 - 前記離間の幅が3mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の調質圧延機のバックアップロール。
- 前記調質圧延機が、4段式または6段式の調質圧延機であることを特徴とする請求項1または2に記載の調質圧延機のバックアップロール。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバックアップロールを前記圧延スタンドの少なくとも1つに備えることを特徴とする調質圧延機。
- 請求項4に記載の調質圧延機を用いて調質圧延を行うことを特徴とする調質圧延方法。
- 胴部の幅方向断面形状が、平行部とテーパー部とからなるバックアップロールを備える1つ以上の圧延スタンドを有し、一対のワークロール間に金属帯を通して調質圧延を行う調質圧延方法において、
前記ワークロールが、ダルワークロールまたはブライトワークロールであって、
前記ダルワークロールを備えたスタンドでは、前記平行部の端部の位置が前記金属帯の板端部よりも前記ロール胴部の中央部側にあるバックアップロールを用い、
前記ブライトワークロールを備えたスタンドでは、前記平行部の端部が前記金属帯の板端部から前記ロール胴部端部側に離間しているバックアップロールを用いて
調質圧延を行うことを特徴とする調質圧延方法。 - 前記調質圧延が乾式であることを特徴とする請求項5または6に記載の調質圧延方法。
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