JP7301516B2 - グルコースデヒドロゲナーゼ変異体 - Google Patents
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Description
[1] FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)変異体であって、当該FAD-GDH変異体の由来する野生型FAD-GDHのアミノ酸配列においてリシン残基である位置のうち7つ以上の位置のアミノ酸が、リシン以外のアミノ酸残基に置換されている、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)変異体、又は
FAD-GDH変異体であって、当該FAD-GDH変異体の全長アミノ酸配列中の合計リシン残基数が、当該FAD-GDH変異体の由来する野生型FAD-GDHの全長アミノ酸配列中の合計リシン残基数と比較して、リシン残基数が7以上少ない、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)変異体。
[2] FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)変異体であって、配列番号1の54位、129位、149位、152位、153位、173位、178位、179位、267位、274位、286位、289位、293位、309位、319位、380位、409位、414位、438位、439位、476位、525位、580位、624位、630位、634位及び638位に対応する位置からなる群より選択される位置のうち、当該FAD-GDH変異体の由来する野生型のFAD-GDHのアミノ酸配列においてリシン残基である位置のうちの7つ以上の位置のアミノ酸が、リシン以外のアミノ酸に置換されている、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)変異体。
[3] 置換される位置が、配列番号1の54位、129位、152位、153位、178位、179位、286位、409位、414位、580位、及び630位に対応する位置からなる群より選択される、2に記載のFAD-GDH変異体。
[4] 前記位置のうち、11以上の位置のアミノ酸がリシン以外のアミノ酸残基に置換されている、2又は3に記載のFAD-GDH変異体。
[5] 前記位置のうち、21以上の位置のアミノ酸がリシン以外のアミノ酸残基に置換されている、2に記載のFAD-GDH変異体。
[6] FAD-GDH変異体が、配列番号1と75%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDH、配列番号3と75%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDH又は配列番号4と75%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDH、及び、配列番号14と75%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDHからなる群より選択されるものである、1~5のいずれかに記載のFAD-GDH変異体。
[7] 1~6のいずれかに記載のFAD-GDH変異体をコードするFAD-GDH遺伝子。
[8] 7に記載のFAD-GDH遺伝子を含むベクター。
[9] 8に記載のベクターが導入されている宿主細胞。
[10] 以下の工程を含むFAD-GDHを製造する方法:
9に記載の宿主細胞を培養する工程、
前記宿主細胞中に含まれるFAD-GDH遺伝子を発現させる工程、及び
前記培養物からFAD-GDHを単離する工程。
[11] 1~6のいずれかに記載のFAD-GDH変異体を含むグルコースアッセイキット。
[12] 1~6のいずれかに記載のFAD-GDH変異体を含む電極。
[13] 1~6のいずれか1項に記載のFAD-GDH変異体を含むグルコースセンサー。
[14] 13に記載のグルコースセンサーを有する、持続血糖測定装置。
[15] 1~6のいずれかに記載のFAD-GDH変異体、11に記載のキット、12に記載の電極、13に記載のセンサー、又は14に記載の装置を用いるグルコース測定方法。
[16] グルコース測定が持続血糖測定装置による測定である、15に記載の方法。
FAD-GDHは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ-δ-ラクトンを生成する反応を触媒する。
(反応1) D-グルコ-ス + PMS(酸化型)
→ D-グルコノ-δ-ラクトン + PMS(還元型)
(反応2) PMS(還元型) + DCIP(酸化型)
→ PMS(酸化型) + DCIP(還元型)
FAD-GDHは、配列番号1、3、4、14、16若しくは配列番号18、27で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と同一性の高い、例えば75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上同一なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において1もしくは数個(例えば15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個又は2個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するものであり得る。
ある実施形態において、本発明のFAD-GDH変異体は、配列番号1又は14のアミノ酸配列に基づくもの、またはこれと同一性の高い、例えば75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上同一なアミノ酸配列に基づくもの(MpGDH等ともいう)であり得る。配列番号1の54位、129位、149位、152位、153位、173位、178位、179位、267位、274位、286位、289位、293位、309位、319位、380位、409位、414位、438位、439位、476位、525位、580位、624位、630位、634位及び638位はリシンである。配列番号14では、これらに加え、559位がリシンである。MpGDH等に基づくFAD-GDH変異体は、これらの位置又はこれらの位置に対応する位置が1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、例えば7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、21以上、例えば22以上、リシン以外のアミノ酸残基(例えばR、N、F、Q、D、E、Y、W、L、I、V、A、G、P、S、T、M、C、H)に置換されていてもよい。場合によりさらに配列番号1又は14のアミノ酸配列における559位に対応する位置のアミノ酸が野生型配列においてリシンであるとき(例えば配列番号4、5、7、8が該当する)は、当該リシンは、本発明の変異体においてリシン以外のアミノ酸残基に置換されていてもよい。また、MpGDH等に基づくFAD-GDH変異体は、全長アミノ酸配列中の合計リシン残基数が27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6又は5となるようにリシン残基を置換し得る。
ある実施形態において、本発明のFAD-GDH変異体は、配列番号4のアミノ酸配列に基づくもの、またはこれと同一性の高い、例えば75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上同一なアミノ酸配列に基づくもの(MrdGDH等ともいう)であり得る。配列番号4の50位、66位、125位、145位、148位、149位、169位、270位、283位、286位、290位、306位、316位、370位、377位、403位、406位、418位、435位、436位、472位、473位、546位、555位、577位、585位、587位、630位及び631位はリシンである。MrdGDH等に基づくFAD-GDH変異体は、これらの位置又はこれらの位置に対応する位置が1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、例えば7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、21以上、例えば22以上、リシン以外のアミノ酸残基(例えばR、N、F、Q、D、E、Y、W、L、I、V、A、G、P、S、T、M、C、H)に置換されていてもよい。また、MrdGDH等に基づくFAD-GDH変異体は、全長アミノ酸配列中の合計リシン残基数が、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、又は7となるようにリシン残基を置換し得る。
ある実施形態において、本発明のFAD-GDH変異体は、配列番号3のアミノ酸配列に基づくもの、またはこれと同一性の高い、例えば75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上同一なアミノ酸配列に基づくもの(MhGDH等ともいう)であり得る。配列番号3の22位、51位、107位、126位、146位、149位、150位、159位、170位、175位、227位、246位、262位、264位、271位、286位、290位、306位、316位、377位、435位、436位、470位、473位、522位、555位、621位、627位及び631位はリシンである。MhGDH等に基づくFAD-GDH変異体は、これらの位置又はこれらの位置に対応する位置が1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、例えば7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、21以上、例えば22以上、リシン以外のアミノ酸残基(例えばR、N、F、Q、D、E、Y、W、L、I、V、A、G、P、S、T、M、C、H)に置換されていてもよい。また、MhGDH等に基づくFAD-GDH変異体は、全長アミノ酸配列中の合計リシン残基数が、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、又は7となるようにリシン残基を置換し得る。
ある実施形態において、FAD-GDHをコードする遺伝子は、例えば特許文献4又は6の開示に基づき取得することができる。これとアミノ酸配列同一性の高いFAD-GDHを取得するには、遺伝子工学的手法を利用することができる。FAD-GDHをコードする遺伝子(以下、FAD-GDH遺伝子)を取得するには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法を用いればよい。FAD-GDHを取得するには、FAD-GDH生産能を有する公知の微生物菌体や種々の細胞から、常法、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (WILEY Interscience,1989)記載の方法により、染色体DNA又はmRNAを抽出することができる。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNA又はcDNAを用いて、染色体DNA又はcDNAのライブラリーを作製することができる。
出発物質であるFAD-GDH遺伝子の変異処理は、企図する変異形態に応じた、公知の任意の方法で行うことができる。すなわち、FAD-GDH遺伝子あるいは当該遺伝子の組み込まれた組換え体DNAと変異原となる薬剤とを接触・作用させる方法;紫外線照射法;遺伝子工学的手法;又は蛋白質工学的手法を駆使する方法等を広く用いることができる。
上記変異処理に用いられる変異原となる薬剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン、蟻酸、若しくは5-ブロモウラシル等を挙げることができる。
FAD-GDHは、他の公知のFAD-GDHより取得することもできる。公知のFAD-GDHの由来微生物の好適な例としては、ケカビ亜門、好ましくはケカビ綱、より好ましくはケカビ目、さらに好ましくはケカビ科に分類される微生物を挙げることができる。具体的には、ムコール(Mucor)属、アブシジア(Absidia)属、アクチノムコール(Actinomucor)属、シルシネラ(Circinella)属由来のFAD-GDH等が挙げられる。
上述のように得られたFAD-GDH遺伝子を、常法により、バクテリオファージ、コスミド、又は原核細胞若しくは真核細胞の形質転換に用いられるプラスミド等のベクターに組み込み、各々のベクターに対応する宿主細胞を常法により、形質転換又は形質導入をすることができる。
GDHはさらに、機能性GDH変異体を取得するためにハイスループットスクリーニングに供することができる。例えば変異導入したGDH遺伝子を有する形質転換又は形質導入株のライブラリーを作製し、これをマイクロタイタープレートに基づくハイスループットスクリーニングに供してもよく、又は液滴型マイクロ流体に基づく超ハイスループットスクリーニングに供してもよい。例としてはバリアントをコードする変異遺伝子のコンビナトリアルライブラリーを構築し、次いでファージディスプレイ(例えばChem. Rev. 105 (11): 4056-72, 2005)、イーストディスプレイ(例えばComb Chem High Throughput Screen. 2008;11(2): 127-34)、バクテリアルディスプレイ(例えばCurr Opin Struct Biol 17: 474-80, 2007)等を用いて、変異GDHの大きな集団をスクリーニングする方法が挙げられる。またAgresti et al, ”Ultrahigh-throughput screening in drop-based microfluidics for directed evolution” Proceedings of the National Academy of Sciences 107 (9): 4004-4009 (Mar, 2010)を参照のこと。GDHバリアントのスクリーニングに使用しうる超ハイスループットスクリーニング手法についての同文献の記載を参照により本明細書に組み入れる。例えばエラープローンPCR法によりライブラリーを構築することができる。また飽和突然変異誘発を用いて、本明細書に記載の領域や位置又はそれらに対応する領域や位置を標的として変異導入しライブラリーを構築してもよい。ライブラリーを用いて電気コンピテントEBY-100細胞等の適当な細胞を形質転換し、約10の7乗の変異体を取得しうる。該ライブラリーで形質転換した酵母細胞を次いでセルソーティングに供しうる。標準ソフトリトグラフィー法を用いて作製したポリジメトキシルシロキサン(PDMS)マイクロ流体デバイスを用いてもよい。フローフォーカスデバイスを用いて単分散の液滴を形成することができる。個別の変異体を含有する形成された液滴を適当なソーティングデバイスに供しうる。細胞を選別する際にはGDH活性の有無を利用しうる。これには例えば上記のGDHが作用すれば発色する組成とした反応液を用いてもよい。例えばDCIPを用いる場合は、96ウェルプレート、192ウェルプレート、384ウェルプレート、9600ウェルプレート等及びプレートリーダーを用いて600nmの吸光度を測定してもよい。変異導入と選別は複数回反復してもよい。
FAD-GDH酵素は、上述のように取得したFAD-GDHを生産する宿主細胞を培養し、前記宿主細胞中に含まれるFAD-GDH遺伝子を発現させ、次いで、前記培養物からFAD-GDHを単離することにより製造すればよい。
本発明はまた、FAD-GDHを含むグルコースアッセイキットを提供する。FAD-GDHを用いて血中のグルコース(血糖値)を測定することができる。
ある実施形態において本発明は、FAD-GDHを用いるグルコースセンサーを提供する。また、ある実施形態において本発明は、FAD-GDHを含む電極を提供する。ある実施形態においてグルコースセンサーは、FAD-GDHを含む作用電極、参照電極及び対極を有する。作用電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上にFAD-GDHを固定化することができる。さらに、又はこれとは別に、作用電極上に電子メディエーターを固定化してもよい。対極は白金電極やPt/C等の慣用の電極でありうる。参照電極はAg/AgCl電極などの慣用の電極でありうる。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いてFAD-GDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
[Os有機分子複合体]-[ポリマー]
錯体を形成する有機分子の1つは、場合により、リンカーを介してポリマーに結合されてもよい。したがって、別の実施形態では、オスミウム錯体は以下の通りであり得る:
[Os有機分子複合体]-[リンカー]-[ポリマー]
例示的な分子は、Oharaら、Anal Chem. 1993 Dec 1; 65(23):3512-7及びAntiochiaら、Materials Sciences and Applications Vol.4 No.7 A2(2013)(両方とも参考として全内容を本明細書に組み入れる)にある。オスミウム錯体を含むポリマーの例には、ポリ(1-ビニルイミダゾール)で錯体化されたオスミウムビス(2,2’-ビピリジン)クロライド、ポリ(4-ビニルピリジン)錯体化オスミウムビス(2,2’-ビピリジン)クロライド、ポリ(1-ビニルイミダゾール)n-[オスミウム(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル)2Cl2]2+/+およびそれらの誘導体が挙げられる。
本明細書において「架橋する」とは、架橋剤を介して、2つのポリペプチド分子を共有結合により互に連結することを指す。本明細書においてポリペプチド分子は典型的にはFAD-GDHである。ある実施形態では、架橋剤を介して、同一のポリペプチド分子2つが連結されうる。これは、架橋剤をCL、ポリペプチド分子をPと表記すると、P-CL-Pと表されうる(便宜上、2量体という)。このとき、架橋剤がポリペプチド分子に結合する位置は、同一でも異なってもよい。また、架橋された分子、P-CL-Pが、さらに架橋されてもよい。3量体であるP-CL-P-CL-Pや、4量体であるP-CL-P-CL-Pが例示されるが、架橋の分岐パターンはこれに限らない。
大まかに説明すると、まずMucor属由来GDH(MpGDH、配列番号1)にN66Y/N68G/C88A/Q233R/T387C/E554D/L557V/S559Kの各変異を導入した改変GDH(MpGDH-M1)をコードする遺伝子を取得した。MpGDH-M1のアミノ酸配列は配列番号12に示し、その遺伝子の塩基配列は配列番号13に示す。プラスミドpUC19のマルチクローニングサイトに対象遺伝子であるMpGDH-M1遺伝子を常法により挿入させたDNAコンストラクトを作製した。具体的には、pUC19は、In-Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社)に付属されているpUC19 linearized Vectorを用いた。pUC19のマルチクローニングサイトにあるIn-Fusion Cloning Siteにて、MpGDH-M1遺伝子を、上記したIn-Fusion HD Cloning Kitを使用して、キットに添付されたプロトコールに従って連結して、コンストラクト用プラスミド(pUC19-MpGDH-M1)を得た。
Double-joint PCR(Fungal Genetics and Biology,2004年,第41巻,p973-981)を行い、5’アーム領域~PyrG遺伝子(ウラシル栄養要求性マーカー)~TEF1プロモーター遺伝子~フラビン結合型GDH遺伝子~3’アーム領域から成るカセットを構築し、下記の手順でアスペルギルス・ソーヤNBRC4239株由来pyrG破壊株(pyrG遺伝子の上流48bp、コード領域896bp、下流240bp欠損株)の形質転換に用いた。500ml容三角フラスコ中の20mMウリジンを含むポリペプトンデキストリン液体培地100mlに、アスペルギルス・ソーヤNBRC4239株由来pyrG破壊株の分生子を接種し、30℃で約20時間振とう培養を行った後、菌体を回収した。回収した菌体からプロトプラストを調製した。得られたプロトプラスト及び20μgの対象遺伝子挿入DNAコンストラクトを用いて、プロトプラストPEG法により形質転換を行い、次いで0.5%(w/v)寒天及び1.2Mソルビトールを含むCzapek-Dox最少培地(ディフコ社;pH6)を用いて、30℃、5日間以上インキュベートし、コロニー形成能があるものとして形質転換アスペルギルス・ソーヤを得た。
MpGDH-M2にS192P/S196N/I212L/A218H/I226T/D228Nの各変異を導入した改変GDHがMpGDH-M2-0である。MpGDH-M2-1はこれ以外にもさらにK178F/K179N/K286N/K409Q/K414R/K559Q/K580Rを有し、リシン残基数が低減されている。また、MpGDH-M2-2は、MpGDH-M2-1の有する各変異以外にもさらにK54R/K129R/K152N/K153R/K630Rを有し、リシン残基数が低減されている。
特定の理論に拘束されることを望むものではないが本発明について、以下のように考えられる。グルコースデヒドロゲナーゼは複数のリシン残基を有する。多量体を形成するためにグルコースデヒドロゲナーゼに架橋剤を作用させると、架橋剤は通常、グルコースデヒドロゲナーゼ中のN末端アミノ基若しくはリシン残基の側鎖と反応する。したがって、グルコースデヒドロゲナーゼにおけるリシン残基の数を低減することは、架橋剤と反応することのできる部位の数を減らすことを意味し、総じてグルコースデヒドロゲナーゼと架橋剤との反応性が低くなる可能性があった。また、説明の便宜上、ここでは2つの反応性官能基を有する架橋剤について例示的に考察するが、グルコースデヒドロゲナーゼと架橋剤とを反応させると、第1のグルコースデヒドロゲナーゼと架橋剤とが2箇所で連結される分子内反応が生じる可能性があり、また、第1のグルコースデヒドロゲナーゼと架橋剤とが1箇所で連結され第2のグルコースデヒドロゲナーゼと該架橋剤とが1箇所で連結される分子間反応が生じる可能性がある。また、分子内反応及び分子間反応は、リシン残基数を低減したグルコースデヒドロゲナーゼについても、リシン残基数を低減する前の未改変のグルコースデヒドロゲナーゼについても、それぞれ生じる可能性がある。そのため、リシン残基数を低減したグルコースデヒドロゲナーゼを架橋反応に用いた場合、リシン残基数を低減する前のグルコースデヒドロゲナーゼと比較して、多量体がより多く形成されるか、さほど多く形成されないか、予測することは困難であった。今回、リシン残基数を低減したグルコースデヒドロゲナーゼ変異体を用いたところ、驚くべきことに、より多くの多量体が形成された。
次に、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりにグルタルアルデヒドを用いて架橋反応を行った。
MpGDH-M2-0、MpGDH-M2-2を終濃度20mg/ml、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、1% グルタルアルデヒド(和光純薬社製)を混合した100μl溶液を40℃、1時間処理し、架橋反応させた。1時間反応後、1M Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を50μl添加し、架橋反応を停止させた。
上記と同様にゲルろ過クロマトグラフィーで解析を行ったところ、MpGDH-M2-0は全て2量体を形成した。一方で、MpGDH-M2-2は24%が2量体となり、75%が単量体となり、グルタルアルデヒドとの反応効率は低下した。ただし、いずれのGDHにおいても3量体以上の多量体は形成されず、多量体形成を行う架橋剤としてグルタルアルデヒドは不適であると示唆された。
配列番号1 Mucor prainii GDH(MpGDH) aa
配列番号2 MpGDH遺伝子 DNA
配列番号3 Mucor hiemalis GDH(MhGDH) aa
配列番号4 Mucor RD056860 GDH(MrdGDH) aa
配列番号5 Mucor subtilissimus GDH(MsGDH) aa
配列番号6 Mucor guilliermondii GDH(MgGDH) aa
配列番号7 Circinella simplex GDH(CsGDH) aa
配列番号8 Circinella属 GDH(CrGDH) aa
配列番号9 Mucor circinelloides GDH(McGDH) aa
配列番号10 MrdGDH遺伝子 DNA
配列番号11 MhGDH遺伝子 DNA
配列番号12 MpGDH-M1 aa (M1)
配列番号13 MpGDH-M1遺伝子DNA
配列番号14 MpGDH-M1/A175C/N214C/G466D aa (M2)
配列番号15 MpGDH-M2遺伝子DNA
配列番号16 MpGDH-M2-1
配列番号17 MpGDH-M2-1遺伝子DNA
配列番号18 MpGDH-M2-2
配列番号19 MpGDH-M2-2遺伝子DNA
配列番号20-25 プライマー
配列番号26 MpGDH-M2-0遺伝子DNA
配列番号27 MpGDH-M2-0
Claims (12)
- (i)FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)変異体であって、当該FAD-GDH変異体の由来する野生型FAD-GDHのアミノ酸配列においてリシン残基である位置のうち7つ以上の位置のアミノ酸が、リシン以外のアミノ酸残基である、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、セリン、トレオニン又はヒスチジンに置換されている、FAD-GDH変異体、又は
(ii)FAD-GDH変異体であって、当該FAD-GDH変異体の全長アミノ酸配列中の合計リシン残基数が、当該FAD-GDH変異体の由来する野生型FAD-GDHの全長アミノ酸配列中の合計リシン残基数と比較して、リシン残基数が7以上少ない、FAD-GDH変異体、
ここで(i)又は(ii)において、配列番号1の54位、129位、152位、153位、178位、179位、286位、409位、414位、580位、及び630位、に対応する位置からなる群より選択される位置のうち、当該FAD-GDH変異体の由来する野生型のFAD-GDHのアミノ酸配列においてリシン残基である位置のうちの7つ以上の位置のアミノ酸が、リシン以外のアミノ酸である、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、セリン、トレオニン又はヒスチジンに置換されており、
(i)又は(ii)において、アミノ酸置換前のFAD-GDHが、配列番号1と92%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDH、配列番号3と92%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDH又は配列番号4と92%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDH、及び、配列番号14と92%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD-GDHからなる群より選択されるものである、
グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するFAD-GDH変異体。 - 前記配列番号1の54位、129位、152位、153位、178位、179位、286位、409位、414位、580位、及び630位に対応する位置がいずれもリシン以外のアミノ酸残基である、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、セリン、トレオニン又はヒスチジンに置換されている、請求項1に記載のFAD-GDH変異体。
- 請求項1又は2に記載のFAD-GDH変異体をコードするFAD-GDH遺伝子。
- 請求項3に記載のFAD-GDH遺伝子を含むベクター。
- 請求項4に記載のベクターが導入されている宿主細胞。
- 以下の工程を含むFAD-GDHを製造する方法:
請求項5に記載の宿主細胞を培養する工程、
前記宿主細胞中に含まれるFAD-GDH遺伝子を発現させる工程、及び
前記培養物からFAD-GDHを単離する工程。 - 請求項1又は2に記載のFAD-GDH変異体を含むグルコースアッセイキット。
- 請求項1又は2に記載のFAD-GDH変異体を含む電極。
- 請求項1又は2に記載のFAD-GDH変異体を含むグルコースセンサー。
- 請求項9に記載のグルコースセンサーを有する、持続血糖測定装置。
- 請求項1又は2に記載のFAD-GDH変異体、請求項7に記載のキット、請求項8に記載の電極、請求項9に記載のセンサー、又は請求項10に記載の装置を用いるグルコース測定方法。
- グルコース測定が持続血糖測定装置による測定である、請求項11に記載の方法。
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