JP7318443B2 - 直列多重インバータおよび直列多重インバータの制御方法 - Google Patents

直列多重インバータおよび直列多重インバータの制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、高電圧を直接出力する直列多重インバータの過電圧抑制に関する。
一般的な直列多重インバータの主回路構成を図1に示す。図1の直列多重インバータ1では各相のセルの段数をN段としている(N≧2)。入力電源2はトランス3によって絶縁されている。各相においてセル41~4Nの逆変換部側の出力を直列接続することにより直接高圧を出力することが可能となる。各セル41~4Nは単相インバータで構成されている。
直列多重インバータ1は直列多重PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御を行っている(特許文献1参照)。インバータ制御部5は、図9に示すように、各相別の電圧指令値(変調波)V*と2N個の三角波状のキャリア信号TRI1~TRI4との比較に基づいて、各セル41~4N内のスイッチング素子SW-U,SW-V,SW-X,SW-Yのゲート信号(オンオフ指令信号)を生成する。図9は、N=2のときの各種制御信号である。
相電圧指令(図9の(5))は、表1に基づいて生成される。第1キャリアはキャリア信号TRI3に、第2キャリアはキャリア信号TRI1に、第3キャリアはキャリア信号TRI2に、第4キャリアはキャリア信号TRI4に対応する。
さらに、この相電圧指令に基づいて、図9の(3),(4)に示すように、各セル(インバータユニット)41~4Nの出力電圧指令が生成される。さらに、各セル41~4Nの出力電圧指令と表2に基づいて、各セル41~4N内のスイッチング素子SW-U,SW-V,SW-X,SW-Yのゲート信号(オンオフ指令信号)を生成する。
Figure 0007318443000001
Figure 0007318443000002
また、特許文献1では、図10,図11に示すように、3相の正弦波状の電圧指令値に同相の3次高調波を加える零相変調を行っている。この方式により線間電圧を変えずに相電圧のピーク値を低減できるため、直列多重インバータの出力電圧の最大値を増加することが可能となる。
さらに、特許文献1では、出力電圧の2段変化(2レベル以上の電圧変化)対策のために各キャリア信号の領域境界(図9(1)の+4.0,+2.0,0,-2.0,-4.0の付近)に禁止帯を設け、各相の電圧指令値を補正することにより禁止帯を回避している。ここで、0レベル付近の禁止帯を零禁止帯と称する。
直流ブレーキ動作時を例に説明すると、例えば位相0degで直流ブレーキした場合には、図12(a)に示すように、電圧指令値はU相が正、V,W相が負となる。位相180degで直流ブレーキした場合には、図12(c)に示すように、電圧指令値はU相が負、V,W相が正となる。
このように、3相いずれかの電圧指令値が禁止帯内に入った場合、3相全てが禁止帯から外れるよう、図12(b),(d)に示すように、各相の電圧指令値に補正値を加減算する。ここで、補正値は図12(b),(d)の矢印の長さとなる。この禁止帯回避方法の詳細は、特許文献1の実施形態14に開示されている。
図13に、禁止帯回避処理を行う場合の制御方式を示す。禁止帯を回避する必要のない条件時(補正前の3相の電圧指令値がすべて禁止帯外にある場合)は、補正値演算部7は0を出力する。
特開2006-109688号公報
前述の禁止帯回避の補正方法では、1~2Hz程度の低出力周波数時や直流ブレーキ時に、補正処理によって、3相の電圧指令値の何れもが正、もしくは負の指令となる場合がある。
図12(a)、または、図12(c)のように、補正前の電圧指令値が三相すべて零禁止帯内にあるときに前述の電圧指令値の補正を行った結果、図12(b),(d)のように、補正後の3相電圧指令値の何れもが正、もしくは負の状態となる。この状態がある時間以上連続すると、セル41~4Nの直流リンク部が過電圧となる恐れがある。
以下、過電圧が発生する動作について説明する。直列多重インバータは、各々に直流リンク部を持つ単相インバータ(セル)により構成される。簡素化のため相ごとの直流リンク部をまとめると、直列多重インバータは図14の等価回路となる。
図12(a)に示すように、U相が正、V,W相が負の電圧指令で直流ブレーキした場合(禁止帯回避なしの場合)、パターン(1)(U相セルのコンデンサ:放電、V相セルのコンデンサ:充電、W相セルのコンデンサ:充電)とパターン(2)(U相セルのコンデンサ:充電、V相セルのコンデンサ:放電、W相セルのコンデンサ:放電)の動作が交互に行われるため、図14(a)に示すように3相の直流リンク部のコンデンサのエネルギーが均等に受け渡しされる。
一方、図12(b)のように、U,V,W相ともに正の電圧で直流ブレーキした場合(禁止帯回避した場合)、V,W相がスイッチングをした時にはパターン(1)(U相セルのコンデンサ:放電、V相セルのコンデンサ:充電、W相セルのコンデンサ:充電)とパターン(3)(U相セルのコンデンサ:放電、V相セルのコンデンサ:充電、W相セルのコンデンサ:充電)の動作が連続するため、常にU相のエネルギーがV,W相に流れ込み続け、V,W相の直流電圧が上昇することになる。その結果、V相もしくはW相が過電圧となる恐れがある。
U,V,W相ともに負の電圧で直流ブレーキした場合(禁止帯回避した場合)も同様に、特定のセルの直流電圧が上昇してその相が過電圧となる恐れがある。
低周波数での運転時も同様であり、出力周波数が低いため出力電圧も低くなり、禁止帯回避処理によって3相電圧指令が全て同極性になった時間が連続すると、上記と同様の現象が発生することになる。
以上示したようなことから、直列多重インバータにおいて、セルの直流リンク電圧が過電圧となることを抑制することが課題となる。
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータであって、各相の電圧指令値を出力する変調波発生部と、前記各相の電圧指令値のうち、少なくとも何れか1つの相が禁止帯内にある場合、極性が切り換わる第1の補正値を出力する第1補正値演算部と、前記第1の補正値を加算した前記各相の電圧指令値のうち、少なくとも何れか1つの相が零禁止帯内にある場合、前記第1の補正値が正極の場合は全ての相の前記電圧指令値が正方向の零禁止帯外となるような第2の補正値を出力し、前記第1の補正値が負極の場合は全ての相の前記電圧指令値が負方向の零禁止帯外となるような第2の補正値を出力する第2補正値演算部と、前記第1の補正値と前記第2の補正値を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算する加算部と、前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成するキャリア変調部と、を備えたことを特徴とする。
また、その一態様として、前記第1の補正値の極性の切換周期を(1)式のTc以下とすることを特徴とする。
Figure 0007318443000003
ΔQ:コンデンサの蓄電電荷の変化量
C:直流リンク部のコンデンサの静電容量
ΔV:直流リンク部の許容電圧偏差
Iout:直列多重インバータの出力電流
DUTY:スイッチング期間とキャリア信号周期との比。
また、他の態様として、各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータであって、各相の電圧指令値を出力する変調波発生部と、補正前の前記各相の電圧指令値がすべて零禁止帯内に入っているときに、前記各相の電圧指令値のすべてが前記零禁止帯外となるよう、正方向に補正したときの正方向の補正値と負方向に補正したときの負方向の補正値を各々演算し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の小さい補正値を第1バッファに格納し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の大きい補正値を第2バッファに格納し、前記第1バッファに格納された絶対値の小さい補正値と前記第2バッファに格納された絶対値の大きい補正値を切り換えて出力する補正値演算部と、前記補正値演算部の出力を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算する加算部と、前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成するキャリア変調部と、を備えたことを特徴とする。
また、その一態様として、前記第1バッファに格納された絶対値の小さい補正値と前記第2バッファに格納された絶対値の大きい補正値の切換周期を(1)式のTcの1/2以下とすることを特徴とする。
Figure 0007318443000004
ΔQ:コンデンサの蓄電電荷の変化量
C:直流リンク部のコンデンサの静電容量
ΔV:直流リンク部の許容電圧偏差
Iout:直列多重インバータの出力電流
DUTY:スイッチング期間とキャリア信号周期との比。
また、その一態様として、直流電圧検出最大値が閾値に到達した時、前記第1の補正値の極性を切り換えることを特徴とする。
本発明によれば、直列多重インバータにおいて、セルの直流リンク電圧が過電圧となることを抑制することが可能となる。
直列多重インバータの主回路構成を示す概略図。 実施形態1におけるインバータ制御部を示すブロック図。 実施形態1における制御方式を示す概略図。 実施形態2における制御方式を示す概略図。 実施形態2におけるインバータ制御部を示すブロック図。 実施形態2における回避方向切換処理を示す概略図。 直流電圧と出力電流を示すタイムチャート。 実施形態4における回避方向切換処理を示す概略図。 直列多重インバータの各波形を示すタイムチャート。 従来のインバータ制御部を示すブロック図。 3次高調波を加算した相電圧波形を示すタイムチャート。 従来の直列多重インバータの禁止帯回避方法を示す概略図。 特許文献1におけるインバータ制御部を示すブロック図。 直流ブレーキ時の過電圧発生現象を示す説明図。
以下、本願発明における直列多重インバータの実施形態1~4を図1~図8に基づいて詳述する。
[実施形態1]
図1は、一般的な直列多重インバータの主回路構成を示す概略図である。なお、図1は直列多重インバータの一例であり、本実施形態1は他の構成の直列多重インバータでも適用可能である。
図1において、直列多重インバータ1は、入力電源2と、トランス3と、電力変換部4と、インバータ制御部5と、を備える。電力変換部4は、各相それぞれN(N≧2)個のセル41~4Nが直列接続される。
各セル41~4Nは、ダイオードをブリッジ接続した整流回路と、コンデンサを有する直流リンク部と、スイッチング素子SW-U,SW-V,SW-X,SW-Yをブリッジ接続した逆変換部と、を有する。
各セル41~4Nの整流器側はトランス3に接続され、逆変換部側は各相直列接続される。各相のセル41同士は接続される。また、各相のセル4NはモータMに接続される。なお、図1に示すように、直列多重インバータ1からモータMに出力される出力電流をIoutとする。
本実施形態1では、禁止帯回避処理時の補正値の極性を一定周期で変化させる方法を説明する。図2は本実施形態1におけるインバータ制御部を示すブロック図である。
図2に示すように、変調波(正弦波)発生部6は、電圧設定値および位相設定値に基づいて3相の電圧指令値を出力する。また、変調波発生部6は、3次高調波を出力する。
第1補正値演算部7aは、前記変調波(正弦波)発生部6が出力する各相の電圧指令値のうち、少なくとも何れか1つの相が禁止帯内にある場合、極性が一定周期で切り換わる第1の補正値を出力する。また、前記変調波(正弦波)発生部6が出力するすべての相の電圧指令値が禁止帯外にある場合、0を出力する。第2補正値演算部7bは、第1の補正値を加算した3相の電圧指令値のうち、少なくとも何れか1つの相が零禁止帯内にある場合、第1の補正値が正極の場合は全ての相の電圧指令値が正方向の零禁止帯外となるような第2の補正値を出力し、第1の補正値が負極の場合は全ての相の電圧指令値が負方向の零禁止帯外となるような第2の補正値を出力する。加算部8は、第1の補正値と第2の補正値を加算して最終補正値として出力する。加算部9は、3次高調波と最終補正値を加算する。
加算部10a,10b,10cは、3相の電圧指令値と加算部9の出力とをそれぞれ加算し、キャリア変調部11に出力する。キャリア変調部11では、加算部10a,10b,10cの出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、直列多重PWM制御を行い、各セル41~4Nのスイッチング素子SW-U,SW-V,SW-X,SW-Yのゲート信号を出力する。
次に、本実施形態1における制御方式の具体例を説明する。
(1)補正前の3相の電圧指令値のいずれかが禁止帯内にあるとき、第1補正値演算部7aは、禁止帯幅×1/2、禁止帯幅×-1/2を一定周期で繰り返す第1の補正値を出力する。
(2)第1の補正値=禁止帯幅×1/2のとき、図3(b)に示すように、各相の電圧指令値に正方向に第1の補正値を加算する。第1の補正値加算後に、ある相の電圧指令値がまだ零禁止帯内にある場合は、図3(c)に示すように、すべての相の電圧指令値が正方向の零禁止帯外となるよう、第2の補正値を加算する。この第2の補正値は、図2の第2補正値演算部7bが特許文献1と同じ方式で演算する。
(3)第1の補正値=禁止帯幅×-1/2のとき、図3(e)に示すように、各相の電圧指令値に負の値である第1の補正値を加算する。すなわち、負方向に補正する。第1の補正値加算後に、ある相の電圧指令値がまだ零禁止帯内にある場合は、図3(f)に示すように、すべての相の電圧指令値が負方向の零禁止帯外となるよう、第2の補正値を加算する。この第2の補正値は、図2の第2補正値演算部7bが特許文献1と同じ方式で演算する。
(4)上記処理で求めた第1の補正値と第2の補正値を加算した値が最終補正値となる。
直列多重インバータが直流ブレーキ運転、低周波数運転のいずれかのときには、上記の補正方法を適用する。なお、直列多重インバータが直流ブレーキ運転、低周波数運転のいずれでもない運転状態では、上記の補正方法、特許文献1に示す従来方式、のいずれを用いてもよい。
本実施形態1では、補正後の電圧指令値が禁止帯外の正側もしくは負側に一定周期で変化することになる。補正後の3相の電圧指令値が全て正、もしくは負の状態が継続しないようになるので、1~2Hzの低周波数運転や直流ブレーキ時に発生するセルの直流リンク部の過電圧を抑制することができる。
[実施形態2]
実施形態1では、電圧指令値の補正の方向(正,負)が、第1の補正値の極性によって強制的に決定される。よって、補正前の各相の電圧指令値によっては、補正量が大きくなる方向に補正を行ってしまい、反対方向の補正を行う場合と比較して、直列多重インバータの出力電圧限界をより低減させてしまうおそれがある。
特許文献1で開示されている従来の禁止帯回避処理では図4に示すように、正方向・負方向の回避量を求めて、小さい回避方向を選択している。本実施形態2では、この正方向・負方向それぞれの最小の回避量を用いて、低速時もしくは直流ブレーキ時に、3相の電圧指令値すべて正、もしくはすべて負の指令の状態が継続しない禁止帯回避方式を説明する。
本実施形態2の禁止帯回避方式について説明する。図5に、本実施形態2におけるインバータ制御部を示す。図5に示すように、本実施形態2は、補正値演算部7が実施形態1と異なる。本実施形態2の補正値演算部7は、第1バッファ12と第2バッファ13とを有する。その他の構成は実施形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。以下、本実施形態2のインバータ制御部の動作を説明する。
(1)直列多重インバータが直流ブレーキ運転、低周波数運転のいずれかの運転状態であって、かつ、補正前の3相電圧指令値が全て零禁止帯内にあるとき、正側と負側の最小の回避値(全ての相の電圧指令値が禁止帯外となる補正値)を各々正方向の補正値,負方向の補正値として演算する。正方向の補正値と負方向の補正値のうち絶対値の小さい補正値を第1バッファ12に格納し、正方向の補正値と負方向の補正値のうち絶対値の大きい補正値を第2バッファ13に格納する。
(2)フリーランカウンタ等を用いて一定周期でバッファ選択フラグを0⇔1に切り換える。この処理は、常時動作させておく(切換周期は任意に変更してもよい。切換周期については、実施形態3で説明する。)。
(3)バッファ選択フラグが1のときは、第1バッファ12に格納された絶対値の小さい補正値を出力する。バッファ選択フラグが0のときは、第2バッファ13に格納された絶対値の大きい補正値を出力する。
なお、補正前の3相の電圧指令値のいずれかが零禁止帯外にあるとき、または、直列多重インバータが直流ブレーキ運転の低周波数運転のいずれでもない運転状態では、特許文献1に示す従来方式を用いて電圧指令値の補正を行う。
本実施形態2は実施形態1と同様、低周波数運転や直流ブレーキ時に発生するセルの直流リンク部の過電圧を抑制することができる。
また、本実施形態2によれば、実施形態1で問題となる出力電圧限界の低下を必要最低限に抑えることが可能となる。
[実施形態3]
実施形態1、2では、禁止帯回避方向を正側もしくは負側に切り換える周期が明確に定義されていない。しかし、3相の電圧指令値が全て正もしくは負となる低周波数運転時や直流ブレーキ時には、各セルの直流リンク部の電圧が最大許容値に到達する前に、禁止帯回避方向を切り換えなくてはならない。
対象となる直列多重インバータは、装置容量によって直流リンク部のコンデンサの静電容量値や出力電流値が異なるため、一定周期で切り替えた場合には運転条件によっては切り替えが間に合わず過電圧が発生してしまう場合がある。本実施形態3はこの問題を解決する方式となる。
図7は、直流電圧と出力電流を示すタイムチャートである。切換周期Tcは、セルの直流リンク部のコンデンサの静電容量C[F]と直流リンク部の許容電圧偏差ΔV[V]と直列多重インバータの出力電流Iout[A](図1参照)、各セルのスイッチングのDUTY[%]で以下の(1)式のように求まる。なお、ΔQは、コンデンサの蓄電電荷の変化量を示す。
Figure 0007318443000005
なお、DUTYは、図14(b)におけるスイッチング期間((1),(3)の期間)とキャリア信号周期との比に相当する。このDUTYは、キャリア信号の振幅、周期と禁止帯幅と電圧指令値より算出することができる。
また、直流リンク部の許容電圧偏差ΔVは、過電圧故障停止の直流電圧レベルと各セルの直流電圧検出最大値(各セルの中で最も直流リンク部の電圧が高いセルの直流電圧検出値)との差分である。
本実施形態3を実施形態1に適用する場合は、直列多重インバータ運転中の許容電圧偏差ΔVと出力電流Ioutを常時検出して、第1の補正値の切換周期が(1)式で算出する切換周期Tc以下となるように可変設定する。
一方、実施形態2では、補正前の電圧指令値の変化によっては、正方向の補正→負方向の補正→負方向の補正→正方向の補正のように、2切換周期にわたって同一極性の電圧指令値の補正が連続するケースが考えられる。よって、本実施形態3を実施形態2に適用する場合は、直列多重インバータ運転中の許容電圧偏差ΔVと出力電流Ioutを常時検出して、第1バッファ12に格納された絶対値の小さい補正値と第2バッファ13に格納された絶対値の大きい補正値の切換周期が(1)式で算出する切換周期Tcの1/2以下となるように可変設定する。
以上示したように、本実施形態3によれば、各セルの直流リンク部の電圧が最大許容値に到達する前に、禁止帯回避方向を切り換えることができる。
また、本実施形態3によれば、直列多重インバータの運転状態に関わらず、最適なタイミングで禁止帯回避方向を切り換えることができ、低周波数運転や直流ブレーキを行った際に発生する、セルの直流リンク部の過電圧故障を抑制することが可能となる。
[実施形態4]
直列多重インバータでは、過渡的な負荷変動等によりセルの直流リンク電圧が変動する場合がある。実施形態1,2の方式では、3相の電圧指令値の回避方向をあらかじめ設定しておいた切換周期に基づき正側もしくは負側に切り換えを行う。
しかし、セルの直流電圧の変化量は負荷条件により変わってくる。そのため、切換周期を固定値にしてしまうと、負荷条件が変化した場合に過電圧を抑制できなくなるおそれがある。
直列多重インバータは各セルに直流リンク部を持ち、各セルの直流リンク電圧値は出力電圧制御等に使用するために一定周期で監視している。本実施形態4では、この各セルの直流リンク電圧値を用いる。
まず、本実施形態4を実施形態1に適用した場合を説明する。図8に示すように、本実施形態4の直列多重インバータは、全てのセルの直流電圧値を監視し、補正後の3相の電圧指令値がすべて正もしくは負の指令となる状態で、かつ、全てのセルの直流電圧値の中での最大の値(直流電圧最大値)が閾値を超えた場合に、図2に示す第1の補正値の極性を切り換える。これにより、図8に示すように、禁止帯回避処理の回避方向を正側もしくは負側に切り換える方式となる。図8の第1の補正値は、禁止帯幅×1/2と禁止帯幅×-1/2を繰り返している。
本実施形態4と実施形態1との差異は、第1の補正値の極性(正負)の切り換えを一定周期とはせず、各セルの直流リンク電圧値に応じて行う点である。
本実施形態4の方式は、全てのセルの直流電圧値を監視し、直流電圧最大値がある閾値を超えた場合に禁止帯回避方向を正側もしくは負側に切り換えることにより、負荷条件等が変化した場合においてもセルの直流リンク部の過電圧を抑制することが可能となる。
以上示したように、本実施形態4によれば、実施形態1,2と比較して、各相のセルの直流電圧をフィードバックして禁止帯回避処理方向を可変とすることで、負荷条件等が変化した場合においてもセル直流リンク部の過電圧を抑制することが可能となる効果がある。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
1…直列多重インバータ
2…入力電源
3…トランス
4…電力変換部
41~4N…セル
5…インバータ制御部
M…モータ
6…変調波発生部
7a…第1補正値演算部
7b…第2補正値演算部
7…補正値演算部
8,9,10a,10b,10c…加算部
11…キャリア変調部
12…第1バッファ
13…第2バッファ

Claims (7)

  1. 各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータであって、
    各相の電圧指令値を出力する変調波発生部と、
    前記各相の電圧指令値のうちの少なくとも1つが禁止帯内にある場合、極性が一定周期で切り換わる第1の補正値を出力する第1補正値演算部と、
    前記各相の電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値を加算したもののうちの少なくとも1つが零禁止帯内にある場合、前記第1の補正値が正極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と第2の補正値を加算したものの全てが正方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力し、前記第1の補正値が負極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と前記第2の補正値を加算したものの全てが負方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力する第2補正値演算部と、
    前記第1の補正値と前記第2の補正値を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算する加算部と、
    前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成するキャリア変調部と、
    を備えたことを特徴とする直列多重インバータ。
  2. 各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータであって、
    各相の電圧指令値を出力する変調波発生部と、
    前記各相の電圧指令値のうちの少なくとも1つが禁止帯内にある場合、(1)式のTc以下の切換周期で極性が切り換わる第1の補正値を出力する第1補正値演算部と、
    前記各相の電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値を加算したもののうちの少なくとも1つが零禁止帯内にある場合、前記第1の補正値が正極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と第2の補正値を加算したものの全てが正方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力し、前記第1の補正値が負極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と前記第2の補正値を加算したものの全てが負方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力する第2補正値演算部と、
    前記第1の補正値と前記第2の補正値を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算する加算部と、
    前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成するキャリア変調部と、
    を備えたことを特徴とする直列多重インバータ。
    Figure 0007318443000006

    ΔQ:コンデンサの蓄電電荷の変化量
    C:直流リンク部のコンデンサの静電容量
    ΔV:直流リンク部の許容電圧偏差
    Iout:直列多重インバータの出力電流
    DUTY:スイッチング期間とキャリア信号周期との比
  3. 各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータであって、
    各相の電圧指令値を出力する変調波発生部と、
    補正前の前記各相の電圧指令値がすべて零禁止帯内に入っているときに、前記各相の電圧指令値のすべてが前記零禁止帯外となるよう、正方向に最小の回避量で補正したときの正方向の補正値と負方向に最小の回避量で補正したときの負方向の補正値を各々演算し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の小さい補正値を第1バッファに格納し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の大きい補正値を第2バッファに格納し、前記第1バッファに格納された絶対値の小さい補正値と前記第2バッファに格納された絶対値の大きい補正値を一定周期で切り換えて出力する補正値演算部と、
    前記補正値演算部の出力を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算する加算部と、
    前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成するキャリア変調部と、
    を備えたことを特徴とする直列多重インバータ。
  4. 各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータであって、
    各相の電圧指令値を出力する変調波発生部と、
    補正前の前記各相の電圧指令値がすべて零禁止帯内に入っているときに、前記各相の電圧指令値のすべてが前記零禁止帯外となるよう、正方向に最小の回避量で補正したときの正方向の補正値と負方向に最小の回避量で補正したときの負方向の補正値を各々演算し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の小さい補正値を第1バッファに格納し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の大きい補正値を第2バッファに格納し、前記第1バッファに格納された絶対値の小さい補正値と前記第2バッファに格納された絶対値の大きい補正値を(1)式のTcの1/2以下の切換周期で切り換えて出力する補正値演算部と、
    前記補正値演算部の出力を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算する加算部と、
    前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成するキャリア変調部と、
    を備えたことを特徴とする直列多重インバータ。
    Figure 0007318443000007

    ΔQ:コンデンサの蓄電電荷の変化量
    C:直流リンク部のコンデンサの静電容量
    ΔV:直流リンク部の許容電圧偏差
    Iout:直列多重インバータの出力電流
    DUTY:スイッチング期間とキャリア信号周期との比
  5. 各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータであって、
    各相の電圧指令値を出力する変調波発生部と、
    前記各相の電圧指令値のうちの少なくとも1つが禁止帯内にある場合、全てのセルの直流電圧値の中での最大の値が閾値に到達した時に極性が切り換わる第1の補正値を出力する第1補正値演算部と、
    前記各相の電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値を加算したもののうちの少なくとも1つが零禁止帯内にある場合、前記第1の補正値が正極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と第2の補正値を加算したものの全てが正方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力し、前記第1の補正値が負極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と前記第2の補正値を加算したものの全てが負方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力する第2補正値演算部と、
    前記第1の補正値と前記第2の補正値を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算する加算部と、
    前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成するキャリア変調部と、
    を備えたことを特徴とする直列多重インバータ。
  6. 各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータの制御方法であって、
    変調波発生部が、各相の電圧指令値を出力し、
    前記各相の電圧指令値のうちの少なくとも1つが禁止帯内にある場合、第1補正値演算部が、極性が一定周期で切り換わる第1の補正値を出力し、
    第2補正値演算部が、前記各相の電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値を加算したもののうちの少なくとも1つが零禁止帯内にある場合、前記第1の補正値が正極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と第2の補正値を加算したものの全てが正方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力し、前記第1の補正値が負極の場合は全ての相の前記電圧指令値のそれぞれに前記第1の補正値と前記第2の補正値を加算したものの全てが負方向の零禁止帯外となるような前記第2の補正値を出力し、
    加算部が、前記第1の補正値と前記第2の補正値を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算し、
    キャリア変調部が、前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とする直列多重インバータの制御方法。
  7. 各相それぞれN(N≧2)個直列接続したセルを備え、前記各セルはコンデンサを備えた直流リンク部とスイッチング素子を備えた逆変換部とを有する直列多重インバータの制御方法であって、
    変調波発生部が、各相の電圧指令値を出力し、
    補正値演算部が、補正前の前記各相の電圧指令値がすべて零禁止帯内に入っているときに、前記各相の電圧指令値のすべてが前記零禁止帯外となるよう、正方向に最小の回避量で補正したときの正方向の補正値と負方向に最小の回避量で補正したときの負方向の補正値を各々演算し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の小さい補正値を第1バッファに格納し、前記正方向の補正値と前記負方向の補正値のうち絶対値の大きい補正値を第2バッファに格納し、前記第1バッファに格納された絶対値の小さい補正値と前記第2バッファに格納された絶対値の大きい補正値を一定周期で切り換えて出力し、
    加算部が、前記補正値演算部の出力を前記各相の電圧指令値にそれぞれ加算し、
    キャリア変調部が、前記加算部の出力と2N個のキャリア信号との比較に基づいて、前記各セルの前記スイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とする直列多重インバータの制御方法。
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