JP7303909B2 - 鞍乗り型車両 - Google Patents

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Description

本発明は、鞍乗り型車両に関する。
本願は、2020年1月23日に、日本に出願された特願2020-009383号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
例えば特許文献1には、車体下面を覆うアンダーカバーを備えた鞍乗り型車両が開示されている。アンダーカバーの前部の上方には、ラジエータが配置されている。アンダーカバーの車幅方向内側には、ラジエータからの排風を案内する導風部が上方に向けて凹設されている。導風部は、アンダーカバーの前部から後端部に渡って延びている。導風部は、カバー下面に対して上方に変位した底面を有している。アンダーカバーの後端部には、導風部の底面よりも下方に突出する中央突出部(垂下部18g)が形成されている。この中央突出部により、導風部内に浸入した雨水等がアンダーカバーの後端部で滴下または飛散しやすく、アンダーカバーの水切り性が向上する。
特許第5142885号公報
ところで、鞍乗り型車両において、特にスクータ型車両の場合、車体後部の車幅方向外側に、原動機に係る車両部品(例えばマフラーやエアクリーナ等)が配置されることがある。この場合、アンダーカバーの後端部の車幅方向内側に中央突出部を設けるのみでは、中央突出部の車幅方向外側に回り込んだ水が前記車両部品に掛かりやすくなるという課題がある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。本発明は、車体下面を覆うアンダーカバーの後端部における水切り性を確保するとともに、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりを抑えることができる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様は、車体下面を覆うアンダーカバー(40)を備えた鞍乗り型車両(1)において、前記アンダーカバー(40)の車幅方向内側の第一範囲(H1)には、下方に突出する中央突出部(53)を備え、前記第一範囲(H1)よりも車幅方向外側の第二範囲(H2)には、下方に突出する突出部であり、前記中央突出部(53)の車幅方向外側に連なって車幅方向外側に延びる外側延出部(54,55)を備え、前記外側延出部(54,55)の外側部は、前記中央突出部(53)に対して車両前後方向の位置を変化させて設けられる。
この構成によれば、アンダーカバーの車幅方向内側の第一範囲では、アンダーカバーの下面を流れる水をカバー後部の中央突出部によって滴下または飛散させる。中央突出部の車幅方向外側に回り込んだ水は、中央突出部の車幅方向外側に連なる外側延出部によって滴下または飛散させる。外側延出部は、中央突出部に対して車両前後方向の位置を変化させる外側部を有するので、以下の効果を奏する。すなわち、中央突出部は、車幅方向内側の水切り位置を規定する。外側延出部は、中央突出部の前後方向位置とは独立して、水を滴下または飛散させる位置を設定する。このため、アンダーカバーの後端部における水切り性を確保するとともに、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりを抑えることができる。
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記外側延出部(54,55)は、前記中央突出部(53)に対して車幅方向両側に設けられている。
この構成によれば、外側延出部を車幅方向両側(左右両側)に設けることにより、以下の効果を奏する。すなわち、車幅方向外側に配置された互いに異なる車両部品に対して、それぞれ適した位置で水を滴下または飛散させることが可能となる。このため、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりをより一層抑えることができる。
本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、前記車幅方向両側の前記外側延出部(54,55)の外側部の少なくとも一方は、前記中央突出部(53)よりも後方に変位している。
この構成によれば、車両走行中に中央突出部の車幅方向外側に回り込んだ水は、中央突出部の後方に流れるが、この水を外側延出部によって受け止めやすくなる。このため、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりをより一層抑えることができる。
本発明の第四の態様は、上記第一から第三の態様の何れか一つにおいて、前記アンダーカバー(40)の前記第一範囲(H1)の上方に、ファン(44)を有するラジエータ(41)を備え、前記アンダーカバー(40)は、前記第一範囲(H1)の前部から後部に渡って、前記ラジエータ(41)からの排風を前記アンダーカバー(40)の下方に導いた後に後方に流す導風部(56)を備え、前記中央突出部(53)は、前記ラジエータ(41)のファン(44)の外径よりも車幅方向で幅広に設けられている。
この構成によれば、ラジエータからの排風は、第一範囲に備える導風部によって後方に流れる。ラジエータからの排風の幅は、概ねファンの外径に依存する。このファンの外径よりも幅広となるよう中央突出部を設けることで、ラジエータからの排風に伴う水の流れを中央突出部で受け止めやすくなる。このため、アンダーカバーの第一範囲における水切り性を良好に確保することができる。
本発明の第五の態様は、上記第四の態様において、前記導風部(56)は、車両前後方向に延びて後端が前記中央突出部(53)に接続される突形状部(84)を備えている。
この構成によれば、車両前後方向に延びる突形状部により、ラジエータからの排風を中央突出部に至るまで整流するので、以下の効果を奏する。すなわち、ラジエータからの排風を中央突出部まで円滑に流すので、ラジエータからの排風に伴う水の流れを中央突出部で受け止めやすくなる。このため、アンダーカバーの第一範囲における水切り性を良好に確保することができる。
本発明の第六の態様は、上記第四又は第五の態様において、前記外側延出部(54,55)は、前記ラジエータ(41)のファン(44)の外径よりも車幅方向外側に位置している。
この構成によれば、外側延出部の周辺では、ラジエータからの排風の影響を受け難くなる。このため、外側延出部による水の滴下または飛散をコントロールしやすくなり、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりをより一層抑えることができる。
本発明の第七の態様は、上記第一から第六の態様の何れか一つにおいて、車幅方向一側にパワーユニット(20)の排気管(37)を備え、前記車幅方向一側の前記外側延出部(54)は、前記排気管(37)の前方に位置している。
この構成によれば、車幅方向一側に配置された排気管の前方に、同じく車幅方向一側に配置された外側延出部が位置するので、排気管への水掛かりを良好に抑えることができる。
本発明の第八の態様は、上記第七の態様において、前端側が車体フレーム(11)にピボット軸(29)を介して揺動可能に支持され、後端側に後輪(4)を支持するスイングアーム(21)を備え、前記ピボット軸(29)は、前記中央突出部(53)よりも後方に位置し、前記車幅方向一側の前記外側延出部(54)は、前記ピボット軸(29)よりも後方に位置している。
この構成によれば、車幅方向一側に配置された外側延出部が、中央突出部よりも後方に位置するピボット軸よりもさらに後方に位置する。このように、外側延出部が中央突出部の後方に大きく変位して排気管に近付くので、排気管への水掛かりを良好に抑えることができる。
本発明の第九の態様は、上記第七又は第八の態様において、前記車幅方向一側に対する車幅方向他側にパワーユニット(20)の吸気口(27,28)を備え、前記車幅方向他側の前記外側延出部(55)は、前記吸気口(27,28)よりも前方に位置している。
この構成によれば、車幅方向他側に配置された吸気口の前方に、同じく車幅方向他側に配置された外側延出部が位置するので、吸気口への水掛かりを良好に抑えることができる。
本発明の第十の態様は、上記第九の態様において、前記車幅方向他側で前記吸気口(27,28)よりも前方に、車体を傾斜姿勢で支持するサイドスタンド(36)を備え、前記車幅方向他側の前記外側延出部(55)は、車両前後方向一側に凸のV字状に形成されている。
この構成によれば、車幅方向他側に配置されたサイドスタンドに対し、同じく車幅方向他側に配置された外側延出部がV字状に屈曲するので、以下の効果を奏する。すなわち、サイドスタンドの可動範囲を避けるように外側延出部を屈曲させることで、サイドスタンドと外側延出部とのクリアランスを確保することができる。
本発明によれば、車体下面を覆うアンダーカバーの後端部における水切り性を確保するとともに、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりを抑えることができる鞍乗り型車両を提供することができる。
本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。 上記自動二輪車のアンダーカバー周辺の一部断面を含む左側面図である。 上記アンダーカバー周辺の下面図である。 上記アンダーカバーの左側面図である。 上記アンダーカバーの右側面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中心を示す線CLが示されている。
<車両全体>
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車(鞍乗り型車両)1は、シート5とハンドル2との間にステップフロア9を有している。自動二輪車1は、シート5とハンドル2との間に跨ぎ空間K1を形成した低床式のスクータ型車両である。自動二輪車1は、操向輪である前輪3と、駆動輪である後輪4と、を備えている。前輪3は、左右一対のフロントフォーク6の下部に支持されている。
前輪3は、バータイプのハンドル2によって操向可能である。前輪3および左右フロントフォーク6を含む操舵系部品は、車体フレーム11の前端部のヘッドパイプ12に操向可能に支持されている。
後輪4は、スイングユニット(スイング式動力ユニット)20の後部に支持されている。自動二輪車1は、ユニットスイニング式の車両であり、後輪4と原動機(例えばエンジンE)とが一体に揺動する。
自動二輪車1は、シート5に着座した運転者が足を載せ置く左右一対のステップフロア9と、左右のステップフロア9の間で車両前後方向に延びるセンタートンネルCTと、を備えている。センタートンネルCTは、シート5の前方でシート5よりも低位置に形成されている。センタートンネルCTの上方には、運転者が車体を跨ぐ際の跨ぎ空間K1が形成されている。
自動二輪車1の車体フレーム11は、前端部に位置するヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から下後方へ延びるダウンフレーム13と、ダウンフレーム13の下端部から左右に分岐するように後方へ延びた後に上方に立ち上がるように湾曲する左右一対のロアフレーム14と、ダウンフレーム13と左右ロアフレーム14との間に渡る左右一対のサブフレーム14bと、左右サブフレーム14bに前端部を接続して後上がりに延び、前後中間部が左右ロアフレーム14の上端部に支持される左右一対のリヤフレーム15と、を備えている。本実施形態で「中間」とは、対象部位の中央のみならず中央近傍の範囲を含む意とする。左右ロアフレーム14の下後端部には、スイングユニット20を支持するピボット部14cを備えている(図2参照)。
車体フレーム11の周囲は、車体カバー18で覆われている。車体カバー18は、シート5に着座した運転者が足を載せる左右一対のステップフロア9と、左右ステップフロア9の間に配置されて前後方向に延びるセンタートンネルCTと、左右ステップフロア9およびセンタートンネルCTの前方に連なるフロントボディカバー(フロントカウル)17aと、左右ステップフロア9およびセンタートンネルCTの後方に連なるリヤボディカバー(リヤカウル)17bと、左右ステップフロア9およびセンタートンネルCTの下方に配置されて車体下面を覆うアンダーカバー40と、を備えている。
<スイングユニット>
図1、図2に示すように、スイングユニット20は、前部に配置されたエンジン(内燃機関)Eと、後部左側に配置された変速機(例えばVベルト式無段変速機)Mと、を一体に備えている。スイングユニット20の前端側は、車体フレーム11のピボット部14cに支持されている。スイングユニット20の前端側は、ピボット部14cに対し、懸架リンク33および車幅方向(左右方向)に沿うピボット軸29を介して上下揺動可能に支持されている。スイングユニット20の後端部には、緩衝装置であるリヤクッション7の下端部が連結されている。リヤクッション7の上端部は、車体フレーム11(リヤフレーム15)の後部に連結されている。左ロアフレーム14には、車体を左側に傾斜した姿勢で支持するサイドスタンド36が取り付けられている。
エンジンEは、不図示のクランクシャフトの回転中心軸線を左右方向(車幅方向)に沿わせている。エンジンEは、クランクケース23の前端部からシリンダ部24を前方に向けて略水平に(詳細にはやや前上がりに傾斜させて)突出させている。クランクケース23の左側部には、左方に張り出した後に後方に延出するリヤアームとしての変速機ケース21が一体に設けられている。
エンジンEのシリンダ部24の上部にはスロットルボディ26が接続され、シリンダ部24の下部には排気管37が接続されている。スロットルボディ26の上流側には、エアクリーナ22が接続されている。エアクリーナ22は、変速機ケース21の上方に配置されている。排気管37は、シリンダ部24の下方で適宜湾曲して後方へ延びている。排気管37は、後輪4の右側に配置されたマフラー(消音器)38に接続されている。
変速機ケース21の前端部には、吸気ダクト21aを備えている。吸気ダクト21aは、例えば車両前方に向けて開口する吸気口27を備えている。吸気ダクト21aは、変速機ケース21内に外気を導入可能とする。この外気により、変速機ケース21内の変速機Mが冷却可能となる。
エアクリーナ22の前端部には、例えば車両前方に向けて開口する吸気口28を備えている。吸気口28は、吸気ダクト21aの上方に配置され、例えば車両前方に向けて開口している。
アンダーカバー40の上方側には、エンジンE冷却用のラジエータ41が配置されている。ラジエータ41は、エンジンEの冷却装置の放熱部である。ラジエータ41は、平面視矩形状の板状をなしている。ラジエータ41は、厚さ方向を前上がりに傾斜させた姿勢で配置されている。ラジエータ41は、例えば後面側にファン44を備えている。ファン44は、例えば電動の軸流ファンであり、ファン44の回転によりコアの前方から後方へ外気が流通する。これにより、ラジエータ41を流れる冷却水が冷却されてエンジンEの冷却に供される。
<アンダーカバー>
図2、図3に示すように、アンダーカバー40は、車幅方向で左右ロアフレーム14に渡る範囲を下方から覆っている。アンダーカバー40は、後述するダクト部52および左右側部57b,57cを除き、略水平な板状をなしている。アンダーカバー40におけるダクト部52および左右側部57b,57cを除く部位は、路面に対向しかつ路面と略水平なカバー下面部57を構成している。アンダーカバー40は、左右ロアフレーム14の下方に配置され、左右ロアフレーム14等を下方から覆っている。アンダーカバー40は、後述する左右延長部58,59を除き、平面視で概略矩形状をなしている。
アンダーカバー40の車幅方向内側の規定範囲(以下、第一範囲H1という)は、ラジエータ41からの排風を案内する導風部56とされる。ラジエータ41は、アンダーカバー40の前部の上方(上面側)に起立姿勢で配置されている。アンダーカバー40の第一範囲H1の前部には、ラジエータ41の後面外周に沿うように上方に突出するダクト部52が形成されている。ダクト部52は、ラジエータ41の後面に対向する矩形状の開口61を形成している。開口61は、ラジエータ41の後面に沿うように形成されている。ダクト部52は、車両下方に向けて開放している。ダクト部52は、ラジエータ41の後面の後方に断面矩形状の導風路を形成している。
ダクト部52におけるカバー下面部57に対して上方に変位した底面部は、開口61の上縁部から後方へ後ろ下がりに傾斜して延びる傾斜部64とされる。傾斜部64の上部には、ラジエータ41の後面に向けて湾曲する上湾曲部64aが形成されている。傾斜部64の下部には、後方に向けて湾曲する下湾曲部64bが形成されている。傾斜部64の下端部は、例えばカバー下面部57と面一状に連なる。換言すれば、傾斜部64の下端部は、アンダーカバー40の前後中間部で終端している。図中符号65はダクト部52における側面視三角形状の左右側面部を示す。
ダクト部52の下端は、カバー下面部57上で下方に開口している。ダクト部52下端の開口62の前縁部62aは、ダクト部52前端の開口61の下縁部と一致する。ダクト部52下端の開口62の後縁部62bは、傾斜部64の下湾曲部64bの終端部と一致する。図中符号62cはダクト部52下端の開口62の左右側縁部を示す。
傾斜部64の下端部の後方には、例えばカバー下面部57に突設された車両前後方向に沿う突条(突形状部)84によって、第一範囲H1および導風部56の後部が画定されている。突条84は、例えば上方に開放するU字状の断面形状を有して車両前後方向に延びている。突条84は、車幅方向に間隔を空けて複数設けられている。隣接する突条84の間を、車両前後方向に沿う溝部として捉えてもよい。
例えばラジエータ41の後面側でダクト部52前端の開口61内には、ファン44が配置されている。ファン44は、ラジエータ41の後面の法線方向に沿う回転中心軸線を有している。第一範囲H1および導風部56は、ラジエータ41のファン44の外径D1よりも車幅方向で幅広に設けられている。これにより、導風部56がファン44からの排風を案内しやすくなる。ファン44は、ラジエータ41の前面側に配置されてもよい。導風部56は、アンダーカバー40の前部から後端部に渡って形成されている。アンダーカバー40は、第一範囲H1の後部において、カバー下面部57に対して上方に凹んだ導風部56を形成してもよい。
アンダーカバー40は、第一範囲H1の後端部において、下方に突出する中央突出部53を備えている。中央突出部53は、第一範囲H1の下面側(導風部56)を流れる水を、カバー後端部において滴下または飛散させるよう作用する。中央突出部53は、前上がりに傾斜する前傾斜部53aと、後上がりに傾斜する後傾斜部53bと、を有している。中央突出部53は、V字状の断面形状を有して車幅方向に延びている。図中符号72は中央突出部53の突出稜線部(前後傾斜部53a,53b間の稜線部、車両前方に臨む端縁部)を示す。第一範囲H1の下面側を流れる水は、中央突出部53の突出稜線部72に至り、突出稜線部72から後下方へ滴下または飛散する。
中央突出部53は、ラジエータ41のファン44の外径D1よりも車幅方向で幅広に設けられている。これにより、中央突出部53がファン44からの排風に伴う水の流れを受け止めやすくなる。中央突出部には、複数の突条84の後端が突き当たって接続されている。これにより、中央突出部53までの風の流れを整流して中央突出部53の作用を高めている。
アンダーカバー40において、第一範囲H1よりも車幅方向外側(左右両側)の第二範囲H2には、それぞれ中央突出部53の車幅方向外側に連なって車幅方向外側に延びる左右の外側延出部54,55を備えている。外側延出部54,55は、それぞれカバー下面部57の下方に突出するリブ状の突出部であり、中央突出部53の車幅方向外側に回り込んだ水を滴下または飛散させるよう作用する。外側延出部54,55は、ラジエータ41のファン44の外径D1よりも車幅方向外側に位置している。これにより、外側延出部54,55の周辺ではファン44からの排風の影響を受け難くなり、水の滴下または飛散をコントロールしやすくなる。
アンダーカバー40は、第一範囲H1の後端部よりも後方へ延びる左右延長部58,59を備えている。アンダーカバー40におけるカバー下面部57よりも車幅方向外側の左右側部57b,57cは、それぞれ左右外側ほど上側に位置するように傾斜して立ち上がっている。左右側部57b,57cは、それぞれ左右延長部58,59を含むカバー前後端に渡る範囲に設けられている。
図4を併せて参照し、左延出部54は、第一左延出部75と、第二左延出部76と、第三左延出部77と、を備えている。
第一左延出部75は、中央突出部53の後端部の左側方において、中央突出部53と左延長部58との間で車幅方向に延びている。
第二左延出部76は、第一左延出部75の左端部から車幅方向外側ほど前方に位置するように下面視で傾斜して延びている。第二左延出部76は、カバー下面部57からカバー左側部57bに回り込むように延びている。
第三左延出部77は、第二左延出部76の左端部から車幅方向外側ほど後方に位置するように下面視で傾斜して延びている。第二左延出部76および第三左延出部77は、カバー左側部57bにおいてカバー外側に突出している。
第二左延出部76および第三左延出部77は、下面視で車両前方に凸のV字状に折れ曲がって連なった態様をなしている。
左延出部54の車幅方向外側部(第三左延出部77)は、中央突出部53の突出稜線部72に対して、後方にオフセットした位置(車両前後方向で異なる位置)に設けられている。第三左延出部77は、突出稜線部72に対して、下面視で異なる形状(傾斜形状)に設けられている。第二左延出部76も同様に、中央突出部53の突出稜線部72に対して、後方にオフセットし、かつ下面視で異なる形状(傾斜形状)に設けられている。第一左延出部75は、中央突出部53の突出稜線部72に対して、後方にオフセットして設けられている。
左延出部54は、車体左側に備えられた変速機ケース21およびエアクリーナ22の各吸気口27,28よりも前方に位置している。これら車両機能部品の各吸気口27,28に対し、左延出部54の少なくとも外側部(第三左延出部77)の位置および形状を適宜設定することで、各吸気口27,28に対する水掛かりが抑えやすくなる。車体左側にはサイドスタンド36が配置されており、このサイドスタンド36の基端部(可動部)に対する水掛かりも、サイドスタンド36の前方に位置する左延出部54によって抑制される。左延出部54は、あたかもサイドスタンド36の基端部を避けるように、下面視でV字状の屈曲形状をなしている。
図5を併せて参照し、右延出部55は、第一右延出部81と、第二右延出部82と、第三右延出部83と、を備えている。
第一右延出部81は、中央突出部53の後端部の右側方において、中央突出部53と右延長部59との間で車幅方向に延びている。
第二右延出部82は、第一右延出部81の右端部から右延長部59の車幅方向内側の内側縁に沿って後方へ延びている。
第三右延出部83は、第二右延出部82の後端部から車幅方向外側へ延びている。第三右延出部83は、カバー下面部57からカバー右側部57cに回り込むように延びている。第三右延出部83は、カバー右側部57cにおいてカバー外側に突出している。
右延出部55は、第一右延出部81、第二右延出部82および第三右延出部83が下面しでクランク状に折れ曲がって連なった態様をなしている。
右延出部55の車幅方向外側部(第三右延出部83)は、中央突出部53の突出稜線部72に対して、後方にオフセットした位置(車両前後方向で異なる位置)に設けられている。第一右延出部81も同様に、中央突出部53の突出稜線部72に対して、後方にオフセットして設けられている。第二右延出部82は、中央突出部53の突出稜線部72よりも後方に位置し、かつ中央突出部53の突出稜線部72と直交する直線形状に設けられている。
右延出部55は、車体右側に備えられた排気管37よりも前方に位置している(図2参照)。この排気管37に対し、右延出部55の少なくとも外側部(第三右延出部83)の位置および形状を適宜設定することで、排気管37に対する水掛かりが抑えやすくなる。右延出部55は、中央突出部53のよりも後方に位置するピボット軸29よりもさらに後方まで延びている。第三右延出部83は、ピボット軸29よりも後方に位置している。これにより、第三右延出部83が可及的に排気管37に近付き、排気管37への水掛かりを制御しやすくなる。
以上説明したように、上記実施形態における鞍乗り型車両は、車体下面を覆うアンダーカバー40を備えた自動二輪車1において、前記アンダーカバー40の車幅方向内側の第一範囲H1の後部には、下方に突出する中央突出部53を備えている。前記第一範囲H1よりも車幅方向外側の第二範囲H2には、下方に突出する突出部であり、前記中央突出部53の車幅方向外側に連なって車幅方向外側に延びる左右の外側延出部54,55を備えている。前記外側延出部54,55の外側部(第三左延出部77、第三右延出部83)は、前記中央突出部53の突出稜線部72に対して車両前後方向の位置を変化させて設けられる。
この構成によれば、アンダーカバー40の車幅方向内側の第一範囲H1では、アンダーカバー40の下面を流れる水をカバー後部の中央突出部53によって滴下または飛散させる。中央突出部53の車幅方向外側に回り込んだ水は、中央突出部53の車幅方向外側に連なる外側延出部54,55によって滴下または飛散させる。外側延出部54,55は、中央突出部53に対して車両前後方向の位置を変化させる外側部を有するので、以下の効果を奏する。すなわち、中央突出部53は、車幅方向内側の水切り位置を規定する。外側延出部54,55は、中央突出部53の前後方向位置とは独立して、水を滴下または飛散させる位置を設定する。このため、アンダーカバー40の後端部における水切り性を確保するとともに、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりを抑えることができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前記外側延出部54,55は、前記中央突出部53に対して車幅方向両側に設けられている。
この構成によれば、外側延出部54,55を車幅方向両側(左右両側)に設けることにより、以下の効果を奏する。すなわち、車幅方向外側に配置された互いに異なる車両部品に対して、それぞれ適した位置で水を滴下または飛散させることが可能となる。このため、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりをより一層抑えることができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前記車幅方向両側の前記外側延出部54,55の外側部は、前記中央突出部53よりも後方に変位している。
この構成によれば、車両走行中に中央突出部53の車幅方向外側に回り込んだ水は、中央突出部53の後方に流れるが、この水を外側延出部54,55によって受け止めやすくなる。このため、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりをより一層抑えることができる。実施形態では、左右外側延出部54,55の外側部(第三左延出部77、第三右延出部83)の両方が中央突出部53よりも後方に変位しているが、一方のみが後方に変位する構成でもよい。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前記アンダーカバー40の前記第一範囲H1の前部の上方に、ファン44を有するラジエータ41を備えている。前記アンダーカバー40は、前記第一範囲H1の前部から後部に渡って、前記ラジエータ41からの排風を前記アンダーカバー40の下方に導いた後に後方に流す導風部56を備えている。前記中央突出部53は、前記ラジエータ41のファン44の外径D1よりも車幅方向で幅広に設けられている。
この構成によれば、ラジエータ41からの排風は、第一範囲H1に備える導風部56によって後方に流れる。ラジエータ41からの排風の幅は、概ねファンの外径D1に依存する。このファンの外径D1よりも幅広となるよう中央突出部53を設けることで、ラジエータ41からの排風に伴う水の流れを中央突出部53で受け止めやすくなる。このため、アンダーカバー40の第一範囲H1における水切り性を良好に確保することができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前記導風部56は、車両前後方向に延びて後端が前記中央突出部53に接続される突条84を備えている。
この構成によれば、車両前後方向に延びる突条84により、ラジエータ41からの排風を中央突出部53に至るまで整流するので、以下の効果を奏する。すなわち、ラジエータ41からの排風を中央突出部53まで円滑に流すので、ラジエータ41からの排風に伴う水の流れを中央突出部53で受け止めやすくなる。このため、アンダーカバー40の第一範囲H1における水切り性を良好に確保することができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前記外側延出部54,55は、前記ラジエータ41のファン44の外径D1よりも車幅方向外側に位置している。
この構成によれば、外側延出部54,55の周辺では、ラジエータ41からの排風の影響を受け難くなる。このため、外側延出部54,55による水の滴下または飛散をコントロールしやすくなり、車幅方向外側に配置された車両部品への水掛かりをより一層抑えることができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、車幅方向一側(左側)にパワーユニット20の排気管37を備えている。前記車幅方向一側の前記左外側延出部54は、前記排気管37の前方に位置している。
この構成によれば、車幅方向一側に配置された排気管37の前方に、同じく車幅方向一側に配置された外側延出部54が位置するので、排気管37への水掛かりを良好に抑えることができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前端側が車体フレーム11にピボット軸29を介して揺動可能に支持され、後端側に後輪4を支持するスイングアーム(変速機ケース21)を備えている。前記ピボット軸29は、前記中央突出部53よりも後方に位置し、前記車幅方向一側の前記左外側延出部54は、前記ピボット軸29よりも後方に位置している。
この構成によれば、車幅方向一側に配置された外側延出部54が、中央突出部53よりも後方に位置するピボット軸29よりもさらに後方に位置する。このように、外側延出部54が中央突出部53の後方に大きく変位して排気管37に近付くので、排気管37への水掛かりを良好に抑えることができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前記車幅方向一側に対する車幅方向他側(右側)にパワーユニット20の吸気口27,28を備えている。前記車幅方向他側の前記右外側延出部55は、前記吸気口27,28よりも前方に位置している。
この構成によれば、車幅方向他側に配置された吸気口27,28の前方に、同じく車幅方向他側に配置された外側延出部55が位置する。このため、吸気口27,28への水掛かりを良好に抑えることができる。
上記実施形態における鞍乗り型車両において、前記車幅方向他側で前記吸気口27,28よりも前方に、車体を傾斜姿勢で支持するサイドスタンド36を備えている。前記車幅方向他側の前記外側延出部55は、車両前後方向一側に凸のV字状に形成されている。
この構成によれば、車幅方向他側に配置されたサイドスタンド36に対し、同じく車幅方向他側に配置された外側延出部55がV字状に屈曲するので、以下の効果を奏する。すなわち、サイドスタンド36の可動範囲を避けるように外側延出部55を屈曲させることで、サイドスタンド36と外側延出部55とのクリアランスを確保することができる。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、実施形態のアンダーカバー40は合成樹脂等により一体形成されるが、これに限らず、複数部品からなるものであったり分割式であってもよい。
本発明を適用する車両には、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
4 後輪
11 車体フレーム
20 パワーユニット
21 変速機ケース(スイングアーム)
27,28 吸気口
29 ピボット軸
36 サイドスタンド
37 排気管
40 アンダーカバー
41 ラジエータ
44 ファン
53 中央突出部
54,55 外側延出部
56 導風部
84 突条(突形状部)
D1 外径
H1 第一範囲
H2 第二範囲

Claims (10)

  1. 車体下面を覆うアンダーカバー(40)を備えた鞍乗り型車両(1)において、
    前記アンダーカバー(40)の車幅方向内側の第一範囲(H1)には、下方に突出する中央突出部(53)を備え、
    前記第一範囲(H1)よりも車幅方向外側の第二範囲(H2)には、下方に突出する突出部であり、前記中央突出部(53)の車幅方向外側に連なって車幅方向外側に延びる外側延出部(54,55)を備え、
    前記外側延出部(54,55)の外側部は、前記中央突出部(53)に対して車両前後方向の位置を変化させて設けられる鞍乗り型車両。
  2. 前記外側延出部(54,55)は、前記中央突出部(53)に対して車幅方向両側に設けられている請求項1に記載の鞍乗り型車両。
  3. 前記車幅方向両側の前記外側延出部(54,55)の外側部の少なくとも一方は、前記中央突出部(53)よりも後方に変位している請求項2に記載の鞍乗り型車両。
  4. 前記アンダーカバー(40)の前記第一範囲(H1)の上方に、ファン(44)を有するラジエータ(41)を備え、
    前記アンダーカバー(40)は、前記第一範囲(H1)の前部から後部に渡って、前記ラジエータ(41)からの排風を前記アンダーカバー(40)の下方に導いた後に後方に流す導風部(56)を備え、
    前記中央突出部(53)は、前記ラジエータ(41)のファン(44)の外径よりも車幅方向で幅広に設けられている請求項1から3の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
  5. 前記導風部(56)は、車両前後方向に延びて後端が前記中央突出部(53)に接続される突形状部(84)を備えている請求項4に記載の鞍乗り型車両。
  6. 前記外側延出部(54,55)は、前記ラジエータ(41)のファン(44)の外径よりも車幅方向外側に位置している請求項4又は5に記載の鞍乗り型車両。
  7. 車幅方向一側にパワーユニット(20)の排気管(37)を備え、
    前記車幅方向一側の前記外側延出部(54)は、前記排気管(37)の前方に位置している請求項1から6の何れか一項に記載の鞍乗り型車両。
  8. 前端側が車体フレーム(11)にピボット軸(29)を介して揺動可能に支持され、後端側に後輪(4)を支持するスイングアーム(21)を備え、
    前記ピボット軸(29)は、前記中央突出部(53)よりも後方に位置し、
    前記車幅方向一側の前記外側延出部(54)は、前記ピボット軸(29)よりも後方に位置している請求項7に記載の鞍乗り型車両。
  9. 前記車幅方向一側に対する車幅方向他側にパワーユニット(20)の吸気口(27,28)を備え、
    前記車幅方向他側の前記外側延出部(55)は、前記吸気口(27,28)よりも前方に位置している請求項7又は8に記載の鞍乗り型車両。
  10. 前記車幅方向他側で前記吸気口(27,28)よりも前方に、車体を傾斜姿勢で支持するサイドスタンド(36)を備え、
    前記車幅方向他側の前記外側延出部(55)は、車両前後方向一側に凸のV字状に形成されている請求項9に記載の鞍乗り型車両。
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