JPWO2014038660A1 - 新規なグルコース脱水素酵素 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1〜5には、アスペルギルス・テレウスやアスペルギルス・オリゼ由来のもの、あるいは、それらを改変したものなどが報告されている。
しかし、これらの酵素は、キシロースに対する反応性が比較的高いため(特許文献1)、キシロース負荷試験を受けている者の血糖を測定する場合には、正確性の点で改善の余地がある。
一方、キシロースに対する作用性が比較的低いフラビン結合型GDH(特許文献6)やGOとGDHの長所を併せ持つ改変型GDH(特許文献7)などが開発されているが依然として改善の余地がある。
本発明は、係る知見に基づき、更なる研究と改良を重ねた結果完成したものであり、代表的な本発明は、以下の通りである。
下記特性(1)〜(5)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(1)温度安定性:45℃以下で安定
(2)pH4.5〜7.6で安定
(3)基質特異性:D−グルコースに対する反応性を100%としたときのD−キシロース、マルトース、D−ガラクトースに対する反応性が2%以下である
(4)至適活性温度:43〜47℃
(5)至適活性pH:6.3〜6.7
[項2]
更に、下記特性(6)を備える項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(6)アースリニウム(Arthrinium)属、及び、アースリニウム属の有性世代であるアピオスポラ(Apiospora)属に分類される微生物に由来する
[項3]
アースリニウム(Arthrinium)属、その有性世代であるアピオスポラ(Apiospora)属に分類される微生物を培養すること、及び
グルコース脱水素酵素を回収すること
を含む、項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を製造する方法。
[項4]
項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素をグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法。
[項5]
項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
[項6]
項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサ。
1.フラビン結合型グルコース脱水素酵素(FGDH)
1−1.グルコース脱水素酵素活性
グルコース脱水素酵素(GDH)とは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する理化学的性質を有する酵素である。本書においては、この理化学的性質をグルコースデヒドロゲナーゼ活性といい、特に断りが無い限り、「酵素活性」又は「活性」とは、当該酵素活性を意味する。前記電子受容体は、GDHが触媒する反応において、電子の授受を担うことが可能である限り特に制限されないが、例えば、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、フェナジンメトサルフェート(PMS)、1−メトキシ−5−メチルフェナジウムメチルサルフェート、及びフェリシアン化合物等を使用することができる。
<試薬>
0.6M D−グルコースを含む150mM リン酸緩衝液pH6.5(0.1% Triton X−100を含む)
1.64mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
上記D−グルコースを含むリン酸緩衝液20mL、DCPIP溶液10mL、を混合して反応試薬とする。
反応試薬3mLを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mLを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から(即ち、反応速度が一定になってから)1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度1MのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量である。
活性(U/mL)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.1×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}
なお、式中の3.1は反応試薬+酵素溶液の液量(mL)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。本書においては、別段の表示しない限り、酵素活性は上記の測定方法に従って、測定される。
本発明のFGDHは、基質特異性に優れている。特に、本発明のFGDHは、D−グルコースに対する反応性を基準とした場合に、少なくともD−キシロースに対する反応性が有意に低い。より具体的に、本発明のFGDHは、同一濃度のD−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、D−キシロースに対する反応性が同一濃度のD−グルコースに対する反応性を100%として、好ましくは2%以下であり、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.7%以下、更に好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.2%以下である。
本発明のFGDHは、後述する実施例に示す通り、pH6.3(リン酸緩衝液)において最も高い活性を示すことが好ましい。また、本発明のFGDHは、pH5.5〜6.5(MES−NaOH緩衝液)及びpH6.3〜7.7(リン酸緩衝液)の範囲において、pH6.3(リン酸緩衝液)における活性を100%とした場合と比較して、80%以上の相対活性を示すことが好ましい。即ち、本発明のFGDHの至適活性pHは6.3〜6.7であり、好ましくはpH6.3である。
本発明のFGDHの至適活性温度は、34℃〜47℃であることが好ましい。ここで「34℃〜47℃」とは、典型的に至適活性温度が34℃〜47℃付近であり、更にある程度の許容可能な幅を有することを意味する。本明細書において、至適活性温度は、後述する実施例に示す通り、反応液の最終酵素濃度(3.3μg/mL)でリン酸カリウム緩衝溶液(pH7.0)中における酵素活性を測定することにより求められる。
本明細書において、特定のpH条件の下、2U/mLの酵素を25℃で16時間処理した後の残存酵素活性が、処理前の酵素活性と比較して80%以上である場合に、当該酵素は、当該pH条件において安定であると判断する。本発明のFGDHは、少なくともpH4.5〜7.5の範囲全体で安定であることが好ましい。
本明細書において、特定の温度条件の下、適当な緩衝液中(例えば酢酸カリウムバッファー(pH5.0))で10U/mLの酵素を15分間処理した後の残存酵素活性が、処理前の酵素活性と比較して80%以上である場合に、当該酵素は当該温度条件において安定であると判断する。本発明のFGDHは、少なくとも45℃以下(即ち、0℃〜45℃の温度範囲)において安定であることが好ましい。
本発明のFGDHを構成するポリペプチド部分の分子量は、SDS−PAGEで測定した場合に約70kDaである。「約70kDa」とは、SDS−PAGEで分子量を測定した際に、当業者が、通常70kDaの位置にバンドがあると判断する範囲を含むことを意味する。「ポリペプチド部分」とは、実質的に糖鎖が結合していない状態のFGDHを意味する。微生物によって生産された発発明のFGDHが糖鎖結合型である場合は、それを熱処理や糖加水分解酵素によって処理することにより、糖鎖を除去した状態(即ち、「ポリペプチド部分」)にすることができる。実質的に糖鎖が結合していない状態とは、熱処理や糖加水分解酵素によって処理された糖鎖結合型FGDHに不可避的に残存する糖鎖の存在を許容する。よって、FGDHが本来的に糖鎖結合型でない場合は、それ自体が「ポリペプチド部分」に相当する。
本書においては、後述する実施例に示すように、糖鎖結合型のFGDHを100℃で10分間加熱処理をして変性させた後、N−グリコシダーゼEndo H(ニューイングランドバイオラボ社製)を用いて37℃で6時間処理する方法を適用する。
本発明のFGDHは、上述する特性を備える限り、その由来は特に制限されない。本発明のFGDHは、例えば、アースリニウム(Arthrinium)属及びアースリニウム(Arthrinium)属の有性世代であるアピオスポラ(Apiospora)属に帰属する微生物に由来し得る。アースリニウム属に属する微生物としては、特に制限されないが、例えば、Arthrinium japonicum、Arthrinium phaeospermum、Arthrinium terminalis、Arthrinium
saccharicola、Arthrinium sacchari、Arthrinium serenense、Arthrinium arundinis、Arthrinium euphaubie、Arthrinium RD000305、RD000313、RD000319、RD000334、RD000345、RD000346、RD000347、RD000351、RD000431、RD000454、RD000463、RD001987、RD006060、RD056943、RD056964、RD058144、RD059544、RD060455、RD060458、アピオスポラ属に属する微生物としては、特に制限されないが、例えば、Apiospora
montagnei、Apiospora setosa、Apiospora tintinnabulaなどが例示できる。更に具体的には、Arthrinium sacchariを例示することができる。Arthrinium sacchariは、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)に寄託申請され、受領番号NITE ABP‐1408として2012年8月22日に受領された菌株であり、所定の手続を経ることによってその分譲を受けることができる。
更に具体的には、Arthrinium sacchariに帰属する微生物に由来するものを改変したものであっても良い。
本発明のFGDHは、典型的には、本発明のFGDHの生産能を有する微生物を培養することで製造される。培養に供される微生物は、本発明のFGDHを産生する能力を有する限り特に制限されず、例えば、上記1.に示すアースリニウム属に帰属する野生型の微生物を好適に利用することができる。
標準的な遺伝子工学的手法としては、具体的には、本発明のFGDHが発現される適当な起源微生物より、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、本発明のDNA配列に特有なプローブや抗体を用いて所望クローンを選択することにより実施できる〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78, 6613(1981)等参照〕。
cDNAライブラリーを調整するための起源微生物は、本発明のFGDHを発現する微生物であれば特に制限されないが、好ましくは、アースリニウム属に分類される微生物である。より具体的には、上記1−8.に示す微生物を挙げることができる。
大腸菌を宿主とする場合は、例えば、M13ファージ又はその改変体、λファージ又はその改変体、pBR322又はその改変体(pB325、pAT153、pUC8など)など)を使用することができる。酵母を宿主とする場合は、pYepSec1、pMFa、pYES2等を使用することができる。昆虫細胞を宿主とする場合は、例えば、pAc、pVL等が使用でき、哺乳類細胞を宿主とする場合は、例えば、pCDM8、pMT2PC等を使用することができるが、これらに限定される訳ではない。
DNAのベクターへの挿入、選択マーカー遺伝子の挿入(必要な場合)、プロモーターの挿入(必要な場合)等は標準的な組換えDNA技術を用いて行うことができる。
宿主が原核細胞の場合は、エシェリヒア属、バチルス属、ブレビバチルス属、コリネバクテリウム属などが例として挙げられ、それぞれ、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリDH5α、バチルス・サブチリス、ブレビバチルス・チョウシネンシス、コリネバクテリウム・グルタミカムなどが例として挙げられる。また、ベクターとしてはpBR322、pUC19、pBluescriptなどが例として挙げられる。
宿主が酵母の場合は、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、キャンデイダ属、ピキア属、クリプトコッカス属などが例として挙げられ、それぞれ、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、キャンデイダ・ウチリス、ピキア・パストリス、クリプトコッカス・エスピーなどが例として挙げられる。ベクターとしてはpAUR101、pAUR224、pYE32などが挙げられる。
宿主が糸状菌細胞である場合は、アスペルギルス属、トリコデルマ属、コレトトリカム属などが例として挙げられ、それぞれ、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、トリコデルマ・レセイ、ムコール・ヒエマリス、アースリニウム・サッカリ等を例示することができる。
本発明においては、FGDHが単離されたアースリニウム属に帰属する微生物を宿主とすることも好ましい。即ち、形質転換体では、通常、外来性のDNAが宿主細胞中に存在するが、DNAが由来する微生物を宿主とするいわゆるセルフクローニングによって得られる形質転換体も好適な実施形態である。
形質転換体は、好ましくは、上記の発現ベクターを用いたトランスフェクション乃至はトランスフォーメーションによって調製される。形質転換は、一過性であっても安定的な形質転換であってもよい。トランスフェクション及びトランスフォーメーションはリン酸カルシウム共沈降法、エレクトロポーレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、Hanahanの方法、酢酸リチウム法、プロトプラスト−ポリエチレングリコール法、等を利用して実施することができる。
本発明のFGDHは、種々のプロダクトに適用できる。本明細書において「プロダクト」とは、使用者が或る用途を実行する目的で用いる1セットのうち一部または全部を構成する製品であって、本発明のFGDHを含むものを意味する。
上記のフラビン結合型グルコース脱水素酵素をグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法も、本発明の実施形態の1つである。
グルコースデヒドロゲナーゼを用いたグルコースの測定方法は既に当該技術分野において確立されている。よって、公知の方法に従い、本発明のFGDHを用いて、各種試料中のグルコースの量又は濃度を測定することができる。本発明のFGDHを用いてグルコースの濃度又は量が測定可能である限り、その態様は特に制限されないが、例えば、本発明のFGDHを試料中のグルコースに作用させ、グルコースの脱水素反応に伴う電子受容体(例えば、DCPIP)の構造変化を吸光度で測定することにより実施することができる。より具体的には、上記1−1.に示す方法に従って、実施することができる。本発明に従った、グルコース濃度の測定は、試料に本発明のFGDHを添加すること、又は添加して混合することにより実施することができる。グルコースを含有する試料は、特に制限されないが、例えば、血液、飲料、食品等を挙げることができる。グルコース濃度又は量の測定が可能である限り、試料に添加する酵素の量は特に制限されない。
上記のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキットも、本発明の実施形態の1つである。
本発明のグルコースアッセイキットは、本発明のFGDHを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明のFGDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明のFGDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
上記のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサも、本発明の実施形態の1つである。
本発明のFGDHを用いるグルコースセンサは、電極として、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化することで作製することができる。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがある。その他、フェロセン又はその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。本発明のFGDHは、熱安定性に優れるため、比較的高温度(例えば、50℃や55℃)の条件下で固定化を実施することができる。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のFGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングすることができる。
本発明菌株は、以下の方法で土壌中よりスクリーニングを行い単離した。土壌サンプルを水で希釈したものを、DP培地(デキストリン2.0%、ポリペプトン1.0%、KH2PO41.0%、アガロース1.5%)にプレーティングし、コロニーを単離した。単離されたコロニーを、小麦胚芽2g、2%グルコース溶液2mLを含む培地をオートクレーブで120℃、20分間滅菌した固体培地に加え、25℃で5日間から7日間静置培養した。培養後、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を1mL添加し、ボルテックスで十分に懸濁した。懸濁液に少量のガラスビーズを加えた後、ビーズショッカー(安井器械(株)製)で3,000rpm、3分間×2回の条件で破砕し、4℃、2,000×g、5分間の条件で遠心分離して、培養上清を粗酵素液として得た。粗酵素液のグルコース脱水素酵素活性を実施例2記載の方法で測定し、グルコース脱水素酵素活性のある菌株をセレクトした。
実施例1で得た粗酵素液中のグルコース脱水素酵素活性を、上記1−1.に示したグルコースデヒドロゲナーゼ活性測定方法で測定した。その結果を表1に示す。
50mLのYPD培地(0.5%酵母エキス、1%ペプトン、2%グルコース)を500mL坂口フラスコに入れ、オートクレーブで滅菌し、前培養用の培地とした。予めDPプレート培地で復元したArthrinium sacchariを前培養培地に一白金耳植菌し、25℃、180rpmで7日間振とう培養し、種培養液とした。
AsGDHを100℃、10分間、加熱処理して変性させた後、5UのEndo H(ニューイングランドバイオラボ社製)で37℃、1時間処理し、タンパク質に付加している糖鎖を分解した。その後、得られた精製酵素をSDS−PAGE(Phast Gel 10−15% Phastsystem GEヘルスケア製)に供し、分子量を求めたところ、AsGDHの分子量は約70,000ダルトンであることが判明した。
糖鎖分解処理を行っていないAsGDHについて同様にSDS−PAGEで分子量を測定したところ、約80−100kDaであった。
上記1−1.に示したGDHの活性測定法に従い、実施例4で精製したAsGDHについて、D−グルコース、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースを基質とした場合の活性を測定した。D−グルコースを基質とした場合の活性を100%とし、それと比較した他の糖に対する活性を求めた。各糖の濃度は50mMとした。結果を表2に示す。なお、酵素濃度については、グルコースに対しては最終濃度3.3μg/mL、それ以外の糖については、最終濃度1.4mg/mLの濃度で反応を行った。また、本実施例については、下記の酵素活性測定条件で測定した。
100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、1.25M D−グルコース溶液
0.08mLおよび20mM DCPIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で5分間保温する。次いで、20mM PMS溶液 0.02mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、反応を開始する。反応開始時、および、経時的な吸光度を測定し、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を求め、次式に従いフラビン結合型GDH活性を算出する。この際、フラビン結合型GDH活性は、37℃において濃度50mMのD−グルコース存在下で1分間に1μmolのDCPIPを還元する酵素量を1Uと定義する。
活性(U/mL)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×2.0×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}
なお、式中の2.0は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、16.3は本活性測定条件
におけるミリモル分子吸光係数(cm2/μmol)、0.1は酵素溶液の液量(mL)
、1.0はセルの光路長(cm)、ΔODBLANKは10mM
酢酸緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量を表す。
実施例4で得られた精製AsGDH酵素液(0.5U/mL)を用いて、至適pHを調べた。100mM MES−NaOH緩衝液(pH5.5−6.5、図1中□印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.3−7.7、図1中▲でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて、温度37℃にて酵素反応を行い、相対活性を比較した。結果を図1に示す。
実施例4で得られた精製AsGDH酵素液(3.5μg/mL)を用いて、至適活性温度を調べた。30℃、34℃、37℃、40℃、45℃、47℃、50℃における活性を求めた。結果を図2に示す。なお、本実施例については、実施例4と同じ酵素活性測定条件で測定した。
実施例4で得られた精製AsGDH酵素液(2U/mL)を用いて、pH安定性を調べた。100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH3.5−pH5.5:図3中□印でプロット)、100mM MES−NaOH緩衝液(pH5.5−pH6.5:図3中▲印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−pH8.0:図3中△印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5−pH9.0:図3中●印でプロット)、100mM Glycine−NaOH緩衝液(pH9.0−pH10.5:図3中○印でプロット)を用い、25℃、16時間、各緩衝液中で酵素を維持した後のグルコースを基質とした場合の活性を測定した。処理後の活性値と処理前の活性値を比較し、残存活性率を求めた。結果を図3に示す。
実施例4で得られた精製AsGDH酵素液(2U/mL)を用いて、温度安定性を調べた。50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を用いて、AsGDH酵素液を各温度(4℃、30℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃)で15分間処理した後、GDH活性を測定し、処理前のGDH活性と比較して残存率を測定した。結果を図4に示す。
なお、図4によれば、精製AsGDHは、4℃〜40℃の範囲の温度での処理後では、90%以上の残存率を有しており、40℃以下ではきわめて安定であることが示された。
絶縁性基板に作用電極、対向電極、および参照電極を配した電極センサを、有限会社バイオデバイステクノロジー社(石川県能美市)より入手した。本電極センサは、4.0mm×17mmの基板に電極が印刷されている。このセンサの作用電極(面積約1.3mm2)上に試薬層となる水溶液を3μL分注した。試薬層となる水溶液には、下記の組成が含まれる。
・FAD−GDH
・200mM フェリシアン化カリウム
・50mM リン酸カリウムバッファー (pH7.0)
ここで、FAD−GDHとしては、実施例3で精製したAsGDHを用いた。これを35℃で15分加温することにより乾燥させ、グルコースセンサチップとした。
続いて、濃度10mM、20mM、35mMのグルコース溶液を作製した。ポテンショスタットに接続した上記チップに、これら試料溶液15μLをマイクロピペットで滴下し、滴下から35秒後に+300mVの電圧を印加、電流値を測定した。図5にはそれぞれの濃度のグルコース濃度における電流応答値の結果を示す。
実施例11で用いたものと同じ電極センサを用いて、下記組成からなる水溶液3μLから実施例11と同様の要領でグルコースセンサチップを作製した。
・AsGDH(実施例3で精製したもの)
・200mM フェリシアン化カリウム
・50mM リン酸カリウムバッファー (pH7.0)
上記のように作製したチップをそれぞれポテンショスタットに接続し、電極上に15μlのグルコース溶液(濃度10mM)をマイクロピペットを用いて滴下し、滴下から35秒後に+300mVの電圧を印加、電流値を測定した。つづいて濃度10mMのグルコースと、さらに濃度20mMマルトース・ガラクトース・キシロースのうちいずれか一種類の糖を含む液を作製し、同様に反応させた。表3に、グルコースのみを含む液を用いた場合と、グルコースにさらに他の糖を加えた液を用いた場合との応答シグナルを比較した結果を示す。なお、表3中の数値は、他の糖を加えない場合の電気化学シグナルの強度を100とした場合の相対値として示す。
Claims (6)
- 下記特性(1)〜(5)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(1)温度安定性:45℃以下で安定
(2)pH4.5〜7.5で安定
(3)基質特異性:D−グルコースに対する反応性を100%としたときのD−キシロース、マルトース、D−ガラクトースに対する反応性が2%以下である
(4)至適活性温度:34〜47℃
(5)至適活性pH:6.3〜6.7 - 更に、下記特性(6)を備える請求項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(6)アースリニウム(Arthrinium)属、及び、アースリニウム属の有性世代であるアピオスポラ(Apiospora)属に分類される微生物に由来する - アースリニウム(Arthrinium)属、その有性世代であるアピオスポラ(Apiospora)属に分類される微生物を培養すること、及び
グルコース脱水素酵素を回収すること
を含む、請求項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を製造する方法。 - 請求項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素をグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法。
- 請求項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
- 請求項1または2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサ。
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