JP7325154B1 - レドックスフロー電池システム - Google Patents

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Abstract

電極の劣化を低減し、電解液の流れを均一にし、比較的高い液温において、高性能な運転を可能とするレドックスフロー電池システムを提供する。本発明の一態様は、少なくとも、イオン交換膜10と、イオン交換膜10を挟んだ両側に設けられた電極40と、電極40内部を電解液が循環するように流路35が設けられた枠体20と、電解液の循環手段30と、電極40と接するように枠体20の内部に設けられた双極板50を一単位のセルとして、該セルが1以上積層されてなるレドックスフロー電池システム100である。また、枠体20には、循環手段30から電解液が供給されるセル入口流路21と、セル入口流路21から供給された電解液が枠体20の幅方向に沿って流れる電極直前流路22と、電極直前流路22から枠体21内部の電極40へと電解液を供給する1以上の電極入口流路23と、電極40を通った電解液を枠体20の内部から該枠体20に設けられた流路へと排出する経路となる1以上の電極出口経路24と、1以上の電極出口経路24から送られた電解液を枠体20の幅方向に沿って流して集結させる電極直後流路25と、電極直後流路25から送られた電解液を循環手段30へと戻すセル出口流路26が形成されている。

Description

本発明は、レドックスフロー電池システムに関する。
大容量蓄電池としてレドックスフロー電池が知られている。レドックスフロー電池は、一般に電解液を隔てるイオン交換膜と、そのイオン交換膜の両側に設けられた電極材とを有し、この電極材上で酸化反応と還元反応を同時に進めることにより充放電を行うことができる。
レドックスフロー電池の性能を決める要因として電流密度があり、流せる電流密度はセル抵抗により決まる。セル抵抗は、双極板、電極材の電気抵抗、双極板と電極材との接触抵抗、電極表面での反応抵抗、電解液中でのプロトン移動抵抗、イオン交換膜中のプロトンイオン移動抵抗などのすべての要素の総合である。中でも電極表面での反応抵抗は特に複雑な動きをする。
高効率のレドックスフロー電池とするためには、電解液の流れを均一にし、フロー損失を小さくする必要がある。例えば、後述するように、双極板に流路を作成する方法がいくつか提案されている。双極板に流路を作る方法は反応する場所を狭い場所に設定でき、反応後のバナジウムイオンを速やかに取り出すという思想に一致している。しかしながら、双極板のカーボン材料として使っている人造黒鉛の板を加工すると非常にコストが高いものになってしまう。双極板の材料として人造黒鉛並みの導電率を持ち、しかもプレス成型で流路が作れる可塑性があるものが必要であり、このような材料は、研究報告はあるが市販はされていない。
特性を上げるために双極板に流路を作る研究報告は数多くあるが、特性を上げるために枠体(フレーム)に流路をつくる研究報告はほとんどない。シャント電流を減らすためや熱交換の目的で流路を長くとったりした例があるだけである。特性と直接ではないが少し関係がある数少ない例として、特許文献1には、セル内の部材に作用する正極電解液の圧力と負極電解液の圧力との圧力差を調整することができるセルフレームとして、セルフレームに備わる枠体は、正極電解液の流路となる正極電解液用流路と、負極電解液の流路となる負極電解液用流路とを有し、これら正極電解液用流路の構造と負極電解液用流路の構造とを異ならせることが記載されている。異ならせる構造としては、スリット長、断面形状、断面積などが挙げられている。
しかしながら、特許文献1では、正極電解液の圧力と負極電解液の圧力との圧力差を調整することから、このセルフレームはイオン交換膜を挟んだ表と裏の枠体の流路のスリット長、断面形状、断面積を異なったものにするとしているので、正極用と負極用とで枠体は別な構造になりイオン交換膜を挟んだ両面は対称ではなくなる。本発明では正極と負極にバナジウム液を送り込む枠体の構造は完全に同じであるが入口に一定の分岐を設け入口と出口で違いを出すことで特性を上げるものである。
また、レドックスフロー電池では、一例として、カーボン電極と、バナジウムイオン(V)を含む電解液が用いられる。電解液中ではVイオンの価数が変化するときに電子を電極に渡すが、その後速やかに価数が変化したVイオンが取り除かれる必要がある。そのためには液の流れが均一に一方向に一定の速度である必要がある。また、電極表面での電子の授受は一種の化学反応であるので、温度が高いほど速やかに進むため、電解液の温度が高いほど有利である。ところが従来のカーボン電極ではOH、COOHなどの官能基を介して反応が行われるので、電解液の液温が40℃を超えるとOH、COOH基の分解が起こり始め、反応性が落ちて劣化してしまう。
レドックスフロー電池では、バナジウム(V)の硫酸溶液におけるVイオンの価数変化に電気を蓄えるのであるが、そのバナジウム溶液の基本的な特性については非特許文献1に記載がある。この中で3価のバナジウムは温度が低いほど析出しやすく、5価のバナジウムは温度が高いほど析出しやすいこと、及び、3価のバナジウムは硫酸濃度が高いほど析出しやすいが、5価のバナジウムは硫酸濃度が高いほど析出しにくいと記載されている。したがって析出を防ぐために温度と硫酸濃度はおのずと限界が出てくるが、Vが一度析出すると容易には溶けないので5価のバナジウムの析出を抑えるのを最優先させるべきだとしている。そしてバナジウム溶液は40℃以下に保つべきと提案している。
一方で非特許文献2では、15℃から55℃まで温度を振って実験し、温度が上がるほどセル抵抗が下がり、セルの性能が上がることが示されている。したがって40℃以上で運転できるとセルの性能上は非常に有利であるが上記の2つの問題、すなわち、カーボン電極の劣化とバナジウム溶液の析出があるとされ、40℃以上でのレドックスフロー電池の運用は実用化されたことはなかった。
特開2013-80613号公報
Maria Skyllas-Kazacos et al., Vanadium Electrolyte Studies for the Vanadium Redox Battery-A Review, ChemSusChem 2016, 9, 1521-1543 C. Zhang et al., Effects of operating temperature on the performance of vanadium redox flow batteries, Applied Energy 155 (2015) 349-353
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、電極の劣化を低減し、電解液の流れを均一にし、比較的高い液温において、高性能な運転を可能とするレドックスフロー電池システムを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、少なくとも、イオン交換膜と、前記イオン交換膜を挟んだ両側に設けられた電極と、前記電極内部を電解液が循環するように流路が設けられた枠体と、前記電解液の循環手段と、前記電極と接するように前記枠体の内部に設けられた双極板を一単位のセルとして、該セルが1以上積層されてなり、前記枠体には、前記循環手段から前記電解液が供給されるセル入口流路と、前記セル入口流路から供給された電解液が前記枠体の幅方向に沿って流れる電極直前流路と、前記電極直前流路から前記枠体内部の電極へと前記電解液を供給する1以上の電極入口流路と、前記電極を通った前記電解液を前記枠体の内部から該枠体に設けられた流路へと排出する経路となる1以上の電極出口経路と、前記1以上の電極出口経路から送られた前記電解液を前記枠体の前記幅方向に沿って流して集結させる電極直後流路と、前記電極直後流路から送られた前記電解液を前記循環手段へと戻すセル出口流路が形成されていることを特徴とするレドックスフロー電池システムである。
このとき、本発明の一態様では、上記枠体に形成した流路において、以下の条件を満たすこととしてもよい。
(式1):前記セル入口流路の断面積>前記電極直前流路の断面積>前記電極入口流路の断面×入口流路の数
(式2):前記セル出口流路の断面積≧前記セル入口流路の断面積
(式3):前記電極直後流路の断面積≧前記電極直前流路の断面積
(式4):前記電極出口流路の断面積×出口流路の数≧前記電極入口流路の断面積×入口流路の数
また、本発明の一態様では、前記電解液はバナジウムを含有する硫酸溶液であり、前記電極は熱処理されたカーボンフェルトからなり、前記電解液の液温が40℃~80℃(「~」は、下限以上、上限以下を表す。以下同じ。)の範囲内となるように制御されるとしてもよい。
また、本発明の一態様では、前記電極は、カーボン繊維から作製されたフェルトを400~500℃での空気中での親水化熱処理の後に、800℃以上の温度で真空中あるいは不活性雰囲気で熱処理されたものであるとすることができる。
また、本発明の一態様では、前記真空中の真空到達度が0.05~0.5Paであるとしてもよい。
また、本発明の一態様では、前記イオン交換膜はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系の陽イオン交換膜であるとしてもよい。
また、本発明の他の態様は、少なくとも、イオン交換膜と、前記イオン交換膜を挟んだ両側に設けられた電極と、前記電極内部を電解液が循環するように流路が設けられた枠体と、前記電解液の循環手段と、前記電極と接するように前記枠体の内部に設けられた双極板を一単位のセルとして、該セルが1以上積層されてなり、前記電解液はバナジウムを含有する硫酸溶液であり、前記電極は熱処理されたカーボンフェルトからなり、前記電解液の液温が40℃~80℃の範囲内となるように制御されることを特徴とするレドックスフロー電池システムである。
本発明によれば、電極の劣化を低減し、電解液の流れを均一にし、比較的高い液温において、高性能な運転を可能とするレドックスフロー電池システムを提供することができる。
図1は、レドックスフロー電池の仕組みについて説明する概略図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るレドックスフロー電池システムの構成(3セル積層)を示す断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るレドックスフロー電池システムの構成(複数セル)を示す概略図である。 図4は、本発明の一態様における枠体を示す概略図である。 図5は、実施例1における充放電試験の結果の一例である。 図6は、実施例2における40℃での3サイクル目の充放電の結果を示した図である。
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることが可能である。
図1は、レドックスフロー電池の仕組みについて説明する概略図である。レドックスフロー電池(Redox Flow Battery)は二次電池の一種であり、電解液をセル内に循環させながらイオン交換膜を介した酸化還元反応を行うことによって充電と放電を行う電池である。電解液としてはバナジウムを含む硫酸溶液が用いられ、図1に示すように、充電時にはプラス極から電子が放出されるため、プラス極側では4価のバナジウム(V4+)は5価のバナジウム(V5+)に酸化され、マイナス極側では3価のバナジウム(V3+)が2価のバナジウム(V2+)に還元される。放電時には、充電時とは逆の酸化還元反応が進行する。
図2は、本発明の一実施形態に係るレドックスフロー電池システムの構成(3セル積層)を示す断面図である。本発明の一態様は、少なくとも、イオン交換膜10と、イオン交換膜10を挟んだ両側に設けられた電極40と、電極40内部を電解液が循環するように流路35が設けられた枠体20と、電解液の循環手段30(例えば、電解液のタンク31とポンプ32を有する)と、電極40と接するように枠体20の内部に設けられた双極板50(図2中の黒い部分)を一単位のセルとして、該セルが1以上積層されてなるレドックスフロー電池システム100である。
また、枠体20には、循環手段30から電解液が供給されるセル入口流路21と、セル入口流路21から供給された電解液が枠体20の幅方向に沿って流れる電極直前流路22と、電極直前流路22から枠体21内部の電極40へと電解液を供給する1以上の電極入口流路23と、電極40を通った電解液を枠体20の内部から該枠体20に設けられた流路へと排出する経路となる1以上の電極出口経路24と、1以上の電極出口経路24から送られた電解液を枠体20の幅方向に沿って流して集結させる電極直後流路25と、電極直後流路25から送られた電解液を循環手段30へと戻すセル出口流路26が形成されている(図4参照)。このような構成とすることで、電解液の流れを均一にすることができる。
あるいは、電解液はバナジウムを含有する硫酸溶液であり、電極は熱処理されたカーボンフェルトからなり、電解液の液温が40℃~80℃の範囲内となるように制御される。すなわち、後述するように従来は、40℃以下となるように冷却されることが多かったが、本発明では、このような冷却操作がほとんど不要であり、40℃~80℃の比較的高温の充放電温度でも好適に使用することが可能となるものである。以下、レドックスフロー電池システムの各構成について説明する。
<1.イオン交換膜>
レドックスフロー電池では、バナジウム溶液中のバナジウムイオンの価数の変化によって充放電を行うのであるが、電子の移動に伴う電荷中性の原理が成立するために電池の内部ではイオンが正極と負極の間を行き来しないとならない。それを保証しているのがプロトンを通すが電子は通さないイオン交換膜である。すなわち、イオン交換膜は、レドックスフロー電池が成立するための基本構成要素となるのでイオン交換膜の特性は電池としての基本性能を決める。
レドックスフロー電池のイオン交換膜には陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とがある。イオン交換膜は陽イオン交換膜の場合はH、陰イオン交換膜の場合はOHでどちらもプロトンを通すので原理的にはどちらでもよい。また陽イオン交換膜の場合はバナジウムイオンも少しではあるが通過させてしまうが、陰イオン交換膜であればバナジウムイオンは通過しないのでクーロン効率を高く維持するためには陰イオン交換膜の方が有利である。しかし一度組み込んだ交換膜は交換が非常に難しいのでセルスタックと同じ寿命が必要であり、一般にセルスタックに要求される寿命は10年以上である。
酸化還元雰囲気が周期的に加わる強酸性の中での使用であるので、現在までのところこの耐久性が保証された陰イオン交換膜は市販されていない。一般的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系の陽イオン交換膜が使用されている。本発明においては使用温度が高いのでイオン交換膜の劣化はさらに加速されるとおもわれるのでPTFE系の陽イオン交換膜が最適である。イオン交換膜であるからPTFEの骨格にスルフォン基を付与してプロトンの通路を作るわけであるが、そのスルフォン基の導入の仕方で数種類のPTFE系の陽イオン交換膜が利用されている。基本的には燃料電池用に使われているイオン交換膜と要求特性はほぼ同じであり類似のものが使用可能であり、薄ければ薄いほど抵抗が低くなり有利であるが、レドックスフロー電池においては構造上イオン交換膜でカーボンフェルトを押さえつけるのでカーボン電極の繊維が刺さってしまうという問題があり、あまり薄い膜を使うことができない。イオン交換膜の薄さは、30μm程度が限界であり、1kW以上の規模のスタックになると50μm程度が薄さの限界であると思われる。
<2.電極>
電極は、導電性があることが絶対条件であるが、強酸の水溶液中で酸化還元雰囲気で使用すること、負極では水素発生電位、正極では酸素発生電位が極力高い必要があることからカーボン(炭素)電極が好ましく用いられる。電解液の流動抵抗をできるだけ低くして反応性を上げるために比表面積が高い方が有利であり、直径6~12μmの炭素繊維を使ったカーボンフェルトやカーボンペーパーをつかうのが好ましい。また、炭素繊維はピッチ系のカーボン繊維が好ましい。カーボンフェルトは平坦な双極板との組み合わせ、カーボンペーパーは櫛型流路をもつ双極板との組み合わせで使われることが多い。この理由は双極板のところで詳しく説明する。
カーボンフェルトの熱処理については2015年に発表された、“Ki Jae Kim et al., A technology review of electrodes and reaction mechanisms in vanadium redox flow batteries, Journal of Materials Chemistry A, 2015, 3, 16913-16933”(文献1)に総括されている。そのなかの119件の論文のほとんどが炭素繊維の表面の親水化と比表面積の増大を目的としている。したがって、熱処理の温度範囲は400~500℃で空気中である。
最近になってその流れに少し変化が出てきた。ドイツのIgor Derrは、”Igor Derr et al., Degradation of all-vanadium redox flow batteries (VRFB) investigated by electrochemical impedance and X-ray photoelectron spectroscopy: Part 2 electrochemical degradation, Journal of Power Sources 325 (2016) 351-359”(文献2)、”Igor Derr et al., Electrochemical analysis of the performance loss in all vanadium redox flow batteries using different cut-off voltages, Electrochimica Acta 224 (2017) 9-16”(文献3)、”Igor Derr et al., Electroless chemical aging of carbon felt electrodes for the all-vanadium redox flow battery (VRFB) investigated by Electrochemical Impedance and X-ray Photoelectron Spectroscopy, Electrochimica Acta 246 (2017) 783-793”(文献4)によって長時間、比較的高い電流密度で充放電を繰り返すと負極のカーボンフェルトが劣化していくことを明らかにした。劣化の内容は表面のsp2結合が減少しsp3結合が増加するためであるとしている。カーボン繊維が導電性をもつのは黒鉛のなかのsp2結合の存在によるので、sp2結合が減少すると電気抵抗が高くなる。繊維全体としては大きな変化がなくても表面の導電率が下がるので繊維と繊維の接触点での抵抗が上がり、カーボンフェルト全体の抵抗が大きく上がってしまう。この劣化はバナジウム溶液の温度が高いほど早く進む。これを防ぐためには黒鉛化をより進めておく必要があるが、そうすると表面が撥水になってしまうので、反応性が落ちてしまい高温処理は研究の対象になってこなかった。
この点のトレードオフを解決するために発明者は鋭意研究を行い本発明に至った。カーボンが導電性を持つのはsp2結合が存在するからであり、すなわち黒鉛化が極力進んでいる方が導電性には有利である。ただし黒鉛化があまり進んでいると撥水になってしまい、水溶液中のバナジウムイオンが近づけないので反応性が落ちてしまう、また撥水になるとカーボンフェルト内を水溶液が通過するときの流動抵抗が増大して液の流れが阻害されるので結果としてセル抵抗も上がってしまう。上記の文献1が紹介しているように1200℃以上の温度で熱処理して一定の部分的な黒鉛化処理を施して導電性が高い炭素繊維を用いてカーボンフェルトをつくり、そのフェルトを400~500℃の温度で空気中で熱処理してOH基やCOOH基などの親水基を付与して表面を親水化したカーボンフェルトが用いられている。この一度親水化処理したフェルトを800℃以上の温度で真空中あるいはArなどの保護雰囲気で再度熱処理することで一定の親水性を残して黒鉛化を進めることにより劣化のないカーボン電極になることが分かった。Ar雰囲気を使うときもフェルト中の空気が残ってなかなか抜けないので一度真空にする必要がある。この時の真空度を制御することが重要である。真空度が高すぎると表面が完全に撥水になってしまってバナジウム電解液の流動抵抗が大きくなってしまう。真空度が低すぎると残っているO2やH2OとCが反応してカーボン繊維が消耗してしまう。そこで、到達真空度で0.01~1Paに制御する必要がある。より好ましくは0.05~0.5Paである。
<3.双極板>
双極板は、単セルの場合は集電板と一体化されて用いられる。2セル以上の場合は片面が正極、その反対面が負極となるので双極板と呼ばれる。本発明に係るレドックスフロー電池システムは図2、図3に示すように双極板でセルをつないでいくことができる(本発明の一態様では、双極板は枠体の内部に設けられるため図3では双極板は外部からは見えない。)。正極タンクから来た正極のバナジウム溶液(V4+、V5+)と負極のタンクから来た負極のバナジウム溶液(V2+、V3+)とが並列で各セルに入り、電気は双極板を伝わって直列に流れる。したがってイオン交換膜と双極板は両方とも電気を流すわけであるが、イオン交換膜はイオンを流すが電子は流さず、双極板は電子は流すがイオンは流さないことが重要である。双極板に液がしみ込んでイオン導電性を持つと電池として成立しなくなる。
ところで、”D.S. Aaron et al., Dramatic performance gains in vanadium redox flow batteries through modified cell architecture, Journal of Power Sources 206 (2012) 450-453”(文献5)、”Jacob Houser et al., Influence of architecture and material properties on vanadium redox flow battery performance, Journal of Power Sources 302 (2016) 369-377”(文献6)、”Jacob Houser et al., Architecture for improved mass transport and system performance in redox flow batteries, Journal of Power Sources 351 (2017) 96-105”(文献7)には、双極板に流路を作ると特性が上がると提案されている。例えば、文献6のFig.1に示されているような蛇型や櫛型の流路を双極板につけることによってバナジウム溶液の流動抵抗をあげずに反応性をあげることができると提案している。
しかしながら、文献5-7の手法では、流路の上にカーボンフェルトやカーボンペーパーがあるのでバナジウム溶液(電解液)の流れは複雑になる。また、結果の報告は相互に矛盾したものが多く、どのような流路を双極板に作るのがセル抵抗を下げるのに最も有利か明確な方向性は見えてきていない。本発明では反応後のイオンを速やかに取り除くことを主眼としているので双極板の形状は平坦のものを使用する。
双極板の材質も強酸性のなかで酸化還元作用がはたらくこと、負極でのH発生電位が極力高いこと、正極でのO発生電位が極力高いことの条件からカーボン材料が最適である。ただしバナジウム溶液が通過するとイオン導電性を持つことになるので多孔質のものは好ましくない。カーボン材料としては人造黒鉛の塊から切り出して形状をつくるのが最も一般的であるが、人造黒鉛は密度が1.7~1.9g/cmであり黒鉛の密度は2.2g/cmであるので空隙が14~23%程度あり、バナジウム溶液を通してしまう。一般には、双極板にはフェノール樹脂を含侵させた人造黒鉛を使う。人造黒鉛は3000℃で焼成して塊をつくり、そこから切り出すのでコストがかかる。そのほかに黒鉛の粉末を樹脂で固めたものも使用できる。ただし導電性を人造黒鉛と同等に得ようとすると黒鉛粉の含有量を80%以上にする必要があり、制作するのは容易ではない。双極板に流路を作ることになると黒鉛を加工することになりコストはさらに跳ね上がる。コストダウンのために樹脂で黒鉛板を固めた双極板にプレス加工で流路をつくる研究は非常に多い。
双極板に流路を作る方法は反応する場所を狭い場所に設定でき、反応後のバナジウムイオンを速やかに取り出すという思想に一致している。非常に魅力的であるが双極板の材料として人造黒鉛並みの導電率を持ち、しかもプレス成型で流路が作れる可塑性があるものが必要である。このような材料は、研究報告はあるが市販はされていない。
あるいは、黒鉛を発泡させてグラフェンをつくりそれをロール成形することで密度を上げた黒鉛シートを作ることができる。この黒鉛シートは導電性が人造黒鉛並みにあるがロール成形する関係で薄いシートしか作ることができない。双極板が平坦でいい場合はこの黒鉛シートも使うことができる。この黒鉛シートに5~10%バインダーをいれて強度をあげた黒鉛シートも利用されている。ただし薄いカーボン板を使うとそれを保持する枠体も薄くなるので枠体に流路を作るのが難しくなり、カーボン電極へのバナジウム液の供給を均一にするのが難しくなる。したがって本発明では人造黒鉛から切り出したカーボン板にフェノール含浸で空孔を埋めたものを使う。
<4.枠体>
枠体(フレーム)の基本的役割は双極板、カーボン電極、イオン交換膜を配置して固定して構造を維持することである。また、タンクから送られたバナジウム溶液を各セルに送り込む流路をフレームの外に配置したものとフレームに流路を作ったものがある。一つのセル面積が1mを超すような大きなセルならば流す液量も膨大になるので外部に太いパイプを配管した方がよいが、セル面積が500cm以下の小型のフレームの場合には配管が複雑になるし、セルの厚さも厚くなってしまうので、フレーム内に流路を作る方が有利である。本発明の主眼はセル面積が1mを超すような大きなものではなく500cm程度の小型セルであるのでフレーム内に流路をつくる。
双極板に流路を作る場合は上述した文献5、6、7だけでなく研究報告がたくさんあるが、枠体(フレーム)に作る流路についてはあまり研究報告がない。フレームに作る流路に関しては例えば、特開2017-41452号公報にあるように関心はシャント電流を低減することと放熱性をよくすることに主眼が置かれていて、セルスタックの性能に関係があるとは思われてこなかった。
発明者は、この流路の作り方でセル抵抗が大きく変わることを見出したので本発明に至った。本発明の一態様における枠体を示す概略図を図4に示す。バナジウム溶液がカーボン電極内を均一に流れるためには、カーボン電極内でバナジウム溶液の流速と流れの方向がすべて同じである必要がある。速度ベクトルに違いができると渦ができバナジウム溶液の対流が起きる。各セルへの入り口はどこか一つでありそこから直接カーボン電極にバナジウム溶液が入ると均一の流れを作ることができない。バナジウム溶液はまずカーボン電極の外で底辺に広がり同じ速度で全面的に導入される必要がある。また、カーボン電極に導入されるバナジウム溶液がどの場所でも同じ速度になるためには、導入口が全面に広がっていると入口に近い方が多く流れてしまう。したがって、導入口の数と面積を絞る必要がある。発明者は、後述の条件を満たすときにバナジウム溶液が均一にカーボン電極に導入されることを見出したので本発明に至った。
図4に示すように、枠体20には、循環手段30から電解液が供給されるセル入口流路21と、セル入口流路21から供給された電解液が枠体20の幅方向に沿って流れる電極直前流路22と、電極直前流路22から枠体21内部の電極40へと電解液を供給する1以上の電極入口流路23と、電極40を通った電解液を枠体20の内部から該枠体20に設けられた流路へと排出する経路となる1以上の電極出口経路24と、1以上の電極出口経路24から送られた電解液を枠体20の幅方向に沿って流して集結させる電極直後流路25と、電極直後流路25から送られた電解液を循環手段30へと戻すセル出口流路26が形成されている。なお、枠体20には、枠体20が正極液を流す場合は負極液の流路27、枠体20が負極液を流す場合には正極液の流路27が設けられる。正極液と負極液とが混ざりあわないようにそれぞれの流路はOリング、あるいはガスケットでシールする必要がある。Oリングやガスケットの材質は強酸性の水溶液に耐える必要があることからEPDMあるいはFKMのゴムが使われる。このようにしておけば枠体20は正極側の枠体と負極側の枠体で同じ構造の物を用いることができる。
このとき、本発明の一態様では、上記枠体20に形成した流路において、以下の条件を満たすことが好ましい。
(式1):セル入口流路21の断面積>電極直前流路の断面積22>電極入口流路23の断面×入口流路の数
(式2):セル出口流路26の断面積≧セル入口流路21の断面積
(式3):電極直後流路25の断面積≧電極直前流路22の断面積
(式4):電極出口流路26の断面積×出口流路の数≧電極入口流路23の断面積×入口流路の数
図4に例を示して説明する。カーボン電極への導入口は1×1.5mmであり、それが4つあるので合計の断面積は6mmである。また、そこへ至る流路は5×1.5mmで7.5mmである。また各セルの導入口の断面積はφ8として、4×4×3.14=50.24mmである。この流路であると50.24/7.5=6.70すなわち6セルまでつなぐことができる。
枠体(フレーム)の材質としては強酸及び酸化還元作用が働くのでポリエチレン、ポリプロプレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル、などの材料が使われる。本発明では40℃以上の高温で長時間使用を念頭においているのでPPE、PSSなどのエンジニアリンプラスチックが最適である。PPEは成形が難しいのでPS、PPと混ぜたmodified PPEが使用できる。樹脂材料は強度熱膨張率、弾性率などの調整のためにいわゆるタルクとよばれる滑剤が添加されている場合が多いが、電解液のところで述べるように最も嫌うコンタミネーションがSiであり、タルクなどの滑剤は基本的に多量のSiを含むので滑剤の添加は最低限が望ましい。できれば滑剤の入っていない材料が望ましい。フレームの樹脂材料に劣化がなければタルクが溶け出す危険はそれほど高いわけではなく、タルクが硫酸に溶けるかどうかは組成による。したがって、必ずしもこれらの材料が除外されるわけではない。
<5.電解液>
本発明はバナジウムの価数変化を使って電気をためるレドックスフロー電池を対象とする。バナジウムの最大の利点は正極と負極の両方が同じバナジウムであることである。イオン交換膜がほんの少しではあるがバナジウムイオンを通すので正極と負極のバランスが徐々にズレ、容量が低下するという現象は起こるがバナジウム溶液自体に劣化はない。すなわち正極と負極を混ぜて+3.5価に調整すれば元に戻る。電池をためる活材に劣化がなく永遠に使えるという点がバナジウムを使う最大の利点である。
問題となるのはどの程度まで不純物があっても電池として機能するのかがコストを決める重要な点となる。例えば、”Burch, Andrew William, Impurity Effects in All-Vanadium Redox Flow Batteries. Master's Thesis, University of Tennessee, 2015.”(文献8)では、純度の異なる3種類(99%, 99.9%, 99.99%)の試薬を用いて純度の影響を調べ、純度が悪いバナジウム液を使うと特性が悪いと報告している。また、特許文献(US7258947B2)によるとSiが最も除かなければならない元素で10ppm以下にする必要があると述べている。40ppm以下ならば初期特性に差はないが長期間使い続けると劣化が起こるとしている。またSiの量はバナジウム液を0.5μmのフィルターを通すことで減らすことができるとしている。以上のような事情で一般にはかなりの高純度のバナジウム液が使われておりコストを押し上げる要因になっている。特性に関する悪影響が確実に確認されているのはSiであり、SiはSiO4 4-の珪酸イオンで存在していて珪酸イオンは徐々に重合して一定の大きさの粒子になっていると思われる。したがってマイクロフィルターで取り除くことができる。その他の重金属イオン、アルカリ土類イオン、アルカリイオン、アンモニウムイオンはどの程度が限界かははっきりしない。NH4+イオンは特許文献(US7258947B2)によると20ppm以下にしなければならないとなっている。これは電池反応に影響するというより、イオン交換膜のイオン電導度に影響しているものと思われる。Siの濃度はV5+の析出挙動にも大きく影響している。Siは微粒子で存在しているのでこれが核となりV2O5が析出するためと思われる。本発明では40℃以上の高温運転を前提としているのでSi濃度が低いバナジウム溶液を使うことが重要であり、Siが10ppm以下の濃度のものを使う。バナジウム濃度とH2SO4濃度については適切な範囲が上記非特許文献1に整理されている。
本発明ではバナジウム濃度が1.2~1.7M、Total H2SO4が4~4.5Mを使用することが望ましい。これ以上濃度をあげると析出の危険が増すのと、バナジウム溶液の濃度が上がり流動抵抗があがるので特性の劣化が顕著となる。またこれ以上濃度を薄くすると一定の容量を得るためのバナジウム溶液の量が多くなり大きなタンクを必要とする。硫酸濃度についてもイオン導電性を上げるためにH濃度ができるだけ高いほうが良いのでH2SO4が高い方が有利であるが、硫酸濃度が4Mを超すとバナジウム溶液液の粘度が上昇してバナジウム溶液の流動抵抗が上がってしまうので、4.5Mより高い濃度は使いにくい。本発明では高温運転を考えているのでVの濃度は析出を避けるために低めに設定するがH2SO4濃度は4~4.5Mの範囲に維持する必要がある。
以下に示す実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではない。
まず、枠体に設けた流路の断面積を以下の実施例及び比較例のように変化させたときの影響を調べた。
(実施例1)
電極有効面積5×10cmのセルについて3セルを図2のように組み上げた。ポンプはIWAKI NRD-08ZTV24-N 2台、バナジウム溶液はLEシステム製1.7Mを両極に各500mLを用いた。ポンプは24V DCで運転し流量は250-300mL/minであった。ポンプの回転数は一定であったが充放電に従って若干流量が動く、また正極と負極とでも若干流量が変化する。これは価数の変化に従って密度と粘度が若干動くためと思われる。カーボンフェルトはSGL SIGRCELL GFD4.6 activatedを5×10cmに切断して用いた。イオン交換膜はChemours NafionNR212を用いた。フレームは硬質塩ビの板を機械加工で形状を削り出した。バナジウム溶液の流路はEPDMのOリングでシールした。
図4のような流路を枠体に作った中心に5×10cmの穴があり、そこに人造黒鉛にフェノール樹脂を含浸させた双極板が組み込まれ、双極板とイオン交換膜の間にカーボン電極が挿入される。枠体にある流路を通ってバナジウム溶液がカーボン電極に送り込まれる。流路の寸法は以下の通りである。
セル入口流路:φ8
カーボン電極直前流路:深さ1.5mm×幅5mm=7.5mm
カーボン電極入口流路:深さ1.0mm×幅1.5mm=1.5mm
セル出口流路:φ8
カーボン電極直後流路:深さ1.5mm×幅5mm=7.5mm
カーボン電極出口流路:深さ1.2mm×幅2mm=2.4mm
カーボン電極入口流路は4つ、カーボン電極出口流路は5つである。
したがって流路の断面積は以下の条件を満たしている。
セル入口流路の断面積>カーボン電極直前流路の断面積>カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
セル出口流路の断面積≧セル入口流路の断面積
カーボン電極直前流路の断面積≧カーボン電極直後流路の断面積
カーボン電極出口流路の断面積×出口流路の数≧カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
(比較例1)
比較例1では、
カーボン電極入口流路:深さ1.5mm×幅1.5mm=2.25mm
カーボン電極入口流路は5つ、カーボン電極出口流路は5つである。
と変更した以外は、実施例1とすべておなじ構成で流路の寸法を設定した。すなわち、比較例1では、
セル入口流路の断面積>カーボン電極直前流路の断面積>カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
の条件を満たさない。
(比較例2)
比較例2では、
カーボン電極直前流路:深さ1.0mm×幅5mm=5.0mm
と変更した以外は、実施例1とすべておなじ構成で流路の寸法を設定した。すなわち、比較例2では、
セル入口流路の断面積>カーボン電極直前流路の断面積>カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
の条件を満たさない。
(比較例3)
比較例3では、
カーボン電極入口流路は6つ、カーボン電極出口流路は5つである。
と変更した以外は、実施例1とすべておなじ構成で流路の寸法を設定した。すなわち、比較例3では、
セル入口流路の断面積>カーボン電極直前流路の断面積>カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
の条件を満たさない。
(比較例4)
比較例4では、
カーボン電極出口流路:深さ1.0mm×幅1.5mm=1.5mm
カーボン電極入口流路は4つ、カーボン電極出口流路は3つである。
と変更した以外は、実施例1とすべておなじ構成で流路の寸法を設定した。すなわち、比較例4では、
カーボン電極出口流路の断面積×出口流路の数≧カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
の条件を満たさない。
(比較例5)
比較例5では、
カーボン電極入口流路:深さ1.0mm×幅40mm=40mm
カーボン電極出口流路:深さ1.0mm×幅1.5mm=1.5mm
カーボン電極入口流路は1つ、カーボン電極出口流路は3つである。
と変更した以外は、実施例1とすべておなじ構成で流路の寸法を設定した。すなわち、比較例5では、
セル入口流路の断面積>カーボン電極直前流路の断面積>カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
の条件を満たさない。
実施例1、及び、比較例1~5の条件を表1にまとめた。
Figure 0007325154000001
[充放電試験]
室温において充電・放電試験を行った。実施例1の結果の一例を図5に示す。充電に使った直流電源は菊水電子製(PWR401L)、放電に使った電子負荷器は菊水電子製(PLZ205W)をもちいた。カットオフ電圧は充電時(4.8V(1.6V/cell))、放電時(2.4V(0.8V/cell))。この3回目の充放電曲線からセル抵抗を算出した。算出方法はカットオフ電圧に達した時間の中点の電圧を読み取り、充電曲線と放電曲線の中点電圧の差を電流密度で割って,その値を3で割って1cell当たりの電圧差を求め、さらに2分の1にした値である。
この様な方法で求めたセル抵抗の結果を表2に示す。
Figure 0007325154000002
したがって、以下の条件を全て満足している実施例1のときにセル抵抗が最も下がることがわかる。
セル入口流路の断面積>カーボン電極直前流路の断面積>カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
セル出口流路の断面積≧セル入口流路の断面積
カーボン電極直後流路の断面積≧カーボン電極直前流路の断面積
カーボン電極出口流路の断面積×出口流路の数≧カーボン電極入口流路の断面積×入口流路の数
(実施例2)
電極有効面積20×20cmのセルを用意し、20セル分を図2のように双極板を介して隣接させ、組み上げた。ポンプはIWAKI MDF-70RZ、バナジウム溶液はLEシステム製1.7Mを両極に各20Lを用いた。ポンプは50Hzで運転し、流量は9~10L/minであった。ポンプの回転数は一定であったが充放電に従って若干流量が動き、また正極と負極とでも若干流量が変化する。これは価数の変化に従って密度と粘度が若干動くためと思われる。
電極として、カーボンフェルトはSGL SIGRCELL GFD4.6 activatedを20×20cmに切断後、真空焼成炉(佐藤真空、横型内熱式VHF)に投入した。ロータリーポンプで真空排気し、真空度が0.08Paになったのを確認してから、Ar(アルゴンガス)を1L/minで流しながら15℃/分で昇温し、1000℃で30分熱処理した。その後、Ar中で冷却し200℃以下になってから取り出した。取り出すまでの時間は45分であった。また、イオン交換膜はChemours NafionNR212を用いた。フレーム(枠体)はmPPE(変性ポリフェニレンエーテル、旭化成Xyron500H)を板に加工したのちに機械加工で形状を作成した。バナジウム溶液の流路はEPDMのOリングでシールした。
(比較例6、7)
上記実施例において、市販のカーボンフェルト(SGL SIGRACELL GFD4.6 )を電極として挿入した(比較例6)。さらにカーボンフェルトを400℃、空気中で30分焼成した(SGL SIGRACELL GFD4.6activated)ものを挿入した(比較例7)。焼成前と焼成後の酸素分析をしたところ酸素量は1.5%と2.3%であり、OH、COOHなどの官能基が多くなっていることを確認した。そのほかは実施例2と同じ測定を行った
[充放電試験]
室温は25℃であった。電解液溶液を水浴に入れ水浴の温度を30、40、50、60℃として各温度で80A(200mA/cm)の一定電流で充放電を3サイクル行い、3サイクル目の充放電曲線を用いてセル抵抗を算出し初期特性とした。直流電源は菊水電子製(PWR2001L)、電子負荷器は菊水電子製(PLZ1205W+PLZ2405WB)を使用した。算出方法はカットオフ電圧(充電32V、1.60V/cell、放電16V、0.8V/cell)に達した時間の中点の電圧を読み取り、充電曲線と放電曲線の中点電圧の差を電流密度で割って、その値を20で割って1cell当たりの電圧差をもとめ、さらに2分の1にした値である。図6に40℃での3サイクル目の充放電の結果を示す。放電の時の平均出力は約25V×80A=2kWであり、この時のエネルギー効率は約80%であった。このような充放電結果からセル抵抗値を読み取った結果を表3に示す。30℃と50℃では連続して100回充放電したのちのセル抵抗値も測定した。100回程度だと一般に変化がないと言われており、事実比較例7では30℃では目立った劣化は確認できない。ところが50℃での比較例7では明確なセル抵抗の増加が確認された。念のために比較例7のセルスタックで100回充放電したのちセルスタックを分解し新品のSIGRCELL GFD4.6 activatedに交換したところ初期特性は元に戻った。
Figure 0007325154000003
比較例6は活性点が不足していて特性がよくない。比較例7は反応点としてOH、COOHなどの官能基を使っているので反応性が上がりよい特性を示している。温度が上がるにしたがって反応性が上がり、初期特性はセル抵抗値が小さくなっている。ここまでは本発明品よりもほんの少しであるがむしろ良い特性を示している。しかし50℃100回の充放電後の特性を見ると大きく劣化しており、このままどんどんセル抵抗が上がると思われる。レドックスフロー電池は最低でも10000回程度の充放電を保証しなければならないのでこのままでは使えない。比較例7において50℃100回の充放電でセル抵抗が大きく上昇したのは活性化熱処理によって追加した官能基がほぼ消滅しているためと思われる。本発明のカーボンフェルトを使った実施例は温度が上がるにしたがって反応性が上がって特性がよくなっていることがわかる。初期特性では比較例7と差がないが50℃での100回目でもほとんど劣化がない。40℃以上で運転すると優れた特性を得ることは周知のことであるが、実用上は不可能であった。本発明によりそれが可能になったことは明らかである。
なお、上記のように本発明の一実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、レドックスフロー電池システムの構成も本発明の一実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
10 イオン交換膜、20 枠体、21 セル入口流路、22 電極直前流路、23 電極入口流路、24 電極出口流路、25 電極直後流路、26 セル出口流路、27 流路、30 循環手段、31 電解液タンク、32 ポンプ、35 流路、40 電極、50 双極板、100 レドックスフロー電池システム

Claims (3)

  1. 少なくとも、
    イオン交換膜と、
    前記イオン交換膜を挟んだ両側に設けられた電極と、
    前記電極内部を電解液が循環するように流路が設けられた枠体と、
    前記電解液の循環手段と、
    前記電極と接するように前記枠体の内部に設けられた双極板
    を一単位のセルとして、該セルが1以上積層されてなり、
    前記枠体には、
    前記循環手段から前記電解液が供給されるセル入口流路と、
    前記セル入口流路から供給された電解液が前記枠体の幅方向に沿って流れる電極直前流路と、
    前記電極直前流路から前記枠体内部の電極へと前記電解液を供給する1以上の電極入口流路と、
    前記電極を通った前記電解液を前記枠体の内部から該枠体に設けられた流路へと排出する経路となる1以上の電極出口流路と、
    前記1以上の電極出口流路から送られた前記電解液を前記枠体の前記幅方向に沿って流して集結させる電極直後流路と、
    前記電極直後流路から送られた前記電解液を前記循環手段へと戻すセル出口流路
    が形成され、
    以下の条件を満たすことを特徴とするレドックスフロー電池システム。
    (式1):前記セル入口流路の断面積>前記電極直前流路の断面積>前記電極入口流路の断面×入口流路の数
    (式2):前記セル出口流路の断面積≧前記セル入口流路の断面積
    (式3):前記電極直後流路の断面積≧前記電極直前流路の断面積
    (式4):前記電極出口流路の断面積×出口流路の数≧前記電極入口流路の断面積×入口流路の数
  2. 前記電解液はバナジウムイオンを含有する硫酸溶液であり、
    前記電極は熱処理されたカーボンフェルトからなり、
    前記電解液の液温が40℃~80℃の範囲内となるように制御されることを特徴とする請求項にレドックスフロー電池システム。
  3. 前記イオン交換膜はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系の陽イオン交換膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレドックスフロー電池システム。
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