JP7305384B2 - 大型異径配管フランジ - Google Patents
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Description
配管にフランジを形成するために、配管の端部に予め所定形状とされたフランジ部材が溶接される。フランジ部材としては、例えば突き合わせ溶接型(WN型)など、ボルト締結される円板状のフランジ部と、配管と溶接される円筒状のハブ部とを有する。
フランジの形状については、公益社団法人石油学会(JPI)による規格「JPI-7S-15-2011 石油工業用フランジ」が参照される。塔槽類との接続に用いられる呼び径650A~1500Aの大型異径配管用フランジについては、「JPI-7S-43-2008 石油工業用大口径フランジ」が参照される。
このような交差部では応力集中が生じ易く、配管やハブ部に応力によるクラックが生じることがある。そこで、フランジ部と交差部および配管との交差部を、それぞれ滑らかに連続した円弧状(楕円の湾曲形状)に形成し、応力集中を緩和させたフランジ部材が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、特許文献1に基づく応力集中の緩和を図ったにも拘わらず、フランジ部材のハブ部に応力によるクラックが生じることがあった。とくに、前述したJPI規格に基づいてフランジ部に十分な剛性が得られているにも拘わらず、ハブ部にクラックが生じる事例があり、その改善が求められていた。
すなわち、フランジ部の外周部は塔槽類とのボルト締結により配管と反対側に向けて荷重を受ける。一方、フランジ部の内周部は塔槽類内部の圧力により配管側に向かう荷重を受ける。その結果、フランジ部の内側に接続されているハブ部は、フランジ部からハブ部を拡張させるような力を受ける。とくに、フランジ部の剛性が高い場合、ハブ部に伝達される力(ハブ部を拡張させようとする力)が弱まることなくハブ部に伝達される。
そして、フランジ部から伝達される力によりハブ部が拡張されると、ハブ部のフランジ部から遠い側、つまり配管に接続される側は強く拡張されることになり、ハブ部の表面には、周方向の引っ張り力によるクラックが生じたと考えられる。
このような知見のもと、本発明の発明者らは、フランジ部から伝達されてハブ部を拡張させる力を緩和するべく、以下に示す本発明の構成を採用した。
これにより、ハブ部における周方向の引っ張り力が緩和でき、クラックを確実に抑制することができる。
本発明において、フランジ部の外周部は、その厚みやボルト締結用の形状を含めて既存のフランジの規格に基づいて形成することが好ましい。これにより、既存の規格に基づく塔槽類に接続する際に、本発明の大型異径配管フランジを確実かつ円滑に接続できる。
このような段差を有するフランジ部としては、配管側には内周部と外周部との間に段差があり、塔槽類側には段差がないもの(内周部が外周部の塔槽類側に偏っている)、塔槽類側には内周部と外周部との間に段差があり、配管側には段差がないもの(内周部が外周部の配管側に偏っている)、および、配管側および塔槽類側にそれぞれ内周部と外周部との間に段差があるもの(内周部が外周部の厚みの中間位置に連続している)、とすることができる。
このような本発明では、段差の入り隅部分が断面円弧状に形成されることで、段差の入り隅部分における応力集中を緩和することができる。
このような本発明では、内周部とハブ部との連続部分が断面円弧状に形成されることで、内周部とハブ部との連続部分における応力集中を緩和することができる。
このような本発明では、配管の表面、ハブ部の表面、ないし内周部のハブ部に連続する部分の表面にわたる領域での応力集中を緩和することができる。
このような本発明では、従来多用されるテーパ形状に比べて製造が容易である。
本発明において、ハブ部の外径または内径は、接続される配管と同寸法とすることができる。
このような本発明では、ハブ部の厚みを内周部の厚みと近い値にできるため、フランジ部とハブ部との接続部分での応力集中を緩和することができる。
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の前提となる既存のフランジを用いた配管接続構造について説明する。
図1において、配管1は、塔槽類である反応塔2の開口部3に接続され、反応塔2内のガスなどを取り出すものである。配管1と反応塔2の開口部3とを接続するために、配管1の端部には、本発明の大型異径配管フランジであるフランジ部材4が溶接されている。
ハブ部5は、一端側がフランジ部6の内周縁から連続して形成されており、他端側を配管1の端部に全周溶接される。
フランジ部6は、外周縁に沿って多数のボルト孔を有し、このボルト孔を挿通する多数のボルト7により反応塔2の開口部3と締結される。
図2のフランジ部材4では、ボルト7で締結することで、フランジ部6の外側を開口部3に引き寄せる向き(図中下向き)の力F1が生じ、フランジ部6の内側では反応塔2から離れる向き(図中上向き)へ変形させる力F2が働く。これに伴い、ハブ部5には、配管1側を拡径させる向きの力F3が働く。
なかでも、ハブ部5と配管1との溶接部分では、薄い色(応力が大きい)がハブ部5の外側面から内側面まで達しており、ハブ部5の配管1側を拡径させる力F3により周方向に拡張され、図4に示すクラックCrを生じるとともに、クラックCrが材の表面から内部まで達する可能性がある。
図5および図6には、本発明の第1実施形態が示されている。
図5において、配管1、塔槽類である反応塔2、開口部3およびボルト7は、図1および図2のフランジ部材4で説明した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施形態のフランジ部材10(本発明の大型異径配管フランジ)は、配管1に溶接されるハブ部11と、反応塔2に接続されるフランジ部12と、を有する。さらに、フランジ部12は、開口部3にボルト締結される外周部13と、外周部13の内側に連続しかつハブ部11に連続する内周部14とを有する。
その外周縁に沿って多数のボルト孔を有し、このボルト孔を挿通する多数のボルト7により反応塔2の開口部3と締結可能である。
外周部13の厚さは、ボルト7の挿通部分の内側の開口部3との間にシールが挟み込まれた部分で最大厚みToとされている。
外周部13は、厚みToやボルト孔の形状や配置などが既存のフランジの規格に基づいて形成され、例えば既存のフランジ部6(図2参照)の外周部と同形状とされる。
内周部14の厚さは、配管1側に向けて立ち上がるまでの部分が一定厚さとされ、その厚さは厚みTiである。厚みTiは、外周部13の厚みToの約57%とされている。
内周部14とハブ部11との連続部分の入り隅にも、所定の曲率の円弧状部17が形成されている。
ハブ部11は、内周部14側から配管1側まで一定の外径の円筒状とされ、その厚さは厚みThとされている。厚みThは、配管1の厚みより大きく、かつ内周部14の厚みTiよりは小さく形成されている。
なお、ハブ部11の外径は、配管1と同寸法とされ、互いの表面は滑らかに連続されている。
本実施形態では、フランジ部12の内周部14の厚みTiが外周部13の厚みToよりも薄く形成されることで、内周部14つまり外周部13からハブ部11に至る領域の剛性が削減され、外周部13からハブ部11に伝達される力を緩和することができる。
これにより、ハブ部11における周方向の引っ張り力が緩和でき、ハブ部11におけるクラックを確実に抑制することができる。
本実施形態のフランジ部材10では、応力が高い部分(白色ないし薄い色の領域)はフランジ部12の外周部13の角部に見られるものの、内周部14ないしハブ部11は専ら応力が低い部分(黒色ないし濃い色の領域)となっている。
従って、既存のフランジ部材4(図2参照)で生じていたような、ハブ部5の表裏を貫通するような応力集中(図3参照)が緩和され、同部分におけるクラックCr(図4参照)を抑制することができる。
また、内周部14とハブ部11との連続部分においても、入り隅部分に断面円弧状の円弧状部17を形成した。このため、内周部14とハブ部11との連続部分においても応力集中を緩和することができる。
図7および図8には、本発明の第2実施形態が示されている。
図7において、配管1、塔槽類である反応塔2、開口部3およびボルト7は、図1および図2のフランジ部材4で説明した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施形態のフランジ部材20(本発明の大型異径配管フランジ)は、配管1に溶接されるハブ部21と、反応塔2に接続されるフランジ部22と、を有する。さらに、フランジ部22は、開口部3にボルト締結される外周部23と、外周部23の内側に連続しかつハブ部21に連続する内周部24とを有する。
フランジ部22は、配管1側および反応塔2側の両面に段差25,28があることで、内周部24が第1実施形態よりさらに薄く形成され、内周部24の厚みTiは外周部23の厚みToの約40%とされている。
本実施形態では、段差25の入り隅部分に円弧状部26が形成されているとともに、段差28の入り隅部分には円弧状部29が形成されている。
図8は、配管1に接続されたフランジ部材20を反応塔2にボルト締結した際の応力分布を示す。本実施形態のフランジ部材20においても、応力が高い部分(白色ないし薄い色の領域)はフランジ部22の外周部23の角部に見られるものの、内周部24ないしハブ部21は専ら応力が低い部分(黒色ないし濃い色の領域)となっている。
従って、既存のフランジ部材4(図2参照)で生じていたような、ハブ部5の表裏を貫通するような応力集中(図3参照)が緩和され、同部分におけるクラックCr(図4参照)を抑制することができる。
図9および図10には、本発明の第3実施形態が示されている。
図9において、配管1、塔槽類である反応塔2、開口部3およびボルト7は、図1および図2のフランジ部材4で説明した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施形態のフランジ部材30(本発明の大型異径配管フランジ)は、配管1に溶接されるハブ部31と、反応塔2に接続されるフランジ部32と、を有する。さらに、フランジ部32は、開口部3にボルト締結される外周部33と、外周部33の内側に連続しかつハブ部31に連続する内周部34とを有する。
フランジ部32は、配管1側および反応塔2側の両面の段差35,38が前述した第2実施形態より高く形成され、内周部34の厚みTiは外周部33の厚みToの約9%とされている。この厚みTiは、ハブ部31の厚みThと略同じとされている。
さらに、本実施形態では、ハブ部31の厚みThが内周部34の厚みTiと略同じ(90~110%)であるため、フランジ部32とハブ部31との接続部分での応力集中を緩和することができる。
図10は、配管1に接続されたフランジ部材30を反応塔2にボルト締結した際の応力分布を示す。本実施形態のフランジ部材30においても、応力が高い部分(白色ないし薄い色の領域)はフランジ部32の外周部33の配管1側の角部に見られるものの、内周部34ないしハブ部31は専ら応力が低い部分(黒色ないし濃い色の領域)となっている。
従って、既存のフランジ部材4(図2参照)で生じていたような、ハブ部5の表裏を貫通するような応力集中(図3参照)が緩和され、同部分におけるクラックCr(図4参照)を抑制することができる。
図11および図12には、本発明の第4実施形態が示されている。
図11において、配管1、塔槽類である反応塔2、開口部3およびボルト7は、図1および図2のフランジ部材4で説明した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施形態のフランジ部材40(本発明の大型異径配管フランジ)は、配管1に溶接されるハブ部41と、反応塔2に接続されるフランジ部42と、を有する。さらに、フランジ部42は、開口部3にボルト締結される外周部43と、外周部43の内側に連続しかつハブ部41に連続する内周部44とを有する。
ただし、本実施形態では、配管1側の段差45の高さが大きく、反応塔2側の段差48の高さが小さく形成され、内周部44は外周部43の厚みの反応塔2側に偏った位置に連続されている。
図12は、配管1に接続されたフランジ部材40を反応塔2にボルト締結した際の応力分布を示す。本実施形態のフランジ部材40においても、応力が高い部分(白色ないし薄い色の領域)はフランジ部42の外周部43の角部に見られるものの、内周部44ないしハブ部41は専ら応力が低い部分(黒色ないし濃い色の領域)となっている。
従って、既存のフランジ部材4(図2参照)で生じていたような、ハブ部5の表裏を貫通するような応力集中(図3参照)が緩和され、同部分におけるクラックCr(図4参照)を抑制することができる。
図13および図14には、本発明の第5実施形態が示されている。
図13において、配管1、塔槽類である反応塔2、開口部3およびボルト7は、図1および図2のフランジ部材4で説明した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施形態のフランジ部材50(本発明の大型異径配管フランジ)は、配管1に溶接されるハブ部51と、反応塔2に接続されるフランジ部52と、を有する。さらに、フランジ部52は、開口部3にボルト締結される外周部53と、外周部53の内側に連続しかつハブ部51に連続する内周部54とを有する。
図14は、配管1に接続されたフランジ部材50を反応塔2にボルト締結した際の応力分布を示す。本実施形態のフランジ部材50においては、応力が高い部分(白色ないし薄い色の領域)はフランジ部52の外周部53の外側面から配管1側の表面に沿って分布し、内周部54の傾斜面56の一部まで及んでいる。また、内周部54の円弧状部57にも応力が高い部分が生じており、薄い色の領域はハブ部51にまで及んでいるが、これらは表面から浅い領域に限定されている。
従って、既存のフランジ部材4(図2参照)で生じていたような、ハブ部5の表裏を貫通するような応力集中(図3参照)が緩和され、同部分におけるクラックCr(図4参照)を抑制することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は本発明に含まれる。
前記各実施形態では、配管1を反応塔2の開口部3に接続する例について説明したが、配管1の接続対象としては反応塔2に限らず、貯留槽や処理容器など他の塔槽類であってもよい。
前記実施形態において、開口部3および外周部13,23,33,43,53については、既存の大型異径配管用フランジの規格である「JPI-7S-43-2008 石油工業用大口径フランジ」に準拠することが好ましいが、これに限らない。
例えば、各実施形態における外周部13,23,33,43,53の厚みTo(図5,図7,図9,図11参照)を、JPI規格(例えば図2のフランジ部6の厚みTf)より大きく設定し、この厚みToの70%以下の厚みTiで内周部14,24,34,44,54を形成することもできる。この際、外周部の厚みToをJPI規格より43%以上大きく設定すれば、内周部の厚みTiは既存のJPI規格の厚さ(厚みTfなど)とすることができる。
その他、本発明の実施にあたっては、各実施形態で示した具体的形状に限らず、適宜変形させてもよい。
Claims (7)
- 塔槽類に接続されるフランジ部と、配管に接続されるハブ部とを有する大型異径配管フランジであって、
前記フランジ部は、前記塔槽類とボルト締結される外周部と、前記外周部の内側に連続しかつ前記ハブ部に連続する内周部とを有し、
前記内周部の最小厚みが前記外周部の最大厚みの70%以下に形成され、
前記内周部は、前記外周部の内周から径方向内向きに延び、前記配管側に向けて立ち上がるまでの部分が一定厚さとされていることを特徴とする大型異径配管フランジ。 - 請求項1に記載した大型異径配管フランジにおいて、
前記フランジ部は、前記配管側および前記塔槽類側の少なくとも一方が、前記内周部の表面と前記外周部の表面との間の段差を有することを特徴とする大型異径配管フランジ。 - 請求項2に記載した大型異径配管フランジにおいて、
前記段差の入り隅部分は、断面円弧状に形成されていることを特徴とする大型異径配管フランジ。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した大型異径配管フランジにおいて、
前記内周部と前記ハブ部との連続部分は、断面円弧状に形成されていることを特徴とする大型異径配管フランジ。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載した大型異径配管フランジにおいて、
前記配管の表面、前記ハブ部の表面、および前記内周部の前記ハブ部に連続する部分の表面が、それぞれ滑らかに連続した形状とされていることを特徴とする大型異径配管フランジ。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載した大型異径配管フランジにおいて、
前記ハブ部は、前記配管に接続される側から前記内周部に連続する側まで外径が一定な円筒形であることを特徴とする大型異径配管フランジ。 - 請求項6に記載した大型異径配管フランジにおいて、
前記ハブ部の厚みは、前記内周部の厚みの90~110%であることを特徴とする大型異径配管フランジ。
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