以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、(a)ポリウレタンを含む。本発明に含まれる(a)ポリウレタンは、ポリオール化合物とイソシアネート化合物と反応させてなるウレタン結合を有する化合物が好ましい。前記(a)ポリウレタンに含まれるウレタン結合は、水素結合によりハードセグメントを形成し、インキ被膜に強靱性を付与することができると共に、プラスチックフィルムなどの表面とも強固な結合をすることで良好な密着性を付与することができる。また、前記(a)ポリウレタン中に含まれるポリオールは柔軟な構造を有するためソフトセグメントを形成し、インキ被膜に柔軟性を付与することができる。
本発明に含まれる(a)ポリウレタンに用いるポリオール化合物は、特に限定されるものではないが、耐熱性や耐水性を向上できる点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、またはポリカーボネートポリオールを含むことが好ましい。これらのポリオールは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリウレタン中に剛直な結合を有すると分子鎖の絡み合いが抑制されインキの粘性が低減し、インキの流動性が向上することで印刷時に良好な転移性を示すことができるため、エステル結合およびカーボネート結合を有することが好ましい。特に剛直なカーボネート結合を有することが好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸化合物と多価アルコール化合物との反応で得ることができる。多価カルボン酸化合物の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸、およびトリメリット酸等のポリカルボン酸、並びにそれらの酸エステル、およびそれらの酸無水物等が挙げられる。多価アルコール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、およびペンタエリスリトール等の低分子アルコール化合物、並びにモノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール化合物等が挙げられる。前記多価カルボン酸化合物および多価アルコール化合物のうちの一種以上を用いることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記のようなポリエステルポリオールの合成に用いられるものと同様の多価アルコール化合物とホスゲンとの脱塩酸反応で得られるもの、また、前記多価アルコール化合物と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオールの合成に用いられるものと同様の多価アルコール化合物等を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、並びにテトラヒドロフラン等を開環重合させたポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール等が挙げられる。さらに、前述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤とするポリエステルエーテルポリオールやポリカーボネートエーテルポリオールが挙げられる。
本発明の(a)ポリウレタンは水溶性であることが好ましい。水溶性ポリウレタンとしては、特に限定するものではないが、ポリウレタンに種々の方法で親水性基を付与したものである。親水性基としては、例えば、エチレンオキサイド骨格、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基などが挙げられる。前記親水性基は、インキ中で前記(a)ポリウレタン中のウレタン結合と強固に相互作用するため、熱水処理などに対する良好な耐性を得ることができる。また、インキ中で良好な顔料の分散性を備えることができインキの流動性が向上する。特にカルボキシル基、スルホン酸基またはヒドロキシル基から選ばれる1種以上の官能基を有することが好ましい。
カルボキシル基、スルホン酸基およびヒドロキシル基から選ばれる1種以上の官能基を有する(a)ポリウレタンに用いるポリオール化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が導入されたポリオールを好ましく使用できる。これらのカルボキシル基、スルホン酸基およびヒドロキシル基から選ばれる1種以上の官能基を有するポリオール化合物は、アンモニア、トリエチルアミン等の有機アミンやNa、K、Li、Ca等の金属塩基から選ばれる少なくとも1種によって中和した後、プレポリマーの原料として用いることもできる。
(a)ポリウレタンに用いるイソシアネート化合物は、特に限定されるものではないが、ジイソシアネートを用いるのが好ましい。中でも、熱による黄変等を抑制できる点で、脂肪族または脂環式構造のジイソシアネートを用いるのがより好ましい。前記脂肪族または脂環式構造のジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、トルエンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネートが特に好ましく用いることができる。脂肪族または脂環式構造のジイソシアネートは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(a)ポリウレタン中のウレタン結合分率はプラスチックフィルムなどの表面と強固な結合をすることで良好な密着性を付与することができるため、および剛直なウレタン結合により分子鎖の絡み合いを抑制しインキの粘性を低減できるため、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、18質量%以上がさらに好ましい。また、その他のインキ組成物との相溶性を向上させインキ被膜を柔軟化し密着性を付与することができるために、25質量%以下が好ましく、23質量%以下がより好ましく、21質量%以下がさらに好ましい。なお、前記(a)ポリウレタンにおけるウレタン結合の存在割合は、核磁気共鳴(NMR)測定を行い、得ることができる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、(b)重合性モノマーを含む。(b)重合性モノマーを含むことで平版印刷に必要な粘性やレベリング性などのインキ物性を調整することができる。また、活性エネルギー線の照射により(b)重合性モノマーが共有結合性の反応を引き起こすため、インキ被膜が硬化することで熱水処理などに対する耐性を向上させることができる。
前記(a)ポリウレタンの重量平均分子量は、このインキによって印刷され、硬化したインキ被膜の耐熱水性が向上するため500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。また、インキの粘性が保たれ流動性が良好となるため、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましい。なお、前記樹脂の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算で測定を行い、得ることができる。
前記(a)ポリウレタンの含有量は、プラスチックフィルムなどの表面と強固な結合をすることで良好な密着性を付与することができるために、本発明のインキに対して0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、0.9質量%以上がさらに好ましく、1質量%がさらに好ましい。また、その他のインキ組成物との相溶性を向上させインキ被膜を柔軟化し密着性を付与することができるために、20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、また4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは(b)重合性モノマーを含有することにより、含有成分同士が多く架橋し、優れた密着性とその熱水処理耐性を得ることができる。前記(b)重合性モノマーの重量平均分子量は、インキ被膜を柔軟化し密着性を付与することができるようにするために、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましい。また、インキの粘性が保たれ流動性が良好となるため1,000以下が好ましく、700以下がより好ましく、500以下がさらに好ましい。なお、重量平均分子量は、(b)重合性モノマーの化学構造がわかっている場合は、そのものの分子量であり、また(b)重合性モノマーが分子量分布をもっているときは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算で測定を行い、得ることができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキに対する前記(b)重合性モノマーの含有量としては、10質量%以上含むと、インキ被膜の硬化性が向上し熱水処理耐性が向上するため好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、インキの粘度を保ち良好な耐地汚れ性を示すために、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
(b)重合性モノマーは、含有成分同士を多く架橋させる点から多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、熱水処理耐性の点から親水性基を有する多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを含む総称である。親水性基としては、例えば、エチレンオキサイド骨格、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基、などが挙げられる。前記親水性基は、インキ中で前記(a)ポリウレタン中のウレタン結合と相互作用するため、熱水処理などに対する良好な耐性を得ることができる。また、インキ中で良好な顔料の分散性を備えることができインキの流動性を向上する。
前記の親水性基を有する多官能(メタ)アクリレートは、インキ被膜の熱水処理耐性、およびインキの流動性を向上することができるため、本発明のインキに対して10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、極性基同士によるインキの粘性上昇を抑制し流動性を良好に保つことができるため、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
前記親水性基を有する多官能(メタ)アクリレートのうち、特に親水性が高いヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの水酸基価は、インキ被膜の熱水耐性、およびインキの流動性が向上することから50mgKOH/g以上が好ましく、75mgKOH/g以上がより好ましく、100mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、前記水酸基価は、極性基同士によるインキの粘性上昇を抑制し流動性を良好に保つことができるため、200mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましく、160mgKOH/g以下がさらに好ましい。
前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、イソシアヌル酸、およびジペンタエリスリトール等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、およびこれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。具体的には、トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート、グリセリンのジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。さらにこれらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、ブチレンオキシド付加体、テトラメチレンオキシド付加体等が挙げられる。上記の中でも、本発明のインキが顔料分散性、流動性に優れるようになることから、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ中に含まれる(b)重合性モノマーは、脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの添加により、インキの粘性、および表面自由エネルギーが低下するため、基材へのインキ転移性、および密着性が向上する。中でも、基材へのインキ転移性を向上させるために、炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
前記の脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線照射による硬化時の体積収縮が小さくなり、基材に対する密着性が向上するため、脂環骨格を有することが好ましい。前記脂環骨格は、より剛直で、硬化時の体積収縮が小さく、硬化皮膜の耐傷性などの膜物性が良好となることから、縮環骨格であることがより好ましい。前記脂環骨格としては、ノルボルナン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格などが挙げられ、特にトリシクロデカン骨格が好ましい。
前記の脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートは、もし添加する場合には、基材へのインキ転移性、および密着性が向上するために、本発明のインキに対して1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、インキの粘度低下を抑制し耐地汚れ性を保つために、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線への硬化感度が良好となり、硬化膜の強度を高め密着性が向上することから、(メタ)アクリレート由来構造を分子中に2つ以上有することが好ましい。
前記炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートは、基材へのインキ転移性を向上させるために、炭素数は6以上が好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上である。後述する(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂、並びに親水性の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性の低下、インキの粘性の上昇、およびインキ転移性の低下を抑制するために、炭素数は18以下が好ましく、より好ましくは16以下であり、さらに好ましくは14以下である。
親水性の多官能(メタ)アクリレート全量を基準(1.00質量部)とした際の、炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの割合は、親水性の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性を適度に保ち、インキ転移性を向上させるために、0.02質量部以上が好ましく、0.04質量部以上がより好ましく、0.06質量部以上がさらに好ましい。また、同様の理由から、親水性の多官能(メタ)アクリレート全量を基準(1.00質量部)とした際の、炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの割合は、0.30質量部以下が好ましく、0.20質量部以下がより好ましく、0.15質量部以下がさらに好ましく、0.10質量部以下がさらに好ましい。
(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂全量を基準(1.00質量部)とした際の、炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの割合は、親水性基を有する樹脂との相溶性を適度に保ち、インキ転移性を向上させるために、0.10質量部以上が好ましく、0.15質量部以上がより好ましく、0.20質量部以上がさらに好ましい。また、同様の理由から、(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂全量を基準(1.00質量部)とした際の、炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの割合は、0.60質量部以下が好ましく、0.45質量部以下がより好ましく、0.30質量部以下がさらに好ましい。
前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、単官能では炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートとして、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。脂環骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナン-2-メタノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能では、脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートとして、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11-ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13-トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,15-ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,17-ヘプタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,18-オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、4-メチル-1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、4-エチル-1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また炭素数6から18の脂肪族骨格を繰り返し単位として有するポリエステルジ(メタ)アクリレートでもよい。これらを2種以上含んでもよい。上記の中でも、硬化時の体積収縮が小さく、縮合環骨格を有し、かつ2官能であるトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。また、(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂、並びに親水性の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性を適度に保ち、インキ転写性を向上させるために、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートも特に好ましい。なおここで官能数は、(メタ)アクリレート由来構造の数をいう。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂を含むことが好ましい。前記樹脂のエチレン性不飽和基は、活性エネルギー線の照射時に、前記(b)重合性モノマー中に含まれる重合性基との反応により分子間に共有結合を形成することで、インキ被膜の熱水処理等に対する耐性が向上する。また、前記親水性基は、前記(a)ポリウレタン中に含まれるウレタン結合やカルボキシル基、スルホン酸基またはヒドロキシル基などと強固に相互作用するため、インキ被膜の熱水処理等に対する耐性が著しく向上する。また、インキ中の親水性基間で相互作用し、インキの凝集力が高くなることで、非画線部に対するインキ反発性が向上することから、結果として耐地汚れ性も向上する。
前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の親水性基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが好ましく挙げられる。中でもウレタン結合との相互作用が良好な、カルボキシル基およびヒドロキシル基を含むことが特に好ましい。
前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の酸価は、インキ被膜の熱水処理耐性、インキの顔料分散性が良好で、かつ耐地汚れ性(anti-scumming)が向上することから30mgKOH/g以上が好ましく、60mgKOH/g以上がより好ましく、75mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートに対する溶解性を示し、極性基同士によるインキの粘性上昇を抑制できるため、250mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。なお、前記樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992の試験方法第3.1項の中和滴定法に準拠して求めることができる。
前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂は、前記エチレン性不飽和基がラジカル種との反応により架橋構造を形成するため、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの活性エネルギー線に対する感度を向上する。
前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂のヨウ素価は、活性エネルギー線への硬化感度が良好となることから、0.5mol/kg以上が好ましく、1.0mol/kg以上がより好ましく、1.5mol/kg以上がさらに好ましい。また、インキの保存安定性が向上することから、3.0mol/kg以下が好ましく、2.5mol/kg以下がより好ましく、2.0mol/kg以下がさらに好ましい。エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂のヨウ素価は、エチレン性不飽和基の量により調節することができる。なお、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂のヨウ素価はJIS K 0070:1992の試験方法第6.0項に記載の方法により求めることができる。
前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の主鎖構造として、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記に挙げた樹脂由来の主鎖構造のうち、モノマー入手の容易性、低コスト、合成の容易性、インキ他成分との相溶性、顔料の分散性等の点から、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂に由来する主鎖構造が好ましく用いられる。
前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂のポリマー骨格としては、(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
上記に挙げた樹脂のうち、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂およびスチレンマレイン酸樹脂から選ばれる樹脂の骨格を有し、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂は、例えば以下の次の方法により作製できる。
アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、またはスチレンマレイン酸樹脂の原料となるモノマーと、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニルまたはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸2-(メルカプトアセトキシ)エチルなどのメルカプト基含有モノマー、(メタ)アクリルアミドt-ブチルスルホン酸などのスルホ基含有モノマー、2-(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有モノマーなどから選択されたモノマーを、ラジカル重合開始剤を用いて共重合させる。ここで親水性基を有する樹脂が得られる。
さらに親水性基を有する樹脂中の活性水素含有基であるメルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させることにより、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂が得られる。ただし、これらの方法に限定されるものではない。
また、グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジル、イソクロトン酸グリシジルなどが挙げられる。
また、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどが挙げられる。
前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の重量平均分子量は、インキ被膜の熱水処理に対する耐性および耐地汚れ性が向上するため、5,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましくは、20,000以上がさらに好ましい。また、インキの粘性上昇を抑制できるため、100,000以下が好ましく、75,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。なお、前記樹脂の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算で測定を行い、得ることができる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキに、前記(c)エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂を添加する場合には、5質量%以上50質量%以下含むことが好ましい。前記樹脂の含有量が上記範囲内にあることで、インキ被膜の熱水処理に対する耐性を良好に保つことができる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、有機顔料および/または無機顔料からなる顔料を含むことが好ましい。有機顔料の具体例としては、フタロシアニン系顔料、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、レーキ顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられ、その具体例としてはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾレッド、モノアゾレッド、モノアゾイエロー、ジスアゾレッド、ジスアゾイエロー、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンダ、イソインドリンイエロー等が挙げられる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ベンガラ、カドミウムレッド、黄鉛、亜鉛黄、紺青、群青、酸化物被覆ガラス粉末、酸化物被覆雲母、酸化物被覆金属粒子、アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、亜鉛粉、ステンレス粉、ニッケル粉、有機ベントナイト、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
透明なプラスチックフィルムの下地色として印刷するインキの場合、隠蔽性を付与する二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイト等の白色顔料が好ましい。
前記白色顔料の粒子径としては、散乱により可視光の透過率が最も低下する、200nm以上300nm以下であることが好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ中に含まれる顔料濃度は、比重が2以下の有機顔料やカーボンブラックであれば、印刷濃度を得るために、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、インキの流動性を向上し、良好な転移性を得るために、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。比重が2より大きい無機顔料であれば、印刷濃度を得るために、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、インキの流動性を向上し、良好な転移性を得るために、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、アシルホスフィンオキシド化合物を含むことが好ましい。前記アシルホスフィンオキシド化合物は、350nm以上の長波長域の光も吸収するため、紫外光を吸収あるいは反射する顔料が含まれる系においても、高い感度を有する。加えて、アシルホスフィンオキシド化合物は、いったん反応した後は光吸収が無くなるフォトブリーチング効果を有し、この効果により、優れた内部硬化性を示す。また、前記アシルホスフィンオキシド化合物は、一般に多官能(メタ)アクリレートに対する溶解性が低いため、均一にインキ中に拡散せず、結果として、添加量に見合った感度の向上が見られない場合や、アシルホスフィンオキシド化合物の析出によりインキ流動性が低下する場合がある。一方で、前記アシルホスフィンオキシド化合物は前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートに対して高相溶性を示すため、媒体中に均一に拡散し、結果として活性エネルギー線に対する感度が向上する。
前記アシルホスフィンオキシド化合物の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、ベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-4-メトキシフェニル-フェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-4-メトキシフェニル-フェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-4-メトキシフェニル-フェニル-ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジシクロヘキシル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-ジシクロヘキシル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ジシクロヘキシル-ホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド等が挙げられる。中でも入手が容易である2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシドが特に好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、350nm以上の発光に対する硬化感度が向上するため、前記アシルホスフィンオキシド化合物を1質量%以上含むことが好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、インキの保存安定性を向上し、流動性を良好に保つことができる、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、増感剤を含有することができる。増感剤の具体例としては、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,3-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6-ビス(4-ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4-ジメチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン(別名:ミヒラーケトン)、4,4-ビス(ジエチルアミノ)-ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)-イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-カルボニル-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、N-フェニル-N-エチルエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸メチル、ジエチルアミノ安息香酸エチル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3-フェニル-5-ベンゾイルチオテトラゾール、1-フェニル-5-エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。
増感剤を添加する場合、その含有量は、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが良好な感度を得られることから、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの保存安定性が向上することから、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N-ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p-t-ブチルカテコール、N-フェニルナフチルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-p-メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、その含有量は、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが良好な保存安定性を得られることから、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの0.001質量%以上が好ましく、良好な感度を得られる5質量%以下が好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、シリコーン液体、アルキル(メタ)アクリレート、植物油、植物油由来の脂肪酸エステル、炭化水素系溶媒、およびフルオロカーボンから選ばれる成分の1種類以上を含むことが好ましい。より好ましくは、シリコーン液体、アルキル(メタ)アクリレート、炭化水素系溶媒、およびフルオロカーボンから選ばれる成分の1種類以上を含むとよい。
前記成分は、水なし平版印刷版の非画線部であるシリコーンゴムへのインキ付着性を低下させる効果がある。シリコーンゴムへのインキ付着性を低下させる理由は以下のように推測される。すなわち、インキに含まれる前記成分は、シリコーンゴム表面との接触によりインキ中から拡散し、シリコーンゴム表面を薄膜状に覆う。このようにして形成された薄膜がシリコーンゴム表面へのインキの付着を阻止し、シリコーン表面の地汚れを防止すると推測される。
前記成分のうち、アルキル(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線照射時に硬化することから、インキの硬化膜の耐水性を向上させると同時に活性エネルギー線に対する感度が向上するため好ましい。前記成分の具体的な化合物は次のとおりである。
シリコーン液体としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、脂肪酸アミド変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、フルオロアルキル変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、シラノール変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、炭素数が好ましくは5~24、より好ましくは6~21であるとよい。
植物油としては、大豆油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油等が挙げられる。
植物油由来の脂肪酸エステルとしてはステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等炭素数15~20程度のアルキル主鎖を有する脂肪酸の、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル等の炭素数1~10程度のアルキルエステル等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、ポリオレフィンオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。
フルオロカーボンとしては、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ヘプタデカフルオロオクタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,4,4-オクタフルオロー2―トリフルオロメチルブタン、1,1,1,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロヘキサン等が挙げられる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、耐地汚れ性を向上させることから、上述したシリコーン液体、アルキル(メタ)アクリレート、植物油、植物油由来の脂肪酸エステル、炭化水素系溶媒、およびフルオロカーボンから選ばれる1種類以上の成分を0.5質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは、1質量%以上であり、さらに好ましくは、2質量%以上である。また、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの保存安定性を向上させることができることから、10質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、顔料の分散性を高めるために顔料分散剤を含むことが好ましい。使用する顔料の密度、粒子径、表面積等によって最適な含有量は異なるが、前記顔料分散剤は前記顔料の表面に作用し、前記顔料の凝集を抑制する。これにより顔料分散性が高まり、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの流動性が向上する。
前記顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti-Terra-U」、「Anti-Terra-203/204」、「Disperbyk-101、102、103、106、107、110、111、115、118、130、140、142、145、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、184、185、187、190、191、192、193、199、2000、2001、2008、2009、2010、2012、2013、2015、2022、2025、2026、2050、2055、2060、2061、2070、2096、2150、2151、2152、2155、2163、2164、2200、2205、9067、9076」、「Bykumen」、「BYK-P104、P105」、「P104S、240S」、「Lactimon」が挙げられる。
なお「Bykumen」および「Lactimon」は登録商標である。
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100、150、400、401、402、403、450、451、452、453、745」、共栄社化学社製「フローレン TG-710、「フローノンSH-290、SP-1000」、「ポリフローNo.50E、No.300」、楠本化成社製「ディスパロン 325、KS-860、873SN、874、1401、#2150、#7004」が挙げられる。
なお「EFKA」、「フローレン」、「フローノン」、「ディスパロン」は登録商標である。
さらに、花王社製「デモールRN、N、MS、C、SN-B、EP」、「ホモゲノールL-18、「エマルゲン920、930、931、935、950、985」、「アセタミン24、86」、アビシア社製「ソルスパース5000、13940、17000、24000GR、32000、33000、39000、41000、53000」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、822、824」等が挙げられる。
なお、「デモール」、「ホモゲノール」、「エマルゲン」、「アセタミン」、 「ソルスパース」および 「アジスパー」は登録商標である。
前記顔料分散剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの流動性が向上することから、前記顔料に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキには、必要に応じてワックス、消泡剤、転移性向上剤、レベリング剤等の添加剤を使用することが可能である。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの粘度は、コーンプレート型回転式粘度計を用い、35℃において測定される。回転数0.5rpmにおける粘度(A)は、5Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましい。
前記粘度(A)が5Pa・s以上であることによって、インキが良好なローラー間の転移性を示す傾向にある。より好ましくは、10Pa・s以上であり、さらに好ましくは20Pa・s以上である。また、前記粘度(A)が100Pa・s以下であることによって、前記インキの流動性が良好となり、特に白インキであれば、隠蔽性が向上する。より好ましくは80Pa・s以下であり、さらに好ましくは60Pa・s以下である。
回転数50rpmにおける粘度(B)は、10Pa・s以上40Pa・s以下であることが好ましい。前記粘度(B)が、10Pa・s以上であることによって、インキの耐地汚れ性を向上させることができる。より好ましくは、15Pa・s以上であり、さらに好ましくは20Pa・s以上である。
また、前記粘度(B)が40Pa・s以下であることによって、前記インキの平版印刷版への転移性(すなわち印刷版の画線部に対する着肉性)が向上する。より好ましくは35Pa・s以下であり、さらに好ましくは30Pa・s以下である。前記粘度(A)と前記粘度(B)の比率である、粘度比率(B)/(A)は、0.25以上0.4以下であることが好ましい。より好ましくは0.30以上0.4以下であり、さらに好ましくは0.35以上0.4以下である。前記粘度比(B)/(A)が上記範囲内にあることによって、インキの耐地汚れ性と流動性を両立可能であり、そのインキを用いると地汚れ無く、画線部が平滑な高品質の印刷物が得られる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、界面活性剤を含むことが好ましい。前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが界面活性剤を含むことにより、水あり平版印刷時に、適切な量(一般にインキ全量の10~20質量%と言われる)の湿し水を取り込み乳化することで、非画線部の湿し水に対する反発性が増し、インキの耐地汚れ性が向上する。
前記界面活性剤の親水性基と疎水性基の比率はHLB値により表される。ここで言うHLB値とは界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高いことを意味する。前記界面活性剤のHLB値としては、水を溶解することから、8以上であることが好ましく、10以上がより好ましい。また、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキに溶解することから、18以下であることが好ましく、16以下がより好ましい。
前記界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチンエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンパルミチンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンステアリルエーテル、ポリオキシアルキレンセチルエーテル、ポリオキシアルキレンパルミチンエーテルや、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリアルキルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリラウリルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリオレイルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリステアリルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリセチルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリパルミチンエーテルや、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリパルミチンエーテルや、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられ、HLB値が8以上18以下にあるものが好ましく用いられる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、水あり平版印刷中に湿し水を取り込み、乳化状態が安定することから、前記界面活性剤を0.01質量%以上含むことが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが、印刷中に湿し水を過剰に取り込み、湿し水と相溶しないよう、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの製造方法を次に述べる。本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、(a)ポリウレタン、(b)重合性モノマー、好ましくは顔料、その他成分を、必要に応じて5~100℃で溶解させた後、ニーダー、三本ロールミル、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミル、ロールミル、アトライター、サンドミル、ゲートミキサー、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、自公転型攪拌機等の撹拌機または混練機で均質に混合し分散することで得られる。混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。
また、本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを用いた印刷物の製造方法は次のとおりである。まず、本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを、平版印刷法で被印刷物となる基材上に塗布する工程によりインキ塗膜を有する印刷物を得ることができる。また、基材上に印刷されたインキ塗膜に活性エネルギー線を照射する工程を含むことができる。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、活性エネルギー線を照射することで、印刷物上のインキ塗膜を瞬時に硬化させることができる。前記活性エネルギー線としては、硬化反応に必要な励起エネルギーを有するものであればいずれも用いることができ、例えば紫外線や電子線などが好ましく用いられる。電子線により硬化させる場合は、100~500keVのエネルギー線を有する電子線装置が好ましく用いられる。紫外線により硬化させる場合は、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード(LED)等の紫外線照射装置が好ましく用いられる。波長350~420nmの輝線を発する発光ダイオードを光源とした紫外線(LED-UV)を用いることが、省電力・低コスト化の点から好ましい。
基材としては、アート紙、コート紙、キャスト紙、合成紙、新聞用紙、プラスチックフィルム、プラスチックフィルムラミネート紙、金属、金属蒸着紙、金属蒸着プラスチックフィルムなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックフィルム、前記プラスチックフィルムが紙上にラミネートされたプラスチックフィルムラミネート紙、アルミニウム、亜鉛、銅、などの金属、前記金属および前記金属の酸化物が紙上に蒸着された金属蒸着紙、前記金属および前記金属の酸化物がプラスチック上に蒸着された金属蒸着プラスチックフィルム等は、インキを吸収しないことから基材上にインキを固着できないため、活性エネルギー線を照射することで瞬時にインキを硬化、固着できる本発明の平版印刷用インキが好ましく用いられる。
またこれらのプラスチックフィルムは易接着性の付与のため、プライマ樹脂のコーティング、コロナ放電処理、プラズマ処理の表面処理を施すことが好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを用いる印刷物の製造方法において、基材の印刷面側の表面の窒素元素濃度が0.5原子%以上10.0原子%以下である基材を用いることが好ましい。基材の表面に存在するアミノ基等の窒素原子を含有する化合物に由来する官能基が、インキ中の特に親水性基を有する樹脂、および多官能(メタ)アクリレート間の水素結合等の分子間力によって、インキの転移性、およびインキと基材との密着性を向上させることができるため、窒素元素濃度は0.5原子%以上が好ましい。また、活性エネルギー線照射や、長時間の紫外線暴露等による黄変を防ぐために、10.0原子%以下が好ましい。
本発明において、基材表面の窒素元素濃度は、基材表面の平均窒素元素濃度であり、X線光電子分光法(XPS)やラザフォード後方散乱分析(RBS)等の一般的な組成分析手法によって測定することが出来る。好ましい分析方法は、X線光電子分光法にて、励起X線がmonochromatic Al Kα1,2線、X線径が200μm、光電子脱出角度すなわちフィルム表面に対する検出器の傾きが45°または60°である。検出器の傾きは、後述する易接着層の膜厚によって、適宜選択することができる。
本発明では、前記基材の印刷面側の表面に、アミン類、アミド類、イソシアネート類およびウレタン類から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有する層が存在することが好ましい(以下、この層を「易接着層」と称する場合がある)。易接着層に由来する官能基が、インキ中の特に酸性基を有する樹脂、および多官能(メタ)アクリレートと水素結合等の分子間力によって、インキの転移性、およびインキと基材との密着性が向上する。アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジヒェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、エチレンジアミン四酢酸、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、などのN、N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2-(メタクリロイオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのテトラアルキル(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのトリアルキルベンジルアンモニウム(メタ9アクリレートなどなどが挙げられる。
アミド類としては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族アミド、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN、N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。イソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ビトリレン-4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
イソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、これらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。例えば、上記表層に、アミン化合物およびイソシアネート化合物を含むとは、アミン基およびイソシアネート基を1つの化合物中に有する場合も含まれる。
ウレタン類としては、例えば、ポリオールとイソシアネート化合物を公知の重合方法で得たものを使用してよい。構成成分として、少なくともポリオールとイソシアネート化合物を含み、さらに必要に応じて鎖延長剤を含むことができる。ポリオールとしては、多価カルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等)の反応から得られるポリエステルポリオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類やポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類などが挙げられる。
易接着層中に含まれるアミン類、アミド類、イソシアネート類およびウレタン類の含有量は、特に限定されないが、易接着層全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上80質量%以下が好ましく、1.0質量%以上50質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
易接着層は、さらに樹脂成分を含んでいてもよい。樹脂成分は、基材に対し接着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂などを好適に用いることができる。好ましくはポリエステル、アクリル樹脂であり、特に、フタル酸骨格を有するポリエステルが好ましく用いられる。また、前述のウレタン類がウレタン樹脂として含まれていてもよい。また、異なる2種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
易接着層は、フィルムとしての特性を損なわない範囲で、架橋剤、可塑剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、有機または無機の微粒子、ワックス剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、顔料等の各種添加剤を適宜含有していてもよい。架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化或いはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤等を用いることができる。
易接着層の厚みは、光学特性や生産性に合わせて適宜調整することができるが、10nm以上5000nm以下が好ましい。より好ましくは、50nm以上3000nm以下であり、特に好ましくは100nm以上1000nm以下である。厚みが10nm以上の場合、基材上に欠点なく均一に塗布することが可能となり、均一に密着性を付与することができる。また、厚みが5000nm以下の場合、光学特性への悪影響を低減することができる。
前記基材の厚みとしては、軟包装用途に用いる場合、印刷に必要な基材の機械的強度から5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、基材のコストが安価となる50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの基材上へ塗布する方法としては、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、バーコーター等の周知の方法により、基材上に塗布することができる。特に平版印刷が好ましく、平版印刷の方式としては、水あり印刷、水なし印刷とあるが、どちらの方式も用いることが可能である。基材としては、枚葉、ロールフィルムのいずれも用いることが可能である。軟包装用の薄膜フィルムに印刷する場合は、ロールフィルムを用い、ロールトゥロールで印刷することが好ましい。
印刷物上のインキ塗膜(インキ硬化膜)の厚みは0.1~50μmであることが好ましい。インキ塗膜の厚みが上記範囲内であることにより、良好な印刷品質を保ちつつ、インキコストを低減させることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<インキ原料>
樹脂:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸から得られた共重合体のカルボキシル基に対して0.55当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させて、エチレン性不飽和基と親水性基を有する樹脂を得た。得られた樹脂は重量平均分子量34,000、酸価105mgKOH/g、ヨウ素価2.0mol/kgであった。
ポリウレタンエマルション1:UA200(三洋化成工業(株)製、固形分30質量%、前記ポリウレタンエマルション1に含まれるポリウレタンを100質量%とした時の構成されるウレタン結合分率:14.7質量%)。
ポリウレタンエマルション2:UWS145(三洋化成工業(株)製、固形分40質量%、前記ポリウレタンエマルション2に含まれるポリウレタンを100質量%とした時の構成されるウレタン結合分率:20.3質量%)。
ポリカーボネート系ポリウレタン溶液1:1,6-ヘキサンジオール(44mоl部)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(23mоl部)、炭酸ジメチル(35mоl部)を反応させて得られたポリカーボネートポリオールとジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(31mоl部)に固形分30質量%となるように酢酸エチルで希釈し、75~85℃で4時間反応させ、ポリカーボネート系ポリウレタン溶液1を得た。ポリウレタンの末端はヒドロキシル基であり、ポリウレタン中のウレタン結合分率は20.5質量%であった。
ポリカーボネート系ポリウレタン溶液2:1,6-ヘキサンジオール(44mоl部)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(23mоl部)、炭酸ジメチル(46mоl部)を反応させて得られたポリカーボネートポリオールとジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(20mоl部)に固形分30質量%となるように酢酸エチルで希釈し、75~85℃で4時間反応させ、ポリカーボネート系ポリウレタン溶液2を得た。ポリウレタンの末端はヒドロキシル基であり、ポリウレタン中のウレタン結合分率は15.7質量%であった。
ポリカーボネート系ポリウレタン溶液3:1,6-ヘキサンジオール(44mоl部)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(23mоl部)、炭酸ジメチル(50mоl部)を反応させて得られたポリカーボネートポリオールとジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(16mоl部)に固形分30質量%となるように酢酸エチルで希釈し、75~85℃で4時間反応させ、ポリカーボネート系ポリウレタン溶液3を得た。ポリウレタンの末端はヒドロキシル基であり、ポリウレタン中のウレタン結合分率は13.7質量%であった。
ポリカーボネート系ポリウレタン溶液4:1,6-ヘキサンジオール(44mоl部)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(23mоl部)、炭酸ジメチル(56mоl部)を反応させて得られたポリカーボネートポリオールとジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(10mоl部)に固形分30質量%となるように酢酸エチルで希釈し、75~85℃で4時間反応させ、ポリカーボネート系ポリウレタン溶液4を得た。ポリウレタンの末端はヒドロキシル基であり、ポリウレタン中のウレタン結合分率は9.4質量%であった。
ポリカーボネート系ポリウレタン溶液5:1,6-ヘキサンジオール(44mоl部)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(23mоl部)、炭酸ジメチル(20mоl部)を反応させて得られたポリカーボネートポリオールとジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(46mоl部)に固形分30質量%となるように酢酸エチルで希釈し、75~85℃で4時間反応させ、ポリカーボネート系ポリウレタン溶液5を得た。ポリウレタンの末端はヒドロキシル基であり、ポリウレタン中のウレタン結合分率は25.7質量%であった。
ポリエステル系ポリウレタン溶液:1,4-ブタンジオール(50mоl部)、テレフタル酸(25mоl部)を反応させて得られたポリエステルポリオールとジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(24mоl部)に固形分30質量%となるように酢酸エチルで希釈し、75~85℃で4時間反応させ、ポリエステル系ポリウレタン溶液1を得た。ポリウレタンの末端はヒドロキシル基であり、ポリウレタン中のウレタン結合分率は20.2質量%であった。
ポリエーテル系ポリウレタン溶液:数平均分子量が280のポリエチレングリコール(50mоl部)とジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(49mоl部)に固形分30質量%となるように酢酸エチルで希釈し、75~85℃で4時間反応させ、ポリエーテル系ポリウレタン溶液1を得た。ポリウレタンの末端はヒドロキシル基であり、ポリウレタン中のウレタン結合分率は20.3質量%であった。
重合性モノマー1:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物“Miramer”(登録商標)M340(MIWON社製)。ヒドロキシル基あり、水酸基価115mgKOH/g(計算するとペンタエリスリトールトリアクリレートの含有量は61質量%となる。)
重合性モノマー2:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート“Miramer”(登録商標)M262(MIWON社製)。ヒドロキシル基なし、水酸基価0mgKOH/g
重合性モノマー3:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレート1.6HX-A)。ヒドロキシル基なし、水酸基価0mgKOH/g
重合性モノマー4:1,10-デカンジオールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステル A-DOD-N)。ヒドロキシル基なし、水酸基価0mgKOH/g
顔料1:セイカシアニンブルー4920(大日精化(株)製)
顔料2:ミクロエースP-8(日本タルク(株)製)
重合禁止剤:p-メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)
ワックス:ポリテトラフルオロエチレンの微粉末“KTL-4N”(登録商標)((株)喜多村製)。
<重量平均分子量の測定>
樹脂の重量平均分子量はテトラヒドロフランを移動相としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。GPCはHLC-8220(東ソー(株)製)、カラムはTSKgel SuperHM-H(東ソー(株)製)、TSKgel SuperHM-H(東ソー(株)製)、TSKgel SuperH2000(東ソー(株)製)の順で連結したものを用い、RI(示差屈折率)検出は前記GPCに内蔵されたRI検出器を用い測定した。検量線はポリスチレン標準物質を用いて作成し、試料の重量平均分子量を計算した。測定試料の作成方法を説明する。濃度が0.25質量%となるように試料をテトラヒドロフランで希釈し、希釈溶液をミックスローター(MIX-ROTAR VMR-5、アズワン(株)社製)にて5分間100rpmで攪拌し溶解させ、0.2μmフィルター(Z227536-100EA、SIGMA社製)でろ過して、ろ液を測定試料とした。測定条件を説明する。打ち込み量は10μL、分析時間は30分、流量は0.4mL/min、カラム温度は40度として、測定した。
<ポリウレタン中のウレタン結合分率の測定>
ウレタン結合分率(質量%)はプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)により測定した値である。測定条件は以下の通りである。
装置: ECZ600R(日本電子(株)製)
観測周波数:600MHz
温度:20度
積算回数:26,214回
サンプル組成:ポリウレタン20mg/N,N-ジメチルホルムアミド-d7(重溶媒)1mL/3,5-ジニトロ安息香酸(標準物質)5mg。
測定サンプル中のポリウレタンおよび標準物質の質量をそれぞれa、A(グラム)、標準物質C-H由来のスペクトル積分値を1で規格化した時のウレタン結合N-H由来のスペクトル積分値をb、ウレタン結合および標準物質の分子量をそれぞれ59.0、212.1とし、数式(1)よりウレタン結合分率(質量%)を求めた。なお、ポリウレタンエマルションおよびポリウレタン溶液について、乾燥により水および溶媒を除去することでポリウレタンを得て本測定に用いた。
<タック値(インキの粘性)評価>
インキ1.3mlをインコメーターINKOGRAPH TYPE-V(テスター産業社製)のローラーに塗布し、ローラー温度38℃、回転速度400rpmにて運転し、1分後のタック値を測定した。
タック値が20以上であるとインキの転移性が低下するため「不良」であり、15以上20未満であると「良好」であり、10以上15未満であると「より良好」であり、10以下であると「極めて良好」と判断した。
<密着性評価>
インキをRIテスター(テスター産業(株)製、PI-600)にて、基材としてポリエステルフィルムPTM12(ユニチカ社製、厚み12μm)およびナイロンフィルムONM15(ユニチカ社製、厚み15μm)の易接着面上にそれぞれ塗布量が1g/m2となるように転写し、岩崎電気(株)製電子線照射装置EC250/30/90LS(加速電圧125kV、照射量30kGy)を用いて、ベルトコンベアースピード9m/分で電子線を照射してインキ硬化膜を有する印刷物を得た。前記インキ硬化膜上に接着剤としてタケラックA―626/タケネートA-65(質量比16/1で混合、ともに三井化学(株)製)をバーコート法で塗布して、80℃で1分乾燥させた後の塗布量が4.0g/m2となるように調整した。前記接着剤を塗布した印刷物とシーラントをハンドローラーでラミネートし、その後40℃で72時間エージングすることでシーラント/接着剤/インキ硬化膜/基材のフィルム積層体を得た。印刷物の基材がポリエステルフィルムの場合、シーラントは無延伸ポリプロピレンフィルムZK207(東レ社製、厚み50μm)を使用し、基材がナイロンフィルムの場合、シーラントは直鎖状低密度ポリエチレンLL-XHT50(フタムラ化学社製、厚み50μm)を使用した。
前記フィルム積層体(10cm×10cmの正方形)の同じ基材同士のものをそれぞれ2枚準備して、シーラント同士が互いに接するように重ねた後に、ヒートシーラーTP-701-B(テスター産業社製)を用いて、4辺のうち3辺についてヒータ温度180℃、圧力0.1MPa、時間1.0秒でシール加工することで1辺が空いた袋を作製した。この袋に純水50mlを入れた後に空気を十分に除去して、残りの1辺を前記シートシーラーでシールを行うことで、内部に純水が入った、フィルム積層体で形成されたパウチを得た。
95℃に設定したウォーターバスの中に、前記パウチを投入して30分間の熱水処理を行った。熱水処理後のパウチのシール部分を切り取り、内部の水を取り除くことで、熱水処理後のフィルム積層体を得た。
熱水処理前後のフィルム積層体について、幅15mm、長さ50mmの切片を切り出し、
テンシロン万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製、型番「RTG―1210」)を用いて、90度T型剥離法(JIS K 6854-3)にて基材とシーラントとの間の剥離強度測定を行い、第一極大点の値をラミネート剥離強度とした。試験環境は気温25℃・湿度50%、試験速度は300mm/分とした。
各実施例・比較例の主な破壊モードは基材フィルムとインキの界面剥離であり、剥離強度が1.5N/15mm未満であると密着性が不十分で「不良」であり、1.5N/15mm以上2.0N/15mm未満であると密着性が「良好」であり、2.0N/15mm以上2.5N/15mm未満であると密着性が「より良好」であり、2.5N/15mm以上もしくは破壊モードがフィルム基材破断であると密着性が「極めて良好」と判断した。
<インキ転移性の評価>
縦(印刷方向)854mm×横(印刷幅方向)1,070mmの版の中心に縦(印刷方向)400mm×横(印刷幅方向)900mmの帯状のベタ画像を設けた水なし平版印刷版(TAC―VG5、東レ(株)製)をオフセット輪転印刷機(CI-8、COMEXI社製)に装着し、実施例および比較例に記載のインキを用いて、ポリエステルフィルムPTM12(ユニチカ社製、厚み12μm)に印刷速度200m/分、インキ供給量50%で、1,000m印刷し、上質紙を紙白(反射濃度0の基準)としてベタ部の反射濃度を反射濃度計(GretagMacbeth製、SpectroEye、ステータスE)を用いて評価した。ベタ部の反射濃度が高いほど転移性が良好であることを示す。
[実施例1~7および比較例1]
表1に示す樹脂、ポリウレタンエマルションもしくはポリウレタン溶液、重合性モノマー1、重合性モノマー2、重合禁止剤を秤量した。なお、表1におけるポリウレタンエマルションまたはポリウレタン溶液の量は水あるいは溶媒を含む量であるが、これらの水および溶媒は、下記のようにワニスを得る工程において蒸発・揮発するためインキの組成におけるポリウレタン等の含有量には影響しない。
秤量した原料を、ディスパー羽根を用いて500rpmで攪拌しながら、温度95℃で390分加熱溶解させて、前記ポリウレタンエマルションもしくはポリウレタン溶液に含まれる水分および溶剤を除去し、ワニスを得た。上記ワニスに、顔料1、顔料2およびワックスを表1に示す組成となるように秤量し、三本ロールミル“EXAKT”(登録商標)M-80S(EXAKT社製)を用いて、同装置における設定「ギャップ1」で3回通すことで活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを得た。
得られた活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキについて、前記のとおりに熱水処理前後のフィルム積層体を作製し、密着性の評価を行った。
ウレタン結合分率が18質量%以上21質量%以下である実施例2および3について、インキのタックは実施例2では12.1と「より良好」であり、ポリウレタンがカーボネート結合を有する実施例3では7.3と「極めて良好」であった。ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は実施例2および3どちらも、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「極めて良好」であった。
ウレタン結合分率が15質量%以上18質量%未満であり、ポリウレタンがカーボネート結合を有する実施例4について、インキのタックは9.8と「極めて良好」であり、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「より良好」、熱水処理後は「極めて良好」であった。
ウレタン結合分率が10質量%以上15質量%未満である実施例1および5について、インキのタックは、実施例1では18.6と「良好」であり、ポリウレタンがカーボネート結合を有する実施例5では12.9と「良好」であった。ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「良好」、熱水処理後は「より良好」であった。
ウレタン結合分率が10質量%未満でありポリウレタンがカーボネート結合を有する実施例6について、インキのタックは17.9と「良好」であり、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「良好」であった。
ウレタン結合分率が25質量%を超えポリウレタンがカーボネート結合を有する実施例7について、インキのタックは5.2と「極めて良好」であり、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「良好」であった。
インキがポリウレタンを含有しない比較例1について、インキのタックは8.4と「極めて良好」であり、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」であったが、熱水処理後は「不良」となり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「不良」であった。
[実施例3および参考例1、2]
インキの組成を表2のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の操作ならびに密着性の評価を行った。
いずれもウレタン結合分率が18質量%以上21質量%以下であり、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「極めて良好」であった。
ポリウレタンがカーボネート結合を有する実施例3について、インキのタックは7.3と「極めて良好」である一方、ポリウレタンがエステル結合を有する参考例1について、インキのタックは10.8と「より良好」であり、ポリウレタンがエーテル結合を有する参考例2について、インキのタックは15.1と「良好」であった。
[実施例3および10、11]
インキの組成を表3のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の操作ならびに密着性の評価を行った。
ポリウレタンの含有量が1.1質量%である実施例3について、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「極めて良好」であった。
ポリウレタンの含有量が0.3質量%もしくは6.0質量%である実施例10および11について、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「良好」であった。
[実施例3および12、13]
インキの組成を表4のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の操作ならびに密着性の評価を行った。
炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含まない実施例3について、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「極めて良好」であり、インキ転移性評価でのベタ部濃度は1.40であった。
1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを含む実施例12について、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「極めて良好」であり、インキ転移性評価でのベタ部の反射濃度は1.60であった。
1,10-デカンジオールジアクリレートを含む実施例13について、ポリエステルフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前は「極めて良好」、熱水処理後は「良好」であり、ナイロンフィルムのラミネート剥離強度は、熱水処理前後ともに「極めて良好」であり、インキ転移性評価でのベタ部の反射濃度は1.70であった。