以下では、本発明の実施形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、車両用ブレーキ液圧制御装置の前後上下左右を言うときは、図1に示す方向を基準とする。なお、図1に示す方向は、実際の装置の設置状態とは必ずしも一致しない。以下の説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。また、以下では、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置を、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)などバーハンドルタイプの車両に適用した場合を例にして説明するが、搭載される車両を限定するものではない。
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、単に「ブレーキ液圧制御装置」という)Uは、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)などバーハンドルタイプの車両に用いられるものである。搭載される車両においては、前輪のブレーキユニットと後輪のブレーキユニットとがセパレートされていることが好ましい。本実施形態では、後輪の車輪ブレーキに作用するブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御装置について説明する。
(ブレーキ液圧制御装置の構成)
ブレーキ液圧制御装置Uは、図1に示すように、基体100と、駆動源となるモータ(電動モータ)200と、コントロールハウジング300と、制御装置400と、を備えている。電動モータ200は、基体100の後面11bに取り付けられている。コントロールハウジング300は、基体100の前面11a(図3(b)参照)に取り付けられている。制御装置400は、コントロールハウジング300内に収容されている。
ブレーキ液圧制御装置Uは、図2に示す液圧回路U1を具現化したものである。ブレーキ液圧制御装置Uは、車輪ブレーキRのアンチロックブレーキ制御および車輪ブレーキRの加圧制御を実行可能である。
なお、以下では、マスタシリンダMからレギュレータ7に至る液路を「出力液圧路A」と称し、レギュレータ7から出口弁3および車輪ブレーキRに至る流路を「車輪液圧路B」と称する。また、ポンプ5a,5bから車輪液圧路Bに至る一対の流路を「吐出液圧路C,C」と称し、さらに、出口弁3からリザーバ4に至る流路を「開放路D」と称する。また、リザーバ4からポンプ5a,5bおよびサクション弁6に至る流路を「吸入液圧路E」と称する。また、出力液圧路Aから分岐してサクション弁6に至る流路を「分岐液圧路A1」と称する。
図2において、ブレーキ液圧制御装置Uのブレーキ液圧回路U1は、入口ポート21から出口ポート22に至る回路である。入口ポート21には、液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM21に繋がる配管H1が接続されている。出口ポート22には、車輪ブレーキRに至る配管H2が接続されている。
入口ポート21は、図3(a)に示すように、基体100の上面11cの右側領域に形成されている。また、出口ポート22は、入口ポート21とは反対側となる基体100の上面11cの左側領域に形成されている。
図2に戻り、マスタシリンダMには、ブレーキ操作子であるブレーキペダルBPが接続されている。液圧回路U1には、入口弁2、出口弁3、リザーバ4、ポンプ5a,5b、サクション弁6、レギュレータ7が主に備わる。
マスタシリンダMは、運転者がブレーキペダルBPに加えた力に応じたブレーキ液圧を発生する。マスタシリンダMは、配管H1、出力液圧路A、車輪液圧路Bおよび配管H2を介して車輪ブレーキR(ホイールシリンダ)に接続されている。
マスタシリンダMに接続された液路(出力液圧路Aおよび車輪液圧路B)は、通常時、マスタシリンダMから車輪ブレーキRまで連通している。これにより、ブレーキペダルBPの操作で発生したブレーキ液圧が車輪ブレーキRに伝達される。
マスタシリンダMと車輪ブレーキRとを繋ぐ液路上には、レギュレータ7、入口弁2および出口弁3が設けられている。
レギュレータ7は、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能を有する。また、レギュレータ7は、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流が遮断されているときに車輪液圧路Bのブレーキ液圧を所定値以下に調節する機能を有している。レギュレータ7は、カット弁7aとチェック弁7bとを備えている。
レギュレータ7は、図3(b)、図5(a)に示すように、基体100の前面11aの右上部に形成されたカット弁装着穴36に装着される。カット弁装着穴36は、図3(b)に示すように、基体100の前面11aに直交する基準面X1で左右に二分される右側の領域において、右側のポンプ装着穴31(図5(b)参照)のポンプ軸Y1よりも上方となる位置に形成されている。なお、ポンプ軸Y1は、左右のポンプ装着穴31,31の中心軸線である。また、基準面X1は、ポンプ軸Y1を法線とする面であって、電動モータ200の図示しないモータ軸を含む面である。
図2に戻り、カット弁7aは、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁である。カット弁7aは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。すなわち、カット弁7aは、ソレノイドへの通電を制御することによって開弁圧を調整することが可能な構成(リリーフ弁としての機能を併せ備えた構成)となっている。
カット弁7aが、開弁状態にあるときは、ポンプ5a,5bから吐出液圧路C,Cへ吐出して車輪液圧路Bへ流入したブレーキ液が、出力液圧路A、分岐液圧路A1、サクション弁6を通じて吸入液圧路Eに戻ること(循環すること)を許容する状態となる。
また、カット弁7aは、後記する加圧制御を行うときに、制御装置400(図1参照、以下同じ)の制御により閉塞される。そして、カット弁7aは、車輪液圧路Bのブレーキ液圧が出力液圧路Aのブレーキ液圧を上回り、かつ、出力液圧路Aのブレーキ液圧と車輪液圧路Bの液圧との差圧がソレノイドへの通電によって制御される、弁を閉じようとする力を上回ると、車輪液圧路Bのブレーキ液圧を出力液圧路A側へ開放して調節することができる。
チェック弁7bは、カット弁7aに並列に接続されている。このチェック弁7bは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。チェック弁7bはレギュレータ7を構成する常開型電磁弁に一体的に備わる。
入口弁2は、車輪液圧路Bに設けられた常開型電磁弁からなり、レギュレータ7と車輪ブレーキRとの間に設けられている。入口弁2は、開弁状態にあるときに、マスタシリンダMからのブレーキ液圧、またはポンプ5a,5bによって昇圧されたブレーキ液が車輪ブレーキRへ伝達するのを許容する。また、入口弁2は、車輪がロックしそうになったときに制御装置400により閉塞されることで、車輪ブレーキRへ加わるブレーキ液圧を遮断する。
このような入口弁2は、図3(b)、図5(a)に示すように、基体100の前面11aの左上部に設けられた入口弁装着穴32に装着される。入口弁装着穴32は、図3(b)に示すように、基準面X1で左右に二分される左側の領域において、左側のポンプ装着穴31(図6(b)参照)のポンプ軸Y1よりも上方となる位置に形成されている。また、入口弁装着穴32は、基体100の上面11cの出口ポート22と同じ側に形成されている。
図2に戻り、入口弁2にはチェック弁2aが並列に接続されている。チェック弁2aは、車輪ブレーキRからマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁である。チェック弁2aは、ブレーキペダルBPの入力が解除された場合に、入口弁2を閉じた状態にしたときにおいても、車輪ブレーキR側からマスタシリンダM側へのブレーキ液の流入を許容する。チェック弁2aは入口弁2を構成する常開型電磁弁に一体的に備わる。
出口弁3は、常閉型電磁弁からなる。出口弁3は、車輪ブレーキRとリザーバ4との間(車輪液圧路Bと開放路Dとの間)に設けられている。出口弁3は、通常時に閉塞されているが、後輪がロックしそうになったときに制御装置400により開放されることで、車輪ブレーキRへ加わるブレーキ液圧をリザーバ4に逃がす。
このような出口弁3は、図3(b)、図5(a)に示すように、基体100の前面11aの左下部に設けられた出口弁装着穴33に装着される。出口弁装着穴33は、図3(b)に示すように、基準面X1で左右に二分される左側の領域において、左側のポンプ装着穴31(図6(b)参照)のポンプ軸Y1よりも下方となる位置に形成されている。また、出口弁装着穴33は、基体100の上下方向において、入口弁装着穴32と同じ側に形成されている。
図2に戻り、リザーバ4は、出口弁3が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯溜する機能を有している。
リザーバ4は、図4(b)に示すリザーバ装着穴34に装着される。リザーバ装着穴34は、基体100の下面11dの左側領域に開口している。すなわち、リザーバ4は、基体100の左下部に設けられている。
ポンプ5a,5bは、基準面X1(図3(b)参照)を中心として左右対称に配置されている。ポンプ5a,5bは、電動モータ200により駆動されるプランジャポンプである。ポンプ5a,5bは、図示しないプランジャと、図示しない吸入弁および吐出弁とを備えている。一方のポンプ5aは、吸入液圧路Eと一方の吐出液圧路Cとの間に介設されており、他方のポンプ5bは、吸入液圧路Eと他方の吐出液圧路Cとの間に介設されている。ポンプ5a,5bは、電動モータ200の回転力によって駆動される。
ポンプ5a,5bは、ブレーキ液の吐出周期を半周期異ならせている。つまり、ポンプ5a,5bは、吐出サイクルが相互に半周期ずれており、電動モータ200の出力軸が一回転する間に、車輪液圧路Bに対してブレーキ液を2回吐出するように構成されている。
ポンプ5a,5bは、リザーバ4に一時的に貯留されたブレーキ液を吸入して吐出液圧路C,Cに吐出する。また、ポンプ5a,5bは、カット弁7aが閉弁状態にあり、サクション弁6が開弁状態にあるときに、マスタシリンダM、分岐液圧路A1、吸入液圧路Eおよびリザーバ4に貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路C,Cに吐出する。これにより、ブレーキペダルBPの操作によって発生したブレーキ液圧を増圧することが可能となる。さらには、ブレーキペダルBPを操作していない状態でも車輪ブレーキRにブレーキ液圧を作用させること(加圧制御)が可能となる。
このようなポンプ5a,5bは、図3(c)(d)等に示すように、基体100の左側面11e、右側面11fから穿設されたポンプ装着穴31,31に装着されている。
(サクション弁の構成)
サクション弁6は、機械式のサクション弁であり、分岐液圧路A1と吸入液圧路Eとの間を開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。サクション弁6は、マスタシリンダM側(分岐液圧路A1側)のブレーキ液圧と、ポンプ5a,5bの作動で負圧となるポンプ5a,5bの吸入口側(吸入液圧路E側)のブレーキ液圧との圧力差によって開弁するように構成されている。
サクション弁6は、図4(b)、図5(a)等に示すサクション弁装着穴38に装着される。サクション弁装着穴38は、基体100の下面11dの右側領域に開口している。すなわち、サクション弁6は、基体100の右下部に設けられている。
サクション弁6は、図10Aに示すように、常閉の一方向弁61と、プランジャ62と、プランジャ板63と、ダイヤフラム64と、ダイヤフラム64を固定するためのプラグとしての蓋部材65とを備えている。一方向弁61は、基体100のサクション弁装着穴38の底部に形成された収容部としての一方向弁装着穴38aに装着される弁である。一方向弁装着穴38aは、サクション弁装着穴38より小径である。一方向弁装着穴38aには、分岐液圧路A1が連通している。
一方向弁61は、環状の固定部611と、固定部611の上端部に固定されるリテーナ612と、リテーナ612内に配置される大径弁613と、大径弁613の内側に配置される球状の小径弁614と、を備えている。固定部611は、一方向弁装着穴38aの開口部の内壁にかしめ固定されている。固定部611の上端部には、大径弁613が着座する環状の弁座611aが形成されている。弁座611aは、断面テーパ形状に形成されている。
リテーナ612は、断面略ハット状を呈している。リテーナ612の内部には、大径弁613および小径弁614が収容されている。リテーナ612の下端部は、固定部611の上端外周壁に外嵌されている。リテーナ612の周壁および底部には、ブレーキ液の通流を可能とする挿通孔615が形成されている。
大径弁613は、断面凹状を呈している。大径弁613の内側には、小径弁614が収容されている。大径弁613の底部外周面は、固定部611の弁座611aに対応して断面テーパ形状または円弧状に形成されている。大径弁613は、大径弁613とリテーナ612の底部との間に縮設されたコイル状の弁バネ613sによって着座方向に付勢されており、弁座611aに着座している。大径弁613の底部には、挿通孔613aが形成されている。挿通孔613aは、プランジャ62の凸部62aが挿通可能な大きさに形成されている。
挿通孔613aの上側の開口縁部には、環状の弁座613bが形成されている。弁座613bは、断面テーパ形状に形成されており、小径弁614が着座可能である。
小径弁614は、小径弁614とリテーナ612の底部との間に縮設されたコイル状の弁バネ614sによって着座方向に付勢されており、弁座613bに着座している。弁バネ614sは、弁バネ613sよりも小径である。
プランジャ62は、柱状の部材である。プランジャ62の上部は、一方向弁61の固定部611の内側に挿入されている。プランジャ62は、軸方向に直交する方向の断面形状が略三角形状を呈している。これにより、プランジャ62の外面と一方向弁61の固定部611の内面との間に隙間S1が形成されている。隙間S1は、ブレーキ液の通流路となる。
プランジャ62の上端面には、上方へ突出する凸部62aが形成されている。凸部62aは、大径弁613の底部の挿通孔613aに対応する位置に形成されている。凸部62aは、後記するプランジャ62の上動時に挿通孔613a内に挿入され、弁座613bに着座している小径弁614を上方に押圧する。これにより、小径弁614が弁座613bから離座する。
また、プランジャ62の上面は、凸部62a以外は平らに形成されており、大径弁613の底部の下面に当接可能である。プランジャ62の上面は、後記するプランジャ62の上動時に大径弁613の底部の下面に当接して大径弁613を上方に押圧する。このような押圧によって、大径弁613が弁座611aから離座する。なお、プランジャ62の上面や大径弁613の下端面には、ブレーキ液の円滑な通流を可能にする溝や凹部を形成してもよい。
プランジャ62は、プランジャ板63上面に立設された状態で固定されている。
プランジャ板63は、円板状を呈している。プランジャ板63は、ダイヤフラム64の上面中央部に載置されている。プランジャ板63の上面には、プランジャ62の下部を嵌合して保持する環状のリブ63aが形成されている。また、プランジャ板63の外周縁部は、上方へ向けて断面弧状に立ち上がっている。
ダイヤフラム64は、サクション弁装着穴38の内周面に密着する環状のシール部641と、シール部641の径方向内側に連続し、プランジャ62を押動する薄膜駆動部642とを備える。
シール部641は、第一シール部643と、第一シール部643に連続してサクション弁装着穴38の開口部と反対側となる上方に延在する環状のカップシール部644とを備えている。
第一シール部643は、径方向に厚みを備えて環状に形成されており、サクション弁装着穴38の開口部側の内周面に密着し、ポンプ作動時に発生する負圧によって外部から空気を吸い込まないようにシールしている。カップシール部644は、断面略カップ形状であり、サクション弁装着穴38の開口部と反対側となる内周面に密着してシールしている。カップシール部644は、例えば、サクション弁6が開弁固着した場合において、マスタシリンダM側のブレーキ液を受けたときに、外部にブレーキ液が漏れないようにしている。
薄膜駆動部642は、シール部641よりも薄く形成されており、シール部641から径方向内側に向けて円弧状に延在する立上部646と、立上部646の径方向内側に連続する平部647とを備えている。ダイヤフラム64で仕切られる負圧室6a内が負圧になると、立上部646が弾性変形して平部647が一方向弁61側に持ち上がるように移動する。平部647の下面には、蓋部材65の上面に対して平部647が密着するのを防ぐための環状のリブ645が形成されている。
ダイヤフラム64の有効径L1は、図10Bに示すように、一方向弁装着穴38aの内径L3よりも大きく設定されている。つまり、一方向弁装着穴38a内に配置される大径弁613の外径よりも有効径L1は必ず大きくなり、これによって、ダイヤフラム64の有効径L1部分の受圧面積が大径弁613の受圧面積よりも必然的に大きくなるように設定されている。このような大きさとすることによって、ブレーキペダルBPの操作時にポンプ加圧する場合に、マスタシリンダM側のブレーキ液圧が高圧である場合でも、サクション弁6を確実に開弁することができる。
蓋部材65は、サクション弁装着穴38の開口部の内側に挿入され、ダイヤフラム64をサクション弁装着穴38内(基体100内)に固定する部材である。蓋部材65は、基部651と、嵌合部652と、抜け止め部653と、リップ部654と、大気連通孔655とを備えている。
嵌合部652は、径方向外側に延在するフランジ状を呈しており、サクション弁装着穴38の内周面に嵌合される。嵌合部652には、抜け止め用の係止リング656が軸方向外側から係止される。抜け止め部653は、嵌合部652の上面を利用して形成されている。抜け止め部653には、ダイヤフラム64の第一シール部643が外嵌されている。リップ部654は、抜け止め部653に連続しており、抜け止め部653から上方に向けて膨出している。リップ部654の上端部は、円弧状となっている。リップ部654は、ダイヤフラム64の立上部646の下方に位置している。リップ部654は、立上部646の下方に位置することで、例えば、サクション弁6が開弁固着した場合において、負圧室6a内にマスタシリンダM側からのブレーキ液圧が作用した場合に、必要以上にダイヤフラム64が変形することを防止している。
図2に戻り、吸入液圧路Eには、チェック弁8が設けられている。チェック弁8は、リザーバ4側からポンプ5a,5b側へのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
また、出力液圧路Aには、液圧センサ9が配置されている。液圧センサ9は、出力液圧路Aのブレーキ液圧、すなわち、マスタシリンダMにおけるブレーキ液圧の大きさを計測するものである。
液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、制御装置400によりマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されているか否か、すなわち、ブレーキペダルBPが踏まれているか否かが判定される。さらに、液圧センサ9で計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、加圧制御等が行われる。
電動モータ200は、2つのポンプ5a,5bの共通の動力源であり、制御装置400からの指令に基づいて作動する。電動モータ200は、図4(a)に示すように、基体100の後面(他方の面)11bの円形凹状のモータ軸挿入穴39に図示しないモータ軸を挿入して取り付けられる。
制御装置400(図1参照)は、液圧センサ9、図示しない車輪速センサ、車体の動きを計測する加速度センサやヨーレイトセンサ、およびレーダカメラ等の外界センサ等からの出力に基づいて、レギュレータ7のカット弁7a、入口弁2および出口弁3の開閉、並びに、電動モータ200の作動を制御する。
次に、図2の液圧回路U1を参照しつつ、制御装置400によって実現される通常のブレーキ、アンチロックブレーキ制御および加圧制御について説明する。
なお、液圧回路U1の説明において、太い一点鎖線で示す液圧路は、マスタシリンダMで昇圧された作動液が作用している部分である。また、同様に、太い実線で示す液圧路は、昇圧された作動液が作用している部分であり、太い破線で示す液圧路は、ポンプ5に作動液が吸引されて負圧となる部分である。
(通常のブレーキ)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ時においては、前記した複数の電磁弁を駆動させる複数の電磁コイルがいずれも制御装置400によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキにおいては、カット弁7aと入口弁2とが開弁状態になっており、出口弁3が閉弁状態になっている。また、サクション弁6は、一方向弁61が閉弁状態になっている。
このような状態で運転者がブレーキペダルBPを踏み込むと、図11Aに示すように、その踏力に起因して発生したブレーキ液圧は、そのまま車輪ブレーキRに伝達され、車輪が制動されることとなる。
この場合、サクション弁6には、マスタシリンダMからのブレーキ液圧が分岐液圧路A1を介して作用する。これにより、一方向弁61の大径弁613および小径弁614(図10A参照、以下同じ)がブレーキ液圧を受けてそれぞれ着座し、閉弁状態が維持される。つまり、吸入液圧路E側にマスタシリンダMからのブレーキ液圧が作用することはない。
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、車輪ブレーキRに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、図示しない車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置400によって判断される。
ブレーキペダルBPを踏み込んでいる最中に、車輪がロック状態に入りそうになると、制御装置400によりアンチロックブレーキ制御が開始される。
減圧制御では、制御装置400により入口弁2が閉弁状態にされるとともに、出口弁3が開弁状態にされる。このようにすると、車輪ブレーキRに通じる車輪液圧路Bのブレーキ液が開放路Dを通ってリザーバ4に流入する。その結果、車輪ブレーキRに作用していたブレーキ液圧が減圧される。
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400により電動モータ200を駆動させてポンプ5a,5bを作動させ、リザーバ4に貯留されたブレーキ液を、吐出液圧路Cを介して車輪液圧路B側に還流する。
また、一定に保持する制御では、制御装置400により入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされる。このようにすると、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められる。その結果、車輪ブレーキRに作用していたブレーキ液圧が一定に保持される。
また、増圧制御では、制御装置400により、入口弁2が開弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。このようにすると、ブレーキペダルBPの踏力に起因して発生したブレーキ液圧が車輪ブレーキRに直接作用する。その結果、車輪ブレーキRに作用するブレーキ液圧が増圧される。
(加圧制御)
ブレーキペダルBPの操作がない非操作時において、制御装置400により車輪を制動すべきと判断された場合には、制御装置400が、図11Bに示すように、カット弁7aを励磁してこれを閉弁状態にするとともに、ポンプ5a,5bを駆動する。
ポンプ5a,5bが駆動されると、吸入液圧路Eのブレーキ液がポンプ5a,5bに吸引され、吸入液圧路Eが負圧になる。これによって、吸入液圧路Eに連通するサクション弁6の負圧室6a(図10A参照)が負圧になり、この負圧でダイヤフラム64の薄膜駆動部642が一方向弁61側に弾性変形する。この弾性変形でプランジャ62の上面が、大径弁613の下面に当接し、大径弁613を上方へ押し上げる。
これによって、図11Cに示すように、大径弁613が環状の弁座611aから離座し、分岐液圧路A1がプランジャ62の隙間S1を通じて負圧室6aと連通する。この連通によって、マスタシリンダM側のブレーキ液が、分岐液圧路A1から一方向弁61を通じて負圧室6aに流入し、さらに、負圧室6aから吸入液圧路Eに流入してポンプ5a,5bに吸引される。
ポンプ5a,5bにより加圧されたブレーキ液は、図11Bに示すように、ポンプ5a,5bから車輪液圧路Bに吐出されて車輪ブレーキRに作用する。これにより、車輪が制動されることとなる。
次に、ブレーキペダルBPが操作されている操作時において、制御装置400により車輪を制動すべきと判断された場合の作用について説明する。この場合にも、図11Dに示すように、制御装置400が、カット弁7aを励磁してこれを閉弁状態にするとともに、ポンプ5a,5bを駆動する。
ポンプ5a,5bが駆動されると、前記と同様に、吸入液圧路Eのブレーキ液がポンプ5a,5bに吸引され、吸入液圧路Eが負圧になる。これによって、吸入液圧路Eに連通するサクション弁6の負圧室6aが負圧になり、この負圧でダイヤフラム64の薄膜駆動部642が一方向弁61側に弾性変形し、プランジャ62の上面の凸部62aが小径弁614に当接する。この場合、小径弁614には、運転者の踏力に起因して発生したマスタシリンダM側のブレーキ液圧による押圧力および弁バネ614sの付勢力が作用している。このため、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が、小径弁614に作用している前記押圧力と前記付勢力との合力を上回る状態になると、小径弁614が弁座613bから離座する。つまり、小径弁614は、押し上げる力と前記合力との差圧で開くようになっている。
小径弁614が離座すると、図11Eに示すように、離座した隙間およびプランジャ62の隙間S1を通じて、分岐液圧路A1が負圧室6aと連通する。この連通によって、マスタシリンダM側のブレーキ液が、分岐液圧路A1から一方向弁61を通じて負圧室6aに流入し、さらに、負圧室6aから吸入液圧路Eに流入してポンプ5a,5bに吸引される。
このとき、負圧室6aにマスタシリンダM側のブレーキ液が流入すると、マスタシリンダM側のブレーキ液圧がダイヤフラム64に作用し、薄膜駆動部642が蓋部材65側に戻る。これにより、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が消滅し、小径弁614が弁座613bに着座する。
ポンプ5a,5bの作動中は、上記の作用が繰り返し行われる。つまり、小径弁614の開閉が繰り返し行われて、ポンプ5a,5bにより加圧されたブレーキ液が、車輪ブレーキRに作用する。これにより、車輪が制動されることとなる。
以上のような加圧制御等が行われる際に、2つのポンプ5a,5bの協働作用によって、ポンプ5a,5bから吐出されたブレーキ液の脈動が好適に減衰される。
具体的に、ポンプ5aの単独の吐出は、図12(a)に示すように、不連続な二つの山で表される。一方、ポンプ5bの単独の吐出は、ポンプ5aの吐出から半周期ずれた180度の位相で行われ、図12(b)に示すように、不連続な二つの山で表される。したがって、2つのポンプ5a,5bを合わせた吐出は、図12(c)に示すように、連続する4つの山で表されることとなる。
これにより、本実施形態では、例えば、1つのポンプ5aで吐出を行う場合に比べて、吐出脈動の低減効果が得られることとなる。
次に、ブレーキ液圧制御装置Uの具体的な構造を、図1、図3から図9を参照して詳細に説明する。
ブレーキ液圧制御装置Uは、前記したように、基体100と、電動モータ200と、コントロールハウジング300と、制御装置400とを備えて構成されている(図1参照)。
基体100は、略直方体を呈するアルミニウム合金製の押出材または鋳造品からなる。基体100の前面11aは、実質的に凹凸のない平面に成形されている。基体100には、一つのブレーキ出力系統(図2参照)を構成する流路構成部が備わる。
図3(a)~(d)、図4(a)(b)を適宜参照して説明すると、流路構成部は、前面11aに開口する複数の装着穴、後面11bに開口するモータ軸挿入穴39を備えている。さらに、流路構成部は、上面11cに開口する入口ポート21および出口ポート22のほか、左側面11eおよび右側面11fに開口するポンプ装着穴31,31を有している。
基体100の前面11aには、装着穴として入口弁装着穴32、出口弁装着穴33、カット弁装着穴36およびセンサ装着穴37が形成されている。入口弁装着穴32は、基準面X1の左側の領域において、ポンプ装着穴31のポンプ軸Y1よりも基体100の上部側に設けられている。出口弁装着穴33は、基準面X1の左側の領域において、ポンプ装着穴31のポンプ軸Y1よりも基体100の下部側に設けられている。
カット弁装着穴36は、基準面X1の右側の領域において、ポンプ装着穴31のポンプ軸Y1よりも基体100の上部側に設けられている。入口弁装着穴32とカット弁装着穴36とは、基準面X1を挟んだ対称位置に設けられている。
なお、これらの入口弁装着穴32、出口弁装着穴33およびカット弁装着穴36は、口径が総て同一である。
入口弁装着穴32には入口弁2が装着され、出口弁装着穴33には出口弁3が装着される。また、カット弁装着穴36にはカット弁7aが装着される。
センサ装着穴37は、基準面X1の右側の領域において、ポンプ装着穴31のポンプ軸Y1にかかる状態で基体100の下部側に設けられている。なお、センサ装着穴37の中心位置と出口弁装着穴33の中心位置とは、基準面X1を挟んだ対称位置となっている。
基体100の後面11bの中央部には、モータ軸挿入穴39が形成されている。そして、モータ軸挿入穴39の周りには、後面11bよりも一段深くされた後面視U字状の凹部11b1が形成されている。この凹部11b1には、電動モータ200(図1参照、以下同じ)のハウジングの前面カバーが装着される。電動モータ200は、後面11bに設けられた取付穴11b2(図4(a)参照)に取付ねじ(不図示)で取り付けられる。電動モータ200と後面11bとの間には、シール材が介設される。
後面11bには、モータ軸挿入穴39の上方に、電動モータ200のバスバー(不図示)が挿入される孔部39aが開口している。孔部39aは、基体100の前後に貫通し、前面11aにおいて基準面X1に交差するように開口している。
基体100の上面11cには、入口ポート21および出口ポート22が凹設されている。入口ポート21は、図3(a)(b)に示すように、カット弁装着穴36に対応する位置関係で設けられている。出口ポート22は、入口弁装着穴32に対応する位置関係で設けられている。入口ポート21には、マスタシリンダMからの配管H1(図2参照)が接続される。また出口ポート22には、車輪ブレーキRに至る配管H2(図2参照)が接続される。
また、基体100の上面11cの後部側の左右領域には、図3(a)に示すように、入口ポート21等の形成されない空きスペースが形成されている。つまり、基体100の上面11cには、入口ポート21等を形成可能な空きスペースが存在している。
基体100の下面11dの左側領域には、図4(b)に示すように、リザーバ4を装着するリザーバ装着穴34が凹設されている。また、基体100の下面11dの右側領域には、サクション弁6を装着するサクション弁装着穴38が凹設されている。リザーバ装着穴34およびサクション弁装着穴38は口径が同一である。
基体100の左側面11eには、図3(c)に示すように、ポンプ5aを装着するポンプ装着穴31が凹設されている。また、基体100の右側面11fには、図3(d)に示すように、ポンプ5bを装着するポンプ装着穴31が凹設されている。ポンプ装着穴31,31内において、ポンプ5a,5bは電動モータ200の出力軸に備わる図示しないカム部材に係合している。
コントロールハウジング300(図1参照)内には、制御装置400に接続される図示しない電磁コイルが備わる。電磁コイルは、基体100から突出した入口弁2、出口弁3、カット弁7aに取り付けられる。コントロールハウジング300は、入口弁2、出口弁3、カット弁7a、液圧センサ9やバスバーを覆った状態で、基体100の前面11aに一体的に固着される。
次に、基体100に備わる流路構成部の流路を詳細に説明する。なお、説明において、流路構成部(基体100)における前面11a、後面11b、上面11c、下面11d、左側面11eおよび右側面11fをいうときには、図3各図、図4各図を参照する。
図5(a)(b)、図8、図9に示すように、入口ポート21は、有底円筒状の穴であり、第一流路51(図8参照)を介してカット弁装着穴36と連通している。第一流路51は、入口ポート21の底部から基体100の下面11dに向かって穿設された縦孔51aと、基体100の右側面11fからカット弁装着穴36に向かって穿設された横孔51bとからなる。横孔51bは、中間部分が縦孔51aに交差している。また、横孔51bは、その左端部がカット弁装着穴36の側部に至る。
ここで、入口ポート21の底部から第一流路51を通じて、カット弁装着穴36の側部に至る流路は、図2に示す出力液圧路Aに相当する。
カット弁装着穴36は、有底の段付き円筒状の穴である。カット弁装着穴36は、図9に示すように、第二流路52、第三流路53および第四流路54を通じて入口弁装着穴32と連通している。第二流路52は、カット弁装着穴36の底部から基体100の後面11bに向かって穿設された横孔52aと、基体100の右側面11fから左側面11eに向かって穿設された横孔52bとからなる。横孔52bの左端部は横孔52aの後端部に連通している。
第三流路53は、縦孔53aと、横孔53bと、縦孔53cとからなる。縦孔53aと、横孔53bと、縦孔53cとは、後面視で基体100の左右に亘る略門型(逆凹形状)の流路を形成している。
縦孔53aは、基体100の右側領域の上面11cから下面11dに向かって穿設されている。縦孔53aの下端部は、右側のポンプ装着穴31の側部に至る。縦孔53aの下部は、第二流路52の横孔52bに交差している。
横孔53bは、基体100の左側面11eから右側面11fに向かって穿設されている。横孔53bの右端部は、縦孔53aの上部に交差している。
縦孔53cは、基体100の左側領域の上面11cから下面11dに向かって穿設されている。縦孔53cの下端部は、左側のポンプ装着穴31の側部に至る。縦孔53cの上部は、横孔53bの左端部に連通している。
第四流路54は、入口弁装着穴32の底部から基体100の後面11bに向かって穿設された横孔54aと、基体100の左側面11eから右側面11fに向かって穿設された横孔54bとからなる。横孔54bの右端部は横孔54aの後端部に連通している。
出口ポート22は、有底円筒状の穴であり、第五流路55(図5(a)参照)を介して入口弁装着穴32と連通している。第五流路55は、出口ポート22の底部から基体100の下面11dに向かって穿設された縦孔55aと、基体100の左側面11eから入口弁装着穴32に向かって穿設された横孔55bとからなる。横孔55bは、中間部分が縦孔55aに交差している。また、横孔55bは、その右端部が入口弁装着穴32の側部に至る。入口弁装着穴32は、有底の段付き円筒状の穴である。
ここで、第二流路52、第三流路53および第四流路54を通じて入口弁装着穴32に至り、さらに第五流路55を通じて出口ポート22に至る流路は、図2に示す車輪液圧路Bに相当する。また、第三流路53の縦孔53aおよび縦孔53cからなる流路は、図2に示す吐出液圧路C,Cに相当する。
カット弁装着穴36の側部には、図8に示すように、第六流路56が上下方向に交差している。第六流路56は、基体100の右側領域の上面11cから下面11dに向かって穿設された縦孔からなる。第六流路56の下端部は、センサ装着穴37の側部に至る。
センサ装着穴37は、有底の段付き円筒状の穴である。センサ装着穴37の底部は、図9に示すように、その後方に配置されたサクション弁装着穴38の一方向弁装着穴38aに直接接続されており、この接続された部分を介してセンサ装着穴37が一方向弁装着穴38aに連通している。
ここで、センサ装着穴37と一方向弁装着穴38aとの接続部分に形成される流路が、図2に示す分岐液圧路A1に相当する。
入口弁装着穴32の側部には、図8に示すように、第七流路57が上下方向に交差している。第七流路57は、基体100の左側領域の上面11cから下面11dに向かって穿設された縦孔からなる。第七流路57の下端部は、出口弁装着穴33の側部に至る。
出口弁装着穴33は、有底の段付き円筒状の穴である。出口弁装着穴33は、図6(b)に示すように、第九流路59を介してリザーバ装着穴34と連通している。第九流路59は、出口弁装着穴33の底部から基体100の後面11bに向かって穿設された横孔59aと、リザーバ装着穴34の底面から基体100の上面11cに向かって穿設された縦孔59bとからなる。縦孔59bの上端部は横孔59aの後端部に連通している。リザーバ装着穴34は、有底円筒状の穴である。
ここで、第九流路59を通じてリザーバ装着穴34に至る流路は、図2に示す開放路Dに相当する。
サクション弁装着穴38は、有底円筒状の穴である。サクション弁装着穴38とリザーバ装着穴34とは、図9に示すように、第八流路58を介して相互に連通している。第八流路58は、縦孔58aと、横孔58bと、縦孔58cとからなる。縦孔58aと、横孔58bと、縦孔58cとは、後面視で基体100の左右に亘る略門型(逆凹形状)の流路を形成している。
縦孔58aは、サクション弁装着穴38の底面から基体100の右側領域の上面11cに向かって穿設されている。縦孔58aの中間部分は、右側のポンプ装着穴31の吸入口となる側部に交差している。縦孔58aは、サクション弁6と一方のポンプ5aとを接続する第一ポンプ吸入路として機能する。
縦孔58cは、リザーバ装着穴34の底面から基体100の左側領域の上面11cに向かって穿設されている。縦孔58cの中間部分は、左側のポンプ装着穴31の吸入口となる側部に交差している。縦孔58cは、リザーバ4と他方のポンプ5bとを接続する第二ポンプ吸入路として機能する。
横孔58bは、基体100の右側面11fから左側面11eに向かって穿設されている。横孔58bの右部は縦孔58aの上端部に連通し、横孔58bの左端部は縦孔58cの上端部に連通している。横孔58bは、縦孔58aと縦孔58cとを接続する第三ポンプ吸入路として機能する。
このような構成とすることによって、リザーバ4と、サクション弁6と、ポンプ5a,5bの各吸入口とが1つのポンプ吸入路として機能する第八流路58で接続されることとなる。
なお、縦孔58cの下端部に、図2に示すチェック弁8(一方向弁)が装着される。
入口ポート21に近い側となる右側のポンプ装着穴31は、その吐出側が、第三流路53を介して左側領域にある第四流路54に連通し、この第四流路54を介して入口弁装着穴32に連通している。また、ポンプ装着穴31は、その吐出側が、入口弁装着穴32に連通した後、第五流路55を介して出口ポート22に連通している。
また、右側のポンプ装着穴31は、その吸入側が、第八流路58の縦孔58aを介して右側領域にあるサクション弁装着穴38の負圧室6aに連通している。さらに、右側のポンプ装着穴31は、その吸入側が、第八流路58を介して、左側のポンプ装着穴31の吸入側およびリザーバ装着穴34に連通している。
一方、出口ポート22に近い側となる左側のポンプ装着穴31は、その吐出側が、第三流路53の縦孔53cおよび第四流路54を介して入口弁装着穴32に連通しているとともに、入口弁装着穴32から第五流路55を介して出口ポート22に連通している。また、左側のポンプ装着穴31は、その吸入側が、第八流路58の縦孔58cを介してリザーバ装着穴34に連通している。さらに、左側のポンプ装着穴31は、その吸入側が、第八流路58を介して、右側のポンプ装着穴31の吸入側およびサクション弁装着穴38に連通している。
続いて、通常のブレーキ、アンチロックブレーキ制御および加圧制御を行った場合のブレーキ液の流れを詳細に説明する。
(通常のブレーキ)
通常のブレーキにおいては、前記したように、サクション弁6が閉弁状態にあり、カット弁7aとなる常開型の電磁弁が開弁状態にある。これにより、図13Aに示すように、入口ポート21から流入したブレーキ液は、第一流路51を通ってカット弁装着穴36に流入し、開弁状態にある電磁弁の内部を通って第二流路52に流入する。そして、第二流路52に流入したブレーキ液は、第二流路52から第三流路53および第四流路54を介して、左側領域の入口弁装着穴32に流入する。
入口弁装着穴32に流入したブレーキ液は、開弁状態にある入口弁2の内部を通り第五流路55を介して出口ポート22に流入し、出口ポート22を通って車輪ブレーキRに至る。
なお、入口ポート21から第一流路51を通ってカット弁装着穴36に流入したブレーキ液は、第六流路56を通じてセンサ装着穴37に流入する。そして、液圧センサ9によってマスタシリンダMからのブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
(アンチロックブレーキ制御)
ブレーキ液の流れを示す矢印の図示は省略するが、アンチロックブレーキ制御によって、例えば、車輪ブレーキRに作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が閉弁状態にされ、出口弁3が開弁状態にされる。そうすると、車輪ブレーキRに作用していたブレーキ液は、出口ポート22および第五流路55を通って入口弁装着穴32の側部に流入する。
そして、入口弁装着穴32に流入したブレーキ液は、入口弁2が閉弁状態にあるので、第四流路54に流入することなく、側方の第七流路57を通じて出口弁装着穴33に流入する。
そして、出口弁装着穴33に流入したブレーキ液は、出口弁3が開弁状態にあるので、その内部を通って第九流路59に流入し、リザーバ装着穴34に流入する。なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によって電動モータ200が駆動されてポンプ5a,5bが作動される。その結果、リザーバ装着穴34に貯留されていたブレーキ液が第八流路58を介してポンプ装着穴31,31に吸入され、第三流路53へ吐出される。
第三流路53へ吐出されたブレーキ液は、第三流路53を通じて基体100の左側領域から右側領域に流れ、第二流路52を通じてカット弁装着穴36に流入する。カット弁装着穴36に流入したブレーキ液は、カット弁7aが開弁状態にあるので、その内部を通って第一流路51に流れ、入口ポート21を通ってマスタシリンダM側に戻される。
次に、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキR(図2参照)に作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされるので、第五流路55へのブレーキ液の流入も第五流路55からのブレーキ液の流出も起こらない。
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキR(図2参照)に作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が開弁状態にされ、出口弁3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、通常のブレーキ制御の場合と同じになる。
(加圧制御)
ブレーキペダルBPの操作がない非操作時の加圧制御では、前記したように、制御装置400によってカット弁7aが閉弁状態にされ、電動モータ200を作動させてポンプ5a,5b(図2参照、以下同じ)が駆動される。ポンプ5a,5bが駆動されると、図13Bに示すように、第八流路58のブレーキ液がポンプ5a,5bに吸引され、第八流路58に連通するサクション弁6の負圧室6aが負圧になる。
これにより、図11Cに示すように、ダイヤフラム64の薄膜駆動部642が一方向弁61側に弾性変形し、プランジャ62の上面が大径弁613の下面に当接して、大径弁613を上方へ押し上げる。この押し上げで、大径弁613が離座する。
そうすると、図13Bに示すように、マスタシリンダM側のブレーキ液が、入口ポート21から第一流路51を通じてカット弁装着穴36に流入する(図中の点線矢印参照)。カット弁装着穴36に流入したブレーキ液は、閉弁状態とされたカット弁7aの側方を通って第六流路56に流入し、センサ装着穴37の内部を通って一方向弁装着穴38aに流入する(図中の点線矢印参照)。そして、一方向弁装着穴38aに流入したブレーキ液が、負圧室6aに流入し、第八流路58の縦孔58aを通じて一方のポンプ装着穴31に吸引される(図中の実線矢印参照)。これとともに、負圧室6aに流入したブレーキ液は、第八流路58の縦孔58a、横孔58bおよび縦孔58cを通じて他方のポンプ装着穴31に吸引される(図中の一点鎖線矢印参照)。
一方のポンプ装着穴31に吸引されたブレーキ液は、一方のポンプ5aにより加圧され(例えば、図12(a)を参照)、第三流路53から第四流路54を通じて入口弁装着穴32に流入し、その後、第五流路55を通じて出口ポート22から車輪ブレーキRに吐出される(図中の点線矢印参照)。
また、他方のポンプ装着穴31に吸引されたブレーキ液は、一方のポンプ5aから半周期ずれてポンプ5bによって加圧され(例えば、図12(b)を参照)、第三流路53(縦孔53c)から第四流路54を通じて入口弁装着穴32に流入し、その後、第五流路55を通じて出口ポート22から車輪ブレーキRに吐出される(図中の一点鎖線矢印および点線矢印参照)。
つまり、一方のポンプ5aがブレーキ液を吐出しているときは、他方のポンプ5bがブレーキ液を吸引し、一方のポンプ5aがブレーキ液を吸引しているときは、他方のポンプ5bがブレーキ液を吐出するようになっている。これにより、ポンプ5a,5bからブレーキ液が図12(c)の如く脈動を低減して吐出され、車輪が制動されることとなる。
ブレーキペダルBPが操作されている操作時の加圧制御では、同様に、制御装置400によってカット弁7aが閉弁状態にされ、電動モータ200を作動させてポンプ5a,5b(図2参照、以下同じ)が駆動される。ポンプ5a,5bが駆動されると、同様に、第八流路58に連通するサクション弁6の負圧室6aが負圧になり、ダイヤフラム64の薄膜駆動部642が一方向弁61側に弾性変形する。
そして、小径弁614を押し上げるプランジャ62の力が、小径弁614に作用しているマスタシリンダM側の押圧力と弁バネ614sの付勢力との合力を上回る状態になると、小径弁614が弁座613bから離座する。
そうすると、図13Bに示すように、前記と同様にして、マスタシリンダM側のブレーキ液が、入口ポート21、第一流路51、カット弁装着穴36、第六流路56、およびセンサ装着穴37の内部を通って一方向弁装着穴38aに流入する。そして、一方向弁装着穴38aに流入したブレーキ液が、負圧室6aから第八流路58を通じてポンプ装着穴31,31に吸引され、第三流路53、第四流路54、入口弁装着穴32および第五流路55を通じて出口ポート22から車輪ブレーキRに吐出される。
なお、前記したように、負圧室6aにマスタシリンダM側のブレーキ液が流入すると、マスタシリンダM側のブレーキ液圧がダイヤフラム64に作用し、薄膜駆動部642が蓋部材65側に戻る。
ポンプ5a,5bの作動中は、上記の作用が繰り返し行われ、ポンプ5a,5bにより加圧されたブレーキ液が、車輪ブレーキRに繰り返し作用する。
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uでは、ダイヤフラム64の有効径L1が一方向弁61を収容する一方向弁装着穴38aの内径L3よりも大径であるので、マスタシリンダM側からのブレーキ液圧が比較的高圧である場合にも、ダイヤフラム64の作動性を高めることができる。したがって、サクション弁6の開弁性を向上させることができる。
また、リザーバ4とサクション弁6とを別体とすることが可能であるので、サクション弁6自体を小型化することができる。また、各部材のレイアウト性の自由度が高まる。
また、一方向弁61は、小径弁614と大径弁613とを備える。これによって、一方向弁61に対する閉弁方向の付勢力を小径弁614と大径弁613とに分けて設定することができ、小径弁614に対する閉弁方向の付勢力を必要以上に大きく設定する必要がなくなる。また、昇圧時においては、大径弁613を開弁して昇圧性能を確保することができる。
また、大径弁613は、小径弁614を囲繞して設けられるので、小径弁614と大径弁613との組み合わせをコンパクトにすることができる。
また、小径弁614、大径弁613、弁座611a、弁座613bおよび弁バネ614s,613sは、ユニット化されて一方向弁装着穴38a(基体100)に取り付けられている。したがって、サクション弁6に対する組付性が向上する。これにより、コストの低減を図ることができる。
また、蓋部材65に、抜け止め部653が設けられているので、抜け止め専用の部品を別途用意する必要がなくなる。
また、シール部641が、第一シール部643と、カップシール部644と、を備える。これにより、基体100の外部に近い側と、これとは反対側となる基体100の内部に近い側とを、別々のシール部で行うことができる。したがって、ダイヤフラム64のシール性を向上させることができる。
また、カップシール部644が備わることで、例えば、サクション弁6が開弁固着した場合において、マスタシリンダM側のブレーキ液を受けたときに、外部にブレーキ液が漏れないようにすることができる。したがって、シール性が向上する。
また、プランジャは、軸方向に直交する断面が略三角形状であるので、プランジャ62の外周面に通路を容易に形成することができ、ブレーキ液の連通性を向上させることができる。また、プランジャ62の前後においてブレーキ液圧(受圧)を同圧として圧力をキャンセルすることができるので、プランジャ62の作動性を向上させることができる。なお、プランジャ62は、断面多角形状であればよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のブレーキ液圧制御装置について説明する。また、以下では、前輪のブレーキユニットと後輪のブレーキユニットとがセパレートされた車両において、後輪の車輪ブレーキに対応するブレーキ液圧制御装置Uを例に挙げて説明する。
なお、液圧回路U2の説明において、太い一点鎖線で示す液圧路は、マスタシリンダMで昇圧された作動液が作用している部分である。また、同様に、太い実線で示す液圧路は、昇圧された作動液が作用している部分であり、太い破線で示す液圧路は、ポンプ5に作動液が吸引されて負圧となる部分である。
また、図15A、図15Bは前記した図10A、図10Bと同一である。
本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、第1実施形態の液圧回路で必要であった入口弁2を無くし、これに相当する制御弁2Aを備えている点である。つまり、本実施形態では入口弁が車輪液圧路B(第2分岐液圧路B1)および吐出液圧路Cに存在しない構成となっている。また、電動モータ50によって1つのポンプ5が駆動される。
ブレーキ液圧制御装置Uは、図14に示す液圧回路U2を備えている。ブレーキ液圧制御装置Uは、車輪ブレーキRのアンチロックブレーキ制御および車輪ブレーキRの加圧ブレーキ制御を実行可能である。
液圧回路U2には、制御弁2A,出口弁3、リザーバ4、ポンプ5、サクション弁6、液圧センサ9および電動モータ50が備わる。
また、液圧回路U2には、制御弁2A,出口弁3の開閉を制御するとともに、ポンプ5の駆動(電動モータ50の駆動)を制御する制御ユニット10が接続されている。液圧回路U2には、作動液が充填されている。
なお、本実施形態では、マスタシリンダMから制御弁2Aに至る液路を「出力液圧路A」と称し、制御弁2Aから車輪ブレーキRに至る流路を「車輪液圧路B」と称する。また、ポンプ5から車輪液圧路Bに至る流路を「吐出液圧路C」と称し、さらに、出口弁3からリザーバ4に至る流路を「開放路D」と称する。また、サクション弁6からポンプ5に至る流路を「吸入液圧路E」と称し、出口弁3とリザーバ4との間の開放路Dから吸入液圧路Eに至る流路を「戻し液圧路F」と称する。また、開放路Dからポンプ5に至る流路を「吸入液圧路E」と称する。また、出力液圧路Aから分岐してサクション弁6に至る流路を「第1分岐液圧路A1」と称し、車輪液圧路Bから分岐して出口弁3に至る流路を「第2分岐液圧路B1」と称する。
なお、液圧回路U2は模式的に示したものであり、液圧回路U2を実現するために、図には示さないが、液路を介さずに弁同士が直接接続さる回路構成とすることも可能である。
マスタシリンダMに接続された液路(出力液圧路Aおよび車輪液圧路B)は、通常時、マスタシリンダMから制御弁2Aを通じて車輪ブレーキRまで連通している。これにより、ブレーキペダルBPの操作で発生した作動液の液圧が車輪ブレーキRに伝達される。
マスタシリンダMと車輪ブレーキRとを繋ぐ液路上には、制御弁2Aおよび出口弁3が設けられている。
制御弁2Aは、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁である。制御弁2Aは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへの作動液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。
制御弁2Aは、開弁状態にあるときに、マスタシリンダMで昇圧された作動液が車輪ブレーキRへ伝達するのを許容する。また、制御弁2Aは、車輪がロックしそうになったときに制御ユニット10により閉塞されることで、車輪ブレーキRへ伝達する作動液を遮断する。
また、制御弁2Aは、後記する加圧ブレーキ制御を行うときに、制御ユニット10の制御によって閉塞される。そして、制御弁2Aは、車輪液圧路Bの作動液の液圧が出力液圧路Aの作動液の液圧を上回り、かつ、出力液圧路Aの作動液の液圧と車輪液圧路Bの作動液の液圧との差圧がソレノイドへの通電によって制御される、弁を閉じようとする電磁力を上回ると、車輪液圧路Bの作動液を出力液圧路A側へ開放する。
出口弁3は、車輪ブレーキRとリザーバ4との間(第2分岐液圧路B1と開放路Dとの間)に設けられている。出口弁3は、通常時に閉塞しているが、後輪がロックしそうになったときに開弁(開放)することで、車輪ブレーキRへ加わる作動液をリザーバ4に逃がす。
リザーバ4は、出口弁3が開放されることによって逃がされる作動液を一時的に貯溜する機能を有している。
ポンプ5は、吸入液圧路Eと吐出液圧路Cとの間に設けられている。ポンプ5は、制御ユニット10の指令に基づいて電動モータ50の回転力によって駆動する。
ポンプ5は、リザーバ4に貯溜された作動液を吸入して吐出液圧路Cに吐出する。また、ポンプ5は、制御弁2Aが閉弁状態にあり、サクション弁6が開弁状態にあるときに、マスタシリンダM、第1分岐液圧路A1、吸入液圧路Eおよびリザーバ4等に貯溜されている作動液を吸入して吐出液圧路Cに吐出する。これにより、ブレーキペダルBPの操作によって発生した作動液の液圧を増圧することが可能となる。さらには、ブレーキペダルBPを操作していない状態でも車輪ブレーキRに作動液を作用させること(加圧ブレーキ制御)が可能となる。
次に、本実施形態の液圧回路U2を参照しつつ、制御ユニット10によって実現される通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御および加圧ブレーキ制御について説明する。
通常のブレーキ制御においては、制御弁2Aが開弁状態であり、出口弁3が閉弁状態であり、さらに、サクション弁6の一方向弁61が閉じてサクション弁6が閉弁状態になっている。
このような状態で運転者がブレーキペダルBPを踏み込むと、図16Aに示すように、その踏力に起因して発生した作動液の液圧は、そのまま車輪ブレーキRに伝達され、車輪が制動されることとなる。
サクション弁6は、前記第1実施形態のものと同様であるため、サクション弁6には、マスタシリンダMからの作動液が出力液圧路A、第1分岐液圧路A1を介して作用する。これにより、一方向弁61の大径弁613および小径弁614(図15A参照、以下同じ)が作動液を受けてそれぞれ着座し、サクション弁6の閉弁状態が維持される。つまり、吸入液圧路E側にマスタシリンダMからの作動液が作用しないようになっている。
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御において減圧モードが選択されると、図16Bに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aおよび出口弁3の各コイルが励磁される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が開弁状態にされる。このようにすると、車輪ブレーキRに通じる車輪液圧路Bの作動液が出口弁3から開放路Dを通ってリザーバ4に流入する。その結果、車輪ブレーキRに作用していた作動液が減圧される。
アンチロックブレーキ制御の減圧モード中、サクション弁6には、通常のブレーキ制御時と同様に、マスタシリンダMからの作動液が第1分岐液圧路A1を介して作用している。これにより、サクション弁6は、上記と同様に閉弁状態を維持する。
上記減圧によってリザーバ4に貯溜された作動液は、後記するアンチロックブレーキ制御の増圧時に使用される。また、アンチロックブレーキ制御の終了後にリザーバ4に残った作動液は、マスタシリンダMに戻される。
この場合、アンチロックブレーキ制御が終了したら、制御ユニット10が制御弁2A、出口弁3の各コイルを消磁する。これにより、制御弁2Aが開弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。そうすると、リザーバ4に貯溜されている作動液がポンプ5に吸引され、ポンプ5から吐出液圧路C、車輪液圧路B、制御弁2Aおよび出力液圧路Aを通じてマスタシリンダMに戻される。
この場合にも、ポンプ5によって吸引された作動液は、制御弁2Aを通じてマスタシリンダMに戻されるので、車輪液圧路B上にある車輪ブレーキRに対して作用することがない。
また、アンチロックブレーキ制御において増圧モードが選択されると、図17Aに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが励磁されるとともに、出口弁3のコイルが消磁される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁6は、上記と同様に閉弁状態が維持される。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。そうすると、吸入液圧路Eおよびリザーバ4に貯溜された作動液が、ポンプ5に吸引され、ポンプ5から吐出液圧路Cを通じて車輪液圧路Bに吐出される。これによって、車輪ブレーキRに作用する作動液が増圧される。
なお、上記の吸入液圧路Eおよびリザーバ4に貯溜された作動液だけでは車輪ブレーキRに作用する作動液の昇圧が足りない場合には、マスタシリンダM側の作動液が吸引されて引き続き増圧制御がなされる。ここで、リザーバ4に貯溜された作動液が先に吸引される理由について説明する。すなわち、サクション弁6の開弁は、吸入液圧路Eに連通する負圧室6aが負圧になって、ダイヤフラム64の薄膜駆動部642が大気圧によって一方向弁61側に弾性変形することで行われる。リザーバ4に作動液が貯溜されている状態では、リザーバ4に備わるバネがリザーバ4のピストンを初期位置に戻すべく付勢している状態であるため、開放路D、戻し液圧路Fおよび吸入液圧路Eは加圧された状態となっている。これによって、リザーバ4からの加圧がなくなる(リザーバ4の作動液が空になる)までは、サクション弁6が開くことがなく、その結果、リザーバ4に貯溜された作動液が先に吸引されることとなる。
引き続き増圧制御がなされると、ポンプ5の作動が継続されることで吸入液圧路Eが負圧になる。そうすると、図19Bに示すように、吸入液圧路Eに連通するサクション弁6の負圧室6aが負圧になり、この負圧でダイヤフラム64の薄膜駆動部642が大気圧によって一方向弁61側に弾性変形する。これによって、プランジャ62の上面の凸部62aが小径弁614に当接する。このとき、小径弁614には、運転者の踏力に起因して発生したマスタシリンダM側の作動液の液圧による押圧力および弁バネ614sの付勢力が作用している。このため、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が、小径弁614に作用している前記押圧力と前記付勢力との合力を上回る状態になると、小径弁614が弁座613bから離座する。つまり、小径弁614は、押し上げる力と前記合力との差圧で開く。
小径弁614が離座すると、離座した隙間およびプランジャ62の隙間S1を通じて、第1分岐液圧路A1が負圧室6aと連通する。この連通によって、マスタシリンダM側の作動液が、第1分岐液圧路A1から一方向弁61を通じて負圧室6aに流入し、さらに、負圧室6aから吸入液圧路Eに流入してポンプ5に吸引される。
負圧室6aにマスタシリンダM側の作動液が流入すると、マスタシリンダM側の作動液の液圧がダイヤフラム64に作用し、薄膜駆動部642が蓋部材65側に戻る(図15A参照)。これにより、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が消滅し、小径弁614が弁座613bに着座する。
ポンプ5の作動中は、上記の作用が繰り返し行われる。つまり、小径弁614の開閉が繰り返し行われて、ポンプ5により昇圧された作動液が、車輪ブレーキRに作用する。これによって、車輪ブレーキRに作用する作動液が増圧される。
また、アンチロックブレーキ制御において保持モードが選択されると、図17Bに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが励磁されるとともに、出口弁3のコイルが消磁される。そして、電動モータ50の駆動が停止され、ポンプ5が停止される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁6は、上記と同様に閉弁状態が維持される。このようにすると、制御弁2A、出口弁3およびポンプ5で閉じられた流路内(吐出液圧路C、車輪液圧路B、第2分岐液圧路B1内)に作動液が閉じ込められる。その結果、車輪ブレーキRに作用していた作動液の液圧が一定に保持される。
(加圧ブレーキ制御)
ブレーキペダルBPの非操作時における加圧ブレーキ制御では、図18Aに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが励磁されるとともに、出口弁3のコイルが消磁される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁6は、上記と同様に閉弁状態にされている(図18Aでは閉弁状態は不図示)。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。
ポンプ5が作動すると、吸入液圧路Eの作動液がポンプ5に吸引され、吸入液圧路Eが負圧になる。なお、リザーバ4に残っている作動液がある場合には、その作動液もポンプ5によって吸引される。この場合にも、前記と同様にして、吸入液圧路Eやリザーバ4に貯溜された作動液が先に吸引される。吸入液圧路Eやリザーバ4の作動液がポンプ5に吸引されると、図18Bに示すように、吸入液圧路Eに連通するサクション弁6の負圧室6aが負圧になり、この負圧でダイヤフラム64の薄膜駆動部642が大気圧によって一方向弁61側に弾性変形する。この弾性変形でプランジャ62の上面が、大径弁613の下面に当接し、大径弁613を上方へ押し上げる。
これによって、大径弁613が環状の弁座611aから離座し、第1分岐液圧路A1がプランジャ62の隙間S1を通じて負圧室6aと連通する。この連通によって、マスタシリンダM側の作動液が、第1分岐液圧路A1から一方向弁61を通じて負圧室6aに流入し、さらに、負圧室6aから吸入液圧路Eに流入してポンプ5に吸引される。
ポンプ5により加圧された作動液は、ポンプ5から車輪液圧路Bに吐出されて車輪ブレーキRに作用する。これにより、車輪が制動される。
ブレーキペダルBPの操作時における加圧ブレーキ制御では、図19Aに示すように、上記したアンチロックブレーキ制御の増圧時と同様に、制御ユニット10によって制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁6は、同様に閉弁状態にされている(図19Aでは閉弁状態は不図示)。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。
ポンプ5が作動されると、吸入液圧路Eが負圧になる。そうすると、図19Bに示すように、吸入液圧路Eに連通するサクション弁6の負圧室6aが負圧になり、この負圧でダイヤフラム64の薄膜駆動部642が大気圧によって一方向弁61側に弾性変形する。これによって、プランジャ62の上面の凸部62aが小径弁614に当接する。このとき、小径弁614には、運転者の踏力に起因して発生したマスタシリンダM側の作動液の液圧による押圧力および弁バネ614sの付勢力が作用している。このため、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が、小径弁614に作用している前記押圧力と前記付勢力との合力を上回る状態になると、小径弁614が弁座613bから離座する。つまり、小径弁614は、押し上げる力と前記合力との差圧で開く。
小径弁614が離座すると、離座した隙間およびプランジャ62の隙間S1を通じて、第1分岐液圧路A1が負圧室6aと連通する。この連通によって、マスタシリンダM側の作動液が、第1分岐液圧路A1から一方向弁61を通じて負圧室6aに流入し、さらに、負圧室6aから吸入液圧路Eに流入してポンプ5に吸引される。
負圧室6aにマスタシリンダM側の作動液が流入すると、マスタシリンダM側の作動液の液圧がダイヤフラム64に作用し、薄膜駆動部642が蓋部材65側に戻る(図15A参照)。これにより、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が消滅し、小径弁614が弁座613bに着座する。
ポンプ5の作動中は、上記の作用が繰り返し行われる。つまり、小径弁614の開閉が繰り返し行われて、ポンプ5により昇圧された作動液が、車輪ブレーキRに作用する。これによって、車輪ブレーキRに作用する作動液が増圧され車輪が制動される。
この場合、制御弁2Aは、ポンプ5により昇圧された車輪液圧路Bの作動液の液圧が出力液圧路Aの作動液の液圧を上回り、かつ、両作動液の液圧の差圧が弁を閉じようとする電磁力を上回る状態になると、車輪液圧路Bの作動液を出力液圧路A側へ開放する。
なお、ブレーキペダルBPの非操作時の加圧ブレーキ制御において、後からブレーキペダルBPが操作された場合にも、上記のブレーキペダルBPの操作時の加圧ブレーキ制御と同様に、ポンプ5により加圧された作動液が車輪ブレーキRに作用する。
加圧ブレーキ制御が終了すると、上記加圧ブレーキ制御によって車輪液圧路Bに吐出された作動液は、加圧ブレーキ制御の終了後にマスタシリンダMに戻される。すなわち、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが消磁されるとともに、電動モータ50の駆動が停止されてポンプ5が停止され、作動液が車輪液圧路Bから出力液圧路Aを通じてマスタシリンダMに戻される。
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uでは、ブレーキペダルBPの操作量に応じて発生した作動液の液圧を、制御弁2Aを通じて車輪ブレーキRに伝えることで通常のブレーキ制御を実行できる。また、制御弁2Aを閉じ、車輪ブレーキRに作用している作動液の液圧を、出口弁3を開いてリザーバ4に逃がすことで、アンチロックブレーキ制御の減圧を実行できる。また、制御弁2Aを閉じてポンプ5を駆動し、リザーバ4に逃された作動液やマスタシリンダMから作動液を吸引して車輪ブレーキR側に吐出することで、アンチロックブレーキ制御における増圧を実行できる。また、制御弁2Aおよび出口弁3を閉じることで、アンチロックブレーキ制御の保持を実行できる。
また、制御弁2Aを閉じてサクション弁6を開くとともにポンプ5を駆動し、リザーバ4に逃された作動液やマスタシリンダMから作動液を吸引して車輪ブレーキR側に吐出することで、加圧ブレーキ制御を実行できる。
そして、本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uでは、制御弁2Aが、従来の液圧回路で必要であった入口弁に相当する機能を備えているため、液圧回路U2から入口弁を実質的に排除することができる。したがって、部品点数を削減することができる。
また、ブレーキ液圧制御装置Uは、ブレーキペダルBPの操作量の変化、車輪ブレーキRに作用する作動液の圧力の変化および車輪速度の変化のうち、少なくとも1つの変化に基づいて、アンチロックブレーキ制御における減圧、増圧、保持、および加圧ブレーキ制御における加圧を好適に実行できる。
また、サクション弁6は、マスタシリンダM側の作動液の液圧と、ポンプ5の作動で負圧となるポンプ5の吸入口側の作動液の液圧との圧力差によって開弁するので、制御ユニット10による制御が簡単になるとともに、コストダウンを図れる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のブレーキ液圧制御装置について説明する。この実施形態においても、前輪のブレーキユニットと後輪のブレーキユニットとがセパレートされた車両において、後輪の車輪ブレーキに対応するブレーキ液圧制御装置Uを例に挙げて説明する。
本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uが前記第1,第2実施形態と異なるところは、機械式のサクション弁60Aにリザーバ66が一体に設けられている点である。なお、本実施形態の液圧回路U3は、出口弁3からサクション弁60Aに至る流路が1つの連続した流路「開放路D」として形成されている。以下ではこの開放路Dからポンプ5に至る流路を「吸入液圧路E1」と称する。
なお、液圧回路U3は模式的に示したものであり、液圧回路U3を実現するために、図には示さないが、液路を介さずに弁同士が直接接続さる回路構成とすることも可能である。
ブレーキ液圧制御装置Uは、図20に示す液圧回路U3を備えている。ブレーキ液圧制御装置Uは、車輪ブレーキRのアンチロックブレーキ制御および車輪ブレーキRの加圧ブレーキ制御を実行可能である。
液圧回路U3には、制御弁2A,出口弁3、ポンプ5、サクション弁60A、液圧センサ9および電動モータ50が備わる。
また、液圧回路U3には、制御弁2A,出口弁3の開閉を制御するとともに、ポンプ5の駆動(電動モータ50の駆動)を制御する制御ユニット10が接続されている。液圧回路U3には、作動液が充填されている。
サクション弁60Aは、第2実施形態と同様に、第1分岐液圧路A1と開放路Dとの間を開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。サクション弁60Aは、通常は閉弁している。サクション弁60Aは、マスタシリンダM側(第1分岐液圧路A1側)の作動液の液圧と、ポンプ5の作動で負圧となるポンプ5の吸入口側(開放路D側)の作動液の液圧との圧力差によって開弁するように構成されている。
サクション弁60Aは、図21Aに示すように、第2実施形態のサクション弁6と同様に、常閉の一方向弁61と、プランジャ62と、プランジャ板63と、ダイヤフラム64と、ダイヤフラム64を固定するためのプラグとしての蓋部材65Aとを備えている。リザーバ66は、ダイヤフラム64と蓋部材65Aに形成された凹状部67とによって構成されている。ダイヤフラム64が凹状部67の底部に向けて弾性変形する。ダイヤフラム64で仕切られる負圧室6aは、ダイヤフラム64の弾性変形によって拡大し、作動液を一時的に貯溜するリザーバ室として機能する。以下、第2実施形態のサクション弁6と異なる点を中心に本実施形態のサクション弁60Aを説明する。
一方向弁61の固定部611の下部内面には、プランジャ62の係止に使用される突起部611bが周方向に連続して形成されている。一方、プランジャ62の上部外面には、固定部611の突起部611bへの係止に使用される係止部62bが形成されている。係止部62bは、固定部611の突起部611bに対して上方から当接するように構成されている。
プランジャ62は、プランジャ板63の上面に固定されておらず、プランジャ板63に対して離脱可能となっている。つまり、図23Bに示すように、ダイヤフラム64がサクション弁装着穴38の開口部側に弾性変形した場合に、プランジャ62は、プランジャ板63から離脱するようになっている。この場合、一方向弁61の固定部611の突起部611bにプランジャ62の係止部62bが係止することで、プランジャ62が固定部611に保持される状態(ぶら下がる状態)となる。また、プランジャ62は、図21Aに示すように、ダイヤフラム64が上方に弾性変形して初期位置に戻る途中で、プランジャ板63の上面に当接される。
プランジャ板63は、プランジャ62を引っ掛かりなく離脱可能とするために平板状に形成されている。本実施形態では、プランジャ板63の上面に環状のリブ63a(図15A参照)が形成されていない。
ダイヤフラム64は、図23Bに示すように、蓋部材65Aに形成された凹状部67内に向けて弾性変形可能である。ダイヤフラム64は、開放路Dを通じて負圧室6aに流入した作動液を受けて凹状部67内に弾性変形する。そして、弾性変形したダイヤフラム64は、後記するように、ポンプ5によって開放路Dに作動液が吸引されることで、凹状部67と反対側となる一方向弁61側に弾性変形する。
蓋部材65Aは、図21Aに示すように、凹状部67を備えることで有底円筒形状に形成されている。凹状部67は、蓋部材65Aの基部651の径方向の中央部に形成されている。基部651は、有底円筒状を呈している。
凹状部67は、リップ部654に連続して形成された内面部671と、内面部671の下部に連続して形成された隅部672と、隅部672の端部に連続して形成された底面部673とを備えている。
内面部671は、下部側となるサクション弁装着穴38の開口部側に向けて延在しており、断面テーパ状に緩やかに窄まる形態である。隅部672は、断面円弧状を呈しており、内面部671と底面部673とを繋いでいる。底面部673は、凹状部67の径方向の中央部に向けてロート状に緩やかに傾斜している。底面部673の径方向の中央部には、大気に連通する大気連通孔655が形成されている。
このような凹状部67は、図23Bに示すように、サクション弁装着穴38の開口部側に向けて、ダイヤフラム64が大きく弾性変形することを許容している。内面部671および隅部672は、ダイヤフラム64がサクション弁装着穴38の開口部側に向けて弾性変形する際のガイド部としても機能する。これによって、ダイヤフラム64は凹状部67の内面形状に沿った形態で弾性変形し、意図しない形態に弾性変形することが防止されている。
ダイヤフラム64がサクション弁装着穴38の開口部側に向けて弾性変形すると、底面部673には、ダイヤフラム64の平部647が対峙する。また、ダイヤフラム64が、サクション弁装着穴38の開口部側に向けて弾性変形することで、ダイヤフラム64で仕切られる負圧室6aの容積が拡大する。
次に、本実施形態の液圧回路U3を参照しつつ、制御ユニット10によって実現される通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御および加圧ブレーキ制御について説明する。
(通常のブレーキ制御)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ制御においては、図22に示すように、制御弁2Aおよび出口弁3の電磁コイルが制御ユニット10によっていずれも消磁させられる。つまり、通常のブレーキ制御においては、制御弁2Aが開弁状態であるとともに、出口弁3が閉弁状態である。また、サクション弁60Aの一方向弁61が閉じてサクション弁60Aが閉弁状態になっている。
このような状態で運転者がブレーキペダルBPを踏み込むと、その踏力に起因して発生した作動液の液圧は、出力液圧路A、制御弁2Aおよび車輪液圧路Bを通じて、そのまま車輪ブレーキRに伝達される。これによって、車輪が制動されることとなる。
この場合、サクション弁60Aには、マスタシリンダMからの作動液が第1分岐液圧路A1を介して作用する。これにより、一方向弁61の大径弁613および小径弁614(図21A参照、以下同じ)が作動液の液圧を受けてそれぞれ着座し、サクション弁60Aの閉弁状態が維持される。つまり、開放路D側にマスタシリンダMからの作動液が作用しないようになっている。
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御において減圧モードが選択されると、図23Aに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aおよび出口弁3の各コイルが励磁される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が開弁状態にされる。このようにすると、車輪ブレーキRに通じる車輪液圧路Bの作動液が第2分岐液圧路B1を介して出口弁3から開放路Dに流入してサクション弁60Aの負圧室6aに流入する。
負圧室6aに作動液が流入すると、図23Bに示すように、流入した作動液を受けてダイヤフラム64が凹状部67に沿うようにしてサクション弁装着穴38の開口部側に向けて弾性変形する。これによって、負圧室6aの容積が拡大し、リザーバ66に作動液が貯溜される。その結果、車輪ブレーキRに作用していた作動液が減圧される。
なお、アンチロックブレーキ制御の減圧モード中、サクション弁60Aには、通常のブレーキ制御時と同様にマスタシリンダMからの作動液が作用している。したがって、一方向弁61の大径弁613および小径弁614が着座して、サクション弁60Aの閉弁状態が維持されている。つまり、吸入液圧路E11側にマスタシリンダMからの作動液が作用しないようになっている。
上記減圧によってリザーバ66に貯溜された作動液は、後記するアンチロックブレーキ制御の増圧時に使用される。また、アンチロックブレーキ制御の終了後にリザーバ66に残った作動液は、マスタシリンダMに戻される。
この場合、アンチロックブレーキ制御が終了したら、制御ユニット10が制御弁2A、出口弁3の各コイルを消磁する。これにより、制御弁2Aが開弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。そうすると、リザーバ66に貯溜されている作動液が開放路Dおよび吸入液圧路E11を通じてポンプ5に吸引される。
ポンプ5に吸引された作動液は、ポンプ5から吐出液圧路Cを通じて車輪液圧路Bに吐出され、制御弁2Aから出力液圧路Aを通じてマスタシリンダMに戻される。ポンプ5によって吸引された作動液は、制御弁2Aを通じてマスタシリンダMに戻されるので、車輪液圧路B上にある車輪ブレーキRに対して作用することがない。
また、アンチロックブレーキ制御において増圧モードが選択されると、図24Aに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが励磁されるとともに、出口弁3のコイルが消磁される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁60Aは、上記と同様に閉弁状態にされている。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。そうすると、開放路D、吸入液圧路E11およびリザーバ66に貯溜された作動液が、ポンプ5に吸引され、ポンプ5から吐出液圧路Cを通じて車輪液圧路Bに吐出される。これによって、車輪ブレーキRに作用する作動液が増圧される。
なお、上記の増圧だけでは車輪速度が減速しない場合に、引き続き増圧制御がなされる。つまり、開放路D、吸入液圧路E11およびリザーバ66に貯溜された作動液だけでは車輪ブレーキRに作用する作動液の昇圧が足りない場合には、引き続き増圧制御がなされる。この場合、リザーバ66に貯溜された作動液が先に吸引される。その理由は、ポンプ5の吸引によってリザーバ66分の作動液が汲み出されて、ダイヤフラム64が初期位置まで戻らないとサクション弁60Aが開弁しないからである。
引き続き増圧制御がなされると、ポンプ5の作動が継続されることで開放路D、吸入液圧路E11が負圧になる。そうすると、図26Bに示すように、開放路Dに連通するサクション弁60Aの負圧室6aが負圧になり、この負圧でダイヤフラム64の薄膜駆動部642が大気圧によって一方向弁61側に弾性変形する。これによって、プランジャ62の上面の凸部62aが小径弁614に当接する。このとき、小径弁614には、運転者の踏力に起因して発生したマスタシリンダM側の作動液による押圧力および弁バネ614sの付勢力が作用している。このため、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が、小径弁614に作用している上記押圧力と前記付勢力との合力を上回る状態になると、小径弁614が弁座613bから離座する。つまり、小径弁614は、押し上げる力と前記合力との差圧で開く。
小径弁614が離座すると、離座した隙間およびプランジャ62の隙間S1を通じて、第1分岐液圧路A1が負圧室6aと連通する。この連通によって、マスタシリンダM側の作動液が、第1分岐液圧路A1から一方向弁61を通じて負圧室6aに流入し、さらに、負圧室6aから開放路D、吸入液圧路E11に流入してポンプ5に吸引される。
負圧室6aにマスタシリンダM側の作動液が流入すると、マスタシリンダM側の作動液がダイヤフラム64に作用し、薄膜駆動部642が蓋部材65A側に戻る。これにより、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が消滅し、小径弁614が弁座613bに着座する。
ポンプ5の作動中は、上記の作用が繰り返し行われる。つまり、小径弁614の開閉が繰り返し行われて、ポンプ5により昇圧された作動液が、車輪ブレーキRに作用する。これによって、車輪ブレーキRに作用する作動液が増圧される。
また、アンチロックブレーキ制御において保持モードが選択されると、図24Bに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが励磁されるとともに、出口弁3のコイルが消磁される。そして、電動モータ50の駆動が停止され、ポンプ5が停止される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁60Aは、上記と同様に閉弁状態にされている。このようにすると、制御弁2A、出口弁3およびポンプ5で閉じられた流路内(吐出液圧路C、車輪液圧路B、第2分岐液圧路B1内)に作動液が閉じ込められる。その結果、車輪ブレーキRに作用していた作動液の液圧が一定に保持される。
(加圧ブレーキ制御)
ブレーキペダルBPの非操作時における加圧ブレーキ制御では、図25Aに示すように、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが励磁されるとともに、出口弁3のコイルが消磁される。これにより、制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁60Aは、上記と同様に閉弁状態にされている(図25Aでは閉弁状態は不図示)。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。
ポンプ5が作動すると、開放路Dおよび吸入液圧路E11の作動液がポンプ5に吸引され、開放路Dが負圧になる。これによって、図25Bに示すように、開放路Dに連通するサクション弁60Aの負圧室6aが負圧になり、この負圧でダイヤフラム64の薄膜駆動部642が一方向弁61側に弾性変形する。この弾性変形でプランジャ62の上面が、大径弁613の下面に当接し、大径弁613を上方へ押し上げる。なお、大径弁613を上方へ押し上げるか否かは、マスタシリンダM側の圧力とのバランスによる。
これによって、大径弁613が環状の弁座611aから離座し、第1分岐液圧路A1がプランジャ62の隙間S1を通じて負圧室6aと連通する。この連通によって、マスタシリンダM側の作動液が、第1分岐液圧路A1から一方向弁61を通じて負圧室6aに流入し、さらに、負圧室6aから開放路Dおよび吸入液圧路E11に流入してポンプ5に吸引される(図25A参照)。
そして、ポンプ5により加圧された作動液は、ポンプ5から車輪液圧路Bに吐出されて車輪ブレーキRに作用する。これにより、車輪が制動される。
ブレーキペダルBPの操作時における加圧ブレーキ制御では、図26Aに示すように、上記したアンチロックブレーキ制御の増圧時と同様に、制御ユニット10によって制御弁2Aが閉弁状態にされるとともに、出口弁3が閉弁状態にされる。また、サクション弁60Aは、同様に閉弁状態にされている(図26Aでは閉弁状態は不図示)。そして、この状態で制御ユニット10によって電動モータ50が駆動されポンプ5が作動される。
ポンプ5の駆動によって開放路Dおよび吸入液圧路E11が負圧になると、図26Bに示すように、ダイヤフラム64の薄膜駆動部642が一方向弁61側に弾性変形しプランジャ62を上動させる。そして、プランジャ62が小径弁614を押し上げる力が、小径弁614に作用している前記合力を上回る状態になると、小径弁614が弁座613bから離座し、隙間S1を通じてマスタシリンダM側の作動液が負圧室6aに流入する。そして、この流入した作動液でダイヤフラム64が蓋部材65A側に戻り、小径弁614が弁座613bに着座する。
加圧ブレーキ制御中は、上記のような小径弁614の開閉が繰り返し行われ、車輪ブレーキRに作動液が作用して車輪が制動される。
この場合、制御弁2Aは、ポンプ5により昇圧された車輪液圧路Bの作動液の液圧が出力液圧路Aの作動液の液圧を上回り、かつ、両作動液の液圧の差圧が弁を閉じようとする電磁力を上回る状態になると、車輪液圧路Bの作動液を出力液圧路A側へ開放して調節する。
なお、ブレーキペダルBPの非操作時の加圧ブレーキ制御において、後からブレーキペダルBPが操作された場合にも、上記のブレーキペダルBPの操作時の加圧ブレーキ制御と同様に、ポンプ5により加圧された作動液が車輪ブレーキRに作用する。
加圧ブレーキ制御が終了すると、上記加圧ブレーキ制御によって車輪液圧路Bに吐出された作動液は、加圧ブレーキ制御の終了後にマスタシリンダMに戻される。すなわち、制御ユニット10によって制御弁2Aのコイルが消磁されるとともに、電動モータ50の駆動が停止されてポンプ5が停止され、作動液が車輪液圧路Bから出力液圧路Aを通じてマスタシリンダMに戻される。
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uでは、例えば、アンチロックブレーキ制御の減圧時に車輪ブレーキRから逃された作動液がサクション弁装着穴38内の負圧室6aに流入することにより、ダイヤフラム64が蓋部材65A側に弾性変形して膨らみ、負圧室6a(リザーバ室)が容積変化して作動液が収容される。このように、ダイヤフラム64の弾性変形を利用した簡単な構成でリザーバ66を構成できるので、部品点数を抑えてコストを低減することができる。
また、蓋部材65Aは、収容部としての一方向弁装着穴38aを閉塞するとともに、ダイヤフラム64を一方向弁装着穴38a内に固定する。したがって、蓋部材65Aによってダイヤフラム64を基体110に確実に固定することができる。この効果は、第2実施形態の蓋部材65による構成においても同様に奏する。
また、蓋部材65Aには、大気連通孔655が形成されているので、ダイヤフラム64の蓋部材65A側の凹状部67を大気側に容易に連通させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
前記実施形態では、後輪の車輪ブレーキRに係るブレーキ液圧制御装置Uについて説明したが、ブレーキペダルBPをブレーキ操作子に代えて、前輪の車輪ブレーキに係るブレーキ液圧制御装置Uとしてもよい。
また、センサ装着穴37は、出口弁装着穴33と同径に形成してもよい。この場合、センサ装着穴37は、出口弁装着穴33と同形状であってもよい。
また、サクション弁装着穴38は、リザーバ装着穴34と異なる内径で形成してもよい。
また、一方向弁61における小径弁614や大径弁613の配置は、適宜設定することができる。