以下、図面を参照しながら、各実施の形態について説明する。なお、説明の便宜のため、X方向、Y方向、Z方向が導入されている。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の構成の第1例を示す概略断面図である。はじめに実施の形態1の第1例の電力変換装置の特徴部分について簡単に説明する。図1を参照して、本実施の形態の第1例の電力変換装置100は、以下の特徴を有している。電力変換装置100は、2つの端子である第1の端子11と、第2の端子12とを備えている。第1の端子11および第2の端子12の表面同士が接触され通電することにより、接触通電部10が形成されている。接触通電部10は、第1の端子11と第2の端子12との表面同士が接触するように接続されることで形成される面としての端子間接触面10Aを有する構成となっている。端子間接触面10Aを覆うように端子間接触面10Aを封止する第1の樹脂材料13を備えている。第1の樹脂材料13の表面の外側に配置される第2の樹脂材料15を備えている。以下、当該電力変換装置100について詳細に説明する。
電力変換装置100は、第1のプリント基板21と、第2のプリント基板22とを備えている。第1のプリント基板21は、主表面21aと、その反対側に対向する主表面21bとを有している。図1においては主表面21aが上側、主表面21bが下側に配置されている。主表面21aおよび主表面21bは、たとえば矩形の平面形状を有している。第1のプリント基板21は、主表面21a,21bがたとえばXY平面に沿うように配置されている。このため第1のプリント基板21は、厚みがZ方向に沿うように配置されている。第2のプリント基板22は、主表面22aと、その反対側に対向する主表面22bとを有している。図1においては主表面22aが右側、主表面22bが左側に配置されている。主表面22aおよび主表面22bは、たとえば矩形の平面形状を有している。第2のプリント基板22は、主表面22a,22bがたとえばYZ平面に沿うように配置されている。このため第2のプリント基板22は、厚みがX方向に沿うように配置されている。したがって第1のプリント基板21と第2のプリント基板22とは、主表面が互いにほぼ直交するように交差している。なおここでほぼ直交とは、完全に垂直に交わる場合に限らず、完全な垂直に対しわずかに異なる角度で交差する場合を含むものとする。
第1のプリント基板21には、第1の端子11が接続されている。第2のプリント基板22には、第2の端子12が接続されている。第1の端子11は第1のプリント基板21のたとえば上側の主表面21aに固定されている。第2の端子12は第2のプリント基板22のたとえば右側の主表面22aに固定されている。ただしこれに限られない。第1の端子11は主表面21bに固定されてもよい。第2の端子12は主表面22bに固定されてもよい。
図2は、実施の形態1の電力変換装置を構成する接触通電部の構成を示す概略拡大断面図である。図2を参照して、図1に示す接触通電部10は、第1の端子11および第2の端子12との2つの端子により構成されている。ただし接触通電部10は、3つ以上の任意の数の端子により構成されてもよい。接触通電部10には、第1の端子11と第2の端子12とが接触するように接続された部分としての端子間接触面10Aが形成されている。
第1の端子11は、第1の接触部と、第1の接触部を取り囲み収納する形状を有する第1の収納部とを含む。第2の端子12は、第2の接触部と、第2の接触部を取り囲み収納する形状を有する第2の収納部とを含む。第1の接触部と第2の接触部とが接触した部分が端子間接触面10Aである。第1の収納部の外壁に第2の収納部の内壁が接触することにより、第1の収納部が第2の収納部に嵌合される。
具体的には、第1の端子11は、たとえばいわゆる端子受けである。すなわち第1の端子11としての端子受けは、第2の端子12としての端子と、いわゆる接触通電方式により互いに電気的に接続できる部材である。第1の端子11は、第1の接触部としてのコンタクト11Aと、第1の収納部としての第1のハウジング11Bとを有している。第1のハウジング11Bは、コンタクト11Aを取り囲むように収納する。
第1のハウジング11Bは、たとえば底面と、底面の縁部から延びる側面とからなっている。底面の平面形状はたとえば矩形状であることが好ましい。しかしこれに限らず、底面の平面形状はたとえば円形状であってもよい。また上記側面は、底面が矩形状の場合には4つの矩形の平板形状である。上記側面は、底面が円形状の場合には1つの円柱の側面としての曲面形状である。
第1のハウジング11Bの底面は、第1のプリント基板21の主表面21a上に固定されている。第1のハウジング11Bは、上記の底面と側面とにより、容器状に形成されている。この容器状の第1のハウジング11B内、すなわち底面と側面とに囲まれる空間の内部に、コンタクト11Aが配置される。コンタクト11Aは、たとえば図2のように概ね中央に空洞を有する筒状であってもよい。あるいはコンタクト11Aは、たとえばX方向およびY方向の少なくともいずれかについて間隔をあけて複数並び、Z方向に沿って延びる板状の部材であってもよい。すなわちコンタクト11Aは、その内側に空間を形成する態様となるような構成であることが好ましい。
第2の端子12は、第2の接触部としてのピン12Aと、第2の収納部としての第2のハウジング12Bとを有している。第2のハウジング12Bは、ピン12Aを取り囲むように収納する。
第2のハウジング12Bは、たとえば底面と、底面の縁部から延びる側面とからなっている。底面の平面形状はたとえば矩形状であることが好ましい。しかしこれに限らず、底面の平面形状はたとえば円形状であってもよい。また上記側面は、底面が矩形状の場合には4つの矩形の平板形状である。上記側面は、底面が円形状の場合には1つの円柱の側面としての曲面形状である。
図2に示すように、第2のハウジング12Bの底面は、第1のハウジング11Bの底面よりも少し大きいことが好ましい。具体的には、たとえば第1のハウジング11Bの側面のうち外側を向く外壁に、第2のハウジング12Bの側面のうち内側を向く内壁が接触することにより、第1のハウジング11Bが第2のハウジング12Bに嵌合される構成であることが好ましい。つまり第1のハウジング11Bの上側から、蓋のように第2のハウジング12Bが被さることで両者が嵌るように接合される。したがって平面視において第1のハウジング11Bの外壁と第2のハウジング12Bの内壁とがほぼ同じ大きさであることが好ましい。
ただし上記の嵌合が可能な程度に、第1のハウジング11Bの外壁と第2のハウジング12Bの内壁との間に隙間を有し、第2のハウジング12Bの内壁が第1のハウジング11Bの外壁よりやや大きくてもよい。その場合、第2のハウジング12Bの内壁が第1のハウジング11Bの外壁に接触しなくてもよい。なおこの場合には、第1のハウジング11Bの側面の最上部と第2のハウジング12Bの底面の内壁とが接触するように、第1のハウジング11Bが第2のハウジング12Bに嵌合されることが好ましい。
ピン12Aは一方向に延在する棒状の部材である。ピン12Aは、たとえば第2のプリント基板22の主表面22a上に固定されている。ピン12Aは、たとえば主表面22aにほぼ垂直な方向に延びるように固定されている。なおここでほぼ垂直とは、完全に垂直な場合に限らず、完全な垂直に対しわずかに異なる角度で交差する場合を含むものとする。すなわち主表面22aに近い領域においては、ピン12Aは、たとえばX方向に沿って延びている。ピン12Aは主表面22aに対して延びる方向が傾いた状態となっていてもよい。ピン12Aは、図2のように1か所以上においてある角度で屈曲し、そこからZ方向下方に向けて延びる態様であってもよい。ここでのある角度とは、図2においては約90°であるが、これに限らずたとえば約80°以下であってもよく、約60°以下であっても45°以下であってもよく、鈍角であってもよい。またピン12Aは、屈曲部を有さず、その全体においてX方向右側に向けて延びる態様であってもよく、Z方向下方に向けて延びる態様であってもよい。
ピン12Aのうち主表面22aから離れたZ方向下方に延びる部分が、コンタクト11Aのたとえば筒状の内部の空洞、または複数のコンタクト11Aの板状部材に挟まれる間隔部分に挿入される。これにより、コンタクト11Aの内側を向く表面部分と、ピン12Aの外側を向く表面部分とが接触する。接触通電部10のうち、コンタクト11Aの表面とピン12Aの表面とが接触した部分が端子間接触面10Aとして形成され、この端子間接触面10Aにおいて第1の端子11の表面と第2の端子12の表面とが接触し、通電経路となる。
以上のように、複数の端子である第1の端子11は、端子間接触面10Aにおいてその表面同士が接触される接触部としてのコンタクト11Aと、少なくとも1つの接触部を取り囲み収納する収納部としての第1のハウジング11Bとを備える。また複数の端子である第2の端子12は、端子間接触面10Aにおいてその表面同士が接触される接触部としてのピン12Aと、少なくとも1つの接触部を取り囲み収納する収納部としての第2のハウジング12Bとを備える。
第1の樹脂材料13は、端子間接触面10Aの外側に隣接する領域に配置される。第1の樹脂材料13は、端子間接触面10Aの外側に隣接する領域のコンタクト11Aおよびピン12Aの表面を覆うように配置される。このようにして、第1の樹脂材料13は、端子間接触面10Aを覆う。ここで端子間接触面10Aを覆うとは、端子間接触面10Aそのものを覆う場合に限らず、端子間接触面10Aに隣接する、端子間接触面10Aに最も近い周囲の部分の表面に接触する場合を含むものとする。これにより第1の樹脂材料13は、端子間接触面10Aが露出しないようにこれを外側から覆い封止する態様となっている。したがって、第1の樹脂材料13は、端子間接触面10Aの全体を覆う、言い換えれば包むように封止することが好ましい。
第2の樹脂材料15は、第1の樹脂材料13の表面の外側に配置されている。第2の樹脂材料15は、第1の端子11および第2の端子12からなる接触通電部10、第1の樹脂材料13、第1のプリント基板21、第2のプリント基板22の特にZ方向下側の領域、電子部品30,31を封止するように、それらの外側に配置されている。
図1および図2を参照して、第1のプリント基板21には、電子部品30と、電子部品31とが実装されている。図1では主表面21a上に電子部品30および電子部品31が実装されている。しかしこれに限らず、電子部品30および電子部品31の少なくとも一方は主表面21b上に実装されてもよい。第2のプリント基板22には、電子部品32が実装されている。図1では主表面22b上に電子部品32が実装されている。しかしこれに限らず、電子部品32は主表面22a上に実装されてもよい。なお電子部品30は、電子部品31,32よりも高温に発熱する。
より具体的には、より高温に発熱する電子部品30は、主表面21a上に形成された図示されない回路パターン上に、図示されない接合部材で接合される。これにより、電子部品30と当該回路パターンとは電気的に接続されている。また同様に、第1の端子11は、主表面21a上に形成された図示されない回路パターン上に、図示されない接合部材で接合される。これにより、第1の端子11と当該回路パターンとは電気的に接続されている。第2の端子12は、主表面22a上に形成された図示されない回路パターン上に、図示されない接合部材で接合される。これにより、第2の端子12の特にピン12Aと主表面22a上の回路パターンとは電気的に接続されている。主表面22a上に実装される第2の端子12の数は1つ以上の任意とすることができる。主表面21a上に実装される電子部品30および第1の端子11の数、および主表面22a上に実装される第2の端子12の数は、1つ以上の任意とすることができる。
上記の第1のプリント基板21、接触通電部10、第1の樹脂材料13、第2の樹脂材料15は、その全体が上記各部材を収納する冷却体40内に収容されている。ただし第2のプリント基板22はそのZ方向下側の領域のみ、すなわちその一部の領域が、冷却体40内に収容されている。ただし第2のプリント基板22についてもその全体が冷却体40内に収容されてもよい。冷却体40は、Z方向最下部の底面がたとえば矩形状である。ただしこれに限らず冷却体40の底面の形状は任意でありたとえば円形状であってもよい。また冷却体40は、上記底面からZ方向上方に側面が延びている。この側面は、底面が矩形状の場合には4つの矩形の平板形状である。上記側面は、底面が円形状の場合には1つの円柱の側面としての曲面形状である。
冷却体40は各部材を収納するため、ケースとしての機能を兼ねている。冷却体40内には第2の樹脂材料15が充填している。つまり冷却体40内においては第2の樹脂材料15により各部材が封止されている。特に、第1のプリント基板21と、主表面21a上に実装された高温に発熱する電子部品30と、接触通電部10の第1の樹脂材料13は、それらの表面のほぼ全体が第2の樹脂材料15に覆われるように封止されている。言い換えれば、冷却体40のたとえば内壁面と第2の樹脂材料15とが接触している。このことをさらに言い換えれば、冷却体40と第2の樹脂材料15とが熱的に結合している。また第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと、第2の樹脂材料15とが接触している。これを言い換えれば、第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと、第2の樹脂材料15とが熱的に結合している。なお電子部品31が第2の樹脂材料15に覆われるように封止されている。
第1のプリント基板21と、冷却体40のZ方向最下部にある底部の内壁との間には、絶縁性部材50が配置されている。絶縁性部材50は第1のプリント基板21とほぼ同一の、たとえば矩形の平面形状を有する平板部材である。絶縁性部材50のたとえば図1の下側の主表面50aは、冷却体40の内壁のうちZ方向下側の底面の主表面40aに接触している。また絶縁性部材50のたとえば図1の上側の主表面は、主表面21bと接触している。
次に、上記の電力変換装置100を構成する各部材の材質等について説明する。
第1の端子11のコンタクト11A、および第2の端子12のピン12Aは、導電性の材料からなる。このためコンタクト11Aおよびピン12Aは、1.0×10-6Ω・m以下、より好ましくは1.0×10-7Ω・m以下の体積抵抗率を有する。またコンタクト11Aは、ばね機構を備えることで弾性を有していてもよい。このようにすれば、ピン12Aをコンタクト11Aの内側の空洞部などに挿入する際に、コンタクト11Aがピン12Aに押し付けられる。このように押し付けられることで、コンタクト11Aの有する弾性により、ピン12Aがコンタクト11Aに挟持される。これによりコンタクト11Aとピン12Aとの表面同士が接触し、端子間接触面10Aが形成される。このようにしてコンタクト11Aとピン12Aとが接触通電方式により電気的に接続される。
第1の端子11の第1のハウジング11B、および第2の端子12の第2のハウジング12Bは任意の形状としてよいが上記のように互いに嵌合しあうことが可能な容器状の形状であることが好ましい。たとえばコンタクト11Aがピン12Aに押し付けられ、コンタクト11Aの有する弾性によりピン12Aがコンタクト11Aに挟持される丁度その時に、第1のハウジング11Bに第2のハウジング12Bが嵌合する形状となっていてもよい。なお第1のハウジング11Bおよび第2のハウジング12Bはたとえば絶縁性の樹脂材料が硬化されたものであることが好ましい。
本実施の形態の電力変換装置100において、第1の樹脂材料13は導電性を有する樹脂からなる。すなわち第1の樹脂材料13は、導電性フィラーが含まれるペースト状の樹脂である。第1の樹脂材料13の導電性フィラーは導電性を有している。このため当該導電性フィラーは、銀、ニッケル、金および銅からなる群から選択されるいずれかにより形成されている。あるいは当該導電性フィラーは、上記銀、ニッケル、金および銅からなる群から選択された2種類以上の合金であってもよい。あるいは当該導電性フィラーはカーボンであってもよい。第1の樹脂材料13に含まれるペースト状の樹脂は、たとえばエポキシ樹脂からなっている。また当該ペースト状の樹脂は、硬化剤を予め混合している1液性のものであってもよい。あるいは当該ペースト状の樹脂は、樹脂と硬化剤とをその使用直前に混合することにより得られる2液性のものであってもよい。
第1の樹脂材料13としての導電性樹脂は、その体積抵抗率が1.0×10-3Ω・m以下であり、より好ましくは1.0×10-4Ω・m以下であり、さらにより好ましくは1.0×10-5Ω・m以下である。
第1の樹脂材料13の当該導電性樹脂は、熱硬化性を有する。ここで熱硬化性を有する樹脂材料とは、たとえば第1の硬化条件である、25℃雰囲気で120分放置したときに、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで測定した硬度の値が10以上となる樹脂材料を意味する。あるいは熱硬化性を有する樹脂材料とは、たとえば第2の硬化条件である、50℃雰囲気で20分放置したときに、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで測定した硬度の値が10以上となる樹脂材料を意味する。さらに熱硬化性を有する樹脂材料とは、たとえば第3の硬化条件である、80℃雰囲気で10分放置したときに、JIS K 6253準拠のタイプAデュロメータで測定した硬度の値が10以上となる樹脂材料を意味する。上記の第1、第2または第3の硬化条件のうちいずれを用いるかについては樹脂材料ごとに異なっている。なお樹脂材料の種類に応じて、上記の第1、第2または第3の硬化条件以外の硬化条件が用いられてもよい。
第2の樹脂材料15は、絶縁性樹脂である。すなわち第2の樹脂材料15は、電気的に絶縁性を有している。第2の樹脂材料15としての絶縁性樹脂は、その体積抵抗率が1.0×109Ω・m以上である。当該絶縁性樹脂は、0.1W/(m・K)以上、より好ましくは1.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料からなってもよい。第2の樹脂材料15は、1MPa以上のヤング率を有してもよい。第2の樹脂材料15は、熱伝導性フィラーを含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂材料により形成されてもよい。第2の樹脂材料15は、シリコンまたはウレタンなどのゴム材料で構成されてもよい。
電力変換装置100において、第2の樹脂材料15の粘性は比較的低いことが好ましい。たとえば、冷却体40内に第2の樹脂材料15を充填する際に、供給される第2の樹脂材料15の粘性は1Pa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、さらにより好ましくは10mPa・s以下であることが好ましい。
第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の板状の本体部分は、以下の樹脂材料からなることが好ましい。すなわち当該本体部分は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群からなるいずれかの樹脂材料により形成されてもよい。言い換えれば、第1のプリント基板21および第2のプリント基板22は一般に熱伝導率が低いとされる材料で構成されていてもよい。つまり第1のプリント基板21および第2のプリント基板22は汎用のプリント基板であってもよい。また第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の本体部分は酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび炭化ケイ素からなる群から選択されるいずれかのセラミック材料により構成されてもよい。
第1のプリント基板21および第2のプリント基板22に形成される図示されない回路パターンは、厚みが1μm以上2000μm以下である。当該回路パターンは任意の導電性材料により形成される。当該回路パターンはたとえば銅、ニッケル、金、アルミニウム、銀および錫からなる群から選択されるいずれかにより形成される。あるいは当該回路パターンは、上記の銅、ニッケル、金、アルミニウム、銀および錫からなる群から選択された2種類以上の合金であってもよい。回路パターンは、主表面21a,21b,22a,22b上に限らず、第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の板状の本体部分の内部に形成されてもよい。
また上記回路パターン上に電子部品30などを接合するための図示されない接合部材は、導電性を有している。具体的には、当該接合部材は、はんだまたは導電性接着剤からなる。
比較的高温に発熱する電子部品30は、パワー半導体素子である。具体的には、電子部品30は、トランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオードおよびサイリスタからなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。あるいは電子部品30は、電力変換装置100の動作に伴い発熱するIC(Integrated Circuit)または磁性部品であってもよい。
電子部品30よりも発熱量の少ない電子部品31,32は、表面実装型のチップ抵抗、チップコンデンサ、ICから選択されるいずれかであることが好ましい。電子部品31,32は、パワー半導体素子であってもよい。電子部品31,32がパワー半導体素子である場合、電子部品31,32は電子部品30と比較して発熱量が少ないことを特徴とする。
冷却体40は、1.0W/(m・K)以上、より好ましくは10.0W/(m・K)以上、さらにより好ましくは100.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有している。冷却体40は、銅、鉄、アルミニウム、鉄合金およびアルミニウム合金からなる群から選択されるいずれかにより形成される。冷却体40は熱伝導率の高い樹脂材料などで形成されてもよい。冷却体40の電位がアースと同じ電位になるよう、冷却体40は他の部材と電気的に接続されてもよい。冷却体40のZ方向最下部にある底部における内壁側の主表面40aは、第1のプリント基板21の下側の主表面21bと対向している。
絶縁性部材50は、電気的な絶縁性を有している。絶縁性部材50は弾性を有してもよい。絶縁性部材50は、1MPa以上100MPa以下のヤング率を有してもよい。絶縁性部材50は、0.1W/(m・K)以上、より好ましくは1.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有してもよい。絶縁性部材50は、シリコンまたはウレタンなどのゴム材からなってもよい。絶縁性部材50は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリフェニレンサルファニド(PPS)およびフェノールからなる群から選択されるいずれかの樹脂材料により形成されてもよい。絶縁性部材50はポリイミドなどの高分子材料からなってもよい。絶縁性部材50はアルミナまたは窒化アルミニウムなどのセラミック材料からなってもよい。絶縁性部材50はシリコンを主原料とするフェイズチェンジマテリアルからなってもよい。絶縁性部材50はシリコン樹脂に酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素のうちいずれかの粒子を混入させた材料から構成されてもよい。絶縁性部材50は、第1のプリント基板21と冷却体40との間に配置される。絶縁性部材50は、その下側の主表面50aが、第1のプリント基板21の主表面21bにより、冷却体40の主表面40aに押圧されるように配置される。
図3は、実施の形態1に係る電力変換装置の構成の第2例を示す概略断面図である。図3を参照して、本実施の形態の第2例の電力変換装置100は、大筋で図1の第1例の電力変換装置100と同様の構成を有している。このため図3において図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、機能および材質等が同一である限りその説明を繰り返さない。ただし当該第2例の電力変換装置100においては、第1のプリント基板21が、固定部材60により冷却体40に固定されている。このような構成であってもよい。なお固定部材60は、たとえば一般公知のネジである。当該ネジは、たとえば金属または樹脂からなる。
次に図4を用いて、実施の形態1に係る電力変換装置100の製造方法について説明する。なお以下の説明に登場する各部材は、図1~図3に記載の各部材に対応する。図4は、実施の形態1に係る電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。図4を参照して、本実施の形態に係る電力変換装置100は、準備工程(S100)と、組立工程(S200)と、接続工程(S300)と、封止工程(S400)とを有している。
準備工程(S100)では、平板形状の第1のプリント基板21と、平板形状の第2のプリント基板22と、ケースとしての機能を兼ねた冷却体40と、平板形状の絶縁性部材50とが準備される。第1のプリント基板21には、高温に発熱する電子部品30と、端子受けとしての第1の端子11とが固定される。第2のプリント基板22には、端子としての第2の端子12が固定される。第1のプリント基板21には電子部品31が固定され、第2のプリント基板22には電子部品32が固定されてもよい。
組立工程(S200)では、冷却体40のZ方向最下部にある底部の内壁としての主表面40a上に、絶縁性部材50を介して、第1のプリント基板21が載置される。主表面40aと主表面50aとが互いに接触するように載置される。主表面21bが絶縁性部材50の上面と接触するように載置される。この状態で、冷却体40の底部と、絶縁性部材50と、第1のプリント基板21とが、たとえば固定部材60(図3参照)により固定される。また第2のプリント基板22の少なくとも一部、すなわちZ方向の下側の領域が冷却体40内に収まるように、第1のプリント基板21の上に配置される。ここでは第2のプリント基板22の主表面22a,22bが第1のプリント基板21の主表面21a,21bとほぼ垂直になるように配置されることが好ましい。
接続工程(S300)では、図1~図3のように、第1のプリント基板21に固定されている第1の端子11と、第2のプリント基板22に固定されている第2の端子12とが接続され、接触通電部10が形成される。ピン12Aのうち主表面22aから離れたZ方向下方に延びる部分が、コンタクト11Aのたとえば筒状の内部の空洞、または複数のコンタクト11Aの板状部材に挟まれる間隔部分に挿入される。これにより、コンタクト11Aの内側を向く表面部分と、ピン12Aの外側を向く表面部分とが接触する。接触通電部10のうち、コンタクト11Aの表面とピン12Aの表面とが接触した部分が端子間接触面10Aとして形成され、この端子間接触面10Aにおいて第1の端子11の表面と第2の端子12の表面とが接触および通電される。またこれにより、第2のプリント基板22の少なくとも一部が、冷却体40の容器状の部分の内部に配置される。
その後、形成された端子間接触面10Aの外側に隣接する領域のコンタクト11Aおよびピン12Aの表面に接しながらこれを覆うように、第1の樹脂材料13が配置される。すなわち冷却体40の内部において、第1の端子11のコンタクト11Aと第2の端子12のピン12Aとの接触部として形成される端子間接触面10Aを含浸するように、冷却体40内に第1の樹脂材料13が供給される。これにより、第1の樹脂材料13は端子間接触面10Aが外側に向けて露出しないように封止される。なお端子間接触面10Aの全体が封止されるように第1の樹脂材料13が供給されることが好ましい。その後、第1の樹脂材料13の特性に応じた硬化条件により、第1の樹脂材料13が硬化される。このようにして冷却体40内には第1の樹脂材料13の硬化部分が形成される。上記の第1の樹脂材料13の特性に応じた硬化条件とは、たとえば上記の第1の硬化条件、第2の硬化条件または第3の硬化条件のいずれかであることが好ましい。なお樹脂材料の種類に応じて、上記の第1、第2または第3の硬化条件以外の硬化条件が用いられてもよい。
封止工程(S400)では、冷却体40内の各部材を収容可能な領域に、第2の樹脂材料15が供給され充填される。その後、第2の樹脂材料15の特性に応じた硬化条件により、第2の樹脂材料15が硬化される。これにより、冷却体40内には第2の樹脂材料15の硬化部分が形成される。上記の第2の樹脂材料15の特性に応じた硬化条件とは、たとえば上記の第1の硬化条件、第2の硬化条件または第3の硬化条件のいずれかであることが好ましい。なお樹脂材料の種類に応じて、上記の第1、第2または第3の硬化条件以外の硬化条件が用いられてもよい。以上により、本実施の形態の電力変換装置100が形成される。
次に、従来技術の課題について補足的に説明したうえで、本実施の形態の電力変換装置100の作用効果について説明する。
上述した特開2008-147432号公報に記載の電力変換装置は、コネクタ内部の接点ばねと、これを覆うカバー内の信号端子とが接触通電方式で電気的に接続される。これにより接触通電部が略密閉空間に配置される。このためコネクタ内部の接点ばねと信号端子との当接部に間隙が生じやすくなる。特にプリント基板上に配置されるコネクタは、専用のマウント装置、または手挿入によりプリント基板上に配置される。このため、コネクタの上面部が、これと対向するカバーと隙間なく当接するようにコネクタを配置することは困難である。その結果、コネクタの上面部とカバーとの当接箇所が絶縁性樹脂で封止される場合に、上記間隙から、略密閉空間に配置されている接触通電部の端子間接触面に絶縁性樹脂が浸入する恐れがある。これにより、電気的接続の信頼性が低下するという課題がある。
上記の課題を解決するため、2つのプリント基板のそれぞれに1つの金属導体の一方の端部および他方の端部をはんだ付けするという方法がある。あるいは2つのプリント基板のそれぞれに、金属導体の一方の端部をはんだ付けし、それらの2つの金属導体同士を溶接するという方法がある。これらのいずれかの方法により2つのプリント基板間を電気的に接続することで、接触通電部を用いずに2つのプリント基板を電気的に接続する方法が考えられる。しかしながら、これらの方法を用いる場合、はんだ付けまたは溶接を行なう領域の周辺に、専用の加工治具が配置できるようなスペースを設ける必要がある。その結果、電力変換装置が大型化するという問題がある。またプリント基板を立体配置した状態で、はんだ付けおよび溶接を行うため、専用の加工治具が必要となり、製造工程が複雑化するという問題もあった。
以上の各課題に鑑み、本開示に従った電力変換装置100は、以下の構成を有している。当該電力変換装置100は、端子間接触面10Aと、第1の樹脂材料13と、第2の樹脂材料15とを備える。端子間接触面10Aは、複数の端子の表面同士が接触され通電される接触通電部10(接触通電方式の電気接続部)における、当該複数の端子の表面同士が接触することで形成される面である。第1の樹脂材料13は、端子間接触面10Aを覆うように端子間接触面10Aを封止する。第2の樹脂材料15は、第1の樹脂材料13の表面の外側に配置される。
上記の電力変換装置100は、接触通電方式の電気接続部である接触通電部10が用いられる。このため金属導体をはんだ付けまたは溶接することにより複数のプリント基板が接続される場合に必要とされる専用の加工治具が不要となる。このためそのような加工治具を配置できるようなスペースを設けることによる装置の大型化を抑制できる。また専用の加工治具を用いることによる製造工程の複雑化を抑制できる。
また端子間接触面10Aを覆うように第1の樹脂材料13が端子間接触面10Aを封止する。このためたとえばケースとしての冷却体40内に第2の樹脂材料15を供給し端子間接触面10Aを封止する際に、接触通電部10における端子間接触面10Aに絶縁性の樹脂である第2の樹脂材料15が浸入する不具合を抑制できる。第1の樹脂材料13が第2の樹脂材料15を第1の樹脂材料13よりも端子間接触面10A側へ進入しないようブロックするためである。このため接触通電部10における複数の端子の表面同士の接触および通電状態を確保し、それら複数の端子間の電気的接続の高い信頼性を確保できる。
上記電力変換装置100において、第1の樹脂材料13は、端子間接触面10Aの全体を覆うように封止することが好ましい。これにより、いっそう確実に、端子間接触面10Aに絶縁性の樹脂である第2の樹脂材料15が浸入する不具合を抑制できる。このため接触通電部10における複数の端子の表面同士の接触および通電状態を確保し、それら複数の端子間の電気的接続の高い信頼性を確保できる。
上記電力変換装置100において、第1の樹脂材料13は導電性樹脂であり、第2の樹脂材料15は絶縁性樹脂であることが好ましい。第1の樹脂材料13が導電性樹脂であるため、これが端子間接触面10Aを封止することにより、たとえ端子間接触面10Aに第1の樹脂材料13が付着したとしても、端子間接触面10Aにおける複数の端子間の電気的接続の信頼性低下が抑制される。一方、第2の樹脂材料15が絶縁性樹脂であることにより、電力変換装置100を構成するたとえばケース内の各部材間の電気的な短絡を抑制できる。
上記電力変換装置100において、第1の樹脂材料13は熱硬化性を有することが好ましい。たとえば第2の樹脂材料15の硬化条件が、ある時間内だけ高温状態を保つことである場合、上記の封止工程(S400)にて第2の樹脂材料15を硬化させるために、第1の樹脂材料13と第2の樹脂材料15とはほぼ同一の温度に上昇する。しかし第1の樹脂材料13は、封止工程(S400)に先立って行われる接続工程(S300)において既に硬化されている。このため封止工程(S400)では熱硬化性を有する第1の樹脂材料は変形しない。したがって外側から第1の樹脂材料13で封止された端子間接触面10Aには第2の樹脂材料15が浸入しない。このため、電力変換装置100の接触通電部10の電気的接続の高い信頼性を確保できる。
上記電力変換装置において、第1のプリント基板21と、第2のプリント基板22とをさらに備える。第1のプリント基板21は、複数の端子のうち少なくとも1つである第1の端子11が接続される。第2のプリント基板22は、複数の端子のうち少なくとも上記1つ以外の他の1つである第2の端子12が接続される。接触通電部10は、第1のプリント基板21に接続された端子である第1の端子11と、第2のプリント基板22に接続された端子である第2の端子12とにより形成される。接触通電部10には、第1の端子11と第2の端子12とが接触するように接続された部分としての上記端子間接触面10Aが形成される。このような構成であってもよい。
つまり、プリント基板が第1のプリント基板21と第2のプリント基板22との2つに分割されている。これら2つのプリント基板が、第1の端子11および第2の端子12により、接触通電方式で電気的に接続されている。このため、複数のプリント基板間をはんだ付けまたは溶接により電気的に接続する場合に必要となる、当該はんだ付けまたは溶接がなされる領域に隣接する領域にて専用の加工治具を配置するスペースを不要とできる。このため電力変換装置100を小型化できる。
上記電力変換装置100において、第2のプリント基板22の少なくとも一部、ならびに第1のプリント基板21、接触通電部10、第1の樹脂材料13および第2の樹脂材料15を収容する冷却体40をさらに備える。冷却体40と第2の樹脂材料15とが接触している。第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと、第2の樹脂材料15とが接触している。なおここでの冷却体40と第2の樹脂材料15との接触、および第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと第2の樹脂材料15との接触は、たとえば熱的な結合すなわちいわゆる熱結合を意味する。このような構成であることが好ましい。
第2の樹脂材料15は、大気に比べて熱伝導率が高い。よって、冷却体40内を第2の樹脂材料15で封止しない場合と比べて、たとえば装置内にて高温に発熱する電子部品30と、第1のプリント基板21の回路パターンとが発生する熱を、第2の樹脂材料15を介して冷却体40へ放熱できる。その結果、高温に発熱する電子部品30と、第1のプリント基板21の回路パターンで発生した熱に対する放熱性を向上できる。その結果、電力変換装置100に放熱用のヒートシンクを設ける必要がなくなる分だけ、電力変換装置100を小型化できる。
また第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと第2の樹脂材料15とが接触している。このため冷却体40内において、硬化された第2の樹脂材料15が、第1のプリント基板21と第2のプリント基板22の少なくともいずれかと接触通電部10との冷却体40に対する機械的固定を強固にできる。すなわち第1のプリント基板21などが動かないよう、冷却体40内に充填される硬化された第2の樹脂材料15により固定される。したがって電力変換装置100の耐振動性を向上できる。
上記電力変換装置100において、第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかには電子部品30,31,32が実装される。上記電子部品30,31,32の少なくとも一部が第2の樹脂材料15に封止される。このような構成であってもよい。
このような構成による作用効果は、上記の第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと、第2の樹脂材料15とが接触していることによる作用効果と、基本的に同様である。すなわち第2の樹脂材料15は、大気に比べて熱伝導率が高い。よって、冷却体40内を第2の樹脂材料15で封止しない場合と比べて、たとえば装置内にて高温に発熱する電子部品30および電子部品31,32と、第1のプリント基板21の回路パターンとが発生する熱を、第2の樹脂材料15を介して冷却体40へ放熱できる。
その他、本実施の形態においては、第2の樹脂材料15の粘性がたとえば1Pa・s以下と低いことが好ましい。第2の樹脂材料15の粘性を低くすれば、狭い空間へ第2の樹脂材料15が浸入しやすくなる。このため、第2の樹脂材料15の粘性が高い場合に比べ、封止工程(S400)において第2の樹脂材料15で封止された冷却体40内に発生するボイドを減らすことができる。その結果、ボイドに起因して発生する部分放電、およびボイドによる放熱性の低下を考慮して電力変換装置100を設計する必要がなくなる。
本実施の形態の電力変換装置100の製造方法では、以下のようになされる。上記の接続工程(S300)において、第1のプリント基板21に固定された第1の端子11のコンタクト11Aと、第2のプリント基板22に固定された第2の端子12のピン12Aとが、接触通電方式で電気的に接続される。第1の端子11の第1のハウジング11Bが第2の端子12の第2のハウジング12Bの上側から蓋のように被せられる。これにより、第2のハウジング12Bの上に第1のハウジング11Bが接触するように嵌合される。たとえば第2のハウジング12Bの外側の側面と、第1のハウジング11Bの内側の側面とが接触するように嵌合される。このような構成であってもよい。
これにより、第1のプリント基板21と第2のプリント基板22とが、接触通電方式で電気的に接続される。このため、たとえば第1のプリント基板21と第2のプリント基板22との主表面が互いにほぼ垂直に配置された状態で、はんだ付けまたは溶接により両社が電気的に接続される場合に必要となる専用の加工治具を不要とできる。このため電力変換装置100を比較的容易に製造できる。
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る電力変換装置の構成の第1例を示す概略断面図である。図5を参照して、本実施の形態の電力変換装置101は、大筋で図1に示す実施の形態1の第1例の電力変換装置100と同様の構成を有している。このため図5において図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、機能および材質等が同一である限りその説明を繰り返さない。ただし図5の電力変換装置101においては、第1の樹脂材料13は配置されない。その代わりに、図5の電力変換装置101においては、端子間接触面10Aと間隔をあけて、端子間接触面10Aを取り囲むように第1の樹脂材料14が配置されている。この点において本実施の形態は、端子間接触面10Aを覆う、すなわち包むように端子間接触面10Aを封止する第1の樹脂材料13を備えている実施の形態1の電力変換装置100とは構成上異なっている。
第1の樹脂材料14は、端子間接触面10Aの外側の全体において、端子間接触面10Aと間隔をあけて取り囲むように配置されている。したがって第1の樹脂材料14は第1の樹脂材料13とは異なり、端子間接触面10Aには一切接触しないことが好ましい。また第1の樹脂材料14は第1の樹脂材料13とは異なり、端子間接触面10Aの外側に隣接する領域のコンタクト11Aおよびピン12Aの表面を一切覆わないように配置されることが好ましい。すなわち第1の樹脂材料14は、第1のハウジング11Bと、これの上側から嵌合する第2のハウジング12Bとの外側に配置される。第1の樹脂材料14は、第1のハウジング11Bおよび第2のハウジング12Bの外側の壁面を覆うように配置されてもよい。そのように配置されても、少なくとも第1のハウジング11Bおよび第2のハウジング12Bの本体部分を挟む。このため図5の第1の樹脂材料14は、コンタクト11A、ピン12Aおよび端子間接触面10Aに接触していない。
本実施の形態では、第1の樹脂材料14および第2の樹脂材料15は、いずれも絶縁性樹脂である。第1の樹脂材料14は、第2の樹脂材料15よりも粘性が高い。具体的には、第1の樹脂材料14の粘性は1Pa・sを超えている。ただし第1の樹脂材料14の粘性は、10Pa・s以上であることがより好ましく、その中でも100Pa・s以上であることがいっそう好ましい。なお第2の樹脂材料15の粘性は1Pa・s以下である。
第1の樹脂材料14は、熱伝導性フィラーを含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂材料により形成されてもよい。あるいは第1の樹脂材料14は、シリコンまたはウレタンなどのゴム材料により形成されてもよい。第2の樹脂材料15よりも粘性が高い第1の樹脂材料14は、熱硬化性を有する。第1の樹脂材料14は、実施の形態1の第1の樹脂材料13と同様に、冷却体40内に収容されている。
次に図6を用いて、実施の形態2に係る電力変換装置101の製造方法について説明する。図6は、実施の形態2に係る電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。図6を参照して、本実施の形態に係る電力変換装置101は、準備工程(S101)と、組立工程(S201)と、接続工程(S301)と、封止工程(S401)とを有している。準備工程(S101)は図4の準備工程(S100)に対応する。組立工程(S201)は図4の組立工程(S200)に対応する。接続工程(S301)は図4の接続工程(S300)に対応する。封止工程(S401)は図4の封止工程(S400)に対応する。各工程は実施の形態1の対応する工程と大筋で同様であるため、以下の各工程において実施の形態1と同様の処理を行なう部分についてはその説明を繰り返さない。
準備工程(S101)は基本的に実施の形態1の準備工程(S100)と同様である。組立工程(S201)は基本的に実施の形態1の組立工程(S200)と同様である。
接続工程(S301)も大筋で実施の形態1の接続工程(S300)と同様である。つまり、端子間接触面10Aにおいて、第1のプリント基板21に固定された第1の端子11のコンタクト11Aの表面と、第2のプリント基板22に固定された第2の端子12のピン12Aの表面とが接触および通電される。またこれにより、第2のプリント基板22の少なくとも一部が、冷却体40の容器状の部分の内部に配置される。
その後、形成された端子間接触面10Aと間隔をあけて、その外側から端子間接触面10Aを取り囲むように、第1の樹脂材料14が供給される。第1の樹脂材料14は、互いに接触するよう嵌合された第1のハウジング11Bおよび第2のハウジング12Bの外側の表面を覆うように、冷却体40の容器状の部分の内部に供給される。このため第1の樹脂材料14は、第1のハウジング11Bおよび第2のハウジング12Bの容器状の部分の内部には浸入しない。また第1の樹脂材料14は、第1の端子11のコンタクト11Aおよび第2の端子12のピン12Aの表面にも接触しないように供給される。
供給された第1の樹脂材料14は、その特性に応じた硬化条件により硬化される。このようにして冷却体40内には第1の樹脂材料14の硬化部分が形成される。上記の第1の樹脂材料14の特性に応じた硬化条件とは、たとえば上記の第1の硬化条件、第2の硬化条件または第3の硬化条件のいずれかであることが好ましい。なお樹脂材料の種類に応じて、上記の第1、第2または第3の硬化条件以外の硬化条件が用いられてもよい。
封止工程(S401)は基本的に実施の形態1の封止工程(S400)と同様である。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態に従った電力変換装置101は、端子間接触面10Aと、第1の樹脂材料14と、第2の樹脂材料15とを備える。端子間接触面10Aは、複数の端子の表面同士が接触され通電される接触通電部10(接触通電方式の電気接続部)における、当該複数の端子の表面同士が接触することで形成される面である。第1の樹脂材料14は、端子間接触面10Aと間隔をあけて、端子間接触面10Aを取り囲む。第2の樹脂材料15は、第1の樹脂材料14の表面の外側に配置される。
本実施の形態の電力変換装置101も、接触通電方式の電気接続部である接触通電部10が用いられる。このため金属導体をはんだ付けまたは溶接することにより複数のプリント基板が接続される場合に必要とされる専用の加工治具が不要となる。このためそのような加工治具を配置できるようなスペースを設けることによる装置の大型化を抑制できる。また専用の加工治具を用いることによる製造工程の複雑化を抑制できる。
また端子間接触面10Aと間隔をあけて、第1の樹脂材料14が端子間接触面10Aを取り囲む。このためたとえばケースとしての冷却体40内に第2の樹脂材料15を供給し端子間接触面10Aを封止する際に、接触通電部10における端子間接触面10Aに絶縁性の樹脂である第2の樹脂材料15が浸入する不具合を抑制できる。第1の樹脂材料14が第2の樹脂材料15を第1の樹脂材料14よりも端子間接触面10A側へ進入しないようブロックするためである。このため接触通電部10における複数の端子の表面同士の接触および通電状態を確保し、それら複数の端子間の電気的接続の高い信頼性を確保できる。
上記電力変換装置101において、第1の樹脂材料14は、端子間接触面10Aの外側の全体において、端子間接触面10Aと間隔をあけて取り囲むように配置されることが好ましい。これにより、いっそう確実に、端子間接触面10Aに絶縁性の樹脂である第2の樹脂材料15が浸入する不具合を抑制できる。このため接触通電部10における複数の端子の表面同士の接触および通電状態を確保し、それら複数の端子間の電気的接続の高い信頼性を確保できる。
上記電力変換装置101において、第1の樹脂材料14および第2の樹脂材料15は絶縁性樹脂である。第1の樹脂材料14は第2の樹脂材料15よりも粘性が高い。このような構成であることが好ましい。たとえば上記の接続工程(S301)にて、第1の樹脂材料14の粘性を第2の樹脂材料15よりも高くし、第1の樹脂材料14は接触通電部10の端子間接触面10Aと間隔をあけてこれの周囲を取り囲むように配置される。また第1の樹脂材料14は、コンタクト11Aおよびピン12Aと間隔をあけてこれの周囲を取り囲むように配置される。これにより、第1の樹脂材料14が硬化する際に、その高い粘性により、狭い空間に浸入しにくくなる。このため粘性の高い第1の樹脂材料14は、接続工程(S301)において、端子間接触面10A側に浸入しないまま、端子間接触面10Aと間隔をあけた状態のまま、硬化する。また、封止工程(S401)にて、第2の樹脂材料15で冷却体40内を封止する際に、第1の端子11と第2の端子12とからなる接触通電部10は、硬化した粘性の高い第1の樹脂材料14に囲まれる。このため端子間接触面10Aに第2の樹脂材料15が入り込まない。したがって電力変換装置101の接触通電部10の端子間接触面10Aにおける電気的接続の高い信頼性を確保できる。
図7は、実施の形態2に係る電力変換装置の構成の第2例に含まれる、接触通電部の変形例を示す概略斜視図である。図7を参照して、当該図においては、第2の端子12が2つのピン12Aを含んでいる。このように単一の第2の端子12が複数のピン12Aを含む場合、第1の端子11と第2の端子12による端子間接触面10Aの周囲を囲むように第1の樹脂材料14を配置しても、複数のピン12A同士が電気的に短絡する可能性が排除される。その結果、第1のプリント基板21と、第2のプリント基板22とを電気的に接続する経路が2つ以上あって、それらの電気的接続経路の電位が互いに異なる場合であっても、2つのプリント基板の電気的接続を、コンタクト11Aおよびピン12Aの端子間接触面10Aに集約できる。その結果、本実施の形態の電力変換装置101を小型化できる。
その他、本実施の形態における粘性の高い第1の樹脂材料14は熱硬化性を有する。このため実施の形態1の第1の樹脂材料13が熱硬化性を有することによる作用効果と同様の作用効果を奏する。
上記本実施の形態の電力変換装置101において、第2のプリント基板22の少なくとも一部、ならびに第1のプリント基板21、接触通電部10、第1の樹脂材料14および第2の樹脂材料15を収容する冷却体40をさらに備える。冷却体40と第2の樹脂材料15とが接触している。第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと、第2の樹脂材料15とが接触している。なおここでの冷却体40と第2の樹脂材料15との接触、および第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと第2の樹脂材料15との接触は、たとえば熱的な結合すなわちいわゆる熱結合を意味する。このような構成であることが好ましい。これにより、実施の形態1の上記と同様の構成による作用効果と同様の作用効果を奏する。
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す概略断面図である。図8を参照して、本実施の形態の電力変換装置102は、大筋で図1に示す実施の形態1の第1例の電力変換装置100と同様の構成を有している。このため図8において図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、機能および材質等が同一である限りその説明を繰り返さない。ただし図8の電力変換装置102においては、第1の樹脂材料13は配置されない。その代わりに、図8の電力変換装置102においては、端子間接触面10Aの外側に隣接する領域に、第1の樹脂材料16が配置される。第1の樹脂材料16は導電性樹脂である。第1の樹脂材料16は、端子間接触面10Aの外側に隣接する領域のコンタクト11Aおよびピン12Aの表面を覆うように配置される。このようにして、第1の樹脂材料16はは、端子間接触面10Aを覆う。ここで端子間接触面10Aを覆うとは、端子間接触面10Aそのものを覆う場合に限らず、端子間接触面10Aに隣接する、端子間接触面10Aに最も近い周囲の部分の表面に接触する場合を含むものとする。これにより第1の樹脂材料16は、端子間接触面10Aが露出しないようにこれを外側から覆い封止する態様となっている。したがって、第1の樹脂材料16は、端子間接触面10Aの全体を覆う、言い換えれば包むように封止することが好ましい。なお第2の樹脂材料15は絶縁性樹脂である。
図9は、実施の形態3に係る電力変換装置の構成に含まれる、接触通電部の例を示す概略斜視図である。図9を参照して、本実施の形態の電力変換装置102(図8参照)は、第2の端子12のピン12Aが、2つのピン12Aaおよびピン12Abを含んでいる。
ピン12Aaおよびピン12Abは、第1のプリント基板21と第2のプリント基板22との間で、電源供給する経路を形成する。またピン12Aaおよびピン12Abは、第1のプリント基板21と第2のプリント基板22との間で、電気信号を伝送する経路の一部を形成してもよい。なお当該電気信号を伝送する経路の他の一部は、たとえば上記のコンタクト11A(図2参照)などである。伝送される電気信号は、HighとLowとの2値で伝送されるデジタル信号である。具体的には当該電気信号は、たとえば電力変換装置102の運転オン/オフ切替信号、またはスイッチング半導体の駆動信号などである。スイッチング半導体は、トランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、サイリスタなどである。
図10は、実施の形態3に係る電力変換装置に含まれる第1のプリント基板および第2のプリント基板の電気接続の例を示す回路図である。図10を参照して、第2のプリント基板22の主表面22a,22b(図8参照)上に、第1の信号源S1と、第2の信号源S2とが配置される。なお第1の信号源S1は以下において信号源S1と示す場合があり、第2の信号源S2は以下において信号源S2と示す場合がある。信号源S1および信号源S2のそれぞれの出力信号は、High状態と、出力なし状態であるLow状態との2つの値のいずれかとなる。
第1のプリント基板21には、第1の端子11が接続されている。第1のプリント基板21の主表面21a,21b(図8参照)上には、受信回路70が配置される。信号源S1の出力信号は、ピン12Aaを経由して、受信回路70のポート70aに入力される。信号源S2の出力信号は、ピン12Abを経由して、受信回路70のポート70bに入力される。言い換えれば受信回路70は、複数の端子の少なくとも1つである第2の端子12のピン12Aa,12Abに接続されている。第1の信号源S1は、複数の端子の一部であるピン12Aaを経由して受信回路70に入力可能な第1の出力信号を出力する。第2の信号源S2は、複数の端子の他の一部であるピン12Abを経由して受信回路70に入力可能な第2の出力信号を出力する。
ポート70aの電位を第1の電位Paとする。ポート70aと接続された電気配線は、接地抵抗Raにより、信号グランド71にプルダウンされる。
ポート70bの電位を第2の電位Pbとする。ポート70bと接続された電気配線は、接地抵抗Rbにより、信号グランド71にプルダウンされる。
以下の説明においては、図10の信号グランド71の電位を基準値である0Vとする。たとえば信号源S1の出力信号が5VすなわちHigh状態の時、第1の電位Paは5VすなわちHigh状態となる。信号源S1の出力信号が出力なし状態すなわちLow状態の時、第1の電位Paは接地抵抗Raでプルダウンされ0Vとなる。また、たとえば信号源S2の出力信号が5VすなわちHigh状態の時、第2の電位Pbは5VすなわちHigh状態となる。信号源S2の出力信号が出力なし状態すなわちLow状態の時、第2の電位Pbは接地抵抗Rbでプルダウンされ0Vとなる。
受信回路70は、ポート70a,70bの電位Pa,Pbにより、信号源S1,S2の出力信号の状態を判別する。たとえば、受信回路70は、第1の電位Paが高電位側の閾値電圧VthHより高い場合、信号源S1の出力信号がHigh状態であると判定し、かつ第2の電位Pbが低電位側の閾値電圧VthLより低い場合、信号源S2の出力信号がLow状態であると判定する。
ここで仮に、第1の樹脂材料16が第1の樹脂材料13と同じく、導電性樹脂の体積抵抗率が1.0×10-3Ω・m以下の導電性樹脂である場合を考える。図11は、実施の形態3において第1の樹脂材料が端子間接触面10Aを覆うように入り込んだ場合の、図10の回路図に相当する回路図である。図11を参照して、この場合、第1の樹脂材料16は、ピン12Aaとピン12Abとを電気的に接続するショート抵抗Rsを形成する。また、第1の樹脂材料16が端子間接触面10Aを覆うとともに端子間接触面10Aに挟まれる領域内に入り込んだ場合、第1の樹脂材料16は、ピン12Aaとポート70aとを接続する電気配線に直列に挿入される抵抗Rcを形成する。また第1の樹脂材料16は、ピン12Abとポート70bとを接続する電気配線に直列に挿入される抵抗Rdを形成する。
一例として、信号源S1の第1の出力信号が5VすなわちHigh状態であり、信号源S2の第2の出力信号が出力なし状態すなわちLow状態である場合を考える。このときの第1の電位Paは以下の式(1)で算出され、第2の電位Pbは以下の式(2)で算出される。
たとえば、受信回路70の第1の出力論理閾値電圧VthHを3Vとする。受信回路70の第2の出力論理閾値電圧VthLを2Vとする。接地抵抗Raおよび接地抵抗Rbの抵抗値を10kΩとする。またショート抵抗Rsが長さ2mm、断面積10mm2、体積抵抗率が1.0×10-3Ω・mの第1の樹脂材料13で形成されるとき、ショート抵抗Rsの抵抗値は200mΩとなる。また抵抗Rcおよび抵抗Rdが長さ1μm、断面積1mm2、体積抵抗率が1.0×10-3Ω・mの第1の樹脂材料13で形成されるとき、抵抗Rcおよび抵抗Rdの抵抗値は1mΩとなる。このとき式(1),(2)により第1の電位Paは5.0Vとなり、第2の電位Pbは5.0Vとなり、第2の電位Pbが第2の出力論理閾値電圧VthLより高くなる。このため受信回路70は、信号源S2の出力信号の状態を正しく判定できない。
上記の問題を解決するため、本実施の形態に係る電力変換装置102に含まれる第1の樹脂材料16は、実施の形態1の第1の樹脂材料13よりも体積抵抗率が高い導電性樹脂である。第1の樹脂材料16としての導電性樹脂は、体積抵抗率が1.0×10-3Ω・mを超え1.0×109Ω・m未満である。
第1の樹脂材料16の導電性樹脂は、熱硬化性を有する。ここでの熱硬化性を有する樹脂材料は、実施の形態1での熱硬化性を有する樹脂材料と同様に定義できる。
電力変換装置102では、第1の樹脂材料16の体積抵抗率が、1.0×10-3Ω・mを超え1.0×109Ω・m未満の範囲内のうち、以下の条件1および条件2の双方を同時に満足できる値となるように調整される。
条件1:信号源S1の第1の出力信号がHigh状態で、信号源S2の第2の出力信号がLow状態のとき、式(2)で算出される第2の電位Pbが、受信回路70の低電位側の第2の出力論理閾値電圧VthLよりも低い。
条件2:信号源S1の第1の出力信号がHigh状態で、信号源S2の第2の出力信号がLow状態のとき、式(1)で算出される第1の電位Paが、受信回路70の高電位側の第1の出力論理閾値電圧VthHよりも高い。
上記の条件1および条件2を同時に満足することにより、第1の電位Paと第2の電位Pbとの電位差が十分に大きくなることから、信号源S1の第1の出力信号がHigh状態で、信号源S2の第2の出力信号がLow状態であることが確認できる。
上記条件1,条件2を用いた第1の樹脂材料16の体積率の設計例を以下に示す。たとえば接地抵抗Ra,Rbの抵抗値を10kΩとする。信号源S1の第1の出力信号を5VつまりHigh状態とし、信号源S2の第2の出力信号を出力なし状態つまりLow状態とする。受信回路70の第1の出力論理閾値電圧VthHを3Vとする。受信回路70の第2の出力論理閾値電圧VthLを2Vとする。第1の樹脂材料16の体積抵抗率を1.0×102Ω・mとする。
ショート抵抗Rsが長さ2mm、断面積10mm2、体積抵抗率が1.0×102Ω・mの第1の樹脂材料16で形成されるとき、ショート抵抗Rsの抵抗値は20kΩとなる。また抵抗Rc,Rdが長さ1μm、断面積1mm2、体積抵抗率が1.0×102Ω・mの第1の樹脂材料16で形成されるとき、抵抗Rcおよび抵抗Rdの抵抗値は100Ωとなる。このとき式(1)により、第1の電位Paは4.9Vとなり、受信回路70の第1の出力論理閾値電圧VthHより高くなることから、条件2を満足することが確認できる。また式(2)により第2の電位Pbは1.6Vとなり、受信回路70の第2の出力論理閾値電圧VthLより低くなる。このことから、条件1を満足することが確認できる。このため1.0×10-3Ω・mよりも大きく1.0×109Ω・mよりも小さい値のうち、条件1と条件2との双方を同時に満たすたとえば1.0×102Ω・mとなるように第1の樹脂材料16の体積抵抗率の値を調整すなわち選択することは可能であるといえる。第1の樹脂材料16の体積抵抗率が、条件1と条件2とが同時に満足されるよう、1.0×10-3Ω・mを超え1.0×109Ω・m未満の数値範囲内から選択されれば、信号源S1の第1の出力信号がHigh状態で、信号源S2の第2の出力信号がLow状態であることが確認できる。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態に従った電力変換装置102は、端子間接触面10Aと、第1の樹脂材料16と、第2の樹脂材料15とを備える。端子間接触面10Aは、複数の端子の表面同士が接触され通電される接触通電部10(接触通電方式の電気接続部)における、当該複数の端子の表面同士が接触することで形成される面である。第1の樹脂材料16は、端子間接触面10Aを覆うように端子間接触面10Aを封止する。第2の樹脂材料15は、第1の樹脂材料16の表面の外側に配置される。第1の樹脂材料16の体積抵抗率は1.0×10-3Ω・mを超え1.0×109Ω・m未満である。
本実施の形態に従った電力変換装置102は、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様の効果を得ることができる。ただし第1の樹脂材料16は、第1の樹脂材料13よりも体積抵抗率が高い導電性樹脂からなる。このため、端子間接触面10Aに入り込んだ第1の樹脂材料16の抵抗値は、実施の形態1に係る電力変換装置100において端子間接触面10Aに入り込んだ第1の樹脂材料13の抵抗値よりも高くなる。この結果、端子間接触面10Aに電流を流した際、実施の形態1に係る電力変換装置100と比べ、実施の形態3に係る電力変換装置102の端子間接触面10Aにおける発熱が増大してしまう。
電力変換装置102における第1の樹脂材料16の体積抵抗率は、1.0×10-3Ω・mを超え1.0×109Ω・m未満の数値範囲内から、以下の条件1および条件2の双方を同時に満足するように選択される。
条件1:信号源S1の第1の出力信号がHigh状態で、信号源S2の第2の出力信号がLow状態のとき、式(2)で算出される第2の電位Pbが、受信回路70の低電位側の第2の出力論理閾値電圧VthLよりも低い。
条件2:信号源S1の第1の出力信号がHigh状態で、信号源S2の第2の出力信号がLow状態のとき、式(1)で算出される第1の電位Paが、受信回路70の高電位側の第1の出力論理閾値電圧VthHよりも高い。
なお第1の樹脂材料16の体積抵抗率が1.0×10-3Ω・mを超え1.0×109Ω・m未満である電力変換装置102は、受信回路70と、第1の信号源S1と、第2の信号源S2とを備える。受信回路70は複数の端子の少なくとも1つ(たとえばピン12Aa,12Abを含む第2の端子12)に接続される。第1の信号源S1は、複数の端子の一部(ピン12Aa)を経由して受信回路70に入力可能な第1の出力信号を出力する。第2の信号源S2は、複数の端子の一部(ピン12Ab)を経由して受信回路70に入力可能な第2の出力信号を出力する。
第1の樹脂材料16の体積抵抗率は条件1を満足するように選択される。その結果、第1のプリント基板21と、第2のプリント基板22とを電気的に接続する経路が2つ以上あって、それらの電気的接続経路の電位Pa,Pbが互いに異なる場合であっても、2つのプリント基板21,22の電気的接続を、コンタクト11Aおよびピン12Aの端子間接触面10Aに集約できる。その結果、2つのプリント基板すなわち第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の電気的接続をコンタクト11Aおよびピン12Aの端子間接触面10Aに集約しない場合に比べ、本実施の形態の電力変換装置102を小型化できる。
第1の樹脂材料16の体積抵抗率は条件2を満足するように選択される。その結果、端子間接触面10Aに第1の樹脂材料16が入り込んだ場合でも、ピン12Aaおよびピン12Abを通じて伝送される電気信号により、第2のプリント基板22に配置された信号源S1および信号源S2のそれぞれの出力状態を、第1のプリント基板21に配置された受信回路70が正しく判定できる。その結果、本実施の形態の電力変換装置102の制御の信頼性を向上できる。
その他、本実施の形態における第1の樹脂材料16は熱硬化性を有する。このため実施の形態1の第1の樹脂材料13が熱硬化性を有することによる作用効果と同様の作用効果を奏する。
上記本実施の形態の電力変換装置102において、第2のプリント基板22の少なくとも一部、ならびに第1のプリント基板21、接触通電部10、第1の樹脂材料16および第2の樹脂材料15を収容する冷却体40をさらに備える。冷却体40と第2の樹脂材料15とが接触している。第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと、第2の樹脂材料15とが接触している。なおここでの冷却体40と第2の樹脂材料15との接触、および第1のプリント基板21および第2のプリント基板22の少なくともいずれかと第2の樹脂材料15との接触は、たとえば熱的な結合すなわちいわゆる熱結合を意味する。このような構成であることが好ましい。これにより、実施の形態1の上記と同様の構成による作用効果と同様の作用効果を奏する。
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。