以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
また、以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、一対の集電体の並び方向、または、容器の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、容器の厚さ方向、または、集電体と電極体と当て板との並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、集電体の脚部の延設方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。
また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
(実施の形態)
[1 蓄電素子10の全般的な説明]
まず、図1~図3を用いて、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電素子10の容器100内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10から容器本体110を分離した状態での構成を示す斜視図である。つまり、図2は、電極体300に集電体400を接合した後の状態を示している。図3は、本実施の形態に係る蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。つまり、図3は、電極体300に集電体400を接合する前の状態を示している。また、図3では、容器本体110を省略して図示している。
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。また、蓄電素子10は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。さらに、蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。また、本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、円柱形状、長円柱形状または直方体以外の多角柱形状等であってもよいし、ラミネート型の蓄電素子とすることもできる。
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、一対(正極側及び負極側)の電極端子200とを備え、図2及び図3に示すように、容器100の内方には、電極体300と、一対(正極側及び負極側)の集電体400と、当て板500とが収容されている。また、容器100(後述の蓋体120)と電極端子200及び集電体400との間には、絶縁性及び気密性を高めるためにガスケット等が配置されており、容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、これらの図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、上記の構成要素の他、電極体300の側方や下方に配置されるスペーサ、電極体300等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
容器100は、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の当該開口を閉塞する蓋体120とを有する直方体形状(角形または箱形)のケースである。このような構成により、容器100は、電極体300等を容器本体110の内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等されることにより、内部を密封することができる構造となっている。容器100(容器本体110及び蓋体120)の材質は特に限定されず、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄など溶接可能な金属とすることができるが、樹脂を用いることもできる。
容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、Z軸プラス方向側に開口が形成されている。蓋体120は、容器100の蓋部を構成する矩形状の板状部材であり、容器本体110のZ軸プラス方向側にX軸方向に延設されて配置されている。また、蓋体120には、容器100の内圧が上昇したときに容器100内部のガスを排出するガス排出弁121が設けられている。なお、容器100には、容器100内部に電解液を注入するための注液部が設けられていてもよい。
電極体300は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる長尺帯状の集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成された極板である。負極板は、銅または銅合金等からなる長尺帯状の集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成された極板である。なお、上記集電箔として、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金など、適宜公知の材料を用いることもできる。また、正極活物質層及び負極活物質層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。また、セパレータは、例えば樹脂からなる微多孔性のシートや、不織布を用いることができる。
電極体300は、正極板と負極板とセパレータとが積層されて形成されている。具体的には、電極体300は、正極板と負極板との間にセパレータが配置され巻回されて形成されている。さらに具体的には、電極体300は、正極板と負極板とが、セパレータを介して、巻回軸の方向に互いにずらして巻回されている。巻回軸とは、正極板及び負極板等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体300の中心を通る、X軸方向に平行な直線である。そして、正極板及び負極板は、それぞれのずらされた方向の端部に、活物質が形成(塗工)されず基材層が露出した部分(活物質層非形成部)を有している。
これにより、電極体300は、巻回軸方向の一端部に、正極板の活物質層非形成部が積層されて束ねられた正極側の集束部320を有し、巻回軸方向の他端部に、負極板の活物質層非形成部が積層されて束ねられた負極側の集束部320を有している。つまり、電極体300は、電極体300の本体を構成する電極体本体部310と、電極体本体部310からX軸方向両側に突出した一対(正極側及び負極側)の集束部320と、を有している。電極体本体部310は、正極板及び負極板の活物質層が形成(塗工)された部分とセパレータとが巻回されて形成された長円形状の部位(活物質層形成部)である。なお、本実施の形態では、電極体300(電極体本体部310)の断面形状として長円形状を図示しているが、円形状、楕円形状、または、多角形状等でもよい。
電極端子200は、集電体400を介して、電極体300に電気的に接続される端子部材(正極端子及び負極端子)である。つまり、電極端子200は、電極体300に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体300に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子200は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属等の導電部材で形成されている。また、電極端子200は、かしめ等によって、集電体400に接続(接合)され、かつ、蓋体120に取り付けられている。
具体的には、図3に示すように、電極端子200は、軸部210が蓋体120の貫通孔122と集電体400の貫通孔411とに挿入されて、かしめられることにより、集電体400とともに蓋体120に固定される。具体的には、蓋体120と電極端子200との間、及び、蓋体120と集電体400との間にガスケット(図示せず)が配置された状態で上記かしめが行われて、電極端子200が、当該ガスケットを介して当該ガスケットを介して集電体400とともに蓋体120に固定される。なお、電極端子200と集電体400とを接続(接合)する手法は、かしめ接合には限定されず、レーザ溶接若しくは抵抗溶接等の溶接、または、ねじ締結等のかしめ以外の機械的接合等が用いられてもよい。
集電体400は、電極体300のX軸方向両側に配置され、電極体300の集束部320と電極端子200とに接続(接合)されて、電極体300と電極端子200とを電気的に接続する導電性と剛性とを備えた集電部材(正極集電体及び負極集電体)である。具体的には、集電体400は、容器本体110の側壁から蓋体120に亘って当該側壁及び蓋体120に沿って屈曲状態で配置される板状部材である。また、集電体400は、蓋体120に固定的に接続(接合)される。この構成により、電極体300が、集電体400によって蓋体120から吊り下げられた状態で保持(支持)され、振動や衝撃等による揺れが抑制される。集電体400の材質は特に限定されないが、例えば、正極側の集電体400は、電極体300の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極側の集電体400は、電極体300の負極基材層と同様、銅または銅合金等で形成されている。
ここで、図3に示すように、集電体400は、端子接続部410と、端子接続部410のY軸方向両端部からZ軸マイナス方向に向けて延設された2つの電極接続部420と、を有している。
端子接続部410は、電極端子200に接続(接合)される集電体400の基部である。つまり、端子接続部410は、集電体400の電極端子200側(上側、Z軸プラス方向)に配置される平板状の部位であり、電極端子200に電気的及び機械的に接続される。電極接続部420は、電極体300に接続(接合)される集電体400の脚部である。つまり、電極接続部420は、集電体400の電極体300側(下側、Z軸マイナス方向)に配置される部位であり、電極体300に電気的及び機械的に接続される。具体的には、電極接続部420は、Z軸方向に延びる長尺状かつ平板状の部位であり、電極体300の集束部320のうちの2つの対向する平坦な集束部に、2つの電極接続部420がそれぞれ接合される。
また、集束部320の内側には当て板500が配置され、電極接続部420と集束部320と当て板500とが接合されて、4つ(2つの電極接続部420に2つずつ)の接合部600(図2参照)が形成される。つまり、集電体400及び当て板500は、電極体300と、接合部600において接合されている。
当て板500は、集電体400とで電極体300を挟んだ状態で、集電体400とともに電極体300に接合される部材である。つまり、当て板500は、電極接続部420とで、集束部320を挟む位置に配置された、集束部320を保護するカバーである。具体的には、当て板500は、集束部320に沿ってZ軸方向に延びる矩形状かつ平板状の金属製の部材である。当て板500の材質は特に限定されないが、例えば、正極側の当て板500は、電極体300の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極側の当て板500は、電極体300の負極基材層と同様、銅または銅合金等で形成されている。
[2 当て板500の構成の説明]
次に、当て板500の構成について、詳細に説明する。なお、図3には4枚の当て板500が示されているが、これらは全て同じ構成を有するため、以下では、1枚の当て板500について詳細に説明する。図4は、本実施の形態に係る当て板500の構成を示す斜視図である。図5は、本実施の形態に係る当て板500が集電体400とともに電極体300に接合される構成を示す斜視図である。具体的には、図5の(a)は、集電体400の電極接続部420と当て板500とで電極体300の集束部320を挟んだ状態で、接合器具20を配置した場合の構成を示している。図5の(b)は、電極接続部420と当て板500とが集束部320と接合された状態での構成を示している。なお、図5では、図4に示した当て板500のZ軸プラス方向側の部位における構成を図示しているが、当て板500のZ軸マイナス方向側の部位についても同様である。
図4に示すように、当て板500は、当て板接合部510と、外周部520と、貫通部530と、を有している。本実施の形態では、当て板接合部510、外周部520及び貫通部530の組が、Z軸方向に2組並んで配置され、当該2組の間に、凹部540が形成されている。
当て板接合部510は、電極体300に接合される部位である。具体的には、当て板接合部510は、電極体300の集束部320に、集電体400の電極接続部420とともに接合される円形状かつ平板状(円板状)の接合部である。
外周部520は、当て板接合部510の周囲に配置される部位である。具体的には、外周部520は、当て板接合部510の周囲の全周、詳細には貫通部530の周囲の全周に配置された、環状かつ平板状の部位である。このように、当て板500に外周部520を設けることで、当て板500の搬送時に当て板500を保持(吸着)したり、当て板500の接合時に当て板500を押さえたりすることができる。
貫通部530は、当て板接合部510及び外周部520の間に配置され、当て板500を貫通する貫通孔である。具体的には、貫通部530は、当て板接合部510に沿って延びるスリットである。本実施の形態では、貫通部530は、当て板接合部510の周囲の全周を囲うように配置されている。つまり、円形状の当て板接合部510の周囲の全周に、間隔を空けて、4つの貫通部530が円環状に配置されている。
なお、貫通部530の数は特に限定されず、また、貫通部530は、円環状に配置されていなくてもよい。例えば、当て板接合部510が四角形状であり、複数の貫通部530が、当て板接合部510の周囲を四角環状に配置されていることにしてもよい。
凹部540は、当て板500のZ軸方向中央部のX軸方向端部がX軸方向に凹んだ凹部である。本実施の形態では、当て板500のZ軸方向中央部のX軸方向両端部に、矩形状に凹んだ2つの凹部540が形成されている。これにより、当て板500は、Z軸方向中央部において、X軸方向の幅が小さくなっている。なお、凹部540のZ軸方向の幅、及び、X軸方向の深さは、特に限定されない。また、凹部540の形状についても特に限定されず、半円形状、半楕円形状、半長円形状、三角形状、その他の多角形状等であってもよい。
このような構成において、図5の(a)に示すように、当て板接合部510と集電体400の電極接続部420とで電極体300の集束部320を挟んだ状態で、当て板接合部510に接合器具20が配置される。接合器具20は、例えば、抵抗溶接用の電極(タングステン製の電極先端チップ)であり、円柱形状を有している。なお、電極接続部420側にも接合器具(抵抗溶接用の電極等)が配置されるが、同図では省略して図示している。
すなわち、接合器具20は、貫通部530の内側において当て板接合部510に当接し、電極接続部420側の接合器具とで、当て板接合部510、集束部320及び電極接続部420を挟み込んで、接合する。本実施の形態では、接合器具20と電極接続部420側の接合器具との間に電流が流れることで、抵抗溶接が行われる。
これにより、図5の(b)に示すように、当て板接合部510、集束部320及び電極接続部420が接合された接合部600が形成される。接合部600は、当て板接合部510、集束部320及び電極接続部420が溶融して一体化された部位である。つまり、当て板500においては、当て板接合部510が溶融して、溶融部550が形成される。
溶融部550は、当て板接合部510、集束部320及び電極接続部420が溶融して一体化された接合部600のうちの、当て板接合部510が溶融した部位である。言い換えれば、当て板接合部510は、集束部320及び電極接続部420と一体化された溶融部550を有している。本実施の形態では、当て板接合部510の集束部320側の部分が溶融して、溶融部550が形成される。
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、集電体400とで電極体300を挟んだ状態で集電体400とともに電極体300に接合される当て板500を備えている。そして、当て板500は、電極体300との接合部である当て板接合部510と、当て板接合部510の周囲の外周部520との間に、当て板500を貫通する貫通部530を有している。このように、当て板接合部510の周囲に貫通部530を形成することで、集電体400と当て板500とで電極体300を挟んで接合する際に、当て板500が変形しやすくなり、当て板接合部510と電極体300との接触面積の増加を図ることができる。これにより、当て板500が電極体300に局所的に当接するのを抑制して、集電体400と電極体300とを安定的に接合することができるため、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。
また、当て板500に貫通部530を形成することで当て板500が変形しやすくなるため、接合器具20(抵抗溶接用電極等)と当て板500との接触面積の増加を図ることができる。これにより、接合器具20に局所的な力がかかるのを抑制することができ、接合器具20が損傷(クラックが発生する等)するのを抑制することができる。また、接合器具20(抵抗溶接用電極)と当て板500との接触面積の増加を図ることができるため、集電体400と電極体300とを抵抗溶接で接合する際に、接合器具20(抵抗溶接用電極)から当て板500に電流が流れる際の電流密度を低減することができる。これにより、接合器具20が高温になるのを抑制することができるため、接合器具20が損傷するのを抑制することができる。
また、当て板500の貫通部530を、当て板接合部510に沿って延びるスリットとすることで、当て板500を変形させて当て板接合部510を電極体300に接触しやすくすることができる。これにより、当て板接合部510と電極体300との接触面積の増加をより図ることができるため、集電体400と電極体300とを安定的に接合して、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。
また、当て板500の貫通部530をスリットとすることで当て板500が変形しやすくなるため、接合器具20(抵抗溶接用電極等)と当て板500との接触面積の増加を図ることができる。これにより、接合器具20に局所的な力がかかるのを抑制したり、抵抗溶接時に接合器具20が高温になるのを抑制したりすることができるため、接合器具20が損傷するのを抑制することができる。
さらに、当て板500の貫通部530をスリットとすることで、集電体400と電極体300とを抵抗溶接で接合する際に、抵抗溶接時の電流が当て板接合部510から外周部520に分流され難くなる。これにより、当て板接合部510に電流を集中させることができるため、比較的小さな電流値で集電体400と電極体300との接合強度を向上させて、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。なお、当該電流値を増やせば同等の接合強度が得られるが、電流値を増やすと発塵など接合品質に悪影響を及ぼすおそれがあるため、当該電流値を小さくできることによる効果は高い。また、接合に必要な電流を低減することができるため、接合器具20(抵抗溶接用電極)が高温になって損傷するのを抑制することもできる。
また、2つの当て板接合部510の間に凹部540を形成して、当該2つの当て板接合部510の間における当て板500の幅を小さくすることで、抵抗溶接時の電流が一方の当て板接合部510側から他方の当て板接合部510側に分流されるのを抑制することができる。これによっても、1つの当て板接合部510に電流を集中させることができるため、比較的小さな電流値で集電体400と電極体300との接合強度を向上させて、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。また、接合に必要な電流を低減することができるため、接合器具20(抵抗溶接用電極)が高温になって損傷するのを抑制することもできる。
[4 変形例の説明]
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。図6は、本実施の形態の変形例1に係る当て板500aの構成を示す斜視図である。具体的には、図6の(a)は、当て板500aのZ軸プラス方向側の部位を示す斜視図であり、図4に示した当て板500のZ軸プラス方向側の部位に対応している。図6の(b)は、図6の(a)の当て板500aを裏側(Y軸プラス方向側)から見た場合の構成を示す斜視図である。
図6の(a)に示すように、本変形例における当て板500aは、上記実施の形態における当て板500と、Y軸マイナス方向側の構成は同じである。しかし、図6の(b)に示すように、当て板500aは、当て板500と、Y軸プラス方向側の構成が異なる。具体的には、当て板500aは、当て板接合部510が、薄肉部511と接合部突起512とを有している。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
薄肉部511は、当て板接合部510に形成された、外周部520よりも厚みが薄い部位である。つまり、当て板接合部510のY軸プラス方向側の面が、外周部520よりもY軸マイナス方向に凹むことで、外周部520よりも厚みが薄い薄肉部511が形成されている。本実施の形態では、隣り合う2つの貫通部530の間の部位も、薄肉になっている。なお、当て板接合部510のY軸マイナス方向側の面も凹んでいてもよいが、本実施の形態では、当て板接合部510のY軸マイナス方向側の面は、外周部520のY軸マイナス方向側の面と同一平面上に配置されている。
接合部突起512は、当て板接合部510のY軸プラス方向側の面の中央部に形成された突起である。具体的には、接合部突起512は、薄肉部511のY軸プラス方向側の面の中央部から、Y軸プラス方向に突出する円形状(円板状)の突起である。つまり、接合部突起512は、電極体300の集束部320に向けて突出するように配置されている。なお、接合部突起512の突出高さ(Y軸方向の長さ)は特に限定されないが、例えば、薄肉部511の厚み以下であるのが好ましく、薄肉部511の厚みの1/2以下であるのがより好ましく、薄肉部511の厚みの1/4以上かつ1/3以下であるのがさらに好ましい。
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に本変形例では、当て板500aの当て板接合部510に、外周部520よりも厚みが薄い薄肉部511を形成することで、当て板接合部510が変形しやすくなるため、当て板接合部510と電極体300との接触面積の増加をより図ることができる。これにより、集電体400と電極体300とを安定的に接合することができるため、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。
また、当て板500aの当て板接合部510に薄肉部511を形成することで当て板接合部510が変形しやすくなるため、接合器具20(抵抗溶接用電極等)と当て板接合部510との接触面積の増加を図ることができる。これにより、接合器具20に局所的な力がかかるのを抑制したり、抵抗溶接時に接合器具20が高温になるのを抑制したりすることができるため、接合器具20が損傷するのを抑制することができる。
また、当て板500aの当て板接合部510に、電極体300に向けて突出する接合部突起512を形成することで、集電体400と電極体300とを抵抗溶接で接合する際に、接合部突起512に電流を集中させることができる。これにより、比較的小さな電流値で集電体400と電極体300との接合強度を向上させることができるため、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。
また、接合部突起512に電流を集中させることで、接合に必要な電流を低減することができるため、接合器具20(抵抗溶接用電極)が高温になって損傷するのを抑制することもできる。
また、当て板接合部510に接合部突起512が設けられているため、当て板500aの電極体300に対する設置状態が不安定になる場合があるが、当て板接合部510の周囲に外周部520が配置されているため、当て板500aの電極体300に対する設置状態を安定に保つことができる。
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。図7は、本実施の形態の変形例2に係る当て板500bの構成を示す斜視図である。なお、図7の(a)は、図6の(a)に対応する図であり、図7の(b)は、図6の(b)に対応する図である。
図7の(a)に示すように、本変形例における当て板500bは、上記実施の形態及び変形例1における当て板500、500aと、Y軸マイナス方向側の構成は同じである。しかし、図7の(b)に示すように、当て板500bは、当て板500、500aと、Y軸プラス方向側の構成が異なる。具体的には、当て板500bは、上記変形例1における薄肉部511が外周部520にまで広がることで、外周部520が外周部突起521を有する構成となっている。本変形例のその他の構成については、上記変形例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
外周部突起521は、外周部520のY軸プラス方向側の面に形成された突起である。具体的には、外周部突起521は、外周部520のY軸プラス方向側の面のX軸方向両側及びZ軸方向両側の4箇所から、Y軸プラス方向に突出する三角形状(三角板状)の突起である。つまり、外周部突起521は、接合部突起512から離れた位置に、電極体300の集束部320に向けて突出するように配置されている。
言い換えれば、外周部520のY軸プラス方向側の面が、当て板接合部510の薄肉部511と同じ厚さにまでY軸マイナス方向に凹むことで、外周部520にも薄肉部が形成され、当該薄肉部が形成されなかった部分が外周部突起521となる。なお、外周部突起521の突出高さ(Y軸方向の長さ)は特に限定されないが、例えば、接合部突起512と同じ高さである。
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記変形例1と同様の効果を奏することができる。特に本変形例では、当て板500bの外周部520に外周部突起521を形成して、外周部520を外周部突起521で電極体300に接触させることで、外周部突起521が支点となり、当て板接合部510を均等に電極体300に接触しやすくすることができる。これにより、当て板接合部510と電極体300との接触面積の増加をより図ることができるため、集電体400と電極体300とを安定的に接合して、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。
また、集電体400と電極体300とを抵抗溶接で接合する際に、外周部520が外周部突起521で電極体300に接触することで、外周部520と電極体300との接触面積が小さくなるため、外周部520に電流が分流され難くなる。これにより、当て板接合部510に電流を集中させることができるため、比較的小さな電流値で集電体400と電極体300との接合強度を向上させることができ、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。また、接合に必要な電流を低減することができるため、接合器具20(抵抗溶接用電極)が高温になって損傷するのを抑制することもできる。
(変形例3)
次に、上記実施の形態の変形例3について、説明する。図8は、本実施の形態の変形例3に係る当て板500cの構成を示す斜視図である。なお、図8の(a)は、図7の(a)に対応する図であり、図8の(b)は、図7の(b)に対応する図である。
図8に示すように、本変形例における当て板500cは、上記変形例2等における当て板500b等の貫通部530よりも大きな貫通部531を有している。貫通部531は、貫通部530と同様に、当て板接合部510及び外周部520の間に配置されて、当て板接合部510に沿って延びるスリットであるが、貫通部530よりも、当て板接合部510から外周部520に向かう方向の幅が大きく形成されている。例えば、貫通部531は、当該幅が、貫通部530の2倍以上の大きさを有している。また、例えば、貫通部530の当該幅は、接合部突起512の幅(直径)よりも小さいが、貫通部531の当該幅は、接合部突起512の幅(直径)よりも大きく形成されている。本変形例のその他の構成については、上記変形例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
以上のように、本変形例に係る蓄電素子によれば、上記変形例2と同様の効果を奏することができる。特に本変形例では、当て板500cの貫通部531が大きく形成されているため、当て板500cを変形させて当て板接合部510を電極体300に接触しやすくすることができる。これにより、当て板接合部510と電極体300との接触面積の増加をより図ることができるため、集電体400と電極体300とを安定的に接合して、集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。
また、当て板500cが変形しやすくなるため、接合器具20(抵抗溶接用電極等)と当て板500cとの接触面積の増加を図ることができ、接合器具20が損傷するのを抑制することができる。さらに、当て板500cの貫通部531が大きく形成されることで、集電体400と電極体300とを抵抗溶接で接合する際に、抵抗溶接時の電流が当て板接合部510から外周部520に分流され難くなる。これにより、当て板接合部510に電流を集中させることができるため、比較的小さな電流値で集電体400と電極体300との接合品質の向上を図ることができる。また、接合に必要な電流を低減することができるため、接合器具20(抵抗溶接用電極)が高温になって損傷するのを抑制することもできる。
(その他の変形例)
以上、本実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例には限定されない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、集電体400の1つの電極接続部420に対して2つの接合部600が形成されている、つまり、1つの当て板に、2組の当て板接合部510、外周部520及び貫通部530(または531)が配置されていることとした。しかし、接合部600の数(当て板接合部510等の組の数)は特に限定されず、1つ(1組)でもよいし、3つ(3組)以上であってもよい。この場合、凹部540は、隣り合う2組の当て板接合部510等の間の全てに形成されるのが好ましいが、当該全てのうちのいずれかに凹部540が形成されない構成でもよい。また、集電体400は、1つの電極接続部420しか有していないことにしてもよいし、3つ以上の電極接続部420を有していることにしてもよい。さらに、1つの電極接続部420に対して形成される接合部600の数は、同じでなくてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、当て板の外周部520は、当て板接合部510の周囲の全周に配置されていることとした。しかし、外周部520は、当て板接合部510の周囲の全周ではなく、当該全周のうちの一部にしか配置されていなくてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、当て板の貫通部530(または531)は、当て板接合部510に沿って延びるスリットであり、当て板接合部510の周囲の全周を囲うように配置されていることとした。しかし、貫通部530(または531)は、スリット以外の形状の貫通孔(切り込み、丸孔等)であってもよいし、当該全周のうちの一部にしか配置されていなくてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、全ての接合部600において、抵抗溶接によって、集電体400と当て板とが電極体300に接合されることとした。しかし、接合部600における接合手法は、特に限定されず、例えば、超音波接合、レーザ溶接、かしめ接合、または、ねじ締結等が用いられてもよい。また、正極側と負極側とで、異なる接合手法が用いられてもよい。例えば、負極側の接合部600においては、金属粉等のコンタミネーションが発生するのを抑制するために抵抗溶接が行われ、正極側の接合部600においては、超音波接合が行われることにしてもよい。
また、上記変形例では、当て板の当て板接合部510の中央部には、円形状(円板状)の接合部突起512が1つ設けられていることとした。しかし、接合部突起512の配置位置、個数、及び、形状は、特に限定されない。例えば、当て板接合部510の中央部から少しずれた位置に接合部突起512が配置されていてもよいし、2つ以上の接合部突起512が配置されていてもよいし、楕円形状や矩形状等の接合部突起512が形成されていてもよい。また、例えば、接合部600における接合手法が抵抗溶接ではない場合には、当て板接合部510には、接合部突起512は設けられていなくてもよい。この場合、薄肉部511は、当て板接合部510のY軸プラス方向側の面ではなく、当て板接合部510のY軸マイナス方向側の面が凹むことで形成された薄肉部であってもよい。
また、上記変形例2及び3では、当て板の外周部520のX軸方向両側及びZ軸方向両側の4箇所に、外周部突起521が設けられていることとした。しかし、外周部突起521の配置位置、個数、及び、形状は、特に限定されない。ただし、外周部突起521は、接合部突起512から離れた位置に、複数箇所配置されるのが好ましい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、当て板は、X軸方向両側に凹部540が形成されていることとした。しかし、当て板は、X軸方向の片側にしか凹部540が形成されていなくてもよいし、凹部540が全く形成されていない構成でもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、電極体300は、巻回軸が蓋体120に平行となるいわゆる縦巻きの巻回型電極体であることとした。しかし、電極体300は、巻回軸が蓋体120に垂直となるいわゆる横巻きの巻回型電極体であってもよい。また、電極体300の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層したスタック型や、極板及び/又はセパレータを蛇腹状に折り畳んだ形状(セパレータを蛇腹状にして矩形の極板を挟む形態、極板とセパレータとを重ねた後に蛇腹状にする形態等)などであってもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、集電体400と電極体300と当て板500とが接合されることとしたが、これら以外の部材も一緒に接合されることにしてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、全ての接合部600において上記の構成が適用されることとしたが、いずれかの接合部600においては上記の構成が適用されないことにしてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
また、本発明は、このような蓄電素子として実現することができるだけでなく、当て板としても実現することができる。