JP7316202B2 - 水域構造物の補強部材および補強工法 - Google Patents
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しかし、1つのストラット部材を既設鋼管杭に設置する手順は、1サイクルが煩雑であることに加え、フロータの操作が潜水士の手作業となるため、施工上の負荷が大きいという問題があった。
また、2つ以上のストラット部材を連結する場合、連結部のさや管は、後行のストラット部材によって閉合されるまで仮固定しなければならず、加えて水中作業であることにより、作業負荷が高いという課題があった。
伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材と、
前記ストラット部材の両端部にそれぞれ設けられて、前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合可能な結合部とを備え、
複数のストラット部材は、連結部において前記結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内において前記ヒンジ部を軸として回動可能な一体化ストラット部材となっていることを特徴とする。
また、複数のストラット部材は、連結部において結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部を軸として回動可能な一体化ストラット部材となっているので、結合部を杭に結合することによって、従来要していた仮固定の必要がない。このため、水中での作業負担を軽減できる。
さらに、複数のストラット部材は、連結部において結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部を軸として回動可能であるので、ストラット部材をヒンジ部によって水平面内において回動することによって、一体化ストラット部材、つまり補強部材の平面視における形状を適宜変更することができる。したがって、補強部材を容易に杭群に配置して、複数の結合部を杭群の複数の杭に容易に結合できる。
前記ストラット部材の前記連結部において、前記結合部どうしは、前記半割鞘管部どうしをヒンジ部によって結合することによって、連結されていてもよい。
前記補強部材を水面に浮かべ、当該補強部材を前記杭群の間まで曳航する曳航工程と、
前記杭群の上下方向所定部位において、前記補強部材の複数の結合部を前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合する結合工程とを含むことを特徴とする。
前記結合工程の後、前記入れ子状の伸縮要素どうし間に凝固材を注入してもよい。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態に係る補強部材10を示す平面図である。
この補強部材10は、図4に示すように、水面上に突出した複数の鋼管杭(杭)20からなる杭群を備えた下部構造物21と、杭群の上部に取り付けた上部構造物22とを備えた水域構造物1である桟橋1を補強する際に使用されるものであり、上部構造物22の下部空間および水中で、下部構造物21の補強に供する伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材11と、ストラット部材11の両端部にそれぞれ設けられて杭群の複数の杭20にそれぞれ結合可能な結合部12とを備えている。
ここで、内管11bの一端部とは当該内管11bに結合部12が固定されている側の端部のことを言い、外管11aの一端部とは当該外管11aに結合部12が固定されている側と反対側の端部のことを言う。
また、外管11aの一端部には、外管11aの全内周に亘って前記隙間をシールするためのシール部材13aが設けられ、内管11bの他端部には内管11bの全外周に亘って前記隙間をシールするシール部材13bが設けられている。
これらシール部材13a,13bと外管11aと内管11bとによって前記隙間は密封され、当該隙間に膨張モルタル等の凝固材を注入する際に、当該凝固材の漏洩を防止して効率よく注入作業を行うことができる。
また、半割鞘管部12aの他端部には、ヒンジ部15を構成する、筒部15bを備えたプレート15aが半割鞘管部12aの径方向外側に突出して設けられている。
そして、一方の結合部12と他方の結合部12とは、プレート15a,15aの筒部15b,15bをヒンジ軸15cによって軸回りに正逆方向に回転可能に同軸に支持することによって、ヒンジ軸15cを軸として正逆方向に回転可能となっており、これによって2本のストラット部材11,11が水平面内においてヒンジ軸15cを軸として回動可能となっている。つまり、2本のストラット部材11,11はヒンジ軸15cを軸として開閉可能となっている。
そして、ストラット部材11,11を開いて直線状に配置すると、半割鞘管部12a,12aが円筒状になるように閉じて、フランジ部12b,12bが互いに当接するとともに、プレート15a,15aが当接する。この状態において、フランジ部12b,12bに設けられたボルト挿通孔17,17は同軸に配置され、プレート15a,15aに設けられたボルト挿通孔18,18も同軸に配置される。したがって、同軸に配置されたボルト挿通孔17,17およびボルト挿通孔18,18にボルト25を挿通してナットで締め付けることによって、半割鞘管部12a,12aどうしが結合した状態で強固に固定される。これによって、ストラット部材11,11が直線状に配置された状態で強固に固定される。
なお、ボルト挿通孔18に挿通するボルト25がなくても、半割鞘管部12a,12aどうしを強固に結合することができれば、ボルト挿通孔18および当該ボルト挿通孔18に挿通するボルト25は設けなくてもよい。
また、一体化ストラット部材16の両端部において、半割鞘管部12aを有する結合部12には、これと対称的に別の結合部12が配置されている。この別の結合部12も同様に、半割鞘管部12a、フランジ部12bおよびプレート15aを有している。
そして、一体化ストラット部材16の両端部にある結合部12,12は、ストラット部材11,11の連結部における結合部12,12と同様にして、ヒンジ部15によって、半割鞘管部12a,12aが回動して開閉するようになっている。
すなわち、図5に示すように、2本のストラット部材11,11の連結部において、一方(右方)のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において所定角度だけ回動させることによって、折れ曲がった平面形状となり、また、少なくともいずれか一方のストラット部材11を延伸することによっても平面視における形状が変形可能である。また、図6に示すように、2本のストラット部材11,11の連結部において、一方(右方)のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において回動させることによって折り畳んだ平面形状となり、コンパクトなものとなる。
まず、桟橋1(図4および図8参照)から離れた位置で、補強部材10を水面に浮かべる。補強部材10は連結された2本のストラット部材11,11を備えており、ストラット部材11,11は鋼管によって形成されているので、補強部材10が水没しないよう浮力によって運搬を容易化するフロータを取り付ける。あるいは、補強部材10の両端を水密に密封しておき、補強部材10自身にフロータの機能をもたせてもよい。あるいは、これらの組み合わせにより、補強部材10を水面に浮かべる。
なお、補強部材10を複数の杭20に取り付けた状態では、ストラット部材11が伸縮可能であるため、杭20が鉛直方向に延在しておらず傾斜していても、補強部材10を上下方向にスライドさせることが可能である。また、ブラケット26は杭20に予め取り付けておいてもよいし、杭20を施工した後当該杭に取り付けてもよい。
すなわち、外管11aに、当該外管11aと内管11bとの間の隙間に連通する図示しない注入孔と空気抜き孔を外管11aの径方向に対向して設けておき、注入孔から膨張モルタルを前記隙間に注入し、当該隙間に存在していた空気を空気抜き孔から排出することによって、隙間に膨張モルタルを隙間なく充填する。これによって、ストラット部材11の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうしが膨張モルタルによって強固に結合され、複数の杭20を剛に連結することができる。
なお、上述したように、外管11aと内管11bとの間の隙間は軸方向両端部においてシール部材13a,13bによって密封されているので、当該軸方向両端部から膨張モルタスが漏洩するのを防止している。
さらに、複数のストラット部材11は、連結部において結合部12,12どうしをヒンジ部15によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部15を軸として回動可能であるので、ストラット部材11をヒンジ部15によって水平面内において回動することによって、一体化ストラット部材16、つまり補強部材10の平面視における形状を適宜変更することができる。したがって、補強部材10を容易に杭群に配置して複数の結合部12を杭群の複数の杭20に容易に結合できる。
また、結合部12を杭20に結合した結合工程の後、入れ子状の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうし間に凝固材を注入するので、ストラット部材11の伸縮要素どうしが凝固材によって強固に結合され、2本の杭20,20を剛に連結することができる。
加えて、結合工程において、結合部12を杭20に結合した後、結合部12と杭20との間に凝固材を注入するので、結合部12を杭20に強固に結合することができる。
図9~図11は、第2の実施の形態の補強部材10Aを示す平面図である。当該補強部材10Aが第1の実施の形態の補強部材10と主に異なる点は、ストラット部材11,11の連結部における結合部12,12の取付構造であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
また、本実施の形態では、一方のストラット部材11は、他方のストラット部材11より長くなっているが、等しい長さであってもよい。
図12~図14は、第3の実施の形態の補強部材10Bを示す平面図である。当該補強部材10Bが第1の実施の形態の補強部材10と主に異なる点は、3本のストラット部材11を連結することによって、一体化ストラット部材16を構成した点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
また、図12において、左側のストラット部材11と中央側のストラット部材11とを連結している結合部12,12は、ヒンジ部15を下側に、フランジ部12b,12bを上側にして配置されている。また、右側のストラット部材11と中央側のストラット部材11とを連結している結合部12,12は、ヒンジ部15を上側に、フランジ部12b,12bを下側にして配置されている。
この状態において、結合部12,12どうしがボルト25,25によって締結されることによって、補強部材10Bは一直線状になった状態で固定されている。
すなわち、図13に示すように、中央側のストラット部材11と左側のストラット部材11の連結部において、左側のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において所定角度だけ回動させることによって、折れ曲がり、さらに、中央側のストラット部材11と右側のストラット部材11の連結部において、右側のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において回動させることによって折り畳んだ状態となる。
すなわち、左右に所定間隔をもって隣り合う4本の杭20のうち、中央側の2本の杭20,20の間まで補強部材10Bを曳航したうえで、図15(a)に示すように、中央部のストラット部材11を延伸することによって、当該ストラット部材11の両端の結合部12,12をそれぞれ前記2本の杭20,20の外周略半分に係合する。
また、図15(a)において、下側のストラット部材11をヒンジ部15を軸として、時計回りに回転させるとともに、当該ストラット部材11の端部の外側にある結合部12をヒンジ部15を軸として反時計回りに回転させて開く。
そして、補強部材10Bを位置決めした後、第1の実施の形態と同様に、結合部12と杭20との間の隙間に膨張モルタル等の凝固材を注入する。これによって、結合部12を杭20に強固に結合する。
図16~図18は、第4の実施の形態の補強部材10Cを示す平面図である。当該補強部材10Cが第3の実施の形態の補強部材10Bと主に異なる点は、ストラット部材11,11の連結部における結合部12,12の取付構造であるので、以下ではこの点について説明し、第3の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
つまり、図16に示す状態から、左角部に位置するヒンジ部15を軸として左側のストラット11を時計回りに270度回転させて折り畳んだ状態において、図17に示すように、右上側の結合部12がその直下に位置する結合部12に干渉するのを防止している。さらに、図16に示す状態から、右角部に位置するヒンジ部15を軸として右側のストラット部材11を時計回りに90度回転させて折り畳むことによって、図17に示すような折り畳んだコンパクトな平面形状となる。
すなわち、左右に所定間隔をもって隣り合う2本の杭20の間まで補強部材10Cを曳航したうえで、図18(a)に示すように、中央部のストラット部材11を延伸することによって、当該ストラット部材11の両端の結合部12,12をそれぞれ2本の杭20,20の外周略半分に係合する。
また、図18(a)において、下側のストラット部材11をヒンジ部15を軸として、反時計回りに回転させるとともに、当該ストラット部材11の端部の外側にある結合部12をヒンジ部15を軸として反時計回りに回転させて開く。
そして、補強部材10Cを位置決めした後、第1の実施の形態と同様に、結合部12と杭20との間の隙間に膨張モルタル等の凝固材を注入する。これによって、結合部12を杭20に強固に結合する。
また、4本のストラット部材11によって、平面視ロ字形に補強部材を構成してもよいし、さらに、平面視四角形以上の多角形に補強部材を構成してもよい。
例えば、図19に示すように、ストラット部材11Aを、中空部を有しかつ軸方向に伸縮可能な1本の可撓性部材11Aで構成し、この可撓性部材の両端部にそれぞれ結合部12,12を取り付けてもよい。
このようなストラット部材11Aを備えた補強部材10Dは、施工時にストラット部材11Aを伸縮させて両結合部12,12間の距離を調整可能とする。そして、図19(b)に示すように、可撓性部材11Aを短縮させた状態で既設杭と既設杭の間に側方から挿入が可能で、延伸させることで両結合部12,12をそれぞれ対応する既設杭に結合できる。
最終的に、固化した充填材が構造部材となるため、可撓性部材11Aには大きな強度は必要なく、結合部12,12を繋いでいることおよび充填材が充填される空間を有していること、が求められる。可撓性部材11Aの素材としては、ゴム、プラスチック等が考えられる。
10,10A~10D 補強部材
11,11A ストラット部材
11a 外管(伸縮要素)
11b 内管(伸縮要素)
12 結合部
12a 半割鞘管部
15 ヒンジ部
16 一体化ストラップ部材
20 杭
21 下部構造物
22 上部構造物
Claims (6)
- 杭群を備えた水域構造物を補強する際に使用される水域構造物の補強部材であって、
伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材と、
前記ストラット部材の両端部にそれぞれ設けられて、前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合可能な結合部とを備え、
複数のストラット部材は、連結部において前記結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内において前記ヒンジ部を軸として回動可能な一体化ストラット部材となっていることを特徴とする水域構造物の補強部材。 - 前記結合部は、前記杭の周囲を包囲する半割形状の半割鞘管部を有し、
前記ストラット部材の前記連結部において、前記結合部どうしは、前記半割鞘管部どうしをヒンジ部によって結合することによって、連結されていることを特徴とする請求項1に記載の水域構造物の補強部材。 - 前記一体化ストラット部材は、水面および/または水中において、前記ストラット部材が、前記伸縮機能によって水平方向に伸縮および/または前記ヒンジ部によって水平面内において回動することによって、平面視における形状が変形可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の水域構造物の補強部材。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の水域構造物の補強部材を使用して前記水域構造物を補強する水域構造物の補強工法であって、
前記補強部材を水面に浮かべ、当該補強部材を前記杭群の間まで曳航する曳航工程と、
前記杭群の上下方向所定部位において、前記補強部材の複数の結合部を前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合する結合工程とを含むことを特徴とする水域構造物の補強工法。 - 前記補強部材の前記ストラット部材を入れ子状にして伸縮可能となし、
前記結合工程の後、前記入れ子状の伸縮要素どうし間に凝固材を注入することを特徴とする請求項4に記載の水域構造物の補強工法。 - 前記結合工程において、前記結合部を前記杭に結合した後、前記結合部と前記杭との間に凝固材を注入すること特徴とする請求項4または5に記載の水域構造物の補強工法。
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