JP7306441B2 - 缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、缶用鋼板およびその製造方法に関する。
特許文献1~2には、「鋼板の表面に、前記鋼板側から順に、金属クロム層およびクロム水和酸化物層」を有し、更に、金属クロム層が「粒状突起」を有する缶用鋼板が開示されている。
国際公開第2018/225739号 国際公開第2018/225726号
特許文献1~2に開示された缶用鋼板は、耐食性および溶接性などの特性は良好であるが、近年、より一層の耐食性の向上が要求されている。
そこで、本発明は、耐食性および溶接性に優れる缶用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]鋼板の表面に、上記鋼板側から順に、2層以上の被覆層およびクロム含有層を有し、上記クロム含有層は、複数個のコアシェル粒子を有し、上記コアシェル粒子は、上記被覆層のうち上記クロム含有層に隣接する一層の上に配置され、上記コアシェル粒子は、それぞれ、金属クロムまたはクロム化合物のコアと、上記コアを覆う酸化クロムのシェルと、を有する、缶用鋼板。
[2]上記コアと、上記被覆層のうち上記鋼板に隣接する一層とが非接触である、上記[1]に記載の缶用鋼板。
[3]上記コアと、上記被覆層のうち上記鋼板に隣接する一層との間に、酸化クロムが存在する、上記[1]または[2]に記載の缶用鋼板。
[4]上記被覆層のうち上記鋼板に隣接する一層が、金属クロム層であり、上記被覆層のうち上記クロム含有層に隣接する一層が、金属層または金属酸化物層である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[5]上記被覆層のうち上記クロム含有層に隣接する一層が、上記金属酸化物層であり、上記金属酸化物層が、酸化クロム層である、上記[4]に記載の缶用鋼板。
[6]上記被覆層が2層である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[7]上記コアが、上記金属クロムで構成される、上記[1]~[6]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[8]金属クロムの付着量が、50~200mg/mである、上記[1]~[7]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[9]上記コアシェル粒子の面積率が、10%以上であり、上記コアシェル粒子の個数密度が、1個/μm以上である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[10]上記コアの粒径が、10~500nmであり、上記シェルの厚さが、上記コアの粒径の1/3以下であって、かつ、0.5~10.0nmである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[11]上記コアシェル粒子のアスペクト比が、2.0以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[12]上記コアが単結晶である、上記[1]~[11]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[13]上記シェルがアモルファスである、上記[1]~[12]のいずれかに記載の缶用鋼板。
[14]上記[1]~[13]のいずれかに記載の缶用鋼板を製造する方法であって、鋼板に対して、六価クロム化合物およびフッ素含有化合物を含有する水溶液を用いて、1次陰極電解処理、陽極電解処理、2次陰極電解処理および3次陰極電解処理を、この順に施し、上記2次陰極電解処理の電流密度が、15A/dm以下であり、上記2次陰極電解処理の電気量密度が、5.0C/dm以下である、缶用鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐食性および溶接性に優れる缶用鋼板およびその製造方法を提供できる。
本実施形態の缶用鋼板の一例を模式的に示す断面図である。 本実施形態の缶用鋼板の断面を観察したTEM像である。 本実施形態の缶用鋼板の厚さ方向の元素分布を示すグラフである。 従来の缶用鋼板の一例を模式的に示す断面図である。
[缶用鋼板]
図1は、本実施形態の缶用鋼板1を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、缶用鋼板1は、鋼板2を有する。缶用鋼板1は、更に、鋼板2の表面に、鋼板2側から順に、2層以上の被覆層3およびクロム含有層4を有する。
図1には、被覆層3が2層である例を示している。すなわち、缶用鋼板1は、被覆層3aおよび被覆層3bを有する。被覆層3aは、後述するように、例えば、金属クロム層である。被覆層3bは、後述するように、例えば、酸化クロム層である。
クロム含有層4は、複数個のコアシェル粒子5からなる。コアシェル粒子5は、被覆層3のうち、クロム含有層4に隣接する一層(被覆層3b)の上に配置されている。
コアシェル粒子5は、それぞれ、金属クロムまたはクロム化合物のコア5aと、コアを覆う酸化クロムのシェル5bと、を有する。
すなわち、缶用鋼板1においては、コアシェル粒子5のコア5aと、被覆層3のうち鋼板2に隣接する一層(被覆層3a)との間に、「酸化クロム」が存在する。換言すれば、コア5aと被覆層3aとが非接触である。
この「酸化クロム」は、シェル5bを構成する酸化クロムであり、被覆層3b(酸化クロム層)を構成する酸化クロムであってもよい。
なお、本発明においては、クロム水和酸化物、クロム酸化物、クロム水酸化物などの酸素を含有するクロム化合物を、まとめて、「酸化クロム」と呼ぶ。
本実施形態の缶用鋼板1について、収束イオンビーム(FIB)を用いて切り出した断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。
図2は、本実施形態の缶用鋼板1の断面を観察したTEM像である。TEMとしては、具体的には、明視野走査型透過電子顕微鏡(Bright-Field Scanning Transmission Electron Microscopy、BF-STEM)を用いた。
図2のTEM像を見ると、コア5aおよびシェル5bを有するコアシェル粒子5が、被覆層3bの上に配置されていることが分かる。
更に、本実施形態の缶用鋼板1について、3次元アトムプローブ(3DAP)を用いて、厚さ方向の元素分布を求めた。
図3は、本実施形態の缶用鋼板1の厚さ方向の元素分布を示すグラフである。
図3のグラフにおいては、最表面から鋼板に向けて順に、Cr-O/Cr/Cr-O/Cr/Feという組成が認められる。
以上の結果から、缶用鋼板1が、厚さ方向に、最表面から鋼板2に向けて、シェル5b(酸化クロム)/コア5a(金属クロム)/シェル5b(酸化クロム)、被覆層3b(酸化クロム層)/被覆層3a(金属クロム層)/鋼板2という構成を有することが分かる。
すなわち、コア5aと被覆層3aとの間に「酸化クロム」が存在しており、コア5aと被覆層3aとが非接触であることが、以上の結果によって実証されている。
ここで、従来の缶用鋼板の構成について説明する。
図4は、従来の缶用鋼板11の一例を模式的に示す断面図である。
従来の缶用鋼板11は、鋼板12の表面上に、金属クロム層13および酸化クロム層14を有する。
金属クロム層13は、平板状の基部13aおよび粒状突起13bからなる。酸化クロム層14は、粒状突起13bの形状に追従するように、金属クロム層13上に配置される。
従来の缶用鋼板11において、基部13aと粒状突起13bとは互いに接触しており、両者の間に「酸化クロム」は存在しない。
鋼板12を覆う金属クロム層13および酸化クロム層14は、耐食性に寄与する。
ところで、従来の缶用鋼板11の表面どうしが接触したり、接触した状態で擦れたりすると、粒状突起13bが、その粒状突起13bを覆う酸化クロム層14とともに、基部13aから脱離する場合がある。
その場合、粒状突起13bが脱離した部位において、鋼板12を覆うのは金属クロム層13の基部13aのみとなり、鋼板12が露出しやすくなり、当初の状態と比較して耐食性が不十分となり得る。
これに対して、図1~図3に基づいて説明した本実施形態の缶用鋼板1では、上述したように、コアシェル粒子5のコア5aと被覆層3aとの間には「酸化クロム」が存在し、コア5aと被覆層3aとが非接触である。
このため、仮にコアシェル粒子5が脱離した場合でも、その部位には、被覆層3a(金属クロム層)だけでなく、被覆層3bなどの「酸化クロム」も残存しやすいため、鋼板2が露出しにくい。
したがって、本実施形態の缶用鋼板1は、従来の缶用鋼板11(図4参照)よりも、相対的に、耐食性に優れる。
以下、本実施形態の缶用鋼板の各構成について、より詳細に説明する。
〈鋼板〉
鋼板の種類は特に限定されない。通常、容器材料として使用される鋼板(例えば、低炭素鋼板、極低炭素鋼板)を使用できる。鋼板の製造方法、材質なども特に限定されない。通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造される。
〈被覆層〉
鋼板の表面には、2層以上の被覆層が配置される。
被覆層は、鋼板の表面露出を抑えて、耐食性を向上させる。
被覆層は、鋼板の少なくとも一方の表面上に配置されていればよく、鋼板の両方の表面上に配置されていてもよい。
《層数》
被覆層の層数は、例えば5層以下であり、3層以下が好ましい。被覆層の層数は、2層であってもよい。
被覆層の層数が2層である場合、以下では、便宜的に、鋼板に隣接する被覆層(図1の「被覆層3a」を参照)を「被覆層A」と呼び、後述するクロム含有層に隣接する被覆層(図1の「被覆層3b」を参照)を「被覆層B」と呼ぶ場合がある。
《金属クロム層》
被覆層の少なくとも一層は、例えば、金属クロム層である。
とりわけ、鋼板に隣接する被覆層Aは、金属クロム層であることが好ましい。
《金属層または金属酸化物層》
被覆層のうち別の一層は、例えば、金属層または金属酸化物層である。
とりわけ、クロム含有層に隣接する被覆層Bは、金属層または金属酸化物層であることが好ましく、なかでも、金属酸化物層がより好ましい。
金属層を構成する金属元素としては、十分な耐食性を得る観点から、Ni、Sn、Ag、Pt、AuなどのFeよりも貴な金属元素が好適に挙げられる。
金属酸化物層を構成する金属酸化物としては、十分な耐食性を得る観点から、Cr酸化物(酸化クロム)、Sn酸化物、Al酸化物などの安定な酸化物が好適に挙げられ、なかでも、Cr酸化物(酸化クロム)がより好ましい。すなわち、金属酸化物層としては、酸化クロム層が好ましい。
金属層を形成する方法は、特に限定されず、例えば、金属層を構成する金属元素がNi、Sn、Ag等である場合、公知のめっき浴を用いて電気めっきする方法が挙げられる。
金属酸化物層を形成する方法も、特に限定されない。例えば、金属層を自然酸化させて、金属酸化物層を得てもよい。また、めっき浴中などで陽極電解処理することにより、金属層を酸化させてもよい。
《厚さ》
被覆層の厚さは、特に限定されないが、耐食性がより優れるという理由から、合計で 、3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。
一方、上限は特に限定されないが、被覆層が過度に厚い場合は割れや剥離の原因に成り得るため、被覆層の厚さは、合計で、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましく、100nm以下が特に好ましい。
被覆層の層数および厚さは、FIBを用いて切り出した断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、測定できる。任意の5視野の平均値とする。
後述するコア粒径およびシェル厚さも、同様に測定する。
〈クロム含有層(コアシェル粒子)〉
クロム含有層は、複数個のコアシェル粒子からなる層である。
コアシェル粒子は、被覆層のうちクロム含有層に隣接する一層(図1の「被覆層3b」を参照)の上に配置される。
コアシェル粒子のコアは、金属クロムまたはクロム化合物で構成される。コアを覆うシェルは、酸化クロムで構成される。
コアシェル粒子のコアは、缶用鋼板どうしの接触抵抗を低下させて溶接性を向上させる。接触抵抗が低下する推定メカニズムを、以下に記載する。
コアシェル粒子のシェルは、酸化クロムで構成される。
また、上述したように、被覆層のうち、クロム含有層に隣接する一層(図1の「被覆層3b」を参照)も、酸化クロム層などの金属酸化物層である場合がある。
酸化クロムなどの金属酸化物は、金属クロムよりも電気抵抗が大きいため、溶接の阻害因子となり得る。
しかし、コアシェル粒子のコアは、溶接する際の缶用鋼板どうしの接触時の面圧により、これらの金属酸化物を破壊して、溶接電流の通電点になり、その結果、接触抵抗が大幅に低下する。
《コア》
上述したように、コアシェル粒子のコアは、金属クロムまたはクロム化合物で構成される。クロム化合物としては、例えば、酸化クロムを除くクロム化合物が挙げられ、その具体例としては、Fe-Cr合金、炭化クロム、窒化クロム、ホウ化クロムなどが挙げられる。
導電性が高く、溶接性がより優れるという理由から、コアは、金属クロムで構成されることが好ましい。
コアを構成する金属クロムまたはクロム化合物は、多結晶に比べて導電性が高く、溶接性がより優れるという理由から、単結晶であることが好ましい。
(コア粒径)
コアの粒径(コア粒径)は、金属酸化物を効果的に破壊しやすく、溶接性がより優れるという理由から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、25nm以上が更に好ましく、40nm以上が特に好ましい。
コア粒径の上限は、特に限定されない。もっとも、コア粒径が過度に大きいと、接触点数が減少し、効果的に接触抵抗を低減することが難しい場合がある。このため、コア粒径は、5000nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、500nm以下が更に好ましく、250nm以下が特に好ましい。
《シェル》
シェルを構成する酸化クロムは、アモルファスであることが好ましい。シェルがアモルファスであることにより、シェルとコアとの界面に欠陥が導入されにくくなり、両者の密着性が優れる。
(シェル厚さ)
酸化クロムで構成されるシェルは、その厚さ(シェル厚さ)が大きいと、これが小さい場合と比較して、溶接を阻害しやすい。
溶接性がより優れるという理由から、シェル厚さは、10.0nm以下が好ましく、7.0nm以下がより好ましく、5.0nm以下が更に好ましく、1.0nm以下が特に好ましい。
同様の理由から、シェル厚さは、コア粒径の1/3以下が好ましく、1/6以下がより好ましく、1/10以下が更に好ましい。
一方、酸化クロムで構成されるシェルの厚さが大きい場合は、これが小さい場合と比較して、耐食性は良好になる。
耐食性がより優れるという理由からは、シェル厚さは、0.5nm以上が好ましく、1.0nm以上が好ましく、3.0nm以上がより好ましく、5.0nm以上が更に好ましい。
《面積率および個数密度》
コアシェル粒子が効果的に金属酸化物(特に、金属酸化物層である被覆層)を破壊しやすいという理由から、コアシェル粒子の面積率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。
同様の理由から、コアシェル粒子の個数密度は、1個/μm以上が好ましく、20個/μm以上がより好ましく、50個/μm以上が更に好ましい。
一方、コアシェル粒子が過度に缶用鋼板の表面を占有すると、コアシェル粒子どうしの接触が増えて、接触抵抗の低減に寄与しにくくなる場合がある。
このため、コアシェル粒子の面積率は、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。
コアシェル粒子の個数密度は、300個/μm以下が好ましく、240個/μm以下がより好ましく、180個/μm以下が更に好ましい。
《アスペクト比》
コアシェル粒子が過剰に細長である場合は、缶用鋼板どうし接触させた際に、コアシェル粒子が相手方の缶用鋼板の表面にめり込まず、金属酸化物の破壊による接触抵抗の低減が達成されない確率が高まる。
このため、溶接性がより優れるという理由から、コアシェル粒子のアスペクト比は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。
コアシェル粒子の面積率、個数密度およびアスペクト比は、次のようにして求める。
まず、缶用鋼板の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、50,000倍の倍率で写真を撮影する。
撮影した写真について、ソフトウェア(商品名:ImageJ)を用いて二値化して画像解析して、缶用鋼板の表面を占めるコアシェル粒子の面積率(単位:%)および個数密度(単位:個/μm)を求める。
更に、各コアシェル粒子について、最長の粒子長さを長軸長さa、これに垂直な方向で最も粒子を長く横切るときの粒子長さを短軸長さbとして、アスペクト比(a/b)を求める。
いずれも任意の5視野の平均値とする。
〈金属クロムの付着量〉
缶用鋼板の耐食性がより優れるという理由から、金属クロムの付着量は、50mg/m以上が好ましく、60mg/m以上がより好ましく、70mg/m以上が更に好ましい。付着量は、鋼板の片面当たりの付着量である(以下、同様)。
一方、金属クロムの付着量が多すぎる場合、高融点の金属クロムが鋼板の全面を覆い、その結果、溶接時に溶接強度が低下したりチリの発生が著しくなったりして、溶接性が不十分となり得る。
このため、缶用鋼板の溶接性がより優れるという理由から、金属クロムの付着量は、200mg/m以下が好ましく、180mg/m以下がより好ましく、160mg/m以下が更に好ましい。
〈酸化クロムの付着量〉
缶用鋼板の耐食性がより優れるという理由から、酸化クロムのクロム換算の付着量は、3mg/m以上が好ましく、4mg/m以上がより好ましく、5mg/m以上が更に好ましい。
一方、酸化クロムは、金属クロムと比較して導電率が低く、量が多すぎると溶接時に過大な抵抗となり、チリやスプラッシュの発生および過融接に伴うブローホールなどの各種溶接欠陥を引き起こし、缶用鋼板の溶接性が劣る場合がある。
このため、缶用鋼板の溶接性がより優れるという理由から、酸化クロムのクロム換算の付着量は、30mg/m以下が好ましく、20mg/m以下がより好ましく、10mg/m以下が更に好ましい。
金属クロムの付着量および酸化クロムのクロム換算の付着量は、次のように求める。
まず、蛍光X線装置を用いて、缶用鋼板のクロム量(全クロム量)を測定する。次いで、缶用鋼板を6.5Nの水酸化ナトリウム水溶液(液温:90℃)に10分間浸漬させるアルカリ処理を実施してから、再び、蛍光X線装置を用いて、クロム量(アルカリ処理後クロム量)を測定する。アルカリ処理後クロム量を、金属クロムの付着量とする。
次に、(アルカリ可溶性クロム量)=(全クロム量)-(アルカリ処理後クロム量)を計算し、アルカリ可溶性クロム量を、酸化クロムのクロム換算の付着量とする。
[缶用鋼板の製造方法]
次に、上述した本実施形態の缶用鋼板を製造する方法を説明する。
以下では、下記条件を満たす缶用鋼板を製造する方法(便宜的に「本製造方法」ともいう)を説明する。
・被覆層の層数:2層
・鋼板に隣接する被覆層A:金属クロム層
・クロム含有層に隣接する被覆層B:酸化クロム層
・コアシェル粒子のコア:金属クロム
・コアシェル粒子のシェル:酸化クロム
本製造方法は、概略的には、鋼板に対して、六価クロム化合物およびフッ素含有化合物を含有する水溶液を用いて、1次陰極電解処理、陽極電解処理、2次陰極電解処理および3次陰極電解処理を、この順に施す方法である。
そして、本製造方法においては、2次陰極電解処理の電流密度が、15A/dm以下であり、2次陰極電解処理の電気量密度が、5C/dm以下である。
六価クロム化合物を含む水溶液中で鋼板に陰極電解処理を実施すると、鋼板の表面において還元反応が発生し、金属クロムと、その表面に金属クロムへの中間生成物である酸化クロムとが析出する。
陰極電解処理の合間に陽極電解処理を実施することにより、鋼板の全面かつ多発的に金属クロムおよび酸化クロムが溶解する。より詳細には、陽極電解処理では、酸化クロムが溶解して薄くなり、更に、下層の金属クロムが酸化クロムに変化すると推定される。
その後に陰極電解処理を実施して金属クロムを析出させると、酸化クロムの薄い部分(析出サイト)に電流が集中し、粒状の金属クロムが生成する。
本製造方法では、2次陰極電解処理を適切な条件(低い電流密度および電気量密度)で実施することにより、析出サイトを潰さない程度に薄く酸化クロムで被覆する。
これにより、続く3次陰極電解処理では、析出サイトにおいて、酸化クロムで周囲を被覆された粒状の金属クロム(つまり、コアシェル粒子)が析出する。
薄く形成された酸化クロムの上に金属クロムが析出(電解析出)するメカニズム(理由)については、詳細は不明であるが、酸化クロムがCrなどの半導体を形成して電子授受が行なわれる;酸化クロムが極薄膜であるため、トンネル効果によって電解析出が進行する;等の理由が考えられる。
2次陰極電解処理を実施しない(または、2次陰極電解処理を適切な条件で実施しない)場合、析出サイトから、直接、粒状の金属クロムが成長する。
この場合、具体的には、例えば、図4に基づいて説明した従来の缶用鋼板11のように、基部13aと粒状突起13bとが接触した状態となる。
以下、本製造方法に用いる水溶液および各電解処理について、詳細に説明する。
〈水溶液〉
本発明の製造方法に用いる水溶液は、少なくとも、六価クロム化合物およびフッ素含有化合物を含有する。
《六価クロム化合物》
六価クロム化合物としては、例えば、三酸化クロム(CrO);二クロム酸カリウム(KCr)などの二クロム酸塩;クロム酸カリウム(KCrO)などのクロム酸塩;等が挙げられる。
水溶液中の六価クロム化合物の含有量は、長時間安定して金属クロムを高効率で析出できるという理由から、Cr量として、0.50mol/L以上が好ましく、0.80mol/L以上がより好ましい。
一方、このCr量は、5.00mol/L以下が好ましく、3.00mol/L以下がより好ましい。
《フッ素含有化合物》
フッ素含有化合物としては、例えば、フッ化水素酸(HF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ナトリウム(NaF)、ケイフッ化水素酸(HSiF)、ケイフッ化水素酸の塩などが挙げられる。
ケイフッ化水素酸の塩としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム(NaSiF)、ケイフッ化カリウム(KSiF)、ケイフッ化アンモニウム((NHSiF)などが挙げられる。
水溶液中のフッ素含有化合物の含有量は、F量として、0.100mol/L超が好ましく、0.110mol/L以上がより好ましく、0.150mol/L以上が更に好ましく、0.200mol/L以上が特に好ましい。これにより、陽極電解処理での溶解の際に、全面均一かつ微細な析出サイトを得やすい。
一方、このF量は、4.000mol/L以下が好ましく、3.000mol/L以下がより好ましく、2.000mol/L以下が更に好ましく、1.000mol/L以下が特に好ましい。
《硫酸》
硫酸をフッ素含有化合物と併用することにより、金属クロムの付着効率が向上する。
硫酸は、その一部または全部が、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩であってもよい。
水溶液中の硫酸の含有量は、SO 2-量として、0.0001mol/L以上が好ましく、0.0003mol/L以上がより好ましく、0.0010mol/L以上が更に好ましい。
一方、このSO 2-量は、0.1000mol/L以下が好ましく、0.0500mol/L以下がより好ましい。
水溶液の液温は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。
一方、水溶液の液温は、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
各電解処理(1次陰極電解処理、陽極電解処理、2次陰極電解処理および3次陰極電解処理)において、1種類の水溶液のみを用いることが好ましい。
〈1次陰極電解処理〉
1次陰極電解処理は、金属クロムおよび酸化クロムを析出させる。
このとき、適切な析出量とする観点から、1次陰極電解処理の電気量密度(電流密度と通電時間との積)は、5.0C/dm以上が好ましく、8.0C/dm以上がより好ましく、10.0C/dm以上が更に好ましい。
一方、1次陰極電解処理の電気量密度は、40.0C/dm以下が好ましく、35.0C/dm以下がより好ましく、25.0C/dm以下が更に好ましい。
1次陰極電解処理の電流密度(単位:A/dm)および通電時間(単位:s)は、上記の電気量密度から、適宜設定される。
〈陽極電解処理〉
陽極電解処理は、1次陰極電解処理で析出した金属クロムおよび酸化クロムを溶解させて、上述した析出サイトを形成する。
このとき、陽極電解処理での溶解が強すぎたり弱すぎたりすると、析出サイトが減少して、コアシェル粒子の個数密度が減少したり、不均一に溶解が進行してコアシェル粒子の分布にばらつきが生じたり、金属クロム層の厚さが低減したりする場合がある。
以上の観点から、陽極電解処理の電気量密度(電流密度と通電時間との積)は、0.1C/dm以上が好ましく、0.3C/dm超がより好ましく、0.8C/dm以上が更に好ましい。
一方、陽極電解処理の電気量密度は、5.0C/dm以下が好ましく、3.0C/dm以下がより好ましく、2.0C/dm以下が更に好ましい。
陽極電解処理の電流密度(単位:A/dm)および通電時間(単位:s)は、上記の電気量密度から、適宜設定される。
〈2次陰極電解処理〉
2次陰極電解処理では、上述したように、陽極電解処理で形成された析出サイトを薄く酸化クロムで被覆する。すなわち、2次陰極電解処理の目的は、金属クロムを析出させることではない。
2次陰極電解処理の電流密度および/または電気量密度が高すぎると、析出サイトが酸化クロムで被覆されないで、析出サイトから粒状の金属クロムが析出しやすい。
このため、2次陰極電解処理の電流密度は、15A/dm以下であり、12A/dm以下が好ましく、8A/dm以下がより好ましい。
2次陰極電解処理の電気量密度は、5.0C/dm以下であり、4.0C/dm以下が好ましく、3.0C/dm以下がより好ましい。
2次陰極電解処理の電流密度の下限は、特に限定されず、例えば、1A/dmであり、3A/dmが好ましい。
2次陰極電解処理の電気量密度の下限は、特に限定されず、例えば、0.5C/dmであり、1.0C/dmがより好ましい。
2次陰極電解処理の通電時間(単位:s)は、上記の電流密度および電気量密度から、適宜設定される。
〈3次陰極電解処理〉
3次陰極電解処理では、薄く酸化クロムで被覆された析出サイトに、粒状の金属クロムを析出させる。こうして、酸化クロムで周囲を被覆された金属クロム(つまり、コアシェル粒子)が生成する。
3次陰極電解処理において、電流密度および/または電気量密度が高い場合、粒状の金属クロムが析出しやすい。なお、3次陰極電解処理では、酸化クロムも析出するため、この場合、酸化クロムで構成されるシェルの厚さも増えやすい。
以上の点から、3次陰極電解処理の電流密度は、例えば20A/dm以上であり、30A/dm以上が好ましく、50A/dm以上がより好ましく、70A/dm以上が更に好ましく、100A/dm以上が特に好ましい。
同様に、3次陰極電解処理の電気量密度は、10.0C/dm以上が好ましく、15.0C/dm以上がより好ましく、20.0C/dm以上が更に好ましく、25.0C/dm以上が特に好ましい。
一方、3次陰極電解処理の電流密度は、250A/dm以下が好ましく、200A/dm以下がより好ましく、150A/dm以下が更に好ましい。
3次陰極電解処理の電気量密度は、100C/dm以下が好ましく、80C/dm以下がより好ましく、60C/dm以下が更に好ましい。
3次陰極電解処理の通電時間(単位:s)は、上記の電流密度および電気量密度から、適宜設定される。
各電解処理は、連続電解処理でなくてもよい。すなわち、各電解処理は、工業生産上、複数の電極に分けて電解することにより不可避的に無通電浸漬時間が存在する断続電解処理であってもよい。断続電解処理の場合、トータルの電気量密度が上記範囲内であることが好ましい。
3次陰極電解処理の後に、酸化クロム層の量のコントロールおよび改質などを目的として、六価クロム化合物を含有する水溶液中に鋼板を無電解で浸漬させてもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
〈缶用鋼板の作製〉
0.22mmの板厚で製造した鋼板(調質度:T4CA)に対して、通常の脱脂および酸洗を施した。
次いで、この鋼板に対して、下記表1に示す水溶液を用いて、下記表2に示す条件で、1次陰極電解処理、陽極電解処理、2次陰極電解処理および3次陰極電解処理を実施した。各電解処理を実施しなかった場合は、下記表2中の該当する欄に「-」を記載した。
各電解処理において、水溶液は、流動セルでポンプにより100mpm相当で循環させ、鉛電極を使用した。
こうして、缶用鋼板を作製した。作製後の缶用鋼板は、水洗し、ブロアを用いて室温で乾燥した。
〈付着量など〉
作製した缶用鋼板について、金属クロムの付着量および酸化クロムのクロム換算の付着量(下記表2では単に「付着量」と表記)を測定した。
更に、作製した缶用鋼板のコアシェル粒子について、面積率、個数密度、平均粒径、シェルの厚さ、および、アスペクト比を測定した。
測定方法は、いずれも上述したとおりである。結果を下記表2に示す。
各測定を実施しなかった場合は、下記表2中に「-」を記載した(以下、同様)。
〈構成および接触状態〉
作製した缶用鋼板について、上述した方法によって、断面を観察し、かつ、厚さ方向の元素分布を求めた。
その結果、作製した缶用鋼板は、下記構成を有するものであることが確認できた(ただし、一部の比較例は除く)。
・被覆層の層数:2層
・鋼板に隣接する被覆層A:金属クロム層
・クロム含有層に隣接する被覆層B:酸化クロム層
・コアシェル粒子のコア:金属クロム
・コアシェル粒子のシェル:酸化クロム
更に、作製した缶用鋼板について、コア(粒状の金属クロム)と被覆層A(金属クロム層)との間に「酸化クロム」が存在し、コアと被覆層Aとが非接触であった場合は、下記表2の「接触状態」の欄に「非接触」と記載した。
一方、コア(粒状の金属クロム)と被覆層A(金属クロム層)とが接触していた場合は、下記表2の「接触状態」の欄に「接触」と記載した。
〈評価〉
作製した缶用鋼板について、以下の試験を実施することにより、耐食性および溶接性を評価した。結果を下記表2に示す。
《耐食性》
作製した缶用鋼板から2枚の試験片を切り出し、被覆層およびクロム含有層が形成された面を評価面とした。2枚の試験片を評価面どうしが対面する向きで重ね合わせ、金属ロールの間に通板させて、40MPaの面圧をかけた。
その後、1枚の試験片の評価面に、エポキシ-フェノール樹脂を塗布し、210℃で10分間加熱する熱処理を2回実施して、塗膜を形成した。
次いで、塗膜に鋼板まで達する深さのクロスカットを入れてから、試験片を45℃の試験液(1.5質量%のクエン酸と1.5質量%の塩化ナトリウムとの混合液)に72時間浸漬させた。浸漬後、試験片を試験液から取り出し、洗浄および乾燥してから、テープを用いて塗膜を剥離する試験を実施した。
クロスカットの交差部から10mm以内の4箇所の剥離巾(交差部から広がる左右の合計巾)を測定し、4箇所の剥離巾の平均値を求めた。剥離巾の平均値を、塗膜下の腐食巾とみなし、下記基準で評価した。「◎◎」、「◎」または「○」である場合、耐食性に優れると評価した。
◎◎:腐食巾0.5mm以下
◎:腐食巾0.5mm超1.0mm以下
○:腐食巾1.0mm超2.0mm以下
△:腐食巾2.0mm超3.0mm以下
×:腐食巾3.0mm超
《溶接性》
作製した缶用鋼板から、2枚の試験片を切り出し、バッチ炉中で加熱した。具体的には、到達板温210℃で10分保持する加熱を2回実施した。加熱後の2枚の試験片を重ね合わせた。
次いで、DR型1質量%Cr-Cu電極(先端径が6mm、曲率R40mmとして加工した電極)を用いて、重ね合わせた2枚の試験片を挟み込み、加圧力1kgf/cmとして、15秒保持した。
その後、電流値10Aで通電し、2枚の試験片間の抵抗値(単位:μΩ)を10点で測定した。10点の平均値を接触抵抗値として、下記基準で評価した。「◎◎」、「◎」または「○」である場合、溶接性に優れると評価した。
◎◎:接触抵抗値50μΩ以下
◎:接触抵抗値50μΩ超100μΩ以下
○:接触抵抗値100μΩ超300μΩ以下
△:接触抵抗値300μΩ超1000μΩ以下
×:接触抵抗値1000μΩ超
Figure 0007306441000001
Figure 0007306441000002
〈評価結果まとめ〉
上記表2に示すように、実施例1~15は、耐食性および溶接性が優れるのに対して、比較例1~3は、耐食性または溶接性が不十分であった。
より詳細には、以下のような結果が得られた。
実施例1~6は、陽極電解処理の条件が互いに異なる。
このうち、陽極電解処理の電気量密度が1.0~2.0C/dmの範囲内である実施例3~4は、この範囲外である実施例1~2および5~6と比べて、コアシェル粒子の面積率および個数密度が高い結果が得られた。
実施例7~11は、3次陰極電解処理の条件が互いに異なる。
このうち、3次陰極電解処理の電流密度が105A/dmである実施例10は、3次陰極電解処理の電流密度がこれより低い実施例7~9および11と比べて、シェル厚さが大きく、耐食性がより良好であった。
実施例12は、2次陰極電解処理の電流密度および電気量密度が、実施例1~11および13~15よりも高い実施例である。
このような実施例12は、実施例1~11および13~15と比べて、シェル厚さが小さく、溶接性がより良好であった。
実施例13~15は、水溶液Aとは組成が異なる水溶液B~Dを使用したが、水溶液Aを用いた実施例1~12と同等の結果が得られた。
比較例1は、2次陰極電解処理の電流密度および電気量密度が過度に高く、かつ、3次陰極電解処理を実施していない比較例である。
このような比較例1は、コア(粒状の金属クロム)と被覆層A(金属クロム層)とが接触しており、耐食性が不十分であった。
比較例2は、2次陰極電解処理の電気量密度が過度に高い比較例である。
このような比較例2は、コア(粒状の金属クロム)と被覆層A(金属クロム層)とが接触しており、耐食性が不十分であった。
なお、比較例2では、3次陰極電解処理を実施したので、その際に、粒状の金属クロム(コア)の上に、酸化クロムがわずかに形成されたと考えられる。このため、比較例2のシェル厚さは、0.3mmであった。
比較例3は、1次陰極電解処理のみを実施した。このため、コア(粒状の金属クロム)が形成されず、溶接性が不十分であった。
1:缶用鋼板
2:鋼板
3、3a、3b:被覆層
4:クロム含有層
5:コアシェル粒子
5a:コア
5b:シェル
11:従来の缶用鋼板
12:鋼板
13:金属クロム層
14:酸化クロム層
13a:基部
13b:粒状突起

Claims (9)

  1. 鋼板の表面に、前記鋼板側から順に、2層以上の被覆層およびクロム含有層を有し、
    前記クロム含有層は、複数個のコアシェル粒子を有し、
    前記コアシェル粒子は、前記被覆層のうち前記クロム含有層に隣接する一層の上に配置され、
    前記コアシェル粒子は、それぞれ、金属クロムのコアと、前記コアを覆う酸化クロムのシェルと、を有し、
    前記被覆層のうち前記鋼板に隣接する一層が、金属クロム層であり、
    前記被覆層のうち前記クロム含有層に隣接する一層が、酸化クロム層であり、
    前記コアシェル粒子の面積率が、10%以上であり、
    前記コアシェル粒子の個数密度が、1個/μm 以上である、缶用鋼板。
  2. 前記コアと、前記被覆層のうち前記鋼板に隣接する一層とが非接触である、請求項1に記載の缶用鋼板。
  3. 前記コアと、前記被覆層のうち前記鋼板に隣接する一層との間に、酸化クロムが存在する、請求項1または2に記載の缶用鋼板。
  4. 前記被覆層が2層である、請求項1~のいずれか1項に記載の缶用鋼板。
  5. 前記コアの粒径が、10~500nmであり、
    前記シェルの厚さが、前記コアの粒径の1/3以下であって、かつ、0.5~10.0nmである、請求項1~のいずれか1項に記載の缶用鋼板。
  6. 前記コアシェル粒子のアスペクト比が、2.0以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の缶用鋼板。
  7. 前記コアが単結晶である、請求項1~のいずれか1項に記載の缶用鋼板。
  8. 前記シェルがアモルファスである、請求項1~のいずれか1項に記載の缶用鋼板。
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載の缶用鋼板を製造する方法であって、
    鋼板に対して、六価クロム化合物およびフッ素含有化合物を含有する水溶液を用いて、1次陰極電解処理、陽極電解処理、2次陰極電解処理および3次陰極電解処理を、この順に施し、
    前記2次陰極電解処理の電流密度が、15A/dm以下であり、前記2次陰極電解処理の電気量密度が、5.0C/dm以下である、缶用鋼板の製造方法。
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