JP7308082B2 - ポリフェニレンエーテル含有樹脂組成物 - Google Patents
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Description
[1]
(a)下記式(1):
Xは、a価の任意の連結基であり、aは2.5以上の数であり、
R5は、各々独立に任意の置換基であり、kは各々独立に1~4の整数であり、k個あるR5のうちの少なくとも1つは、下記式(2):
で表される部分構造を含み、
Yは、各々独立に下記式(3):
で表される構造を有する2価の連結基であり、nはYの繰り返し数を表し、各々独立に1~200の整数であり、
Lは、任意の2価の連結基、又は単結合であり、かつ
Aは、各々独立に、炭素-炭素二重結合及び/又はエポキシ結合を含有する置換基を示す}
で表される構造を有し、かつ数平均分子量が500~8,000であるポリフェニレンエーテル成分A;
(b)架橋剤;
(c)有機過酸化物;及び
(d)ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物、並びに前記ビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であり、かつ重量平均分子量が、150,000~800,000である、熱可塑性樹脂;
を含み、かつ前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル成分A及び前記架橋剤の合計質量100質量部を基準として、2質量部~20質量部である樹脂組成物。
[2]
前記ブロック共重合体又はその水素添加物における前記ビニル芳香族化合物由来の単位の含有率が、20質量%以上かつ70質量%以下である、項目1に記載の樹脂組成物。
[3]
前記架橋剤が、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有し、前記架橋剤の数平均分子量が4,000以下であり、かつ前記ポリフェニレンエーテル成分A:前記架橋剤の重量比が、25:75~95:5である、項目1又は2に記載の樹脂組成物。
[4]
前記架橋剤が、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及びポリブタジエンから成る群より選択される少なくとも一種の化合物を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5]
前記有機過酸化物の1分間半減期温度が、155℃~185℃である、項目1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[6]
前記有機過酸化物の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル成分Aと前記架橋剤の合計質量100質量部を基準として、0.05質量部~5質量部である、項目1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[7]
前記樹脂組成物が、難燃剤をさらに含み、かつ前記難燃剤が、前記樹脂組成物の硬化後に前記樹脂組成物中で他の含有成分と相溶しない、項目1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[8]
項目1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、電子回路基板材料。
[9]
項目1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂フィルム。
[10]
基材と、項目1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物との複合体である、プリプレグ。
[11]
前記基材がガラスクロスである、項目10に記載のプリプレグ。
[12]
項目9に記載の樹脂フィルム、又は項目10若しくは11に記載のプリプレグの硬化物と、金属箔との積層体。
本実施形態に係るPPE含有樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、ポリフェニレンエーテル(PPE)と、架橋剤と、有機過酸化物と、熱可塑性樹脂とを含み、所望により、難燃剤、その他の添加剤、シリカフィラー、溶剤などをさらに含むことができる。本実施形態に係る樹脂組成物の構成要素について以下に説明する。
一般に、ポリフェニレンエーテル(PPE)は、置換又は非置換のフェニレンエーテル単位から構成される繰り返し構造を有する。本明細書では、用語「ポリフェニレンエーテル」は、ダイマー、トリマー、オリゴマー及びポリマーを含むものとする。PPEは、フェニレンエーテル単位以外の共重合成分単位を含んでよいが、このような共重合成分単位の量は、全単位構造の数に対して、典型的には、0%以上又は0%超、かつ30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル成分として、下記式(1):
4,6-ジtert-ブチルベンゼン1,2,3-トリオール、2,6-ビス(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン。
で表される構造を有する。
で表される分岐構造などが挙げられる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記で説明された数平均分子量500~8,000のポリフェニレンエーテル成分Aに加えて、1分子当たりの平均フェノール性水酸基数が1.2個以上、かつ数平均分子量が8,000以上50,000以下のポリフェニレンエーテル成分Bを含むことができる。ポリフェニレンエーテル成分Bは、その生産プロセスにおいて安定であり、かつ誘電特性及び耐熱性に優れているため、ポリフェニレンエーテル成分Aを阻害することなく、樹脂組成物の硬化物の電気特性を向上させる傾向にある。
本実施形態では、架橋反応を起こすか、又は促進する能力を有する任意の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、数平均分子量が4,000以下であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が4,000以下であると、樹脂組成物の粘度の増大を抑制でき、また加熱成型時の良好な樹脂流動性が得られる。数平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、GPCを用いて測定した値等が挙げられる。
本実施形態では、ポリフェニレンエーテル及び架橋剤を含む樹脂組成物の重合反応を促進する能力を有する任意の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。なお、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も樹脂組成物のための反応開始剤として使用することができる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を提供することができるという観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂は、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物(ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体)、並びにビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であり、かつ重量平均分子量が、150,000~800,000である。樹脂組成物は、PPE、架橋剤及び有機過酸化物と、上記で説明された種類及び重量平均分子量を有する熱可塑性樹脂とを含むと、PPEと他の含有成分との相溶性及び基材等への塗工性が良好になる傾向にあり、ひいては電子回路基板に組み込まれたときの基板特性にも優れることがある。重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤としては、耐熱性を向上できる観点から、樹脂組成物の硬化後に樹脂組成物中の他の含有成分と相溶しないものであれば特に制限されない。好ましくは、難燃剤は、樹脂組成物の硬化後に樹脂組成物中のPPE及び/又は架橋剤と相溶しない。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、難燃剤は、難燃剤とPPEの相溶性、樹脂組成物の塗工性、電子回路基板の特性に一層優れる観点から、デカブロモジフェニルエタンであることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、シリカフィラーを含有してよい。シリカフィラーとしては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカが挙げられる。シリカフィラーの含有量は、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂及び架橋剤の合計100質量部に対して、10質量部~100質量部であることができる。また、シリカフィラーは、その表面にシランカップリング剤等を用いて表面処理をされたものであってもよい。
溶剤としては、溶解性の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びクロロホルムが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態のプリプレグは、基材と、この基材に含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物とを含む。プリプレグは、例えば、ガラスクロス等の基材を上記ワニスに含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得られる。
本実施形態の金属張積層板は、本実施形態の樹脂組成物若しくは樹脂フィルム又は本実施形態のプリプレグと、金属箔とを積層して硬化して得られる。金属張積層板は、プリプレグの硬化物(「硬化物複合体」ともいう)と金属箔とが積層して密着している形態を有することが好ましく、電子基板用材料として好適に用いられる。金属箔としては、例えば、アルミ箔及び銅箔が挙げられ、これらの中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。金属箔と組合せる硬化物複合体は、1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。積層板の製造方法としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物と基材とから構成される複合体(例えば、前述のプリプレグ)を形成し、これを金属箔と重ねた後、熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物積層体と金属箔とが積層されている積層板を得る方法が挙げられる。前記積層板の特に好ましい用途の1つはプリント配線板である。プリント配線板は、金属張積層板から金属箔の少なくとも一部が除去されていることが好ましい。
本実施形態のプリント配線板は、金属張積層板から金属箔の一部が除去されている。本実施形態のプリント配線板は、典型的には、上述した本発明のプリプレグを用いて、加圧加熱成型する方法で形成できる。基材としてはプリプレグに関して前述したのと同様のものが挙げられる。本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂組成物を含むことにより、優れた耐熱性及び電気特性(低誘電率及び低誘電正接)を有し、更には環境変動に伴う電気特性の変動を抑制可能であり、更には優れた絶縁信頼性及び機械特性を有する。
次の反応を不活性ガスの雰囲気下で実施した。反応に使用する溶媒は、市販の試薬である。使用した原料及び試薬類は、以下のとおりである。
トルエン:和光純薬製試薬特級品をそのまま使用した。
メチルエチルケトン:和光純薬製試薬特級品をそのまま使用した。
メタノール:和光純薬製試薬特級品をそのまま使用した。
2.開始剤:
ナイパーBMT:日本油脂製品をそのまま使用した。
3.原料ポリフェニレンエーテル
S202A(ポリスチレン換算数平均分子量16,000):旭化成株式会社製製品をそのまま使用した。
S202Aは、下記の構造を有する。
4-1.式(2)の部分構造を含む価数a(a=3~6)のフェノール類
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン:株式会社ADEKA製品(アデカスタブAO-30)をそのまま使用した。
トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン:旭有機材製品をそのまま使用した。
無水メタクリル酸:アルドリッチ試薬品をそのまま使用した。
ジメチルアミノピリジン:アルドリッチ試薬品をそのまま使用した。
1.数平均分子量測定
クロロホルム溶媒下、GPCにより数平均分子量測定を行った。数平均分子量は、標準ポリスチレンを用いた検量線に基づいて、ポリスチレン換算法により求めた。
2.NMR測定
重クロロホルムに、5質量%濃度となるように試料を溶解し、NMR測定を実施した。反応の進行は、多官能フェノールユニットの芳香族のピークと、水酸基のプロトンピークの比率から、水酸基ピークの減少により確認した。
3.溶融粘度
試料の20質量%メチルエチルケトン溶液200mlをビーカーに入れ、B型回転粘度計を用いて25℃で回転数30rpmで粘度を測定した。
PPE一分子当たりの平均末端官能基数を以下の方法により求めた。すなわち、「高分子論文集,vol.51,No.7(1994),第480頁」記載の方法に準拠し、PPEの塩化メチレン溶液にテトラメチルアンモニウムハイドロオキシド溶液を加えることにより得られるサンプルの波長318nmにおける吸光度変化を紫外可視吸光光度計で測定した。この測定値から、PPEの末端変性の前後のフェノール性水酸基の数を求めた。また、上記1の方法により求めたPPEの数平均分子量と、PPEの質量とを用いてPPEの分子数(数平均分子数)を求めた。
これらの値から、下記数式(1)に従って、変性前後のPPE1分子当たりの平均フェノール性水酸基数を求めた。:
1分子当たりの平均フェノール性水酸基数
=フェノール性水酸基の数/数平均分子数・・・(1)
変性後の平均末端官能基数は、下記数式(2)に従って、変性後の平均末端官能基数を求めた。:
1分子当たりの平均末端官能基数
=変性前の平均フェノール性水酸基数-変性後の平均フェノール性水酸基数・・・(2)
ポリフェニレンエーテル1(PPE1)の合成
500mlの3つ口フラスコに、3方コックを付け、さらにジムロートと等圧滴下ロートを設置した。フラスコ内を窒素に置換した後、原料ポリフェニレンエーテルS202A100g、トルエン200g、多官能フェノールとして1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン12.8gを加えた。フラスコに温度計を設置し、マグネチックスターラーにて撹拌しながら、オイルバスにてフラスコを90℃に加熱し、原料ポリフェニレンエーテルを溶解させた。開始剤として、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルm-メチルベンゾイルペルオキシド、m-トルイルペルオキシドの混合物の40%メタキシレン溶液(日油製:ナイパーBMT)の37.5gをトルエン87.5gに希釈し、等圧滴下ロートに仕込んだ。フラスコ内の温度を80℃まで降温させた後、開始剤溶液を、フラスコ内へ滴下開始し、反応を開始した。開始剤を2時間かけて滴下し、滴下後、再び90℃に昇温し,4時間撹拌を継続した。反応後、ポリマー溶液をメタノール中に滴下し、再沈させた後、溶液と濾別し、ポリマーを回収した。その後、これを真空下100℃で3時間乾燥させた。1H-NMRにより、低分子フェノールがポリマー中に取り込まれ、水酸基のピークが消失していることを確認した。この1H-NMR測定結果から、得られたポリマーは、下記式:
で表されるような構造を有するポリフェニレンエーテル(以下、PPE1という)であると確認できた。GPC測定の結果、得られたPPE1のポリスチレン換算での分子量はMn=1,500であった。また、PPE1の20%メチルエチルケトン溶媒中での溶液粘度は125cPoiseであった。
トルエン80g及び上記で合成したPPE1を26g混合して約85℃に加熱した。加熱された混合物へジメチルアミノピリジン0.55gを添加した。固体が全て溶解したと思われる時点で、溶解物へ無水メタクリル酸4.9gを徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃に3時間維持した。次いで、溶液を室温に冷却して、メタクリレート変性ポリフェニレンエーテルのトルエン溶液を得た。
溶液の一部を採取し、乾燥後1H-NMR測定を実施した。ポリフェニレンエーテルの水酸基由来のピークが消失していたことから、反応が進行しているものと判断し、精製操作に移った。上記メタクリレート変性ポリフェニレンエーテルのトルエン溶液120gを、1Lビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したメタノール360g中に30分掛けて滴下した。得られた沈殿物を、メンブランフィルターで減圧濾過した後に乾燥し、38gのポリマーを得た。乾燥させたポリマーの1H-NMR測定結果を図1に示す。4.5ppm付近のポリフェニレンエーテルの水酸基由来のピークが消失したこと、及び、5.75ppm付近にメタクリル基のオレフィン由来のピークの発現を確認した。また、GC測定により、ジメチルアミノピリジン、無水メタクリル酸、メタクリル酸由来のピークがほぼ消失していることから、NMRのメタクリル基由来のピークは、ポリフェニレンエーテル末端に結合しているメタクリル基のものと判断した。この結果から、得られたポリマーは、下記式:
で表されるような構造を有する変性ポリフェニレンエーテル(以下、低分子量・変性PPE1という)であると確認できた。
また、GPC測定の結果、得られた低分子量・変性PPE1のポリスチレン換算での分子量はMn=1,600であった。また、低分子量・変性PPE1の平均末端官能基数は、上記数式(2)に従って、2.5以上であることが算出された。さらに、変性PPE1の20%メチルエチルケトン溶媒中での溶液粘度は131cPoiseであった。
PPE
・上記で得られた低分子量・変性ポリフェニレンエーテル1(低分子量・変性PPE1)
・TAIC(日本化成社製、分子量:249.7、不飽和二重結合数:3個)
・ビス(1-tert-ブチルペルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン
「製品名パーブチルP」(日油社製)
・SEBS N525:製品名「タフテック N525」、旭化成株式会社製、Mw:20万、スチレン単位含有率:67質量%
・SEBS N504:製品名「タフテック N504」、旭化成株式会社製、Mw:20万、スチレン単位含有率:32質量%
・SEBS N516:製品名「タフテック N516」、旭化成株式会社製、Mw:16万、スチレン単位含有率:40質量%
・SEBS N517:製品名「タフテック N517」、旭化成株式会社製、Mw:40万、スチレン単位含有率:40質量%
・SEBS H1041:製品名「タフテック H1041」、旭化成株式会社製、Mw:5.7万、スチレン単位含有率:31質量%
・SEBS H1221:製品名「タフテック H1221」、旭化成株式会社製、Mw:12万、スチレン単位含有率:12質量%
・デカブロモジフェニルエタン「製品名SAYTEX8010」(アルベマール社製)
・球状シリカ(龍森社製)
・Lガラスクロス
(旭シュエーベル社製、スタイル:2116)
1.PPEの数平均分子量、熱可塑性樹脂の重量平均分子量
GPC分析を用い、分子量既知の標準ポリスチレンの溶出時間との比較によりPPEの数平均分子量、熱可塑性樹脂の重量平均分子量を求めた。具体的には、試料濃度0.2w/vol%(溶媒:クロロホルム)の測定試料を調製後、測定装置にはHLC-8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラム:Shodex GPC KF-405L HQ×3(昭和電工株式会社製)、溶離液:クロロホルム、注入量:20μL、流量:0.3mL/min、カラム温度:40℃、検出器:RI、の条件下にて測定した。
各樹脂組成物とトルエンで調製した樹脂ワニス(固形分53質量%)200mlをビーカーに入れ、B型回転粘度計を用いて25℃で回転数30rpm、30秒の条件で粘度を測定した。測定された粘度を5段階で評価した。
5:50mPa・s超150mPa・s以下
4:150mPa・s超200mPa・s以下
3:200mPa・s超300mPa・s以下
2:300mPa・s超500mPa・s以下
1:500mPa・s超1000mPa・s以下
各樹脂組成物とトルエンで調製した樹脂ワニス(固形分53質量%)をバットに入れ、その上から、50mm角にカットしたLガラスクロス(旭シュエーベル社製、スタイル:2116)を載せ、ガラスクロスに樹脂ワニスが含浸する様子を目視で観察した。ガラスクロスへの樹脂ワニスの含浸性に応じて、5段階で評価した。
5:1分以内にガラスクロス全体に樹脂ワニスが含浸した場合
4:2分以内にガラスクロス全体に樹脂ワニスが含浸した場合
3:3分以内にガラスクロス全体に樹脂ワニスが含浸した場合
2:5分以内にガラスクロス全体に樹脂ワニスが含浸した場合
1:5分経っても、含浸が完了しない場合
表1に示される含有成分と溶媒を混合・攪拌し、攪拌停止後の混合物の状態を目視で観察して、次の基準に従って評価した。
〇:良好 攪拌停止後2hr以上、不溶物が沈降せず、均一に分散している。
×:不良 攪拌停止後1hr以内に不溶物が沈降する。
積層板の10GHzでの誘電率及び誘電正接を、空洞共振法にて測定した。測定装置としてネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用いて測定した。後述の方法で作製した厚さ約0.5mmの積層板を、ガラスクロスの経糸が長辺となるように、幅約2mm、長さ50mmの大きさに切り出した。次に、105℃±2℃のオーブンに入れ2時間乾燥させた後、23℃相対湿度50±5%の環境下に96±5時間静置した。その後、23℃、相対湿度50±5%の環境下で上記測定装置を用いることにより、誘電率及び誘電正接を測定し、5段階で評価した。
5:誘電率3.0以上3.3以下、且つ、誘電正接0.0020超0.0024以下
4:誘電率3.0以上3.3以下、且つ、誘電正接0.0024超0.0026以下
3:誘電率3.0以上3.3以下、且つ、誘電正接0.0026超0.0030以下
2:誘電率3.0以上3.3以下、且つ、誘電正接0.0030超0.0035以下
1:誘電率3.3超、且つ、誘電正接0.0035超
積層板の動的粘弾性を測定し、tanδが最大となる温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。測定装置に動的粘弾性装置(RHEOVIBRON モデルDDV-01FP、ORIENTEC社製)を用いた。後述の方法で作製した厚さ約0.3mmの積層板を、ガラスクロスの経糸が長辺となるように、長さ約35mm、幅約5mmmに切り出して、試験片とし、引張モード、周波数:10rad/sの条件で測定を行った。
Tgの値により、5段階で評価した。
5:200℃超
4:190℃超200℃以下
3:180℃超190℃以下
2:170℃超180℃以下
1:160℃超170℃以下
実施例、及び比較例で得られたプリプレグを8枚重ね、後述の方法で作製した積層板を50mm角に切り出し、次に、切り出されたサンプルを105℃±2℃のオーブンに入れて2時間乾燥させた後、プレッシャークッカーテストを2気圧、4時間の条件で実施した。耐熱性試験は吸水加速試験後の積層板を次の基準に従って目視で評価した。
〇:良好 吸水加速試験後の積層板を、288℃のはんだ浴に20秒間浸漬したとき、膨れ、剥離及び白化のいずれも観察されない。
×:不良 吸水加速試験後の積層板を、288℃のはんだ浴に20秒間浸漬したとき、膨れ、剥離及び白化のいずれかが観察される。
銅張積層板の銅箔を一定速度で引き剥がす際の応力を測定した。後述の方法で作製した、35μm厚の銅箔(古川電気工業株式会社製、GTS-MP箔)を用いた銅張積層板を、幅15mm×長さ150mmのサイズに切り出し、オートグラフ(AG-5000D、株式会社島津製作所製)を用い、銅箔を除去面に対し90℃の角度で50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重の平均値を測定し、5回の測定の平均値を求め、5段階で評価した。
5:1.N/mm超
4:0.80N/mm超1.0N/mm以下
3:0.70N/mm超0.80N/mm以下
2:0.5N/mm超0.70N/mm以下
1:0.5N/mm以下
表1に示される組成に従って、トルエン287質量部に対し、熱可塑性樹脂を添加し、攪拌、溶解させ、次いで、難燃剤、球状シリカ、及び低分子量・変性PPE1をそれぞれ添加し、低分子量・変性PPE1が溶解するまで攪拌を継続した(固形分濃度53質量%)。次いで、溶解物へ架橋剤及び有機過酸化物をそれぞれ添加し、十分に攪拌して、ワニスを得た。このワニスに、Lガラスクロスを含浸させた後、所定のスリットに通すことにより余分なワニスを掻き落とし、105℃の乾燥オーブンにて所定時間乾燥させ、トルエンを除去することにより、プリプレグを得た。このプリプレグを所定サイズに切り出し、その重量と同サイズのガラスクロスの重量を比較することで、プリプレグにおける樹脂組成物の固形分の含有量を算出したところ、58質量%であった。このプリプレグを所定枚数重ね、更にその重ね合わせたプリプレグの両面に銅箔(古川電気工業株式会社製、厚み35μm、GTS-MP箔)を重ね合わせた状態で、真空プレスを行うことにより、銅張積層板を得た。この真空プレスの工程では、先ず、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力10kg/cm2の条件を採用し、次いで、130℃まで達した後に、昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力40kg/cm2の条件を採用した。温度が200℃に達した後に、温度を200℃に維持したまま圧力40kg/cm2、及び時間60分間の条件を採用した。次に、上記銅張積層板から、エッチングにより銅箔を除去することにより積層板を得た。
組成を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同じ方法に従って、実施例2~6と比較例1~4において樹脂組成物、ワニス、プリプレグ、銅張積層板、及び積層板をそれぞれ得て、評価した。
Claims (9)
- (a)下記式(1):
Xは、a価の任意の連結基であり、aは2.5以上の数であり、
R5は、各々独立に任意の置換基であり、kは各々独立に1~4の整数であり、k個あるR5のうちの少なくとも1つは、下記式(2):
で表される部分構造を含み、
Yは、各々独立に下記式(3):
で表される構造を有する2価の連結基であり、nはYの繰り返し数を表し、各々独立に1~200の整数であり、
Lは、任意の2価の連結基、又は単結合であり、かつ
Aは、各々独立に、炭素-炭素二重結合及び/又はエポキシ結合を含有する置換基を示す}
で表される構造を有し、かつ数平均分子量が500~8,000であるポリフェニレンエーテル成分A;
(b)架橋剤;
(c)有機過酸化物;及び
(d)ビニル芳香族化合物とオレフィン又はジオレフィンとのブロック共重合体及びその水素添加物から成る群より選択される少なくとも1種であり、かつ重量平均分子量が、150,000~800,000である、熱可塑性樹脂;
を含み、かつ前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル成分A及び前記架橋剤の合計質量100質量部を基準として、2質量部~20質量部であり、
前記架橋剤が、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有し、前記架橋剤の数平均分子量が4,000以下であり、かつ前記ポリフェニレンエーテル成分A:前記架橋剤の重量比が、25:75~95:5であり、
前記架橋剤が、トリアリルシアヌレート、及びトリアリルイソシアヌレートから成る群より選択される少なくとも一種の化合物を含み、かつ
前記有機過酸化物の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル成分Aと前記架橋剤の合計質量100質量部を基準として、0.05質量部~5質量部である、樹脂組成物。 - 前記ブロック共重合体又はその水素添加物における前記ビニル芳香族化合物由来の単位の含有率が、20質量%以上かつ70質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記有機過酸化物の1分間半減期温度が、155℃~185℃である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物が、難燃剤をさらに含み、かつ前記難燃剤が、前記樹脂組成物の硬化後に前記樹脂組成物中で他の含有成分と相溶しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、電子回路基板材料。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂フィルム。
- 基材と、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物との複合体である、プリプレグ。
- 前記基材がガラスクロスである、請求項7に記載のプリプレグ。
- 請求項6に記載の樹脂フィルム、又は請求項7若しくは8に記載のプリプレグの硬化物と、金属箔との積層体。
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