JP7023418B2 - 粗化ニッケルめっき板 - Google Patents
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Description
これに対し、他の部材との密着性を向上させるために、粗化めっきによりニッケルめっき層を形成する方法も考えられるが、本発明者等が検討を行ったところ、粗化めっきにより粗化ニッケルめっき層を形成することにより、他の部材に対する密着性を向上させることができるものの、その一方で、接合界面において、液浸透が発生してしまう場合があるという課題があることが見出された。
前記粗化ニッケル層の付着量が、1.34~45.0g/m 2 であり、
前記粗化ニッケルめっき板について、集束イオンビーム加工観察装置(FIB-SEM)による測定を行い、前記集束イオンビーム加工観察装置により得られる撮影画像から、各高さ位置における、前記粗化ニッケル層の状態を測定した際に、
ニッケル占有率が90%である高さ位置DNi90%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、高さ変化に対する、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni90%_Ni50%)が、65%/μm以下であり、
高さ方向における前記粗化ニッケル層の基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、ニッケル占有率C2.0が、15%以上であり、
前記基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、複数のニッケル突起物の存在個数N2.0が、20個/136.5μm2以上である粗化ニッケルめっき板が提供される。
前記粗化ニッケル層の付着量が、1.34~45.0g/m 2 であり、
前記粗化ニッケルめっき板について、集束イオンビーム加工観察装置(FIB-SEM)による測定を行い、前記集束イオンビーム加工観察装置により得られる撮影画像から、各高さ位置における、前記粗化ニッケル層の状態を測定した際に、
ニッケル占有率が80%である高さ位置DNi80%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、前記ニッケル突起物の断面の円相当径の平均値Rave(Ni80%_Ni50%)が、0.6μm以上であり、
高さ方向における前記粗化ニッケル層の基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、ニッケル占有率C2.0が、15%以上であり、
前記基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、複数のニッケル突起物の存在個数N2.0が、20個/136.5μm2以上である粗化ニッケルめっき板が提供される。
本発明の第1の観点および第2の観点に係る粗化ニッケルめっき板において、前記金属基材が、鋼板であることが好ましい。
本発明の第1の観点および第2の観点に係る粗化ニッケルめっき板において、前記金属基材の厚みが、0.01~2.0mmであることが好ましい。
本発明の第1の観点および第2の観点に係る粗化ニッケルめっき板は、前記金属基材上に、さらに下地ニッケル層を備え、前記粗化ニッケル層は、前記下地ニッケル層を介して、金属基材上に形成されることが好ましい。
前記粗化ニッケル層と前記下地ニッケル層との合計の付着量が、5.0~50.0g/m2であることが好ましい。
なお、本実施形態においては、図1Aに示すように、粗化ニッケルめっき板1として、金属基材11の両面に、下地ニッケル層13を介して、粗化ニッケル層12が形成されてなるものを例示したが、このような態様に特に限定されず、たとえば、図1Bに示す粗化ニッケルめっき板1aのように、粗化ニッケル層12が、下地ニッケル層13を介して、金属基材11の一方の面に形成された構成としてもよい。また、図1A、図1Bにおいては、下地ニッケル層13が形成されてなる態様を例示したが、下地ニッケル層13を形成せずに、金属基材11の上に、直接、粗化ニッケル層12が形成されてなる態様としてもよい。
本実施形態の粗化ニッケルめっき板1の基板となる金属基材11としては、特に限定されないが、Fe,Cu,AlおよびNiから選択される一種の純金属からなる金属板もしくは金属箔、または、Fe,Cu,AlおよびNiから選択される一種を含む合金からなる金属板もしくは金属箔などが挙げられ、具体的には、鋼板、鉄板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム板、またはニッケル板(これらは、純金属、合金のいずれであってもよく、箔状であってもよい。)などが挙げられ、これらのなかでも、めっき処理の前処理が比較的簡便な前処理でもめっきを施しやすく、また、金属基材に対して密着性の高い粗化ニッケル層を良好に形成しやすいことから、鋼板または銅板が好ましく、特に、低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01~0.15重量%)、炭素量が0.01重量%以下(好ましくは炭素量が0.003重量%以下)の極低炭素鋼、または極低炭素鋼にTiやNbなどを添加してなる非時効性極低炭素鋼が好適に用いられる。
浴組成:硫酸ニッケル六水和物100~300g/L、硫酸10~200g/L
pH:1.0以下
浴温:40~70℃
電流密度:5~100A/dm2
めっき時間:3~100秒間
本実施形態の粗化ニッケルめっき板1の最表面に形成される粗化ニッケル層12は、複数のニッケル突起物から形成される粗化めっき層であり、粗化ニッケル層12は、集束イオンビーム加工観察装置(FIB-SEM)による測定を行った際における、粗化ニッケル層12を構成する複数のニッケル突起物の状態が、以下に説明する第1の態様および第2の態様のいずれかの状態にあるものである。
たとえば、金属基材11側から、所定の厚みごとに断面を露出させ、露出させた断面について、FIB-SEM画像を得る方法においては、まず、粗化ニッケルめっき板1について、樹脂埋めする処理を行い、研磨等により、測定対象となる断面を露出させる。次いで、分析対象箇所としての粗化ニッケル層12に対し、マーキングを行い、必要に応じて、測定試料に対して、導電化処理(たとえば、カーボン蒸着等)を行う。次いで、図3Aに示すように、金属基材11(あるいは、下地ニッケル層13)のうち、マーキングした粗化ニッケル層12よりも十分に下側の位置である一方で、粗化ニッケル層12になるべく近い位置について、エッチングを行い、エッチングにより、Slice & View法を利用した測定を行うための、観察用の空間を形成する。なお、エッチングにより形成する観察用の空間は、粗化ニッケル層12に対し、Slice & View法を利用した測定を行うのに十分な大きさを有する空間とする。そして、観察用の空間より、金属基材11(あるいは、下地ニッケル層13)側から、粗化ニッケル層12側に向かって、収束イオンビーム(FIB)にて、所定厚み、たとえば、0.1μmで削る操作、および、走査型電子顕微鏡(SEM)により、FIB-SEM画像を得る操作を繰り返し行い、所定厚みごとに、FIB-SEM画像を得る。なお、この際においては、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察は、観察用の空間から、所定角度(たとえば、52°傾いた角度)にて行う。また、この際における所定厚み(測定ピッチ)としては、0.1μmに特に限定されず、たとえば、0.08~0.18μmの間で選択することが好適である。そして、図3Bに示すように、各測定断面におけるFIB-SEM画像を得る。すなわち、図3Bに示すように、基端位置BPから高さ方向に向かって、所定のピッチ(たとえば、図3B中に破線で示すように、0.1μmのピッチ)にて、各測定断面におけるFIB-SEM画像を得る。なお、図3Bは、集束イオンビーム加工観察装置(FIB-SEM)を用いた、粗化ニッケル層12の測定方法を説明するための図であって、図3AのIIIb部分を拡大して示す図である。
そして、本実施形態の第1の態様は、粗化ニッケル層12が、以下の(1)~(3)の条件を満たすものである。
(1)ニッケル占有率が90%である高さ位置DNi90%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、高さ変化に対する、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni90%_Ni50%)が、65%/μm以下
(2)基端位置BPから、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、ニッケル占有率C2.0が、15%以上
(3)基端位置BPから、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、複数のニッケル突起物12aの存在個数N2.0が、20個/136.5μm2以上
高さ変化に対する、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni90%_N i50%)=|〔ニッケル占有率が90%である高さ位置DNi90%におけるニッケル占有率(%)-ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%におけるニッケル占有率(%)〕÷〔基端位置BPからの、ニッケル占有率が90%である高さ位置DNi9 0%(μm)-基端位置BPからの、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50 %(μm)〕| (式α)
なお、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni90%_Ni50%)の算出に際して、測定ピッチの関係上、ニッケル占有率が90%ちょうどである高さ位置のデータや、ニッケル占有率が50%ちょうどである高さ位置のデータが取得できない場合には、最も近い高さ位置のデータを使用し、近似処理等を行えばよい。
また、本実施形態の第2の態様は、粗化ニッケル層12が、上記した(2)、(3)の条件に加えて、以下の(4)の条件を満たすものである。
(4)ニッケル占有率が80%である高さ位置DNi80%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、ニッケル突起物の断面の円相当径の平均値Rave(Ni80%_Ni50%)が、0.6μm以上
(5)複数のニッケル突起物12aの存在個数の最大値Nmaxが150個/136.5μm2未満
(6)基端位置BPから、表面側に向かって0.3μmの高さ位置における、複数のニッケル突起物12aの存在個数N0.3が、45個/136.5μm2以下
(7)基端位置BPから、表面側に向かって0.3μmの高さ位置における、ニッケル突起物12aの断面の円相当径R0.3が、0.6μm以上
(8)基端位置BPから、表面側に向かって、ニッケル突起物12aの断面の円相当径が漸減していく中で、円相当径が、初めて1μm以下まで減少する際における、基端位置BPからの高さ位置を、1μm以下高さ位置D1μmとした場合に、1μm以下高さ位置D1μmが、0.15μm以上
(9)ニッケル占有率が80%である高さ位置DNi80%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、高さ変化に対する、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni80%_Ni50%)が、65%/μm以下
(10)基端位置BPから、表面側に向かって0.5~1.5μmの高さ位置における、複数のニッケル突起物12aの存在個数の平均値Nave(0.5_1.5)が、20個/136.5μm2以上
高さ変化に対する、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni80%_N i50%)=|〔ニッケル占有率が80%である高さ位置DNi80%におけるニッケル占有率(%)-ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%におけるニッケル占有率(%)〕÷〔基端位置BPからの、ニッケル占有率が80%である高さ位置DNi8 0%(μm)-基端位置BPからの、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50 %(μm)〕| (式β)
図1Bに示すような粗化ニッケルめっき板1を製造する場合には、たとえば、粗化ニッケルめっきを施す工程において、粗化ニッケル層12を形成しない方の表面には通電せずにめっき処理を行う方法や、マスキングを行う方法によって、片面のみに粗化ニッケル層12を有する粗化ニッケルめっき鋼板を得ることができる。
なお、各特性の評価方法は、以下のとおりである。
本実施例においては下地ニッケル層、ニッケル粒状物およびニッケル被膜を形成したそれぞれの工程後において蛍光X線装置により測定することで、下地ニッケル層、粗化ニッケル層(ニッケル粒状物およびニッケル被膜)におけるニッケル量をそれぞれ求めた。具体的には、下地ニッケル層を形成した時点で一度蛍光X線装置を用いて下地ニッケル層のニッケル量を求めた。その後、ニッケル粒状物を形成した後に再度蛍光X線装置で総ニッケル量を求め、得られた総ニッケル量と下地ニッケル層のニッケル量の差分をニッケル粒状物のニッケル量とした。さらに、ニッケル被膜を形成した後に再度蛍光X線装置で総ニッケル量を求め、ニッケル被膜形成前の総ニッケル量と形成後の総ニッケル量の差分を求めることで同様にニッケル被膜のニッケル量を得た。そして、ニッケル粒状物およびニッケル被膜の合計のニッケル量を、粗化ニッケル層の付着量として求めた。
ここで、基体としてステンレス鋼板、およびニッケル板などのニッケルを含む金属を用いる場合においては、上記の蛍光X線装置による各層のニッケル量の測定が出来ない。そのため、予め鋼板等のニッケルを含まない基体を用いて、所定の下地ニッケル層のニッケル量が得られためっき条件にて、基体をステンレス鋼鈑、およびニッケル板などのニッケルを含む金属板にして電解することで、同一の付着量を得ることができる。
なお、本実施例および比較例では上記の方法でニッケル量の測定を行ったが、ニッケル量の測定はこのような方法に限定されず、以下の方法を用いてもよい。本実施例においては、一部、以下の方法も採用した。すなわち、まず、下地ニッケル層、ニッケル粒状物およびニッケル被膜を形成した粗化ニッケルめっき板について、蛍光X線装置により測定を行うことで、粗化ニッケルめっき板上に形成された層の総ニッケル量を求める。次いで、粗化ニッケルめっき板を切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで、下地ニッケル層の厚みを計測して、下地ニッケル層の厚みから換算されるニッケル量を求め、これを下地ニッケル層のニッケル量とする。そして、総ニッケル量から、下地ニッケル層のニッケル量を差し引くことで、ニッケル粒状物およびニッケル被膜の合計のニッケル量を求め、これを粗化ニッケル層の付着量とすることができる。特に、被覆ニッケルめっきを行った際には、ニッケル粒状物121を被覆するニッケル被膜122として、粗化ニッケル層12を形成する他、その一部については、下地ニッケル層を形成することとなるところ、このような方法によれば、被覆ニッケルめっきによる下地ニッケル層の成長(厚膜化)を加味した、下地ニッケル層のニッケル量を求めることができるものである。
ここで、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した際の、金属基体と下地ニッケル層との境界、および下地ニッケル層と粗化ニッケル層との境界については、図11のようにして判定した。すなわち、図11に示すように、金属基体と下地ニッケル層との境界は、図11に示すように明確に観察できるため、図11に示す位置(下の破線位置)とし、一方、下地ニッケル層と粗化ニッケル層との境界については、図11に示すように、二次粒子によるニッケル突起物の根元のうち、最も高さが低い位置(上の破線位置)とした。なお、図11は、実施例、比較例における、金属基体と下地ニッケル層との境界、および下地ニッケル層と粗化ニッケル層との境界の決定方法を説明するための図であり、図11(A)と、図11(B)とは、同じ走査型電子顕微鏡(SEM)写真を並べて示したものであり、図11においては、図11(B)中に、各境界位置を破線で示した。
粗化ニッケルめっき板について、集束イオンビーム加工観察装置(FIB-SEM)を使用して、三次元SEM観察法であるSlice & Viewにより、粗化ニッケル層12を構成する粗化ニッケル層12の状態(凹凸形状)を測定した。すなわち、粗化ニッケルめっき板について、樹脂埋めする処理を行い、研磨により、測定対象となる断面を露出させ、分析対象箇所としての粗化ニッケル層12に対し、マーキングを行った。次いで、金属基材11のうち、マーキングした粗化ニッケル層12よりも十分に下側の位置について、観察用の空間をエッチングにて形成した(図3A参照)。そして、集束イオンビーム加工観察装置(FIB付き高分解能SEM装置)を使用し、上記にて形成した観察用の空間について、金属基材11側から、粗化ニッケル層12側に向かって、FIBでの断面出し加工(Slice)とSEMによる観察(View)を細かく繰り返し、連続したSEM像を取得した後に、取得した像を再構築する事で、粗化ニッケル層12の基端位置BPから表面側に向かって、基板法線方向の立体的な構造情報を得た。なお,集束イオンビーム加工観察装置としては、FEI社製、製品名「Helios G4」を使用し、SEM測定は、加速電圧3kV、試料傾斜角52°の条件で行った。なお、測定画像自体の視野は、幅が約19.5μm、縦が約13μmであったが、傾斜角52°の条件で測定を行ったため、実際には,幅19.5μm×縦16.5μm程度の範囲を観察していることに相当することとなる。測定に際しては、スライスピッチを、0.1μm程度として、FIB加工を行い,累積で6~7μmのFIB加工を行いつつ、SEM測定を行った。
基端位置BP:ニッケル占有率が99%未満となった高さ位置のうち、最も基板側の高さ位置
ニッケル占有率:観察対象視野中における、ニッケル存在部分の面積比率(%)
ニッケル突起物12aの存在個数:11ピクセル以上のニッケル存在部分の集合体の数(個)
ニッケル突起物12aの円相当径:11ピクセル以上のニッケル存在部分の集合体を、同面積の真円とした場合の円直径(μm)を算出し、これを、観察対象視野中に観察された、11ピクセル以上のニッケル存在部分の集合体全てについて平均したもの(μm)
実施例および比較例で得られた粗化ニッケルめっき板を切断して、幅15mm、長さ50mmの寸法の試験用原板を2つ作製し、これをTピール試験片とした。そして、2つのTピール試験片について、それぞれ長さ20mmの位置で角度90°となるように折り曲げた。次いで、各Tピール試験片の粗化ニッケル層を有する面を向い合せ、幅15mm、長さ15mm、厚さ60μmのポリプロピレン樹脂フィルム(三菱ケミカル社製、商品名「モディック」/ポリプロピレン樹脂二層フィルム、評価対象となる接合面はポリプロピレン樹脂とTピール試験片の接合面、商品名「モディック」は試験を安定させるための接着剤層)を挟み込み、温度:190℃、押付時間:5秒、ヒートシール圧:2.0kgf/cm2の条件でヒートシールを行い、2つのTピール試験片を、ポリプロピレン樹脂フィルムを介して接合した。ポリプロピレン樹脂フィルムを挟み込む位置はTピール試験体の長さ方向の端部であり、ポリプロピレン樹脂フィルム全体が接合面となる。このように作製したTピール試験体に対して、引張試験機(ORIENTEC製 万能材料試験機 テンシロンRTC-1350A)を用いた引張試験を行い、剥離荷重(Tピール強度)を測定した。測定条件は室温で引張速度10mm/min.とした。Tピール強度が高いほど、樹脂との密着性に優れると判断でき、8N/15mm幅以上を○とし、10N/15mm幅以上を◎とした。
まず、基準サンプルとして、粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を、台紙に貼り付けたものを準備し、分光測色計(製品名「CM-5」、コニカミノルタ社製)を使用して、明度L*、色度a*、b*を測定した。なお、測定に際しては、CIE1976L*a*b*色差モデルを用いた。
そして、実施例および比較例で得られた、粗化ニッケルめっき板の粗化ニッケル層が形成された面に、粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を、幅24mm、長さ50mmの範囲となるように貼付した後、貼付した粘着テープによる剥離試験を、JIS H 8504に記載された引きはがし試験方法の要領で行った。そして、剥離試験後の粘着テープを、上記基準サンプルと同じ台紙に貼り付け、上記と同様にして、分光測色計を使用して、明度L*、色度a*、b*を測定した。そして、予め測定した、基準サンプルの明度L*、色度a*、b*の測定結果、および剥離試験後の粘着テープの明度L*、色度a*、b*の測定結果から、これらの差ΔE*ab(ΔE*ab=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2)を算出し、以下の基準に基づいて、粗化ニッケル層の密着性の評価を行った。なお、ΔE*abが小さいほど、剥離試験において剥離する量が少なく、つまり、剥離試験後の、粗化ニッケル層の残存率が高く、基材に対する密着性に優れると判断することができる。
◎:ΔE*ab=1未満
○:ΔE*ab=1以上、10未満
×:ΔE*ab=10以上
実施例および比較例で得られた粗化ニッケルめっき板を切断して、幅90mm、長さ140mmの寸法の液浸透性評価用試験片を作製した。そして、得られた液浸透性評価用試験片上に、幅7mm、長さ7mmの寸法のアルカリ水溶液用のマーカーシート(Macherey-nagel製、pH試験紙)を置き、幅110mm、長さ160mm、厚さ60μmのポリプロピレン樹脂フィルム(三菱ケミカル社製、商品名「モディック」/ポリプロピレン樹脂二層フィルム(商品名「モディック」側を接着剤層として接合面に使用)をこの上にのせて、アルカリ水溶液用のマーカーシートを挟んだ状態にて、温度:150℃、圧力:0.6MPa(感圧紙にて確認)、ロール通過速度:70mm/秒の条件で、ラミネートロールを用いて、全面ヒートシール後、マーカーを中心に直径30mmの円に切り抜くことで,アルカリ水溶液用のマーカーシートを密封してなる測定用サンプルを得た。そして、得られた測定用サンプルを、アルカリ水溶液としての30g/Lの日本クエーカー・ケミカル社製、フォーミュラー 618-TK-2水溶液中に、80℃、30時間の条件にて浸漬させ、浸漬後の測定用サンプル中のアルカリ水溶液用のマーカーシートの変色(測定用サンプル内部への、アルカリ水溶液の侵入による変色)を確認し、以下の基準で評価した。
○:アルカリ水溶液用のマーカーシートに変色が全くみられなかった。
△:アルカリ水溶液用のマーカーシートの角部に、2mm×2mmより小さいサイズでの変色が確認された。
×:アルカリ水溶液用のマーカーシートに、2mm×2mm以上のサイズでの変色が確認された。
基体として、低炭素アルミキルド鋼の冷間圧延板(厚さ0.05mm)を焼鈍して得られた鋼板を準備し、圧延により、平坦化(平滑化)処理を行うことで、その表面の触針式表面粗度計での算術平均粗さRaが0.2μmである平坦化処理鋼板を得た。
<下地ニッケルめっき条件>
浴組成:硫酸ニッケル六水和物250g/L、塩化ニッケル六水和物45g/L、ホウ酸30g/L
pH:4.2
浴温:60℃
電流密度:10A/dm2
めっき時間:30秒間
<粗化ニッケルめっき条件>
めっき浴中の硫酸ニッケル(六水和物)濃度:10g/L
めっき浴中の塩化ニッケル(六水和物)濃度:10g/L
めっき浴の塩化物イオン濃度:3g/L
めっき浴中のニッケルイオンとアンモニウムイオンとの比:ニッケルイオン/アンモニウムイオン(重量比)=0.17
50℃におけるめっき浴の電気伝導率(以下、浴電導度ともいう):11.4S/m
pH:6
浴温:50℃
電流密度:8A/dm2
めっき時間:120秒間
<被覆ニッケルめっき条件>
浴組成:硫酸ニッケル六水和物250g/L、塩化ニッケル六水和物45g/L、ホウ酸30g/L
pH:4.2
浴温:60℃
電流密度:8A/dm2
めっき時間:24秒間
粗化ニッケルめっきの条件および被覆ニッケルめっきの条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粗化ニッケルめっき板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
粗化ニッケルめっきの条件および被覆ニッケルめっきの条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の粗化ニッケルめっき板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
粗化ニッケルめっきの条件および被覆ニッケルめっきの条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の粗化ニッケルめっき板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
粗化ニッケルめっきの条件および被覆ニッケルめっきの条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の粗化ニッケルめっき板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
粗化ニッケルめっきの条件および被覆ニッケルめっきの条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の粗化ニッケルめっき板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
粗化ニッケルめっきの条件および被覆ニッケルめっきの条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の粗化ニッケルめっき板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
一方、ニッケル占有率が90%である高さ位置DNi90%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、高さ変化に対する、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni90%_Ni50%)が、65%/μm超であり、ニッケル占有率が80%である高さ位置DNi80%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、前記ニッケル突起物の断面の円相当径の平均値Rave(Ni80%_Ni50%)が、0.6μm未満である比較例1に係る粗化ニッケルめっき板は、基材に対するめっき層の密着性、および、他の部材に接合した際における耐液浸透性が十分なものではなかった。特に、比較例1は、一定程度の耐液浸透性は示しているものの、長時間使用時の耐液浸透性が不十分であるといえ、長時間に亘り耐液浸透性が要求されるような用途には適さないものであった。
図12(A)に、実施例1および比較例1の粗化ニッケル層12の基端位置BPからの位置と、観察対象視野中における、ニッケル占有率との関係を示すグラフ(基端位置BP側を拡大したグラフ)を、図12(B)に、実施例1および比較例1の粗化ニッケル層12の、観察対象視野中における、ニッケル占有率と、観察対象視野中に観察される、ニッケル突起物12aの断面の円相当径との関係を示すグラフ(ニッケル占有率50~80%の範囲を拡大したグラフ)をそれぞれ示す。
11…金属基材
12…粗化ニッケル層
12a…ニッケル突起物
121…ニッケル粒状物
122…ニッケル被膜
13…下地ニッケル層
Claims (7)
- 金属基材の少なくとも一方の面に、最表層として、複数のニッケル突起物から形成される粗化ニッケル層を有する粗化ニッケルめっき板であって、
前記粗化ニッケル層の付着量が、1.34~45.0g/m 2 であり、
前記粗化ニッケルめっき板について、集束イオンビーム加工観察装置(FIB-SEM)による測定を行い、前記集束イオンビーム加工観察装置により得られる撮影画像から、各高さ位置における、前記粗化ニッケル層の状態を測定した際に、
ニッケル占有率が90%である高さ位置DNi90%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、高さ変化に対する、ニッケル占有率の変化割合の絶対値Crate(Ni90%_Ni50%)が、65%/μm以下であり、
高さ方向における前記粗化ニッケル層の基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、ニッケル占有率C2.0が、15%以上であり、
前記基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、複数のニッケル突起物の存在個数N2.0が、20個/136.5μm2以上である粗化ニッケルめっき板。 - 金属基材の少なくとも一方の面に、最表層として、複数のニッケル突起物から形成される粗化ニッケル層を有する粗化ニッケルめっき板であって、
前記粗化ニッケル層の付着量が、1.34~45.0g/m 2 であり、
前記粗化ニッケルめっき板について、集束イオンビーム加工観察装置(FIB-SEM)による測定を行い、前記集束イオンビーム加工観察装置により得られる撮影画像から、各高さ位置における、前記粗化ニッケル層の状態を測定した際に、
ニッケル占有率が80%である高さ位置DNi80%から、ニッケル占有率が50%である高さ位置DNi50%までの間における、前記ニッケル突起物の断面の円相当径の平均値Rave(Ni80%_Ni50%)が、0.6μm以上であり、
高さ方向における前記粗化ニッケル層の基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、ニッケル占有率C2.0が、15%以上であり、
前記基端位置から、表面側に向かって2.0μmの高さ位置における、複数のニッケル突起物の存在個数N2.0が、20個/136.5μm2以上である粗化ニッケルめっき板。 - 前記金属基材が、Fe,Cu,AlおよびNiから選択される一種の純金属からなる金属板もしくは金属箔、または、Fe,Cu,AlおよびNiから選択される一種を含む合金からなる金属板もしくは金属箔である請求項1または2に記載の粗化ニッケルめっき板。
- 前記金属基材が、鋼板である請求項1~3のいずれかに記載の粗化ニッケルめっき板。
- 前記金属基材の厚みが、0.01~2.0mmである請求項1~4のいずれかに記載の粗化ニッケルめっき板。
- 前記金属基材上に、さらに下地ニッケル層を備え、
前記粗化ニッケル層は、前記下地ニッケル層を介して、金属基材上に形成される請求項1~5のいずれかに記載の粗化ニッケルめっき板。 - 前記粗化ニッケル層と前記下地ニッケル層との合計の付着量が、5.0~50.0g/m2である請求項6に記載の粗化ニッケルめっき板。
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