JP7328251B2 - 分析方法、分析装置及び分析プログラム - Google Patents

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Description

本発明は、分析方法、分析装置及び分析プログラムに関する。
患者の血液凝固機能を診断するために血液凝固検査が行われている。血液凝固検査では、患者の血液検体に所定の試薬が添加され、凝固時間等の血液凝固機能が検査される。血液凝固検査によって、患者の止血能力又は線溶能力の状態が把握され得る。血液凝固時間の延長が生じる要因としては、凝固阻害薬剤の影響、凝固関与成分の減少、先天的な血液凝固因子の欠乏、又は後天的な凝固反応を阻害する自己抗体の存在などが挙げられる。
例えば、血友病Aにおける出血症状の臨床的な重症度は、凝固第VIII因子活性(以下、凝固第VIII因子などを第VIII因子などとする。)について通常人を100%としたときに1%を境として判定される。第VIII因子活性を測定する方法として、患者の血液検体に所定の試薬が添加され、この際の反応時間に対する凝固反応量から得られる凝固反応曲線に基づく測定方法が知られている。
特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、次の技術が開示されている。反応時間に対する凝固反応量を示す凝固反応曲線の1次微分から得られる凝固速度曲線に基づいて、最大凝固速度が求められる。また、凝固反応曲線の2次微分から得られる凝固加速度曲線に基づいて、最大凝固加速度及び最大凝固減速度が求められる。また、凝固反応開始時からのそれぞれの状態に達した時間が、最大凝固速度時間、最大凝固加速度時間及び最大凝固減速度時間として求められている。これらの値は、凝固反応曲線、凝固速度曲線又は凝固加速度曲線から得られる凝固波形パラメータと呼ばれており、これらの値に基づいて凝固因子異常の有無などが判定される。
また特許文献2には、凝固時間の延長を示した被検血漿と、正常血漿とを混合して得た試料の凝固時間を測定する試験(クロスミキシング試験)を行うことにより、先天性凝固障害と後天性凝固障害とを鑑別する方法が開示されている。一般に、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定においてAPTTの延長が見られた場合、クロスミキシング試験が行われ、APTTの延長の要因が鑑別される。クロスミキシング試験では、被検血漿と、正常血漿と、これらの混合血漿とを対象として、各々について次の2つの試験が行われる。
・前記各血漿を加温処理なしに測定して即時反応を検査する即時型試験
・前記各血漿を37℃で2時間加温処理(インキュベーション)後に測定して遅延反応を検査する遅延型試験
クロスミキシング試験の結果に基づいて、APTTの延長が、凝固因子インヒビター(インヒビター)、ループスアンチコアグラント(LA)又は血友病などの凝固因子欠乏のうち何れに起因するかが判定される。クロスミキシング試験の結果は、縦軸にAPTT測定値(秒)、横軸を被検血漿と正常血漿の容量混合比としてグラフ化される。作成されるグラフは、凝固遅延の要因が下記の各場合において、次のようなパターンを示す。
・凝固因子インヒビター(以下、インヒビター):即時反応では、「下に凸」、「直線」、又は「上に凸」と様々になる。遅延反応では「直線」又は明確な「上に凸」になる。
・ループスアンチコアグラント(以下、LA):即時反応及び遅延反応とも、「上に凸」又は「直線」になる。
・血友病などの凝固因子欠乏(以下、因子欠乏):即時反応及び遅延反応とも、「下に凸」になる。
したがって、凝固遅延の要因が未知である被検血漿に関するクロスミキシング試験の結果に基づいて、凝固遅延の要因が以下の方法で判定される。即時型試験で「下に凸」の結果が得られたときは、凝固遅延の要因は、インヒビター又は因子欠乏であるが、そのいずれであるかの区別はできない。この場合、遅延型試験の結果が「下に凸」であれば凝固遅延の要因は因子欠乏、「直線」又は「上に凸」であれば凝固遅延の要因はインヒビターと判定できる。即時型試験で「上に凸」の結果が得られたときは、凝固遅延の要因は、インヒビター又はLAであるが、そのいずれであるかの区別はできない。この場合、遅延型試験の結果が即時型試験のときよりさらに明確な「上に凸」になれば凝固遅延の要因はインヒビターと判定できる。
このように従来のクロスミキシング試験は定性的なグラフパターンで判定しているため、被検血漿によっては判定が難しいグラフパターンとなる場合がある。また、混合血漿を37℃で2時間、加温処理(インキュベーション)した後に、APTTの測定を行うことが求められるため、当該試験は、加温時間と測定時間を加味すると、約2時間半もの時間を要する。
特開2016-194426号公報 特開2016-118442号公報 特開2017-106925号公報
本発明は以下を提供する。
〔1〕血液検体の凝固特性の分析方法であって、
(1)血液試料と試薬とを含む混合液の、反応時間に対する凝固反応量を示す凝固反応曲線のデータを取得することと、
(2)前記凝固反応曲線に関する微分によって得られる微分曲線のデータを算出することと、
(3)前記微分曲線の重心点に関係する情報を算出することと、
(4)前記重心点に関係する情報を用いて前記血液試料の凝固特性を評価することと、
を含む、方法。
〔2〕前記微分曲線が、前記凝固反応曲線に関する1次微分曲線及び該凝固反応曲線に関する2次微分曲線からなる群より選択される少なくとも1つである、〔1〕記載の方法。
〔3〕前記微分曲線の重心点が、重心時間vT及び重心高さvHで規定される座標(vT, vH)で表される前記1次微分曲線の重心点であり、該vT及び該vHは、該1次微分曲線をF(t)(tは時間)、F(t)が所定値xである時間をt1、t2(t1<t2)とするとき、下記式で表される、
Figure 0007328251000001

〔2〕記載の分析方法。
〔4〕前記重心点に関係する情報が、前記vT、前記vH、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、B扁平率vAB、B時間率vTB、W扁平率vAW、W時間率vTW、平均時間vTa、平均高さvHa、vTm、vABa及びvAWaからなる群より選択される1つ以上のパラメータを含み、
該ピーク幅vBが、前記t1からt2までのF(t)≧xとなる時間長であり、
該重心ピーク幅vWが、前記t1からt2までのF(t)≧vHとなる時間長であり、
該vABが、該vHと該vBとの比を表し、
該vTBが、該vTと該vBとの比を表し、
該vAWが、該vHと該vWとの比を表し、
該vTWが、該vTと該vWとの比を表し、
該vTa、該vHa、及び該vTmは、F(t)、t1及びt2が前記と同じ定義であり、F(t1)からF(t2)までのデータ点数をnとするとき、それぞれ下記式で表され、
Figure 0007328251000002

該vABaが、該vHaと該vBとの比を表し、
該vAWaが、該vHaと該vWとの比を表す、
〔3〕記載の分析方法。
〔5〕前記微分曲線の重心点が、重心時間pT及び重心高さpHで規定される座標(pT, pH)で表される前記2次微分曲線のプラスピークの重心点であり、該pT及び該pHは、該2次微分曲線をF'(t)(tは時間)、F'(t)が所定値xである時間をt1、t2(t1<t2)とするとき、下記式で表される、
Figure 0007328251000003

〔2〕記載の分析方法。
〔6〕前記重心点に関係する情報が、前記pT、前記pH、ピーク幅pB、重心ピーク幅pW、B扁平率pAB、B時間率pTB、W扁平率pAW、及びW時間率pTWからなる群より選択される1つ以上のパラメータを含み、
該ピーク幅pBが、前記t1からt2までのF'(t)≧xとなる時間長であり、
該重心ピーク幅pWが、前記t1からt2までのF'(t)≧pHとなる時間長であり、
該pABが、該pHと該pBとの比を表し、
該pTBが、該pTと該pBとの比を表し、
該pAWが、該pHと該pWとの比を表し、
該pTWが、該pTと該pWとの比を表す、
〔5〕記載の分析方法。
〔7〕前記微分曲線の重心点が、重心時間mT及び重心高さmHで規定される座標(mT, mH)で表される前記2次微分曲線のマイナスピークの重心点であり、該mT及び該mHは、該2次微分曲線をF'(t)(tは時間)、F'(t)が所定値xである時間をt1、t2(t1<t2)とするとき、下記式で表される、
Figure 0007328251000004

〔2〕記載の分析方法。
〔8〕前記重心点に関係する情報が、前記mT、前記mH、ピーク幅mB、重心ピーク幅mW、B扁平率mAB、B時間率mTB、W扁平率mAW、及びW時間率mTWからなる群より選択される1つ以上のパラメータを含み、
該ピーク幅mBが、前記t1からt2までのF'(t)≦xとなる時間長であり、
該重心ピーク幅mWが、前記t1からt2までのF'(t)≦mHとなる時間長であり、
該mABが、該mHと該mBとの比を表し、
該mTBが、該mTと該mBとの比を表し、
該mAWが、該mHと該mWとの比を表し、
該mTWが、該mTと該mWとの比を表す、
〔7〕記載の分析方法。
〔9〕前記所定値xが、前記1次微分曲線F(t)の最大値の0.5~99%である値である、〔3〕~〔8〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔10〕前記凝固特性が凝固因子濃度であり、該凝固因子が、凝固第V因子、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、凝固第X因子、凝固第XI因子、及び凝固第XII因子からなる群より選択される少なくとも1種である、〔4〕、〔6〕又は〔8〕記載の分析方法。
〔11〕前記(4)が、分析対象成分の濃度と前記扁平率との関係と、得られた前記扁平率とに基づいて、分析対象成分を定性すること及び分析対象成分の濃度を定量することを含む、〔4〕、〔6〕又は〔8〕記載の分析方法。
〔12〕前記(4)が、前記重心時間と前記ピーク幅との比(時間率)を用いた解析を含む、〔4〕、〔6〕又は〔8〕記載の分析方法。
〔13〕前記(4)が、前記時間率に基づいて、凝固時間延長の要因が凝固第VIII因子であるか否かを判定することを含む、〔12〕記載の分析方法。
〔14〕前記(4)が、分析対象成分の濃度と前記時間率との関係と、得られた前記時間率とに基づいて、分析対象成分を定性すること及び分析対象成分の濃度を定量することを含む、〔12〕又は〔13〕記載の分析方法。
〔15〕前記凝固反応曲線のデータは、活性化部分トロンボプラスチン時間の測定によって得られたデータである、〔1〕~〔14〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔16〕前記(2)が、取得した前記凝固反応曲線のデータの最大値に基づいて補正処理を行って補正処理済み凝固反応曲線のデータを算出することを更に含み、かつ
該(2)において、前記微分曲線のデータの算出には該補正処理済み凝固反応曲線のデータを用いる、
〔1〕~〔15〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔17〕前記(1)が、
被検血漿と正常血漿とを混合した混合血漿を調製することと、
該混合血漿の加温処理なしでの凝固時間測定を行うことと、
該混合血漿の加温処理後の凝固時間測定を行うことと、
を含み、
前記(3)が、
該混合血漿の加温処理なしでの凝固時間測定データに基づいて凝固反応状態と関係する第1のパラメータを算出することと、
該混合血漿の加温処理後の凝固時間測定データに基づいて凝固反応状態と関係する第2のパラメータを算出することと、
を含み、
前記(4)が、
該第1のパラメータと該第2のパラメータとの比又は差に基づいて、凝固時間の延長の要因を鑑別することと
を含む、
〔1〕~〔16〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔18〕前記凝固時間測定は、プロトロンビン時間測定、活性化部分トロンボプラスチン時間測定、希釈プロトロンビン時間測定、希釈部分トロンボプラスチン時間測定、カオリン凝固時間測定、及び希釈ラッセル蛇毒時間測定のうち、少なくとも何れか1つである、〔17〕記載の分析方法。
〔19〕前記鑑別は、凝固時間の延長の要因が凝固因子インヒビターの影響であるかループスアンチコアグラントの影響であるかを判定することを含む、〔17〕又は〔18〕記載の分析方法。
〔20〕前記混合血漿の加温時間は2分以上30分以下である、〔17〕~〔19〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔21〕前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータが、前記1次微分曲線の最大値、重心高さvH、重心時間vT、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、B扁平率vAB、B時間率vTB、W扁平率vAW、W時間率vTW、平均時間vTa、平均高さvHa、vTm、ABa及びvAWaからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項17~20のいずれか1項記載の分析方法。
〔17〕~〔20〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔22〕前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの比が1を含む所定の範囲内に収まらない場合に、凝固時間の延長の要因が凝固因子インヒビターの影響にあると判定することを含む、〔17〕~〔21〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔23〕前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの比が1を含む所定の範囲内に収まる場合に、凝固時間の延長の要因はループスアンチコアグラントの影響にあると判定することを含む、〔17〕~〔21〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔24〕前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差が0を含む所定の範囲内に収まらない場合に、凝固時間の延長の要因が凝固因子インヒビターの影響にあると判定することを含む、〔17〕~〔21〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔25〕前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差が0を含む所定の範囲内に収まる場合に、凝固時間の延長の要因はループスアンチコアグラントの影響にあると判定することを含む、〔17〕~〔21〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔26〕前記被検血漿と前記正常血漿との混合比は1対1である、〔17〕~〔25〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔27〕前記混合血漿の加温処理温度は35℃以上39℃以下である、〔17〕~〔26〕のいずれか1項記載の分析方法。
〔28〕〔1〕~〔27〕のいずれか1項記載の分析方法を実行するための分析装置。
図1は、一実施形態に係る血液凝固に関する分析方法の一例の概略を示すフローチャートである。 図2は、一実施形態に係る血液凝固に関するデータ解析方法の一例の概略を示すフローチャートである。 図3は、凝固反応曲線の一例を示す図である。 図4は、ベースライン調整後の凝固反応曲線の一例を示す図である。 図5Aは、凝固反応曲線の一例の一部を拡大した図である。 図5Bは、ベースライン調整後の凝固反応曲線の一例の一部を拡大した図である。 図6は、補正処理済み凝固反応曲線の一例を示す図である。 図7は、補正1次曲線の一例を示す図である。 図8は、補正2次曲線の一例を示す図である。 図9は、凝固時間について説明するための図であり、ベースライン調整後の凝固反応曲線の一例を示す図である。 図10Aは、評価パラメータについて説明するための図であり、凝固速度曲線の一例を示す図である。 図10Bは、重心点と、vTs、vTe、vB、vWを示す概念図である。点線は、1次曲線の10%演算対象域を示す図である。 図10Cは、2次曲線の重心点を示す図である。 図10Dは、vTa、vHa、vTmを示す概念図である。点線は、1次曲線の10%演算対象域を示す図である。 図11は、演算対象域値、解析対象となる補正0次曲線及び補正1次曲線の範囲、重心点について説明するための図である。 図12Aは、演算対象域値を10%に設定した場合の重心点などについて説明するための図である。 図12Bは、演算対象域値を80%に設定した場合の重心点などについて説明するための図である。 図13は、一実施形態に係る自動分析装置の構成例の概略を示すブロック図である。 図14は、一実施形態に係る自動分析装置の動作例の概略を示すフローチャートである。 図15は、一実施形態に係る測定処理の一例の概略を示すフローチャートである。 図16は、一実施形態に係る分析処理の一例の概略を示すフローチャートである。 図17Aは、正常血漿と凝固因子欠乏血漿との未補正0次曲線の一例を示す図である。 図17Bは、正常血漿と凝固因子欠乏血漿との補正0次曲線の一例を示す図である。 図18Aは、正常血漿と凝固因子欠乏血漿との未補正1次曲線の一例を示す図である。 図18Bは、正常血漿と凝固因子欠乏血漿との補正1次曲線の一例を示す図である。 図19Aは、第VIII因子濃度の対数と最大1次微分値を示す時間VmaxT及び重心時間vT10%との関係の一例を示す図である。 図19Bは、第IX因子濃度の対数と最大1次微分値を示す時間VmaxT及び重心時間vT10%との関係の一例を示す図である。 図19Cは、第VIII因子濃度の対数と最大1次微分値Vmax及び重心高さvH60%との関係の一例を示す図である。 図19Dは、第IX因子濃度の対数と最大1次微分値Vmax及び重心高さvH60%との関係の一例を示す図である。 図20Aは、第VIII因子濃度の対数とピーク幅vB10%との関係の一例を示す図である。 図20Bは、第IX因子濃度の対数とピーク幅vB10%との関係の一例を示す図である。 図21Aは、正常血漿の補正1次曲線の一例における演算対象域値に応じた重心点の位置を示す図である。 図21Bは、第VIII因子欠乏血漿の補正1次曲線の一例における演算対象域値に応じた重心点の位置を示す図である。 図21Cは、第IX因子欠乏血漿の補正1次曲線の一例における演算対象域値に応じた重心点の位置を示す図である。 図22Aは、演算対象域値に応じた重心時間の一例を示す図である。 図22Bは、演算対象域値に応じた重心時間の相対差の一例を示す図である。 図22Cは、演算対象域値に応じた重心高さの一例を示す図である。 図23は、試料に応じて異なる演算対象域値に応じた重心点の挙動の一例を説明するための図である。 図24Aは、差分法に基づいて算出された補正1次曲線の一例を示す図である。 図24Bは、区間内平均傾きに基づいて算出された補正1次曲線の一例を示す図である。 図25Aは、第VIII因子濃度の対数に対する補正処理を行い得られた扁平率vAB80%の一例を示す図である。 図25Bは、第VIII因子濃度の対数に対する補正処理を行わずに得られた扁平率RvAB80%の一例を示す図である。 図25Cは、第VIII因子濃度の対数に対する補正処理を行い得られた扁平率vAB80%の対数の一例を示す図である。 図25Dは、第VIII因子濃度の対数に対する補正処理を行わずに得られた扁平率RvAB80%の対数の一例を示す図である。 図26は、第VIII因子濃度毎の補正1次曲線の一例を示す図である。 図27は、第VIII因子濃度の対数と重心高さvH60%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Aは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB5%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Bは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB10%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Cは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB20%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Dは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB30%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Eは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB40%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Fは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB50%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Gは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB60%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Hは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB70%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Iは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB80%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Jは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB90%の対数との関係の一例を示す図である。 図28Kは、種々の凝固因子の濃度の対数と時間率vTB95%の対数との関係の一例を示す図である。 図29は、演算対象域値毎の第VIII因子濃度と時間率vTBとの関係の一例を示す。 図30は、種々の凝固因子の濃度について得られた時間率の中で、各濃度の第VIII因子について得られた時間率の順位の一例を示す。 図31は、第VIII因子濃度の対数と時間率の対数との相関関係の一例を示す。 図32は、演算対象域値ごとに得られた第VIII因子濃度の対数と時間率の対数との相関係数の関係の一例を示す図である。 図33は、第VIII因子濃度ごとに得られた演算対象域値と重心高さvH及び最大1次微分値Vmaxとの関係の一例を示す図である。 図34は、第VIII因子濃度ごとに得られた演算対象域値とピーク幅vBとの関係の一例を示す図である。 図35Aは、第VIII因子濃度ごとに得られた演算対象域値と扁平率vABとの関係の一例を示す図である。 図35Bは、第VIII因子濃度ごとに得られた演算対象域値と扁平率vABの対数との関係の一例を示す図である。 図36Aは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB5%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Bは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB10%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Cは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB20%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Dは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB30%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Eは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB40%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Fは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB50%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Gは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB60%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Hは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB70%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Iは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB80%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Jは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB90%の対数との関係の一例を示す図である。 図36Kは、種々の凝固因子の濃度の対数と扁平率vAB95%の対数との関係の一例を示す図である。 図37Aは、種々の凝固因子の濃度の対数と最大1次微分値Vmaxの対数との関係の一例を示す図である。 図37Bは、種々の凝固因子の濃度の対数と補正2次曲線のプラスピークの重心高さpH90%の対数との関係の一例を示す図である。 図38は、第VIII因子濃度と演算対象域値毎の扁平率vAB及び最大1次微分値Vmaxとの関係の一例を示す。 図39は、第VIII因子濃度の対数と扁平率の対数及び最大1次微分値Vmaxの対数との相関関係の一例を示す。 図40は、第VIII因子の既知濃度と、図39に示した値を用いた検量線から求めた演算濃度との比(回収率)の一例を示す。 図41Aは、正常血漿と各種凝固因子欠乏血漿の未補正0次曲線(補正なしの散乱光量)及び未補正1次曲線の一例を示す図である。 図41Bは、正常血漿と各種凝固因子欠乏血漿の補正0次曲線及び補正1次曲線の一例を示す図である。 図42Aは、正常血漿と各種凝固因子欠乏血漿の未補正2次曲線の一例を示す図である。右図は、左図のy軸方向の縮尺を変えた図である。 図42Bは、正常血漿と各種凝固因子欠乏血漿の補正2次曲線の一例を示す図である。右図は、左図のy軸方向の縮尺を変えた図である。 図43Aの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とAPTTの対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Bの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とT5の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Cの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とT95-T5の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Dの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とVmaxTの対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Eの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とVmaxの対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Fの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とAmaxTの対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Gの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とAmaxの対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Hの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvAUC20%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Iの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvH5%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Jの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvT50%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Kの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvTs50%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Lの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvTe80%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Mの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvTr20%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Nの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvH95%/vB95%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Oの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とpH5%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Pの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とpT50%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Qの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とpB70%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Rの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とpH5%/pB5%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Sの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とpAUC90%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Tの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とmH20%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Uの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とmH20%/mB20%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Vの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とmAUC30%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Wの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvHa50%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Xの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とvTm50%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図43Yの上図は、各種凝固因子の濃度の対数とRvH50%/RvB50%の対数との関係の一例を示す図である。中左図は、凝固因子の実測濃度に対する検量線に基づく演算濃度のプロットを示す。中右図は、実測濃度と演算濃度の対数プロットを示す。 図44Aは、加温及び非加温でのLA血漿の補正1次曲線を示す図である。 図44Bは、加温及び非加温での第VIII因子インヒビター陽性血漿の補正1次曲線を示す図である。 図45Aは、LA血漿と正常血漿との混合血漿(LA-NP)の非加温及び加温での補正1次曲線を示す図である。 図45Bは、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿(IN-NP)の非加温及び加温での補正1次曲線を示す図である。 図46Aは、各種血漿のAPTTについての、非加温血漿での値Pa、加温血漿での値Pb、それらの比Pa/Pb、及び差Pb-Paを示す図である。 図46Bは、各種血漿のVmaxについての、非加温血漿での値Pa、加温血漿での値Pb、それらの比Pa/Pb、及び差Pb-Paを示す図である。 図46Cは、各種血漿のAmaxについての、非加温血漿での値Pa、加温血漿での値Pb、それらの比Pa/Pb、及び差Pb-Paを示す図である。 図46Dは、各種血漿のvB10%についての、非加温血漿での値Pa、加温血漿での値Pb、それらの比Pa/Pb、及び差Pb-Paを示す図である。 図46Eは、各種血漿のvT10%についての、非加温血漿での値Pa、加温血漿での値Pb、それらの比Pa/Pb、及び差Pb-Paを示す図である。 図46Fは、各種血漿のvAB10%についての、非加温血漿での値Pa、加温血漿での値Pb、それらの比Pa/Pb、及び差Pb-Paを示す図である。 図46Gは、各種血漿のvTB10%についての、非加温血漿での値Pa、加温血漿での値Pb、それらの比Pa/Pb、及び差Pb-Paを示す図である。 図47Aは、加温時間を0分、10分、30分、120分のそれぞれとした場合の「正常血漿」の補正1次曲線を示す図である。 図47Bは、加温時間を0分、10分、30分、120分のそれぞれとした場合の「LA陽性血漿」の補正1次曲線を示す図である。 図47Cは、加温時間を0分、10分、30分、120分のそれぞれとした場合の「第VIII因子インヒビター陽性血漿」の補正1次曲線を示す図である。 図47Dは、加温時間を0分、10分、30分、120分のそれぞれとした場合の「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」の補正1次曲線を示す図である。 図47Eは、加温時間を0分、10分、30分、120分のそれぞれとした場合の「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」の補正1次曲線を示す図である。 図48は、5種類の試料のそれぞれについて、10分加温処理後の試料のAPTT測定データから得られる各種評価パラメータ、加温処理なしの試料のAPTT測定データから得られる各種評価パラメータ、及び、双方の各種評価パラメータの比を算出した結果を示す表の一例を示す図である。 図49Aは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルAに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Bは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルBに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Cは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルCに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Dは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルDに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Eは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルHに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Fは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルIに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Gは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルJに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Hは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルKに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Iは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルOに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Jは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルPに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Kは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルQに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図49Lは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルRに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Aは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルEに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Bは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルFに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Cは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルGに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Dは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルLに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Eは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルMに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Fは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルNに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Gは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルSに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Hは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルTに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図50Iは、加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルUに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図51Aは、各サンプルの被検血漿(単体)の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のAPTTの例を示す図である。 図51Bは、各サンプルの被検血漿と正常血漿との混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後のAPTTの例を示す図である。 図52Aは、LA陽性血漿のサンプルAと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Bは、LA陽性血漿のサンプルBと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Cは、LA陽性血漿のサンプルCと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Dは、LA陽性血漿のサンプルDと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Eは、LA陽性血漿のサンプルHと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Fは、LA陽性血漿のサンプルIと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Gは、LA陽性血漿のサンプルJと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Hは、LA陽性血漿のサンプルKと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Iは、LA陽性血漿のサンプルOと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Jは、LA陽性血漿のサンプルPと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Kは、LA陽性血漿のサンプルQと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図52Lは、LA陽性血漿のサンプルRと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Aは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルEと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Bは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルFと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Cは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルGと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Dは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルLと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Eは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルMと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Fは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルNと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Gは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルSと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Hは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルTと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図53Iは、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルUと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で10分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図54Aは、LA陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率」の加温処理なしと10分加温処理後との比(vAB10% 10/0比)、及び第VIII因子インヒビター陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率」の加温処理なしと10分加温処理後との比(vAB10% 10/0比)を示す図である。 図54Bは、LA陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さ」の加温処理なしと10分加温処理後との比(vH60% 10/0比)、及び第VIII因子インヒビター陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さ」の加温処理なしと10分加温処理後との比(vH60% 10/0比)を示す図である。 図55Aは、LA陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率」の加温処理なしと10分加温処理後との差(vAB10% 10/0差)、及び第VIII因子インヒビター陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率」の加温処理なしと10分加温処理後との差(vAB10% 10/0差)を示す図である。 図55Bは、LA陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さ」の加温処理なしと10分加温処理後との差(vH60% 10/0差)、及び第VIII因子インヒビター陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さ」の加温処理なしと10分加温処理後との差(vH60% 10/0差)を示す図である。 図55Cは、LA陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心時間」の加温処理なしと10分加温処理後との差(vT60% 10/0差)、及び第VIII因子インヒビター陽性血漿の個々のサンプルと正常血漿との等量混合血漿に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心時間」の加温処理なしと10分加温処理後との差(vT60% 10/0差)を示す図である。 図56は、加温処理なし及び37℃で2分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図57は、37℃で2分加温処理後及び10分加温処理後のLA陽性血漿のサンプルに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図58は、加温処理なし及び37℃で2分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図59は、37℃で2分加温処理後及び10分加温処理後の第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルに関わるクロスミキシング試験の結果を示す図である。 図60は、LA陽性血漿のサンプルと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で2分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図61は、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルと正常血漿との等量混合血漿の加温処理なし及び37℃で2分加温処理後の補正1次曲線の例を示す図である。 図62は、5種類の試料のそれぞれについて、2分加温処理後の試料のAPTT測定データから得られる各種評価パラメータ、加温処理なしの試料のAPTT測定データから得られる各種評価パラメータ、及び、双方の各種評価パラメータの比を算出した結果を示す表の一例を示す図である。 図63Aは、混合血漿のAPTT時間(T50)及びVmaxについて、非加温血漿と加温血漿との差(Pb-Pa)及び比(Pb/Pa)を示す図である。LA:LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿、Inhibitor:第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿。 図63Bは、混合血漿(LA及びInhibitor)のvAB40%及びvABa40%について、非加温血漿と加温血漿との差(Pb-Pa)及び比(Pb/Pa)を示す図である。 図63Cは、混合血漿(LA及びInhibitor)のvH40%及びvHa40%について、非加温血漿と加温血漿との差(Pb-Pa)及び比(Pb/Pa)を示す図である。 図63Dは、混合血漿(LA及びInhibitor)のvAUC90%及びvW10%/vB10%について、非加温血漿と加温血漿との差(Pb-Pa)及び比(Pb/Pa)を示す図である。 図63Eは、混合血漿(LA及びInhibitor)のpAUC80%及びmAUC20%について、非加温血漿と加温血漿との差(Pb-Pa)及び比(Pb/Pa)を示す図である。
本発明は、波形解析を応用した血液試料の凝固特性の分析方法に関する。また本発明は、血液凝固検査の検査時間を短縮化することに関する。
本発明によれば、血液試料の凝固特性の優れた分析を実現できる。例えば本発明によれば、患者検体の凝固因子の欠乏状況、凝固因子の濃度、様々な凝固因子の影響などを見積もることができる。また本発明によれば、クロスミキシング試験の検査時間を短縮化することができる。例えば、凝固因子インヒビターの有無の鑑別するにあたり、加温の時間を2時間よりも短く、例えば10分とすることができる。さらに凝固因子インヒビターの有無の鑑別に際し、パラメータの比又は差を求めることにより定量的な判定が可能となる。
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、血液凝固に関連する検体の特性を分析することに関する。特に、内因系凝固機能の検査に用いられる活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定が行われ、得られたデータの解析が行われる。外因系凝固機能の検査に用いられるプロトロンビン時間(PT)を含む凝固反応曲線を利用する他の検査項目の測定で得られたデータの解析などにも同様に適用され得る。
1.分析方法
1.1.分析方法の概要
本実施形態に係る分析方法の概要を図1に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、検体に関して、検査に用いられる試料が調製される(ステップS101)。調製された試料を対象として、凝固時間の測定が実行される(ステップS102)。凝固時間の測定の例として、APTT、PTなどの測定が挙げられる。凝固時間の測定で得られたデータに対する所定の解析が行われる(ステップS103)。解析結果に基づいて、検体について血液凝固機能に関する評価が行われる(ステップS104)。
1.2.試料調製及び凝固時間測定
ステップS101として行われる試料の調製と、ステップS102として行われる凝固時間の測定について説明する。ここでは、凝固時間の測定として、特にAPTTの測定を例に挙げて説明する。
検査対象となる検体は、例えば、凝固因子に起因する異常の検査が要求されている被験者に由来する血液検体である。より具体的には、血液検体として、被験者の血漿が用いられる。血液検体には、凝固検査に通常用いられる周知の抗凝固剤が添加され得る。例えば、クエン酸ナトリウム入り採血管を用いて採血され、速やかに血漿が遠心分離され得る。
被検血漿には、接触因子系の活性化剤とリン脂質とが加えられる。活性化剤としては、エラグ酸、セライト、カオリン、シリカ、ポリフェノール化合物などが用いられ得る。リン脂質としては、動物由来、植物由来、合成由来のリン脂質が用いられる。動物由来のリン脂質の例としては、ウサギ脳由来、ニワトリ由来、ブタ由来のものが挙げられる。植物由来のリン脂質の例としては、大豆由来のものが挙げられる。また、トリス塩酸等の緩衝液が適宜加えられてもよい。
APTTを測定するためには、市販のAPTT測定試薬、又は試薬キットなどが用いられ得る。一例としては、コアグピアAPTT-N(積水メディカル株式会社製)が用いられる。
上述の被検血漿に活性化剤及びリン脂質が加えられた試料は、加温され、血漿中の接触因子は活性化される。温度条件は、例えば30℃以上40℃以下であり、好ましくは35℃以上39℃以下である。
その後、試料には、塩化カルシウム液(カルシウムイオン)が添加され、凝固反応が開始させられる。塩化カルシウム液添加後の混合液の凝固反応が計測され得る。計測には、光の散乱光量又は透過度(吸光度でもよい)を計測する光学的な方法、又は血漿の粘度を計測する力学的な方法などが用いられ得る。計測される時間は、例えば、最終試薬の添加タイミングを開始時点として数十秒から5分程度である。この期間の間、例えば周期的に計測が繰り返し行われる。例えば、光学的な方法であれば、0.1秒周期で測光が行われてもよい。例えば、塩化カルシウム液が添加された時点が、反応開始時間に設定され得る。他のタイミングが反応開始時間として定義されてもよい。計測中の温度条件は、例えば30℃以上40℃以下であり、好ましくは35℃以上39℃以下である。
上述の測定は、一連の測定を自動で行うことができる装置を用いて行われてもよい。このような装置の一例として、血液凝固自動分析装置CP3000(積水メディカル株式会社製)が挙げられる。また、一部の動作が用手法で行われてもよい。例えば、試料の調製は用手法で行われ、光学分析装置で測定が行われてもよい。また、混合方法、測定方法に応じて、各種条件は適当に設定され得る。
1.3.データ解析
1.3.1.データ解析の概略
ステップS103として行われるデータ解析について説明する。図2は、データ解析の概略を示すフローチャートである。
ステップS201において、分析対象であるデータが取得される。このデータは、血液凝固測定で得られるデータであり、例えば上述のAPTT測定で得られる凝固反応過程を反映するデータである。例えば、被検血漿に活性化剤及びリン脂質が加えられた試料に塩化カルシウム液が添加され、その後の散乱光量の時間変化を示すデータが取得される。データ解析は、測定後ただちに行われてもよいし、予め測定して記憶しておいたデータに対して後から行われてもよい。
図3に取得されるデータの一例を示す。この図において、横軸は、塩化カルシウム液が添加された後の経過時間を示し、縦軸は散乱光量を示す。時間経過に伴って、混合液の凝固反応が進むため、散乱光量が増加している。本実施形態では、このような計測した光量の時間変化を示す曲線を、凝固反応曲線と称することにする。
図3に示した例は、散乱光量の計測結果であり、凝固反応曲線はシグモイド状となっているが、透過光量が計測される場合には、凝固反応曲線は逆シグモイド状になる。以降の説明では、散乱光量が計測される場合を例に示すが、透過光量や吸光度が計測される場合にも、同様の処理が行われ得る。混合液の粘度変化で凝固反応曲線を得る方法を含め、その他の方法で得られた凝固反応量を示すデータが解析対象にされてもよい。
ステップS202において、ベースライン調整が行われる。ベースライン調整には、平滑化処理と、ゼロ点調整とが含まれる。図4は、図3に示すデータに対してベースライン調整を行った後のデータの一例を示す。図5Aは、図3に示すベースライン調整前のデータの拡大図を示す。図5Bは、図4に示すベースライン調整後のデータの拡大図を示す。図5Aと図5Bとを比較してわかるように、ベースライン調整では、ノイズ除去を含む平滑化処理が行われる。平滑化処理には、ノイズ除去に関する種々の公知の方法の何れかが用いられ得る。図3に示すように、測定開始時点の散乱光量は0より大きい。これは、被検血漿を含む混合液が元々光を散乱させるためである。ベースライン調整では、図4に示すように、測定開始時点の散乱光量が0に調整される。
ステップS203において、ベースライン調整後のデータに対して補正処理が行われる。本実施形態では、ベースライン調整後の凝固反応曲線の最大値が100となるように、補正が行われる。図6は、図4に示すデータに対して、補正処理を行った結果を示す。
補正処理では、具体的には以下の処理が行われる。ベースライン調整後の凝固反応曲線をD(t)と表すことにする。D(t)の最大値をDmaxとし、D(t)の最小値をDminとする。D(t)の変化幅、すなわち、Dmax-Dminを、Drangeとする。補正後の値をP(t)としたときに、P(t)は下記式(1)で表される。
P(t)=[(D(t)-Dmin)/Drange]×100 (1)
補正後のデータから得られる凝固反応曲線を、補正処理済み凝固反応曲線と称することにする。この補正処理の目的は、以下のとおりである。ベースライン調整後の凝固反応曲線の高さは、検体のフィブリノゲン濃度に依存する。フィブリノゲン濃度には個人差があり、検体によって異なり得る。この補正によって、フィブリノゲン濃度に依存しない凝固波形パラメータなどを求めることができる。すなわち、この補正によって、検体間でのベースライン調整後の凝固反応曲線の形状の差異を定量的に比較することができるようになる。なお、ここでは補正後の値が0から100までとなるように補正したが、他の値であってもよい。また、この補正処理は必ずしも行われなくてもよい。
ステップS204において、凝固反応曲線を微分した微分曲線が算出される。図7は、図6に示す補正処理済み凝固反応曲線に対して1次微分に対応する処理を行って得られる1次微分曲線を示す。該1次微分曲線の算出方法については、後に詳述する。補正処理済み凝固反応曲線に関する1次微分(補正1次微分)は、総反応変化幅を100としたときの時間あたりの変化幅であるので、凝固反応進行率(凝固進行率)といえる。凝固進行率を全域で積分すると100になる。一方、補正処理を行っていない凝固反応曲線に関する1次微分は、実測した反応変化幅の時間あたりの値を示し、凝固速度を示す。
図7に示す補正処理済み凝固反応曲線の1次微分曲線についてさらに微分して、図8に示すような2次微分曲線が取得されてもよい。また、補正処理なしの凝固反応曲線の1次微分曲線についてさらに微分して、凝固加速度を示す2次微分曲線が取得されてもよい。
なお、本明細書においては、補正処理済み凝固反応曲線、及び補正処理なし凝固反応曲線を、それぞれ補正0次曲線、及び未補正0次曲線ともいい、またこれらを総称して「0次曲線」ともいう。また本明細書においては、該補正0次曲線、及び該未補正0次曲線の1次微分曲線を、それぞれ補正1次曲線、及び未補正1次曲線ともいい、またこれらを総称して「1次曲線」ともいう。また本明細書においては、該補正0次曲線、及び該未補正0次曲線の2次微分曲線、あるいは該補正1次曲線、及び該未補正1次曲線の1次微分曲線を、それぞれ補正2次曲線、及び未補正2次曲線ともいい、またこれらを総称して「2次曲線」ともいう。
本明細書では、凝固進行率、凝固速度、その他凝固の進行を表す値を総称して1次微分値という。凝固進行率又は凝固速度を例に挙げて説明する事項は、1次微分値全般について同様に当てはまり得る。また本明細書では、凝固加速度、その他1次微分値の変化率を表す値を総称して2次微分値という。
ステップS205において、各種の評価パラメータの算出が行われる。評価パラメータは、検体の血液凝固特性を示すパラメータである。評価パラメータについては、後に詳述する。
1.3.2.微分曲線の算出
ステップS204で行われる凝固反応曲線(0次曲線)の微分曲線の算出の一例について説明する。凝固反応曲線A(n)から1次曲線B(n)を得るための微分処理としては、下記式(2)を用いた差分法が用いられ得る。
B(n)=A(n)-A(n-1) (2)
ただし、凝固時間が顕著に遅くなる凝固異常検体の凝固反応曲線は、正常検体と比べて上昇時の曲線の傾斜が緩やかとなり、反応終了段階の凝固反応曲線の形状も緩やかなプラトー状になる。このような場合には、A(n)とA(n-1)の差が小さいために、1次曲線の最大値付近においても、B(n)の値が小さくなる。このような状態は、S/N比が悪化して数値演算上のノイズの影響を受け易い状態であり、凝固反応に起因する情報がノイズに埋もれ易い状態である。
また、その変化量と測定のタイミングとによっては、上記式(2)を用いた1次微分の算出結果は離散的な値となり得る。例えば、0.1秒ごとに行われる測光で得られた血液凝固反応曲線について、n番目の値に関する1次微分値を、n番目の値とn-1番目の値との差分値として求めることを考える。凝固反応曲線の高さが低いとき、得られる1次微分曲線が離散的な値となってしまう場合がある。例えば、フィブリノゲン濃度が低いとき、凝固反応曲線の高さは低くなる。本実施形態のような血液分析では、このような現象が頻繁に発生し得る。一つの解決手段として、測定時間間隔を短くして測定感度を上げることが考えられる。しかしながら、測定時間間隔を短くすることは、装置のコストを上昇させる等、好ましくないこともある。
そこで、次のようにして1次曲線を取得してもよい。補正処理を行っていない又は補正処理済みの凝固反応曲線における各測定点Nについて、平均傾き値を求める。平均傾き値の算出には、一定時間内の測定データが利用され得る。すなわち、各測定点Nの前後の一定数の測定データ、例えば、N-KからN+Kまでの2K+1個の測定データが利用され得る。例えば、N-2,N-1,N,N+1,N+2番目の5点の測定データが利用され得る。平均傾き値は、これら複数の測定点を直線近似したときの傾き値を意味する。直線近似の演算方法には、最小二乗法など周知の方法が利用され得る。これらの測定データの平均傾き値が、測定点Nでの1次微分値とみなされ得る。
近似直線の演算方法の一例を次に示す。xを測光時間、yを凝固反応曲線の高さとする。例えば、測定点が(xi, yi)、ここで(i=N-K, …, N+K)のとき、下記式(3)の偏微分を考える。
Figure 0007328251000005
区間内平均傾きaは、下記式(4)で表される。
Figure 0007328251000006
上記式(4)に各時点Nに関するデータを代入することで、区間内平均傾きaが算出され得る。
凝固反応曲線から得られる一連の区間内平均傾きaを1次曲線として用いることで、上記式(2)を用いて算出した1次曲線を用いる場合より詳細な情報が得られる。1次曲線から2次曲線を求める場合にも同様である。
1.3.3.評価パラメータ
本実施形態では、上記の0次曲線、1次曲線、及び2次曲線に基づいて、種々の評価パラメータが算出される。それらパラメータについて説明する。
1.3.3.1.凝固時間
本実施形態の評価パラメータの1つである凝固時間について、図9に示すベースライン調整後の凝固反応曲線を参照して説明する。ベースライン調整後の凝固反応曲線における散乱光量の変化量が所定条件を満たした時点を凝固終了判定点Teとする。例えば、単位時間当たりの散乱光量の変化量が所定値以下となった時点を凝固終了判定点Teとする。この凝固終了判定点Teの散乱光量を100%としたときに、散乱光量がc%に相当する反応経過時間を、凝固時間Tcとする。例えば、散乱光量が50%に相当する反応経過時間を、凝固時間T50とする。このように凝固時間Tcを定義することで、APTT測定中に、ベースライン調整後の凝固反応曲線が所定条件を満たした凝固終了判定点Te(=T100)が検出されたときに、直ちに凝固時間Tcが決定され得る。なお、凝固時間Tcの決定方法については本方法に限らない。他の方法により凝固時間が定義されてもよい。例えば、凝固速度が最大になる時間を凝固時間としてもよいし、図6に示したような補正後の散乱光量が50%となる反応経過時間T50を凝固時間Tcとしてもよい。
1.3.3.2.演算対象域値
演算対象域値について、図10Aを参照して説明する。図10Aは、補正1次曲線の一例を示す。補正1次微分(凝固進行率)の最大値Vmaxも評価パラメータになり得る。ここでは、補正1次曲線を例に挙げたが、未補正1次曲線でも同様である。凝固速度の最大値も評価パラメータになり得る。
本実施形態では、1次微分値の最大値Vmaxを100%としたときに、1次微分値がS%以上であるデータを以後の解析対象とする場合に、このSの値を演算対象域値S(%)と称することにする。演算対象域値Sは、1次曲線のピーク形状の特徴を反映するピーク範囲を限定するために設定され得る。ピーク形状を相対的に広く限定するためには、演算対象域値Sは5%~20%に設定され得る。演算対象域値Sを大きくするとピークの上部形状の影響が相対的に大きく解析結果に反映される。ピーク上部の形状を解析するためには、演算対象域値Sは20%~95%に設定され得る。演算対象域値Sは、凝固速度曲線に対しても同様に適用され得る。演算対象域値Sはまた、2次曲線にも適用され得る。図8に示すように、2次曲線は、プラス方向及びマイナス方向の双方にピークを有する。演算対象域値Sは、2次曲線のプラスピーク及びマイナスピークのそれぞれに対して設定され得る。
1.3.3.3.重心点
1次曲線における重心点について、図10Aを参照して説明する。図10Aでは、補正1次曲線がF(t)で示される。このときに、F(t)について、演算対象域値Sがx%以上の値を演算対象データとした「重み付き平均値」に相当する位置を重心点(vTx, vHx)とする。
1次曲線において、重心点を示す時間を重心時間vTとする。すなわち、1次曲線の重心時間vTは、反応開始時間から重心点までの時間であり、図10Aに示すようなグラフにおける重心点のx座標である。1次曲線において、重心点を示す1次微分値を重心高さvHとする。すなわち、1次曲線の重心高さvHは、図10Aに示すようなグラフにおける重心点のy座標である。
より具体的には、重心時間vTと重心高さvHとは次のようにして求められる。V=F(t)の最大値をVmaxとする。演算対象域値S(%)を用いて、F(t)≧Vmax×S×0.01を満たす時間tのデータ群をt[t1, …t2]とする。すなわち、図10Aに示すように、t1<t2とし、F(t1)=Vmax×S×0.01、F(t2)=Vmax×S×0.01としたときに、時刻t1~t2のデータ群をt[t1, …t2]とする。このとき、積算値Mを下記式(5)とする。
Figure 0007328251000007
このとき、重心時間vT及び重心高さvHは、それぞれ次式(6)及び(7)で算出される。
Figure 0007328251000008
上述の説明では、図10Aを参照して補正1次曲線の場合を示したが、未補正1次曲線の場合にも、同様に、重心点、重心時間vT及び重心高さvHが定義され得る。すなわち、凝固速度及び補正1次微分を含む1次微分値について、重心点、重心時間vT及び重心高さvHが定義され得る。これら重心時間vT及び重心高さvHは、評価パラメータになり得る。なお、上記のF(t1)=Vmax×S×0.01、F(t2)=Vmax×S×0.01を満たすt1及びt2(t1<t2)も評価パラメータとなり得、以下、該1次曲線に関するt1及びt2を、それぞれ領域始点時間vTs、及び領域終点時間vTe(vTs<vTe)と呼ぶことがある(図10A)。
図11に、あるデータに関して、演算対象域値Sと、その際の解析対象となる補正0次曲線及び補正1次曲線の範囲と、得られる重心点との関係を示す。図11において、上段、中断、及び下段は、演算対象域値Sがそれぞれ10%、50%及び80%の場合を示す。左列は補正0次曲線を示し、右列は補正1次曲線及び重心点を示す。演算対象域値Sの変化に伴って、重心点の位置は、図11に示すように変化する。
同様に、2次曲線についても、重心点、重心時間、及び重心高さが定義され得る。2次曲線は、図8に示すように2次微分値のプラス方向及びマイナス方向の双方にピークを有する。そのため、2次曲線の重心点は、プラスピーク及びマイナスピークの両方に対して算出され得る。例えば、プラスピークについては、2次曲線A=F'(t)の最大値がAmaxであり、演算対象域値がS(%)のとき、F'(t)≧Amax×S×0.01を満たす時間t[t1, …, t2](t1<t2)を求め、上式(5)~(7)に従って、プラスピークの重心時間pT、及び重心高さpHを算出する。マイナスピークについては、2次曲線A=F'(t)の最小値がAminであり、演算対象域値がS(%)のとき、F'(t)≦Amin×S×0.01を満たす時間t[t1, …, t2](t1<t2)を求め、上式(5)~(7)に従って、マイナスピークの重心時間mT、及び重心高さmHを算出する。演算対象域値Sの変化に伴って、重心点の位置は変化する。
1.3.3.4.ピーク幅、平均点、扁平率及び時間率
反応時間が重心時間vTより短い領域において1次微分値が演算対象域値S以上となる最少の反応時間から、反応時間が重心時間vTより長い領域において1次微分値が演算対象域値S以上となる最大の反応時間までの時間のうち、F(t)≧Sとなる時間長(F(t)≧Sとなるデータ点数から1を引いたものに測光時間間隔を乗じて得られた値)を、1次曲線のピーク幅vBとする。図10Aに示す例では、時刻vTsから時刻vTeまでがピーク幅vBとなる。同様に、2次曲線のプラスピークにおける2次微分値が演算対象域値S以上となる反応時間の最小値及び最大値はそれぞれpTs、pTeであり、pTsからpTeまでの時間のうち、F’(t)≧Sとなる時間長(F’(t)≧Sとなるデータ点数から1を引いたものに測光時間間隔を乗じて得られた値)を2次曲線のプラスピークのピーク幅pBとする。同様に、2次曲線のマイナスピークにおける2次微分値が演算対象域値S以下となる反応時間の最小値及び最大値はそれぞれmTs、mTeであり、mTsからmTeまでの時間のうち、F’(t)≦Sとなる時間長(F’(t)≦Sとなるデータ点数から1を引いたものに測光時間間隔を乗じて得られた値)を2次曲線のマイナスピークのピーク幅mBとする。
本発明で用いられるパラメータのさらなる例としては、重心ピーク幅vWが挙げられる。図10Bに示すとおり、vWは、1次曲線F(t)≧vHを満たすピーク幅(F(t)≧vHを満たす最小時間から最大時間までの間で、F(t)≧vHとなる時間長)である。本発明で用いられるパラメータのさらなる例としては、vTrが挙げられる。vTrは、vTsからvTeまでの幅である。図10Bは、演算対象域値Sが10%のときの1次曲線の演算対象域(点線)を示す。図10Bの上には重心点(vT, vH)(黒丸印)、vTs、vTeが、図10Bの下には、vB、vWが示されている。同様に、2次曲線のプラスピークについては、F'(t)≧pHを満たすピーク幅を重心ピーク幅pWとする。2次曲線のマイナスピークについては、F'(t)≦mHを満たす凝固反応時間の幅を重心ピーク幅mWとする。図10Cには、演算対象域値Sが10%のときの2次曲線のプラスピークの重心点(pT, pH)及びマイナスピークの重心点(mT, mH)が示されている。
本発明で用いられるパラメータのさらなる例としては、平均時間vTa、平均高さvHa、及び領域中央時間vTmが挙げられる。図10Dには、演算対象域値Sが10%のときの1次曲線の平均点(vTa, vHa)(白菱印)、重心点(vT, vH)(黒丸印)、vTs、vTe、及びvTmが示されている。vTa、vHa、及びvTmは、F(vTs)からF(vTe)までのデータ点数をnとしたときにそれぞれ以下の式で表される。同様に、2次曲線のプラスピーク及びマイナスピークについての領域中央時間vTmを求めることができる。
Figure 0007328251000009
本実施形態では、1次曲線の重心高さvH、平均高さvHa、ピーク幅vB、及び重心ピーク幅vWを用いて、1次曲線のピーク幅に基づく扁平率vAB、vABa、及び重心ピーク幅に基づく扁平率vAW、vAWaを下記式(8a)、(8b)、(8c)、(8d)のように定義する。
vAB=vH/vB (8a)
vAW=vH/vW (8b)
vABa=vHa/vB (8c)
vAWa=vHa/vW (8d)
また、本実施形態では、1次曲線の重心時間vT、ピーク幅vB、及び重心ピーク幅vWを用いて、1次曲線のピーク幅に基づく時間率vTB及び重心ピーク幅に基づく時間率vTWを下記式(9a)、(9b)のように定義する。
vTB=vT/vB (9a)
vTW=vT/vW (9b)
なお、扁平率は、vAB=vB/vH、vAW=vW/vHであってもよく、またvABa=vB/vHa、vAWa=vW/vHaであってもよい。すなわち、扁平率は、重心高さvT又は平均高さvHaと、ピーク幅vB又はvWとの比であればよい。同様に、時間率は、vTB=vB/vT、vTW=vW/vTであってもよい。すなわち、時間率は、重心時間vTとピーク幅vB又はvWとの比であればよい。また、これら比に定数Kを乗じてもよい。すなわち、例えば、扁平率は、vAB=(vH/vB)K、vAB=(vB/vH)K、vAW=(vH/vW)K、又はvAW=(vW/vH)Kであってもよく、又は、vABa=(vHa/vB)K、vABa=(vB/vHa)K、vAWa=(vHa/vW)K、又はvAWa=(vW/vHa)Kであってもよく、時間率は、vTB=(vT/vB)K、vTB=(vB/vT)K、vTW=(vT/vW)K、又はvTW=(vW/vT)Kであってもよい。
以上のような、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、平均時間vTa、平均高さvHa、領域始点時間vTs、領域終点時間vTe、領域中央時間vTm、ピーク幅vTr、扁平率vAB、vAW、vABa、vAWa、及び時間率vTB、vTWも重心点に関係するパラメータであり、本発明における評価パラメータになり得る。
また、上記のような扁平率及び時間率は、2次曲線についても求めることができる。例えば、2次曲線のプラスピークについて、pHと、pB又はpWとの比として、ピーク幅に基づく扁平率pAB又は重心ピーク幅に基づく扁平率pAWを求めることができ、一方、pTと、pB又はpWとの比として、ピーク幅に基づく時間率pTB又は重心ピーク幅に基づく時間率pTWを求めることができる。同様に、2次曲線のマイナスピークについて、mHと、mB又はmWとの比として、ピーク幅に基づく扁平率mAB又は重心ピーク幅に基づく扁平率mAWを求めることができ、一方、mTと、mB又はmWとの比として、ピーク幅に基づく時間率mTB又は重心ピーク幅に基づく時間率mTWを求めることができる。
本明細書においては、異なる演算対象域に由来するパラメータを識別するため、各パラメータに、それが由来する演算対象域値Sを付けて表示することがある。例えば、Sがx(%)のときの1次曲線の重心点に関係するパラメータは、vHx、vTx、vBx、vWxなどと称されることがある。例えば、Sが10%のときの1次曲線の重心点に関係するパラメータvH、vT、vB、vW、vTa、vHa、vTs、vTe、vTm、vTr、vAB、vAW、vABa、vAWa、vTB、vTWは、それぞれvH10%、vT10%、vB10%、vW10%、vTa10%、vHa10%、vTs10%、vTe10%、vTm10%、vTr10%、vAB10%、vAW10%、vABa10%、vAWa10%、vTB10%、vTW10%と称されることがある。2次曲線の重心点に関係するパラメータについても同様である。
図12A及び図12Bは、同一の1次曲線に関して、演算対象域値Sが異なる場合の各パラメータを示す。図12Aは、演算対象域値Sが10%の場合を示し、図12Bは、演算対象域値Sが80%の場合を示す。演算対象域値Sが10%の図12Aの場合には、1次曲線の重心高さvH10%は0.4であり、重心時間vT10%は149秒であり、ピーク幅vB10%は200秒である。これに対して、演算対象域値Sが80%の図12Bの場合には、重心高さvH80%は0.72であり、重心時間vT80%は119秒であり、ピーク幅vB80%は78秒である。
1.3.3.5.その他
本発明で用いられる重心点に関係するパラメータのさらなる例としては、1次曲線又は2次曲線の演算対象域における曲線下面積(AUC)が挙げられる。2次曲線はプラス側ピークとマイナス側ピークを有するため、2次曲線の最大ピーク高さを100%とした演算対象域における曲線下面積(AUC)は、プラス側ピークについての演算対象域におけるAUC(pAUC)とマイナス側ピークの演算対象域におけるAUC(mAUC)があり得る。本明細書においては、異なる演算対象域に由来するAUCを識別するため、それが由来する演算対象域値Sに従って、AUCxと称することがある。例えば、Sが5%である演算対象域のvAUC、pAUC、及びmAUCは、それぞれvAUC5%、pAUC5%、及びmAUC5%である。さらに、上述の重心点に関係するパラメータ以外のさらなるパラメータが、本発明で用いられるパラメータに含まれ得る。該パラメータの例としては、上述の凝固時間Tc、最大1次微分値Vmax、最大2次微分値Amax、最小2次微分値Amin、及びそれらに到達する時間を表すVmaxT、AmaxT、AminTなどが挙げられる。これらのパラメータも、評価パラメータとして使用され得る。
上述した一連のパラメータは、補正処理済み凝固反応曲線(補正0次~2次曲線)由来のパラメータと、補正処理なし凝固反応曲線(未補正0次~2曲線)由来のパラメータとを含み得る。
1.4.評価
ステップS104で行われる評価の一例について説明する。
後述する表1に示すパラメータ、すなわち凝固時間Tc、最大1次微分値Vmax、最大2次微分値Amax、最小2次微分値Amin、及びそれらに到達する時間を表すVmaxT、AmaxT、AminT、1次曲線の重心点に関係するパラメータ(重心時間vT、重心高さvH、平均時間vTa、平均高さvHa、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、それらから求められた扁平率vAB、vAW、vABa、vAWa、及び時間率vTB、vTW、ならびにvAUC、vTs、vTe、vTr、vTm)、2次曲線の重心点に関係するパラメータ(重心時間pT、mT、重心高さpH、mH、ピーク幅pB、mB、重心ピーク幅pW、mW、それらから求められた扁平率pAB、pAW、mAB、mAW及び時間率pTB、pTW、mTB、mTW、ならびにpAUC、mAUC、pTs、pTe、pTm、mTs、mTe、mTm)は、血液凝固に関する特性を反映する。この際、1次曲線及び2次曲線の重心時間、重心高さ、ピーク幅、平均時間、平均高さ、扁平率、時間率、及びAUCは、演算対象域値Sの設定によっても、血液凝固に関する特性の反映結果が変わり得る。また、上記のパラメータの組み合わせも、血液凝固に関する特性を反映し得る。例えば、これらパラメータ同士の四則演算その他の各種演算の結果も、血液凝固に関する特性をより顕著に反映する場合がある。例えば、凝固時間Tc、重心時間vT、重心高さvH、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、平均時間vTa、平均高さvHa、扁平率vABやvAW、vABa、vAWa、時間率vTBやvTW、又はvAUC、あるいはそれらの組み合わせに基づいて、凝固因子の欠乏状況、ループスアンチコアグラント又は抗カルジオリピン抗体といった抗リン脂質抗体の存在、凝固因子インヒビターの存在、フォンヴィレブランド因子の低下などを含む血液凝固の異常の有無、各成分の濃度など、血液凝固に関する特性が判定され得る。
凝固時間Tc、重心時間vT、重心高さvH、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、平均時間vTa、平均高さvHa、扁平率vABやvAW、vABa、vAWa、時間率vTBやvTW、又はvTm、vAUCといった後述する表1に示す評価パラメータは、凝固因子などの成分の濃度と相関関係を示すことがある。したがって、凝固因子などの成分の濃度が既知の試料の評価パラメータを取得することで検量線が作成され得る。この検量線を用いて、計測及び解析された患者検体の評価パラメータに基づいて、凝固因子などの成分の濃度が算出され得る。
上記のパラメータの比や差が凝固因子などの成分の濃度と相関関係を示すことがある。評価パラメータの比の例としては、上述した扁平率vABやvAW、vABa、vAWa、時間率vTBやvTW、領域中央時間vTmなどが挙げられる。評価パラメータの差の例としては、凝固時間Tcと重心時間vTとの差、ピーク幅と重心ピーク幅との差、異なるSにおけるvT間の差が挙げられる。これらのパラメータ間の比や差を取得することで検量線が作成され得る。この検量線を用いて、計測及び解析された患者検体の評価パラメータに基づいて、凝固因子などの成分の濃度が算出され得る。
例えば、演算対象域値Sを0%以上70%以下に設定したとき、好ましくは5%以上70%以下に設定したときの時間率vTBは、第VIII因子の濃度と高い相関関係を有する。また、演算対象域値Sを0%以上80%以下に設定したとき、好ましくは5%以上80%以下に設定したときの扁平率vABは、第VIII因子の濃度と高い相関関係を有する。特に、例えば、演算対象域値Sを70%に設定したときの扁平率vABは、濃度が比較的高い場合に、第VIII因子の濃度と高い相関関係を有し、演算対象域値Sを80%に設定したときの扁平率vABは、濃度が比較的低い場合に、第VIII因子の濃度と高い相関関係を有する。
また最大1次微分値Vmax、最大2次微分値Amax、及びそれらに到達した時間VmaxT、AmaxTといった評価パラメータは、凝固因子などの成分の濃度と相関関係を示すことがある。したがって、凝固因子などの成分の濃度が既知の試料の評価パラメータを取得することで検量線が作成され得る。この検量線を用いて、計測及び解析された患者検体の評価パラメータに基づいて、凝固因子などの成分の濃度が算出され得る。
また、凝固時間Tcと重心時間vTとは、1次曲線の形状に応じて挙動が異なる場合がある。特に、凝固異常検体の1次曲線の形状は、ピークが1つの単峰性の形状を取らず、ピークが2つの二峰性の形状を取ったり、二峰性のピークのうち一方が不完全なピークとなるショルダー状の形状を取ったりすることがある。このような1次曲線の形状に起因して、凝固異常検体では、例えば図10Aに示す凝固時間Tcと重心時間vTとの差dが大きくなる。したがって、この差dに基づいて、血液凝固の異常の有無など血液凝固に関する特性が判定され得る。また、1次曲線の形状に応じて、重心高さvH又は重心時間vTと、最大1次微分値Vmax又はそれを示す時間との関係が種々に変化し得る。したがって、重心高さvH又は重心時間vTと、最大1次微分値Vmax又はそれを示す時間VmaxTとの関係に基づいて、血液凝固の異常の有無や程度など血液凝固に関する特性が判定され得る。
また、演算対象域値S (=x(%))を様々に変化させながら求めた重心高さvHx又は重心時間vTx、あるいは、これらを用いて求めた扁平率vABx又は時間率vTBxなどといった評価パラメータは、凝固因子や他の凝固機能関与成分などの特性を示すことがある。したがって、演算対象域値xを様々に変化させながら求めた評価パラメータの挙動に基づいて、血液凝固の異常の有無や程度など血液凝固に関する特性が判定され得る。
上述の種々の特性は、凝固因子や凝固機能関与成分などの種類に応じても異なり得る。そこで、上述の評価パラメータに基づいて、何れの凝固因子などに起因して異常があるのかが鑑別され得る。
例えば、第VIII因子が欠乏している場合には、例えば第IX因子が欠乏している場合などの場合よりも、演算対象域値S (=x(%))を変化させたときの重心時間vTxの変化量が顕著となる。したがって、演算対象域値S (=x(%))を変化させたときの重心時間vTxの変化率から、欠乏している血液凝固因子の鑑別が可能である。
また、例えば、第VIII因子の濃度が低いとき、他の凝固因子が欠乏しているときに比較して、演算対象域値xを80%に設定したときに求まる時間率vTB80%が顕著に低下するので、演算対象域値xを80%に設定したときに求まる時間率vTB80%は、第VIII因子の欠乏の判定に用いられ得る。
凝固因子に関する鑑別事項と、該鑑別のために使用されるパラメータの具体的な例としては、以下(末尾に付加する演算対象域値xの添え字xを省略)が挙げられる:
・第VIII因子の濃度に対して、T50、vH、vT、vTe、vTr、vTa、vHa、vTm、vB、vW、vAB、vTB、vAW、pH、pAB、pAW、pAUC、VmaxT、Amax、AmaxT、mAUC、又はそれらの2種以上の組み合わせ。このときの演算対象域Sは、Vmaxが100%のとき、好ましくは0.5~99%、より好ましくは1~95%、さらに好ましくは5~80%、さらに好ましくは30~80%、さらに好ましくは30~70%又は50~80%である。
・第IX因子の濃度に対して、T50、vT、vTs、vTa、vTm、pT、又はそれらの2種以上の組み合わせ。このときの演算対象域Sは、Vmaxが100%のとき、0.5~99%、より好ましくは10~95%、さらに好ましくは10~80%である。
上記の評価パラメータは、補正0次~2次曲線から求めてもよいが、未補正0次~2次曲線から求めてもよい。例えば、補正0次曲線では凝固速度を相対値化するが、ある種の血液凝固異常は、凝固速度の大きさに反映される。したがって、いくつかの評価パラメータ、好ましくは凝固速度に関連するパラメータ、例えば重心高さ、平均高さ、扁平率、AUCなどは、補正0次~2次曲線よりも、未補正0次~2次曲線から求めた値のほうが、血液凝固特性をよりよく反映することがある。
1.5.重心点について
1次曲線のピーク形状は、正常検体では単峰性になることが多いが、試薬の種類や検体に含まれる凝固機能関与成分の影響の差異などによって二峰性になったり、ショルダー状の曲線になったりする場合がある。例えば、特許文献1乃至3に開示されている技術のように、凝固速度の最大値を評価パラメータとして用いる場合に、実際は凝固速度曲線が単峰性の形状とならないような場合であっても強力なスムージング処理によって単峰性となる凝固速度曲線を得て、凝固速度の最大値を特定することがある。しかしながら、このようなスムージング処理によって、測定データに含まれている有用な情報が失われているおそれがある。血液凝固反応では様々な因子が複雑に作用している。種々の形状の1次曲線及び2次曲線は、そのような様々な因子に関する情報を含んでいる可能性がある。本実施形態に係る分析方法は、重心点に関係する評価パラメータを用いることで、必要な情報を失う程の過度のスムージング処理などを行う必要がない。したがって、本実施形態に係る分析方法によれば、様々な因子の状態を詳細に反映した分析結果を得ることができる。
本実施形態に係る重心点の算出は、平均に関する演算を含んでいる。このため、測定データに含まれるランダムなノイズの影響は演算によって低減できる。したがって、ノイズ除去のためのスムージング処理を過度に行う必要がなく、多くの情報が維持される。また、本方法は、S/N比がよい分析方法となっている。特に、1次曲線又は2次曲線に関するデータはノイズを多く含み易いが、本方法の重心点を用いる方法によれば、1次曲線又は2次曲線のデータからも有益な情報が得られる。
本実施形態に係る重心点の算出では、演算対象域値Sが種々に設定され得るし、演算対象域値Sの設定ごとに異なる重心点が算出され得る。例えば演算対象域値Sを0%から99%まで1%毎に異なるものとすれば、100個の重心点が得られ、それぞれの重心点について重心高さvHなど各種の評価パラメータが得られる。また、上述のとおり、これらの評価パラメータの組み合わせも有益な情報となり得る。したがって、重心点を用いると、多くの情報が得られる。
本実施形態で重心点を求める元となるデータである凝固反応曲線は、例えばAPTT測定といった、臨床現場で日常的に測定されているものである。したがって、本実施形態に係る分析は、データ解析の方法を導入するのみで、容易に臨床現場で利用され得る。
また、例えば、1次曲線の最大値(Vmax)といったパラメータは、1次微分値のうちある一点を表すパラメータであるのに対して、重心点は、時間軸に関して幅のあるデータを反映するパラメータである。したがって、例えば時間軸について非対称なデータに関してもその非対称性を示すパラメータになり得る。
本実施形態に係る分析方法では、ステップS203として示した補正処理が行われる。この補正処理によって、検体ごとのフィブリノゲン濃度の大きさの差異をキャンセルし、検体間での凝固反応曲線の形状の差異を定量的に比較することができるようになる。
本実施形態では、凝固反応曲線(0次曲線)から1次曲線又は2次曲線を求める際の微分処理において、上記式(4)で示した区間内平均傾きを用いる。この方法によれば、上記式(2)に示した差分法を用いる場合よりも、詳細な情報が得られる。特に、凝固反応曲線における値の変化量が小さい場合であっても、良好なS/N比を得ることができる。
2.凝固時間の延長要因の鑑別
本発明のさらなる一態様は、
被検血漿と正常血漿とを混合した混合血漿を調製することと、
前記混合血漿の加温処理なしでの凝固時間測定を行うことと、
前記混合血漿の加温処理後の凝固時間測定を行うことと、
前記混合血漿の加温処理なしでの凝固時間測定データに基づいて凝固反応状態と関係する第1のパラメータを算出することと、
前記混合血漿の加温処理後の凝固時間測定データに基づいて凝固反応状態と関係する第2のパラメータを算出することと、
前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの比又は差に基づいて、凝固時間の延長の要因を鑑別することと、
を含む、血液検体の凝固特性の分析方法に関する。
本実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、血液凝固に関連する検体の特性を分析することに関する。特に、内因系凝固機能の検査に用いられるAPTT測定が行われ、得られたデータの解析が行われ、APTTの延長の要因の鑑別が行われる。
2.1.分析方法の概要
本実施形態に係る分析方法の概要を図1に示すフローチャートを参照して説明する。
初めに、検査に用いられる試料が調製される(ステップS101)。試料としては、検体の血漿(被検血漿)、正常血漿、及び被検血漿と正常血漿の混合比を変えた少なくとも一つの混合血漿が用いられる。次に、調製された試料を対象として、混合血漿の加温処理なしのAPTT測定、及び、混合血漿の加温処理後のAPTT測定が実行される(ステップS102)。
次に、APTT測定で得られたデータに対する所定の解析が行われる(ステップS103)。ここでは、混合血漿の加温処理なしのAPTT測定の結果から第1のパラメータが算出されるとともに、混合血漿の加温処理後のAPTT測定の結果から第2のパラメータが算出される。
最後に、解析結果に基づいて、検体について血液凝固機能に関する評価が行われる(ステップS104)。ここでは、算出された第1のパラメータと算出された第2のパラメータとの比又は差に基づいて、APTTの延長の要因が鑑別され、例えばインヒビターの有無などが鑑別される。例えば、第1のパラメータと第2のパラメータとの比が1を含む所定の範囲内に収まらない場合には、APTTの延長の要因は、インヒビターが存在することなど、インヒビターの影響によると判定され、第1のパラメータと第2のパラメータとの比が1を含む所定の範囲内に収まる場合には、APTTの延長の要因は、インヒビターの影響ではなく、LA等が存在することなど、LAの影響によると判定される。例えば、第1のパラメータと第2のパラメータとの差が0を含む所定の範囲内に収まらない場合には、APTTの延長の要因がインヒビターの影響によると判定され、第1のパラメータと第2のパラメータとの差が0を含む所定の範囲内に収まる場合には、APTTの延長の要因はインヒビターの影響ではなく、LA等の影響によると判定される。なお、インヒビター又はLAの影響は、インヒビター又はLAが存在するか否かのみならず、これらの存在量の多少によっても変化し得る。
2.2.試料調製及びAPTT測定
ステップS101として行われる試料の調製と、ステップS102として行われるAPTT測定について説明する。検査対象となる検体は、上記1.2.で述べたとおりである。試料の調製では、被検血漿と、別途に準備した正常血漿とが所定容量比率で混合される。被検血漿と正常血漿との混合比は、合計を10容量とした容量比で、被検血漿:正常血漿=1:9~9:1の範囲であればよく、好ましくは4:6~6:4の範囲、より好ましくは5:5である。例えば1:1、1:4、4:1である。
調製された混合血漿について、一部は速やかにAPTT測定が行われ、一部は所定時間加温処理後にAPTT測定が行われる。加温する際の温度は、例えば30℃以上40℃以下、好ましくは35℃以上39℃以下であり、さらに好ましくは37℃である。加温時間は、例えば、2~30分間の範囲であればよく、好ましくは5~30分間である。一例では2分から10分程度である。加温時間は、30分、1時間などさらに長くてもよいが、好ましくは1時間以内、最大でも2時間以内である。以下の本明細書において、未加温又は加温済み混合血漿のAPTT測定の基本的手順は、上記1.2.で述べたとおりである。本明細書においては、上記の加温処理で得られた混合血漿を「加温血漿」とも称する。一方、上記の加温処理を受けていない混合血漿を「非加温血漿」とも称する。ただし、該「非加温血漿」は、通常の凝固反応計測における検体の加温処理、例えば、30℃以上40℃以下で1分以下の加温を受けていてもよい。
2.3.データ解析
上記1.3.で述べた手順に従って、分析対象である加温処理なし及び加温処理後の混合血漿のについてのデータが取得される。上記1.3.1.及び1.3.2.で述べた手順に従って、加温処理なし及び加温処理後のそれぞれの混合血漿についての凝固反応曲線に対して、平滑化処理、ゼロ点調整を行うことができ、又は補正処理済み凝固反応曲線を得ることができ、さらに得られた補正処理済み凝固反応曲線及び補正処理なし凝固反応曲線(0次曲線)から、1次曲線、又は2次曲線を取得することができる。得られた曲線から、種々の評価パラメータが算出される。取得される評価パラメータの詳細は、上記1.3.3.で述べたとおりである。
2.4.評価
ステップS104で行われる評価の一例について説明する。本実施形態では、例えばLAといった抗リン脂質抗体が延長要因の場合、加温処理有無によるAPTTの変化はあまり認められないのに対して、インヒビターが要因の場合、加温処理後にAPTTが延長することが高感度に検出される。
例えば、上述の各評価パラメータについて、非加温血漿で得られた値(第1のパラメータ、Pa)と加温血漿で得られた値(第2のパラメータ、Pb)との比(Pb/Pa)あるいは差(Pb-Pa)に基づいて評価が行われる。
例えば、凝固時間は、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)がおよそ1になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)が1よりも明らかに大きくなる。
例えば、補正1次微分の最大値Vmaxは、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)がおよそ1になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)が1よりも明らかに小さくなる。
例えば、ピーク幅vBは、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)がおよそ1になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)が1よりも明らかに大きくなる。
例えば、扁平率vAWは、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)がおよそ1になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)が1よりも明らかに小さくなる。
例えば、重心時間vTは、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)がおよそ1になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)が1よりも明らかに大きくなる。
例えば、重心高さvHは、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)がおよそ1になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)が1よりも明らかに小さくなる。
例えば、時間率vTWは、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)がおよそ1になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、比(Pb/Pa)が1よりも小さくなる。
比(Pb/Pa)に限らず、差(Pb-Pa)についても同様のことが成り立つ。例えば、重心時間vTは、LA陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、差(Pb-Pa)がおよそ0になるのに対して、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、差(Pb-Pa)が0よりも明らかに大きくなる。
これらの傾向を利用して比(Pb/Pa)又は差(Pb-Pa)に基づいて、例えば、被験者の検体が、LA陽性であるか、VIII因子インヒビター陽性であるかが鑑別され得る。この鑑別には、上述の評価パラメータの何れかが用いられてもよいし、これらの何れかの組み合わせが用いられてもよいし、これらの何れかとその他の評価パラメータとの組み合わせが用いられてもよい。例えば、上述の評価パラメータ同士の四則演算その他の各種演算の結果も、被験者の検体が、LA陽性であるか、VIII因子インヒビター陽性であるかを反映する場合がある。
また、凝固因子欠乏が要因の場合にも、加温処理有無に関わらずAPTTの延長が補正されるため、比(Pb/Pa)がおよそ1になる。したがって、本方法は、APTTの延長要因がインヒビターか、LAか、それとも因子欠乏かを判定できる方法であるともいえる。
解析で設定される演算対象域値Sは、種々の値に設定され得る。また、加温処理時間も、種々に設定され得る。加温時間は、2時間以内で2分以上30分以下が好ましく、さらに好ましくは、10分程度である。混合血漿の混合比は1:1に限らず、他の比でもよい。
本実施形態によれば、遅延型クロスミキシング試験の検査時間を短縮化することができる。例えば、インヒビターの有無を鑑別するにあたり、検体の加温時間を短くできる。また、インヒビターの有無の鑑別に際し、評価パラメータの比又は差という指標を用いて定量的な判定が可能となる。
3.自動分析装置
上述のデータ解析及び評価は、コンピュータを用いて自動的に行われ得る。また、試料の調製及び凝固時間の測定も含めて、上述の一連の分析は、自動分析装置によって、自動的に行われ得る。このような分析を行う自動分析装置について、説明する。
3.1.装置構成
図13は、本実施形態に係る自動分析装置1の構成例の概略を示すブロック図である。自動分析装置1は、制御ユニット10と、測定ユニット30と、タッチスクリーン90とを備える。
制御ユニット10は、自動分析装置1の全体の動作を制御する。制御ユニット10は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)によって構成される。制御ユニット10は、バスライン22を介して互いに接続されたCenTral Processing Unit(CPU)12と、Random Access Memory(RAM)14と、Read Only Memory(ROM)16と、ストレージ18と、通信インターフェース(I/F)20とを備える。CPU12は、各種信号処理等を行う。RAM14は、CPU12の主記憶装置として機能する。RAM14には、例えば、Dynamic RAM(DRAM)、Static RAM(SRAM)等が用いられ得る。ROM16は、各種起動プログラム等を記録している。ストレージ18には、例えば、Hard Disk Drive(HDD)、Solid StaTe Drive(SSD)等が用いられ得る。ストレージ18には、CPU12で用いられるプログラム、パラメータ等各種情報が記録されている。また、ストレージ18には、測定ユニット30で取得されたデータが記録される。RAM14及びストレージ18は、これに限らず各種記憶装置に置換され得る。制御ユニット10は、通信I/F20を介して外部の機器、例えば測定ユニット30及びタッチスクリーン90との通信を行う。
タッチスクリーン90は、表示装置92とタッチパネル94とを備える。表示装置92は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイ等を含み得る。表示装置92は、制御ユニット10の制御下で、各種画面を表示する。この画面には、自動分析装置1の操作画面、測定結果を示す画面、解析結果を示す画面など、各種画面が含まれ得る。タッチパネル94は、表示装置92の上に設けられている。タッチパネル94は、ユーザからの入力を取得し、得られた入力情報を制御ユニット10へと伝達する。
制御ユニット10は、通信I/F20を介して、プリンター、ハンディコードリーダ、ホストコンピュータなど、他の機器と接続してもよい。
測定ユニット30は、制御回路42と、データ処理回路44と、恒温槽52と、反応容器54と、光源62と、散乱光検出器64と、透過光検出器66と、検体容器72と、試薬容器74と、検体プローブ76と、試薬プローブ78とを備える。
制御回路42は、制御ユニット10からの指令に基づいて、測定ユニット30の各部の動作を制御する。制御回路42は、図示を省略しているが、データ処理回路44、恒温槽52、光源62、散乱光検出器64、透過光検出器66、検体プローブ76、試薬プローブ78等と接続し、各部の動作を制御する。
データ処理回路44は、散乱光検出器64及び透過光検出器66に接続されており、散乱光検出器64及び透過光検出器66から検出結果を取得する。データ処理回路44は、取得した検出結果に対して各種処理を行い、処理結果を出力する。データ処理回路44が行う処理には、例えば、散乱光検出器64及び透過光検出器66から出力されるデータの形式を、制御ユニット10で処理できる形式に変更するA/D変換処理等が含まれ得る。
制御回路42及びデータ処理回路44は、例えば、CPU、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、又はField Programmable Gate Array(FPGA)等を含み得る。制御回路42及びデータ処理回路44は、それぞれ1つの集積回路等で構成されてもよいし、複数の集積回路等が組み合わされて構成されてもよい。また、制御回路42及びデータ処理回路44が1つの集積回路等で構成されてもよい。制御回路42及びデータ処理回路44の動作は、例えば記憶装置や当該回路内の記録領域に記録されたプログラムに従って行われ得る。
検体容器72には、例えば患者の血液などといった検体が収容される。試薬容器74には、測定に用いる各種試薬が収容される。検体容器72及び試薬容器74は、それぞれいくつ設けられていてもよい。試験に用いられる試薬は通常複数種類あるので、試薬容器74は一般に複数ある。検体プローブ76は、制御回路42の制御下で、検体容器72に収容された検体を反応容器54に分注する。試薬プローブ78は、制御回路42の制御下で、試薬容器74に収容された試薬を反応容器54に分注する。検体プローブ76及び試薬プローブ78の数もいくつであってもよい。
恒温槽52は、制御回路42の制御下で、反応容器54の温度を所定の温度に維持する。反応容器54内では、検体プローブ76によって分注された検体と、試薬プローブ78によって分注された試薬とが混合された混合液が反応する。なお、反応容器54は、いくつあってもよい。
光源62は、制御回路42の制御下で、所定の波長の光を照射する。光源62は、測定の条件に応じて、異なる波長を有する光を照射するように構成されていてもよい。したがって、光源62は、複数の光源素子を有していてもよい。光源62から照射された光は、例えば光ファイバによって導かれ、反応容器54に照射される。反応容器54に照射された光は、反応容器54内の混合液の成分や成分の分布状態によって、一部は散乱し、一部は透過する。散乱光検出器64は、反応容器54で散乱した光を検出し、例えばその光量を検出する。透過光検出器66は、反応容器54を透過した光を検出し、例えばその光量を検出する。データ処理回路44は、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報を処理したり、透過光検出器66で検出された透過光量の情報を処理したりする。散乱光検出器64及び透過光検出器66は、測定条件に応じて何れか一方が動作してもよい。したがって、データ処理回路44は、測定条件に応じて、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報と透過光検出器66で検出された透過光量の情報とのうち何れかを処理してもよい。データ処理回路44は、処理済のデータを制御ユニット10に送信する。なお、図13に示した測定ユニット30は、散乱光検出器64と透過光検出器66との2つを備えているが、どちらか一方のみを備えていてもよい。
制御ユニット10は、測定ユニット30から取得したデータに基づいて、各種解析を行う。この解析には、上述した評価パラメータの算出、評価パラメータに基づく被検体の評価等が含まれる。これらの解析の一部又は全部を、データ処理回路44が行ってもよい。
なお、ここでは、測定ユニット30の動作を制御するPCと、データ解析及び評価を行うPCとが同一の制御ユニット10である場合を示したが、これらは、別体であってもよい。言い換えると、測定結果が入力されてデータ解析及び評価を行うPCは、単体として存在し得る。
3.2.分析装置の動作
3.2.1.動作の概略
本実施形態に係る自動分析装置1の動作について説明する。図14は、制御ユニット10の動作の概略を示す図である。
ステップS301において、制御ユニット10は、ユーザによって設定モードが選択されたか否かを判定する。制御ユニット10は、ユーザによる選択として、例えば、タッチスクリーン90の表示装置92に示されたメニュー画面において、設定モードが選択されたことを、タッチパネル94を用いて検出する。設定モードが選択されていないとき、処理はステップS303に進む。設定モードが選択されたとき、処理はステップS302に進む。
ステップS302において、制御ユニット10は、設定処理を行う。設定処理において、制御ユニット10は、ユーザの入力に基づいて各種設定を実行する。例えば、測定条件、被検体の情報、試薬の情報、測定パラメータ、解析パラメータ等が設定される。設定処理の後、処理はステップS303に進む。
ステップS303において、制御ユニット10は、測定開始の指示が入力されたか否かを判定する。測定開始の指示が入力されていないとき、処理はステップS306に進む。測定開始の指示が入力されたとき、処理はステップS304に進む。
ステップS304において、制御ユニット10は、測定ユニット30に測定開始の指示を出力する。この指示に基づいて、測定ユニット30は、後述する測定処理に係る動作を実行する。この動作によって、測定ユニット30を用いた測定が行われる。その後、処理はステップS305に進む。ステップS305において、制御ユニット10は、後述する分析処理を実行する。分析処理では、制御ユニット10は、測定によって得られたデータを設定に基づいて解析する。その後、処理はステップS306に進む。
ステップS306において、制御ユニット10は、他の処理が選択されたか否かを判定する。他の処理が選択されていないとき、処理はステップS308に進む。他の処理が選択されたとき、処理はステップS307に進む。ステップS307において、制御ユニット10は、選択された処理を行う。例えば、制御ユニット10は、ストレージ18に保存されているデータに基づいて、改めて分析を行ってもよい。また、制御ユニット10は、測定ユニット30のメンテナンスの指示を出力してもよい。その後、処理はステップS308に進む。
ステップS308において、制御ユニット10は、処理を終了するか否かを判定する。例えば処理終了の入力がされたとき、処理を終了すると判定する。処理を終了しないとき、処理はステップS301に戻る。その結果、上述の処理が繰り返される。処理を終了すると判定されたとき、本処理は終了する。
3.2.2.測定動作
図15は、測定ユニット30が行う測定に関する動作の概略を示すフローチャートである。
ステップS401において、制御回路42は、検体プローブ76に、検体容器72内の被検体を所定量だけ吸引後に反応容器54に吐出させる。被検体の反応容器54への吐出の前又は後に、反応容器54の温度は、恒温槽52によって、測定条件に応じた温度に調整される。
ステップS402において、制御回路42は、試薬プローブ78に、試薬容器74内の試薬を所定量だけ吸引後に反応容器54に吐出させて被検体との混合液を調製する。吐出される試薬は、試験の種類等に応じて、複数であり得るし、種類も様々あり得る。反応を開始させる試薬の吐出によって、混合液の凝固反応が始まる。
ステップS403において、制御回路42は、各部に反応量の検出(測光)を開始させる。すなわち、制御回路42は、光源62に、測定条件に応じて適切な波長の光を照射することを開始させる。制御回路42は、測定条件に応じて、散乱光検出器64と透過光検出器66とのうち一方又は両方に、光検出を開始させる。散乱光検出器64は、反応容器54での散乱光の検出を開始する。透過光検出器66は、反応容器54での透過光の検出を開始する。
ステップS404において、制御回路42は、散乱光検出器64及び透過光検出器66のうち、必要な方から検出データを取得する。ステップS405において、制御回路42は、測定を終了するか否かを判定する。例えば、所定の終了条件を満たしたとき、測定を終了すると判定される。終了条件は、例えば試薬添加からの経過時間が所定時間となったことであってもよい。測定を終了しないと判定されたとき、処理はステップS404に戻る。このようにして、例えば所定間隔で連続的にデータが取得される。
ステップS405において測定を終了すると判定されたとき、処理はステップS406に進む。ステップS406において、制御回路42は、測定を終了する。例えば、制御回路42は、光源62に、光の照射を停止させる。制御回路42は、散乱光検出器64及び透過光検出器66に、光検出を停止させる。
ステップS407において、制御回路42は、データ処理回路44に、取得したデータに対するデータ処理を行わせる。ステップS408において、制御回路42は、処理後のデータを制御ユニット10に送信する。以上で測定処理は終了する。
3.2.3.分析処理
ステップS305において行われる分析処理の一例について、図16に示すフローチャートを参照して説明する。ここに示す分析処理は、分析対象についての、上述した例えばAPTTといった凝固時間の測定データを解析して、種々の評価パラメータを算出し、得られた評価パラメータに基づいて、血液凝固の異常の有無など血液凝固に関する特性を解析する処理である。ここで、分析対象は、上記1.2.で述べたような被検血漿であってもよく、又は上記2.2.で述べたような混合血漿(加温血漿及び非加温血漿)であってもよい。
ステップS501において、制御ユニット10は、分析対象の凝固時間の測定データを取得する。データは、例えば測定ユニット30から取得され得る。制御ユニット10は、例えばネットワークや媒体を介して、他の装置から測定データを取得してもよいし、記憶装置に記憶されているデータを取得してもよい。
ステップS502において、制御ユニット10は、ベースライン調整を行う。このベースライン調整は、上述したステップS202の処理を制御ユニット10が行うものである。ステップS503において、制御ユニット10は、データ補正処理を行う。このデータ補正処理は、上述したステップS203の処理を制御ユニット10が行うものである。ステップS504において、制御ユニット10は、1次又は2次曲線等の微分曲線の算出処理を行う。この微分曲線算出処理は、上述したステップS204の処理を制御ユニット10が行うものである。
ステップS505において、制御ユニット10は、評価パラメータ算出処理を行う。この評価パラメータ算出処理は、上述したステップS205の処理を制御ユニット10が行うものである。ここで、混合血漿(加温血漿及び非加温血漿)を解析する場合、制御ユニット10は、算出した加温血漿及び非加温血漿のそれぞれの各種評価パラメータに基づいて、非加温血漿からの第1のパラメータと加温血漿からの第2のパラメータとの比又は差を算出する。ステップS506において、制御ユニット10は、評価処理を行う。この評価処理は、上述したステップS104の処理を制御ユニット10が行い、評価結果を導出するものである。
ステップS507において、制御ユニット10は、評価結果を、ストレージ18に記録させたり、表示装置92に出力させたり、ホストコンピュータに送信したりする。
以上の通り、本実施形態に係る分析は、自動分析装置1によって自動的に行われ得る。
上述の方法を用いた血液凝固についての分析方法に関する実施例を示す。
以下の実施例に用いられるパラメータは、特に言及しない限り、補正0次~2次曲線由来のパラメータを表す。一方、未補正0次~2次曲線由来のパラメータは、各パラメータの名称の頭にRを付けて表される。例えば、補正1次曲線の重心高さがvHであるとき、未補正1次曲線の重心高さはRvHで表され、補正1次曲線の重心時間がvTであるとき、未補正1次曲線の重心時間はRvTで表される。パラメータの一覧を下記の表1に示す。以降の説明においては、組み合わせ波形パラメータのB扁平率、W扁平率、B時間率及びW時間率は、係数kを省略したパラメータの演算内容が分かる表記をする場合がある。
Figure 0007328251000010
4.第1の実施例
4.1.方法
4.1.1.血液検体の凝固反応の測定方法
血液凝固因子に起因して異常のある被験者に由来する血液検体と正常な血液検体(正常血漿)を特定の割合で混合した複数の混合試料について、本実施形態に係る解析を行った。すなわち、複数の混合試料の各々と、凝固時間測定試薬とを混和した測定対象試料を用意した。測定対象試料の凝固反応データとして、散乱光量の測光データを取得した。取得した測光データについて本実施形態に係る解析を行った。
本実施例では検体として、Factor VIII Deficient Plasma(George King Bio-Medical,Inc.製)又はFactor IX Deficient Plasma(George King Bio-Medical, Inc.製)と、VIII因子濃度及びIX因子濃度が100%と看做せる正常プール血漿(以下、正常血漿)との混合液を用いた。VIII因子濃度が0.1%以下のFactor VIII Deficient Plasma又はIX因子濃度が0.1%以下のFactor IX Deficient Plasmaと正常血漿との混合比率を変えてVIII因子濃度及びIX因子濃度がそれぞれ、50%、25%、10%、5%、2.5%、1%、0.75%、0.5%、0.25%、0.1%以下となるような混合血漿を調製した。
本実施例では測定用試薬として、APTT測定用試薬であるコアグピア APTT-N(積水メディカル株式会社製)及びコアグピア APTT-N 塩化カルシウム液50μL(積水メディカル株式会社製)を用いた。
本実施例では、凝固反応測定を、血液凝固自動分析装置CP3000(積水メディカル株式会社製)を用いて行った。本実施例では、キュベット(反応容器)に吐出され37℃で45秒間加温した試料50μLに、約37℃に加温したAPTT試薬50μLを添加(吐出)し、さらに171秒経過後に25 mM塩化カルシウム液50μLを添加(吐出)して凝固反応を開始させた。反応は、37℃に維持した状態で行った。凝固反応の検出(測光)は、波長660 nmのLEDライトを光源とする光を照射し、0.1秒間隔で90度側方散乱光の散乱光量を検出することによって行った。検出時間は360秒間とした。
4.1.2.測光データの解析方法
上述のようにして取得した凝固反応の経時的な測光データを、凝固反応曲線とした。この凝固反応曲線に関して、解析を行った。まず、凝固反応曲線に対して、ベースライン調整を行った。すなわち、凝固反応曲線に対してノイズ除去を含む平滑化処理を行い、測定開始時点の散乱光量が0となるように調整した。続いて、凝固反応曲線(未補正0次曲線)の最大高さが100となるように補正し、補正処理済み凝固反応曲線(補正0次曲線)を得た。補正0次曲線を1次微分して、補正1次曲線を得た。補正1次曲線の算出には、上述の式(4)による区間内平均傾きを用いた。
得られた補正1次曲線について、1次微分値の最大値Vmaxと、最大値となる時間VmaxTとを求めた。また、補正1次曲線に基づいて、上述のピーク幅vBを特定した。さらに、補正1次曲線と上記式(5)、(6)及び(7)とを用いて、重心時間vT及び重心高さvHを算出した。
4.2.解析結果及び考察
4.2.1. 0次曲線及び1次曲線
図17Aに、得られた凝固反応曲線(未補正0次曲線)の例を示す。実線は、正常血漿の未補正0次曲線を示し、破線は、第VIII因子濃度0.1%以下の未補正0次曲線を示し、一点鎖線は、第IX因子濃度0.1%以下の未補正0次曲線を示す。図17Bは、図17Aに示した各検体の未補正0次曲線について、それぞれ散乱光量の最大値が100となるように補正した、補正0次曲線を示す。
第VIII因子欠乏血漿及び第IX因子欠乏血漿では、それぞれの凝固因子が欠乏しているため、凝固時間の延長が認められる。すなわち、これらの凝固因子欠乏血漿では、散乱光量が増加し始める時間、また、散乱光量の増加が終了する時間が、正常血漿の場合よりも遅い。また、散乱光量の上昇時の傾きが、正常血漿の場合よりも小さい。
図18Aは、図17Aに示した正常血漿と凝固因子欠乏血漿の0次曲線を微分して得られた未補正1次曲線を示す。図18Bは、図17Bに示した正常血漿と凝固因子欠乏血漿の補正0次曲線を微分して得られた補正1次曲線を示す。
第VIII因子欠乏血漿及び第IX因子欠乏血漿では、正常血漿の場合と比較して、1次微分値の最大値は小さく、また、1次微分値が最大となる時間が遅い。
4.2.2.凝固因子濃度と評価パラメータとの関係
図19Aは、第VIII因子濃度の対数に対する凝固時間の関係を示す。なお、濃度0.1%以下に関して対数変換をするときには、濃度0.1%として計算した。他の図においても同様である。この図において、三角印(△)は1次微分値が最大値となる時間(VmaxT)を示し、丸印(○)は重心時間vTを示す。重心時間vTを求めるにあたって、演算対象域値Sは10%に設定した。図19Bは、第IX因子濃度の対数に対する凝固時間の関係を示す。この図において、三角印(△)は1次微分値が最大値となる時間(VmaxT)を示し、丸印(○)は重心時間vTを示す。重心時間vTを求めるにあたって、演算対象域値Sは10%に設定した。
図19Cは、第VIII因子濃度の対数に対する1次微分値の関係を示す。図19Dは、第IX因子濃度の対数に対する1次微分値の関係を示す。これらの図において、三角印(△)は1次微分値の最大値Vmaxを示し、丸印(〇)は、重心高さvHを示す。重心高さvHを求めるにあたって、演算対象域値Sは60%に設定した。
図19A及び図19Bから明らかなように、重心時間vTは、第VIII因子濃度及び第IX因子濃度と高い相関関係を示した。また、図19C及び図19Dから明らかなように、重心高さvHも、第VIII因子濃度及び第IX因子濃度と高い相関関係を示した。
以上より、患者検体の重心時間vT又は重心高さvHを求め、図19A、図19B、図19C及び図19Dに示すようにして求めた関係を検量線として、患者検体の第VIII因子濃度又は第IX因子濃度を算出することができることが示された。
上述の通り、重心点は平均に関する演算から算出されるため、測定データに含まれるランダムなノイズ影響は演算によって低減化される。したがって、重心点を用いた本方法はノイズの影響を受けにくく、本方法によれば高い精度で凝固因子濃度を取得できることが期待される。また、図19A及び図19Bに示した例は演算対象域値Sを10%に設定した場合であり、図19C及び図19Dに示した例は演算対象域値Sを60%に設定した場合である。しかしながらこれに限らず、演算対象域値Sは各種の値に設定され得るので、種々のパラメータが得られ、種々の情報が得られる。
図20Aは、第VIII因子濃度の対数に対するピーク幅vBの関係を示す。ピーク幅vBを求めるにあたって、演算対象域値Sは10%に設定した。図20Bは、第IX因子濃度の対数に対するピーク幅vBの関係を示す。ピーク幅vBを求めるにあたって、演算対象域値Sは10%に設定した。
図20A及び図20Bに示したように、ピーク幅vBと第VIII因子濃度及び第IX因子濃度とは高い相関関係を示した。したがって、これらから求めた検量線を基にして、患者検体のピーク幅vBを測定することによって患者検体に含まれる第VIII因子濃度又は第IX因子濃度を算出することができる。算出されたこれらの濃度に基づいて、凝固因子の欠乏状況を判定することができることが示された。
4.2.3.演算対象域値と重心点との関係
図21Aは、正常血漿の補正1次曲線を示す。図21Bは、第VIII因子欠乏血漿(Factor FIII Deficient Plasma)の補正1次曲線を示す。図21Cは、第IX因子欠乏血漿(Factor IX Deficient Plasma)の補正1次曲線を示す。各図において、黒丸は、下から順に、演算対象域値Sがそれぞれ10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%に設定されたときに得られる重心点を示す。
図21Aの補正1次曲線は、ピークの数が1つである単峰性の形状を示している。この場合、演算対象域値Sの増加に伴って、重心時間vTは単調にわずかに短縮している。これに対して、図21B及び図21Cの補正1次曲線は、ピークの数が2つある二峰性の形状を示している。このため、一つ目の小さなピークの影響を受けて、演算対象域値Sの増加に伴って、重心時間vTは途中までは比較的大きな割合の短縮を示している。また、演算対象域値Sが1つ目の小さなピークの極大値を超えたとき、重心時間vTは比較的大きな割合の延長を示す。このように、演算対象域値Sが異なる複数の重心点を求めることで得られる、それらの値、変化内容、比、差なども評価パラメータになり得る。
図21B及び図21Cに示す例のように、補正1次曲線は、2つの極大値を示すことがある。図21Bに示す例における約80秒のところ、及び図21Cに示す例における約60秒のところに認められるような右側の比較的幅の広い極大値をメインピークと称し、図21Bに示す例における約50秒のところ、及び図21Cに示す例における約50秒のところに認められるような左側の比較的幅の狭い極大値をサイドピークと称することにする。演算対象域値Sが10%より小さいとき、補正1次曲線のメインピークの形状の影響が解析結果に大きく反映され、サイドピークの形状の影響はあまり反映されないことが見出された。また、演算対象域値Sが60%~70%のときに、補正1次曲線のサイドピークの形状の影響が解析結果に現れることが見出された。
演算対象域値Sをどのように設定するかは重要な意味を持つ。第VIII因子欠乏血漿の測定において、演算対象域値Sを50%~70%に設定した際に、補正1次曲線に現れるサイドピークが第VIII因子濃度と深い関連を有することが見出された。したがって、第VIII因子欠乏血漿の解析のためには、演算対象域値Sを50%~70%に設定することが一つの好ましい設定である。
様々な凝固因子の欠乏血漿の1次曲線に現れるピークを分析することによって凝固に関わる様々な因子の影響を見積もることが可能になる。
図22Aは、演算対象域値Sの設定値(10%~90%)と重心時間vTとの関係を示す。図22Bは、演算対象域値Sが10%の場合に得られた重心時間vTと、演算対象域値Sの設定値が20%~90%の各々の場合に得られた重心時間vTとの差を示す。図22Cは、演算対象域値Sの設定値(10%~90%)と重心高さvHとの関係を示す。
図22A及び図22Bに示したように、正常血漿の重心時間vTと凝固因子欠乏血漿の重心時間vTとは大きく異なることが明らかになった。すなわち、例えば正常血漿の重心時間vTと患者検体の重心時間vTとを比較することで、凝固因子の欠乏状況を検出できることが明らかになった。
また、図22Bに示したように、特に第VIII因子欠乏血漿では、他に比べて重心時間vTの演算対象域値S依存性が高いことが明らかになった。すなわち、患者検体の重心時間vTの演算対象域値S依存性を調べることで、第VIII因子の欠乏状況を検出できることが明らかになった。
また、図22Cに示したように、正常血漿の重心高さvHと凝固因子欠乏血漿の重心高さvHとは大きく異なることが明らかになった。すなわち、例えば正常血漿の重心高さvHと患者検体の重心高さvHとを比較することで、凝固因子の欠乏状況を検出できることが明らかになった。
重心高さvHの有用性を示す別の一例を、図23を参照して説明する。図23の左列は、第VIII因子欠乏血漿のみを含む被検血漿について得られた補正1次曲線を示す。図23の右列は、第VIII因子濃度0.25%の被検血漿について得られた補正1次曲線を示す。それぞれ最大1次微分値Vmaxが三角印(△)で示されている。上段は演算対象域値Sを70%に設定した場合、中段は演算対象域値Sを80%に設定した場合、下段は演算対象域値Sを90%に設定した場合にそれぞれ得られる重心点を丸印(〇)で示したものである。左列に示した第VIII因子欠乏血漿のみの場合に得られた補正1次曲線では、最大1次微分値Vmaxは左側の細いサイドピークに位置している。演算対象域値Sが70%又は80%に設定されている場合には、重心点は、右側の幅の広いメインピークの方に位置するのに対して、演算対象域値Sが90%に設定されている場合には、重心点は、最大1次微分値Vmaxを示すサイドピークの方に位置する。これに対して、右列に示した第VIII因子濃度0.25%の被検血漿の場合に得られた補正1次曲線では、最大1次微分値Vmaxは右側のメインピークに位置している。そして、演算対象域値Sが70%、80%及び90%の何れに設定されている場合にも、重心点は、右側の幅の広いメインピークの方に位置し、最大1次微分値Vmaxを示す時間に近い。このように、本実施形態の方法によれば、0.25%の第VIII因子が存在する場合のような血漿であっても、その判別が可能である。
4.2.4.区間内平均傾きについて
図24Aは、上記式(2)を用いて算出した、第IX因子欠乏血漿の補正1次曲線の例を示す。図24Bは、上記式(4)を用いて算出した、第IX因子欠乏血漿の補正1次曲線の例を示す。図24Aと図24Bとを比較して明らかなように、図24Bの上記式(4)に基づく方が、1次微分値がより詳細に把握され得る。例えば図24Bでは時間45秒近辺でのサイドピークの情報が詳細に把握され得る。このように区間内平均傾きによる補正1次曲線を用いることで、上述の解析によってより詳細な情報を得ることができることが明らかになった。
区間内平均傾きによる補正1次曲線は、一連の測定データから算出することができる。区間内平均傾き値の算出は、光学的な検出器を用いて測光量変化が小さくなる分析装置、例えば血液凝固分析装置における解析に適している。
5.第2の実施例
5.1.方法
5.1.1.血液検体の凝固反応の測定方法
被検血漿として、第VIII因子欠乏血漿と正常血漿との混和物を用いた。第VIII因子欠乏血漿には、Factor VIII Deficient Plasma(George King Bio-Medical, Inc.製)を用いた。正常血漿には、VIII因子濃度及びIX因子濃度が100%と看做せる正常プール血漿を用いた。被検血漿として、第VIII因子欠乏血漿(George King Bio-Medical, Inc.製)と正常血漿とを混合し、第VIII因子濃度が50%、25%、10%、5%、2.5%、1%、0.75%、0.5%及び0.25%となるように調製した試料、及び第VIII因子欠乏血漿(第VIII因子濃度が0.1%以下)を用いた。
同様に、他の凝固因子の欠乏血漿(濃度0.1%以下)と正常血漿とを混合し、各因子の濃度が50%、25%、10%、5%、2.5%、1%、0.75%、0.5%及び0.25%となるように調製した試料も、被検血漿として調製した。他の凝固因子欠乏血漿としては、第V因子欠乏血漿、第IX因子欠乏血漿、第X因子欠乏血漿、第XI因子欠乏血漿、第XII因子欠乏血漿、プレカリクレイン欠乏血漿を用いた。なお、欠乏血漿のみの対数変換をするときには、濃度0.1%として計算した。
第V因子欠乏血漿には、Factor V Deficient Plasma(George King Bio-Medical, Inc.製)を用いた。第IX因子欠乏血漿には、Factor IX Deficient Plasma(George King Bio-Medical, Inc.製)を用いた。第X因子欠乏血漿には、Factor X Deficient Plasma(George King Bio-Medical, Inc.製)を用いた。第XI因子欠乏血漿には、Factor XI DeficientPlasma(George King Bio-Medical, Inc.製)を用いた。第XII因子欠乏血漿には、FactorXII Deficient Plasma(George King Bio-Medical, Inc.製)を用いた。プレカリクレイン欠乏血漿には、Prekallikrein Deficient Plasma(George King Bio-Medical, Inc.製)を用いた。なお、第V因子、第XI因子及び第XII因子の測定には次のような臨床的意義があり、波形解析技術を用いて測定できることが期待されている。先天性凝固第V因子欠乏症は、凝固第V因子遺伝子変異により発症する凝固第V因子の量的欠乏や機能異常による出血性疾患でありその診断には凝固第V因子の測定が必要である。また、第XI因子欠乏症を疑う場合は凝固第XI因子の測定が必要となる。更に、最近になって不育症との関連が報告されている第XII因子の先天生欠損は凝固第XII因子測定で検査される。
APTT測定試薬として、コアグピア APTT-N(積水メディカル株式会社製)及びコアグピア APTT-N 塩化カルシウム液(積水メディカル株式会社製)を用いた。
上記の各被検血漿のAPTT測定を、血液凝固自動分析装置CP3000(積水メディカル株式会社製)を用いて行った。CP3000でのAPTTの測定手順は、第1の実施例と同じ手順とした。
4.1.2.測光データの解析方法
測光データを基にして補正1次曲線を得る手順は、第1の実施例と同じ手順とした。
得られた1次微分値Vを示す曲線をV=F(t)と表現し、その最大値をVmaxとしたときに、演算対象域値S(%)を設定し、F(t)≧Vmax×S×0.01を満たすデータを用いて、上記式(5)、(6)及び(7)に基づいて、重心時間vT及び重心高さvHを算出した。また、ピーク幅vBも算出した。これらのパラメータを用いて、上記式(8)及び(9)に基づいて、扁平率vAB及び時間率vTBを算出した。
5.2.解析結果及び考察
5.2.1.補正処理の有効性について
ステップS203の補正処理の効果について検討を行った。第VIII因子濃度が異なる被検血漿に関してAPTT測定を行い、補正0次曲線から得られた補正1次曲線に基づいて、演算対象域値が80%の場合の扁平率vAB80%を算出した。なお、このときの扁平率vABは、値が1以上になるようにするため、定数100を掛けて演算している。また、未補正0次曲線から得られた未補正1次曲線に基づいて、演算対象域値が80%の場合の扁平率RvAB80%を算出した。図25Aは、第VIII因子濃度と補正1次曲線に基づくvAB80%との関係を示す。図25Bは、第VIII因子濃度と未補正1次曲線に基づくRvAB80%との関係を示す。いずれのグラフも横軸は、第VIII因子濃度の対数を示す。図25Bに示す未補正1次曲線より、図25Aに示す補正1次曲線の方が、わずかであるが回帰曲線によく一致した。
また、図25A及び図25Bのそれぞれについて、縦軸についても対数変換した場合の例を、それぞれ図25C及び図25Dに示す。図25Cに示す補正1次曲線のほうが、図25Dに示す未補正1次曲線よりも、直線回帰式の傾きが大きく、切片が0に近いことが分かった。通常、濃度を横軸とした直線状の検量線では、再現性は、傾きが大きい方が良くなり、切片が0に近い方が測定濃度域の制約が小さくなる。これらの結果から、vAB80%を基にして検量線から第VIII因子の濃度を算出することを考えると、図25Cのように、傾きが大きく、切片が0に近い方が好ましい。
以上のことから、補正処理が有用であることが明らかになったため、以下に示す解析においては、補正処理済みの凝固反応曲線から得られる補正1次曲線を用いた。また、以下の解析結果でも、評価パラメータについて、両対数グラフによる表示を行う。
5.2.2.補正1次曲線について
被検血漿として、第VIII因子濃度がそれぞれ、50%、25%、10%、5%、2.5%、1%、0.75%、0.5%、0.25%及び0%となる第VIII因子欠乏血漿(以下、それぞれFVIII(50%)、FVIII(25%)、FVIII(10%)、FVIII(5%)、FVIII(2.5%)、FVIII(1%)、FVIII(0.75%)、FVIII(0.5%)、FVIII(0.25%)、FVIII(0%)と表記する)を調製し、APTT測定を行って得られた補正1次曲線を図26に示す。図26に示されるように、補正1次曲線の形状は、以下のようになった。第VIII因子濃度の低下に従って、最大ピーク高さは低下していき、ピーク形状は扁平化していった。また、第VIII因子濃度の低下に従って、二峰性ピークが出現した。
演算対象域値Sを60%に設定して、重心点(vT, vH)を求めた。図27は、第VIII因子濃度(%)の対数変換値と、重心高さvH60%の対数変換値との関係を示したグラフである。両者は良好な直線関係を示すことが明らかになった。このことから、重心高さvHといった重心点に関係する評価パラメータを用いることで、第VIII因子濃度が算出され得ること、すなわち、第VIII因子の欠乏レベルが判定され得ることが明らかになった。
5.2.3.時間率vTBについて
各種の凝固因子欠乏血漿について時間率vTBの解析を行った。演算対象域値をx%に設定したときに得られる評価パラメータとして、重心点の重心時間vTをvTx%と表記し、ピーク幅vBをvBx%と表記し、時間率vTBをvTBx%と表記する。時間率vTBは、vTBx%=(vTx%/vBx%)×100である。
各種因子欠乏血漿について、各種因子の濃度が0%、0.25%、0.5%、0.75%、1%、2.5%、5%、10%、25%、50%の各場合について、演算対象域値Sを5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%の各々に設定したときの、各種欠乏因子の濃度と時間率vTBとの関係を、図28A、図28B、図28C、図28D、図28E、図28F、図28G、図28H、図28I、図28J、図28Kにそれぞれ示す。各図において、横軸は、凝固因子の濃度(%)の対数を示す。各図において縦軸は、時間率vTBの対数を示す。各図には、第V因子欠乏血漿(FV)、第VIII因子欠乏血漿(FVIII)、第IX因子欠乏血漿(FIX)、第X因子欠乏血漿(FX)、第XI因子欠乏血漿(FXI)、第XII因子欠乏血漿(FXII)、プレカリクレイン欠乏血漿(PK)の各々に関するデータが示されている。なお、第XII因子欠乏血漿の第XII因子濃度が0%及び0.25%のAPTT測定において、凝固反応が測定時間内に終了しなかったためにこれらのデータはプロットされていない。
各第VIII因子濃度について、演算対象域値Sを各値に設定した場合の時間率vTBx%の値を図29に示す。また、各第VIII因子濃度について、各時間率vTBx%の値が、図28A乃至図28Kのうち該当する図に示した全ての凝固因子欠乏血漿に関する時間率vTBx%の中で、低い方から数えて何番目の値であるかを示す順位を、図30に示す。例えば、図28Aに示す結果において、時間率vTBが低い方から順に並べるとFVIII(0%)、FVIII(0.25%)、FVIII(0.5%)、FVIII(0.75%)、FVIII(1%)、FVIII(2.5%)、FIX(0%)、FVIII(5%)、FXI(0%)、FXI(0.25%)、FVIII(10%)、…であるので、FVIII(0%)、FVIII(0.25%)、FVIII(0.5%)、FVIII(0.75%)、FVIII(1%)、FVIII(2.5%)、FVIII(5%)、FVIII(10%)のそれぞれの順位は、1、2、3、4、5、6、8、11となる。また、第VIII因子欠乏血漿に関して、図28A乃至図28Kの各図及び図29に基づいて得られた、Log(vTB)と、Log(第VIII因子濃度)との相関係数、直線回帰式の傾き及び切片を図31に示す。また、図31に示した相関係数を表すグラフを図32に示す。
図28A及び図30に基づくと、次のことが言える。例えば演算対象域値Sを5%に設定したとき、Log(vTB5%)≦0となるのは、第VIII因子が欠乏している場合のみであり、第VIII因子濃度が2.5%以下の場合のみである。すなわち、第VIII因子濃度が2.5%以下では、第VIII因子欠乏血漿のデータは、他の凝固因子欠乏血漿のデータと区別され得る。すなわち、凝固時間の延長の要因が第VIII因子の欠乏であることが鑑別され得る。ここで検討した因子以外について不明な点もあるが、少なくともここで検討した各種因子の中で、第VIII因子の欠乏に関する鑑別が可能であることが分かる。仮に他の因子について本方法で鑑別できなくても、別途の方法で鑑別され得るので、本方法は有効である。
演算対象域値Sが5%から30%までに設定されたときには、同様に、第VIII因子濃度が2.5%以下では、第VIII因子欠乏血漿のデータは、他の凝固因子欠乏血漿のデータと区別され得る。すなわち、凝固時間の延長の要因が第VIII因子の欠乏であることが鑑別され得る。このことは、図28A乃至図28Dにおいて、第VIII因子欠乏血漿の場合に得られた時間率vTBが、他の凝固因子欠乏血漿の場合に得られた時間率vTBよりも明らかに低いことに対応する。また、図31に示されるように、演算対象域値Sが5%から30%までに設定されたときには、高い相関係数が得られることから、最小二乗法で得られる回帰直線を検量線として用いることで、第VIII因子の濃度が算出され得ることが分かる。
また、演算対象域値Sが40%から70%までに設定されたときには、第VIII因子濃度が1%以下では、第VIII因子欠乏血漿のデータは、他の凝固因子欠乏血漿のデータと区別され得る。すなわち、凝固時間の延長の要因が第VIII因子の欠乏であることが鑑別され得る。このことは、図28E乃至図28Hにおいて、第VIII因子濃度が1%以下では、第VIII因子欠乏血漿の場合に得られた時間率vTBが、他の凝固因子欠乏血漿の場合に得られた時間率vTBよりも低いことに対応する。また、図31に示されるように、演算対象域値Sが40%から70%までに設定されたときには、高い相関係数が得られることから、最小二乗法で得られる回帰直線を検量線として用いることで、第VIII因子の濃度が算出され得ることが分かる。なお、図31及び図32に示したように、演算対象域値Sが70%のときに相関係数が最大となった。
また、演算対象域値Sが80%に設定されたときには、第VIII因子濃度が10%以下では、第VIII因子欠乏血漿のデータは、他の凝固因子欠乏血漿のデータと区別され得る。すなわち、凝固時間の延長の要因が第VIII因子の欠乏であることが鑑別され得る。しかしながら、図31に示されるように相関係数は相対的に低くなるため、第VIII因子の濃度の算出には好適ではない。
なお、演算対象域値Sが90%以上に設定されたときには、第VIII因子欠乏血漿のデータは、他の凝固因子欠乏血漿のデータと区別できない。すなわち、凝固時間の延長の要因を鑑別できない。
以上より、演算対象域値Sを80%以下に設定して時間率vTBを求めることで、APTTの延長が第VIII因子の濃度が低レベルであることに起因するか否かを鑑別できることが明らかになった。また、演算対象域値Sを70%以下に設定して求めた時間率vTBに基づいて、第VIII因子濃度が算出され得ることが明らかになった。特に、演算対象域値Sを80%に設定して解析を行うことで、APTTの延長の要因が第VIII因子の欠乏であるか否かを、第VIII因子の濃度が比較的高い10%以下である場合まで鑑別することができることが明らかになった。また、演算対象域値Sを70%に設定して解析を行うことで、第VIII因子の濃度を高精度に算出できることが分かった。
また、図28A乃至図28Kを参照すると、第IX因子について時間率vTBの濃度依存性が認められる。したがって、何らかの方法で第IX因子の欠乏があることが鑑別できる場合、第IX因子についても、時間率vTBに基づいて、濃度を算出できることが分かった。
5.2.4.扁平率vABについて
各種凝固因子欠乏血漿について扁平率vABの解析を行った。演算対象域値Sをx%に設定したときに得られる評価パラメータとして、重心点Wの重心高さvHをvHx%と表記し、ピーク幅vBをvBx%と表記し、扁平率vABをvABx%と表記する。扁平率vABは定数100を掛けた、vABx%=vHx%/vBx%である。
第VIII因子欠乏血漿について、第VIII因子の濃度が0%、0.25%、0.5%、0.75%、1%、2.5%、5%、10%、25%、50%の各場合について、演算対象域値Sを5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%の各々に設定したときの、各種欠乏因子の濃度と重心高さvHとの関係を図33に示す。図33には、併せて各第VIII因子濃度の最大1次微分値Vmaxも表示されている。また、演算対象域値Sを同じ各条件に設定したときの、各種欠乏因子の濃度とピーク幅vBとの関係を図34に示す。これら重心高さvH及びピーク幅vBに基づいて得られる扁平率vABを図35Aに示す。また、扁平率vABの対数を図35Bに示す。
演算対象域値Sを同じ各条件に設定したときの、各種欠乏因子の濃度と扁平率vABとの関係を、図36A、図36B、図36C、図36D、図36E、図36F、図36G、図36H、図36I、図36J、図36Kにそれぞれ示す。各図において、横軸は、凝固因子の濃度(%)の対数を示し、縦軸は、扁平率vABの対数を示す。各図には、第V因子欠乏血漿(FV)、第VIII因子欠乏血漿(FVIII)、第IX因子欠乏血漿(FIX)、第X因子欠乏血漿(FX)、第XI因子欠乏血漿(FXI)、第XII因子欠乏血漿(FXII)、プレカリクレイン欠乏血漿(PK)の各々に関するデータが示されている。なお、第XII因子欠乏血漿の第XII因子濃度が0%及び0.25%のAPTT測定において、凝固反応が測定時間内に終了しなかったためにこれらのデータはプロットされていない。
また、最大1次微分値Vmaxについても、同様に図37Aに示す。なお、Vmaxは、演算対象域値Sを100%に設定したときの重心高さvH100%に相当する。さらに、補正1次曲線を1次微分して得られる補正2次曲線に関して、演算対象域値Sを90%に設定した場合に得られたプラスピークの重心高さpH90%についても、同様に図37Bに示す。
各第VIII因子濃度について、演算対象域値Sを各値に設定した場合の扁平率vABx%の値及び最大1次微分値Vmax(vH100%)を図38に示す。また、第VIII因子欠乏血漿に関して、図36A乃至図36Kの各図及び図38に基づいて得られた、Log(第VIII因子濃度)とLog(vAB)及びLog(Vmax)との相関に関する各値を図39に示す。
図39に示すように、特に演算対象域値Sを80%以下に設定したときに、Log(第VIII因子濃度)とLog(vAB)との間に高い相関係数が得られた。すなわち、扁平率vABを用いることで、第VIII因子濃度を定量することができることが明らかになった。また、扁平率vABを用いた検量線は、図37Aに示した最大1次微分値Vmaxを用いた検量線よりも傾きが大きく、定量性が高いことが明らかになった。扁平率vABを用いた検量線は、図37Bに示した補正2次曲線のプラスピークの重心高さpH90%よりも傾きが大きく、定量性が高いことが明らかになった。
また、第VIII因子濃度と、図39に示した値を用いた検量線から求めた演算濃度との比(回収率)を図40に示す。この図において、網掛けの値は、演算濃度が第VIII因子濃度の±10%以内となっている値を示す。図40を見ると、最大1次微分値Vmaxは、第VIII因子濃度が0.25%以下において回収率が悪化する。それに対してvAB80%は、第VIII因子濃度が0.25%以下において回収率が良好であるが、第VIII因子濃度が0.5%以上では、0.5%、2.5%及び50%において回収率が低下する。一方、vAB70%は、第VIII因子濃度が0.75%を除いた0.5%以上において回収率が良好である。すなわち、vAB70%とvAB80%を用いれば、第VIII因子濃度が0%から50%の範囲で高い回収率で第VIII因子濃度の定量が可能となる。
以上のように、扁平率vABについては、演算対象域値Sを変えることによって、濃度領域毎に適当な検量線が選択できることが明らかになった。適当な検量線を選択することで、第VIII因子の濃度を正確に求めることができる。
なお、第VIII因子欠乏血漿に関する扁平率vABの分布範囲は、他の因子欠乏血漿に関する扁平率vABの分布範囲と区別がつかなかった。すなわち、扁平率vABに基づいて凝固時間の延長の要因が第VIII因子の欠乏であることを鑑別することは困難であることが明らかになった。
また、図36A乃至図36Kを参照すると、多くの凝固因子について、扁平率vABの濃度依存性が認められる。したがって、これらの凝固因子についても、扁平率vABに基づいて、濃度を算出できることが分かった。特に、第V因子及び第X因子については、演算対象域値Sに係わらず、扁平率vABは因子濃度と良好な相関性が認められた。第IX因子については、演算対象域値Sを95%以外に設定した場合において、扁平率vABは因子濃度と良好な相関性が認められた。また、第XI因子については、演算対象域値xを50%以上で80%以下に設定した場合に、扁平率vABは因子濃度と良好な相関性が認められた。
また、図37Bを参照すると、凝固因子濃度(対数変換後)に対する補正2次曲線の重心点高さpH(対数変換後)は、第VIII因子で非常に高い相関性を示し、他の因子においても、第V因子、第X因子、第IX因子、第XI因子の順で良好な相関性が認められた。したがって、補正2次曲線の重心点高さpHを用いても、これら因子の濃度が算出され得ることが明らかになった。
6.第3の実施例
6.1.方法
6.1.1.血液検体の凝固反応の測定方法
被検血漿として、第2の実施例と同様に、凝固因子欠乏血漿と正常血漿との混合血漿を調製した。凝固因子欠乏血漿としては、第2の実施例で用いた第V因子欠乏血漿(V)、第VIII因子欠乏血漿(VIII)、第IX因子欠乏血漿(IX)、第X因子欠乏血漿(X)、第XI因子欠乏血漿(XI)及び第XII因子欠乏血漿(XII)を用いた。比較対照用として正常血漿(PNP)を用いた。凝固因子欠乏血漿のみを含む被検血漿(濃度0%)で凝固因子濃度の対数変換をするときには、濃度0.1%として計算した。第1の実施例と同じ手順で各被検血漿のAPTT測定を行った。
6.1.2.測光データの解析方法
第1の実施例と同じ手順で、測光データから未補正0次曲線及び補正0次曲線を得た。得られた未補正0次曲線及び補正0次曲線から、第1の実施例と同様の手順で上述の式(4)による区間内平均傾きを求めることで、未補正1次曲線及び補正1次曲線をそれぞれ算出した。さらに得られた1次曲線に対して同じ計算を繰り返し、未補正2次曲線及び補正2次曲線をそれぞれ算出した。補正0次曲線、補正1次曲線、及び補正2次曲線からパラメータを算出した。
6.2.解析結果及び考察
6.2.1.凝固因子に依存した曲線形状の変化
図41Aに、凝固因子欠乏(実施例においては因子濃度を0.1%として取り扱った。)を被検血漿として得られた未補正0次曲線及び未補正1次曲線の例を示す。また図41Bに、同じ被検血漿から得られた補正0次曲線及び補正1次曲線の例を示す。図42Aは、同じ被検血漿から得られた未補正2次曲線の例を示す。図42Aの右図は、図42A左図のy軸方向の縮尺を変えた図である。図42Bは、同じ被検血漿から得られた補正2次曲線の例を示す。図42Bの右図は、図42B左図のy軸方向の縮尺を変えた図である。図41~42から分かるとおり、欠乏する凝固因子の種類によって凝固時間、及び1次曲線及び2次曲線における最大ピークの高さ及び時間が異なっていた。
6.2.2.凝固因子濃度と評価パラメータとの関係
補正0次~2次曲線から算出したパラメータを表2に示す。演算対象域値xは、ピークの最大値(Vmax、Amax、Amin)を100%としたときの、0%~99%に設定した。なおAPTTとはT50(0次曲線が最大高さの50%に達するまでの時間)を表す。図43A乃至図43Vには、上図に各種凝固因子濃度の対数とパラメータ値の対数との関係を示す。この関係から検量線を作成した。該検量線を基にパラメータ値から演算濃度を算出した。中左図には、X軸が実測濃度、Y軸が演算濃度となるように各種凝固因子の相関関係をプロットした。中右図には、低濃度での相関関係が確認できるように両軸を対数表示でプロットした。中図の下に記載した式は、各凝固因子濃度に対する演算濃度の直線回帰式と相関係数である。
Figure 0007328251000011
第VIII因子、第IX因子、第V因子、第X因子、第XI因子、及び第XII因子について、凝固因子濃度(X軸)に対する演算濃度(Y軸)の直線回帰式が傾き1±0.1、y切片±1、及び相関係数(R)0.9以上であったパラメータを表3~8中に「+」で示した。表9には、各凝固因子に対して「+」条件の直線回帰式が得られたS値の数をパラメータごとに示す。「+」条件の直線回帰式が得られたパラメータは、凝固因子の濃度測定又は欠乏の判定に用いられ得る。
Figure 0007328251000012
Figure 0007328251000013
Figure 0007328251000014
Figure 0007328251000015
Figure 0007328251000016
Figure 0007328251000017
Figure 0007328251000018
Figure 0007328251000019
7.第4の実施例
本実施例に示す本発明の実施形態は、被検血漿が凝固異常(APTT延長)を示す場合に、上述した0次曲線~2次曲線に関するパラメータを用いて、APTT延長要因を判定、又はAPTT延長要因が凝固因子インヒビター(抗凝固因子抗体)であった場合には該凝固因子インヒビターの種類の鑑別を実施する方法である。
本実施形態においては、凝固異常を有する被検血漿と、正常血漿との混合血漿を用いる。該混合血漿の調製では、被検血漿と、別途に準備した正常血漿とが所定の比率で混合される。該被検血漿と該正常血漿との混合比は、合計を10容量とした容量比で、被検血漿:正常血漿=1:9~9:1の範囲であればよく、好ましくは4:6~6:4の範囲、より好ましくは5:5である。
調製された混合血漿の一部は、加温される。該加温の温度は、例えば30℃以上40℃以下であればよく、好ましくは35℃以上39℃以下、より好ましくは37℃である。該加温の時間は、例えば、2~30分間の範囲であればよく、好ましくは5~30分間である。該加温時間はさらに長くてもよいが、好ましくは1時間以内、最大でも2時間以内である。
本実施形態では、当該加温血漿及び非加温血漿についてのAPTT測定が行われ、測光データが取得される。したがって、本実施形態においては、調製された混合血漿のうち、一部は上記の加温処理後にAPTT測定が行われ得、一部は該加温処理なしでAPTT測定が行われ得る。
得られた測光データから、該加温血漿及び非加温血漿についての、未補正及び補正0次曲線~2次曲線を得ることができる。データの補正処理及び微分は、第1の実施例と同様の手順で実施することができる。得られた該加温血漿及び非加温血漿のそれぞれについての未補正及び補正0次曲線~2次曲線から、表1に示すパラメータを算出することができる。本実施例において、該非加温血漿から取得されたパラメータを第1のパラメータと呼び、該加温血漿から取得されたパラメータを第2のパラメータと呼ぶ。該第1及び第2のパラメータの比、差又はそれらの組み合わせに基づいて、APTT延長要因を判定、又はAPTT延長要因が凝固因子インヒビターであった場合に、該凝固因子インヒビターの種類の鑑別をすることができる。
7.1.方法
7.1.1.被検血漿
本実施例で用いた被検血漿を以下に示す。正常血漿(NP)には、健常人より得られたクエン酸加血漿を用いた。LA血漿(LA)には、George King Biomedical, Inc.のPositive Lupus Anticoagulant Plasmaを用いた。第VIII因子欠乏血漿(HA)及び第IX因子欠乏血漿(HB)には、George King BiomedicalのFactor VIII Deficient、Factor IX Deficientを用いた。第VIII因子インヒビター血漿(InL、InM及びInH)には、George King Biomedical, Inc.のFactor VIII Deficient with Inhibitorを用いた。
群No. 検体種 検体数
1 正常血漿(NP) 23
2 LA血漿(LA) 6
3 血友病A(HA) 14
4 血友病B(HB) 12
5 第VIII因子インヒビター低力価血漿(InL)12
6 第VIII因子インヒビター中力価血漿(InM)35
7 第VIII因子インヒビター高力価血漿(InH) 8
なお、インヒビター力価の「低」、「中」、「高」とは、以下を意味する:
中:2~40(BU/mL)(BU/mL:ベセスダ単位)
低:中より低い力価
高:中より高い力価
7.1.2.混合血漿の調製
各被検血漿と正常血漿(NPの混合物)とを1:1の容量比で混合して混合血漿を調製した。
7.1.3.APTT測定
APTT試薬には、コアグピアAPTT-N(積水メディカル株式会社製)を、塩化カルシウム液には、コアグピアAPTT-N 塩化カルシウム液(積水メディカル株式会社製)を用いた。APTT測定には、血液凝固自動分析装置CP3000(積水メディカル株式会社製)を用いた。装置のキュベット(反応容器)に混合血漿50μLを吐出し、以下の手順で通常(非加温)モード又は加温モードで処理した。:
(通常モード)37℃で45秒間の加温
(加温モード)37℃で600~720秒間の加温
その後、キュベットに約37℃に加温したAPTT試薬50μLを添加し、171秒経過後に25mM塩化カルシウム液50μL添加して、凝固反応を開始させた。凝固反応はキュベットを約37℃に維持した状態で行った。凝固反応の検出は、波長660nmのLEDを光源とする光を照射し、0.1秒間隔で90度側方散乱した散乱光量を測光した。測光時間は360秒間とした。同じ混合血漿について、非加温(通常モード)及び加温(加温モード)条件でのAPTT測定をそれぞれ行い、測光データを得た。
7.1.4.測光データの解析
非加温血漿及び加温血漿のそれぞれについて得られた測光データに対し、第1の実施例と同様の手順で補正0次~2次曲線を得た。得られた曲線から、表1に示すパラメータを算出した。非加温血漿についてのパラメータをPa、加温血漿についての同じパラメータをPbとし、パラメータ比Pb/Paを求めた。
7.2.解析結果及び考察
図44Aに、LA血漿(LA)の加温及び非加温での補正1次曲線を示す。LAでは、加温による曲線形状の変化はほとんどなかった。
図44Bに、第VIII因子インヒビター血漿(IN)の加温及び非加温での補正1次微分曲線を示す。INでは、LAと同様に加温による曲線形状の変化はほとんどなかった。
図45Aに、LA血漿(LA)と正常血漿との1:1混合血漿(LA-NP)の加温及び非加温での補正1次微分曲線を示す。正常血漿と混合したことにより、図45Aと比較するとピークが早く現われ(凝固時間が短縮)、形状もシャープ化している。LA-NPでは、LAと同様に加温による曲線形状の変化はほとんどなかった
図45Bに、第VIII因子インヒビター血漿(IN)と正常血漿との1:1(IN-NP)の加温及び非加温での補正1次微分曲線を示す。非加温は、正常血漿と混合したことにより、図44Bと比較するとLA-NPと同様にピークが早く現われて形状もシャープ化している。一方、加温は、ピークが遅く現われ、ピーク高さが低くなると共にピーク幅は広くなった。この形状変化は、加温処理中にINに含まれていたインヒビター(抗第VIII因子抗体)が正常血漿に含まれていた第VIII因子と抗原抗体反応が進行したために、混合血漿の凝固反応が阻害されたことによると判断された。この非加温と加温との形状変化をパラメータの変化として指標化することによってINをLAと鑑別できる可能性が確認できた。
表10に、非加温血漿及び加温血漿(10分加温)から得た各種パラメータ値と、それらの比(Pb/Pa)を示す。第VIII因子インヒビター血漿の混合血漿(IN-NP)のPb/Paは1から大きく外れており、正常血漿(NP)、LA血漿(LA)、LA混合血漿(LA-NP)とは明らかに相違した。したがって、各種パラメータのPb/Paに基づいて第VIII因子インヒビター陽性血漿を判別可能であることが示された。
Figure 0007328251000020
図46A~Gは、健常者(NP)、LA、HA、HB、第VIII因子インヒビターが低力価(InL)、中力価(InL)及び高力価(InH)の血漿を正常血漿と容量比1:1で混合した混合血漿を用いて、各種のパラメータの非加温でのパラメータPa、加温でのパラメータPb、ならびにそれらの比Pa/Pb及び差Pb-Paを示す。第VIII因子インヒビター中力価血漿(InM)は、Pa/Pbが1より大きく又は小さくなる傾向があった。第VIII因子インヒビター低力価血漿(InL)は、Pa/PbとPb-Paの両方ともHAと同じような分布となる傾向であったが、パラメータによってはHAの分布よりも広がりが大きくなるものがあった。一方、第VIII因子インヒビター高力価血漿(InH)は、全体的にはPa/Pbが1より大きくもしくは小さくなる傾向、又はPb-Paが0から外れる傾向があったが、一部のパラメータ(APTT、vT)はPa/Pbが1に近い場合があった。しかし、InHのAPTTは、Pa/Pbが約1になる場合でもPb-Paは0ではなく、少なくとも5秒は延長した。したがって、PaとPbの比及び差を組み合わせて用いることでAPTTを用いてInHを判別可能であることが示された。
より詳細には、本実施例により、APTT(秒)について以下の結果が示された。なお、APTTの「延長」とは、APTTが正常血漿より長いことを示し、APTTの「短縮」とは、APTTが正常血漿と同じかそれに近い値であることを示す。
・LAを含む混合血漿は、Pa及びPbともに延長し、Pb/Paは約1である。
・HAとHBを含む混合血漿は、Pa及びPbともに短縮し、Pb/Paは約1である。
・InLを含む混合血漿は、Pa及びPbともに短縮し、Pb/Paは約1である。
・InMを含む混合血漿は、Paで僅かに延長し、PbではPaよりさらに延長し、Pb/Paは1より大になる。
・InHを含む混合血漿は、Paは延長し、PbはPaと同程度かさらに延長し、Pb/Paは約1か又は1より大になる。
上記の結果を表11にまとめた。加温及び非加温でのAPTTに基づいて、混合血漿に含まれる被検血漿を次のように判別できることが示された。
(1)PaとPbがともに延長し、かつPb/Paが約1であれば、被検血漿はLA又はInHである。
(2)PaとPbがともに短縮し、かつPb/Paが約1であれば、被検血漿はHAB(HA又はHB)又はInLである。
(3)PaとPbがともに延長し、かつPb/Paが1より大であれば、被検血漿はInM又はInHである。
Figure 0007328251000021
また図46Bより、VmaxでのPb/Paは、LA、HA、HB、InL及び一部のInHではAPTTと同様に約1となり、一方InMと一部を除いたInHでは1より小となった。凝固反応がインヒビターによる阻害を受ける場合、インヒビター力価に応じてAPTTが延長すると共に凝固速度は小さくなり、結果、それらのパラメータ比Pb/Paは1から外れる。そのため、InMと一部を除いたInHでは、APTTのPb/Paは1より大になり、VmaxのPb/Paは1より小になる。一部のInHは、高力価群の中でも力価が高い検体(超高力価検体)であり、図44Bで示すようにVmaxは、非加温(Pa)において1付近まで低下しており、加温(Pb)においてもほとんど変化が無いためにパラメータ比Pb/Paは1付近になる。InHの中で超高力価検体を判別するためには、一例として、非加温(Pa)でのVmaxが2以下となる検体と定義すればよい。
また図46C~Gに示すとおり、AmaxはVmaxと同様の傾向を示し、vB、vTはAPTTと同様の傾向を示し、vAB及びvTBはVmaxやAmaxと同様の傾向を示した。
以上の結果から、各種パラメータのPaとPbの比、差、又はそれらの組み合わせに基づいて、APTT延長要因が凝固因子インヒビターである検体を判別可能であることが示された。
8.第5の実施例
8.1.方法
8.1.1.血液検体
血液凝固因子に異常のある被験者に由来する血液検体と正常な血液検体(正常血漿)とを用いて、以下の5種類の測定対象試料を用意した。
(1) 正常血漿
正常血漿には、CRYOcheck Pooled Normal Plasma(Precision BioLogic Incorporated)を用いた。
(2) LA陽性血漿
LA陽性血漿には、Positive Lupus Anticoagulant Plasma (George King Biomedical,Inc.)を用いた。
(3) 第VIII因子インヒビター陽性血漿
第VIII因子インヒビター陽性血漿には、Factor VIII Deficient with Inhibitor (George King Biomedical,Inc.)を用いた。
(4) LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿
上で述べた「(2) LA陽性血漿」と「(1) 正常血漿」とを1:1の容量比で混合した混合血漿を調製した。
(5) 第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿
上で述べた「(3) 第VIII因子インヒビター陽性血漿」と「(1) 正常血漿」とを1:1の容量比で混合した混合血漿を調製した。
8.1.2.血液検体の凝固反応の測定方法
上記5種類の試料のそれぞれについて、37℃にて、加温処理なしでのAPTT測定、10分加温処理後のAPTT測定、30分加温処理後のAPTT測定、120分加温処理後のAPTT測定をそれぞれ実施した。
本実施例では、各APTT測定を、血液凝固自動分析装置CP3000(積水メディカル株式会社製)を用いて行った。本実施例では、キュベット(反応容器)に吐出され37℃で45秒間加温した試料50μLに、約37℃に加温したAPTT試薬50μLを添加(吐出)し、さらに171秒経過後に25mM塩化カルシウム液50μLを添加(吐出)して凝固反応を開始させた。反応は、37℃に維持した状態で行った。凝固反応の検出(測光)は、波長660nmのLEDライトを光源とする光を照射し、0.1秒間隔で90度側方散乱光の散乱光量を検出することによって行った。検出時間は360秒間とした。
8.1.3.測光データの解析方法
上記5種類の試料のそれぞれについて行われた、加温処理なしでのAPTT測定の結果、10分加温処理後のAPTT測定の結果、30分加温処理後のAPTT測定の結果、120分加温処理後のAPTT測定の結果をそれぞれ示す、経時的な光学的情報、すなわち測光データを取得して凝固反応曲線を得た。
凝固反応曲線に対して、ベースライン調整を行った。すなわち、凝固反応曲線に対してノイズ除去を含む平滑化処理を行い、測定開始時点の散乱光量が0となるように調整した。続いて、凝固反応曲線の最大高さが100となるように補正し、補正0次曲線を得た。該補正0次曲線を一次微分して、補正1次曲線を得た。補正1次曲線の算出には、上述の式(4)による区間内平均傾きを用いた。
ベースライン調整後の凝固反応曲線に基づいて、凝固時間を算出した。
また、補正1次曲線の最大値Vmax及び最大値となる時間VmaxTを算出した。また、補正2次曲線を求め、その最大値Amax及び最大値となる時間AmaxTを算出した。
また、補正1次曲線に基づいて、演算対象域値Sを10%に設定したときのピーク幅vB10%を算出した。また、演算対象域値Sを60%に設定したときの重心時間vT60%と、重心高さvH60%とを算出した。また、演算対象域値Sを10%に設定したときの扁平率vAB10%を算出した。また、演算対象域値Sを5%に設定したときの時間率vTB5%を算出した。
8.2.解析結果及び考察
上述した5種類の試料の代表的な補正1次曲線をそれぞれ図47A乃至図47Eに示す。各図の中の4つの曲線M0、M10、M30、M120は、それぞれ、混合血漿の加温処理なし、加温処理10分後、加温処理30分後、加温処理120分後の補正1次曲線を示す。
図47Aに、「(1) 正常血漿」の補正1次曲線を示す。この曲線は、他の試料と比較して、ピーク高さは高く、ピーク幅は狭くなった。また、単峰性の形状を示した。加温処理時間の違いによる影響を見ると、曲線M0、M10、M30、M120間で曲線の形状変化は殆ど見られなかった。
図47Bに、「(2) LA陽性血漿」の補正1次曲線を示す。この曲線は、正常血漿と比較すると延長が認められ、ピーク高さは低く、ピーク幅が広い。また、二峰性のピークのうち一方が不完全なピークとなるショルダー状、又は二峰性の形状を示した。加温処理時間の違いによる影響を見ると、曲線M0、M10、M30、M120間で曲線の形状変化が少し見られるが、特段大きな変化は見られない。
図47Cに、「(3) 第VIII因子インヒビター陽性血漿」の補正1次曲線を示す。この曲線は、正常血漿と比較すると延長が認められ、ピーク高さは低く、ピーク幅が広く、形状は顕著な二峰性を示した。また、LA陽性血漿と比較すると、ピーク高さはさらに低く、ピーク幅もさらに広い。加温処理時間の違いによる影響を見ると、曲線M0、M10、M30、M120間で頂上部などに小さな形状変化が見られるが、特段大きな変化は見られない。
図47Dに、「(4) LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」の補正1次曲線を示す。この曲線は、図47Bに示した「(2) LA陽性血漿」と比較して、ピーク高さは高く、ピーク幅が狭くなった。加温処理時間の違いによる影響を見ると、曲線M0、M10、M30、M120間で波形の形状変化が少し見られるが、特段大きな変化は見られない。
図47Eに、「(5) 第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」の補正1次曲線を示す。この曲線は、図47Cに示した「(3) 第VIII因子インヒビター陽性血漿」と比較して、特に、加温処理なしでのM0で顕著にピーク高さが高くなり、ピーク幅が狭くなった。一方で、加温処理時間が長くなるとともに、ピーク高さは低くなり、ピーク幅は広くなった。特に曲線M0、M10間で大きな形状変化が見られた。例えば、加温処理なし(M0)に対し、10分加温処理後(M10)は、ピーク高さが半分以下となり、二峰化した。10分加温処理後(M10)の曲線は扁平化しており、大きな形状変化が見られる。30分加温処理後(M30)までは形状変化が確認できたが、その後の形状変化が認められなかった。
このように曲線M0、M10間では大きな形状変化があることから、「(5) 第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」では、加温処理時間を2時間よりも短くした10分においても、補正1次曲線を解析することで、第VIII因子インヒビター陽性を鑑別可能であることが分かった。図47Eに示すように、加温処理なし(M0)と10分加温処理後(M10)の場合とで明らかに曲線の形状が異なる。この形状の差異を表す評価パラメータは種々あり得る。第VIII因子インヒビター陽性の鑑別には、当該鑑別の指標として有効な評価パラメータを各補正1次曲線から見出して利用することが望ましい。
図48に、上述した5種類の試料のそれぞれについて、10分加温処理後の混合血漿のAPTT測定から得られる各種評価パラメータ、加温処理なしでの混合血漿のAPTT測定から得られる各種評価パラメータ、及び、双方の各種評価パラメータの比を算出した結果を示す表の一例を示す。
なお、図48において、「NP」は「正常血漿」を表しており、「LA」は「LA陽性血漿」を表しており、「LA M」は「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」を表しており、「IN」は「第VIII因子インヒビター陽性血漿」を表しており、「IN M」は「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」を表している。また、「10min」は「37℃での10分間の加温処理」を表しており、「0min」は「加温処理なし」を表している。
図48に示す各種の評価パラメータは以下のとおりである。凝固時間は、ベースライン調整後の凝固反応曲線の散乱光量が50%となる反応経過時間を示す。Vmaxは、補正1次曲線の最大値を示す。VmaxTは、測光開始後からVmaxとなるまでの時間を示す。Amaxは、補正2次曲線の最大値を示す。AmaxTは、測光開始後からAmaxとなるまでの時間を示す。vB10%は、演算対象域値Sを10%にしたときのピーク幅を示す。vAB10%は、演算対象域値Sを10%としたときの扁平率を示し、演算対象域値Sを10%としたときの重心高さvH10%をピーク幅vB10%で除した値(vH10%/vB10%)を示す。vTB5%は、演算対象域値Sを5%に設定したときの時間率を示し、演算対象域値Sを5%に設定したときの重心時間vT5%をピーク幅vB5%で除した値(vT5%/vB5%)を示す。vT60%は、演算対象域値Sを60%に設定したときの重心時間を示す。vH60%は、演算対象域値Sを60%に設定したときの重心高さを示す。
LA陽性血漿は、即時反応と遅延反応での違いが見られないことが知られているので、LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿(LA M)では、比(Pb/Pa)は、1に近い値となると予想された。解析結果は、図48に示すとおり、Amaxを除いて、比(Pb/Pa)は、1に近い値となった。Amaxが1.0から大きく外れているのは、二次微分によりPbとPaの値が小さくなることによるS/N比の悪化影響を受けているためと推察される。その他の評価パラメータについて、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿(LA M)」での値と「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿(IN M)」での値との比(Pb/Pa)について検討した。
凝固時間は、LA Mでは、比(Pb/Pa)が0.988であるのに対して、IN Mでは、比(Pb/Pa)が1.596であり明らかに大きくなる。IN Mの比(Pb/Pa)が1.596となっているのは、この検体では10分間の加温処理により第VIII因子インヒビターの凝固阻害反応の作用が強くなっていることを示している。LA Mの比(Pb/Pa)が0.988となっているのは、LAが10分間の加温処理では凝固反応には影響しないことを示している。
Vmaxでの加温処理なしと10分加温処理の差は、図47Dに示すように、LA Mではほとんど変化していないのに対して、図47Eに示すように、IN Mでは10分加温処理により明確に低下している。これを反映してVmaxの比(Pb/Pa)は、LA Mでは1.038であるのに対して、IN Mでは0.435であり、明らかに小さくなっている。このように、Vmaxは、第VIII因子インヒビターの存在など第VIII因子インヒビターの影響を判定するための評価パラメータとして、一つの好ましい例であると考えられる。
VmaxTでの加温処理なしと10分加温処理の差は、図47Dに示すように、LA Mではほとんど変化していないのに対して、図47Eに示すように、IN Mでは10分加温処理により明確に延長している。これを反映して、VmaxTの比(Pb/Pa)も、LA Mで0.998であるのに対して、IN Mでは、1.589となっている。しかしながら、図47Eに示すように、加温処理後では補正1次曲線の二峰性が顕著になっており、1つ目のピークと2つ目のピークとでどちらが最大値をとるかによってVmaxTの値が大きく変わることになるので、VmaxTは、第VIII因子インヒビターの存在など第VIII因子インヒビターの影響を判定するための評価パラメータとしては好ましくないと考えられる。
凝固反応の進行率を表すパラメータとして、重心高さvHが挙げられる。重心高さvH60%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは1.052であるのに対して、IN Mでは0.427であり、IN Mは明らかに小さくなっている。このように、重心高さvHは、第VIII因子インヒビターの存在など第VIII因子インヒビターの影響を判定するための評価パラメータとして、一つの好ましい例であると考えられる。
凝固反応の進行状態の時間的変化を反映するパラメータとして、重心時間vTが挙げられる。重心時間vT60%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは0.988であるのに対して、IN Mでは1.592であり、IN Mは明らかに大きくなっている。このように、重心時間vTは、第VIII因子インヒビターの存在など第VIII因子インヒビターの影響を判定するための評価パラメータとして、一つの好ましい例であると考えられる。VmaxTが二峰性ピークの影響を受けやすいのに対して、重心時間vTは、補正1次曲線全体を平均化した形状を反映するパラメータである点で、VmaxTよりも優れた評価パラメータになり得る。
図47Dに示すように、LA Mでは10分の加温処理をしても曲線形状はほとんど変化していないのに対して、図47Eに示すように、IN Mでは10分の加温処理により曲線が扁平化している。これを反映してピーク幅vB10%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは0.958であるのに対して、IN Mでは2.270であり、IN Mは明らかに大きくなっている。このように、ピーク幅vBは、第VIII因子インヒビターの存在など第VIII因子インヒビターの影響を判定するための評価パラメータとして、一つの好ましい例であると考えられる。
同様に、扁平率vAB10%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは1.087であるのに対して、IN Mでは0.191であり、IN Mは明らかに小さくなっている。このように、扁平率vABは、第VIII因子インヒビターの存在など第VIII因子インヒビターの影響を判定するための評価パラメータとして、一つの好ましい例であると考えられる。
時間率vTB5%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは1.019であるのに対して、IN Mでは0.718であり、IN Mは小さくなっている。IN Mでは、加温処理により重心時間vTxが延長化しているとともにピーク幅vBが大きくなっているので、これらの変化が相殺して、他のパラメータに比較して値が1.0からそれ程大きく離れていない。
各パラメータの差(Pb-Pa)についても、PbとPaが近似していれば差は0付近の値となり、PbとPaが近似していなければ差は0から離れた値になるため、差も判定指標となることが分かる。
これらの結果から、凝固反応状態に関するパラメータ、特に例えば、最大一次微分値Vmax、ピーク幅vB、扁平率vAB、重心時間vT、重心高さvH、時間率vTBなどに基づいて、被験者の検体が、第VIII因子インヒビター陽性であるか、LA陽性であるかが鑑別され得ることが分かった。
第VIII因子インヒビター陽性とLA陽性を鑑別するにあたって、補正一次曲線に関するパラメータが有効であることを確認するために、複数の検体に対して、クロスミキシング試験と、本方法に係る解析とを行った。ここで、通常の遅延型クロスミキシング試験と異なり、37℃での加温処理時間を10分とした。即時型試験は従来と同様に加温処理は実施しない。
図49A乃至図49Lは、それぞれ異なるLA陽性検体のクロスミキシング試験の結果を示す。図49A乃至図49Lは、それぞれサンプルA,B,C,D,H,I,J,K,O,P,Q,Rの結果を示す。各グラフの横軸は、LA陽性血漿と正常血漿との混合比を示し、LA陽性血漿の割合が0%、50%、100%であることを示す。縦軸は、測定されたAPTTの凝固時間を示す。各図において、実線で示したm0は、加温処理なしでのAPTT測定結果を示し、破線で示したm10は、混合血漿の加温処理時間が10分の場合でのAPTT測定結果を示す。
LA陽性血漿は、即時反応と遅延反応での違いが見られないことが知られている。この知見の通り、図49A乃至図49Lのいずれの場合においても、加温処理の有無で測定結果の差異はほとんどなかった。図49Iに示したサンプルO及び図49Lに示したサンプルRの場合を除いて、加温処理の有無に関係なくグラフは「上に凸」のパターンを示した。サンプルOは、m0とm10で「下に凸」のパターンを示した。また、サンプルRは、m0でわずかに下に凸になったが、m10では「直線状」のパターンを示した。
図50A乃至図50Iは、それぞれ異なる第VIII因子インヒビター陽性検体のクロスミキシング試験の結果を示す。図50A乃至図50Iは、それぞれサンプルE,F,G,LM,N,S,T,Uの結果を示す。各グラフの横軸は、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合比を示し、第VIII因子インヒビター陽性血漿の割合が0%、50%、100%であることを示す。縦軸は、測定されたAPTTの凝固時間を示す。各図において、実線で示したm0は、加温処理なしでのAPTTの測定結果を示し、破線で示したm10は、混合血漿の加温処理時間が10分の場合での測定結果を示す。
第VIII因子インヒビター陽性血漿は、遅延反応で「上に凸」のパターンを示すことが知られている。この知見の通り、図50A乃至図50Iのいずれの場合においても、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との混合血漿では、加温処理後の凝固時間が延長し、図50Hに示したサンプルTの場合を除いて、m10で「上に凸」のパターンを示した。図50Hに示したサンプルTの場合には、m0からm10で凝固時間の延長が認められたものの、m10で「下に凸」のパターンを示した。
図51Aに、各サンプルについて、被検血漿100%での加温処理なしと、37℃で10分加温処理したときのAPTT測定結果を示す。
LA陽性血漿のサンプルA、B、C、D、H、I、J、K、O、P、Q、Rの場合及び第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルE、F、G、L、M、N、S、T、Uの場合の何れも、加温処理によりAPTT測定結果の変化は5%以内であり、加温処理による影響は僅かであることが確認できた。
図51Bに、各サンプルについて、被検血漿と正常血漿との等量混合血漿での加温処理なしと、37℃で10分加温処理したときのAPTT測定結果を示す。
図51Bにおいて、LA陽性血漿のサンプルA、B、C、D、H、I、J、K、O、P、Q、Rの場合は、加温処理によりAPTT測定結果の変化は5%以内であり、加温処理による影響は僅かであることが確認できた。一方、第VIII因子インヒビター陽性血漿のサンプルE、F、G、L、M、N、S、T、Uの場合は、加温処理によりAPTT測定結果の変化はまちまちであったがいずれも10%を超えたことから加温処理による影響が確認できた。
従来のクロスミキシング試験は、試料を37℃で2時間加温処理することで、第VIII因子インヒビター陽性の検体で凝固時間の延長が認められように加温処理条件が設定されている。これに対して本願の方法は、10分の加温処理では「下に凸」のパターンを示すような第VIII因子インヒビター陽性の検体(サンプルT)において、わずか10分の加温処理でも第VIII因子インヒビターを検出しようとするものである。
上述の複数のLA陽性血漿及び第VIII因子インヒビター陽性血漿の各々について、正常血漿との等量混合血漿の加温処理なしと、37℃で10分加温処理したAPTT測定データに基づいて、補正1次曲線を算出した。
図52A乃至図52Lは、上述の12例のLA陽性血漿と正常血漿を容量比1:1で混合した混合血漿、すなわち、サンプルA、B、C、D、H、I、J、K、O、P、Q、Rの加温処理なしと、37℃で10分加温処理したときの補正1次曲線を示す。各曲線において、実線M0は、加温処理なしの場合を示し、破線M10は、37℃で10分加温処理した場合を示す。
いずれのサンプルにおいても、曲線M0、M10間で形状変化は殆ど見られず、加温処理による曲線形状への影響が認められないことが確認できた。
図53A乃至図53Iは、上述の9例の第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿を容量比1:1で混合した混合血漿、すなわち、サンプルE、F、G、L、M、N、S、T、Uの加温処理なしと、37℃で10分加温処理したときの補正1次曲線を示す。各曲線において、実線M0は、加温処理なしの場合を示し、破線M10は、37℃で10分加温処理した場合を示す。
いずれのサンプルにおいても、曲線M0、M10間で大きな形状変化が見られ、加温処理による曲線形状への顕著な影響が認められることが確認できた。特に、加温処理によって、いずれのサンプルもピーク高さが低下し、ピーク幅が広がった。このような形状変化は、加温処理時間10分のクロスミキシング試験において「下に凸」のパターンを示したサンプルTにおいても、図53Hに示すように確認できた。
図52A乃至図52Lに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率vAB10%」を算出した。そして、加温処理なしでの扁平率vAB10%と10分加温処理での扁平率vAB10%との比(vAB10% 10/0比)を算出した。同様に、図53A乃至図53Iに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率vAB10%」を算出した。そして、加温処理なしでの扁平率vAB10%と10分加温処理での扁平率vAB10%との比(vAB10% 10/0比)を算出した。それらの算出結果を図54Aに示す。
図54Aに示されるように、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(LA)では、「vAB10% 10/0比」の値が1.0を含む一定の範囲内に分布することが分かった。一方、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(Inhibitor)では、「vAB10% 10/0比」の値が0.6未満に分布することが分かった。したがって、双方の分布の間に閾値を設けることにより、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別が可能になることが明らかになった。例えば、サンプルTのような検体であっても、この方法で正しく鑑別され得ることが確認できた。
このように、加温処理なしでのAPTT測定で得られたデータから求めた扁平率vABと10分加温処理後のAPTT測定で得られたデータから求めた扁平率vABとの比(vAB 10/0比)は、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別に有効な指標と成り得ることが確認できた。
図52A乃至図52Lに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さvH60%」を算出した。そして、加温処理なしでの重心高さvH60%と10分加温処理での重心高さvH60%との比(vH60% 10/0比)を算出した。同様に、図53A乃至図53Iに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さvH60%」を算出した。そして、加温なしでの重心高さvH60%と10分加温処理での重心高さvH60%との比(vH60% 10/0比)を算出した。それらの算出結果を図54Bに示す。
この図に示されるように、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(LA)では、「vH60% 10/0比」の値が1.0を含む一定の範囲内に分布することが分かった。一方、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(Inhibitor)では、「vH60% 10/0比」の値が0.8未満に分布することが分かった。したがって、双方の分布の間に閾値を設けることにより、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別が可能になることが明らかになった。例えば、サンプルTのような検体であっても、この方法で正しく鑑別され得ることが確認できた。
このように、加温処理なしでのAPTT測定で得られたデータから求めた重心高さvHと10分加温処理でのAPTT測定で得られたデータから求めた重心高さvHとの比(vH 10/0比)は、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別に有効な指標と成り得ることが確認できた。
図52A乃至図52Lに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率vAB10%」を算出した。そして、加温処理なしでの扁平率vAB10%と10分加温処理での扁平率vAB10%との差(vAB10% 10/0差)を算出した。同様に、図53A乃至図53Iに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを10%としたときの扁平率vAB10%」を算出した。そして、加温処理なしでの扁平率vAB10%と10分加温処理での扁平率vAB10%との差(vAB10% 10/0差)を算出した。それらの算出結果を図55Aに示す。
図55Aに示されるように、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(LA)では、「vAB10% 10/0差」の値は-0.2から0.2までの範囲内に分布することが分かった。一方、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(Inhibitor)では、「vAB10% 10/0差」の値は-1.2から0.0まで広く分布することが分かった。双方の分布の間に閾値を設けることはできず、「vAB10% 10/0差」では、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別はできないことが明らかになった。
図52A乃至図52Lに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さvH60%」を算出した。そして、加温処理なしでの重心高さvH60%と10分加温処理での重心高さvH60%との差(vH60% 10/0差)を算出した。同様に、図53A乃至図53Iに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心高さvH60%」を算出した。そして、加温なしでの重心高さvH60%と10分加温処理での重心高さvH60%との差(vH60% 10/0差)を算出した。それらの算出結果を図55Bに示す。
この図に示されるように、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(LA)では、「vH60% 10/0差」の値は-0.05から0.05の範囲内に分布することが分かった。一方、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(Inhibitor)では、「vH60% 10/0差」の値は、-0.30から0.00まで広く分布することが分かった。したがって、双方の分布の間に閾値を設けることはできず、「vH60% 10/0差」では、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別はできないことが明らかになった。
図52A乃至図52Lに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心時間vT60%」を算出した。そして、加温処理なしでの重心時間vT60%と10分加温処理での重心時間vT60%との差(vT60% 10/0差)を算出した。同様に、図53A乃至図53Iに示した加温処理なしでのデータと10分加温処理でのデータとの各々に基づいて、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」に関わる「演算対象域値Sを60%としたときの重心時間vT60%」を算出した。そして、加温なしでの重心時間vT60%と10分加温処理での重心時間vT60%との差(vT60% 10/0差)を算出した。それらの算出結果を図55Cに示す。
この図に示されるように、「LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(LA)では、「vT60% 10/0差」の値が0.0を含む一定の範囲内に分布することが分かった。一方、「第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿」のデータ(Inhibitor)では、「vT60% 10/0差」の値が10より大きい値に分布することが分かった。したがって、双方の分布の間に閾値を設けることにより、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別が可能になることが明らかになった。例えば、サンプルTのような検体であっても、この方法で正しく鑑別され得ることが確認できた。
このように、加温処理なしでのAPTT測定で得られたデータから求めた重心時間vTと10分加温処理でのAPTT測定で得られたデータから求めた重心時間vTとの差(vT 10/0差)は、被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別に有効な指標と成り得ることが確認できた。
9.第6の実施例
9.1.方法
第5の実施例では、混合血漿の加温処理時間を10分に設定した場合の実験結果を説明したが、第6の実施例では混合血漿の加温処理時間を2分に設定した場合の実験結果について説明する。第5の実施例と異なる条件は、被検血漿とその数、混合血漿の加温処理時間であり、その他の条件は同じである。
9.2.解析結果及び考察
図56は、LA陽性検体のクロスミキシング試験の結果を示す。図において、実線で示したm0は、加温処理なしでのAPTT測定結果を示し、破線で示したm2は、混合血漿の加温処理時間が2分の場合でのAPTT測定結果を示す。図56において、混合血漿加温処理時間が0分(未加温)及び2分で測定結果の差異はほとんどなく、グラフは「上に凸」のパターンを示した。
図57もLA陽性検体のクロスミキシング試験の結果を示す。図において、実線で示したm10は、混合血漿の加温処理時間が10分の場合でのAPTT測定結果を示し、破線で示したm2は、混合血漿の加温処理時間が2分の場合でのAPTT測定結果を示す。図57において、混合血漿加温処理時間が10分及び2分で測定結果の差異はほとんどなかった。すなわち、混合血漿加温処理時間が0分(未加温)、2分及び10分で測定結果の差異はほとんどなかった。
図58は、第VIII因子インヒビター陽性検体のクロスミキシング試験の結果を示す。図において、実線で示したm0は、加温処理なしでのAPTT測定結果を示し、破線で示したm2は、混合血漿の加温処理時間が2分の場合でのAPTT測定結果を示す。図58において、混合血漿の加温処理時間が0分(未加温)及び2分とも「上に凸」のパターンを示し、2分加温処理後の凝固時間は、未加温と比較して延長し、「上に凸」のパターンは強くなった。
図59も第VIII因子インヒビター陽性検体のクロスミキシング試験の結果を示す。図において、実線で示したm10は、混合血漿の加温処理時間が10分の場合でのAPTT測定結果を示し、破線で示したm2は、混合血漿の加温処理時間が2分の場合でのAPTT測定結果を示す。図59において、混合血漿加温処理時間が10分及び2分で測定結果の差異はほとんどなかった。
図60は、LA陽性血漿と正常血漿を容量比1:1で混合した混合血漿の加温処理なしと、37℃で2分加温処理したときの補正1次曲線を示す。実線LA_0は、加温処理なしの場合を示し、破線LA_2は、37℃で2分加温処理した場合を示す。曲線LA_0、LA_2間で形状変化は殆ど見られず、加温処理による曲線形状への影響が認められないことが確認できた。
図61は、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿を容量比1:1で混合した混合血漿の加温処理なしと、37℃で2分加温処理したときの補正1次曲線を示す。各曲線の意味は図60と同じである。曲線8M_0、8M_2間で大きな形状変化が見られ、加温処理による曲線形状への顕著な影響が認められることが確認できた。2分の加温処理によっても第5の実施例での10分の加温処理と同様にピーク高さが低下し、ピーク幅が広がった。
図62に、第5の実施例と同様に5種類の試料のそれぞれについて、2分加温処理後の混合血漿のAPTT測定から得られる各種評価パラメータ、未加温での混合血漿のAPTT測定から得られる各種評価パラメータ、及び、双方の各種評価パラメータの比を算出した結果を示す表の一例を示す。
なお、図62において、「2min」は「37℃での2分間の加温処理」を表しており、他は図48と同じ意味を表している。
凝固時間は、LA Mでは、比(Pb/Pa)が1.045であるのに対して、IN Mでは、比(Pb/Pa)が1.082であり、差は見られなかった。この結果は、LA陽性検体が2分間の加温処理では凝固反応には影響しないことを示しており、第VIII因子インヒビター陽性検体の凝固阻害反応があまり強く影響していないことを示している。
Vmaxでの未加温に対する2分加温処理の差は、図62に示すように、LA Mではほとんど変化していないのに対して、IN Mでは明確に低下している。これを反映してVmaxの比(Pb/Pa)は、LA Mでは0.953であるのに対して、IN Mでは0.731であり、明らかに小さくなっている。
VmaxTでの未加温に対する2分加温処理の差は、図62に示すように、LA Mではほとんど変化していないのに対して、IN Mでは延長している。これを反映して、VmaxTの比(Pb/Pa)も、LA Mで1.020であるのに対して、IN Mでは、1.182となっている。図61に示すように、2分の加温処理によっても第5の実施例での10分の加温処理と同様に加温処理後では補正1次率曲線の二峰性が顕著になった。
重心高さvH60%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは0.947であるのに対して、IN Mでは0.737であり、IN Mは明らかに小さくなっている。
重心時間vT60%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは1.044であるのに対して、IN Mでは1.146であり、IN Mは大きくなっている。
図60に示すように、LA Mでは2分の加温処理をしても曲線形状はほとんど変化していないのに対して、図61に示すように、IN Mでは曲線が扁平化している。図62に示すように、これを反映してピーク幅vB10%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは1.076であるのに対して、IN Mでは1.405であり、IN Mは明らかに大きくなっている。
同様に、扁平率vAB10%の比(Pb/Pa)は、LA Mでは0.864であるのに対して、IN Mでは0.490であり、IN Mは明らかに小さくなっている。
時間率vTBの比(Pb/Pa)は、LA Mでは0.975であるのに対して、IN Mでは0.840であり、IN Mは小さくなっている。
これらの結果から、2分の加温処理によっても第5の実施例での10分の加温処理と同様に、凝固反応状態に関するパラメータ、特に例えば、最大1次微分値Vmax、ピーク幅vB、扁平率vAB、重心時間vT、重心高さvH、時間率vTBなどに基づいて、被験者の検体が、第VIII因子インヒビター陽性であるか、LA陽性であるかが鑑別され得ることが分かった。
なお、ここでは有効な指標と成り得る評価パラメータとして「vAB10% 10/0比」、「vH60% 10/0比」及び「vT60% 10/0差」を挙げたが、これらに限らず、これら以外の評価パラメータも被験者の検体がLA陽性であるか第VIII因子インヒビター陽性であるかの鑑別に有効な指標に成り得る。例えば、扁平率vABxを求めるにあたって設定される演算対象域値Sは、10%に限らず、他の値でもよい。同様に、重心高さvHxを求めるにあたって設定される演算対象域値Sは、60%に限らず、他の値でもよい。また、重心時間vTxを求めるにあたって設定される演算対象域値Sは、60%に限らず、他の値でもよい。また、扁平率vABx、重心高さvHx及び重心時間vTxに限らず、最大1次微分値Vmax、ピーク幅vBx、時間率vTBxなどに基づいても、同様に、被験者の検体が、LA陽性であるか、第VIII因子インヒビター陽性であるかが鑑別され得る。また、加温時間は10分に限らない。図47Eの補正1次曲線によれば、加温処理時間は30分より長くする必要はないと考えられる。一方で、インヒビターが反応する時間は必要であるので、2分以上は加温することが好ましい。したがって、加温時間は2分以上30分以下で適宜に変更されてもよい。いずれにしても従来の2時間と比較して、十分に検査の時間短縮となる。
10.第7の実施例
10.1.方法
第5実施例と同じ手順で、混合血漿(LA陽性血漿について12検体、第VIII因子インヒビター陽性血漿について9検体)を調製し、37℃にて、加温処理なし、及び10分加温処理後にAPTT測定を実施した。取得した測光データから各種評価パラメータを算出し、非加温血漿のパラメータ(Pa)と加温血漿のパラメータ(Pb)との比(Pb/Pa)及び差(Pb-Pa)を求めた。LA陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿(LA)と、第VIII因子インヒビター陽性血漿と正常血漿との等量混合血漿(Inhibitor)との間で、該比(Pb/Pa)及び差(Pb-Pa)の分布の平均値の有意差を評価した。各々の分布についてF検定(有意水準1%)により等分散と非等分散を判断し、次いでT検定(両側)でLAの分布とInhibitorの分布の平均値の差のP値を算出した。
10.2.結果
図63A~Eに、LA及びInhibitorについての非加温血漿と加温血漿との各種評価パラメータの差(Pb-Pa)及び比(Pb/Pa)の例を示す。図63AはAPTT時間(T50)及びVmax、図63BはvAB40%及びvABa40%、図63CはvH40%及びvHa40%、図63DはvAUC90%及びvW10%/vB10%、図63EはpAUC80%及びmAUC20%についての結果を示す。
表12~15に、LAとInhibitorとの間での各種パラメータのPb/Pa及びPb-Paの分布の差(P値)を示す。表中の値は、-:P値≧1%、1:0.1%≦P値<1%、2:0.01%≦P値<0.1%、3:0.001%≦P値<0.01%、4:0.0001%≦P値<0.001%、5:P値<0.0001%、を示す。表13~15に示されるとおり、全体的に、比(Pb/Pa)は差(Pb-Pa)と比べてLAとInhibitorの間での分布の差が大きかった。多くのパラメータの比(Pb/Pa)の分布は、P値<0.01%のレベルでLAとInhibitorの間で異なっていた。一方、差(Pb-Pa)の分布がP値<0.1%のレベルでLAとInhibitorの間で異なるパラメータも見出された。
Figure 0007328251000022
Figure 0007328251000023
Figure 0007328251000024
Figure 0007328251000025
上述の実施形態及び実施例では、APTT測定を例に挙げて説明したが、これに限らない。上述の技術は、例えば、プロトロンビン時間測定、希釈プロトロンビン時間測定、希釈部分トロンボプラスチン時間測定、カオリン凝固時間測定、希釈ラッセル蛇毒時間測定などといった他の凝固時間測定に対しても、同様に適用され得る。
また、上述の実施形態及び実施例では、凝固因子インヒビターとして、第VIII因子のインヒビターを例に挙げて説明したが、第VIII因子以外の他の因子のインヒビターに関しても、上述の技術は同様に適用され得る。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数等は適宜変更して実施することができる。さらにそれぞれの実施例を組み合わせて新たな実施形態とすることもできる。
1…自動分析装置、10…制御ユニット、12…Central Processing Unit(CPU)、14…Random Access Memory(RAM)、16…Read Only Memory(ROM)、18…ストレージ、20…通信インターフェース(I/F)、22…バスライン、30…測定ユニット、42…制御回路、44…データ処理回路、52…恒温槽、54…反応容器、62…光源、64…散乱光検出器、66…透過光検出器、72…検体容器、74…試薬容器、76…検体プローブ、78…試薬プローブ、90…タッチスクリーン、92…表示装置、94…タッチパネル。

Claims (26)

  1. 血液検体の凝固特性の分析方法であって、
    (1)血液試料と試薬とを含む混合液の、反応時間に対する凝固反応量を示す凝固反応曲線のデータを取得することと、
    (2)前記凝固反応曲線のデータの最大値に基づいて補正処理を行って補正処理済み凝固反応曲線のデータを算出し、該補正処理済み凝固反応曲線の微分によって得られる微分曲線のデータを算出することと、
    (3)前記微分曲線の重心点に関係する情報を算出することと、
    (4)前記重心点に関係する情報を用いて前記血液試料の凝固特性を評価することと、
    を含む、方法。
  2. 前記微分曲線が、前記補正処理済み凝固反応曲線に関する1次微分曲線及び該補正処理済み凝固反応曲線に関する2次微分曲線からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
  3. 前記微分曲線の重心点が、重心時間vT及び重心高さvHで規定される座標(vT, vH)で表される前記1次微分曲線の重心点であり、該vT及び該vHは、該1次微分曲線をF(t)(tは時間)、F(t)が所定値xである時間をt1、t2(t1<t2)とするとき、下記式で表される、
    Figure 0007328251000026
    請求項2記載の分析方法。
  4. 前記重心点に関係する情報が、前記vT、前記vH、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、B扁平率vAB、B時間率vTB、W扁平率vAW、W時間率vTW、平均時間vTa、平均高さvHa、vTm、vABa及びvAWaからなる群より選択される1つ以上のパラメータを含み、
    該ピーク幅vBが、前記t1からt2までのF(t)≧xとなる時間長であり、
    該重心ピーク幅vWが、前記t1からt2までのF(t)≧vHとなる時間長であり、
    該vABが、該vHと該vBとの比を表し、
    該vTBが、該vTと該vBとの比を表し、
    該vAWが、該vHと該vWとの比を表し、
    該vTWが、該vTと該vWとの比を表し、
    該vTa、該vHa、及び該vTmは、F(t)、t1及びt2が前記と同じ定義であり、F(t1)からF(t2)までのデータ点数をnとするとき、それぞれ下記式で表され、
    Figure 0007328251000027
    該vABaが、該vHaと該vBとの比を表し、
    該vAWaが、該vHaと該vWとの比を表す、
    請求項3記載の分析方法。
  5. 前記微分曲線の重心点が、重心時間pT及び重心高さpHで規定される座標(pT, pH)で表される前記2次微分曲線のプラスピークの重心点であり、該pT及び該pHは、該2次微分曲線をF'(t)(tは時間)、F'(t)が所定値xである時間をt1、t2(t1<t2)とするとき、下記式で表される、
    Figure 0007328251000028
    請求項2記載の分析方法。
  6. 前記重心点に関係する情報が、前記pT、前記pH、ピーク幅pB、重心ピーク幅pW、B扁平率pAB、B時間率pTB、W扁平率pAW、及びW時間率pTWからなる群より選択される1つ以上のパラメータを含み、
    該ピーク幅pBが、前記t1からt2までのF'(t)≧xとなる時間長であり、
    該重心ピーク幅pWが、前記t1からt2までのF'(t)≧pHとなる時間長であり、
    該pABが、該pHと該pBとの比を表し、
    該pTBが、該pTと該pBとの比を表し、
    該pAWが、該pHと該pWとの比を表し、
    該pTWが、該pTと該pWとの比を表す、
    請求項5記載の分析方法。
  7. 前記微分曲線の重心点が、重心時間mT及び重心高さmHで規定される座標(mT, mH)で表される前記2次微分曲線のマイナスピークの重心点であり、該mT及び該mHは、該2次微分曲線をF'(t)(tは時間)、F'(t)が所定値xである時間をt1、t2(t1<t2)とするとき、下記式で表される、
    Figure 0007328251000029
    請求項2記載の分析方法。
  8. 前記重心点に関係する情報が、前記mT、前記mH、ピーク幅mB、重心ピーク幅mW、B扁平率mAB、B時間率mTB、W扁平率mAW、及びW時間率mTWからなる群より選択される1つ以上のパラメータを含み、
    該ピーク幅mBが、前記t1からt2までのF'(t)≦xとなる時間長であり、
    該重心ピーク幅mWが、前記t1からt2までのF'(t)≦mHとなる時間長であり、
    該mABが、該mHと該mBとの比を表し、
    該mTBが、該mTと該mBとの比を表し、
    該mAWが、該mHと該mWとの比を表し、
    該mTWが、該mTと該mWとの比を表す、
    請求項7記載の分析方法。
  9. 前記所定値xが、前記1次微分曲線F(t)の最大値の0.5~99%である値である、請求項3~8のいずれか1項記載の分析方法。
  10. 前記凝固特性が凝固因子濃度であり、該凝固因子が、凝固第V因子、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、凝固第X因子、凝固第XI因子、及び凝固第XII因子からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4、6、又は8記載の分析方法。
  11. 前記(4)が、分析対象成分の濃度と前記扁平率との関係と、得られた前記扁平率とに基づいて、分析対象成分を定性すること及び分析対象成分の濃度を定量することを含む、請求項4、6、又は8記載の分析方法。
  12. 前記(4)が、前記重心時間と前記ピーク幅との比(時間率)を用いた解析を含む、請求項4、6、又は8記載の分析方法。
  13. 前記(4)が、前記時間率に基づいて、凝固時間延長の要因が凝固第VIII因子であるか否かを判定することを含む、請求項12記載の分析方法。
  14. 前記(4)が、分析対象成分の濃度と前記時間率との関係と、得られた前記時間率とに基づいて、分析対象成分を定性すること及び分析対象成分の濃度を定量することを含む、請求項12又は13記載の分析方法。
  15. 前記凝固反応曲線のデータは、活性化部分トロンボプラスチン時間の測定によって得られたデータである、請求項1~14のいずれか1項記載の分析方法。
  16. 前記(1)が、
    被検血漿と正常血漿とを混合した混合血漿を調製することと、
    該混合血漿の加温処理なしでの凝固時間測定を行うことと、
    該混合血漿の加温処理後の凝固時間測定を行うことと、
    を含み、
    前記(3)が、
    該混合血漿の加温処理なしでの凝固時間測定データに基づいて凝固反応状態と関係する第1のパラメータを算出することと、
    該混合血漿の加温処理後の凝固時間測定データに基づいて凝固反応状態と関係する第2のパラメータを算出することと、
    を含み、
    前記(4)が、
    該第1のパラメータと該第2のパラメータとの比又は差に基づいて、凝固時間の延長の要因を鑑別することと
    を含む、
    請求項1~15のいずれか1項記載の分析方法。
  17. 前記凝固時間測定は、プロトロンビン時間測定、活性化部分トロンボプラスチン時間測定、希釈プロトロンビン時間測定、希釈部分トロンボプラスチン時間測定、カオリン凝固時間測定、及び希釈ラッセル蛇毒時間測定のうち、少なくとも何れか1つである、請求項16記載の分析方法。
  18. 前記鑑別は、凝固時間の延長の要因が凝固因子インヒビターの影響であるかループスアンチコアグラントの影響であるかを判定することを含む、請求項16又は17記載の分析方法。
  19. 前記混合血漿の加温時間は2分以上30分以下である、請求項16~18のいずれか1項記載の分析方法。
  20. 前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータが、前記1次微分曲線の最大値、重心高さvH、重心時間vT、ピーク幅vB、重心ピーク幅vW、B扁平率vAB、B時間率vTB、W扁平率vAW、W時間率vTW、平均時間vTa、平均高さvHa、vTm、vABa及びvAWaからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項16~19のいずれか1項記載の分析方法。
  21. 前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの比が1を含む所定の範囲内に収まらない場合に、凝固時間の延長の要因が凝固因子インヒビターの影響にあると判定することを含む、請求項16~20のいずれか1項記載の分析方法。
  22. 前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの比が1を含む所定の範囲内に収まる場合に、凝固時間の延長の要因はループスアンチコアグラントの影響にあると判定することを含む、請求項16~20のいずれか1項記載の分析方法。
  23. 前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差が0を含む所定の範囲内に収まらない場合に、凝固時間の延長の要因が凝固因子インヒビターの影響にあると判定することを含む、請求項16~20のいずれか1項記載の分析方法。
  24. 前記鑑別は、前記第1のパラメータと前記第2のパラメータとの差が0を含む所定の範囲内に収まる場合に、凝固時間の延長の要因はループスアンチコアグラントの影響にあると判定することを含む、請求項16~20のいずれか1項記載の分析方法。
  25. 前記被検血漿と前記正常血漿との混合比は1対1である、請求項16~24のいずれか1項記載の分析方法。
  26. 前記混合血漿の加温処理温度は35℃以上39℃以下である、請求項16~25のいずれか1項記載の分析方法。
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