JP2024014684A - 血液凝固時間の延長原因の推定方法、及び情報処理装置 - Google Patents

血液凝固時間の延長原因の推定方法、及び情報処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する。【解決手段】血液凝固時間の延長原因の推定方法は、被検検体と試薬とを混合した反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形を取得し(S301b)、凝固波形に対する前後差分処理により第1の波形を取得し(S302b)、凝固波形及び第1の波形に対するフィッティング処理により第1及び第2のフィッティング波形を取得し(S303b、S304b)、第2のフィッティング波形に対する前後差分処理により第3の波形を取得し(S305b)、第1及び第2のフィッティング波形、及び第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより第1~第3の規格化波形を取得し(S306b)、第1~第3の規格化波形の各々から特徴量を抽出し(S307b)、既知の特徴量と抽出した特徴量とに基づいて被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する。【選択図】図3B

Description

本開示は、血液凝固時間の延長原因の推定方法、及び情報処理装置に関する。
血液凝固検査は、血液凝固線溶系の病態把握、DIC(播種性血管内凝固症候群)の診断、血栓治療効果の確認、血友病の診断などの目的で実施される。特に、血液凝固時間測定は、検体と試薬とを混合し、フィブリン塊が形成されるまでの時間(以下、血液凝固時間と称する)を測定するもので、血液凝固能に先天的、又は後天的に異常がある場合は、血液凝固時間は延長する。血液凝固時間が延長する原因には、血液凝固因子の欠乏(欠損型)や、血液凝固因子又は血液凝固時間測定用試薬中の成分(例えばリン脂質)等に対する抗体による血液凝固反応の阻害(インヒビター型)などが挙げられる。血液凝固時間の延長原因ごとに治療方針が異なるため、延長原因の検別は必要であるものの、血液凝固時間の測定だけでは延長原因を検別することはできない。
血液凝固時間の延長原因を検別するための代表的な方法に、クロスミキシングテストがある。クロスミキシングテストでは、被検検体と正常検体とを異なる比率(例えば10:0、9:1、8:2、5:5、2:8、1:9、0:10)で混合した複数の血漿サンプルの血液凝固時間を測定する。測定は、サンプル調製後すぐ(即時型)、及びサンプルを2時間加温(インキュベーション)後(遅延型)、に実施される。得られた血液凝固時間を縦軸に、被検検体の混合比率を横軸にプロットして線で繋いでグラフ化し、即時型と遅延型のグラフの形状から延長原因を判定する。この判定は定性的であり、判定する者に熟練した経験値を要する。また、検査時の検体の調製とインキュベーション作業といった煩雑さは、検査者の負担となる。また、この検査のために追加採血を要すため、患者の負担もある。
このような検査者の負担や患者の負担を軽減し、より定量的な判定結果を提供する評価手法として、凝固波形解析による検別が提案されている。対象となる凝固波形は、光計測により取得された波形であり、フィブリン塊の形成に伴う経時的な濁度変化を記録したものである。
特許文献1では、被検検体と正常検体とを混合した血漿サンプルから取得した凝固波形とその微分波形とから抽出した特徴量を用いて、被検検体における血液凝固時間の延長原因が欠損型又はインヒビター型のどちらであるかを切り分け推定する手法が開示されている。特許文献2では、被検検体から取得した凝固波形を一次微分した波形の重心点に関する50個のパラメータを用いたテンプレートマッチングにより、被検検体における血液凝固異常の有無と血液凝固因子の活性値(濃度)を推定する手法が開示されている。特に、血液凝固第VIII因子(FVIII)の濃度と血液凝固第IX因子(FIX)の濃度とを推定し、被検検体において、どちらの血液凝固因子が欠損しているかを検別推定する方法が開示されている。FVIIIの質的量的異常症は血友病A、FIXの質的量的異常症は血友病Bと呼ばれ、どちらの血液凝固因子が欠損しているかは、治療方針の選択に関わるため重要である。また、前記テンプレートマッチングのアルゴリズムを搭載したAPTT延長要因推定システムが特許文献3で開示されている。また、非特許文献1では、被検検体から取得した凝固波形を一次微分した波形の一部の傾きや面積、また波形の時間幅の比などを用いたフローチャートにより、被検検体が、欠損型とインヒビター型と抗凝固薬の添加ありのいずれであるかを検別推定する手法が開示されている。特に、インヒビター型においては、被検検体がループスアンチコアグラント(LA)陽性群なのか、FVIIIに対するインヒビター発現群なのかを検別推定する。LAは、リン脂質に対するインヒビターの1つであり、その発現は抗リン脂質抗体症候群に繋がる。また、特許文献4には、凝固波形の一次微分波形及び二次微分波形から複数のパラメータを抽出し、該複数のパラメータから多変量相関によって各血液凝固因子の予想濃度を求めること、該予想のために学習させたニューラルネットワークを用いることが記載されている。
特許第6994528号 国際公開第2020/158948号 特許第6811975号 米国特許第6524861号明細書
D.Shimomura et al., The First-Derivative Curve of the Coagulation Waveform Reveals the Cause of aPTT Prolongation, Clinical and Applied Thrombosis/Hemostasis, Volume 26(2020)P1-8
(1)被検検体と試薬とを混合して生成される反応液における凝固反応を計測して取得した凝固波形を解析して抽出した特徴量を用いて、被検検体の血液凝固時間の延長原因が、血友病A、血友病B、抗リン脂質抗体症候群の診断に重要なFVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、LA陽性検体群のいずれであるかを検別推定することが課題である。
(2)血友病患者の検体の血液凝固時間は重症になるほど長くなる。血液凝固時間の計測装置は、スループット向上のために、検体ごとに血液凝固反応が終了したと適宜判断して計測を終了し、次の検体の計測に移ることが当該分野に係る技術者としての常識となっている。この結果として、検体ごとに凝固波形のデータ長が異なることになる。
特許文献4では、複数のパラメータから多変量後方相関によって各血液凝固因子の予想濃度を求めること、及び症例の推定にニューラルネットワークを用いることが記載されており、ニューラルネットワークを含めたクラスタリング手法は、固定データ長の特徴量を入力データに用いている。ニューラルネットワーク、混合ガウス分布、K-means法など、現在知られているクラスタリング方法では入力データ数が一定であることを前提とする技術である。これらを含む既存のクラスタリング手法を凝固波形解析に用いる場合、可変データ長である凝固波形データに適切な前処理を施し、固定データ長にすることにより、はじめて当該クラスタリング手法が機能する。こうした可変データ長に対する前処理の例としては、画像や音声認識に対して、データの圧縮技術やゼロ・パディング技術などが優れた前処理として広く知られている。被検検体のみの凝固波形や、被検検体と正常検体とを所定の比率で混合した複数の混合検体を使用するクロスミキシングテストで得られる一連の凝固波形群を直接用いてニューラルネットワークで血液凝固時間の延長原因を推定することが可能となれば、実験的に定めた特徴量のほかに、凝固波形に含まれる隠れた情報を含めて血液凝固時間の延長原因を推定することができる。これを実現するためには、可変データ長である凝固波形をニューラルネットワークで弁別するために好適な前処理、および凝固波形または凝固波形群を用いたニューラルネットワークにより実用的な検別精度を得ることの実証、ならびにそれを実現するためのニューラルネットワークの構成とハイパー・パラメータなどの具体的な数値の開示が必要である。
そこで、本開示は、被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形から抽出した特徴量を用いて、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定することを目的とする。
また、本開示は、可変データ長である凝固波形に対して好適な前処理を行うことによって、ニューラルネットワークにより実用的な精度で血液凝固時間の延長原因を推定することを目的とする。
本開示の血液凝固時間の延長原因の推定方法は、被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形を取得すること、凝固波形に対する前後差分処理により第1の波形を取得すること、凝固波形に対するフィッティング処理により第1のフィッティング波形を取得すること、第1の波形に対するフィッティング処理により第2のフィッティング波形を取得すること、第2のフィッティング波形に対する前後差分処理により第3の波形を取得すること、第1のフィッティング波形、第2のフィッティング波形、及び第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形を取得すること、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形の各々から特徴量を抽出すること、血液凝固時間の延長原因が既知である検体群から抽出した既知の特徴量と、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形の各々から抽出した特徴量と、に基づいて、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定すること、を有する。
また、本開示の血液凝固時間の延長原因の推定方法は、被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形から被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する推定方法であって、凝固波形のデータのデータ長を揃えること、データ長が揃った凝固波形のデータをニューラルネットワークを用いて、複数の血液凝固時間の延長原因を推定すること、及び推定された血液凝固時間の延長原因の所属確率に基づいて、被検検体の血液凝固時間の延長原因を提示すること、を有する。
本開示によれば、被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形から抽出した特徴量を用いて、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定することが可能となる。
また、本開示によれば、可変データ長である凝固波形に対して好適な前処理を行うことによって、ニューラルネットワークにより実用的な精度で血液凝固時間の延長原因の推定を行うことが可能となる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
実施例1の2つのFVIII欠乏検体の凝固波形と、それらの一次微分に相当する波形と、を示した図である。 実施例1のFVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、LA陽性検体群の凝固波形、凝固波形の一次微分相当の波形、及び凝固波形の二次微分相当の波形を規格化した波形を示した図である。 比較例の血液凝固時間の延長原因の推定方法を示したフローチャートである。 実施例1の血液凝固時間の延長原因の推定方法を示したフローチャートである。 実施例1の自動分析装置の全体構成例を示す図である。 実施例1のWave0、1、2を規格化した波形であるWaveNor0、1、2と特徴量ベクトルとを示した図である。 実施例1のWaveNor0、1、2の特徴量から成る2次元マップを示した図である。 実施例1の血液凝固時間の延長原因が既知である検体の特徴量から作成した2次元マップにおいて被検検体の特徴量をプロットした一例を示した図である。 実施例1の被検検体の規格化済のWave0、1、2と、FVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、LA陽性検体群、正常検体群、不明の所属確率を示すインジケータと、検別推定結果の一例を示した図である。 実施例1の分析部とPCと通信インターフェースとの関係と、表示部への被検検体の結果の表示の例を示す図である。 実施例1のWaveSrc1とWave1の例を示す図である。 実施例2のニューラルネットワーク向け前処理方法を示す図である。 実施例2のニューラルネットワーク向け前処理方法を示す図である。 実施例2のニューラルネットワーク向け前処理方法を示す図である。 実施例2のニューラルネットワークによる検別器の構造を示す図である。 実施例2の前処理方法とニューラルネットワークによる検別器のドロップアウトと検別精度の関係を示す実験結果である。 実施例2の前処理方法とニューラルネットワークによる検別器のドロップアウトと検別精度の関係を示す実験結果である。 実施例2の前処理方法とニューラルネットワークによる検別器のドロップアウトと検別精度の関係を示す実験結果である。 実施例2の前処理法とニューラルネットワークによる検別器のハイパー・パラメータと検別精度の関係を示す実験結果である。 実施例2の前処理法とニューラルネットワークによる検別器のハイパー・パラメータと検別精度の関係を示す実験結果である。 実施例2の前処理法とニューラルネットワークによる検別器が過学習を抑止していることを示す実験結果である。 実施例4の凝固波形にみられるFVIII欠乏検体及びFIX欠乏検体の差異を示す実験結果である。 公知の指標である一次微分の最大値とlog凝固時間との関係を示す実験結果である。 実施例4のvec1_yとlog凝固時間の関係を示す実験結果である。 実施例4の市販検体の凝固波形をNRC法に基づいて規格化したWaveNor0について、各検体群の代表波形を示した実験結果である。 実施例4の市販検体の凝固波形をNRC法に基づいて規格化したWaveNor1について、各検体群の代表波形を示した実験結果である。 実施例4の市販検体の凝固波形をNRC法に基づいて規格化したWaveNor2について、各検体群の代表波形を示した実験結果である。 実施例4のWaveNor2の周波数スペクトルを示す実験結果である。 実施例4の特徴量セットの例をまとめたものである。 実施例4の市販検体群を特徴量空間#6上に表示した実験結果である。 実施例4の市販検体群を特徴量空間上にプロットしたサマリを表す表示例である。 実施例4の1つのFVIII欠乏検体の鑑別結果を表す表示例である。 実施例5のクロスミキシングテストにおいて1つの被検検体に対して得られる一連の凝固波形データを2つの面積指標F、Fに次元圧縮する方法を示す模式図である。 実施例5の多次元混合ガウス分布を用いてクロスミキシングテストの検体の鑑別を実施した結果を示した図である。 実施例5の指標(F、F)のクラスタ領域を示す図である。 実施例5の指標(F、F)のクラスタ領域にデータ点を加えた実験結果を示した図である。 実施例5の指標(G、G)を説明する図である。 実施例5の1つの検体から得られる一連の凝固波形から算出した指標Fと、同じ1つの検体を用いて特徴量空間#1から算出した指標Gを組み合わせた即時(F、G)と遅延(F、G)をプロットした実験結果を示した図である。 実施例5の34個の被検検体から得られた指標(F、G)及び(F、G)をプロットした実験結果を示した図である。 実施例5のクロスミキシングテストによって得られた血液凝固時間の延長原因ごとの軌道データの平均形状を示した実験結果である。 実施例5のクロスミキシングテストの各検体の軌道データを2次元x14空間に分離して鑑別を実施した実験結果を示した図である。 実施例5の鑑別方法に必要な検体の総数を調べるための条件をまとめた図である。 実施例5の鑑別に用いる凝固波形の個数と最悪確率(i番目の検体の正しい検体群クラスタへの所属確率をPtiとしたとき、全検体を通じたPtiの最小値)との関係を示す模式図である。 実施例5のクロスミキシングテストの鑑別結果を表す表示例である。
以下、図面を参照して本実施形態について説明する。図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
[実施例1]
実施例1では、波形フィッティングにより得られるWave0、Wave1、Wave2を後述するNRC(Normalization based on the Reaction Constants)法に基づき規格化した波形(WaveNor0、WaveNor1、WaveNor2)から抽出した特徴量を用いて、血液凝固時間の延長原因を推定する。
凝固波形の取得に使用される検体中には、複数の血液凝固因子が含まれており、各因子の濃度が異なると凝固反応の速度に差が生じ、血液凝固時間の多様さ(バリエーション)に繋がる。本分野では、凝固波形の一次微分は凝固速度、二次微分は凝固加速度として扱われている。同一検体群の場合でも凝固波形や凝固速度に関する波形は一致せず、検体群の特徴を視認することは難しい。例として、2つのFVIII欠乏検体の凝固波形(以下、凝固波形を適宜「WaveSrc0」と呼ぶ)と、2つの凝固波形(WaveSrc0)の一次微分相当の第1の波形(以下、凝固波形の一次微分相当の波形を適宜「WaveSrc1」と呼ぶ)と、を図1に示す。WaveSrc0では、波形の立ち上がり時間(矢頭の位置a1、a2)、光量の総変化量(矢印幅b1、b2)、血液凝固時間(例えば、光量(図1の散乱光強度(カウント))の変化が50%となる時間c1、c2)などが検体ごとに異なる。光量の総変化量は、血液凝固因子の1つであるフィブリノーゲン濃度に依存する。血液凝固時間は、凝固反応の速度の影響を受けるものであり、血友病検体の場合、症状が重篤になれば、血液凝固時間が長くなることは自明である。WaveSrc1においても、検体ごとに波形の高さや幅に差異がある。凝固速度(単位時間当たりの光量(散乱光強度(カウント))の変化)などの波形特徴量は、血液凝固時間が長くなれば、血液凝固時間に反比例して小さくなることも実験事実であり、血液凝固時間の違いに影響されて検体ごとに異なる。しかし、これら2つの検体は、同じFVIII欠乏検体であり、共通する特徴を見出して両検体をFVIII欠乏検体群に検別しなければならない。
発明者らは、同一検体群で共通する特徴を顕在化させるためには、各検体群内部における血液凝固時間のバリエーションの影響を抑圧することが有効であると考えた。この考えに基づき、本開示では、光量軸だけでなく時間軸も同時に規格化するNRC法に基づく規格化を実施することにより、同一検体群のWaveSrc0、WaveSrc0の前後差分処理により得られるWaveSrc1、及びWaveSrc1の前後差分処理により得られるWaveSrc2を収束させて同一検体群内の波形特徴を顕在化できることと、検体群ごとに波形を比較した場合に検体群ごとの波形形状の差異を顕在化できることと、を見出した。規格化の具体的な方法などは、後述する(検体検別プログラム)にて詳述する。なお、WaveSrc2は、WaveSrc1の一次微分相当(凝固波形の二次微分相当)の波形である。
図2に、FVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、及びループスアンチコアグラント(LA)陽性検体群のそれぞれのWaveSrc0、WaveSrc1、及びWaveSrc2を規格化した波形であるWaveSrcNor0、WaveSrcNor1、及びWaveSrcNor2を示す。どのグラフにおいても同一検体群内で概ね波形は収束していることが分かる。また、同じ種類の波形同士(例えばWaveSrcNor0同士)を検体群ごとに比較すると、形状差異が見られた。例えば、WaveSrcNor0では、検体群ごとに波形の立ち上がり位置に差が見られた。補助線L1を、LA陽性群の波形の立ち上がり位置の中心に位置するように配置した。FVIII欠乏検体群の波形の立ち上がり位置は、この補助線L1よりも右に、FIX欠乏検体群の波形の立ち上がりは、この補助線L1よりも左に位置し、差が認められた。WaveSrcNor1及びWaveSrcNor2では、2つの峰の頂点間の幅と、頂点の高さと、に差が見られた。WaveSrcNor1及びWaveSrcNor2のどちらの波形においても、補助線L2及びL4をLA陽性群の左側の峰のピークの中心に配置し、補助線L3及びL5をLA陽性群の右側の峰のピークの中心に位置するように配置した。補助線L3及びL5をガイドとして右側の峰のピーク位置を確認すると、検体群ごとで大きな差異は認められなかった。一方で、補助線L2及びL4をガイドとして左側の峰のピーク位置を確認すると、FVIII欠乏検体群のピークは補助線L2及びL4よりも右に、FIX欠乏検体群のピークは補助線L2及びL4よりも左に位置し、差が認められた。これらの検体群間における差は、同一検体群内の変動よりも大きいため、発明者らは、これらの差を特徴量として数値化して、検体検別に使用する考えに至った。
図1に示したWaveSrc0及び図2に示したWaveSrcNor0の生成元データであるWaveSrc0の取得に使用した検体は、すべて市販品である。具体的には、次の通りである。FVIII欠乏検体は、Factor VIII Deficient Plasma(Precision BioLogic、Inc.製)、FVIII Deficient Plasma(George King Bio-Medical、Inc.製)、及びFactor VIII Deficient Plasma(Affinity Biologicals、Inc.製)である。FIX欠乏検体は、Factor IX Deficient Plasma(Precision BioLogic、Inc.製)、FIX Deficient Plasma(George King Bio-Medical、Inc.製)、Factor IX Deficient Plasma(Affinity Biologicals、Inc.製)である。LA陽性検体は、Lupus Positive ControlとWeak Lupus Positive Control(Precision BioLogic、Inc.製)、Positive LA Plasma(George King Bio-Medical、Inc.製)である。
本開示の対象となる検体は、被検者に由来する凝固反応の生じる検体であれば特に限定されないが、被験者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体が好適である。なお、血漿から成る被検検体は、凝固波形の測定など、本開示の自動分析装置での分析に問題ない範囲で微量な不純物が含まれていてもよい。また、試薬は、トロンボプラスチン時間(PT)項目、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)項目、フィブリノーゲン(Fbg)項目を測定するための試薬であれば特に限定されない。また、装置は、凝固反応による反応液の経時的な光量(光量とは、濁度を含む指標である)の変化を計測できる構成であればよい。本実施例で示す凝固波形の測定に使用した試薬は、コアグピアAPTT-N(積水メディカル株式会社製)であり、装置は、日立自動分析装置3500(株式会社日立ハイテク製)である。
本開示では、波形形状の差異を顕在化させるためにNRC法に基づく規格化を実施する点だけでなく、顕在化させた波形形状の差異を、ノイズの影響を抑制して数値化するために、波形フィッティングを実施する点も特徴である。
次に、凝固波形の取得を実施する自動分析装置、凝固波形の取得方法、検体検別プログラムなどに関して具体的に説明する。
(自動分析装置100)
凝固波形の取得に使用される自動分析装置100について説明する。図4は、実施例1の自動分析装置100の全体構成例を示す図である。ここでは、基本的な装置動作について図4を用いて説明するが、以下の例に限定されない。
図4に示すように、自動分析装置100は、分析部130、操作用コンピュータ118、記憶部119及び制御用コンピュータ120から概略構成されている。分析部130は、検体分注機構101、検体ディスク102、試薬分注機構106、試薬ディスク107、反応容器ストック部111、反応容器搬送機構112、検出ユニット113、及び反応容器廃棄部117から概略構成されている。制御用コンピュータ120は、分析部130と通信可能に接続されている。
検体分注機構101は、時計回り及び反時計回りに回転する検体ディスク102に配置された検体容器103に収容された検体103aを吸引し、反応容器104へ吐出する。検体分注機構101は、制御用コンピュータ120によって制御される検体用シリンジポンプ105の動作により検体の吸引動作、及び吐出動作を実行する。
試薬分注機構106は、試薬ディスク107に配置された試薬容器108に収容された試薬108aを吸引し、反応容器104へ吐出する。試薬分注機構106は、制御用コンピュータ120によって制御される試薬用シリンジポンプ110の動作により試薬の吸引動作、及び吐出動作を実行する。
また、試薬分注機構106の内部には、試薬昇温機構109が内蔵されており、試薬分注機構106によって吸引された試薬108aの温度は、制御用コンピュータ120により制御される試薬昇温機構109によって適温(所定の温度)へ昇温される。
反応容器搬送機構112は、反応容器104の搬送及び設置を行うものである。反応容器搬送機構112は、反応容器104を保持して水平方向に回動することにより、反応容器104を反応容器ストック部111から検出ユニット113の反応容器設置部114へ搬送及び設置する。
検出ユニット113は、反応容器104を載置するための1つ以上(本実施の形態では、一例として1つの場合を示している)の反応容器設置部114を有しており、反応容器設置部114に挿入した反応容器104内の反応液(検体103aと試薬108aとの混合液)の光強度の計測を行う。検出ユニット113は、反応容器設置部114に挿入された反応容器104内の反応液が例えば37℃になるように温度制御される。なお、本実施の形態においては、検出ユニット113を1つ配置した場合を示しているが、複数の検出ユニット113を有するように構成してもよい。検出ユニット113における検出原理の例を以下に述べる。光源115から照射された光は、反応容器104内の反応液で散乱される。検出部(光センサ)116は、反応容器104内の反応液で散乱された散乱光を受光する。光源115には、例えばハロゲンランプやLEDが使用される。検出部(光センサ)116は、フォトダイオードなどから構成されている。検出部(光センサ)116で受光された信号は、A/D変換器121によってデジタル信号に変換された光量値となり、反応過程データ(検出光量の時間変化を表す凝固波形データ)として制御用コンピュータ120に入力され、記憶部119に取り込まれる。検出ユニット113の動作は、制御用コンピュータ120により制御される。ここでは光の散乱を利用した検出器としたが、他にも、透過光を利用するものなどがある。
反応容器搬送機構112は、計測が終了した反応容器104を保持し、反応容器廃棄部117へ廃棄する。
処理能力を向上させる目的で、測定開始試薬を添加する前の検体を加温しておく検出器なしのインキュベータ122を備えていても良い。
制御用コンピュータ120は、プロセッサやメモリなどを有するコンピュータシステムを有する情報処理装置であり、検体103aや試薬108aの分注、反応容器104の移設、反応容器104の廃棄などの自動分析装置の動作を制御するだけでなく、反応液の凝固反応に応じて時間変化する光強度の計測値(凝固波形データ)から血液凝固時間を算出する他、血液凝固時間の延長原因の検別推定を実施するものである。算出された血液凝固時間や、血液凝固時間の延長原因の検別推定結果は、表示部118cに出力されるとともに、記憶部119に記憶される。なお、これらの結果は、操作用コンピュータ118を介してプリンタ123で印字出力してもよい。制御用コンピュータ120に接続されている記憶部119には、制御プログラム、計測プログラム、検量線生成プログラム、定量プログラム、検体検別プログラムなどのプログラムの他に、計測した波形データ、定量結果、検体検別結果等が格納される。各種プログラムは、操作用コンピュータ118に入力された依頼あるいは通信インターフェース124から送られた依頼に従って読み出されて実行される。操作用コンピュータ118への入力は、表示部118cをタッチして入力しても良いし、接続しているキーボード118bを介して入力しも良い。また、表示部118cに表示されているものをマウス118aで選択して入力してもよい。記憶部119に格納されている波形データ、定量結果、検体検別結果等は、表示部118cに出力される。または、通信インターフェース124に送られる。または、それらは、必要に応じてプリンタ123で印刷される。通信インターフェース124は、例えば、病院内のネットワークと接続され、HIS(Hospital Information System)やLIS(Laboratory Information System)と通信される。
被検検体の血液凝固時間の延長原因の推定は、前記した通り、記憶部119に格納してある検体検別プログラムと被検検体の波形データが制御用コンピュータ120に呼び出されて実行される。あるいは、検体検別プログラムを実行する解析用コンピュータ125に被検検体の波形データを転送し、解析用コンピュータ125が、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定して、結果を解析用コンピュータ125の画面に表示してもよい。あるいは、記憶部119に格納されている波形データを制御用コンピュータ120及び操作用コンピュータ118を介して別の外部記憶媒体などに書き出して、検体検別プログラムを有する独立した解析用コンピュータが、書き出した波形データを読み込み、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定してもよい。
(凝固波形の取得方法)
次に、血液凝固時間項目の分析動作と凝固波形(WaveSrc0)の取得とについて説明する。血液凝固時間項目は、主に、トロンボプラスチン時間(PT)項目、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)項目、フィブリノーゲン(Fbg)項目の3つがある。いずれの項目においても、はじめに、分析に必要なパラメータを設定する。パラメータの設定では、分析したい項目、検体量、試薬量、出力単位などを入力する。PT項目とFbg項目とでは、キャリブレーション方法も入力し、必要に応じてキャリブレーションを実施する。パラメータを設定した後、検体103a及び試薬108aをそれぞれ収容する検体容器103及び試薬容器108をそれぞれ検体ディスク102及び試薬ディスク107に設置し、分析する。試薬108aは、例えば市販のPT測定用試薬、APTT測定用試薬、Fbg測定用試薬を用いることができる。
(PT項目の分析動作)
PT項目の分析動作について説明する。反応容器ストック部111に収容されている空の反応容器104に、検体分注機構101により検体103aが分注される。検体103aが収容された反応容器104は、反応容器搬送機構112により検出ユニット113の反応容器設置部114に移動される。試薬108aは、試薬分注機構106により、試薬容器108から吸引されて試薬昇温機構109にて適温へと昇温される。このときの温度としては37℃が望ましい。昇温された試薬108aは、反応容器設置部114に設置済みの検体103aが収容された反応容器104に吐出される。吐出開始と同時に、検体103aと試薬108aとの混合液である反応液の経時的な濁度変化が光計測され、WaveSrc0となる。
(APTT項目の分析動作)
APTT項目の分析動作について説明する。反応容器ストック部111に収容されている空の反応容器104に、検体分注機構101により検体103aが分注される。検体103aが収容された反応容器104は、反応容器搬送機構112により検出ユニット113の反応容器設置部114に移動される。第1試薬は、エラグ酸やカオリンなどの活性化剤を含むものであり、試薬分注機構106により、試薬容器108から吸引されて試薬昇温機構109にて適温へと昇温される。このときの温度としては37℃が望ましい。昇温された第1試薬は、反応容器設置部114に設置済みの検体103aが収容された反応容器104に吐出される。検体103aと第1試薬との混合液は、反応容器104内で温調される。このときの温度としては37℃が望ましい。このとき、図示していない攪拌機構により、検体103aと第1試薬の混合液は攪拌されても良い。第2試薬は、塩化カルシウム溶液であり、試薬分注機構106により、試薬容器108から吸引されて試薬昇温機構109にて適温へと昇温される。このときの温度としては37℃が望ましい。昇温された第2試薬は、反応容器設置部114に設置済みの検体103aと第1試薬との混合液が収容された反応容器104に吐出される。第2試薬の吐出までに、検体103aと第1試薬との混合液は、一定時間温調されており、その時間は180秒が望ましい。第2試薬の吐出開始と同時に、検体103aと第1及び第2試薬との混合液である反応液の経時的な濁度変化が光計測され、WaveSrc0となる。
(Fbg項目の分析動作)
Fbg項目の分析動作について説明する。反応容器ストック部111に収容されている空の反応容器104に、検体分注機構101により検体103aが分注される。検体103aが収容された反応容器104は、反応容器搬送機構112により検出ユニット113の反応容器設置部114に移動される。検体希釈液は、試薬分注機構106により、試薬容器108から吸引されて試薬昇温機構109にて適温へと昇温される。このときの温度としては37℃が望ましい。昇温された検体希釈液は、反応容器設置部114に設置済みの検体103aが収容された反応容器104に吐出される。検体103aと検体希釈液との混合液は、反応容器104内で温調される。このときの温度としては37℃が望ましい。このとき、図示していない攪拌機構により、検体103aと検体希釈液の混合液は攪拌されても良い。試薬は、試薬分注機構106により、試薬容器108から吸引されて試薬昇温機構109にて適温へと昇温される。このときの温度としては37℃が望ましい。昇温された試薬は反応容器設置部114に設置済みの検体103aと検体希釈液との混合液が収容された反応容器104に吐出される。試薬の吐出開始と同時に、検体103aと検体希釈液と試薬との混合液である反応液の経時的な濁度変化が光計測され、WaveSrc0となる。
いずれの項目においても、凝固反応が終了した(濁度変化が見られなくなった)時点で計測は終了する。あるいは、一定時間経過後、計測を終了する。一定時間とは、例えば5分である。光計測された経時的な濁度変化は、凝固波形として制御用コンピュータ120を介して記憶部119に取り込まれる。
凝固波形の一例は、図1に示した通りであり、横軸が計測時間、縦軸が光量値となる。図1は、APTT項目におけるFVIII欠乏検体(Precision BioLogic Inc社)の凝固波形の例であり、縦軸は散乱光量値である。
(検体検別プログラム)
図3Bは、検体検別プログラムを実行することによって実行される血液凝固時間の延長原因の推定方法を示したフローチャートである。制御用コンピュータ120のコンピュータシステムは、当該検体検別プログラムを実行することによって、実施例1の血液凝固時間の延長原因の推定を行う。図3Bを参照して、具体的に説明する。図3Bのフローチャートの各ステップは、制御用コンピュータ120によって実行されてもよいし、操作用コンピュータ118によって実行されてもよいし、解析用コンピュータ125によって実行されてもよいし、他のネットワーク上のコンピュータによって実行されてもよい。ここでは、制御用コンピュータ120のコンピュータシステムが各ステップを実行する例について説明する。
制御用コンピュータ120は、凝固反応計測により取得した凝固波形(WaveSrc0)データを読み込む(図3B-S301b)。WaveSrc0の取得に関する具体的な分析動作などに関しては、上記した(凝固波形の取得方法)において説明した通りである。
次に、制御用コンピュータ120は、WaveSrc0の前後差分処理によりWaveSrc1を生成する(図3B-S302b)。WaveSrc1は、例えば、数式1で求められる。ここで、以下の数式1中のΔtは、凝固反応の計測間隔であり、例えば、0.1秒である。
Figure 2024014684000002
次に、制御用コンピュータ120は、WaveSrc0の波形フィッティングにより第1のフィッティング波形Wave0(以下、凝固波形に対してフィッティング処理をした波形を第1のフィッティング波形とし、適宜「Wave0」と呼ぶ)を生成し(図3B-S303b)、WaveSrc1の波形フィッティングによりWave1(以下、第1の波形に対してフィッティング処理をした波形を第2のフィッティング波形とし、適宜「Wave1」と呼ぶ)を生成する(図3B-S304b)。WaveSrc0に対するフィッティング式は、凝固波形がシグモイド曲線(S字状曲線)であることを踏まえて、シグモイド曲線に基づく式が望ましい。例えば、数式2である。数式2では、試薬吐出後に光量がYdcとなる凝固波形に沿うようにした式である。
Figure 2024014684000003
上記した数式2のYdcはベース光量[カウント]、Y0は反応液自体のベース散乱光量[カウント]、Y1は飽和散乱光量[カウント]、tは計測時間[秒]、T0は(Y0+Y1)÷2の時間[秒]、T1は反応時定数[秒]である。
数式2は、散乱光計測された凝固波形のフィッティングを想定したものであるが、吸光度計測された凝固波形の場合は、散乱光計測の波形を上下反転した形となるため、数式2を基に吸光度計測の凝固波形に沿うように改良すればよい。
WaveSrc1に対するフィッティング式は、二峰性をより再現できる式が望ましい。例えば、二峰性のうち左側のピークをガウス分布で、右側のピークをシグモイド微分で表し、両者の間を3次スプライン関数で接続すると良い。WaveSrc1の形状は二峰性となることが多く、特に血液凝固時間が延長する検体においてその形状となる傾向が顕著である。
次に、制御用コンピュータ120は、Wave1の前後差分処理によりWave2(以下、第1のフィッティング波形の一次微分相当の波形を第3の波形とし、適宜「Wave2」と呼ぶ)を生成する(図3B-S305b)。Wave2は、例えば、数式3で求められる。
Figure 2024014684000004
次に、制御用コンピュータ120は、Wave0、1、2の時間軸及び光量軸の両方をNRC法に基づいて規格化する(図3B-S306b)。時間軸は、数式4により規格化する。光量軸としては、Wave0、1、2のそれぞれは、数式5、数式6、数式7により規格化する。Wave0の時間軸及び光量軸を規格化した波形は、第1の規格化波形であり、以下適宜「WaveNor0」と呼ぶ。また、Wave1の時間軸及び光量軸を規格化した波形は、第2の規格化波形であり、以下適宜「WaveNor1」と呼ぶ。また、Wave2の時間軸及び光量軸を規格化した波形は、第3の規格化波形であり、以下適宜「WaveNor2」と呼ぶ。規格化は、反応定数に基づく規格化であり、NRC(Normalization based on the Reaction Constants)法と呼称する。NRC法で用いる反応定数は、WaveSrc0のフィッティングによって得られる数値を用いることができる。波形フィッティングは、前記差異をノイズの影響を抑制して数値化して一意の特徴量として抽出するために、実施する。
Figure 2024014684000005
Figure 2024014684000006
Figure 2024014684000007
Figure 2024014684000008
ここで、nは、データ点数(n≧1)であり、t(n)とnとの関係はt(n)=n/10[秒]である。また、T0、T1、Wave0(n)、Ydc、Y1は、数式2から得られる。
最後に、制御用コンピュータ120は、規格化波形から特徴量を抽出する(図3B-S307b)。特徴量は、検体群ごとに波形形状差が認められる部分を数値化したものでなければならない。ここで、図2を再度参照する。図2には、波形フィッティング前の原波形(WaveSrc0、1、2)を規格化した波形(WaveSrcNor0、1、2)を示した。規格化は、数式4~数式7に従うものであるが、図2では原波形を規格化しており、数式5のWave0(n)、数式6のWave1(n)、及び数式7のWave2(n)の部分には、WaveSrc0、WaveSrc1、及びWaveSrc2をそれぞれ代入した。
前述した通り、例えば、WaveSrcNor0では、波形の立上り位置に差が見られた。立ち上がりの順は、規格化時間が小さい方からFIX欠乏検体群、LA陽性検体群、FVIII欠乏検体群の順であった。時間の規格化式の数式4に従うと、反応時定数T1が小さい(つまり反応が速い)ほど、規格化時間0からの距離が遠くなった。つまり、各検体群の反応速度の違いが、立ち上がりタイミングの違いとして表れた。FVIIIは、活性化FVIIIとなって、その存在は、凝固反応機序内における一部分の反応を増強するため、FVIII欠乏検体群では反応時定数が大きくなり立ち上がりタイミングが遅くなったと考える。LAは、凝固反応の足場であるリン脂質に結合して凝固因子の結合を阻害するという性質から、血液凝固因子の活性に関係なく一様に凝固反応を阻害する。阻害の程度は、LAの量や質(力価)によって変化するため、凝固反応の速度は多様となり、反応時定数T1の多様さに繋がって、FIX欠乏検体群とFVIII欠乏検体群との間に位置したと考える。このように、立ち上がりタイミングは、血液凝固時間の延長原因に由来した差を反映していると考えられ、立ち上がりタイミングの差を数値化した特徴量が有用であると判断した。ここでは、各波形の規格化時間が0の点を始点、波形の立ち上がる点を終点としたベクトルを特徴量とした。
また、WaveSrcNor1では、2つの峰の頂点間の幅と、頂点の高さとに差が見られた。FVIII欠乏検体群では、微量に存在するFVIIIが反応の初期に使用され、その後不足したために、1番目の峰の方が大きく(高く)なったと考える。一方、FIX欠乏検体群とLA陽性検体群では、FVIIIは十分に存在するため、反応の初期よりも、後に生じるポジティブフィードバックと呼ばれる増幅反応において反応速度が速くなり、2番目の峰の方が大きく(高く)なったと考える。また、規格化時間に着目すると、WaveSrcNor0と同様の理由で波形の立ち上がりのタイミングに差があり、1番目の峰が生じる規格化時間の差に繋がっていた。1番目の峰の発生時間の違いや、2つの峰の高さの違いは、血液凝固時間の延長原因に由来した差を反映していると考えられ、これらの差を数値化した特徴量が有用であると判断した。ここでは、規格化時間が0の点を始点、1番目の峰のピーク点を終点としたベクトルを特徴量とした。
WaveSrcNor2では、一次微分相当の波形差異に影響を受ける形で1番目のピーク高さとその発生時間とに差が見られた。ここでは、1番目の峰のピーク高さと規格化時間との情報を組み合わせ、規格化時間が0の点を始点、1番目の峰のピーク点を終点としたベクトル情報を特徴量とした。
ベクトル特徴量は、ノイズの影響を抑制して数値化するために、フィッティング波形(Wave0、1、2)を規格化した波形(WaveNor0、1、2)から抽出する。図5に、Wave0、1、2を規格化した波形であるWaveNor0、1、2と特徴量ベクトルとを示す。横軸は規格化時間、縦軸は規格化レベルと表現する。WaveNor0、1、2の特徴量ベクトルを、それぞれベクトル0、1、2とする。各ベクトルのx成分とy成分を、各波形の特徴量(X、Y)とした。ここでは、WaveNor0のx成分は、T0/T1を減算して検体群の波形形状の差が強調されるように工夫した。WaveNor0、1、2の各特徴量(X、Y)は、それぞれ(vec0_x、vec0_y)、(vec1_x、vec1_y)、(vec2_x、vec2_y)と表現する。
最後に、抽出した被検検体の特徴量を、検体背景(血液凝固時間の延長原因)が既知の検体の特徴量と比較し、被検検体の血液凝固時間の延長原因を検別推定する。血液凝固時間の延長原因が既知である検体から抽出した特徴量(X、Y)を独立で使用して、これらの特徴量をプロットした2次元マップにおいて、検体群ごとの特徴量集団(クラスタ)に確率密度分布を持たせておく。例えば、混合ガウス分布モデルに基づく確率密度分布とする。図6に、規格化した波形であるWaveNor0、1、2から抽出した特徴量から成る2次元マップの例を示す。マップでは、Wave0、1、2と表現した。特徴量は、血液凝固時間の延長原因が既知である検体から得た波形を解析して抽出したものである。各検体群(FVIII欠乏、FIX欠乏、LA陽性、正常)の特徴量の集団(クラスタ)に対して図示した楕円は、それぞれ特徴量データの広がりを表している。正常検体と異常検体との楕円が重複しないように、各楕円の大きさは中心から4σ(σ:各方向の標準偏差、2次元以上ではマハラノビス距離と呼ばれる)とした。これらの楕円は、ガウス分布の確率密度で表される。図中、どの楕円にも属さない領域は、与えられたデータの範囲においてどの検体群にも属さないことを示し、2種以上の被検検体を人為的に混合した場合や治療中の患者の投薬の状況などに応じて、新規な凝固波形であることを示すものである。この領域を「不明」の群と定義する。異常検体同士の楕円は、どの検別器においても重なっており、境界は、確率密度分布に従って算出された所属確率の任意の値に設定できる。図6では、境界が50%の所属確率の場合を示している。ここで使用した異常検体は、前記した市販品である。正常検体も市販品で代用した。具体的には、Normal Reference PlasmaとPooled Normal Plasma(Precision BioLogic、Inc.製)、Factor Assay Control PlasmaとBorderline Factor Assay Control Plasma(George King Bio-Medical、Inc.製)である。
被検検体のWaveNor0、1、2から抽出した特徴量を、この3つの2次元マップに適用して、各マップにおける被検検体の所属確率(どの検体群に属するかの確率)を算出する。算出された所属確率に従って、被検検体を検別推定する。例えば、最も高かった所属確率の検体群として検別推定しても良いし、各マップの所属確率を平均して最も高かった所属確率の検体群として検別推定しても良いし、各マップの所属確率を加重平均して、最も高かった所属確率の検体群として検別推定しても良い。
被検検体の検別推定結果の表示例を図7及び図8に示す。図7は、既知検体の特徴量から作成した2次元マップにおいて被検検体の特徴量がどこにプロットされたかの一例を示した図である。図8は、被検検体のWaveNor0、1、2(図面上ではWave0、Wave1×2、Wave2と表記している)と、FVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、LA陽性検体群、正常検体群、及び不明の所属確率を示すインジケータと、検別推定結果とを示した図である。また、図9に分析部130と制御用コンピュータ120と通信インターフェース124の関係と表示部118cへの被検検体の結果の表示の例を示す。表示部118cには、結果を表示したい被検検体の検体番号(S_No.)及び2次元マップを選択する欄が表示される。表示部118cには、選択された検体番号の血液凝固時間、検別推定の結果、血液凝固因子活性の推定結果が表示されると良い。血液凝固因子活性の推定結果は、必ずしも表示する必要はないが、あるとなお良い。例えば、血液凝固第VIII因子欠乏とは、血液凝固第VIII因子の活性値が1%未満の状態、血液凝固第IX因子欠乏とは、血液凝固第IX因子の活性値が1%未満の状態である。図9では、画面の左下側に、選択されたマップとそのマップ内における被検検体の特徴量プロットとを示している。このような表示をすることにより、被検検体の血液凝固時間の延長原因が何であるかを視認性高く直感的に表現することができる。一方で、延長原因を定量的に示すことも重要であり、図9では「検別推定結果」として「血友病A(確率:95%)」と表示している。この他にも、図9の画面の右下側に示したように、選択された検体番号の検体における波形と所属確率の詳細(例えば、図8の内容)を表示すると良く、波形を見える化し、所属確率の詳細を表示したインジケータを示すと良い。
なお、実施例1において、適宜平滑化処理などの前処理を、例えばWaveSrc0の読み込み(図3B-S301b)の後、及び/又はWaveSrc1の生成(図3B-S302b)の後に実施しても良い。前処理(WaveSrc0のノイズを除去する第1のフィルタ処理、及びWaveSrc1のノイズを除去する第2のフィルタ処理)は、各波形に対してノイズ低減を目的としたフィルタ処理を意味する。この処理工程は、必ずしも必要ではない。ただし、より精度よく波形フィッティングするためには、波形フィッティングの前に実施することが望ましい。フィルタ処理の具体例としては、N点移動平均処理(Nは正の整数且つ奇数、3≦N≦測定点数)や一定区間の最小値の選択などによる平滑化処理がある。また、血液凝固時間の値のバリエーションに対して、本来の波形形状を損失しないように工夫し、数式2によるフィッティングパラメータの反応時定数を用いたT1点移動平均としてもよい。このとき、例えば、T1の値の小数点一桁を四捨五入して整数にし、偶数の場合は1を足して、あるいは1を減じて奇数にして使用すると良い。
(検体検別プログラムの実行結果の例)
検体検別プログラムにおいて被検検体を検別推定した結果、FVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、LA陽性検体群をそれぞれ85.7%(=12/14*100%)、100%(=9/9*100%)、66.7%(=4/6*100%)で検別できた。全体としては86%(=25/29*100%)の確率となる。正常検体は100%(=10/10*100%)検別でき、正常検体をFVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、LA陽性検体群に誤判定しないことを確認した。使用した被検検体は、前記した市販品のロット違いの製品である。
(実施例1の効果)
図10にWaveSrc1とWave1の例を示す。WaveSrc1の波形はノイズを含んでいることが見てとれる。ノイズを除去する手法として、平滑化処理などの前処理が公開されているが、過剰な処理では波形形状の損失に繋がるといった課題があり、不十分な処理では、ある特徴を数値として抽出する際に複数値存在して一意に定まらない、といった課題がある。凝固波形に内在する特徴を数値として抽出する際に複数値存在して一意に定まらないというのは、例えば、図10の2つの峰のうち、左側の峰の最大値を抽出したい場合に、ノイズを含む生データでは異なる時間で最大値が複数点存在し、一点に定まらない、という意味である。波形フィッティングを実施して特徴量を抽出するという手法は、ノイズを含む観測波形から例えばRMS誤差が最小になるように波形モデルパラメータを決定した後、ノイズを含まないフィッティング波形から凝固波形に内在する特徴を数値化するという工程により、このような課題を解決する。
また、血液凝固時間の延長原因は、抽出した特徴量を用いて推定される。具体的には、血液凝固時間の延長原因が既知である検体を用いて特徴量を抽出しておき、この特徴量をプロットした2次元マップにおいて、検体群ごとの特徴量集団(クラスタ)に確率密度分布を持たせておく。被検検体の特徴量をこの2次元マップに適用して被検検体の所属確率(どの検体群に属するかの確率)を算出し、所属確率に従って被検検体の血液凝固時間の延長原因を視認性高く直感的な推定が可能となる。
本開示では、フィッティングモデルを媒介として凝固波形に内在する特徴を数値として抽出する点、反応定数に基づくNRC法で規格化処理をすることにより、血液凝固時間の延長原因ごとの特徴を顕在化する点、において前述の従来技術の課題を解決する新規な手法を提示するものである。
ここで、図3Aに比較例に係る検体検別フローの例を示す。比較例に係る検体検別フローの例(図3A)では、はじめに凝固反応計測により取得した凝固波形データを読み込む(図3A-S301a)。次に、平滑化処理などの前処理が実施される(図3A-S302a)。次に、規格化処理(補正処理と表現される場合もある)が実施される(図3A-S303a)。規格化処理は光量軸のみに対して実施されるものである。次に、波形データの時間微分(単に微分と表現される場合もある)又は更なる時間微分を算出して凝固速度又は凝固加速度に関する波形が算出される(図3A-S304a)。最後に、波形パラメータを特徴量として抽出し(図3A-S305a)、例えば、血液凝固時間の延長原因が既知である検体の特徴量と被検検体の特徴量の相関から被検検体の検別推定が実施される。このとき、前処理や光量軸の規格化処理は必ずしも必要ではなく、フローをスキップしても良いとされている。また、フローには図示されていないが、凝固速度又は凝固加速度に関する波形の光量変化率を表す軸を規格化する場合もあり、各波形の最大値を100%とした規格化が実施される場合が開示されている。
これに対して、本開示では、波形フィッティングを実施する点、時間軸と光量軸の両方を規格化する点、抽出した特徴量から視認性高く直感的な検別推定を可能とする点が、比較例と大きく異なる。実施例1に係る検体検別フローの例(図3B)では、はじめに凝固反応計測により取得した凝固波形(WaveSrc0)データを読み込む(図3B-S301b)。次に、WaveSrc0の前後差分処理によりWaveSrc1を生成する(図3B-S302b)。次に、WaveSrc0の波形フィッティングによりWave0を生成し(図3B-S303b)、WaveSrc1の波形フィッティングによりWave1を生成する(図3B-S304b)。次に、Wave1の前後差分処理によりWave2を生成する(図3B-S305b)。本開示におけるWaveSrc1又はWave1は、比較例における凝固速度に関する波形に対応するものであり、Wave2は比較例における凝固加速度に関する波形に対応するものである。次に、Wave0、1、2をNRC法に基づいて規格化する(図3B-S306b)。本開示におけるNRC法に基づく規格化とは、反応定数に基づく規格化であり、時間軸と光量軸の両方の規格化を意味している。比較例で開示されている様に、光量軸を規格化する際に凝固波形、凝固速度又は凝固加速度に関する波形をそれぞれの波形の最大値で規格化するのではなく、本開示ではWave0、1、2に関連性を持たせた規格化を実施する。最後に、規格化波形から特徴量を抽出し(図3B-S307b)、血液凝固時間の延長原因が既知である検体から抽出した特徴量を用いて作成した確率密度分布を有する2次元マップに被検検体の特徴量を適用し、被検検体の検別推定が実施される。本開示においても、適宜平滑化処理などの前処理を、例えばWaveSrc0の読み込み(図3B-S301b)の後、及び/又はWaveSrc1の生成(図3B-S302b)の後に実施しても良い。
本開示の主たる進歩性は、WaveSrc0のフィッティングモデルを用いて計測した反応定数により時間軸方向の規格化を実施するとともに、特許文献1~4及び非特許文献1で開示されている凝固波形の時間微分(単に微分と記述されている)に代わって、反応定数に含まれる時定数を用いた差分(以下、反応時定数差分と呼ぶ)を導入することにより、血液凝固時間の長短で表現される症状の重症度の影響を低減した血液凝固時間の延長原因の推定が可能となる。
[実施例2]
実施例2では、ニューラルネットワークを用いた凝固波形の検別(発明の同一性の観点から、WaveSrc0を用いた実施例のみに限定)について説明する。
ここでは、本開示の時間軸の規格化法に基づいて、凝固波形データを入力とするニューラルネットワークによる血液凝固時間の延長原因の推定方法に関する実施例を示す。前述のように、凝固波形データを直接用いたニューラルネットワークによる血液凝固時間の延長原因の推定は、それを当該分野に係る技術者が容易に再現可能な技術セットとして開示されていないため、以下の3点の開示が本実施例の骨子となる。
(1)計測された凝固波形が可変長データであるため、ニューラルネットワークに適合する前処理技術の開示すること。
(2)ニューラルネットワークによる凝固波形のクラスタリングが実用的であることを証明するために、検別精度>90%を実証すること。
(3)上のニューラルネットワークを容易に再現し、種々の装置の計測データへの適用や治療中の患者の検体への適用などの拡張を容易にするため、ノード数、隠れ層の層数などの構成パラメータ、および学習条件に係るエポック数、バッチ数などのハイパー・パラメータを提示すること。
(1)前処理の開示
まず、ニューラルネットワークに適合する前処理技術について述べる。
図11A~Cは、市販検体の凝固波形(WaveSrc0)とニューラルネットワークに適合するように前処理をした凝固波形を示す実験結果である。図11Aは、市販検体のWaveSrc0である。ここではFVIII欠乏検体群(46波形)、FIX欠乏検体群(22波形)、LA陽性検体群(6波形)、正常検体群(29波形)からなる103波形を用いた。測定に用いた計測装置は、日立自動分析装置3500(株式会社日立ハイテク製)である。縦軸は散乱光強度に対応するA/D変換器による量子化データのカウント値となっている。
図11Bは、ニューラルネットワークの前処理として、画像や音声認識の分野で周知のゼロ・パディング法によりWaveSrc0を処理した波形を示す。ここでは、本開示の主たる進歩性である反応時定数と応答時間とを用いた時間軸の規格化の数式4に従って、時間軸の規格化を行い、-5τ~+10τの範囲を501点の等間隔データとして凝固波形を線形内挿でリサンプリングした。縦軸は、測定開始時の値がゼロ、散乱光強度の変化10000カウントを1とするように規格化したものである。この規格化は、ニューラルネットワークの活性化関数として一般的なシグモイドやハイパブリクタンジェントに適応させるためのものである。ここで用いた規格化は、散乱光強度の変化量を特徴量として用いるためのものであり、規格化は上記した数式5と異なる数式8である。
Figure 2024014684000009
また、時刻範囲-5τ~+10τに対して、計測が打ち切られてデータがないものに対しては、データ「0」で補完してデータ長を揃えている。
図11Cは、不足データの補完にフィッティングモデルを用いた場合の波形データを示す。数式2のフィッティングモデルにより得られたパラメータτ、T0、Y0、Y1を用いれば、計測が終了した後の時刻についても、連続的な数値データを得ることが容易である。この意味で、フィッティングモデルの導入は、ニューラルネットワークを用いた凝固波形の検別に親和性が高いと言える。これに準ずる簡易な方法として、計測された最終データ点の値をコピーして不足するデータを補完することもできる。図11Cは、図11Bに比較して計測終了点以降の散乱光強度を示すデータが滑らかになっている点が異なっている。ニューラルネットワークに用いる前処理としては、データ長が固定となる図11B、図11Cが適する。
(2)ニューラルネットワークの構成および実用性能の証明
次に、ニューラルネットワークの構成について述べる。
図12は、本開示のニューラルネットワークの構造を示す。図12は、ニューラルネットワークの検討に一般的なTensorFlowに含まれるKerasによるサマリーである。図に見られるように、本開示のニューラルネットワークは、隠れ層数=4、ノード数=512、全層密結合の構成により上に示した実用的な性能を提供することができる。学習のエポック数は10000、バッチサイズは32、活性化関数としてハイパブリクタンジェントを用いている。活性化関数に関しては、ハイパブリクタンジェントの代わりにシグモイドを用いても同等の検別性能が得られることは、当該分野に係る技術者ならば容易に理解できるはずである。
以下、ハイパー・パラメータとして、エポック数=10000、バッチサイズ=32で一定として説明をする。また、市販検体の凝固波形データは60%を学習用、20%をバリデーション用、20%をテスト用に分割して用い、損失関数としてはクロスエントロピーを用いる。データを3分割する理由を説明する。ニューラルネットワークを構成する重みなどのパラメータは、学習用データに対して自動更新されるため、隠れ層数、ノード数、ドロップアウト、エポック数、バッチサイズなどのハイパー・パラメータは、バリデーション用データのクロスエントロピーが最小になるように適宜選択をする。これらにより定められたニューラルネットワークの性能を客観的に評価するためには、上の手順で用いていないテストデータにより、クロスエントロピーや検別精度を評価することが必要である。
図13A~Cは、学習結果とドロップアウトとの関係を示す実験結果である。ここではノード数=256、隠れ層数=3の結果を示している。図13Aは、図11Bに示したゼロ・パディング法によりデータ長を揃えた凝固波形を用いた場合の結果である。過学習の抑止に効果のあるドロップアウト量を変化させても、テストデータの検別精度が90%を超えることがないことがわかる。
図13Bは、図11Cに示したフィッティングモデルによるデータ外挿補完により前処理をした凝固波形を用いた場合の結果である。図に見られるように、ドロップアウト量が0.4以下の条件で実用的な検別精度の目安である90%以上の精度が得られることがわかる。これにより、本開示の前処理方法と、ニューラルネットワークの構成を用いた凝固波形解析に基づく検体検別方法が、当該分野の技術者により容易に再現、拡張利用可能な検別方法であることを証明できた。
図13Cは、計測最終データ点のコピーによる補完でデータ長を揃えた凝固波形を用いた場合の結果である。上と同様に、ドロップアウト量が0.4以下の条件で検別精度が90%以上となることがわかる。本方法は、図13Bに示した補完法に比較して、演算量が少なくて済むという利点がある。検体データをさらに増加させた場合や計測中に何らかの理由によりノイズが混入するような場合には、フィッティングモデルによるデータ外挿補完の方が検別性能の安定性の面で優れると言える。以下、特に指定のない限り、前処理はフィッティングモデルによるデータ外挿補完によるものとする。
(3)ノード数、隠れ層の層数などの構成パラメータ、および学習条件に係るエポック数、バッチ数などのハイパー・パラメータの提示
次に、本開示の実施に好適なパラメータの範囲について述べる。
ニューラルネットワークの学習に好適なエポック数、ドロップアウトなどに関しては、上述の通りである。ここでは、ニューラルネットワークの構成を示す数値として、ノード数、および例について述べる。
図14A及びBは、本開示の前処理方法とニューラルネットワークを組み合わせた検別器が実用的な性能を示すハイパー・パラメータの範囲を示す実験結果である。図14Aは隠れ層の層数と検別精度の関係を示している。ここでは、ノード数を1024、ドロップアウトを0.25としている。図に見られるように、本開示の検別方法は隠れ層数が3以上で実用的な検別精度90%以上を得られることがわかる。
図14Bは、ノード数と検別精度の関係を示す実験結果である。ここでは、隠れ層数は3の場合を示している。図に見られるように、本開示の検別方法はノード数が16以上で実用的な検別精度90%以上を得られることがわかる。これらの結果から、本開示の検別方法は、隠れ層数が3以上、ノード数が16以上のニューラルネットワークを構成することにより、実用的な検別精度が得られることが示された。
図15は、本開示の前処理方法とニューラルネットワークによる検別方法が、十分な過学習の抑圧を実現していることを示す実験結果である。ここでは、ノード数と学習、バリデーション、およびテストサンプルに対するクロスエントロピーの関係を示している。ニューラルネットワークとして広く普及している音声や顔認識の分野では、クロスエントロピーはおおむね0.1~0.3程度である。これに対して、本開示の検別方法では、ノード数が16以上の場合に、クロスエントロピーが約0.1以下となっており、学習、バリデーション、およびテストの各サンプル群に対して、クロスエントロピーの値がほぼ同等であることがわかる。これは、本開示で示したニューラルネットワークの構成により過学習が十分に抑圧できていることを示す結果である。
以上のように、本開示によれば、検体から得られた凝固波形を、フィッティングモデルにより定量化された反応時定数と応答時間を用いて所定のデータ長になるように前処理を施した後、隠れ層数が3以上、ノード数が16以上のニューラルネットワークを用いて、実用的な検別精度で血液凝固時間の延長原因の推定を実現することができる。また、言うまでもないことであるが、ニューラルネットワークによる検別器は、出力として血液凝固時間の各延長原因クラスタへの所属確率を出力するため、ここに示したニューラルネットワークによる検別器でも、図8に例示した所属確率の表示に対応可能であることは自明である。
また、学習に用いる波形データにNRC法を応用することで、検別精度のさらなる向上を図ることが可能である。
(実施例2の効果)
可変データ長である凝固波形に対して好適な前処理を行うことによって、ニューラルネットワークにより実用的な精度で血液凝固時間の延長原因の推定を行うことができる。
[実施例3]
実施例3では、クロスミキシングテストへの適用について説明する。
以上、被検者から採取した検体を計測して得られる凝固波形を用いた血液凝固時間の延長原因の検別について述べた。一方、被検者から採取した検体の血液凝固時間が延長した場合に、当該検体と正常検体を所定の比率で混合した複数の混合血漿サンプルの血液凝固時間を測定し、当該検体の混合比率に対して血液凝固時間をプロットしたグラフ形状から血液凝固時間の延長原因をスクリーニングするクロスミキシングテストは、代表的な血液凝固時間の延長原因の検別方法として認知されている。本開示に従えば、複数の混合血漿サンプルから取得した一連の凝固波形から、血液凝固時間の混合比依存性だけでなく、一連の凝固波形に含まれる血液凝固時間の延長原因に起因する複数の特徴量と各延長原因への所属確率を得ることができるため、本開示の検体検別方法は、クロスミキシングテストで取得した凝固波形データに容易に適用可能であり、従来よりも検別精度の向上を図ることが期待される。従来法との親和性に重点を置く場合、例えば、血液凝固時間の混合比依存性を数値化し、同時に被検者から採取した検体の凝固波形から血液凝固第VIII因子欠乏、血液凝固第IX因子欠乏に着目した数値化を行い、2次元空間にマッピングする方法が好ましいと言える。
[実施例4]
実施例4では、反応定数に基づくNRC法で規格化処理によって得られる凝固波形の特徴量を拡充する。
すなわち、実施例4では、第1の規格化波形(WaveNor0)、第2の規格化波形(WaveNor1)、第3の規格化波形(WaveNor2)から抽出した特徴量だけでなく、それらに非線形演算を施して得られる波形データから特徴量を抽出し、予め準備した血液凝固時間の延長原因ごとの特徴量の分布情報と、抽出した特徴量とに基づいて、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する。
実施例4の被検検体の血液凝固時間の延長原因の推定方法は、
(A)被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形を取得すること、
(B)凝固波形に対する差分処理により第1の波形を取得すること、
(C)凝固波形に対するフィッティング処理により第1のフィッティング波形を取得すること、
(D)第1の波形に対するフィッティング処理により第2のフィッティング波形を取得すること、
(E)第2のフィッティング波形に対する前後差分処理により第3の波形を取得すること、
(F)第1のフィッティング波形、第2のフィッティング波形、及び第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形を取得すること、
(G)第1の規格化波形、第2の規格化波形、第3の規格化波形、およびそれらに非線形演算を施して得られる波形データのうちの少なくとも1つから特徴量を抽出すること、
(H)予め準備した血液凝固時間の延長原因ごとの特徴量の分布情報と、被検検体の凝固波形から抽出した特徴量とに基づいて、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定すること、
を有する。
以下、本発明では図の簡素化と技術の理解への一助として、FVIII欠乏検体群を「FVIII欠乏」、FIX欠乏検体群を「FIX欠乏」、LA陽性検体群を「LA」、正常検体群を「Normal」、とそれぞれ符号をつけて呼称する。ここでは、市販検体を用いて日立自動分析装置3500(株式会社日立ハイテク製)により計測した凝固波形を用いる。測定試薬はコアグピアAPTT-N(積水メディカル株式会社製)である。市販検体は、実施例1に記載の市販品の他に、正常検体として、コアグピア用コントロールP-N I(積水メディカル社製)とコアグトロールN(シスメックス社製)を用いた。
図16は、FVIII欠乏検体及びFIX欠乏検体の代表の各一検体のWaveSrc0を比較したものである。図16に見られるように、血液凝固時間は、両者ともに約100秒でほぼ同一である。一方で、FVIII欠乏検体は、FIX欠乏検体に比較して、反応の収束が遅い(散乱光強度が初期値から飽和値になるまでの時間が長い)様子がわかる。これは両者の欠乏因子が反応過程に及ぼす影響の違いを表している。この特徴は、例えば、数式2において、両者のT0がほぼ等しく、T1は、FIX欠乏<FVIII欠乏ということである。本開示では、vec0_xから(T0/T1)を減算した。
なお、凝固時間は、散乱光強度の初期値を0%、飽和値を100%としたときに、レベルが50%に到達するまでの時間として算出するが、血液凝固時間の算出方法はこの方法に限らない。例えば、50%以外の任意のレベルに到達するまで時間を血液凝固時間として算出してもよい。
図17Aは、凝固波形の一次微分の最大値とlog凝固時間との関係を示す実験結果である。この一次微分の最大値は、特許文献1に記載の指標|min1|に相当する。図17Aに示すように、2次関数で最小2乗フィッティングをしたR2値は、0.9323であった。すなわち、一次微分の最大値は、血液凝固時間と極めて高い相関があることがわかる。図中のFVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、及びLA陽性検体群(LA)の一次微分の最大値は、正常検体群を含めた指標の全体変化量に比較して、ごく小さい領域に分布していることがわかる。
図17Bは、実施例4のvec1_yとlog凝固時間との関係を示す実験結果である。2次関数で最小2乗フィッティングをしたR2値は、0.12であった。すなわち、実施例4のvec1_yは、血液凝固時間との相関がほぼないことがわかる。図中のFVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群、及びLA陽性検体群(LA)のvec1_yの分布は、正常検体群を含めた指標の全体変化量に比較して、大きな変化量となっている。しかも、各検体群は、vec1_yの値がFVIII欠乏>LA>FIX欠乏の関係となる独立した領域に分離されていることがわかる。
特許文献1に記載の別の指標|min2|に相当する、散乱光測定で得られる凝固波形の二次微分の最大値についても、結果は図17Aと同様であった。以上の実験事実から明らかなように、本開示のNRC法に基づく規格化によって、血液凝固時間から独立した波形を生成し、特徴量を抽出することにより、従来の指標に比較して血液凝固時間の延長原因の検別性能が向上することがわかる。
図18Aは、実施例4の市販検体の凝固波形をNRC法に基づいて規格化したWaveNor0について、各検体群の代表波形を示した実験結果である。波形の立ち上がり部において、各検体群の差異が大きいことがわかる。
図18Bは、実施例4の市販検体の凝固波形をNRC法に基づいて規格化したWaveNor1について、各検体群の代表波形を示した実験結果である。同様に、各検体群の波形の差異が明確に表れていることがわかる。
図18Cは、実施例4の市販検体の凝固波形をNRC法に基づいて規格化したWaveNor2について、各検体群の代表波形を示した実験結果である。同様に、各検体群の波形の差異が明確に表れていることがわかる。
図19は、実施例4のWaveNor2の周波数スペクトルを示す実験結果である。ここでは、各検体群の代表検体について、規格化時間区間-50T1~+50T1でi=0~2047のWaveNor2波形アレイを生成し、Fourier変換を実施した。各検体群の特徴量として、例えば、周波数FREQ1(HBの極小値、i=40)、FREQ2(HAの極大値、i=115)の振幅スペクトル値を加えることができる。
図20は、実施例4の特徴量セットの例をまとめたものである。一般的に、特徴量は、多い方が異なる観点での血液凝固時間の延長原因の鑑別が可能になるため好ましい。ただし、これには制限がある。例えば、特徴量α、βがあるとき、新たにγ=aα+bβ(a、bは定数)を特徴量に加えることは好ましくない。γは、αとβの線形結合であり、γを特徴量に加えても鑑別のための情報量が増えることはなく、異なる観点での血液凝固時間の延長原因の鑑別は実施できないからである。さらに、γの追加に起因して、計測ノイズや数値計算誤差の影響が増大して血液凝固時間の延長原因の鑑別の信頼性が損なわれることになる。一方で、累乗演算、微分演算、Fourier変換演算、ガロア変換演算、畳み込み演算などの非線形演算により、規格化波形(WaveNor0、WaveNor1、WaveNor2)を別の空間に写像(新たな情報に変換)して得られた波形データは、元データに対する数学的な直行性が保証されるため、有効な特徴量を加えるために簡便である。勿論、同じ波形データから複数の特徴量の候補をリストアップし、それらの全ての組み合わせの相互相関係数を求め、相互相関係数の大きなもの(追加される鑑別のための情報量が少なくなる)を排除するような手法で特徴量を選択することも可能である。以下、独立した別の空間に写像された波形データから得られる値を加える実施例を示す。図に示すように、ここでは7つの特徴量空間(#0~#6)からそれぞれ2つの量を特徴量として用いることができる。
(1)特徴量空間#0
実施例1のvec0_x-(T0/T1)、およびvec0_yである。
(2)特徴量空間#1
実施例1のvec1_x、およびvec1_yである。
(3)特徴量空間#2
実施例1のvec2_x、およびvec2_yである。
(4)特徴量空間#3
WaveNor2とFIX欠乏検体群の代表波形とのRMS誤差、およびWaveNor2と正常検体群の代表波形とのRMS誤差である。
(5)特徴量空間#4
WaveNor1とWaveNor2との交点のx座標、およびy座標である。
(6)特徴量空間#5
図19に示したWaveNor2の周波数スペクトルにおけるFREQ1の振幅スペクトル値、およびFREQ2の振幅スペクトル値である。
(7)特徴量空間#6
凝固時間をt50で表したとき、以下の数式9の重症度を表す実験式で定義した数値(Severity_Index)、およびWaveNor1と正常検体群の代表波形とのRMS誤差である。
なお、上記した代表波形は、平均波形を用いてもよい。平均波形とは、血液凝固因子の活性値が同程度の検体群から得られる波形をNRC法に基づいて規格化した後、規格化時間ごとの規格化レベルを平均することにより得られる波形である。
また、図20には、数値解析の実装の際に便利なように、各特徴量空間を図示する際に推奨するx、yレンジを付記してある。以下、実施例4では、これらのレンジに沿って図を開示する。
実施例4では、特徴量の鑑別処理として、各特徴量空間において、2次元混合ガウス分布に基づく確率密度分布に従う鑑別を実施する。基本となる混合ガウス分布については、本分野に関わる技術者ならば熟知しているので、ここでは説明はしない。実施例4では、鑑別結果の信頼性を向上するため、中心極限定理に沿って計測誤差の影響を物理的に内在可能な混合ガウス分布を基本として、各クラスタの確率密度分布にMahalanobis距離の上限を付与して用いた。Mahalanobis距離は、1次元ガウス分布の標準偏差と等価な量であり、慣例に従ってσを単位として呼称すると、上限は3~6σ程度が好適である。Mahalanobis距離の上限の付与によって、特徴量空間上での各クラスタ領域の基本形状は楕円となる。2つのクラスタが隣接する場合、境界はそれぞれへの所属確率が50%となる条件である。1つの検体のデータは、各特徴量空間において、1つの点として表示され、同時に各検体群のクラスタへの所属確率が算出される。実施例4の鑑別処理は、各特徴量空間のクラスタへの所属確率の平均化処理によって実施され、当該検体が最も高い確率で所属する検体群のクラスタおよび所属確率を鑑別結果として得る。本実施例では、各特徴量空間の検体群クラスタへの所属確率の平均化処理により、当該検体の各検体群クラスタへの所属確率を求めた例を示したが、例えば、各特徴量空間のクラスタへの所属確率を加重平均して、最も高かった所属確率の検体群として鑑別してもよいし、各特徴量空間のいずれかにおける検体群クラスタへの所属確率から鑑別してもよい。
実施例4で導入したMahalanobis距離の上限の付与とは、計測データの標準偏差に照らして言えば、例えば、検体群クラスタの中心から3σより離れたデータ点は、当該クラスタに所属させないという意味となる。一般の統計分布や、SVM、K-means、ディープニューラルネットワークなどによる鑑別では、空間を指定のクラスタ数に分割するため、新規または異常データは、いずれかの既知クラスタに分類される。
各クラスタのデータ生成は、FVIII欠乏検体(FVIII欠乏)、FIX欠乏検体(FIX欠乏)、LA陽性検体(LA)、正常検体(Normal)の凝固波形データを用いて7つの特徴量空間で抽出した各2個の特徴量データから、中心位置と高さおよび分散共分散行列からなる分布データを算出して各検体群のクラスタを形成することができる。
特徴量空間#6について付記する。図21は、実施例4の市販検体群を特徴量空間#6上に表示した実験結果である。図21に示すように、これはx軸特徴量として、数式9に示したSeverity_Indexを用いており、他の特徴量空間が4つの検体群のクラスタを鑑別するのに対して、正常検体とそれ以外の鑑別に特化したものである。準備した市販検体の中では、凝固時間42秒のBorderline Factor Assay Control Plasma(George King Bio-Medical、Inc.製)と、凝固時間46秒のLA陽性検体を、3σ以上のMahalanobis距離で分離して、ほぼ完ぺきに鑑別可能なことを確認している。Borderline Factor Assay Control PlasmaのFVIII活性値とFIX活性値は、添付されたアッセイ値によるとそれぞれ41%と55%であり、LA陽性検体群、凝固因子インヒビター陽性検体群、FVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群のいずれにも本検体を分類できないため、本実施例では便宜上、正常検体の範囲として取り扱うこととした。Mahalanobis距離の上限を変更することにより、正常範囲の調節が可能となる。
図22Aは、実施例4の市販検体群を特徴量空間上にプロットしたサマリを表す表示例である。図22Aでは、実施例4の実験に用いた市販検体群を7つの特徴量空間上にプロットするとともに、規格化によって得たWaveNor1と、鑑別結果の正解率サマリと、を表示した例である。ここではMahalanobis距離の上限を4σとした。正解率は100%(106/106*100%)であった。
図22Bは、実施例4の1つのFVIII欠乏検体の鑑別結果の表示例である。実施例4の特徴量空間のそれぞれにおいて、当該検体は1つの点として表され、各検体群のクラスタへの所属確率が提示される。この場合FVIII欠乏(83%)、LA(17%)、FIX欠乏(0%)、Normal(0%)である。
[実施例5]
実施例5では、実施例3に示した概要に沿って、クロスミキシングテストに本発明の技術を適用する場合の具体的な方法について記述する。被検者から取得した血液を分離して得られる血漿と正常血漿とを複数の混合率で混合した一連のサンプル検体のそれぞれについての第1の規格化波形(WaveNor0)、第2の規格化波形(WaveNor1)、第3の規格化波形(WaveNor2)から抽出した特徴量、及びそれらに非線形演算を施して得られる波形データから特徴量を抽出し、それらの特徴量のうちの少なくとも1つを用いて、被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する。
クロスミキシングテストに関して、特許文献1の段落0121に「LA陽性検体及び凝固因子インヒビター陽性検体のグラフパターンの変化は類似していた。よって、グラフパターンの変化による両者の鑑別は定性的評価にならざるを得ず、熟練者でない場合は判定が困難であることがわかる。」と記載されているように、正常血漿と披検血漿との混合比と凝固時間の関係から、LA陽性検体と凝固因子インヒビター陽性検体の鑑別は困難なことは周知の事実である。本実施例では、課題(1)の解決技術をクロスミキシングテストに適用し、LA陽性検体群、凝固因子インヒビター陽性検体群の鑑別だけでなく、FVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群をも含めて熟練者でなくとも血液凝固時間の延長原因の定量的な鑑別を可能にする方法を提供することを課題とする。
実施例5の被検検体の血液凝固時間の延長原因の推定方法は、
(A)被検者から取得した血液を分離して得られる血漿と正常血漿とを複数の混合率で混合した一連のサンプル検体を準備すること、
(B)一連のサンプル検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す一連の凝固波形を取得すること、
(C)一連の凝固波形のそれぞれに対する前後差分処理により一連の第1の波形を取得すること、
(D)一連の凝固波形のそれぞれに対するフィッティング処理により一連の第1のフィッティング波形を取得すること、
(E)一連の第1の波形のそれぞれに対するフィッティング処理により一連の第2のフィッティング波形を取得すること、
(F)一連の第2のフィッティング波形のそれぞれに対する前後差分処理により一連の第3の波形を取得すること、
(G)一連の第1のフィッティング波形、一連の第2のフィッティング波形、及び一連の第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、一連の第1の規格化波形、一連の第2の規格化波形、及び一連の第3の規格化波形を取得すること、
(H)一連の第1の規格化波形、一連の第2の規格化波形、一連の第3の規格化波形、およびそれらに非線形演算を施して得られる一連の波形データのうちの少なくとも1つから特徴量を抽出すること、
(I)一連の凝固波形から抽出した一連の特徴量のうちの少なくとも1つを用いて、サンプル検体の血液凝固時間の延長原因を推定すること、
を有する。
また、実施例1で説明した制御用コンピュータ120等のコンピュータシステムは、上記した(A)~(I)の各処理を実行する。
以下、本実施例では、図の簡素化と技術の理解への一助として、FVIII欠乏検体群を「FVIII欠乏」、FIX欠乏検体群を「FIX欠乏」、LA陽性検体群を「LA」、凝固因子インヒビター陽性検体群(ここでは、FVIII欠乏検体群に凝固因子インヒビターが添加された市販品)を「FVIII欠乏inh」とそれぞれ呼称する。実験には、市販品の検体を用いた。具体的には次の通りである。FVIII欠乏検体は、Factor VIII Deficient Plasma(Precision BioLogic、Inc.製)である。FIX欠乏検体は、Factor IX Deficient Plasma(Precision BioLogic、Inc.製)である。LA陽性検体は、Lupus Positive ControlとWeak Lupus Positive Control(Precision BioLogic、Inc.製)である。凝固因子インヒビター陽性検体は、Mild Factor VIII Inhibitor PlasmaとStrong Factor VIII Inhibitor Plasma(Affinity Biologicals、Inc.製)である。正常検体は、Pooled Normal Plasma(Precision BioLogic、Inc.製)である。ここで、FVIII欠乏検体、FIX欠乏検体、LA陽性検体、凝固因子インヒビター陽性検体をそれぞれ被検検体として使用した。本実施例では繰り返し測定のデータを1検体として扱うことにより、合計34個の被検検体(FVIII欠乏:7、FIX欠乏:7、LA:8、FVIII欠乏inh:12)としてみなした。計測装置は、日立自動分析装置3500(株式会社日立ハイテク製)であり、試薬はコアグピアAPTT-N(積水メディカル株式会社製)である。
本実施例では、被検検体と正常検体とを異なる比率(10:0、9:1、8:2、5:5、2:8、1:9、0:10)で混合した一連の血漿サンプルを準備し、サンプル調製後すぐ(即時型)、及びサンプルを37℃で2時間加温後(遅延型)、に凝固波形の計測を実施した。1つの被検検体について、14個(7系列の即時型と遅延型)の一連の凝固波形の計測とNRC法に基づき規格化した波形から抽出した特徴量の算出を実施した。以下、混合血漿サンプルを表すために、被検検体の7つの混合率(0.0、0.1、0.2、0.5、0.8、0.9、1.0)と測定条件(即時、または遅延)を用いる。
図23は、実施例5のクロスミキシングテストにおいて1つの被検検体に対して得られる一連の凝固時間データを2つの面積指標F、Fに次元圧縮する方法を示す模式図である。クロスミキシングテストにおいては、被検検体の混合率の変化に対して、血液凝固時間の変化が小さい条件が存在する。このとき、得られる血液凝固時間データは、混合条件や計測誤差の影響を強く受けてばらついてしまう。そこで、混合率=0.0の場合の2つの凝固時間(即時と遅延)の平均値をt、混合率=1.0の場合の2つの凝固時間(即時と遅延)の平均値をtとして、次式に基づいて、線形近似凝固時間との差分を面積指標F、Fとして数値化することにより、次元圧縮と平均化による測定結果のばらつき低減による指標化を実施する。次式において、nは整数(n=1、2)、Nは混合率の数(ここではN=7)、iは混合率を表すインデックス整数、tは凝固時間、t^iはtとtとから線形近似した凝固時間、Δxiはi番目の混合率xiに対応する積分区間でありxi-1、xi+1との各中間点を結んだ幅(左端の場合はxi-1=0.0、右端の場合はxi+1=1.0とする)である。本実施例で実施した実験条件では、混合率xi=(0.0、0.1、0.2、0.5、0.8、0.9、1.0)に対して、Δxi=(0.05、0.1、0.2、0.3、0.2、0.1、0.05)となる。
Figure 2024014684000011
上式に従って、即時測定の指標Fと遅延測定の指標Fとを算出すると、例えば、即時測定と遅延測定とで用いる混合率が異なっていても、-1≦F≦+1、-1≦F≦+1として、同一次元の指標を得ることができる。
図24は、実施例5の多次元混合ガウス分布を用いてクロスミキシングテストの検体の鑑別を実施した結果を示した図である。ここでは、元となる1つの検体と正常検体との混合率、即時と遅延の時間条件を変化させた一連の14の被検検体を調製し試験する場合について述べる。実施例1にて開示した方法は元となる1つの被検検体に対して、1つの凝固波形が紐づけられる場合であった。これを、元となる1つの被検検体に対して14の凝固波形が紐づけられる場合に拡張すると、特徴量空間あたり28個の特徴量が数値化されることになる。各特徴量空間において、実施例1に示した2次元混合ガウス分布から、28次元の混合ガウス分布に拡張して鑑別精度を定量化した。また、従来例(Conventional)として血液凝固時間の生データを14次元の混合ガウス分布で鑑別するとともに、上に示した次元圧縮した指標(F、F)を2次元の混合ガウス分布で鑑別して、結果をまとめた。図24に見られるように、鑑別精度は32.4%~88.2%の範囲にあり、血液凝固時間の生データを用いた場合の鑑別精度が最も低く、指標(F、F)を用いた場合の鑑別精度が最も高かった。両者は、本質的に同じものであるが、前述のように、ばらつきの影響を低減した(F、F)の方が、高い鑑別精度が得られることから、クロスミキシングテストにおいては、混合した一連の血漿サンプルの調製条件などが、実施例1にて開示した方法を拡張しただけでは対応しきれない難易度の高い計測である。
本実施例のNRC法に基づく規格化により得られた各特徴量空間(28次元)の指標を用いた場合、特徴量空間#3において、鑑別精度の最大値76.5%が得られた。これにも、計測ばらつきの影響が強く関与していると考える。
図25Aは、実施例5の指標(F、F)のクラスタ領域を示す図である。図に見られるように、FVIII欠乏クラスタとFIX欠乏クラスタは、ほとんど重なるように近接して形成されており、血液凝固因子欠乏群としては独立したクラスタとなるものの、FVIII因子とFIX因子のどちらが欠乏しているかという観点では、高精度の鑑別が困難であることがわかる。どの血液凝固因子が欠乏しているかを特定することは困難であるものの、因子欠乏型であるということを判断できるという点は、従来法であるクロスミキシングテストの特徴の通りである。また、LA陽性クラスタ(LA)は、凝固因子インヒビター陽性クラスタ(FVIII欠乏inh)の中央部に重なって形成されており、特許文献1の段落0121に「LA陽性検体及び凝固因子インヒビター陽性検体のグラフパターンの変化は類似していた。よって、グラフパターンの変化による両者の鑑別は定性的評価にならざるを得ず、熟練者でない場合は判定が困難であることがわかる。」との記載を再現する実験結果が得られた。
図25Bは、実施例5の指標(F、F)のクラスタ領域にデータ点を加えた実験結果を示した図である。図に見られるように、凝固因子インヒビター陽性クラスタ(FVIII欠乏inh)に関して、準備した市販検体は、インヒビター力価が「Mild」と「Strong」の2種類あり、LA陽性クラスタ(LA)を挟んで、左下と右上に分布していることがわかる。したがって、「Mild」と「Strong」の中間程度の患者の検体を想定すると、本方法ではFVIII欠乏inh≒LAとなり、鑑別は不可能と考えられる。
図26は、実施例5の指標(G、G)を説明する図である。上記したように、血液凝固時間の利用だけではFVIII欠乏クラスタとFIX欠乏クラスタとの分離が困難である。そこで、各特徴量空間におけるFVIII欠乏クラスタの中心とFIX欠乏クラスタの中心とを結ぶ線分の中点を原点として、被検検体100%のデータPまでの位置ベクトルから垂線をおろした長さを指標とすることにした。即時測定と遅延測定とに対応した指標(G、G)は、次式で定義される。
Figure 2024014684000012
上式において、FVIII欠乏クラスタの中心は+0.5、FIX欠乏クラスタの中心は-0.5となり、数値が大きいほどFVIII欠乏検体らしさが増すことを意味する。
図27Aは、実施例5の1つの検体から得られる一連の凝固波形から算出した指標Fと、同じ1つの検体を用いて特徴量空間#1のデータから数式11に従って算出した指標Gを組み合わせた即時(F、G)及び遅延(F、G)をプロットした実験結果を示した図(表示例)である。ここでは、1つの検体を2つの点(F、G)及び(F、G)とそれらを結ぶ直線として表している。外観は、ダイポールの模式図に近いものとなる。以下、これをダイポールと呼ぶ。図に見られるように、4つの検体群のクラスタ(FVIII欠乏、FIX欠乏、LA、FVIII欠乏inh)はほぼ、独立した領域に形成される。Mahalanobis距離の上限は6σとした。FVIII欠乏inhの領域が相対的に広いのは、前述のように、インヒビター力価が「Mild」と「Strong」の2種類あるためである。
図27Bは、実施例5の34個の検体から得られた指標(F、G)及び(F、G)をプロットした実験結果を示した図(表示例)である。ここで、指標Gは、特徴量空間#1に対するデータから数式11に従って算出されたものである。各検体を表すダイポールは、血液凝固時間の延長原因ごとに分離してプロットされることがわかる。鑑別精度は、97%であった。凝固因子インヒビター陽性群(FVIII欠乏inh)の「Mild」と「Strong」、LA陽性群(LA)、FVIII欠乏群、およびFIX欠乏群が空間的に分離してプロットされていることがわかる。本方法によって、従来の血液凝固時間だけを用いた鑑別に比較して、鑑別精度が大幅に向上することが確認された。
次に、クロスミキシングテストに本発明の技術を適用するのに好適な方法の具体例として、特徴量空間#0~#5を使って、クロスミキシングテストの結果を鑑別する方法を示す。
特徴量空間上において、1つの検体の即時測定と遅延測定とで得られるそれぞれ7点の点列を、被検検体の混合率の昇順または降順に結んだものを、ここでは軌道データと呼称する。図28Aは、実施例5のクロスミキシングテストによって得られた血液凝固時間の延長原因ごとの軌道データの平均形状を示した実験結果(表示例)である。図に見られるように、軌道データの形状は、血液凝固時間の延長原因ごとに特徴的であることがわかる。例えば、モホロジー(形状類似性)的にはFVIII欠乏群と凝固因子インヒビター陽性群(FVIII欠乏inh)とは近いが、凝固因子インヒビター陽性群(FVIII欠乏inh)は、即時(Wait=0h)と遅延(Wait=2h)の乖離が大きいことは、クロスミキシングテストの本質に照らして正しい結果と判断できる。
軌道データから血液凝固時間の延長原因を検別する方法の1つとして、CNN(Convolutional Neural Network)などの手書き文字認識技術を適用することが有効である。軌道データを構成する各点を直線やスプライン補完などを使って結び、画像データを生成して、手書き文字認識と同じ手法で弁別する方法である。この方法は、今回取り扱う4つの検体群のクラスタだけでなく、治療中の患者の状態(投薬などを含む)などに対応して、多くの血液凝固時間の延長原因を鑑別することができる能力がある。
軌道データから血液凝固時間の延長原因を検別する別の方法として、多次元混合ガウス分布を用いることができる。この結果は、図24に示したように、高い精度が得られないことがわかっている。主な理由は、前述の条件に従って、各検体群のクラスタを28次元の立体の内部として定義することになるが、この立体は、どの面でスライスしてもガウス分布でなければいけないという数学的な制限が、クロスミキシングテストの軌道データの鑑別に適応するには自由度が不足してしまうものと判断される。周知なように、多次元混合ガウス分布では、それが非退化でなければいけないが、2次元混合ガウス分布では制限が緩和される。したがって、28次元の軌道データを2次元x14空間に分離して、各空間で得られた検体群のクラスタへの所属確率の積を用いて、血液凝固時間の延長原因の鑑別を実施することにより、検体の混合率の変化に対する軌道データの連続性の制限に縛られることなく、血液凝固時間の延長原因の鑑別が実施できる。
クロスミキシングテストの各検体の軌道データを2次元x14空間に分離して鑑別を実施した実験結果(表示例)を、図28Bに示す。ここでは、個別の空間で求めた所属確率の積に基づいて、正規化した検体群のクラスタへの所属確率から、鑑別を実施し、4つの領域に分けて軌道データをプロットした。図では、特徴量空間#4の結果を例として示した。実施例1にて開示した方法を単純に拡張した結果である図24(鑑別精度=32.4%~88.2%)に比較して大幅な改善が実証され、鑑別精度は100%であった。
クロスミキシングテストに伴う検体の調製とインキュベーション作業といった煩雑さは、検査者の負担となる。また、検査のための追加採血は患者の負担の増加となる。したがって、クロスミキシングテストに用いる検体条件(混合率やインキュベーションの違いにより用意する検体の総数)は少ないほど好ましい。
図29は、実施例5の鑑別方法に必要な検体の総数を調べるための条件をまとめた図である。前述のように、今回は、1つの検体に対して14個(7系列の即時型と遅延型)の凝固波形を取得した。各行は、凝固波形の条件を示しており、ハッチングしている条件は、凝固波形解析に用いないことを示している。図中、「条件A」は、14個の全ての凝固波形を用いる場合であり、「条件B」は、ハッチングされた波形を除く7個の凝固波形を用いて鑑別を実施する条件を示している。
図30は、実施例5の鑑別に用いる凝固波形の個数と最悪確率(i番目の検体の正しい検体群クラスタへの所属確率をPtiとしたとき、全検体を通じたPtiの最小値)との関係を示す模式図である。縦軸の最悪確率が50%以上であれば鑑別エラーは発生せず、50%以下ならば鑑別エラーが発生すると考えることができる。ここでは、(1)指標F、Fを用いた鑑別(F Factor Method)、(2)指標F、G、F、Gの組み合わせを用いた鑑別(FG Factor Method)、(3)軌道データを2次元の組に分割する鑑別(Orbit Discrimination Method)の3つについて性能を比較した。(1)F Factor Methodに関しては、全条件で最悪確率が50%以下であり、必ず鑑別エラーが発生した。(2)FG Factor Methodでは、鑑別性能が向上し、5個以上の凝固波形を用いれば、最悪確率が50%以上となった。(3)Orbit Discrimination Methodは、最も優れた性能を有し、2個以上の凝固波形を用いれば、最悪確率が77%以上となった。
F Factor Methodは、被検検体と正常検体の混合条件と血液凝固時間の関係を前述の定義に従って指標化したものを用いる。したがって、その鑑別性能は従来のクロスミキシングテストの鑑別結果に準ずるものと考えることができる。
FG Factor Methodは、指標F、Fに加えて、本発明のNRC法で定量化した凝固波形の形状特徴を指標G、Gとして加味することにより、図に示すように鑑別性能の向上を図ったものである。また、処理するデータ量が1検体当たり4つと少なく、Orbit Discrimination Methodに比較して短時間で情報処理演算を実施することができる。したがって、FG Factor Methodは、検体の混合率と血液凝固時間の関係から血液凝固時間の延長原因を鑑別するという従来の手法と同時に用い、鑑別結果を判断する際の補助情報として利用するのに好適である。
Orbit Discrimination Methodは、本発明のNRC法により規格化して数値化された特徴量空間の指標のみにより、クロスミキシングテストの結果の鑑別を実施するものであり、高い鑑別性能を得ることができる。同時に、数式10による指標Fの算出がないため、Δxiを介した隣接データ点との関連から独立した情報演算が可能となり、任意の混合率の選択に対して柔軟に対応可能である。これらの利点により、Orbit Discrimination Methodは、機械学習技術によるクロスミキシングテストの全自動鑑別を実現する手段として好適である。
図31は、実施例5のクロスミキシングテストの鑑別結果を表す表示例である。分析部130と制御用コンピュータ120と通信インターフェース124との関係と、表示部118cへの被検検体の結果の表示は、図9の結果を踏襲している。
実施例5によれば、クロスミキシングテストで得られる一連の凝固波形から、LA陽性検体群、凝固因子インヒビター陽性検体群、FVIII欠乏検体群、FIX欠乏検体群の確率に基づく定量的な鑑別が可能になる。
[変形例]
なお、本開示は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、同一の構成または他の構成を追加・削除・置換することが可能である。
例えば、実施例1では、WaveNor0、1及び2の特徴量から血液凝固時間の延長原因を推定したが、本開示は、WaveNor0、1及び2の少なくとも2つの特徴量から血液凝固時間の延長原因を推定してもよい。例えば、WaveNor0のx成分及びy成分の特徴量から延長原因を推定してもよいし、WaveNor0のx成分及びWaveNor2のy成分の特徴量から延長原因を推定してもよい。
100:自動分析装置、 101:検体分注機構、 102:検体ディスク、 103:検体容器、 103a:検体、 104:反応容器、 105:検体用シリンジポンプ、 106:試薬分注機構、 107:試薬ディスク、 108:試薬容器、 108a:試薬、 109:試薬昇温機構、 110:試薬用シリンジポンプ、 111:反応容器ストック部、 112:反応容器搬送機構、 113:検出ユニット、 114:反応容器設置部、 115:光源、 116:検出部(光センサ)、 117:反応容器廃棄部、 118:操作用コンピュータ、 118a:マウス、 118b:キーボード、 118c:表示部、 119:記憶部、 120:制御用コンピュータ、 121:A/D変換器、 122:インキュベータ、 123:プリンタ、 124:通信インターフェース、 125:解析用コンピュータ、 130:分析部

Claims (29)

  1. 被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形を取得すること、
    前記凝固波形に対する前後差分処理により第1の波形を取得すること、
    前記凝固波形に対するフィッティング処理により第1のフィッティング波形を取得すること、
    前記第1の波形に対するフィッティング処理により第2のフィッティング波形を取得すること、
    前記第2のフィッティング波形に対する前後差分処理により第3の波形を取得すること、
    前記第1のフィッティング波形、前記第2のフィッティング波形、及び前記第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形を取得すること、
    前記第1の規格化波形、前記第2の規格化波形、及び前記第3の規格化波形の各々から特徴量を抽出すること、
    血液凝固時間の延長原因が既知である検体群から抽出した既知の特徴量と、前記第1の規格化波形、前記第2の規格化波形、及び前記第3の規格化波形の各々から抽出した前記特徴量と、に基づいて、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定すること、を有する
    ことを特徴とする血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  2. 前記規格化は、前記凝固波形に対するフィッティング処理によって得られる数値に基づく規格化である
    ことを特徴とする請求項1に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  3. 前記血液凝固時間の延長原因を推定することは、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因が、血液凝固第VIII因子欠乏、血液凝固第IX因子欠乏、又はループスアンチコアグラント(LA)陽性であると推定することを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  4. 前記血液凝固第VIII因子欠乏とは、前記血液凝固第VIII因子の活性値が1%未満の状態、前記血液凝固第IX因子欠乏とは、前記血液凝固第IX因子の活性値が1%未満の状態である
    ことを特徴とする請求項3に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  5. 前記凝固波形に対する前記フィッティング処理の前に、前記凝固波形のノイズを除去する第1のフィルタ処理を実行すること、及び
    前記第1の波形に対する前記フィッティング処理の前に、前記第1の波形のノイズを除去する第2のフィルタ処理を実行すること、をさらに有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  6. 前記第2のフィルタ処理において、前記凝固波形に対する前記フィッティング処理により得られたパラメータの一つである反応時定数を用いて移動平均処理を実施する
    ことを特徴とする請求項5に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  7. 推定した前記延長原因を表示部に表示すること、をさらに有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  8. 血液凝固時間の延長原因が既知である前記検体群から抽出した既知の特徴量と血液凝固時間の延長原因との関係を示すマップを作成すること、及び
    前記マップ、及び前記マップ上に前記被検検体の前記特徴量をプロットした情報を表示部に表示すること、をさらに有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  9. 推定した前記被検検体の血液凝固時間の延長原因に基づいた検別推定結果を表示部に表示すること、をさらに有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  10. 被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形を取得する自動分析装置と通信可能な情報処理装置であって、
    前記情報処理装置は、プロセッサとメモリとを有するコンピュータシステムを備え、
    前記コンピュータシステムは、
    前記自動分析装置から前記凝固波形を取得する処理、
    前記凝固波形に対する前後差分処理により第1の波形を取得する処理、
    前記凝固波形に対するフィッティング処理により第1のフィッティング波形を取得し、前記第1の波形に対するフィッティング処理により第2のフィッティング波形を取得する処理、
    前記第2のフィッティング波形に対する前後差分処理により第3の波形を取得する処理、
    前記第1のフィッティング波形、前記第2のフィッティング波形、及び前記第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形を取得する処理、
    前記第1の規格化波形、前記第2の規格化波形、及び前記第3の規格化波形の各々から特徴量を抽出する処理、及び
    血液凝固時間の延長原因が既知である検体群から抽出した既知の特徴量と、前記第1の規格化波形、前記第2の規格化波形、及び前記第3の規格化波形の各々から抽出した前記特徴量と、に基づいて、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する処理、を実行する
    ことを特徴とする情報処理装置。
  11. 前記コンピュータシステムは、
    前記凝固波形に対するフィッティング処理によって得られる数値に基づく規格化を実行する
    ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
  12. 前記血液凝固時間の延長原因の推定する処理は、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因が、血液凝固第VIII因子欠乏、血液凝固第IX因子欠乏、又はループスアンチコアグラント(LA)陽性であると推定する処理を含む
    ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
  13. 前記血液凝固第VIII因子欠乏とは、前記血液凝固第VIII因子の活性値が1%未満の状態、前記血液凝固第IX因子欠乏とは、前記血液凝固第IX因子の活性値が1%未満の状態である
    ことを特徴とする請求項12に記載の情報処理装置。
  14. 前記コンピュータシステムは、
    前記凝固波形に対する前記フィッティング処理の前に、前記凝固波形のノイズを除去する第1のフィルタ処理、及び
    前記第1の波形に対する前記フィッティング処理の前に、前記第1の波形のノイズを除去する第2のフィルタ処理、をさらに実行する
    ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
  15. 前記コンピュータシステムは、
    前記第2のフィルタ処理において、前記凝固波形に対する前記フィッティング処理により得られたパラメータの一つである反応時定数を用いて移動平均処理を実行する
    ことを特徴とする請求項14に記載の情報処理装置。
  16. 推定した前記延長原因を表示する表示部をさらに備える
    ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
  17. 前記コンピュータシステムは、
    血液凝固時間の延長原因が既知である前記検体群から抽出した既知の特徴量と血液凝固時間の延長原因との関係を示すマップを作成する処理、及び
    前記マップ、及び前記マップ上に前記被検検体の前記特徴量をプロットした情報を表示部に表示する処理、をさらに実行する
    ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
  18. 推定した前記被検検体の血液凝固時間の延長原因に基づいた検別推定結果を表示する表示部をさらに備える
    ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
  19. 被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形から前記被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する推定方法であって、
    前記凝固波形のデータのデータ長を揃えること、
    前記データ長が揃った前記凝固波形のデータをニューラルネットワークを用いて、複数の血液凝固時間の延長原因を推定すること、及び
    推定された前記血液凝固時間の延長原因の所属確率に基づいて、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因を提示すること、を有する
    ことを特徴とする血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  20. 前記推定方法における前記ニューラルネットワークは、
    ノード数16以上、及び隠れ層数3以上のニューラルネットワークである
    ことを特徴とする請求項19に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  21. 被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形を取得すること、
    前記凝固波形に対する前後差分処理により第1の波形を取得すること、
    前記凝固波形に対するフィッティング処理により第1のフィッティング波形を取得すること、
    前記第1の波形に対するフィッティング処理により第2のフィッティング波形を取得すること、
    前記第2のフィッティング波形に対する前後差分処理により第3の波形を取得すること、
    前記第1のフィッティング波形、前記第2のフィッティング波形、及び前記第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形を取得すること、
    前記第1の規格化波形、前記第2の規格化波形、前記第3の規格化波形、およびそれらに非線形演算を施して得られる波形データのうちの少なくとも1つから特徴量を抽出すること、
    予め準備した血液凝固時間の延長原因ごとの前記特徴量の分布情報と、前記被検検体の前記凝固波形から抽出した前記特徴量とに基づいて、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定すること、を有する
    ことを特徴とする血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  22. 被検者から取得した血液を分離して得られる血漿と正常血漿とを複数の混合率で混合した一連のサンプル検体を準備すること、
    前記一連のサンプル検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す一連の凝固波形を取得すること、
    前記一連の凝固波形のそれぞれに対する前後差分処理により一連の第1の波形を取得すること、
    前記一連の凝固波形のそれぞれに対するフィッティング処理により一連の第1のフィッティング波形を取得すること、
    前記一連の第1の波形のそれぞれに対するフィッティング処理により一連の第2のフィッティング波形を取得すること、
    前記一連の第2のフィッティング波形のそれぞれに対する前後差分処理により一連の第3の波形を取得すること、
    前記一連の第1のフィッティング波形、前記一連の第2のフィッティング波形、及び前記一連の第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、一連の第1の規格化波形、一連の第2の規格化波形、及び一連の第3の規格化波形を取得すること、
    前記一連の第1の規格化波形、前記一連の第2の規格化波形、前記一連の第3の規格化波形、およびそれらに非線形演算を施して得られる一連の波形データのうちの少なくとも1つから特徴量を抽出すること、及び
    前記一連の凝固波形から抽出した一連の前記特徴量のうちの少なくとも1つを用いて、前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因を推定すること、を有する
    ことを特徴とする血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  23. 前記一連の波形データから抽出される特徴量は、
    前記一連のサンプル検体のうち、被検者から取得した血液を分離して得られる血漿の混合率が100%のサンプル検体の即時測定の凝固波形から取得した複数の成分を含む特徴量を前記複数の成分を示す特徴量空間にプロットした位置から算出される指標Gと、前記一連のサンプル検体の即時測定の一連の凝固時間から算出される指標Fとの組み合わせ(F、G)、及び
    前記血漿の混合率が100%の前記サンプル検体の遅延測定の凝固波形から取得した前記複数の成分を含む特徴量を前記特徴量空間にプロットした位置から算出される指標Gと、前記一連のサンプル検体の遅延測定の一連の凝固時間から算出される指標Fとの組み合わせ(F、G)であって、
    前記組み合わせ(F、G)及び前記組み合わせ(F、G)を用いて、前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因を推定する
    ことを特徴とする請求項22に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  24. 前記一連の波形データから抽出される特徴量は、
    前記一連のサンプル検体の即時測定の一連の凝固波形から取得した複数の成分を含む一連の特徴量を前記複数の成分を示す特徴量空間にプロットし、前記特徴量空間の前記一連の特徴量を血漿の混合率の昇順または降順に結んだ第1の軌道データ、および
    前記一連のサンプル検体の遅延測定の一連の凝固波形から取得した前記複数の成分を含む一連の特徴量を前記特徴量空間にプロットし、前記特徴量空間の前記一連の特徴量を血漿の混合率の昇順または降順に結んだ第2の軌道データであって、
    前記第1の軌道データ及び前記第2の軌道データを用いて、前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因を推定する
    ことを特徴とする請求項22に記載の血液凝固時間の延長原因の推定方法。
  25. 被検者から取得した血液を分離して得られる血漿から成る被検検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す凝固波形を取得する自動分析装置と通信可能な情報処理装置であって、
    前記情報処理装置は、プロセッサとメモリとを有するコンピュータシステムを備え、
    前記コンピュータシステムは、
    前記自動分析装置から前記凝固波形を取得する処理、
    前記凝固波形に対する前後差分処理により第1の波形を取得する処理、
    前記凝固波形に対するフィッティング処理により第1のフィッティング波形を取得する処理、
    前記第1の波形に対するフィッティング処理により第2のフィッティング波形を取得する処理、
    前記第2のフィッティング波形に対する前後差分処理により第3の波形を取得する処理、
    前記第1のフィッティング波形、前記第2のフィッティング波形、及び前記第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、第1の規格化波形、第2の規格化波形、及び第3の規格化波形を取得する処理、
    前記第1の規格化波形、前記第2の規格化波形、前記第3の規格化波形、およびそれらに非線形演算を施して得られる波形データのうちの少なくとも1つから特徴量を抽出する処理、及び
    予め準備した血液凝固時間の延長原因ごとの前記特徴量の分布情報と、前記被検検体の前記凝固波形から抽出した前記特徴量とに基づいて、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因を推定する処理、を実行する
    ことを特徴とする情報処理装置。
  26. 前記予め準備した血液凝固時間の延長原因ごとの前記特徴量の分布情報と、前記被検検体の前記凝固波形から抽出した前記特徴量との関係を示すグラフを作成する処理、及び
    前記グラフと、前記被検検体の血液凝固時間の延長原因の推定結果と、を表示部に表示する処理、をさらに実行する
    ことを特徴とする請求項25に記載の情報処理装置。
  27. 被検者から取得した血液を分離して得られる血漿と正常血漿とを複数の混合率で混合した一連のサンプル検体を準備し、前記一連のサンプル検体と試薬とを混合して生成される反応液の凝固反応による経時的な光量の変化を示す一連の凝固波形を取得する自動分析装置と通信可能な情報処理装置であって、
    前記情報処理装置は、プロセッサとメモリとを有するコンピュータシステムを備え、
    前記コンピュータシステムは、
    前記自動分析装置から前記一連の凝固波形を取得する処理、
    前記一連の凝固波形のそれぞれに対する前後差分処理により一連の第1の波形を取得する処理、
    前記一連の凝固波形のそれぞれに対するフィッティング処理により一連の第1のフィッティング波形を取得する処理、
    前記一連の第1の波形のそれぞれに対するフィッティング処理により一連の第2のフィッティング波形を取得する処理、
    前記一連の第2のフィッティング波形のそれぞれに対する前後差分処理により一連の第3の波形を取得する処理、
    前記一連の第1のフィッティング波形、前記一連の第2のフィッティング波形、及び前記一連の第3の波形のそれぞれの光量軸及び時間軸を規格化することにより、一連の第1の規格化波形、一連の第2の規格化波形、及び一連の第3の規格化波形を取得する処理、
    前記一連の第1の規格化波形、前記一連の第2の規格化波形、前記一連の第3の規格化波形、およびそれらに非線形演算を施して得られる一連の波形データのうちの少なくとも1つから特徴量を抽出する処理、及び
    前記一連の凝固波形から抽出した一連の前記特徴量のうちの少なくとも1つを用いて、前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因を推定する処理、を実行する
    ことを特徴とする情報処理装置。
  28. 前記一連の波形データから抽出される特徴量は、
    前記一連のサンプル検体のうち、被検者から取得した血液を分離して得られる血漿の混合率が100%のサンプル検体の即時測定の凝固波形から取得した複数の成分を含む特徴量を前記複数の成分を示す特徴量空間にプロットした位置から算出される指標Gと、前記一連のサンプル検体の即時測定の一連の凝固時間から算出される指標Fとの組み合わせ(F、G)、及び
    前記血漿の混合率が100%の前記サンプル検体の遅延測定の凝固波形から取得した前記複数の成分を含む特徴量を前記特徴量空間にプロットした位置から算出される指標Gと、前記一連のサンプル検体の遅延測定の一連の凝固時間から算出される指標Fとの組み合わせ(F、G)であって、
    前記延長原因を推定する処理は、前記組み合わせ(F、G)及び前記組み合わせ(F、G)を用いて、前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因を推定する処理であり、
    前記指標Gと前記指標Fとの関係、及び前記指標Gと前記指標Fとの関係を示すグラフを作成する処理、及び、
    前記グラフ、及び前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因の推定結果を表示部に表示する処理、をさらに実行する
    ことを特徴とする請求項27に記載の情報処理装置。
  29. 前記一連の波形データから抽出される特徴量は、
    前記一連のサンプル検体の即時測定の一連の凝固波形から取得した複数の成分を含む一連の特徴量を前記複数の成分を示す特徴量空間にプロットし、前記特徴量空間の前記一連の特徴量を血漿の混合率の昇順または降順に結んだ第1の軌道データ、および
    前記一連のサンプル検体の遅延測定の一連の凝固波形から取得した前記複数の成分を含む一連の特徴量を前記特徴量空間にプロットし、前記特徴量空間の前記一連の特徴量を血漿の混合率の昇順または降順に結んだ第2の軌道データであって、
    前記延長原因を推定する処理は、前記第1の軌道データ及び前記第2の軌道データを用いて、前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因を推定する処理であり、
    前記第1の軌道データ及び前記第2の軌道データを示すグラフを作成する処理、及び
    前記グラフ、及び前記サンプル検体の血液凝固時間の延長原因の推定結果を表示部に表示する処理、をさらに実行する
    ことを特徴とする請求項27に記載の情報処理装置。
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