以下、添付図面を参照して、本願の開示する小便器および小便器システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<第1実施形態>
図1を参照して第1実施形態に係る小便器システム1について説明する。図1は、第1実施形態に係る小便器システム1の説明図である。図1には、第1実施形態に係る小便器システム1を模式的に示している。図1に示すように、小便器システム1は、小便器10と、器具排水管50と、排水横枝管60とを備える。
小便器10は、たとえば、トイレ室の壁面2(図2参照)の表側に複数並んで設置されるか、または、単数で設置される。器具排水管50は、小便器10が壁面2の表側に取り付けられた壁掛け式の場合には、小便器10が設置された壁面2の裏側に設けられる。なお、小便器10が床面上に直接配置された床置き式の場合には、器具排水管50は床面の下に設けられる。
器具配水管50は、一端側が小便器10に接続され、他端側が排水横枝管60に接続される。器具排水管50は、小便器10から流入された排水を排水横枝管60に流出する。「排水」とは、小便器10から排出される、尿、洗浄水、尿を含む洗浄水のことをいう。
排水横枝管60は、小便器10が壁掛け式の場合には、小便器10が設置された壁面2の裏側に設けられる。なお、小便器10が床置き式の場合には、排水横枝管60は床面の下に設けられる。排水横枝管60は、緩やかに下り傾斜しつつ横向きに延びている。すなわち、排水横枝管60は、水平からわずかに傾斜して配置される。また、排水横枝管60における傾斜の上り側を上流側、下り側を下流側という。
排水横枝管60は、下流側において縦排水管(図示せず)に接続される。排水横枝管60は、器具排水管50から流入された排水を、縦排水管に流出する。排水横枝管60内において、排水は、図中の矢線Aで示すように、上流側から下流側に向けて流れる。
図1に示す小便器システム1では、複数の小便器10は、器具排水管50を介して、排水横枝管60に接続される。また、図1に示す小便器システム1では、複数の小便器10は、排水横枝管60の上流側から下流側に向けて、排水横枝管60の長手方向に沿って所定の間隔をあけて並んで配置される。
次に、図2および図3を参照して第1実施形態に係る小便器10について説明する。図2は、第1実施形態に係る小便器10の概略断面(側断面)図である。図3は、自動洗浄ユニット20の内部構造を示すブロック図である。図2に示すように、小便器10は、便器本体11と、自動洗浄ユニット20とを備える。なお、図2に示す例では、小便器10は壁掛け式で床上配管であるが、これに限定されず、器具排水管50が床下まで配管され、排水横枝管60が床下で配管されたものや、小便器10が床置き式でもよい。
また、小便器10は、たとえば、便器洗浄時に0.5~2.0L(好ましくは、0.5~1.0L)の洗浄水量で洗浄する節水型である。以下では、小便器10の正面側を「前」、背面側を「後」、小便器10を正面側から見て左側を「左」、右側を「右」と規定する。「上」は鉛直方向の上側、「下」は鉛直方向の下側である。
便器本体11は、陶器製である。なお、便器本体11は、陶器製に限定されず、樹脂製のものや、陶器および樹脂を組み合わせたものなどでもよい。便器本体11は、収納部12と、ボウル部13と、排水口部14と、トラップ部15と、排水器具接続部16とを備える。収納部12は、便器本体11の上方端部に形成される。収納部12は、後述する自動洗浄ユニット20を収納するスペースとなる。
ボウル部13は、収納部12の前面12aから下方に向けて延びたボウル面を形成する。ボウル部13は、ボウル面において使用者の尿を受ける。排水口部14は、ボウル部13の底部に形成された排水口14aを有し、ボウル部13からの尿、洗浄水、または尿を含む洗浄水をトラップ部15に流出する。
トラップ部15は、排水口部14の下流側においてP字トラップを形成し、溜め水WTによる封水を確保している。排水器具接続部16は、トラップ部15の下流側に形成される。排水器具接続部16には、排水フランジ17が接続される。排水フランジ17には、器具排水管50が接続される。なお、排水フランジ17は、排水器具接続部16や器具排水管50に対してシール材を挟んで接続される。器具排水管50は、上記したように、壁面2の表側から裏側まで延びて、排水横枝管60に接続される。
自動洗浄ユニット20は、便器本体11(ボウル部13のボウル面)を洗浄するものである。図2に示し、かつ、上記したように、自動洗浄ユニット20は、便器本体11の上方端部において収納部12に収納される。収納部12は、便器本体11とは別体である蓋18で閉塞されている。また、収納部12の前面12aは、後方に向けて傾斜している。このような収納部12に収納された自動洗浄ユニット20は、図3に示すように、給水管21と、止水栓22と、バルブユニット23と、給水部24とを備える。
給水管21は、水道などの給水源(図示せず)から洗浄水を供給する。止水栓22は、給水管21に設けられ、後述するバルブユニット23に対して洗浄水を給水および止水する。バルブユニット23は、止水栓22の下流側に設けられる。給水部(以下、スプレッダという)24は、バルブユニット23から供給される洗浄水を、ボウル部13に向けて吐出する。
バルブユニット23は、分岐部31と、第1定流量弁32と、主給水流路電磁弁33と、第2定流量弁34と、電解水流路電磁弁35と、逆止弁36と、電解水生成ユニット37とを備える。
分岐部31は、給水管21を、主給水流路21aおよび電解水流路21bに分岐する。第1定流量弁32は、主給水流路21aに設けられる。主給水流路電磁弁33は、主給水流路21aにおける第1定流量弁32の下流側に設けられる。
第2定流量弁34は、電解水流路21bに設けられる。電解水流路電磁弁35は、電解水流路21bにおける第2定流量弁34の下流側に設けられ、電解水を含む給水の供給および停止を行う。逆止弁36は、電解水流路21bにおける電解水流路電磁弁35の下流側に設けられる。
電解水生成ユニット37は、電解水(除菌水)を生成し、速やかにスプレッダ24から供給できるようにスプレッダ24の直上流に配置される。なお、上記した逆止弁36は、電解水(除菌水)の逆流を防止するため、電解水生成ユニット37の上流側に位置している。
電解水生成ユニット37は、電解水生成ユニット37が有する電極において洗浄水中の塩化物イオンから次亜塩素酸を生成して電解水(除菌水)とする構成を有し、生成した電解水(除菌水)を洗浄水として供給する。なお、電解水(除菌水)は、洗浄水中の塩化物イオンから次亜塩素酸を生成した成分を含む水であり、尿石菌、バクテリアなどの殺菌消毒効果および増殖抑制効果を有する。
スプレッダ24には、小便器10の使用者の有無を検知する人体検知部(以下、人体検知センサという)25がボウル部13(図2参照)の前面側を検知可能に取り付けられる。
自動洗浄ユニット20は、制御部40をさらに備える。制御部40は、人体検知センサ25の検知結果(人体検知センサ25から送信される検知信号)、および所定のプログラムなどに基づいて、主給水流路電磁弁33などを制御する。
具体的には、制御部40は、人体検知センサ25からの検知信号や所定のプログラムに基づいて主給水流路電磁弁33を開閉制御し、スプレッダ24から洗浄水を吐出させる。主給水流路電磁弁33を開いている場合、スプレッダ24から吐出される洗浄水の給水量(洗浄水量)は、主給水流路電磁弁33を開弁している時間により決まる。
なお、スプレッダ24は、吐出する洗浄水の瞬間流量を変更可能なように、主給水流路21aおよび電解水流路21bの両流路からの洗浄水を供給することもできる。瞬間流量とは、単位時間あたりの流量のことである。また、スプレッダ24は、吐出する洗浄水の瞬間流量を変更可能なように、主給水流路21aとは別に追加された他の給水流路機構を有してもよい。この場合、スプレッダ24は、主給水流路21aからの洗浄水の給水量および吐水瞬間流量に加えて、他の給水流路から供給される洗浄水の給水量および吐水瞬間流量を合計した値で吐水することができる。さらに、主給水流路21aに吐水瞬間流量を変更する機構を設けることで対応することも可能である。
また、制御部40は、人体検知センサ25からの検知信号や所定のプログラムに基づいて電解水流路電磁弁35を開閉制御し、電解水生成ユニット37を作動させて、生成された電解水を洗浄水として、スプレッダ24からボウル部13に吐出させる。ボウル部13は、水平方向において、上部が比較的大きな曲率半径を有する円弧面を形成し、下部が比較的小さな曲率半径を有する円弧面を形成する。
スプレッダ24は、ボウル部13の左右中心軸上の中央よりも上方の高さ位置に設けられる。また、図2に示すように、ボウル部13は、底部が湾曲しながら収束するような鉢状に形成される。
このため、後述する前洗浄モードおよび本洗浄モードなどの各洗浄モードにおいては、スプレッダ24から吐出された洗浄水は、ボウル部13を洗浄した後、底部内においてトラップ部15の入口となる排水口14a近傍に一時的に溜まり、一時的に溜まった洗浄水の水頭高さ(通常時の溜め水WTの面からの高さ)がトラップ部15内の溜め水WTに圧力を及ぼすように作用し、トラップ部15から器具排水管50および排水横枝管60に排出される。
なお、図2に示すように、排水口部14には、上流側において目皿19が配置され、下流側において、上記した排水口14aが形成される。また、上記したように、トラップ部15の下流側には排水器具接続部16が設けられる。なお、排水器具接続部16には排水フランジ17が接続されるが、排水フランジ17を省略して排水器具接続部16に器具排水管50が直接接続されるよう構成されてもよい。
制御部40は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部(図示せず)に記憶されているプログラムを、RAM(Random Access Memory)を作業領域として実行することで実現される。なお、制御部40は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路によっても実現可能である。
制御部40は、入力される各種の信号に基づいて各部を制御する。記憶部は、たとえば、RAMやフラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子などにより実現される。本実施形態では、たとえば、マイコン内のRAMが外付けのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などに各種設定やフィールドデータを記憶させる。
制御部40は、スプレッダ24によるボウル部13に向けた洗浄水の供給を制御する。また、制御部40は、人体検知センサ25による使用者の検知の後、ボウル部13に洗浄水を供給することで実行される、前洗浄モードおよび本洗浄モードを有する。
次に、図4~図8を参照して第1実施形態に係る小便器10の自動洗浄(前洗浄モードおよび本洗浄モード)について説明する。まず、図4を用いて自動洗浄の動作例について説明する。図4は、小便器10の自動洗浄の動作例を示すタイムチャートであり、図4(a)には、使用者を検知した場合の人体検知および便器洗浄のオンオフのタイミングを示し、図4(b)には、使用者の通過を一時的に検知した等の有効な検知ではない場合の人体検知および便器洗浄のオンオフのタイミングを示している。
なお、図4に示すような自動洗浄の動作例として挙げたものは、自動洗浄における基本的な洗浄モードであり、このモードを本実施形態における標準モードとしてもよい。
図4(a)に示すように、人体検知センサ25によって使用者の位置が検知エリア内となり(人体検知オン)、検知エリア内において所定時間以上の人体検知が行われた場合、制御部40は、このような人体検知センサ25からの検知信号に基づいて、小便器10に近づいた小便器10の使用者であると判定する。制御部40は、人体検知がオンになってから所定時間(前洗浄確定時間T0)経過した後に前洗浄モードを実行する。
前洗浄モードでは、ボウル部13の表面(ボウル面)に尿が付着するのを抑えるためにボウル面を濡らすことを主な目的として行うものである。このため、前洗浄モードは、標準的な水量においては、この後に実行される本洗浄モードよりも洗浄水量が少ない。すなわち、スプレッダ24からの洗浄水の吐水時間が短い。
次いで、人体検知センサ25によって使用者の位置が検知エリア外となると(人体検知オフ)、制御部40は、このような人体検知センサ25からの検知信号に基づいて、使用者が排尿を終えた(小便器10から離れた)と判定する。制御部40は、人体検知がオフになると本洗浄モードを実行する。
本洗浄モードでは、ボウル面の尿による汚れを洗い流すとともにトラップ部15内の尿濃度が高くなった溜め水WTを排出するために、本洗浄モードの前に実行された前洗浄モードよりも基本的には洗浄水量が多い。すなわち、スプレッダ25からの洗浄水の吐水時間が長い。
図4(b)に示すように、人体検知センサ25によって使用者の位置が検知エリア内となっても(人体検知オンになっても)人体検知センサ25による検知時間が所定時間(前洗浄確定時間T0)に満たない場合においては、制御部40は、たとえば、人が検知エリア内を通過しただけのような有効な検知ではないと判定する。この場合、制御部40は、前洗浄モードを実行しない。このように、洗浄水の浪費を抑えることで、節水性能を向上させることができる。
図5は、第1実施形態に係る小便器10の自動洗浄を示すタイムチャートである。図6は、第1実施形態に係る小便器10の前洗浄水量変更制御の処理手順を示すフローチャートである。図7は、第1実施形態に係る小便器10における前洗浄水量変更による排水横枝管60内の排水の流れの一例を示す図である。図8は、第1実施形態に係る小便器10における前洗浄水量変更による排水横枝管60内の排水の流れの他の例を示す図である。
図5に示すように、人体検知センサ25によって使用者の位置が検知エリア内となり(人体検知オン)、検知エリア内において小便器10の使用時間(人体検知時間)Tbfが予め設定された所定時間以上となった場合、制御部40は、人体検知センサ25からの検知信号に基づいて、小便器10の使用者であると判定し、小便器10を使用者が使用すると判定する。制御部40は、人体検知がオンになってから所定時間(前洗浄確定時間T0)経過した後に前洗浄モードを実行する。
なお、人体検知センサ25によって使用者の位置が検知エリア内となっても(人体検知オンになっても)人体検知センサ25による検知時間が所定時間(前洗浄確定時間T0)に満たない場合、制御部40は、たとえば、人が検知エリア内を通過しただけのような有効な検知ではないと判定し、前洗浄モードを実行しない。
ここで、制御部40は、小便器10の使用状態に応じて前洗浄モードにおける洗浄水(前洗浄水量)を変更する。この場合、制御部40は、小便器10の前回の使用時間(前回の前洗浄後の使用継続時間)Tbfcを測定しており、前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcが予め設定された第1所定時間TA(図6参照)以上の場合を第1条件として設定する。制御部40は、第1条件を満たす場合には前洗浄水量を増加し、前洗浄時において小便器10側からの排水が排水横枝管60内において逆流する量を増やす。
また、制御部40は、前回の本洗浄後の経過時間Tintを測定しており、前回の本洗浄後の経過時間Tintが第2所定時間TB(図6参照)以上の場合を第2条件として設定する。制御部40は、第2条件を満たす場合には前洗浄水量を増加し、前洗浄時において小便器10側からの排水が排水横枝管60内において逆流する量を増やす。
なお、小便器10において尿流検知センサ(図示せず)をさらに備え、図5に示すように、制御部40は、尿流検知センサの検知結果(尿流検知時間Tuf)によって前回の使用時間を測定してもよい。また、制御部40は、尿流検知センサの検知結果に基づいて前洗浄後の尿流継続時間Tucを測定しており、前洗浄後の尿流継続時間Tucによって算出した前回の使用者の尿量に基づいて、前洗浄水量を増加するよう制御してもよい。
また、この場合、制御部40は、スプレッダ24の吐水時間を長くすることで前洗浄水量を増加するが、これに限定されず、スプレッダ24による洗浄水の瞬間流量、すなわち、スプレッダ24が吐水する単位時間あたりの水量を増やすことで前洗浄水量を増加してもよい。
次いで、制御部40は、人体検知センサ25によって使用者の位置が検知エリア外となると(人体検知オフ)、使用者が小便器10の使用を終えた、言い換えると、排尿が終了して使用者が小便器10から離れた(立ち去った)と判定する。制御部40は、人体検知がオフになると本洗浄モードを実行する。
また、制御部40による前洗浄水量変更制御については、制御部40は、第1条件および第2条件のいずれかを満たすか否かを判定し、第1条件および第2条件のいずれかを満たす場合に前洗浄水量を増加する。
すなわち、図6に示すように、制御部40は、第1条件(前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcが第1所定時間TA以上(Tbfc≧TA))を満たすか否かを判定し(ステップS101)、第1条件を満たす場合(ステップS101:Yes)、前洗浄水量を増加し(ステップS102)、前洗浄水量変更制御を終了する。
また、制御部40は、ステップS101の処理において第1条件を満たさないと判定した場合(ステップS101:No)、第2条件(前回の本洗浄後の経過時間Tintが第2所定時間TB以上(Tint≧TB))を満たすか否かを判定し(ステップS103)、第2条件を満たす場合(ステップS103:Yes)、前洗浄水量を増加し(ステップS102)、前洗浄水量変更制御を終了する。
制御部40は、ステップS103の処理において第2条件を満たさないと判定した場合(ステップS103:No)、前洗浄水量の増加は行わず、予め設定された標準水量のまま前洗浄モードを実行する(ステップS104)。なお、制御部40は、第1条件および第2条件のいずれを先に判定してもよい。また、制御部40は、第1条件および第2条件のいずれか一方を満たす場合に加えて、第1条件および第2条件の両方を満たす場合にも前洗浄水量を増加する構成としてもよい。
また、制御部40は、第1条件および第2条件のいずれも満たさない状態が続いている場合でも、小便器10の使用回数(本洗浄モードの実行回数)が予め設定された回数(たとえば、5回)を超えた場合には、前洗浄水量を増加して次回(6回目)の前洗浄モードを実行する。このように、制御部40は、第1条件および第2条件のいずれも満たさない状態が続いている場合、小便器10を複数回使用するごとに前洗浄水量を増加する。
ここで、図7および図8を参照して排水横枝管60内の排水の流れについて説明する。図7(a)~(h)には、第1実施形態に係る小便器10の自動洗浄(前洗浄モードおよび本洗浄モード)が実行された場合の排水横枝管60内の排水の流れの一例を模式的に示している。また、図8(a)~(e)には、排水横枝管60内の排水の流れの他の例を模式的に示している。
なお、図7および図8では、トラップ部15内の溜め水WT、器具排水管50内および排水横枝管60内の排水WU、および排水横枝管60内に残留している排水(以下、残水という)WRの尿濃度をドットの疎密で表している。この場合、ドットが疎なほど尿濃度が低く、ドットが密なほど尿濃度が高い。溜め水WTや排水WUにおいて尿濃度の異なる部分の境目は、実際には必ずしも図示のように明確に分かれるものではない。
また、使用開始から本洗浄時の排水が完了するまでの排水横枝管60内の水(排水)は「排水WU」と表記する。排水WUは、小便器10の使用状態や洗浄水量によって尿濃度が異なり、上記したように、図中においては、ドットの疎密で尿濃度の濃淡(高低)を表している。
図7(a)には、前回の本洗浄後、今回の小便器10の使用前の排水横枝管60内を示している。小便器10の使用前、図7(a)に示すように、排水横枝管60内においては、器具排水管50との接続部60aよりも上流側から接続部60aよりも下流側にかけて、図中の矢線A方向に延びた状態で尿濃度の高い残水WRが残留している。とくに、接続部60aよりも上流側はより高い尿濃度となっており、このような残水WTは、小便器10の不使用時間が長い場合には尿石化が進んでいる場合がある。
このような残水WRにより、排水横枝管60内において尿石の付着や堆積が生じる。なお、尿石は、排水横枝管60内の残水WRに含まれる尿素がバクテリアによって分解され、アンモニアが発生し、アンモニアによってpHが高まり、カルシウムイオンが結晶化したカルシウム化合物として排水横枝管60内に付着することで発生すると考えられている。
たとえば、上記第1条件を満たす場合、すなわち、前回の使用時間(前回の前洗浄後の使用継続時間)Tbfcが第1所定時間TA(図5参照)以上の場合(排尿時間が長い場合)、制御部40が本洗浄モードを実行することでトラップ部15内の溜め水WTが押し出されるが、前回の使用者の排尿量が多いため、トラップ部15内の尿濃度が高い可能性がある。
また、たとえば、上記第2条件を満たす場合、すなわち、前回の本洗浄後の経過時間Tintが第2所定時間TB(図5参照)以上の場合(前回使用してから長時間経過している場合)、排水横枝管60内の残水WRは尿石化が進んでいる可能性が高いものである。
このため、制御部40は、排水WUが排水横枝管60内に残留しやすい場合においても排水横枝管60内における尿石の付着や堆積を抑制可能な洗浄モードを実行する。
図7(b)には、前洗浄中の排水横枝管60内を示している。また、図7(c)には、前洗浄後の排水横枝管60内を示している。制御部40は、使用者が小便器10近傍に位置すると、前洗浄モードを実行する。制御部40は、前洗浄モードにおいては、前洗浄水量変更制御により前洗浄水量を増加している。
前洗浄中の排水WUは、前回の本洗浄後のトラップ部15内に滞留している溜め水WTが多く含まれ、尿濃度の低いものである。前洗浄中、図7(b)に示すように、器具排水管50から流れ込む排水WUは、排水横枝管60内において、接続部60aから下流側に流れる一方で、上流側にも逆流する。
下流側に分流された排水WUは、接続部60aよりも下流側に位置する残水WRを下流側に押し流す。一方、上流側に分流された排水WUは、接続部60aの上流側に位置する残水WRを逆流する排水WUで薄めつつ上流側に押し上げた後、図7(c)に示すように、前洗浄終了とともに下流側に流れ始め、排水横枝管60内の排水WU全体の尿濃度を薄めることができる。
この場合、接続部60aよりも下流側においては、尿濃度が0%に近いレベルであり、接続部60aよりも上流側においては、排水WUが残水WRと混ざることで、尿濃度が0~数%のレベルまで薄められる。また、排水横枝管60内の残水WRの尿石化が進んでいる場合は、残水WRの上を排水WUが通過することで残水WR中の尿石化し始めた残水を浮き上がらせ、下流に流すことができる。
図7(d)には、前洗浄終了後、使用者の排尿開始ごろの排水横枝管60内を示し、図7(e)には、使用者の排尿終了ごろの排水横枝管60内を示している。図7(d)に示すように、使用者の排尿開始ごろは、トラップ部15内には尿が入ってくる。トラップ部15内に尿が入ってくることで、トラップ部15内の溜め水WTが押し出され、器具排水管50を流れて排水横枝管60内に排水WUとして流れ込む。この場合、排水WUは、トラップ部15内の溜め水WTであり、尿濃度の低いものである。
また、排水WUは、接続部60aよりも下流側においては、尿濃度が0%に近いレベルを維持し、接続部60aよりも上流側においては、排尿初期の段階では押し出される溜め水WTの量が少なく、排水の逆流量も少ないため、前洗浄後からほとんど変化はなく、尿濃度が0~数%のレベルである。
図7(e)に示すように、使用者の排尿終了ごろには、トラップ部15内の溜め水WTは、尿濃度が上昇して100%に近いレベルであり、トラップ部15内から押し出されて器具排水管50を流れ、排水横枝管60内に排水WUとして流れ込む。ただし、この場合の排水WUは、排尿終了ごろであるため、排水横枝管60内に流れ込む瞬間流量が少なく、逆流量が減少する。
また、接続部60aよりも上流側には初期の尿濃度の低い初期の排水WUが残留しているが、新たな排水WUの逆流量が減少しているため、現在滞留している位置よりも上流側に押されることはなく、現在の位置に滞留を続ける。
図7(f)には、使用者の排尿終了後、本洗浄前の排水横枝管60内を示している。図7(f)に示すように、トラップ部15内の溜め水WTは、尿濃度が上昇して100%に近いレベルのままである。また、排水横枝管60内の排水WUは、上流側から下流側に流れ、接続部60aよりも下流側において尿濃度が高いレベルであり、接続部60aよりも上流側において尿濃度が0~数%のレベルである。
図7(g)には、本洗浄開始ごろの排水横枝管60内を示し、図7(h)には、本洗浄中の排水横枝管60内を示している。制御部40は、使用者が小便器10から離れると、本洗浄モードを実行する。本洗浄開始ごろの排水WUは、トラップ部15内の尿を多く含む溜め水WTが押し出されて排水横枝管60内に流れ込んだものであり、尿濃度の高いものである。
図7(g)に示すように、排水横枝管60内の排水WUは、接続部60aよりも下流側においては、排尿後に残留している排水WUと混ざりながら流れる。接続部60aよりも上流側においては、排尿後に残留している排水WUと混ざりながら上流側に押し上げることで、排水された尿濃度よりも低くなる。
図7(h)に示すように、本洗浄中は、トラップ部15内が還水され溜め水WTの尿濃度が低いため、排水横枝管60内に流れ込む排水WUは、尿濃度が低く、接続部60aにおいては、攪拌されて尿濃度が低下し、接続部60aよりも下流側においては、滞留していた排水WUを洗い流し、接続部60aよりも上流側においては、逆流状態が継続しているため尿濃度はほとんど変化しない。そして、図7(a)に示すように、接続部60aよりも上流側の排水WUが矢線A方向に流れることで、上流に位置していた低濃度の排水により尿濃度の低い残水WRとなる。
また、前洗浄水量変更制御により前洗浄水量を増加することで、前洗浄水の単位時間あたりの水量が一定の場合は洗浄時間が長くなり、前洗浄と使用者の排尿とが重なるように制御することが可能である。ここで、図8を用いて、前洗浄と使用者の排尿とが重なる場合における排水横枝管60内の排水WUの流れについて説明する。
図8(a)には、使用者の排尿開始ごろの排水横枝管60内を示し、図8(b)には、使用者の排尿終了ごろの排水横枝管60内を示している。前洗浄時間が長くなり使用者の排尿と重なる場合、図8(a)に示すように、トラップ部15内の溜め水WTは前洗浄水と使用者排尿時の尿とに押し出され、排水横枝管60内に流れ込む排水WUの瞬間流量が増大する。排水横枝管60内に流れ込む排水WUは、前洗浄水に薄められるため、尿濃度が低い。
また、接続部60aよりも上流側に逆流する排水WUは、前洗浄水と尿とをあわせた流量となるため、逆流量が増大する。このため、排水WUがより上流側まで逆流し、排水横枝管60内の排水WU全体を薄めることができる。
また、たとえば、前洗浄が終了した後も排尿が続いている場合、図8(b)に示すように、トラップ部15内の溜め水WT(尿濃度上昇中)が押し出され、器具排水管50から排水横枝管60内に排水WUとして流れ込む。この場合、排尿開始から時間が経過しているため、たとえば、尿量が少なく、排水WUの逆流量が減少する。
図8(c)には、使用者の排尿終了後、本洗浄前の排水横枝管60内を示している。使用者の排尿終了後、図8(c)に示すように、トラップ部15内の溜め水WTは、尿濃度が高い状態であるが、前洗浄と排尿とが重なった分、前洗浄と排尿とが重ならない場合に比べて尿濃度は低い。この場合、排水横枝管60内の接続部60aよりも下流側においては、トラップ部15内から押し出された溜め水WTが逆流した排水により若干薄められたレベルの尿濃度であり、接続部60aよりも上流側においては、0~数%レベルの尿濃度である。
図8(d)には、本洗浄開始ごろの排水横枝管60内を示し、図8(e)には、本洗浄中の排水横枝管60内を示している。制御部40は、使用者が小便器10から離れると、本洗浄モードを実行する。本洗浄開始ごろの排水WUは、トラップ部15内の尿を多く含む溜め水WTが押し出されて排水横枝管60内に流れてきたものであり、尿濃度の高いものである。
図8(d)に示すように、接続部60aよりも下流側においては、排水横枝管60内に流れ込む排水WUと排尿後に残留している排水WUとが混ざりながら流れる。接続部60aよりも上流側においては、排水横枝管60内に流れ込む排水WUが排尿後に残留している排水WUと混ざりながら上流側に押し上げることで、排水された尿濃度よりも低くなる。
図8(e)に示すように、本洗浄中は、トラップ部15内が還水され溜め水WTの尿濃度が低いため、排水横枝管15内に流れ込む排水は、尿濃度が低く、接続部60aにおいては、攪拌されて尿濃度が低下し、接続部60aよりも下流側においては、滞留していた排水WUを洗い流し、接続部60aよりも上流側においては、逆流量が低下しているため尿濃度はほとんど変化しない。そして、図7に戻り、図7(a)に示すように、接続部60aよりも上流側の排水WUが矢線A方向に流れることで、尿濃度のより低い残水WRとなる。
<第2実施形態>
次に、図9を参照して第2実施形態に係る小便器および小便器システムについて説明する。図9は、第2実施形態に係る小便器の自動洗浄における前洗浄水量変更制御の処理手順を示すフローチャートである。なお、以下で説明する第2~第7実施形態は、制御部40による前洗浄水量変更制御において上記した第1実施形態と異なり、他の部分は第1実施形態と同様である。
第2実施形態における前洗浄水量変更制御では、図9に示すように、制御部40は、第1条件(Tbfc≧TA)を満たすか否かを判定する(ステップS201)。制御部40は、第1条件を満たす場合(ステップS201:Yes)、第2条件(Tint≧TB)を満たすか否かを判定する(ステップS202)。制御部40は、第2条件を満たす場合(ステップS202:Yes)、前洗浄水量を増加し(ステップS203)、前洗浄水量変更制御を終了する。
制御部40は、ステップS201の処理において第1条件を満たさないと判定した場合(ステップS201:No)、前洗浄水量の増加は行わず、標準水量のまま前洗浄モードを実行する。また、制御部40は、ステップS202の処理において第2条件を満たさないと判定した場合(ステップS202:No)、前洗浄水量の増加は行わず、標準水量のまま前洗浄モードを実行する(ステップS204)。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、小便器10の使用状態に応じて前洗浄水量を変更することで、排水横枝管60内における尿汚れの状況に応じた適切な洗浄水量で小便器10の前洗浄を行うことができる。これにより、節水性能を確保しつつ、排水横枝管60内における尿石の付着や堆積を抑制することができる。
また、小便器10の前回の使用時間(前回の前洗浄後の使用継続時間)Tbfcが長いということは、使用者の排尿時間が長いと考えられ、トラップ部15内において尿濃度がより高く、本洗浄後に排水横枝管60内において尿濃度のより高い排水が逆流したことが想定される。このため、前洗浄水量を増加することで、逆流によって生じる尿濃度の高い排水(尿を多く含む排水)に対応することができ、前洗浄および本洗浄でこれを薄めて洗い流すことができる。また、単位時間あたりの洗浄水量を変えずに前洗浄水量を増加する場合は前洗浄による洗浄時間が長くなるため、今回の使用者の排尿時間と前洗浄が重なることで、トラップ部15内の尿濃度を抑えることが可能となり、トラップ部15内を希釈することもできる。
また、前回の本洗浄後の経過時間Tintが長いということは、排水横枝管60内に残留している排水の残留時間が長いことで排水横枝管60内において尿石化が進んでいることが想定される。このため、前洗浄水量を増加することで、排水横枝管60内に残留している排水の尿濃度を薄めることができるとともに、前洗浄および本洗浄によって尿石化が進んだ排水を洗い流すことができる。
一方で、前回の本洗浄後の経過時間Tintが短いということは、尿石化は進んでいないと想定されるため、今回の前洗浄および本洗浄により前回分の排水横枝管60内の排水(残溜水)を薄めて洗い流すことが可能と考えられ、前洗浄水量を標準とすることで、洗浄水量の増加を抑制することができる。
また、小便器10が排水横枝管60に沿って複数並んでいる場合、排水横枝管60の上流側から下流側に向けて排水は流れるため、下流側における小便器10使用後の本洗浄時の逆流による尿濃度の高い排水は上流側から流れてきた排水で洗い流される。このため、排水横枝管60の上流側ほど前洗浄水量を増加することで、尿汚れを洗い流すことができる。
<第3実施形態>
次に、図10を参照して第3実施形態に係る小便器および小便器システムについて説明する。図10は、第3実施形態に係る小便器の自動洗浄における前洗浄水量変更制御の処理手順を示すフローチャートである。
第3実施形態における前洗浄水量変更制御では、第1条件および第2条件の両方を満たす場合には、第1条件のみを満たす場合よりも前洗浄水量をさらに増加する。また、第3実施形態における前洗浄水量変更制御では、第1条件(前回の使用時間、すなわち、前洗浄後の使用継続時間Tbfc)の方を第2条件(本洗浄後の経過時間Tint)よりも優先度を高めている。
第3実施形態における前洗浄水量変更制御では、図10に示すように、制御部40は、第1条件(Tbfc≧TA)を満たすか否かを判定する(ステップS301)。制御部40は、第1条件を満たす場合(ステップS301:Yes)、第2条件(Tint≧TB)を満たすか否かを判定する(ステップS302)。制御部40は、第2条件を満たす場合(ステップS302:Yes)、前洗浄水量を大量増加し(ステップS303)、前洗浄水量変更制御を終了する。
制御部40は、ステップS301の処理において第1条件を満たさないと判定した場合(ステップS301:No)、前洗浄水量の増加は行わず、前洗浄水量を標準量(最小量)として前洗浄モードを実行する(ステップS304)。
制御部40は、ステップS302の処理において第2条件を満たさないと判定した場合(ステップS302:No)、前洗浄水量を小量増加し(ステップS305)、前洗浄水量変更制御を終了する。
第3実施形態によれば、第1および第2実施形態と同様の効果に加え、前回の使用者の排尿時間が長く、かつ、小便器10の前回の使用から時間が経過しているということは、排水横枝管60内において尿濃度のより高い排水が逆流し、かつ、このような尿濃度の高い排水が残留している時間が長いことで尿石化が進んでいることが想定される。このため、第1条件および第2条件の両方を満たす場合に前洗浄水量をさらに増加することで、排水横枝管60内に残留している排水の尿濃度を薄めることができるとともに、前洗浄および本洗浄によって尿石化が進んだ残水を洗い流すことができる。
また、第1条件(前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfc)の方を第2条件(本洗浄後の経過時間Tint)よりも優先度を高めることで、より重大な問題と考えられる本洗浄後の経過時間Tintに対して適切な対応が可能となる。
<第4実施形態>
次に、図11を参照して第4実施形態に係る小便器および小便器システムについて説明する。図11は、第4実施形態に係る小便器の自動洗浄における前洗浄水量変更制御の処理手順を示すフローチャートである。
第4実施形態における前洗浄水量変更制御では、条件の因子として第1~第3実施形態と同様、前回の使用時間(前回の前洗浄後の使用継続時間)Tbfcおよび本洗浄後の経過時間Tintを使用し、これらを組み合わせて、組み合わせごとに適切な前洗浄水量を選択する。
第4実施形態における前洗浄水量変更制御では、図11に示すように、制御部40は、前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcおよび本洗浄後の経過時間Tintに基づいて条件判定を実行する(ステップS401)。制御部40は、ステップS401の処理において、条件1(Tbfc≧TA、かつ、Tint≧TB)の場合には「水量1(前洗浄水量が最大量)」を選択し(ステップS402)、前洗浄水量変更制御を終了する。
制御部40は、ステップS401の処理において、条件2(Tbfc≧TA、または、Tint≧TB)の場合には「水量2(前洗浄水量が中量)」を選択する(ステップS403)。また、制御部40は、ステップS401の処理において、条件3(Tbfc<TA、かつ、Tint<TB)の場合には「水量3(前洗浄水量が最小量)」を選択する(ステップS404)。なお、「水量3」では、前洗浄水量を、小量増加してもよいし、標準量(増加しない)としてもよい。
第4実施形態によれば、第1~第3実施形態と同様の効果に加え、条件因子の組み合わせ(すなわち、条件)を複数設定することで、前洗浄水量をより詳細に設定することができ、各条件に応じて適切な前洗浄水量で前洗浄モードを実行することができる。
<第5実施形態>
次に、図12を参照して第5実施形態に係る小便器および小便器システムについて説明する。図12は、第5実施形態に係る小便器の自動洗浄における前洗浄水量変更制御の処理手順を示すフローチャートである。
第5実施形態における前洗浄水量変更制御では、第4実施形態と同様、条件の因子として、前回の使用時間(前回の前洗浄後の使用継続時間)Tbfcおよび本洗浄後の経過時間Tintを使用し、これらを組み合わせて、組み合わせごとに適切な前洗浄水量を選択する。第5実施形態における前洗浄水量変更制御では、より多くの条件を設定している。
第5実施形態における前洗浄水量変更制御では、図12に示すように、制御部40は、前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcおよび本洗浄後の経過時間Tintに基づいて条件判定を実行する(ステップS501)。制御部40は、ステップS501の処理において、条件1(Tbfc≧TA、かつ、Tint≧TB)の場合には「水量1」を選択し(ステップS502)、前洗浄水量変更制御を終了する。「水量1」は、たとえば、前洗浄水量が第1の量(最大量)である。
制御部40は、ステップS501の処理において、条件2(Tbfc≧TA、かつ、Tint<TB)の場合には「水量2」を選択する(ステップS503)。「水量2」は、たとえば、前洗浄水量が第2の量(第1の量よりも少ない量)である。
制御部40は、ステップS501の処理において、条件3(Tbfc<TA、かつ、Tint≧TB)の場合には「水量3」を選択する(ステップS504)。「水量3」は、たとえば、前洗浄水量が第3の量(第2の量よりも少ない量)である。また、制御部40は、ステップS501の処理において、条件4(Tbfc<TA、かつ、Tint<TB)の場合には「水量4」を選択する(ステップS505)。「水量4」は、たとえば、前洗浄水量が第4の量(第3の量よりも少ない量)である。「水量4」は、標準量(増加しない)としてもよい。
第5実施形態によれば、第1~第4実施形態と同様の効果に加え、条件因子の組み合わせ(すなわち、条件)をさらに複数設定することで、前洗浄水量をさらに詳細に設定することができ、各条件に応じて適切な前洗浄水量で前洗浄モードを実行することができる。
<第6実施形態>
次に、図13を参照して第6実施形態に係る小便器および小便器システムについて説明する。図13は、第6実施形態に係る小便器の自動洗浄における前洗浄水量変更制御の処理手順を示すフローチャートである。
第6実施形態における前洗浄水量変更制御では、条件の因子として、前回の使用時間(前回の前洗浄後の使用継続時間)Tbfcおよび本洗浄後の経過時間Tintに加えて、その他の情報をさらに使用する。その他の情報としては、たとえば、尿流検知時間、前回使用時の前洗浄水量などがある。
前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcが長い場合は、トラップ部15内の尿濃度(以下、トラップ濃度という)が高いことが想定される。また、尿流検知時間が長い場合においても、トラップ濃度が高いことが想定される。なお、尿流検知時間は、排尿時における連続時および断続時の累積値が好ましい。
第6実施形態における前洗浄水量変更制御では、図13に示すように、制御部40は、前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfc、本洗浄後の経過時間Tintおよびその他の情報に基づいて条件判定を実行する(ステップS501)。制御部40は、複数の条件(条件1~条件N)を予め設定しており、ステップS601の処理において、条件1の場合には「水量1」を選択し(ステップS602)、前洗浄水量変更制御を終了する。
制御部40は、ステップS601の処理において、条件2の場合には「水量2」を選択する(ステップS603)。そして、制御部40は、ステップS601の処理において、条件Nの場合には「水量N」を選択する(ステップS604)。
第6実施形態によれば、第1~第5実施形態と同様の効果に加え、条件因子の組み合わせ(すなわち、条件)をさらに複数設定することで、前洗浄水量をさらに詳細に設定することができ、各条件に応じて適切な前洗浄水量で前洗浄モードを実行することができる。
<第7実施形態>
次に、図14を参照して第7実施形態に係る小便器および小便器システムについて説明する。図14は、第7実施形態に係る小便器の自動洗浄における前洗浄水量変更制御の処理手順を示すフローチャートである。
第7実施形態における前洗浄水量変更制御では、制御部40は、トラップ濃度を条件に加えて前洗浄水量変更制御を行う。トラップ濃度を推定するための因子として、上記した前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcを使用する。
また、トラップ濃度の推定には、尿流検知時間を用いてもよい。この場合、前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcを主、尿流検知時間を従として使用することが好ましい。前回使用時の前洗浄水量が長い場合は、前洗浄水によってトラップ濃度上昇が抑えられていると考えられるため、トラップ濃度が低いことが想定される。
なお、トラップ濃度を推定するための因子としては、前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcの他、電気伝導率(伝導率)、静電容量、色味などがある。これらを用いる場合、トラップ部15内の状態を前洗浄モードの直前に検知することができる。
第7実施形態における前洗浄水量変更制御では、図14に示すように、制御部40は、前回の前洗浄後の使用継続時間Tbfcに基づいて、トラップ濃度Cesを推定する(ステップS701)。次いで、制御部40は、トラップ濃度Cesが所定値Ch以上(Ces≧Ch)か否かを判定する(ステップS702)。制御部40は、トラップ濃度Cesが所定値Ch以上であると判定した場合(ステップS702:Yes)、前回の本洗浄後の経過時間Tintが所定時間TB以上か否かを判定する(ステップS703)。
制御部40は、本洗浄後の経過時間Tintが所定時間TB以上であると判定した場合、前洗浄水を増加する(ステップS704)。制御部40は、ステップS702の処理において、トラップ濃度Cesが所定値Ch未満であると判定した場合には、前洗浄水量の増加は行わず、標準量で前洗浄モードを実行する(ステップS705)。また、制御部40は、ステップS703の処理において、本洗浄後の経過時間Tintが所定時間TB未満であると判定した場合にも、前洗浄水量の増加は行わず、標準量で前洗浄モードを実行する(ステップS705)。
第7実施形態によれば、第1~第6実施形態と同様の効果に加え、トラップ濃度に基づいて前洗浄水量変更制御を行うことで、小便器10の使用状態をより正確に認識することができ、適切な前洗浄水量で前洗浄モードを実行することができる。
なお、上記した第1~第7実施形態では、前洗浄水量変更制御において前洗浄水量を増加する制御を行うが、前洗浄水量を減少する制御を行う場合もある。たとえば、制御部40による前洗浄モード終了後から本洗浄モード開始までの時間が短い場合、前洗浄が終了するころには排尿が終わり、トラップ濃度が低いと考えられるため(前洗浄および本洗浄によりトラップ部15内がきれいであるため)、排水横枝管60内における尿石の付着や堆積のリスクが小さい。この場合、次回の前洗浄水量を減少する。なお、前洗浄を省略してもよい。これにより、節水性能を向上させることができる。
また、上記した第1~第7実施形態では、小便器10内に自動洗浄ユニット20を配置する構成としているが、自動洗浄ユニット20を小便器10から離して(分離して)配置する構成としてもよい。また、自動洗浄ユニット20の一つの制御部40によって複数の小便器10を制御する構成としてもよい。また、たとえば、自動洗浄ユニット20を小便器10から分離してトイレ室の壁面2の裏側(壁裏)に配置し、制御部40が電気通信を介して小便器10間の連携を行うように構成してもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。