JP7182499B2 - 大型異径配管フランジ - Google Patents

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Description

本発明は大型異径配管フランジに関する。
石油精製や石油化学などの工業用プラントにおいては、塔槽類に配管を接続するために、配管の端部のフランジと塔槽類の開口部とをボルト締結する構造が多用されている。
配管にフランジを形成するために、配管の端部に予め所定形状とされたフランジ部材が溶接される。フランジ部材としては、例えば突き合わせ溶接型(WN型)など、ボルト締結される円板状のフランジ部と、配管と溶接される円筒状のハブ部とを有する。
フランジの形状については、公益社団法人石油学会(JPI)による規格「JPI-7S-15-2011 石油工業用フランジ」が参照される。塔槽類との接続に用いられる呼び径650A~1500Aの大型異径配管用フランジについては、「JPI-7S-43-2008 石油工業用大口径フランジ」が参照される。
前述した大型異径配管用フランジに例示された突き合わせ溶接型では、フランジ部から立ち上がるテーパ形状(外径がフランジ部側から漸減する円錐台形状)のハブ部が用いられ、ハブ部の円錐面とフランジ部の表面および配管の表面とが鋭角で交差していた。
このような交差部では応力集中が生じ易く、配管やハブ部に応力によるクラックが生じることがある。そこで、フランジ部と交差部および配管との交差部を、それぞれ滑らかに連続した円弧状(楕円の湾曲形状)に形成し、応力集中を緩和させたフランジ部材が提案されている(特許文献1参照)。
特開昭52-140020号公報
前述した特許文献1のフランジ部材によれば、ハブ部とフランジ部および配管との交差部を円弧状に形成することで、当該部分の応力集中が緩和されていた。
しかし、特許文献1に基づく応力集中の緩和を図ったにも拘わらず、フランジ部材のハブ部に応力によるクラックが生じることがあった。とくに、前述したJPI規格に基づいてフランジ部に十分な剛性が得られているにも拘わらず、ハブ部にクラックが生じる事例があり、その改善が求められていた。
本発明の目的は、クラックを確実に抑制できる大型異径配管フランジを提供することにある。
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、ボルト締結によってフランジ部の外周側が塔槽類側へ引き寄せられることで、ハブ部の配管側が拡張するように変形されることを見出し、これを防止するべく本発明の構成に至ったものである。
すなわち、フランジ部の外周部は塔槽類とのボルト締結により配管と反対側に向けて荷重を受ける。一方、フランジ部の内周部は塔槽類内部の圧力により配管側に向かう荷重を受ける。その結果、フランジ部の内側に接続されているハブ部は、フランジ部からハブ部を拡張させるような力を受け、ハブ部の表面に周方向の引っ張り力によるクラックが生じたと考えられる。
ここで、クラックの原因となるハブ部の配管側の外向きの拡張は、ハブ部の高さが小さいと配管側での外向きの変形量が小さく、逆にハブ部の高さが大きいと配管側での外向きの変形量が大きくなると考えられる。しかし、試験結果から、ハブ部の高さが小さいと配管側での応力が大きく、逆にハブ部の高さが大きいと配管側での応力が小さくなることが判った。その原因としては、ハブ部の高さが大きいほうが、配管接続部までの距離が長く、フランジ部から伝達される力が分散されて応力が小さくなると考えられる。
このような知見のもと、本発明の発明者らは、ハブ部を拡張させる力を分散させて応力を緩和するべく、以下に示す本発明の構成を採用した。
本発明の大型異径配管フランジは、塔槽類に接続されるフランジ部と、配管に接続されるハブ部とを有する大型異径配管フランジであって、前記ハブ部の前記フランジ部から前記配管までの高さが、前記フランジ部の最大厚さよりも大きく形成されていることを特徴とする。
本発明において、ハブ部の高さとしては、例えばフランジ部の最大厚さの101~200%とすることが好ましく、なかでも120~150%とすることが好ましい。
このような本発明では、フランジ部の高さがフランジ部の厚みよりも大きく形成されることで、フランジ部からハブ部へとハブ部を拡張させるような力が伝達されても、フランジ部から配管までの距離が長く、ハブ部における高さ方向の剛性が削減され、フランジ部から伝達される力が分散されて応力を緩和することができる。
これにより、ハブ部における周方向の引っ張り力が緩和でき、クラックを確実に抑制することができる。
本発明の大型異径配管フランジにおいて、前記フランジ部は、厚みおよびボルト孔の形状が既存のフランジの規格に基づいて形成されていることが好ましい。
このような本発明では、既存の規格に基づく塔槽類に接続する際に、フランジ部を確実かつ円滑に接続できる。
本発明の大型異径配管フランジにおいて、前記フランジ部は、前記塔槽類とボルト締結される外周部と、前記外周部の内側に連続しかつ前記ハブ部に連続する内周部とを有し、前記内周部の最小厚みが前記外周部の最大厚みの70%以下に形成されていることが好ましい。
このような本発明では、フランジ部の内周部の厚みが外周部よりも薄く形成されることで、外周部からハブ部に至る領域の剛性が削減され、外周部からハブ部に伝達される力を緩和することができ、クラックを一層確実に抑制できる。
本発明によれば、クラックを確実に抑制できる大型異径配管フランジを提供することにある。
本発明が適用される大型異径配管フランジの全体を示す斜視図。 既存の大型異径配管フランジを示す断面図。 図2における応力分布を示す断面図。 既存の大型異径配管フランジに生じたクラックを示す側面図。 本発明の第1実施形態を示す断面図。 前記第1実施形態における応力分布を示す断面図。 本発明の第2実施形態を示す断面図。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の前提となる既存のフランジを用いた配管接続構造について説明する。
〔配管接続構造〕
図1において、配管1は、塔槽類である反応塔2の開口部3に接続され、反応塔2内のガスなどを取り出すものである。配管1と反応塔2の開口部3とを接続するために、配管1の端部には、本発明の大型異径配管フランジであるフランジ部材4が溶接されている。
フランジ部材4は、配管1に溶接されるハブ部5と、開口部3にボルト締結されるフランジ部6と、を有する。
ハブ部5は、一端側がフランジ部6の内周縁から連続して形成されており、他端側を配管1の端部に全周溶接される。
フランジ部6は、外周縁に沿って多数のボルト孔を有し、このボルト孔を挿通する多数のボルト7により反応塔2の開口部3と締結される。
図2において、既存の規格では、フランジ部6は全体が一定の厚みTfとされている。なお、ボルト7が挿通される部分には開口部3側に薄い切欠きが形成される。フランジ部6の厚みTfは、配管1の厚みあるいはハブ部5の最大厚み(径方向の厚み)に対しても十分大きな数値とされている。
図2のフランジ部材4では、ボルト7で締結することで、フランジ部6の外側を開口部3に引き寄せる向き(図中下向き)の力F1が生じ、フランジ部6の内側では反応塔2から離れる向き(図中上向き)へ変形させる力F2が働く。これに伴い、ハブ部5には、配管1側を拡径させる向きの力F3が働く。
図3は、フランジ部材4に前述した力F1~F3が働いたときの各部の応力分布を示す。フランジ部材4のうち、フランジ部6の反応塔2側の領域(黒色ないし濃い色の領域)では応力が小さいが、ボルト7で締結されるフランジ部6の外周側表面、反応塔2と反対側の表面、およびハブ部5と配管1との溶接部分など(白色ないし薄い色の領域)では、応力が大きくなる。
なかでも、ハブ部5と配管1との溶接部分では、薄い色(応力が大きい)がハブ部5の外側面から内側面まで達しており、ハブ部5の配管1側を拡径させる力F3により周方向に拡張され、図4に示すクラックCrを生じるとともに、クラックCrが材の表面から内部まで達する可能性がある。
このような既存のフランジ部材4に対し、以下の第1実施形態および第2実施形態に示す本発明に基づくフランジ部材10,20を用いることで、応力集中を緩和することができる。
〔第1実施形態〕
図5および図6には、本発明の第1実施形態が示されている。
図5において、配管1、塔槽類である反応塔2、開口部3およびボルト7は、図1および図2のフランジ部材4で説明した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施形態のフランジ部材10(本発明の大型異径配管フランジ)は、配管1に溶接されるハブ部11と、反応塔2に接続されるフランジ部12と、を有する。
フランジ部12は、既存の規格に基づいて形成された円板状の部材であり、その外周縁に沿って多数のボルト孔を有し、このボルト孔を挿通する多数のボルト7により反応塔2の開口部3と締結可能である。
フランジ部12は、ボルト孔部分の開口部3側に薄い切欠きが形成され、ボルト7の挿通部分の内側(開口部3との間にシールが挟み込まれた部分)より内側の部分で最大厚みTfとされている。
フランジ部12は、厚みTfやボルト孔の形状や配置などが既存のフランジの規格に基づいて形成され、例えば既存のフランジ部6(図2参照)と同形状とされる。
ハブ部11は、円筒状に形成され、一端側の開口がフランジ部12の内周縁に連続されており、他端側の開口を配管1の端部に全周溶接される。
ハブ部11は、内径がフランジ部12側から配管1側まで一定であるが、外径はフランジ部12側から配管1側にかけて漸減するテーパ形状とされている。
ハブ部11は、フランジ部12側の端部から配管1側の端部までの高さHhが、フランジ部12の最大厚みTfより大きく形成されている。
ハブ部11の高さHhは、本実施形態では最大厚みTfの130%とされている。なお、ハブ部11の高さHhとしては、最大厚みTfの101~200%、なかでも120~150%とすることが好ましい。
このような本実施形態によれば、以下に述べる効果を得ることができる。
本実施形態では、ハブ部11の高さHhがフランジ部12の最大厚みTfよりも大きく形成されることで、フランジ部12からハブ部11へとハブ部11を拡張させるような力が伝達されても、フランジ部12から配管1までの距離が長く、ハブ部11における高さ方向の剛性が削減され、フランジ部12から伝達される力が分散されて応力を緩和することができる。
これにより、ハブ部11における周方向の引っ張り力が緩和でき、クラックを確実に抑制することができる。
図6は、配管1に接続されたフランジ部材10を反応塔2にボルト締結した際の応力分布を示す。
本実施形態のフランジ部材10では、応力が高い部分(白色ないし薄い色の領域)はフランジ部12の外周面ないし配管1側の表面にかけて、およびハブ部11の立ち上がり部分に見られるものの、ハブ部11は専ら応力が低い部分(黒色ないし濃い色の領域)となっており、ハブ部11と配管1との溶接部分は応力が低くなっている。
具体的には、ハブ部11と配管1との溶接部分での応力は、規格に基づく図2のフランジ部材4に対して20~10%程度まで減少している。
従って、既存のフランジ部材4(図2参照)で生じていたような、ハブ部5の表裏を貫通するような応力集中(図3参照)が緩和され、同部分におけるクラックCr(図4参照)を抑制することができる。
本実施形態では、フランジ部12は、その厚みTfやボルト締結用の形状を含めて既存のフランジの規格に基づいて形成した。このため、反応塔2の開口部3が既存の規格に基づいたものであっても、確実かつ円滑に接続できる。
〔第2実施形態〕
図7には、本発明の第2実施形態が示されている。
図7において、配管1、塔槽類である反応塔2、開口部3およびボルト7は、図1および図2のフランジ部材4で説明した通りであり、重複する説明は省略する。
本実施形態のフランジ部材20(本発明の大型異径配管フランジ)は、配管1に溶接されるハブ部21と、反応塔2に接続されるフランジ部22と、を有する。
本実施形態において、ハブ部21は、前述した第1実施形態のハブ部11(図5参照)と同様であり、重複する説明は省略し、以下には相違する部分について説明する。
本実施形態において、フランジ部22は、開口部3にボルト締結される外周部23と、外周部23の内側に連続しかつハブ部21に連続する内周部24とを有する。
外周部23は、フランジ部22の外周に沿った矩形断面のリング状部分であり、その外周縁に沿って多数のボルト孔を有し、このボルト孔を挿通する多数のボルト7により反応塔2の開口部3と締結可能である。
外周部23の厚さは、ボルト7の挿通部分の内側の開口部3との間にシールが挟み込まれた部分で最大厚みTfとされている。
外周部23は、厚みTfやボルト孔の形状や配置などが既存のフランジの規格に基づいて形成され、例えば既存のフランジ部6(図2参照)の外周部と同形状とされる。
内周部24は、フランジ部22の外周部23よりも内側の部分であり、外周部23の内周から径方向内向きに延び、配管1側に向けて立ち上がり、ハブ部21に連続している。
内周部24の厚さは、配管1側に向けて立ち上がるまでの部分が一定厚さとされ、その厚さは厚みTiである。厚みTiは、外周部23の厚みTfの約57%とされている。
内周部24の反応塔2側の表面は、外周部23の同側表面と同一平面とされている。一方、内周部24の配管1側の表面と外周部23の同側表面との間には段差25が形成されている。この段差25により、内周部24の厚みTiは外周部23の厚みTfより小さく形成されている。
段差25の入り隅(段差25と内周部24の配管1側の表面で挟まれた凹状の角)には、所定の曲率の円弧状部26が形成されている。
内周部24とハブ部21との連続部分の入り隅にも、所定の曲率の円弧状部27が形成されている。
このような本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるほか、以下に述べる効果を得ることができる。
本実施形態では、外周部23の表面と内周部24の表面との間に段差25を設けた。このため、内周部24の厚みを、段差25の分だけ外周部23よりも薄くできる。これにより、内周部24の最小厚みTiが外周部23の最大厚みTfよりも小さくできる。
その結果、内周部24つまり外周部23からハブ部21に至る領域の剛性が削減され、外周部23からハブ部21に伝達される力を緩和することができる。
これにより、ハブ部21における周方向の引っ張り力を更に緩和でき、ハブ部21におけるクラックを一層確実に抑制することができる。
なお、前述した第2実施形態では、配管1側では内周部24と外周部23との間に段差25があり、反応塔2側では同一平面とし、その結果、内周部24が外周部23に対して反応塔2側に偏っている配置とした。ただし、内周部24の外周部23に対する配置は変更してよく、反応塔2側に段差があり、配管1側が同一平面であるもの(内周部24が外周部23の配管1側に偏っている配置)、および、配管1側および反応塔2側にそれぞれ段差があるもの(内周部24が外周部23の厚みの中間位置に連続している)、としてもよい。
本実施形態では、段差25の入り隅部分に断面円弧状の円弧状部26を形成した。このため、段差25の入り隅部分における応力集中を緩和することができる。
また、内周部24とハブ部21との連続部分においても、入り隅部分に断面円弧状の円弧状部27を形成した。このため、内周部24とハブ部21との連続部分においても応力集中を緩和することができる。
これらの円弧状部26,27により、配管1の表面、ハブ部21の表面、および内周部24のハブ部21に連続する部分の表面が、それぞれ滑らかに連続した形状とされていた。このため、配管1からハブ部21ないし内周部24に至る部分の応力集中を緩和することができる。
〔他の実施形態〕
なお、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は本発明に含まれる。
前記各実施形態では、配管1を反応塔2の開口部3に接続する例について説明したが、配管1の接続対象としては反応塔2に限らず、貯留槽や処理容器など他の塔槽類であってもよい。
前記実施形態において、開口部3、フランジ部22および外周部23については、既存の大型異径配管用フランジの規格である「JPI-7S-43-2008 石油工業用大口径フランジ」に準拠することが好ましいが、これに限らない。
その他、本発明の実施にあたっては、各実施形態で示した具体的形状に限らず、適宜変形させてもよい。
本発明は大型異径配管フランジに利用できる。
1…配管、2…反応塔、3…開口部、4…フランジ部材、5…ハブ部、6…フランジ部、7…ボルト、10,20…フランジ部材、11,21…ハブ部、12,22…フランジ部、23…外周部、24…内周部、25…段差、26…段差の円弧状部、27…ハブ部側の円弧状部、Cr…クラック、F1,F2,F3…力。

Claims (2)

  1. 塔槽類にボルト締結されるフランジ部と、配管に溶接されるハブ部とを有する大型異径配管フランジであって、前記ハブ部の前記フランジ部から前記配管までの高さが、前記フランジ部の最大厚さよりも大きく形成されており、
    前記フランジ部は、前記塔槽類とボルト締結される外周部と、前記外周部の内側に連続しかつ前記ハブ部に連続する内周部とを有し、前記内周部の最小厚みが前記外周部の最大厚みの70%以下に形成されていることを特徴とする大型異径配管フランジ。
  2. 請求項1に記載した大型異径配管フランジにおいて、
    前記フランジ部は、厚みおよびボルト孔の形状が既存のフランジの規格に基づいて形成されていることを特徴とする大型異径配管フランジ。
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