JP7321982B2 - ミラブル型シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム硬化物 - Google Patents

ミラブル型シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、ミラブル型シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム硬化物に関する。
一般的にシリコーンゴムは耐候性、耐久性、耐熱性、着色性に優れ、また生理的に不活性であるため、建築材料、電気電子部品、事務機器、自動車部品、医療器具など様々な分野で使用されている。
シリコーンゴムの原料として用いられる直鎖状オルガノポリシロキサンの製造方法としては、低分子量の環状又は直鎖状のオルガノポリシロキサンを、酸性又は塩基性の触媒を用いて、平衡化反応を利用して重合する方法が知られている。しかし、該重合法においては、シロキサン結合の生成と開裂が同時に起こる結果、得られる高分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンは低分子量の環状シロキサン(以下、低分子シロキサン)を多く含有したものになる。
現在の化学物質規制では、蓄積性をBCF(Bioconcentration Factor(生物濃縮係数))で評価することが一般的である。実際の環境下でデータを取る方が、自然界での蓄積性を正確に評価することが可能であるが、多くの化学物質を評価しなければならず、労力や費用の面から、BCFという実験室データが蓄積性の指標として用いられている。
BCFは、水中の魚に化学物質がどの程度蓄積するかを試験する方法であり、化学物質の濃度一定下で実験を実施する。そのため、難水溶性の物質や、揮発性が高い物質の蓄積性を評価することには不向きな方法である。四量体、五量体及び六量体の低分子シロキサン(D4-6)は、実際の環境下では蓄積性が低く有害性がほとんどないことが明らかになっているものの、BCFは高い値を示し、規制される状況となっている。
欧州では、D4-6はSVHC(Substances of Very High Concern(高懸念物質))に指定されている。日本でも十分なデータを有していたD5は監視化学物質とはならなかったが、データが不足しているD4及びD6は監視化学物質に指定された。その様な世界的な化学物質規制の潮流の中で、低分子シロキサンの低減が求められている。
特許文献1では、分子末端に少なくとも一つのヒドロキシ基をもつオルガノポリシロキサンに、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムから選択された水酸化物を添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、得られる生成物の重合度が低く、生ゴム状物質を得ることは難しい。
特許文献2では、分子鎖両末端にシラノール基を持つオルガノポリシロキサン及びトリオルガノシラノール等に2官能ジアルキルアミノシリル基を持つシランもしくはシロキサンを添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、中和時、取り除くことが困難なアミノ化合物が副生し、生成物に残存するため、副生するアミノ化合物由来の臭気が問題となる。
特許文献3では、分子両末端に水酸基を持つオルガノポリシロキサンに、特定の酸性化合物を添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、中和時、フッ素化合物が副生するため、生成物である直鎖状オルガノポリシロキサンの用途が制限されうるという問題がある。
特許文献4では、揮発性の低分子シロキサンの含有量が少ないシリコーンゴム組成物についての記載があるが、電気接点に対してのシロキサンによる接点障害が起こらない程度の低分子シロキサン量であり、また、有機過酸化物に限定されている。
ところで、シリコーンゴム組成物のうち、硬化する前の状態が天然ゴムや通常の合成ゴムの未加硫配合ゴムに類似していて、練りロール機あるいは密閉式の混合機などで可塑化及び混合することができるものは、例えばミラブル型シリコーンゴム組成物と呼ばれている。ミラブル型シリコーンゴム組成物の重要な特性の1つとして、ロール加工性が挙げられる。ロール加工性に優れている組成物ほど、例えば混練の際に、ロール等にへばりつきづらく、良好に混練することが可能である。作業性の観点から、ミラブル型シリコーンゴム組成物は、ロール加工性に優れていることが望まれる。
特許文献5では、重合度20以下の低分子シロキサン成分が少ないシリコーンゴム組成物を開示している。この組成物は、25℃における粘度が100~10,000cStであり、分子両末端にアルケニル基を持つオルガノポリシロキサンと、一分子中に2個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン中のSiH基とのヒドロシリル化反応によって鎖長延長されたポリマーを使用している。しかし、特許文献5には、組成物のロール加工性に関する記載はない。
特許第2857202号明細書 特許第2824953号明細書 特許第2838352号明細書 特開平6-136270号公報 特許第2632607号明細書
低分子シロキサンの留去方法について、オイル状の主成分中に低分子シロキサンが含まれる場合は、高温下減圧処理を行うことにより留去が可能だが、主成分が生ゴムのような高重合体に低分子シロキサンが含まれる場合は、該処理を長時間行う必要があるため、工業的には問題を有している。
また、先に述べたように、より優れたロール加工性を示すミラブル型シリコーンゴム組成物の開発が求められている。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、未硬化の状態でのロール加工性が良好であり、さらに、低分子シロキサン成分の含有量が低い硬化物を与えることができるミラブル型シリコーンゴム組成物、及びその硬化物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、ミラブル型シリコーンゴム組成物であって、
(A)下記(A-1)成分のアルケニル基と下記(A-2)成分とのヒドロシリル化反応によって鎖延長された、ケイ素原子結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンを含む成分 100質量部、
(A-1)下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が20,000~200,000cStであり、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノポリシロキサン、
Figure 0007321982000001
(但し、Rは炭素数2~6のアルケニル基、R、R、R及びRは炭素数1~10の、同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、aは500~1500である。)
(A-2)一分子中に2個のSiH基を有し、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B)BET法による比表面積が50m/g以上の補強性シリカ 10~100質量部、
(C)下記(C-1)成分と(C-2)成分との混合物、及び/又は下記(C-3)成分、
(C―1)オルガノアルコキシシラン 0.1~50質量部、
(C-2)水 (C-1)成分のアルコキシ基の0.5~10倍モル量、
(C-3)(C-1)成分と(C-2)成分との反応生成物 0.1~90質量部、
(D)下記(D-1)成分及び/又は下記(D-2)成分 0.1~10質量部
(D-1)アルケニル基含有オルガノシラン、
(D-2)アルケニル基含有オルガノシラザン、
(E)ケイ素原子に結合した下記式(2)又は(3)で表される置換アミノキシ基から選ばれる1種又は2種以上の基を1分子あたり平均2個以上有する窒素原子含有有機ケイ素化合物 0.001~1質量部、
Figure 0007321982000002
(式中、R及びRは互いに同一又は異種の1価炭化水素基である。Rは2価の有機基である。)
(F)SiH基を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基に対する(F)成分中のSiH基のモル比が0.5~10となる量、及び
(G)付加反応触媒 触媒量
を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物を提供する。
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物によれば、(A-1)成分、すなわち25℃における粘度が20,000~200,000cStであり、分子両末端にアルケニル基を持ち、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノポリシロキサンのアルケニル基と、(A-2)成分、すなわち一分子中に2個のSiH基を有し、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基とのヒドロシリル化反応によって鎖長延長されたオルガノポリシロキサンを含む(A)成分を使用することで、ミラブル型シリコーンゴム組成物とすることができる。また、この(A)成分に加えて、上記(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分及び(G)成分を所定量含むことにより、ロール加工性が改善され、さらに、低分子シロキサン成分の量が少ない硬化物(シリコーンゴム)を与えるミラブル型シリコーンゴム組成物とすることができる。つまり、本発明によれば、未硬化の状態でのロール加工性が良好であり、さらに、低分子シロキサン成分の含有量が低い硬化物を与えることができるミラブル型シリコーンゴム組成物を提供できる。
このように、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、世界的な化学物質規制の潮流の中で求められている、低分子シロキサンの量が低減されたシリコーンゴム硬化物を提供することができる。よって、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴム硬化物は、例えば、ケーキモールドなどのキッチン用品、水道周辺に使用されるパッキン、人工透析器などの医療器具、ヘルスケア用品などに安全に使用できる。
また、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、未硬化、例えば未加硫の状態でのロール加工性が良好なので、優れた作業性を実現することができる。
また、本発明では、ミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーンゴム硬化物を提供する。
本発明のシリコーンゴム硬化物は、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物であるため、世界的な化学物質規制の潮流の中で求められている、低分子シロキサン成分の含有量の低減を達成することができる。そのため、本発明のシリコーンゴム硬化物は、例えば、ケーキモールドなどのキッチン用品、水道周辺に使用されるパッキン、人工透析器などの医療器具、ヘルスケア用品などにおいて安全に使用できる。
例えば、前記硬化物中に含まれる重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるものとすることができる。
このような硬化物であれば、例えば上記用途においてより安全に使用することができる。
以上のように、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物であれば、未硬化状態でのロール加工性が良好であるので、より優れた作業性を実現できる。さらに、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物であれば、低分子シロキサンの量が少なく、例えば重合度10以下の低分子シロキサンの合計が500ppm以下である硬化物(シリコーンゴム)を与えることができる。このような硬化物は、例えばケーキモールドなどのキッチン用品、水道周辺に使用されるパッキン、人工透析器などの医療、ヘルスケア用品など、広範な用途において安全に使用することができる。
また、本発明のシリコーンゴム硬化物は、低分子シロキサンの量が少ないので、例えばケーキモールドなどのキッチン用品、水道周辺に使用されるパッキン、人工透析器などの医療器具、ヘルスケア用品など、広範な用途において安全に使用することができる。
上述のように、シリコーンゴムコンパウンド(未硬化物)のロール加工性が良好であり、さらに、低分子シロキサン成分の含有量が低い硬化物を与えることができるミラブル型シリコーンゴム組成物の開発が求められていた。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ミラブル型シリコーンゴム組成物において、25℃における粘度が20,000~200,000cStであり、分子両末端にアルケニル基を持ち、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノポリシロキサンである(A-1)成分のアルケニル基と、一分子中に2個のSiH基を有し、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである(A-2)成分中のSiH基とのヒドロシリル化反応によって鎖長延長されたポリマーを含む(A)成分を使用し、以下に詳細に説明する(B)~(G)成分を所定量併用することにより、低分子シロキサン成分の量が少なく、シリコーンゴムコンパウンド(未硬化物)のロール加工性が改善されることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、シリコーンゴムコンパウンド(未硬化物)のロール加工性が良好であり、さらに、重合度が10以下の低分子シロキサンが少ない硬化物(シリコーンゴム)を与えることができるミラブル型シリコーンゴム組成物、及びその硬化物を提供するものである。
即ち、本発明は、ミラブル型シリコーンゴム組成物であって、
(A)下記(A-1)成分のアルケニル基と下記(A-2)成分とのヒドロシリル化反応によって鎖延長された、ケイ素原子結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンを含む成分 100質量部、
(A-1)下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が20,000~200,000cStであり、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノポリシロキサン、
Figure 0007321982000003
(但し、Rは炭素数2~6のアルケニル基、R、R、R及びRは炭素数1~10の、同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、aは500~1500である。)
(A-2)一分子中に2個のSiH基を有し、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B)BET法による比表面積が50m/g以上の補強性シリカ 10~100質量部、
(C)下記(C-1)成分と(C-2)成分との混合物、及び/又は下記(C-3)成分、
(C―1)オルガノアルコキシシラン 0.1~50質量部、
(C-2)水 (C-1)成分のアルコキシ基の0.5~10倍モル量、
(C-3)(C-1)成分と(C-2)成分との反応生成物 0.1~90質量部、
(D)下記(D-1)成分及び/又は下記(D-2)成分 0.1~10質量部
(D-1)アルケニル基含有オルガノシラン、
(D-2)アルケニル基含有オルガノシラザン、
(E)ケイ素原子に結合した下記式(2)又は(3)で表される置換アミノキシ基から選ばれる1種又は2種以上の基を1分子あたり平均2個以上有する窒素原子含有有機ケイ素化合物 0.001~1質量部、
Figure 0007321982000004
(式中、R及びRは互いに同一又は異種の1価炭化水素基である。Rは2価の有機基である。)
(F)SiH基を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基に対する(F)成分中のSiH基のモル比が0.5~10となる量、及び
(G)付加反応触媒 触媒量
を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物である。
また、本発明は、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーンゴム硬化物である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ミラブル型シリコーンゴム組成物]
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、上記(A)~(G)成分を含むものである。本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、他の成分を含むこともできる。以下、各成分について詳細に説明する。
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、ミラブル型シリコーンゴム組成物における主剤(ベースポリマー)であり、それぞれ以下に説明する、(A-1)成分のアルケニル基と(A-2)成分とのヒドロシリル化反応によって鎖延長された、ケイ素原子結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンを含む成分である。
(A-1)成分は、下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が20,000~200,000cStであり、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノポリシロキサンである。
Figure 0007321982000005
(但し、Rは炭素数2~6のアルケニル基、R、R、R及びRは炭素数1~10の、同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、aは500~1500である。)
(A-1)成分の式(1)中のRは炭素数2~6のビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基であり、R、R、R及びRは炭素数1~10の、同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
(A-1)成分の式(1)中のaは、500~1500である。aが500より小さいと、耐熱性が悪くなり、一方、aが1500より大きいと、重合度10以下の低分子シロキサン成分の除去が困難になる。aは、700~1000であることが好ましい。
(A-1)成分の25℃における粘度は、20,000~200,000cStである。25℃における粘度が20,000cSt未満であると、耐熱性が悪くなり、200,000cStを超えると、重合度10以下の低分子シロキサン成分の除去が困難になる。なお、この粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)により測定することができる(以下、同じ)。
(A―1)成分から低分子シロキサンを除去する方法は、加熱蒸留法、減圧蒸留法、薄膜蒸留法などが挙げられる。効率よく低分子シロキサンを除去するためには、減圧下で高温の方が好ましいが、温度が高すぎると、オルガノポリシロキサンがクラッキングを起こすため、100~300℃が好ましい。
(A-2)成分は、一分子中に2個のSiH基を有し、重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A-1)成分のアルケニル基とのヒドロシリル化反応によって鎖延長されたオルガノポリシロキサンを与えるものである。(A-2)成分は、直鎖状、環状、分岐状及び三次元網状構造のいずれであってもよいが、直鎖状であることが特に好ましい。
直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、特に下記一般式(4)で例示されるものを挙げることができる。
Figure 0007321982000006
式(4)中のbは1~200の整数である。R及びRは炭素数1~10の、同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
(A-2)成分から低分子シロキサンを除去する方法は、(A-1)成分から低分子シロキサンを除去する方法と同様でもよいが、SiH基の反応性が高いため、210℃以下で行うのが好ましい。
(A-1)成分と(A-2)成分とのヒドロシリル化反応は、通常、それ自体公知の白金族金属系触媒が使用できる。すなわち、(A)成分は、ヒドロシリル化反応触媒としての白金族金属触媒を更に含むこともできる。白金族金属系触媒としては、例えば、白金族の金属単体とその化合物が挙げられ、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、シリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水和物のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物が好ましい。
添加量は触媒量であり、上記ヒドロシリル化反応を促進できる量であればよく、白金族金属質量に換算して(A)成分の合計量に対して、好ましくは1質量ppm~1,000質量ppm、より好ましくは2~100質量ppmである。該添加量がこの範囲だと、ヒドロシリル化反応が十分に促進されやすく、経済的に有利となりやすい。このような触媒を用いて、ヒドロシリル化反応は、常温~200℃の温度で10分間~5時間程度行われる。
<(B)成分>
(B)成分の補強性シリカは、シリコーンゴム硬化物に十分な強度を与えるために必須なものであり、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)や沈殿シリカ(湿式シリカ)等が例示される。
(B)成分は1種単独でも2種以上を併用してもよい。補強性シリカのBET法による比表面積は、50m/g以上であり、50~400m/gが好ましく、100~350m/gがより好ましい。比表面積が50m/g以上であれば、機械的強度を十分に付与することができる。比表面積が400m/g以下であれば、シリコーンゴム組成物の粘度が適度となり、取扱い性に優れる。
これら補強性シリカはそのまま用いても構わないが、表面疎水化処理剤で予め処理したものを使用したり、あるいは(A)成分との混練時に表面処理剤を添加して処理したりすることにより使用することが好ましい。これら表面処理剤は、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステル等の公知のいかなるものでも用いることができ、1種で用いてもよく、また2種以上を同時又は異なるタイミングで用いてもよい。
ミラブル型シリコーンゴム組成物中の(B)補強性シリカの配合量は、(A)成分100質量部に対し、10~100質量部であり、10~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。(B)成分の配合量を10質量部以上とすることで、より十分なゴム強度が得られる。一方、100質量部以下であれば、適切な粘度を示すことができ、取扱い性に優れたシリコーンゴム組成物となる。
<(C)成分>
(C)成分は、(C―1)オルガノアルコキシシランと(C-2)水との混合物、及び/又は(C-3)(C-1)成分と(C-2)成分との反応生成物である。
(C-1)成分のオルガノアルコキシシランは、例えば下記一般式(9)で表される。
SiR11 12 (OR13 (9)
式(9)中のR11及びR12はそれぞれ置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R13は炭素数1~4のアルキル基であり、p及びqはそれぞれ0、1、2又は3であり、rは1又は2であり、但しp+q+r=4である。
11及びR12は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~10、特に1~6のものである。具体的には、メチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、並びにこれらの炭化水素の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がフッ素等のハロゲン原子やシアノ基で置換された基等を挙げることができる。この中ではメチル基、フェニル基が好ましく用いられる。
13は炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基であり、両者が一分子中に同時に存在していても差し支えない。
上記オルガノアルコキシシランとして具体的には、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルメトキシエトキシシラン等のジアルコキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン等のモノアルコキシシランを挙げることができる。これらアルコキシシランは単独で用いてもよく、複数を混ぜて使用してもよい。
(C-2)成分の水は、(C-1)成分のオルガノアルコキシシランの加水分解させるために使用される。その添加量としては、(C-1)成分のアルコキシ基の0.5~10倍モル、好ましくは1~5倍モルであることがよい。
(C)成分は、(C-1)成分のオルガノアルコキシシランと(C-2)成分の水との混合物であっても良いし、(C-3)成分である、(C-1)成分と(C-2)成分との反応生成物、すなわち加水分解生成物であっても良いし、又は(C-1)成分、(C-2)成分及び(C-3)成分の混合物であっても良い。
(C)成分は、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物において、(B)成分の補強性シリカの処理剤として作用する成分である。
ミラブル型シリコーンゴム組成物中の(C-1)成分のオルガノアルコキシシランの配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~50質量部である。0.1質量部以下であると、(B)成分の補強性シリカの処理が不十分であり、物性が悪化する場合がある。一方、50質量部を超えると、(B)成分の補強性シリカの処理剤として作用しなかった(C-1)成分を除去する必要があり、経済的でない。(C-2)成分の水の添加量は、上記の通りである。ミラブル型シリコーンゴム組成物中の(C-3)成分の配合量は、0.1~90質量部である。0.1質量部以下であると、(B)成分の補強性シリカの処理が不十分であり、物性が悪化する場合がある。一方、90質量部を超えると、(B)成分の補強性シリカの処理剤として作用しなかった(C-3)成分を除去する必要があり、経済的でない。
<(D)成分>
(D)成分の(D-1)アルケニル基含有オルガノシラン及び/又は(D-2)アルケニル基含有オルガノシラザンは、本発明のシリコーンゴム組成物において、(B)成分である補強性シリカの分散性向上剤(表面処理剤)として作用すると共に、硬化時にベースポリマーであるオルガノポリシロキサン((A)成分)中のアルケニル基(ケイ素原子結合脂肪族不飽和基)と共にアルケニル基含有オルガノシラザン及び/又はアルケニル基含有オルガノシラン中のアルケニル基が架橋することにより、オルガノポリシロキサンとシリカとの架橋点として作用し、圧縮永久歪みを改善する成分である。
(D-1)成分であるアルケニル基含有オルガノシランは、例えばビニル基含有アルコキシシランである。該ビニル基含有アルコキシシランとしては、特に制限されないが、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等が好適である。
(D-2)成分であるアルケニル基含有オルガノシラザンは、例えばビニル基含有オルガノシラザンである。該ビニル基含有オルガノシラザンとしては、特に制限されないが、1-ビニルペンタメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラビニルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラビニルジシラザン等が例示されるが、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンが好適である。
(D)成分のアルケニル基含有オルガノシラザン及び/又はアルケニル基含有アルコキシシランの添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~10質量部であり、好ましくは0.1~7質量部であり、より好ましくは0.1~5質量部である。(D)成分の添加量が0.1質量部より少ないと、得られるシリコーンゴム硬化物の圧縮永久歪みの改善効果が得られず、多すぎる場合には、得られるシリコーンゴム硬化物の硬度が高くなりすぎ、また経済的にも好ましくない。
<(E)成分>
(E)成分は、窒素原子含有有機ケイ素化合物であり、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に作用し、ヒドロキシアミノ化合物を遊離して反応する。1分子あたりケイ素原子に結合した下記一般式(2)及び(3)で表される置換アミノキシ基から選ばれる1種又は2種以上の基を平均2個以上有するものである。
Figure 0007321982000007
(式中、R及びRは互いに同一又は異種の1価炭化水素基である。Rは2価の有機基である。)
上記一般式(2)中、R及びRの1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などの、炭素数1~10のもの、特には脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1~6のものが挙げられる。
また、上記一般式(3)中、Rの2価の有機基としては、窒素原子又は酸素原子を含有してもよく、また芳香族環を構造中に有してもよい、5~10員環の2価の残基等の、炭素数3~10、特には炭素数4~8の2価炭化水素基等が挙げられ、具体的には、次に示す2価の有機基などが例示される。
Figure 0007321982000008
上記窒素原子含有有機ケイ素化合物としては、下記式(5)~(8)で表されるもの(例えば、シラン化合物、シロキサン化合物、シルエチレン化合物等のシルアルキレン化合物、シルフェニレン化合物等のシルアリーレン化合物など)が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上が用いられる。
Figure 0007321982000009
(式中、R10は同一又は異種の置換若しくは非置換1価炭化水素基であり、OYは上記式(2)又は(3)で示される基であり、cは0、1又は2であり、dは0又は10以下の正数である。eは1~20の正数、好ましくは1~10の正数であり、fは2~20の正数、好ましくは2~10の正数であり、且つe+fは3以上の正数である。R’はR10又はOYであり、g、hはそれぞれ独立に0又は100以下の正数、好ましくは2~50の正数であり、hが0以上1未満の場合は2つのR’はOYであり、hが1以上2未満の場合はR’の少なくとも1つはOYである。Qは炭素数1~20の2価単価水素基である。)
ここで、R10としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化炭化水素基、シアノ炭化水素基等の炭素数1~10、特に1~8のものが挙げられる。また、Qとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基等の、炭素数1~20、特には炭素数1~10の2価炭化水素基が挙げられる。
上記(E)成分として具体的には、下記に示すものが挙げられる。
Figure 0007321982000010
Figure 0007321982000011
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物に使用される(E)成分の窒素原子含有有機ケイ素化合物は、(A)成分が含むオルガノポリシロキサンや(B)成分の補強性シリカと反応した(C)成分と架橋反応を起こす架橋剤であるため、上述した式(2)又は式(3)で示されるケイ素原子に結合した置換アミノキシ基から選ばれる基を1分子あたり平均2個以上、好ましくは2.05~10個、より好ましくは2.1~5個、更に好ましくは2.2~4個程度有することが必要である。置換アミノキシ基がこれより少なくなると(即ち、1分子あたり該置換アミノキシ基を2個未満の平均値で含有する窒素原子含有有機ケイ素化合物を使用した場合には)架橋反応(高分子化)が不十分となる。なお、この場合の平均値とは、(E)成分1分子中に含有される該置換アミノキシ基の数平均値を意味する。
この(E)成分は、上記(A)成分100質量部に対して0.001~1質量部であり、特に0.01~0.5質量部とすることが好ましい。(E)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して0.001質量部未満である場合、架橋反応が不十分となり、ロール加工性が乏しい組成物となる。一方、(E)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して1質量部を超えると、組成物として調製することが難しくなる。
<(F)成分>
(F)成分のSiH基(ケイ素原子に結合した水素原子)を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を含有するものであれば、直鎖状、環状、分岐状及び三次元網状構造のいずれであってもよい。(F)成分は、(A-2)成分と同じであっても、異なっていてもよい。(F)成分としては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(10)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
14 SiO(4-x-y)/2 (10)
(式中、R14は互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、x及びyは、0≦x<3、0<y≦3及び0<x+y≦3を満たす正数である。)
上記平均組成式(10)中、R14は互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の炭素数1~12、特に好ましくは1~8の一価炭化水素基であり、脂肪族不飽和基以外のものであることが好ましい。R14の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子等で置換した基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
x及びyは、好ましくは0.7≦x≦2.4、0.002≦y≦1及び0.8≦x+y≦2.7を満たす正数であり、より好ましくは1≦x≦2.2、0.01≦y≦1及び1.01≦x+y≦2.5を満たす正数である。
(F)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiH基を1分子中に2個以上(例えば2~300個)、好ましくは3個以上(例えば3~200個)、より好ましくは4~100個程度有する。(F)成分においてSiH基は分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中(即ち、分子鎖非末端部分)にあっても、その両方にあってもよい。
また、(F)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子数(又は重合度)は、好ましくは2~300個、より好ましくは3~200個、更に好ましくは4~100個程度である。
(F)成分中の重合度10以下の低分子シロキサン成分の合計は、500ppm以下であることが好ましい。
(F)成分中の低分子シロキサンを除去する方法は、(A-2)成分中から低分子シロキサンを除去する方法と同様でよい。
(F)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、及び(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体;これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部をプロピル基、ブチル基等のメチル基以外のアルキル基もしくはフェニル基又はこれらの組み合わせ等で置換した化合物などが挙げられる。
具体的には、下記構造式で表される化合物が例示できる。
Figure 0007321982000012
(上記式中、kは2~50の整数であり、m、s及びtは0~50の整数である。)
(F)成分は、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
(F)成分の配合量は、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基(アルケニル基)に対する(F)成分中のSiH基のモル比が0.5~10となる量であり、より好ましくは0.7~5となる量である。該配合量が上記範囲内だと、得られるシリコーンゴム組成物の硬化時に架橋が十分に形成されやすく、硬化後は、機械的強度が十分となりやすく、また、他の物理特性、特に耐熱性と低圧縮永久歪性が良好となりやすい。
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基は、(A)成分中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基及び(D)成分中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基を含む。(A)成分中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基は、(A-2)成分とのヒドロシリル化反応を起こしていない(A-1)成分のアルケニル基を含む。
<(G)成分>
(G)成分の付加反応触媒は、ヒドロシリル化反応用触媒であり、組成物中のケイ素原子結合アルケニル基と(F)成分中のSiH基とを付加反応させる触媒である。(G)成分としては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として従来公知のものが使用でき、例えば、白金族金属系触媒が挙げられる。白金族金属系触媒としては、例えば、白金族の金属単体とその化合物が挙げられ、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、シリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水和物のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物が好ましい。
(G)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。(G)成分の添加量は触媒量であり、上記付加反応を促進できる量であればよく、白金族金属質量に換算して(A)成分の合計量に対して、好ましくは1質量ppm~1質量%(10,000質量ppm)、より好ましくは2~1,000質量ppm、特に好ましくは10~500質量ppmである。該添加量がこの範囲だと、付加反応が十分に促進されやすく、硬化が十分になりやすく、経済的に有利となりやすい。
<その他の成分>
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、任意の量にて付加反応制御剤を使用してもよい。その具体例としては、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレンアルコール系制御剤、テトラシクロメチルビニルポリシロキサン等が挙げられる。付加反応制御剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
<製造方法>
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、例えば以下の手順で製造することができる。
まず、上記(A-1)成分、(A-2)成分、及びヒドロシリル化反応触媒を含むベースポリマーを調製する。
次に、ベースポリマーに上記(B)成分、(C)成分、(D)成分を添加し、加熱、混合することによりベースコンパウンドが得られる。
次に、上記のようにして得られたベースコンパウンドと、(E)成分、(F)成分及び(G)成分とを混合する。
この混合により、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物を得ることができる。
<硬化条件>
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、公知の硬化方法により公知の硬化条件下で硬化させることができる。具体的には、通常、室温~200℃、好ましくは80~160℃で加熱することにより、組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分~5時間程度、特に1分~3時間程度でよい。
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、例えば上記の硬化条件下での、組成物中のケイ素原子結合アルケニル基と(F)成分中のSiH基との付加反応により、硬化することができる。そのため、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物ということもできる。
以上に説明した本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、(A-1)成分のアルケニル基と(A-2)成分とのヒドロシリル化反応によって鎖長延長されたオルガノポリシロキサンを含む(A)成分を使用することで、低分子シロキサン成分の量が少ないミラブル型シリコーンゴム組成物とすることができる。また、この(A)成分に加えて、上記(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分及び(G)成分を所定量含むことにより、未硬化状態でのロール加工性が改善され、低分子シロキサン成分の量が少ないミラブル型シリコーンゴム組成物とすることができる。
[シリコーンゴム硬化物]
本発明のシリコーンゴム硬化物は、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーンゴム硬化物である。
そのため、本発明のシリコーンゴム硬化物は、低分子シロキサン成分の量が少ない硬化物である。
例えば、本発明のシリコーンゴム硬化物は、重合度10以下の低分子シロキサン成分の含有量の合計が500ppm以下であるものとすることができる。
このように、本発明のシリコーンゴム硬化物は、世界的な化学物質規制の潮流の中で求められている、低分子シロキサンの量が低減されているので、例えば、ケーキモールドなどのキッチン用品、水道周辺に使用されるパッキン、人工透析器などの医療器具、ヘルスケア用品などに安全に使用できる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下実施例及び比較例で用いた(A-1)成分、(A-2)成分及び(F)成分にそれぞれ含まれる、重合度が3~10の低分子環状シロキサン(D3~D10)は、下記測定条件により測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
Figure 0007321982000013
Figure 0007321982000014
[測定条件]
装置:島津製作所製ガスクロマトグラフ Nexis GC-2030
流体:空気、水素、ヘリウム
流量:0.6mL/min
検出器:水素炎イオン化検出器
カラム:DB-5MS
(いずれも島津社製)
カラム温度:320℃
試料注入量:1.0μL
(A-1)成分のビニル基含有オルガノポリシロキサン中の低分子シロキサンは、以下の手順で除去した。まず、約100Paの減圧下で試料を撹拌しながら200℃で6時間加熱して低分子シロキサン成分を除去した。次いで、更に窒素ガスを試料中に吹き込んで(バブリングして)、4時間除去を行った。次いで、50Pa以下の減圧下、250℃で2時間加熱を行って、低分子シロキサン成分を除去した。
(A-2)成分と(F)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中の低分子シロキサンは、以下の手順で除去した。まず、約100Paの減圧下で試料を撹拌しながら180℃で6時間加熱して低分子シロキサン成分を除去した。次いで、更に窒素ガスを試料中に吹き込んで(バブリングして)、4時間除去を行った。次いで、20Pa以下の減圧下、200℃で1時間加熱を行って、低分子シロキサン成分を除去した。
下記実施例及び比較例で調製したシリコーンゴム組成物を2本ロールで練る際の粘着性(ロール加工性)を下記に示すように、○、△、×で評価した。その結果を表3及び表4に示す。
○:ハードクロムメッキの6インチ2本ロールにおいて、ロール間隔2mm、サンプル量200gで、丸太どりが容易。
△:ハードクロムメッキの6インチ2本ロールにおいて、ロール間隔2mm、サンプル量200gで、丸太どりがやや引っかかる。
×:ハードクロムメッキの6インチ2本ロールにおいて、ロール間隔2mm、サンプル量200gで、丸太どりが困難で、組成物がロールにへばりつく。
また、このシリコーンゴム組成物について、JIS K 6249:2003に準拠して、可塑度を測定した。また、硬さ(デュロメーターA)、引張強さ、切断時伸びをJIS K 6249:2003に準拠して測定した。その結果を表3及び表4に示す。
(実施例1)
(A-1)成分としての両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が30,000cStのジメチルポリシロキサン(A-1A)100質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.01質量部、及び(A-2)成分としての下記式(11)で表される両末端にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(A-2A)2.5質量部を、ニーダーにて30分混合し、ベースポリマー(1)を調整した。
Figure 0007321982000015
次に、ベースポリマー(1)100質量部に対して、(B)成分としてのBET吸着法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)(B)32質量部、(C)成分としてのジメチルジメトキシシラン8質量部(C-1)及び水(C-2)2.5質量部、並びに(D)成分としてのビニルトリメトキシシラン(D-1)0.5質量部を添加し、170℃で2時間、ニーダーにより混合下で加熱して、ベースコンパウンド(1)を調製した。
次に、上記ベースコンパウンド(1)100質量部に対して、(E)成分としての下記式(E1)で表される窒素原子含有有機ケイ素化合物(E1)を0.01質量部の量で均一に混合して、コンパウンド(1)を調整した。このコンパウンド(1)を用いて、可塑度測定を行った。
次に、上記コンパウンド(1)100質量部に対して、下記式(12)で表される側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(F)1.7質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部、及び白金触媒(Pt濃度1質量%)(G)0.1質量部を混合し、均一に混合して、実施例1のミラブル型シリコーンゴム組成物を得た。
Figure 0007321982000016
Figure 0007321982000017
(実施例2)
(A-1)成分を両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が100,000cStのジメチルポリシロキサン(A-1B)に変更し、(A-2A)成分を1.7質量部にした以外は、実施例1と同様の方法によりベースポリマー(2)を調製した。また、ベースポリマー(1)の代わりにベースポリマー(2)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、ベースコンパウンド(2)を調製した。そして、ベースコンパウンド(1)の代わりにベースコンパウンド(2)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例2のミラブル型シリコーンゴム組成物を調製した。
(実施例3)
(A―2)成分を下記(13)で表される両末端にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(A-2B)1.1質量部にした以外は、実施例1と同様の方法によりベースポリマー(3)を調製した。また、ベースポリマー(1)の代わりにベースポリマー(3)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、ベースコンパウンド(3)を調製した。そして、ベースコンパウンド(1)の代わりにベースコンパウンド(3)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例3のミラブル型シリコーンゴム組成物を調製した。
Figure 0007321982000018
(実施例4)
(D)成分を1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(D-2)0.2質量部にした以外は、実施例1と同様の方法によりベースコンパウンド(4)を調製した。そして、ベースコンパウンド(1)の代わりにベースコンパウンド(4)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例4のミラブル型シリコーンゴム組成物を調製した。
(実施例5)
(E1)成分を0.03質量部にした以外は実施例1と同様の方法により、コンパウンド(5)を調製した。そして、コンパウンド(1)の代わりにコンパウンド(5)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例5のシリコーンゴム組成物を調整した。
(実施例6)
(E1)成分ではなく、下記式(E2)で表される窒素原子含有有機ケイ素化合物(E2)を0.03質量部の量で用いた以外は実施例1と同様の方法により、コンパウンド(6)を調製した。そして、コンパウンド(1)の代わりにコンパウンド(6)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、実施例6のミラブル型シリコーンゴム組成物を調整した。
Figure 0007321982000019
(比較例1)
コンパウンド(1)を調製する代わりに、窒素原子含有有機ケイ素化合物である成分(E1)を添加せずに、ベースコンパウンド(1)をそのまま、(F)成分及び(G)成分と混合するコンパウンド(7)として用いたこと以外は実施例1と同様な方法により、比較例1のミラブル型シリコーンゴム組成物を調整した。
(比較例2)
コンパウンド(2)を調製する代わりに、窒素原子含有有機ケイ素化合物である成分(E1)を添加せずに、ベースコンパウンド(2)をそのまま、(F)成分及び(G)成分と混合するコンパウンド(8)として用いたこと以外は実施例2と同様な方法により、比較例2のミラブル型シリコーンゴム組成物を調整した。
(比較例3)
コンパウンド(3)を調製する代わりに、窒素原子含有有機ケイ素化合物である成分(E1)を添加せずに、ベースコンパウンド(3)をそのまま、(F)成分及び(G)成分と混合するコンパウンド(9)として用いたこと以外は実施例3と同様な方法により、比較例3のミラブル型シリコーンゴム組成物を調整した。
(比較例4)
コンパウンド(4)を調製する代わりに、窒素原子含有有機ケイ素化合物である成分(E1)を添加せずに、ベースコンパウンド(4)をそのまま、(F)成分及び(G)成分と混合するコンパウンド(10)として用いたこと以外は、実施例4と同様な方法により、比較例4のミラブル型シリコーンゴム組成物を調整した。
(比較例5)
窒素原子含有有機ケイ素化合物である成分(E1)を5.0質量部にした以外は、実施例1と同様な方法により、コンパウンド(11)を調製した。そして、コンパウンド(1)の代わりにコンパウンド(11)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、比較例5のミラブル型シリコーンゴム組成物を調整した。
実施例及び比較例で用いた各成分を、以下の表3及び4にまとめる。
(試験用シートの作製)
以上のようにして調製した各組成物について、120℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアーを行い、実施例及び比較例の各試験用シートを作製した。これらのシートの物性特性の測定結果を表3及び4に示す。
Figure 0007321982000020
Figure 0007321982000021
(低分子シロキサン量の測定)
実施例及び比較例の各試験用シートの低分子シロキサン量を、先に説明した手順で測定した。その結果を以下の表5に示す。
Figure 0007321982000022
表3及び表4に示した結果から、本発明の実施例1~6のミラブル型シリコーンゴム組成物は、比較例1~4のミラブル型シリコーンゴム組成物より、可塑度が高く、ロール加工性が良好であることがわかる。また、表3に示した結果から、本発明の実施例1~6のミラブル型シリコーンゴム組成物の各々を硬化して得られた硬化物は、硬さ、引張強さ及び切断時伸びの各特性に優れていることが分かる。そして、表5に示した結果から、本発明の実施例1~6のミラブル型シリコーンゴム組成物の各々は、低分子シロキサン成分の含有量が低い硬化物を与えることができたことが分かる。
一方、表4に示した結果から、比較例1~4のミラブル型シリコーンゴム組成物は、本発明の実施例1~6のミラブル型シリコーンゴム組成物よりもロール加工性に劣っていた。これは、比較例1~4のミラブル型シリコーンゴム組成物が、(E)成分である窒素原子含有有機ケイ素化合物を含んでいなかったためであると推測される。
また、比較例5では、(E)成分を添加した組成物を調製できなかった。これは、(E)成分の添加量が多かったためであると推測される。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (3)

  1. ミラブル型シリコーンゴム組成物であって、
    (A)下記(A-1)成分のアルケニル基と下記(A-2)成分とのヒドロシリル化反応によって鎖延長された、ケイ素原子結合脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンを含む成分 100質量部、
    (A-1)下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が20,000~200,000cStであり、重合度10以下の低分子環状シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノポリシロキサン、
    Figure 0007321982000023
    (但し、Rは炭素数2~6のアルケニル基、R、R、R及びRは炭素数1~10の、同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、aは500~1500である。)
    (A-2)一分子中に2個のSiH基を有し、重合度10以下の低分子環状シロキサン成分の合計が500ppm以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
    (B)BET法による比表面積が50m/g以上の補強性シリカ 10~100質量部、
    (C)下記(C-1)成分と(C-2)成分との混合物、及び/又は下記(C-3)成分、
    (C―1)オルガノアルコキシシラン 0.1~50質量部、
    (C-2)水 (C-1)成分のアルコキシ基の0.5~10倍モル量、
    (C-3)(C-1)成分と(C-2)成分との反応生成物 0.1~90質量部、
    (D)下記(D-1)成分及び/又は下記(D-2)成分 0.1~10質量部
    (D-1)アルケニル基含有オルガノシラン、
    (D-2)アルケニル基含有オルガノシラザン、
    (E)ケイ素原子に結合した下記式(2)又は(3)で表される置換アミノキシ基から選ばれる1種又は2種以上の基を1分子あたり平均2個以上有する窒素原子含有有機ケイ素化合物 0.001~1質量部、
    Figure 0007321982000024
    (式中、R及びRは互いに同一又は異種の1価炭化水素基である。Rは2価の有機基である。)
    (F)SiH基を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 組成物中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基に対する(F)成分中のSiH基のモル比が0.5~10となる量、及び
    (G)付加反応触媒 触媒量
    を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物。
  2. 請求項1に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーンゴム硬化物。
  3. 前記硬化物中に含まれる重合度10以下の低分子環状シロキサン成分の合計が500ppm以下であることを特徴とする請求項2に記載のシリコーンゴム硬化物。
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