JP6164206B2 - 容器用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、容器用鋼板およびその製造方法に関する。
飲料や食品に適用される金属容器は、内容物を長期保管できることから世界中で使用されている。金属容器は、絞り加工された2ピース缶胴または溶接された3ピース缶胴と缶胴に巻き締められた蓋とから構成される。
以上の金属容器には、製缶前後の塗装工程および焼付け工程が不可欠である。これらの工程では、塗料の廃液や焼付け時のVOC(揮発性有機化合物)および温室効果ガスの一種である二酸化炭素が大量に発生する。近年では、地球環境保全の観点から、これらの廃棄物や二酸化炭素を低減する取り組みがなされている。さらに、塗料の成分であるエポキシ樹脂原料のBPA(ビスフェノールA)は、環境ホルモンであり、一部の国々で人体接触し得る用途には使用を規制されている。塗装工程および焼付け工程を省略できる代替技術として、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの有機樹脂フィルムをラミネートした鋼板を使用した容器が注目されており、急速に拡大している。
一方、ラミネートフィルムの下地に用いられる鋼板には、一般的に電解クロメート処理を施したクロメート皮膜が用いられている。しかし、近年、欧米を中心に、鉛、カドミウム、クロムをはじめとする人体に有害な物質の使用制限や、製造環境の配慮から、クロメート処理ではない皮膜が求められている。
例えば、特許文献1には、「鋼板の少なくとも片面に、Ni層、Sn層、Fe−Ni合金層、Fe−Sn合金層およびFe−Ni−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなる耐食性皮膜を有し、該耐食性皮膜上に、Tiを含み、さらにCo、Fe、Ni、V、Cu、MnおよびZnのうちから選ばれた少なくとも1種をその合計でTiに対する質量比として0.01〜10含有する密着性皮膜を有することを特徴とする表面処理鋼板」が開示されている。
特開2010−031348号公報
本発明者らは、特許文献1に記載された容器用鋼板(表面処理鋼板)について検討した結果、PETフィルムに対する密着性(以下、「フィルム密着性」ともいう)が不十分となる場合があることが分かった。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、フィルム密着性に優れる容器用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、表面処理皮膜が特定の表面形状を有する容器用鋼板はフィルム密着性が優れることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)を提供する。
(1)鋼板の表面の少なくとも一部をNi層、Sn層、Ni−Fe合金層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層からなる群から選ばれる少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板と、上記めっき鋼板の上記めっき層側の表面上に配置された表面処理皮膜と、を有する容器用鋼板であって、上記表面処理皮膜は、TiおよびNiを含有し、上記表面処理皮膜は、上記めっき鋼板側とは反対側の表面粗さが、算術平均高さSaで、4.0〜10.0nmであり、上記表面処理皮膜は、上記めっき鋼板側とは反対側の表面の凹凸ピッチが、200nm以下である、容器用鋼板。
(2)上記表面処理皮膜は、上記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が2.5〜30.0mg/m2であり、上記めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量が0.1〜20.0mg/m2である、上記(1)に記載の容器用鋼板。
(3)上記(1)に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、鋼板の表面の少なくとも一部をNi層、Sn層、Ni−Fe合金層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層からなる群から選ばれる少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板に対して、Ti成分およびNi成分を含有する処理液中で陰極電解処理を施すことにより、上記表面処理皮膜を形成する皮膜形成工程を少なくとも備え、上記皮膜形成工程が、上記めっき鋼板を上記処理液中を100m/min超の通板速度で搬送させながら上記陰極電解処理を施す工程である、容器用鋼板の製造方法。
(4)上記陰極電解処理を施す際の電解電流密度が、10.0A/dm2以上である、上記(3)に記載の容器用鋼板の製造方法。
本発明によれば、フィルム密着性に優れる容器用鋼板およびその製造方法を提供することができる。
原子間力顕微鏡を用いて測定された、表面処理皮膜の表面形状を示すSPM高さ像(三次元表示)の一例である。 横軸を凹凸ピッチ、縦軸を算術平均高さSaとして、試験材No.1〜14の測定結果をプロットしたグラフである。
[容器用鋼板]
本発明の容器用鋼板は、概略的には、めっき鋼板と、めっき鋼板のめっき層側の表面上に配置された表面処理皮膜とを有し、この表面処理皮膜が特定の表面形状を有する。
以下、めっき鋼板および表面処理皮膜の具体的な態様について詳述する。
〔めっき鋼板〕
めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面の少なくとも一部を覆うめっき層とを有する。
素材の鋼板としては、一般的な缶用の鋼板を使用できる。めっき層は、連続層であってもよいし、不連続の島状であってもよい。また、めっき層は、鋼板の少なくとも片面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。めっき層の形成は、含有される金属元素に応じた公知の方法で行える。
以下に、鋼板およびめっき層の好適態様について詳述する。
〈鋼板〉
鋼板の種類は特に限定されるものではない。通常、容器材料として使用される鋼板(例えば、低炭素鋼板、極低炭素鋼板)を用いることができる。この鋼板の製造方法、材質なども特に限定されるものではない。通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造される。
鋼板は、必要に応じて、その表面にニッケル含有層(Ni含有層)を形成したものを用い、このNi含有層上に後述するSn層を含むめっき層を形成してもよい。Ni含有層を有する鋼板を用いてSnめっきを施すことにより、島状Snを含むめっき層を形成することできる。その結果、溶接性が向上する。
Ni含有層としてはニッケルが含まれていればよい。例えば、Niめっき層(Ni層)、Ni−Fe合金層などが挙げられる。
鋼板にNi含有層を付与する方法は特に限定されない。例えば、公知の電気めっきなどの方法が挙げられる。また、Ni含有層としてNi−Fe合金層を付与する場合、電気めっきなどにより鋼板表面上にNi付与後、焼鈍することにより、鋼中にNiを拡散させ、Ni−Fe合金層を形成できる。
Ni含有層中のNi付着量は特に限定されず、片面当たりの金属Ni換算量として50〜2000mg/m2が好ましい。上記範囲内であれば、コスト面でも有利となる。
なお、Ni付着量は、蛍光X線により表面分析して測定できる。この場合、Ni付着量既知のNi付着サンプルを用いて、Ni付着量に関する検量線をあらかじめ特定しておき、同検量線を用いて相対的にNi付着量を特定する。ただし、後述する表面処理皮膜がNiを含む場合は、上記の蛍光X線による表面分析によりNi含有層中のNi付着量のみを測定することは困難である。その場合は、Ni含有層中のNi付着量は、蛍光X線により求めたNi付着量から後述する表面処理皮膜中に含まれるNi付着量を差し引いて求めることができる。
〈めっき層〉
めっき鋼板は、鋼板表面の少なくとも一部に、Ni層、Sn層、Ni−Fe合金層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層からなる群から選ばれる少なくとも1層を含むめっき層を有する。このめっき層は鋼板の少なくとも片面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。また、めっき層は、鋼板表面上の少なくとも一部を覆う層であり、連続層であってもよいし、不連続の島状であってもよい。
めっき層の鋼板片面当たりのSn付着量は、0.1〜15.0g/m2が好ましい。Sn付着量が上記範囲内であれば、容器用鋼板の耐食性がより優れる。0.2〜15.0g/m2がより好ましい。
なお、Sn付着量は、蛍光X線により表面分析して測定できる。蛍光X線の場合、Sn量既知のSn付着量サンプルを用いて、Sn量に関する検量線をあらかじめ特定しておき、同検量線を用いて相対的にSn量を特定する。
めっき層としては、Snをめっきして得られる錫単体のめっき層であるSn層からなるめっき層のほか、Snめっき後通電加熱などによりSnを加熱溶融させて得られる、Sn層の最下層(Sn層/鋼板界面)にFe−Sn合金層が一部形成されためっき層も挙げられる。
また、めっき層としては、Ni含有層を表面に有する鋼板に対してSnめっきを行い、さらに通電加熱などによりSnを加熱溶融させて得られる、Sn層の最下層(Sn層/鋼板界面)にFe−Sn−Ni合金層、Fe−Sn合金層などが一部形成されためっき層も挙げられる。
なお、本発明においては、上述したNi含有層(Ni層、Ni−Fe合金層)も、めっき鋼板のめっき層に含まれるものとする。
めっき層の製造方法としては、周知の方法(例えば、電気めっき法や溶融したSnに浸漬してめっきする方法)が挙げられる。
例えば、フェノールスルフォン酸Snめっき浴、メタンスルフォン酸Snめっき浴、またはハロゲン系Snめっき浴を用い、片面あたりの付着量が所定量となるように鋼板表面にSnを電気めっきする。その後、Snの融点(231.9℃)以上の温度で加熱溶融処理を行って、Sn単体のめっき層(Sn層)の最下層(Sn層/鋼板界面)を合金化しFe−Sn合金層を形成しためっき層を製造できる。加熱溶融処理を省略した場合、Sn単体のめっき層(Sn層)を製造できる。
また、鋼板がその表面上にNi含有層を有する場合、Ni含有層上にSnめっき後、加熱溶融処理を行うと、Sn単体のめっき層(Sn層)の最下層(Sn層/鋼板界面)が合金化しFe−Sn−Ni合金層、Fe−Sn合金層などが形成される。
〔表面処理皮膜〕
次に、上述しためっき鋼板のめっき層側の表面上に配置される表面処理皮膜について説明する。表面処理皮膜は、概略的には、Ti(チタニウム元素)およびNi(ニッケル元素)を含有する皮膜であり、後述する処理液を用いて形成される。
〈TiおよびNi〉
表面処理皮膜は、本発明の容器用鋼板のフィルム密着性がより優れるという理由から、めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量(以下、「Ti付着量」ともいう)が、2.5〜30.0mg/m2であることが好ましい。Ti付着量は、フィルム密着性がさらに優れるという理由から、5.0〜30.0mg/m2がより好ましく、7.0〜30.0mg/m2がさらに好ましい。
また、表面処理皮膜は、本発明の容器用鋼板のフィルム密着性がより優れるという理由から、めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量(以下、「Ni付着量」ともいう)が、0.1〜20.0mg/m2であることが好ましい。Ni付着量は、皮膜とめっき鋼板との密着性が優れるという理由から、0.1〜15.0mg/m2がより好ましく、0.1〜10.0mg/m2がさらに好ましい。
表面処理皮膜中のTi、Ni等は、それぞれ、各種のチタン化合物、ニッケル化合物として含まれ、これら化合物の種類や態様は特に限定されない。
Ti付着量およびNi付着量は、蛍光X線による表面分析により測定する。
なお、蛍光X線分析は、例えば、下記条件により実施される。
・装置:リガク社製蛍光X線分析装置System3270
・測定径:30mm
・測定雰囲気:真空
・スペクトル:Ti−Kα、Ni−Kα
・スリット:COARSE
・分光結晶:TAP
上記条件により測定した表面処理皮膜の蛍光X線分析のTi−Kα、Ni−Kαのピークカウント数を用いる。付着量既知の標準サンプルを用いて、Ti付着量およびNi付着量に関する検量線をあらかじめ特定しておき、同検量線を用いて相対的にTi付着量およびNi付着量を求める。
ただし、めっき層がNiを含む場合は、上記の蛍光X線による表面分析により表面処理皮膜中に含まれるNi付着量のみを測定することは困難である。
その場合は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面観察とグロー放電発光分析とを併用することで、表面処理皮膜中に含まれるNi付着量とめっき層中に含まれるNi量とを区別できる。
具体的には、表面処理皮膜およびめっき層の断面を収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工により露出させ、SEMまたはTEMによる断面観察から表面処理皮膜の厚さを算出する。次いで、グロー放電発光分析によるスパッタリング深さとスパッタリング時間との関係を求める。その後、表面処理皮膜厚さに相当するスパッタリング時間までのグロー放電発光分析のNi元素による発光カウント積算値を求める。このNi元素による発光カウント積算値から、あらかじめ求めておいた検量線を用いて、Ni付着量を求めることができる。
ここで、検量線は以下の方法で作成する。
まず、Niを含まないめっき層上にNiを含む表面処理皮膜を有する、Ni付着量の異なる複数のサンプルについてグロー放電発光分析し、Ni元素による発光カウントが検出されなくなるスパッタリング時間までのカウント積算値を求める。次いでこれらのサンプルのNi付着量を蛍光X線による表面分析により求める。このようにして、グロー放電発光分析によるNiカウント積算値とNi付着量との検量線を作成する。
〈Saおよび凹凸ピッチ〉
表面処理皮膜は、特有の表面形状を有する。すなわち、表面処理皮膜は、めっき鋼板側とは反対側の表面粗さが、算術平均高さSaで、4.0〜10.0nmであり、かつ、めっき鋼板側とは反対側の表面の凹凸ピッチが、200nm以下である。
これにより、本発明の容器用鋼板は、フィルム密着性に優れる。この理由(メカニズム)は明らかではないが、表面処理皮膜が適切な表面形状(凹凸形状)を有することで、フィルムとの密着界面において、アンカー効果が有効に発揮するためと推測される。
なお、このような表面形状は、後述する皮膜形成工程において、通板速度および電解電流密度を適正に設定することで得られると考えられる。
算術平均高さSa(単に「Sa」ともいう)が10.0nmよりも大きい場合は、高さ方向の粗い表面形状に対してフィルムが追従できず、フィルムの入り込みが不十分となって、アンカー効果が発揮しにくくなり、十分なフィルム密着性が得られない。
一方、Saが4.0nmよりも小さい、および/または、凹凸ピッチが200nmより大きい場合は、表面処理皮膜の凹凸形状とPETフィルムとの接触面積が少なくなって、アンカー効果が発揮しにくくなり、フィルム密着性が不十分となる。
したがって、本発明においては、表面処理皮膜のSaを4.0〜10.0nm、かつ、凹凸ピッチを200nm以下とする。
フィルム密着性がより優れるという理由から、表面処理皮膜のSaは、4.0〜7.0nmが好ましく、5.0〜7.0nmがより好ましい。また、同様の理由から、表面処理皮膜の凹凸ピッチは、20〜150nmが好ましい。
《測定方法》
本発明において、表面処理皮膜の表面形状(Saおよび凹凸ピッチ)は、原子間力顕微鏡(SHIMADZU社製SFT−4500)を用いて測定する。原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)は、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)の一種であり、試料の表面原子と探針先端との間に働く原子間力を検出する。
図1は、原子間力顕微鏡を用いて測定された、表面処理皮膜の表面形状を示すSPM高さ像(三次元表示)の一例である。図1に示すSPM高さ像(三次元表示)は、任意の2μm×2μmの範囲を示しており、測定により得られた生データに対して傾き補正(Xのライン毎にラインの傾きおよび平均値を求め、生データからその傾きおよび平均値を差し引く)を施している。
表面処理皮膜の算術平均高さSaは、図1に示すようなSPM高さ像に対して面粗さ解析を行い測定する。算術平均高さSaは、国際規格(ISO25178)の三次元表面性状パラメータ(表面粗さパラメータ)の1種であり、粗さ(二次元)パラメータである算術平均粗さRaを三次元に拡張したパラメータである。算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013に準拠する。
また、表面処理皮膜の凹凸ピッチは、任意の5箇所で測定された、粗さ曲線要素の平均長さRSm(単位:nm)の2倍と定義する。凹凸の平均間隔を表すRSmは、Raと同様に、粗さ(二次元)パラメータである。Raが高さ方向のパラメータであるのに対して、RSmは横方向のパラメータである。粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B0601:2013に準拠する。
なお、めっき原板(鋼板)のマクロな凹凸はフィルム密着性に寄与しない。このため、表面粗さパラメータを測定する際には、視野内のうねりを除去するため、カットオフ波長を0.2μmとしてISO25178−3(2012)に準拠したガウシアンフィルタを用いる。そして、うねりが除去された画像に基づいて、各パラメータを求める。もっとも、カットオフ波長は、鋼板のマクロな凹凸の状況によって適宜変更でき、上述した値に限定されない。
[容器用鋼板の製造方法]
上述した本発明の容器用鋼板を製造する方法としては、例えば、後述する皮膜形成工程を少なくとも備える方法(以下、便宜的に「本発明の製造方法」ともいう)が好適に挙げられる。以下、このような本発明の製造方法について説明を行う。
〔皮膜形成工程〕
皮膜形成工程は、後述する処理液(以下、便宜的に「本発明の処理液」ともいう)中に浸漬しためっき鋼板に陰極電解処理を施すことにより、めっき鋼板のめっき層側の表面上に、上述した表面処理皮膜を形成する工程である。なお、陰極電解処理と陽極電解処理とを交互に行う交番電解を実施してもよい。
以下に、使用される本発明の処理液や陰極電解処理の条件などについて詳述する。
〈処理液〉
本発明の処理液は、上述した表面処理皮膜にTi(チタニウム元素)を供給するためのTi成分(Ti化合物)を含有する。
このTi成分としては、特に限定されない。例えば、チタンアルコキシド、シュウ酸チタニルアンモニウム、シュウ酸チタニルカリウム二水和物、硫酸チタン、チタンラクテート、チタンフッ化水素酸(H2TiF6)および/またはその塩などが挙げられる。なお、チタンフッ化水素酸の塩としては、例えば、六フッ化チタン酸カリウム(K2TiF6)、六フッ化チタン酸ナトリウム(Na2TiF6)、六フッ化チタン酸アンモニウム((NH42TiF6)等が挙げられる。
これらのうち、処理液の安定性、入手の容易性などの観点から、チタンフッ化水素酸および/またはその塩が好ましい。
本発明の処理液におけるTi成分の含有量は、Ti換算した量で、0.004〜0.400mol/Lであり、0.020〜0.200mol/Lが好ましい。
なお、「Ti換算した量」としては、例えば、チタンフッ化水素酸および/またはその塩を使用する場合においては、六フッ化チタン酸イオン(TiF6 2-)に換算した量に相当し、具体的には、例えば、六フッ化チタン酸カリウム(K2TiF6)が1mol/L存在する場合は、Ti換算した量は、1mol/Lとなる。
また、本発明の処理液は、上述した表面処理皮膜にNi(ニッケル元素)を供給するためのNi成分(Ni化合物)を含有する。
このNi成分としては、特に限定されないが、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化ニッケル六水和物などが挙げられる。
本発明の処理液におけるNi成分の含有量は、特に限定されないが、Niイオン(Ni2+)に換算した量で、0.002〜0.040mol/Lが好ましく、0.004〜0.020mol/Lがより好ましい。
本発明の処理液の溶媒としては、通常水が使用されるが、有機溶媒を併用してもよい。
本発明の処理液のpHは、特に限定されないが、pH2.0〜5.0が好ましい。この範囲内であれば、処理時間を短くでき、かつ、処理液の安定性に優れる。pHの調整には公知の酸成分(例えば、リン酸、硫酸)・アルカリ成分(例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア水)を使用できる。
本発明の処理液には、必要に応じて、ラウリル硫酸ナトリウム、アセチレングリコールなどの界面活性剤が含まれていてもよい。また、付着挙動の経時的な安定性の観点から、本発明の処理液には、ピロリン酸塩などの縮合リン酸塩が含まれていてもよい。
本発明の処理液の液温は、20〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
〈陰極電解処理〉
陰極電解処理を施す際の電解電流密度は、上述した表面形状を有する表面処理皮膜が形成される。形成される表面処理皮膜中のTiおよびNiが適量となって、フィルム密着性がより優れるという理由から、10.0A/dm2以上が好ましく、50.0〜100.0A/dm2がより好ましい。
陰極電解処理の通電時間は、上記と同様の理由から、0.1〜5秒が好ましく、0.3〜2秒がより好ましい。なお、陰極電解処理の際の電気量密度は、電流密度と通電時間との積であり適宜設定される。
そして、本発明においては、めっき鋼板を本発明の処理液中を100m/min超の通板速度で搬送させながら陰極電解処理を施すことが好ましい。これにより、上述した表面形状を有する表面処理皮膜を形成されると考えられる。以下に推論を述べる。
まず、陰極電解処理時は、めっき鋼板の近傍で、水素発生により処理液(電解液)中のpHが上昇する。その際、OH-により処理液中のTi成分が加水分解されてめっき鋼板上にTiの水酸化物が形成され、その後の洗浄および乾燥を経て脱水縮合され、酸化Tiを含む表面処理皮膜が形成されると考えられる。
このため、陰極電解処理中は、めっき鋼板の近傍でTiイオン濃度が減少するが、極端に不足すると反応サイトが限定されて三次元的な架橋構造を有する表面処理皮膜の形成が抑制され、フィルム密着性が良好な凹凸形状が形成されにくくなる。
しかし、通板速度が100m/min超と速くなると、処理液の攪拌が促進されて、めっき鋼板の近傍にTiイオンが供給されて反応サイトが増加するため、フィルム密着性が良好な凹凸形状を有する表面処理皮膜が形成されると考えられる。
通板速度は、フィルム密着性がより優れるという理由から、120m/min超が好ましい。通板速度の上限は特に限定されないが、例えば、300m/min以下が挙げられる。
なお、「m/mim」という単位は、以下、「mpm」と表記する場合がある。
表面処理皮膜中に含まれるFを低減させる観点から、陰極電解処理の後に、水洗処理を行うのが好ましい。水洗処理の方法は特に限定されない。例えば、連続ラインで製造を行う場合、処理液タンクの後に水洗タンクを設け、陰極電解処理後に連続して水に浸漬する方法などが挙げられる。水洗処理に用いる水の温度(水温)は、40〜90℃が好ましい。
このとき、水洗時間は、水洗処理による効果がより優れるという理由から、0.5秒超が好ましく、1.0〜5.0秒が好ましい。
さらに、水洗処理に代えて、または、水洗処理の後に、乾燥を行ってもよい。乾燥の際の温度および方式は特に限定されない。例えば、通常のドライヤーや電気炉を適用できる。乾燥処理の際の温度としては、100℃以下が好ましい。上記範囲内であれば、表面処理皮膜の酸化を抑制でき、表面処理皮膜組成の安定性が保たれる。なお、下限は特に限定されないが、通常室温程度である。
〔前処理工程〕
本発明の製造方法は、上述した皮膜形成工程の前に、以下に説明する前処理工程を備えていてもよい。
前処理工程は、アルカリ性水溶液(特に、炭酸ナトリウム水溶液)中で、めっき鋼板に陰極電解処理を施す工程である。
通常、めっき層の形成時にその表面は酸化されて、錫酸化物が形成される。このめっき鋼板に対して、陰極電解処理を施すことにより、不要な錫酸化物を除去して、錫酸化物量を調整できる。
前処理工程の陰極電解処理の際に使用される溶液としては、アルカリ性水溶液(例えば、炭酸ナトリウム水溶液)が挙げられる。アルカリ性水溶液中のアルカリ成分(例えば、炭酸ナトリウム)の濃度は特に限定されないが、錫酸化物の除去がより効率的に進行する点から、5〜15g/Lが好ましく、8〜12g/Lがより好ましい。
陰極電解処理の際のアルカリ性水溶液の液温は特に限定されないが、40〜60℃が好ましい。陰極電解処理の電解条件(電流密度、電解時間)は、適宜調整される。なお、陰極電解処理の後に、必要に応じて、水洗処理を施してもよい。
本発明の製造方法によって得られる本発明の容器用鋼板は、例えば、食缶、飲料缶などの2ピース缶胴および3ピース缶胴ならびに蓋などの製造に使用される。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
〈めっき鋼板の製造〉
以下の方法によって、めっき鋼板を製造した。
まず、板厚0.22mmの鋼板(T4原板)を電解脱脂し、ワット浴を用いて第3表に示す片面当たりのNi付着量でニッケルめっき層を両面に形成後、10vol.%H2+90vol.%N2雰囲気中にて700℃で焼鈍してニッケルめっきを拡散浸透させることによりNi−Fe合金層(Ni含有層)(第3表にNi付着量を示す)を両面に形成した。次いで、Snめっき浴を用い、第3表中に示す片面当たりのSn付着量でSn層を両面に形成した。その後、Snの融点以上で加熱溶融処理を施し、めっき層をT4原板の両面に形成した。このようにして、下層側から順に、Ni−Fe合金層/Fe−Sn−Ni合金層/Sn層からなるめっき層を形成した。
〈容器用鋼板の試験材の作製〉
以下に示す前処理工程および皮膜形成工程を経て、容器用鋼板の試験材を作製した。
《前処理工程》
まず、浴温50℃、10g/Lの炭酸ナトリウム水溶液中に、上記めっき鋼板を浸漬し、第2表に示す条件にて、陰極電解処理を施した。
《皮膜形成工程》
次いで、前処理工程を経ためっき鋼板に対して、水洗後、pHを4.0に調整した第1表に示す組成の処理液(溶媒:水)を用いて、第2表に示す条件にて、陰極電解処理を施した。その後、陰極電解処理を施しためっき鋼板について、85℃の水槽に2.0秒間浸漬させることにより水洗処理を施し、次いで、ブロアを用いて室温で乾燥を行ない、表面処理皮膜を両面に形成した。
その後、作製した容器用鋼板の試験材について、上述した方法により算術平均高さSaおよび凹凸ピッチを求め、以下の方法でフィルム密着性を評価した。なお、表面処理皮膜中の各成分量等については、上述した方法により測定ないし計算した。結果をまとめて第3表に示す。
〈フィルム密着性の評価〉
作製した容器用鋼板の試験材表面に、市販のPETフィルム(Melinex850:デュポン製)を、ロール加圧4kg/cm2、板送り速度40mpm、ロール通過後の板の表面温度が160℃となるような条件で熱融着させ、次いで、バッチ炉中で後加熱(到達板温210℃で120秒保持)を行ない、ラミネート鋼板を作製した。
このようにして作製したラミネート鋼板に対し、先端径3/16Rのポンチを用い、1kgの錘を40cmの高さから落下させ、フィルムを貼った面の側が凸になるようデュポン衝撃加工を行った。このような加工試験片を4つ作製し、レトルト装置内に、凸面が上になるように置き、130℃のレトルト環境で30分間保持後、取り出し、加工部のフィルム剥離の程度を目視で5段階評価し、4つの試験片の平均値(小数点以下1桁(小数点第二位を四捨五入))を用いて、フィルム密着性を評価した。実用上、結果が3.0以上であれば、フィルム密着性に優れるものとして評価できる。
5:剥離なし
4:加工部の面積の5%未満で剥離発生
3:加工部の面積の5%以上20%未満で剥離発生
2:加工部の面積の20%以上50%未満で剥離発生
1:加工部の面積の50%以上で剥離発生
図2は、横軸を凹凸ピッチ、縦軸を算術平均高さSaとして、試験材No.1〜14の測定結果をプロットしたグラフである。このとき、図2のグラフにおいては、フィルム密着性の評価結果が3.0以上である場合は「○」、3.0未満である場合は「×」でプロットしている。
上記第1表〜第3表および図2のグラフから明らかなように、表面処理皮膜の算術平均高さSaが4.0〜10.0nmの範囲内であり、かつ、凹凸ピッチが200nm以下である発明例(試験材No.1〜9および14)は、いずれもフィルム密着性に優れることが確認された。なお、これらの試験材の皮膜形成工程においては、通板速度は100m/mim超であった。
これに対して、表面処理皮膜の算術平均高さSaが4.0nm未満であり、かつ、凹凸ピッチが200nm超である比較例(試験材No.10〜13)は、フィルム密着性が劣っていた。

Claims (4)

  1. 鋼板の表面の少なくとも一部をNi層、Sn層、Ni−Fe合金層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層からなる群から選ばれる少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板と、前記めっき鋼板の前記めっき層側の表面上に配置された表面処理皮膜と、を有する容器用鋼板であって、
    前記表面処理皮膜は、TiおよびNiを含有し、
    前記表面処理皮膜は、前記めっき鋼板側とは反対側の表面粗さが、算術平均高さSaで、4.0〜10.0nmであり、
    前記表面処理皮膜は、前記めっき鋼板側とは反対側の表面の凹凸ピッチが、200nm以下である、容器用鋼板。
  2. 前記表面処理皮膜は、前記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が2.5〜30.0mg/m2であり、前記めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量が0.1〜20.0mg/m2である、請求項1に記載の容器用鋼板。
  3. 請求項1に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、
    鋼板の表面の少なくとも一部をNi層、Sn層、Ni−Fe合金層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層からなる群から選ばれる少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板に対して、Ti成分およびNi成分を含有する処理液中で陰極電解処理を施すことにより、前記表面処理皮膜を形成する皮膜形成工程を少なくとも備え、
    前記皮膜形成工程が、前記めっき鋼板を前記処理液中を100m/min超の通板速度で搬送させながら前記陰極電解処理を施す工程である、容器用鋼板の製造方法。
  4. 前記陰極電解処理を施す際の電解電流密度が、10.0A/dm2以上である、請求項3に記載の容器用鋼板の製造方法。
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