JP7235282B2 - 血液凝固機能の評価方法 - Google Patents
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Description
(1)各検体からの凝固反応速度曲線の測定データは、例えば、光学的な散乱光の強度に基づいている。そして、その最大凝固速度(Vmax)および最大凝固加速度(Amax)は、フィブリノゲン濃度の影響を受けた凝固反応曲線の高さ(透過率、散乱光量、粘度等の凝固量を示すパラメータ)を反映するため、測光データをそのままで凝固反応曲線データとして使用すると、検体間での凝固反応曲線の形状差異を定量的に比較する際の誤差要因となり正確な比較ができない。
(2)分析装置から得られる凝固反応速度曲線の測定データはデジタル値であるため、凝固反応曲線を微分して凝固反応速度曲線を算出する際や、凝固反応速度曲線を微分して凝固反応加速度曲線を算出する際には前後のデータを差し引いて求める差分法が使われる場合がある。この場合は元の曲線データの変化量が小さいことにより差分演算後の曲線データも小さくなり、所謂S/N比のS(シグナル)が小さくなることにより、N(ノイズ)の影響が大きくなって元の曲線データの形状情報が減少してしまうことがあった。そのため、ピーク頂点を決定するときに、複数の最大値が離れて存在するような場合での判定ばらつきの要因となっていた。
(3)凝固反応速度曲線のピーク形状が二峰性やプラトー状になった場合、曲線の最大値から求めた最大凝固速度(Vmax)、最大凝固速度時間(tVmax)を凝固機能の指標として使用した場合、凝固に関わる因子の寄与が反映されにくい場合がある。
以上のような課題があった。
前記反応液の凝固反応曲線データ(X軸を反応時間、Y軸を凝固反応量)を取得する工程(工程2)と、
前記凝固反応曲線のY軸の最大値を基に補正済み凝固反応曲線データを算出する工程(工程3)と、
前記補正済み凝固反応曲線データから凝固反応速度曲線データを算出する工程(工程4)と、
前記凝固反応速度曲線の所定高さでのピーク幅時間を算出する工程(工程5)と、
前記ピーク幅時間に基づく情報を用いて凝固関与成分の濃度または凝固異常を判定する工程(工程6)を含む、血液検体の凝固機能の評価方法。
[2]前記工程4において、前記凝固反応速度曲線データが、前記凝固反応波形データでの個々のデータの前後一定区間内の平均傾き値から成ることを特徴とする[1]に記載の血液検体の凝固機能の評価方法。
<血液検体の凝固反応の測定方法>
本発明の血液検体の評価方法において、血液凝固因子に異常のある被験者に由来する血液検体と、凝固時間測定試薬とが混和されてなる測定試料に光を照射し、測定試料から光量に関する光学的情報を取得した。
反応状態のモニターは、波長660nmのLEDを光源とする光をキュベットに照射し、0.1秒間隔で90℃前方散乱光の光量を測光することによって行った。本実施例ではこれらの凝固反応測定工程を全自動血液凝固分析装置CP3000(積水メディカル株式会社製)で行ったが、測定試料の調製は用手法で行い、光学分析装置で測定を行うことも、あるいはその他の全自動分析装置を用いて行うこともできる。なお、これらの他の混合手法・測定手法を用いた場合にそれぞれの条件はそれぞれの手法に応じた量や手法を用いることになることは言うまでもない。血液検体と試薬との反応時間は、通常数十秒から5分以下である。温度条件は、通常30℃以上40℃以下であり、好ましくは35℃以上39℃以下である。
<演算対象域Sの設定方法>
演算対象域Sに関して、演算対象域Sは主に凝固反応速度曲線の低速度域での変動影響を除外するために設定され、5%~20%に設定される。
図3に示すように、Δtとは演算対象域Sによって定まり、最大凝固反応速度を100%としたときの反応速度がS%となる最小時間t1と最大時間t2との時間差である。別の表現では、凝固反応速度曲線での凝固速度がS%のときのピーク幅時間である。(凝固反応速度曲線は後述の区間内平均傾き曲線で与えられる)。図4にピーク幅(Δt)と、凝固VIII因子と凝固IX因子との濃度の相関関係を示した。図に示したように、Δtと凝固VIII因子濃度および凝固IX因子濃度とは高い相関関係を示す。したがって、これらから求めた検量線を基にして、患者検体のΔtを測定することによって患者検体に含まれる凝固VIII因子濃度または凝固IX因子濃度を算出することができる。そして、これらの濃度を基にして凝固因子異常の有無を評価することができる。
<凝固反応速度曲線データの算出処理方法>
凝固反応曲線A(n)から凝固反応速度曲線B(n)を得るための微分処理として、差分法が用いられる場合は、次式で計算されるのが一般的である。
(数1)
B(n)=A(n)-A(n-1)
凝固時間が顕著に遅くなる凝固異常検体の凝固反応曲線は正常検体と比べて弱い傾斜の上昇曲線となり、凝固反応速度曲線の形状も緩やかなプラトー状になる。このような場合には、凝固反応速度曲線の最大値付近においてもA(n)とA(n-1)の差が小さく、B(n)の値も小さくなるため数値演算上のノイズ(S/N比が悪化)影響を受け易いといった問題がある。
このような状況では凝固反応に起因する情報が埋もれてしまうことがある。この問題を解決するために、前述の実施例では、前記補正処理後の測光点Nにおいて前後の測光点データ(N-KからN+Kまでの2K+1個)を利用して一定の測光点数間での平均傾き値を測光点Nでの凝固反応速度とみなして凝固反応曲線を得た。この方法によって波形解析を行うことによってより詳細な情報を得ることができた。
上述の算出方法についてさらに詳述する。凝固因子異常検体の測定を行った場合、反応曲線が緩やかな曲線となり、差分法によってその一次微分曲線を算出すると、その変化量と測光のタイミングのために、一次微分曲線が離散的な値となり、反応に起因する情報が埋もれてしまうことがある。つまり、差分法による一次微分法を血液凝固反応曲線の波形解析のような、0.1秒ごとに測光を行うような系に適用すると、典型的には、あるn番目での一次微分値は、n-1との差分値を一次微分値としていた。この従来法によると凝固反応曲線の高さが低いとき(フィブリノゲン濃度が低いとき)においては、得られる一次微分曲線データが離散的な値となってしまう場合がある。本願のように凝固因子異常検体の測定値ではこれらの現象が多く発生する。一つの解決手段としては、測定タイミングを細かくし、測定感度を上げることが考えられるが、装置のコスト等の制限のためにこれによる解決は好ましくない。
例えば、測定点が(Xi,Yi)(i=1,2,3,・・・)の時、
(数2)
Σ(Yi-aXi-b)^2 (i=1,2,3・・・)
上式を偏微分して算出することができる。つまり、
(数3)
X:測光時間
Y:凝固波形曲線の高さ
n:データ数
分子=nΣXY-(ΣX)(ΣY)
分母=nΣ(X*X)-(ΣX)*(ΣX)
傾き=[nΣXY-(ΣX)(ΣY)] / [nΣXY-(ΣX)(ΣY)]
上式の各点のデータを代入し、区間内平均傾きaを算出することができる。
図6に本発明の評価手順のフロー図を示した。先ずS101で検出器から出力される測光量に応じたデジタル値の生データを取得する。取得した生データをS102で平滑化処理をして生データに含まれるノイズ成分を除去した凝固反応曲線データを作成する。必要により、予め定めてある方法により凝固時間Tcを求める。次にS103では凝固反応曲線高さの最大値を求めて最大値が100となるように補正処理済み凝固反応曲線データを算出する。そして、S104で補正済み凝固反応曲線の先頭から後方に向かって、予め設定した区間内の曲線データから最小二乗法による直線近似演算をして当該区間内の平均傾き値を順に計算して、凝固反応速度曲線データを算出する。次にS105で演算対象域Sを10%から90%まで10%間隔に変えてピーク幅時間を求める。その後S106で演算対象域S毎のピーク幅時間の結果を所定の判定値との比較、あるいは、既知の凝固異常検体から求めたピーク幅時間との比較、濃度既知検体から求めた検量線との比較によって凝固異常有無を評価する。そしてS107では評価結果と共に必要に応じてピーク幅時間を、測定結果として出力画面に表示させたり、ホストへ結果送信する。これらのステップは、コンピュータプログラムによって実施される。
Claims (2)
- 血漿と試薬を含む反応液を調製する工程(工程1)と、
前記反応液の凝固反応曲線データを取得する工程(工程2)と、
前記凝固反応曲線の凝固反応量の最大値を基に補正済み凝固反応曲線データを算出する工程(工程3)と、
前記補正済み凝固反応曲線データから凝固反応速度曲線データを算出する工程(工程4)と、
前記凝固反応速度曲線の所定高さでのピーク幅時間を算出する工程であって、該所定高さでのピーク幅時間が、該凝固反応速度曲線における、最大凝固反応速度を100%としたときに凝固反応速度がS%となる最小時間と最大時間との時間差で示される、工程(工程5)と、
前記ピーク幅時間に基づく情報を用いて凝固関与成分の濃度または凝固異常を判定する工程(工程6)を含む、血液検体の凝固機能の評価方法。 - 前記工程4において、前記凝固反応速度曲線データが、前記補正済み凝固反応曲線データでの個々のデータの前後一定区間内の平均傾き値から成ることを特徴とする請求項1に記載の血液検体の凝固機能の評価方法。
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