以下、本発明を図面と共に詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるとろみ判別器の使用状態を示すものである。
図1において、とろみ判別器10は匙101とガイド102とにより構成されており、匙101は液体を掬うつぼ部103と柄104と柄尻にある操作部105とからなる。また、ガイド102は、匙の柄104を挟むように平行に並んだ2本の支柱113と、それらを結合する横木115と、回転軸114とからなり、回転軸114の両端を各支柱113の中央に固定している。そして、回転軸114は匙の柄104のほぼ中央を貫通して、匙の柄104を回転可能に支持している。
図2(a)は本発明の第1の実施の形態におけるとろみ判別器の正面図であり、図2(b)はとろみ判別器の右側面図であり、図2(c)はとろみ判別器の匙101のみの右側面図である。
図2(a)と図2(c)において、匙のつぼ部103は液体を掬うための凹面とその背面の凸面を形成している。
柄104は細長い平板であり、つぼ部の深さ方向に力を加えることでわずかに撓む程度の厚さを有している。匙のつぼ部103と柄104の材質はステンレスや樹脂であるが、粘度の高い液状の検体を掬う方向に往復動作できる必要があり、わずかに可撓性を有するものが好ましい。また、柄104のほぼ中央部にガイド102の回転軸114を通すための軸孔116が貫通しており、その軸孔116よりもつぼ部103側の位置に歪みセンサ106が柄104の両面に貼り付けられている。この歪みセンサ106は接着型の金属製歪みゲージであるが、検体の温度の影響を受けにくい、温度補正用の歪みゲージを付加したタイプのものを使用するのが好ましい。また、歪みセンサ106を柄104の両面に付して両者の出力の差分を歪みセンサ出力とすることにより、わずかな歪み量も正確に測定可能にしている。
操作部105は匙101の柄尻に取り付けてあり、とろみ段階を表示するLED107、LED108、LED109と、測定開始スイッチ110と、スピーカー111と図示していない制御部と加速度センサ112と図示していない電源部とを備えている。とろみ段階を表示するLED107、LED108、LED109は、上記した「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」の「学会分類2013(とろみ)」の規定に従い、それぞれ薄い、中間、濃いの3段階を示すものである。
測定開始スイッチ110は、検体の粘度の測定開始を制御部に指示するものであり、モーメンタリ動作を行う。加速度センサ112は半導体ピエゾ抵抗型3軸加速度センサであり、匙が振られたときの操作部105の加速度を検出するものである。
制御部は、後述するような液状の検体の粘度測定を行い、その結果からとろみ段階を決定し、3つのLEDのいずれかを点灯するものである。また、電源部はバッテリーから構成され、制御部や加速度センサ112や歪みセンサ106に給電するものである。
図2(a)と図2(b)に示すように、ガイド102は両端部近傍が開いており、匙101とガイド102とを一直線上に重なる状態にしたとき、匙のつぼ部103はガイド102と接触することなく、また、操作部105はガイド102の両端部と勘合して匙101を固定することができる形状をしている。これにより、匙101とガイド102とが一直線上にたためるので携帯性に優れている。
次に、本発明の第1の実施の形態におけるとろみ判別器の使用方法を説明する。
図1において、容器20は透明なものであって、中に液状の検体30を注いだ状態を示している。
まず、測定者は、とろみ判別器の匙101のつぼ部103全体が検体中に侵漬するようにガイド102の支柱113を容器20の口縁に載せる。
次に、操作部105の測定開始スイッチ110を押すとスピーカー111から一定の時間間隔で音(リズム音)が出力されるので、それに合わせて測定者は操作部105を把持して回転軸114を中心に振る。これにより、匙のつぼ部103は検体を掬う方向に往復動する。なお、匙を振る幅はガイド102の横木115に当たる位置までとすることにより振り幅を常に一定にして測定することが可能である。
その後、測定が完了すると、とろみ段階を示す3つのLEDのいずれかが点灯し、とろみ段階を知らせるとともに、スピーカー111から通常より長く音を出力し、測定終了を知らせるので測定者は匙101を振る動作を終了する。
以上がとろみ判別器の使用方法である。
次に、本発明の第1の実施の形態におけるとろみ判別器の制御部の構成を図面を用いて説明する。
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるとろみ判別器の制御部300の構成を説明するブロック図である。
図3において、CPU304には、メモリ302、テーブル303、タイマー305、指示入力部306、表示部307、音発生部308、および加速度センサ112が接続しており、さらに歪みセンサ106が増幅器301を介して接続している。また、指示入力部には測定開始スイッチ110が接続しており、表示部307には、とろみ3段階の薄い段階を示すLED107と中間段階を示すLED108と濃い段階を示すLED109とが接続しており、音発生部308にはスピーカー111が接続している。
メモリ302は揮発性メモリであり、加速度センサ112や歪みセンサ106からの出力値を一時的に記憶するのに使用される。
テーブル303は不揮発性メモリに記憶されており、予め求めた加速度データと歪みセンサ106の出力データと検体の粘度との相関表や、上記「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」の「学会分類2013(とろみ)」の粘度ととろみ段階の関係を表した粘度・とろみ段階表である。
表1は加速度・歪み値・粘度相関表であり、表2は粘度・とろみ段階表である。
表1において、加速度akは加速度センサ112の出力値の実効値を表し、歪み値bnは歪みセンサ106の出力値の実効値を表し、粘度vknは加速度実効値ak、歪み値実効値bnのときの検体の粘度を表す。
また、表2において、とろみ段階は最小粘度以上で最大粘度未満のときの段階を表し、例えば、表1で求めた粘度が170のときは、とろみ段階2であることを示す。
なお、表1に示す加速度・歪み値・粘度相関表は、粘度の判明している複数の液体を用いて本発明に係るとろみ判別器と同条件で匙の柄尻の加速度を変化させたときの歪みセンサからの出力の実効値を測定して予め作成したものである。
以上のように構成されたとろみ判別器の制御部について、以下にその動作、作用を図4に示すフローチャート図を用いて説明する。
まず、測定開始スイッチ110がオンすると、指示入力部306からCPU304に測定開始信号を出力する。
CPU304はこの信号を受けると(ステップS401)、タイマー305に例えば1秒といった所定時間を設定し、以後所定時間ごとにタイマー305からタイムアップの信号を受信する。
CPU304はタイムアップ信号を受信すると、音発生部308に匙を一定のリズムで振る動作を誘導するための音(リズム音)の出力を指示する(ステップS402)。そして、このCPU304はこの指示を計測が終了するまで以後繰り返す。
また、CPU304は音発生部308への指示開始と同時に、加速度センサ112と歪みセンサ106からの出力値の受信を開始し、例えば5ミリ秒といった所定時間ごとにサンプリングしてメモリ302に書き込む(ステップS403)。この書き込み動作は計測終了まで継続されるが、これらのデータの記憶領域はリング構造をしているため記憶領域が不足した場合は順次古いデータから上書きされる。このため、メモリ不足で計測不能となることはない。
CPU304は、メモリ302へのデータ書き込みが開始されると、加速度センサ112からの出力値を監視し、その出力値の変化が正弦曲線に近づき、また周期が所定時間範囲内、例えば10パーセント以内のばらつきとなったとき出力安定状態と判断し(ステップS404)、加速度センサ112からの出力値と歪みセンサ106からの出力値を抽出する。そして、その安定した周期での両出力値の実効値を算出する(ステップS405)。算出方法は、例えば、当該周期でサンプリングした各出力値の二乗を合算した後、周期で除算したものの平方根を演算することにより求める。
次に、CPU304は算出した加速度実効値が表1のいずれの範囲に属するかを判定する。すなわち、加速度実効値が、a(k-1)以上、ak未満のときは加速度akとし、また歪み値実効値も、b(n-1)以上、bn未満のときは歪み実効値bnとし、そのときの粘度vknを表1から求める(ステップS406)。
次に、CPU304は求めた粘度が表2のいずれの範囲に属するかを判定する。すなわち、粘度が50以上150未満のときはとろみ段階1と判定し、150以上300未満のときはとろみ段階2と判定し、300以上500未満のときはとろみ段階3と判定する(ステップS407)。なお、粘度が50未満のときはとろみなし、粘度が500以上のときはとろみ段階3超とする。
次に、CPU304は、表示部307にとろみ段階に該当するLEDの点灯を指示する。すなわち、とろみ段階1のときは「薄い」を示すLED107の点灯を指示し、とろみ段階2のときは「中間」を示すLED108の点灯を指示し、とろみ段階3のときは「濃い」を示すLED109の点灯を指示する。なお、とろみ段階がとろみなしと判定したときは、例えば「薄い」を示すLED107の点滅を指示し、とろみ段階がとろみ段階3超と判定していたときは、例えば「濃い」を示すLED109の点滅を指示する。そして、指示を受信した表示部307は指示されたLEDを点灯、あるいは点滅する(ステップS408)。
次に、CPU304は、タイマー305の設定時間をクリアしてカウントを停止させる。これにより、以後の音発生部308への出力指示を停止する(ステップS409)。
以上のような処理がなされることにより、測定者はとろみ判別器の匙のつぼ部を検体中に差し込んで柄尻の操作部を音に合わせて振るだけで、検体のとろみが日本摂食・嚥下リハビリテーション学会分類2013(とろみ)のいずれの段階であるかを個人差なく、正確に知ることができる。また、本実施の形態におけるとろみ判別器は匙とガイドとを一直線上にたためるので携帯性に優れ、電源もバッテリーであるのでどこでも使用することができる。
なお、本発明のとろみ判別器は、匙のつぼ部103の往復動作であるため検体を掬う方向に動かしたときと、掬う方向とは反対方向へ動かしたときとでは歪みセンサ106の受ける歪み量は異なる。このため、往復動作の一周期の内、全区間の出力値から実効値を算出するばかりでなく、掬う方向のみの区間での出力値から実効値を算出するのも有効である。
また、安定状態での複数の周期の実効値を算出し、それらの平均値を粘度算出のための実効値とすることや、複数の実効値の内、一定のばらつきの範囲から外れた実効値を除外することが好ましい。
また、一定のリズムで匙を振る動作を誘導するために音を出力したが、これに限らず、誘導用のLEDを設けてこれを一定周期で点灯することも可能である。誤嚥を起こしやすい高齢者は聴力も衰えていることが多いのでこのような嚥下障害のある患者には特に有効である。
また、検体の濃度がとろみ段階の判定領域(50から500までの範囲)から外れた場合に、最も近いとろみ段階のLEDの点滅を行ったが、これに限らず、測定不可としてすべてのLEDを点滅、あるいは消灯のまま、スピーカー111からの音のみ通常よりも長い時間発生させることも可能である。
さらにまた、本実施の形態におけるとろみ判別器10では歪みセンサを使用したが、これに限らずピエゾ素子などを用いた圧力センサにより匙を振ったときの検体からの圧力を直接検出して、同様の加速度・圧力・粘度相関表から検体の粘度を求めることも可能である。この場合の圧力センサの取り付け位置は、最も圧力を受ける匙のつぼ部103に設置するのが好ましい。
なお、本実施の形態では、加速度センサの出力と歪みセンサの出力と検体の粘度との関係を予め記録した相関表に基づいて、検出した加速度センサの出力と歪みセンサの出力とから現在測定中の検体の粘度を算出したが、これに限らず、公知の解析手法を用いてこの加速度・歪み値・粘度相関表のデータから加速度と歪み値から粘度を算出する計算式を求め、予め制御部に計算プログラムを記憶しておくことで、粘度測定のときに計算プラグラムを実行することで粘度を算出することも可能である。
(実施の形態2)
図5(a)は本実施の形態におけるとろみ判別器の正面図であり、図5(b)はとろみ判別器の右側面図であり、図5(c)はとろみ判別器の背面図である。
図で示すように、本発明の第2の実施の形態におけるとろみ判別器は、第1の実施の形態と異なり、検体の入った容器にとろみ判別器をセットするガイドを有していないことに加え、以下の点が第1の実施の形態に示したとろみ判別器10と異なる。
すなわち、とろみ判別器は匙501と操作デバイス502とから構成されており、匙501は検体中で振ることにより撓むことのない剛性のある材質(たとえば鉄やステンレスなど)と厚みを有している。また、この匙を掬う方向で往復動を可能にする回転軸を貫通するための軸孔116が柄の中央よりも柄尻側に開いている。
他方、操作デバイス502は匙501を軸着するための回転軸512とこの回転軸512の両端を支持するための支持部511とを有し、回転軸512が匙の軸孔116を貫通している。ストッパ513、514は回転軸512を中心に匙が回転したときに匙501の振れる幅を制限するものである。
そして、圧力センサ515は匙の柄尻の押す圧力を検出するものであり、操作デバイス502に取り付けられている。この圧力センサ515の取付け位置は、匙の柄504の振れる全振幅で接触が保たれ、全振幅の範囲で荷重を測定可能な位置である。なお、圧力センサ515としては、歪みゲージ方式や静電容量方式やダイヤフラムとピエゾ素子を組み合わせてピエゾ抵抗変化を検出するようにした方式や、感圧導電体(カーボンナノチューブに圧力を加えると抵抗値が変化する特性を有する)の抵抗変化を検出する方式などのものが使用できる。
操作デバイス502は、その他にとろみ段階を表示するLED107、LED108、LED109と、測定開始スイッチ110と、スピーカー111と加速度センサ112と図示していない制御部と図示していない電源部(バッテリー)とを備えている。
図6は、本実施の形態2におけるとろみ判別器の操作デバイスを透視した図である。
図において、操作デバイス502の内部には、プリント基板601が取り付けられており、このプリント基板601には、LED107、LED108、LED109と、測定開始スイッチ110と、スピーカー(圧電ブザー)111と加速度センサ112が実装され、プリント基板601の裏面には圧力センサ515と制御部と電源部が実装されている。
加速度センサ112は、3軸の加速度を一定のサンプリング周期で検出するものである。図6に示す実装図では、プリント基板の短辺方向の加速度がX軸加速度(AX)、長辺方向の加速度がY軸加速度(AY)、垂直方向の加速度がZ軸加速度(AZ)である。
図7は、本発明の第2の実施の形態におけるとろみ判別器の制御部700の構成を説明するブロック図である。
図7において、CPU304には、メモリ302、テーブル701、タイマー305、指示入力部306、表示部307、音発生部308、および加速度センサ112が接続しており、さらに圧力センサ515が増幅器301を介して接続している。また、指示入力部には測定開始スイッチ110が接続しており、表示部307には、とろみ3段階の薄い段階を示すLED107と中間段階を示すLED108と濃い段階を示すLED109とが接続しており、音発生部308にはスピーカー111が接続している。
メモリ302は揮発性メモリであり、加速度センサ112や圧力センサ515からの出力値を一時的に記憶するのに使用される。
テーブル701は不揮発性メモリであり、予め求めた条件下での圧力センサ515の出力データと検体の粘度との相関表(表3)や、実施の形態1における表2と同じ粘度・とろみ段階表(表2)を記憶している。
また、この不揮発性メモリには表2や表3の他に、CPU304が実行するアプリケーションプログラムが記憶されている。
表3において、圧力値cjは圧力センサ515の出力値の実効値を表し、粘度v0jは圧力値実効値cjのときの検体の粘度を表す。
この圧力値・粘度相関表(表3)は、粘度の判明している複数の液体を用いて本発明に係るとろみ判別器を後述する所定の条件下で動作させたときの圧力センサの出力の実効値を測定して作成したものである。
以上のように構成されたとろみ判別器の制御部の動作、作用を図8に示す。
まず、測定開始スイッチ110がオンすると(ステップS801)、CPU304はアプリケーションプログラムに従って、加速度センサ112と圧力センサ515からの出力値の受信を開始し、所定時間ごとにサンプリングしてメモリ302に書き込む(ステップS802)。
次に、CPU304は、加速度センサ112の出力値から匙の傾き角を算出する。
図9は、匙の傾き角と加速度センサ112の出力値の関係を説明する図である。
図において、加速度センサに重力のみかかっているとすると、傾き角は重力ベクトルと加速度センサの軸上のその投影であるX軸加速度、Y軸加速度、そしてZ軸加速度を利用して求めることができる。
すなわち、加速度センサ112のX軸と基準となる水平軸との傾き角θ、Y軸と基準となる水平軸との傾き角ψ、Z軸と基準となる重力ベクトルとの傾き角φとすると、それぞれの傾き角は以下の式で算出できる。なお、AXは加速度センサのX軸の加速度、AYはY軸の加速度、そしてAZはZ軸の加速度を示す。
なお、加速度センサ112は、操作デバイス502のプリント基板上に図6のように実装されているが、操作デバイス502と匙501とは図5(b)のようにほぼ平行であり、匙501が支点512を中心に揺動する角度はとろみ判別器を揺動する角度に比べわずかであるので、加速度センサ112の検出する加速度から算出する傾きは匙の傾き角とみなすことができる。
以上のことから、CPU304は、上記式3に従って加速度センサ112の出力から傾き角φを算出し、匙501が重力ベクトルを基準としてマイナスの所定の角度からプラスの所定の角度までの範囲を移動したときのサンプリング回数をチェックする(ステップS803)。このとき、CPU304は、匙501の傾き角がプラス、マイナスの所定の角度になったとき音発生部308に指示してスピーカー111から音を出力し、測定者に匙の振る方向を反転させるタイミングを知らせる。
このサンプリング回数が所定の範囲内にあれば、匙501が所定の振り幅の間を所定の時間で移動したことになり、表3を作成したときと同じ匙501の揺動動作を再現できたことになる。
そして、CPU304は、上記の条件を1周期満たしたときの圧力センサのサンプリング値をメモリ302から読み出し、1周期分の実効値を算出する(ステップS804)。
図10は、匙を1周期揺動したときの圧力センサ515の出力値の変化を示すグラフである。図に示すように、縦軸は圧力センサの出力電圧であり、横軸は経過時間である。また、時間経過に合わせて、匙の傾き角φの変化を上段に示している。
この図10において、所定の角度は45度(π/4ラジアン)としている。このとき、匙がプラス45度からマイナス45度までの間圧力を検出しないが、マイナス45度から0度の位置に振られたとき検体の粘度が中粘度のときは小さなピークを検出し、その後、0度からプラス45度の位置に振られたときは、検体の粘度によって回数と高さは異なるが、圧力値のピークを検出する。
このように、匙の傾き角がマイナス45度からプラス45度までの移動中に顕著に生じるので、この区間(半周期)のみの圧力値の実効値を算出するのが好ましい。
さらに、CPU304は、傾き角θが所定の角度より大きくなった場合、匙501のつぼ部が検体を掬う方向に真っすぐに振られず、許容範囲を超えて捩じれて振られていると判断し、たとえ傾き角φが所定の角度の範囲を往復しても圧力センサの出力値の実効値の算出を行わない。加えて、傾き角ψが所定の角度より大きくなった場合も、匙501のつぼ部の検体水面からの深さが許容範囲を超えて変化したと判断し、たとえ傾き角φが所定の角度の範囲を往復しても圧力センサの出力値の実効値の算出を行わないのが好ましい。
次に、CPU304は圧力値実効値が表3のいずれの範囲に属するかを判定する。すなわち、圧力値実効値が、cj以上、c(j+1)未満のときは圧力実効値cjとし、そのときの粘度v0jを表3から求める(ステップS805)。
次に、CPU304は求めた粘度が表2のいずれの範囲に属するかを判定する。すなわち、粘度が50以上150未満のときはとろみ段階1と判定し、150以上300未満のときはとろみ段階2と判定し、300以上500未満のときはとろみ段階3と判定する(ステップS806)。なお、粘度が50未満のときはとろみなし、粘度が500以上のときはとろみ段階3超とする。この判定方法は、実施の形態1のものと同じである。
次に、CPU304は、表示部307にとろみ段階に該当するLEDの点灯を指示する。すなわち、とろみ段階1のときは「薄い」を示すLED107の点灯を指示し、とろみ段階2のときは「中間」を示すLED108の点灯を指示し、とろみ段階3のときは「濃い」を示すLED109の点灯を指示する。なお、とろみ段階がとろみなしと判定したときは、例えば「薄い」を示すLED107の点滅を指示し、とろみ段階がとろみ段階3超と判定していたときは、例えば「濃い」を示すLED109の点滅を指示する。そして、指示を受信した表示部307は指示されたLEDを点灯、あるいは点滅する(ステップS807)。これも実施の形態1のものと同じである。
次に、CPU304は、音発生部308へステップS803においての音出力よりも長い時間の音出力を指示しとろみ判別処理の終了を通知する(ステップS808)。
以上が本実施の形態での制御部の動作である。
次に、このように構成された、第2の実施の形態におけるとろみ判別器の使用方法を説明する。
まず、測定者は、操作デバイス502の先端側をつまんで、匙のつぼ部503全体が検体中に侵漬するように匙を差し込む。ここで、匙の差し込み状態によって揺動したときの圧力センサ515が受ける力に違いが生じないようにするために、匙の柄504には差し込む深さを指示する目盛り505を付し、その目盛り505まで匙を差し込んだ状態から測定を開始することが好ましい。
次に、操作デバイス502の測定開始スイッチ110を押し、匙のつぼ部503が検体を掬う方向に、つまんだ部分を中心に回転する。操作デバイス502が所定の角度(本実施の形態ではプラス45度)まで傾けるとスピーカー111から短時間音が出力されるので、今度は回転方向を反転して逆方向へ操作デバイス502を傾ける。
その傾き角が所定の角度(本実施の形態ではマイナス45度)に到達すると、再びスピーカー111から短い音が出力される。
その音に合わせて、再び操作デバイス502の回転方向を反転して最初に回転させた方向に傾ける。
この動作を繰り返したときに、1周期の間、所定の速度で匙を振ることができれば制御部の測定が完了し、操作デバイス502のとろみ段階を示す3つのLEDのいずれかが点灯する。これにより、とろみ段階を知らせるとともに、スピーカー111からは通常よりも長い時間音を出力して測定終了を知らせる。
測定者はこれによりとろみ判別器を揺動することを終了する。
以上のように、測定者は、音発生部308から出力される音によって匙を振る方向を反転させる動作を繰り返すことにより、匙を振る振幅が規定され、また所定の速度範囲で振ったときの圧力センサからの出力値を有効なデータとして扱うので、表3を作成したときの測定動作と同一の動作を個人差なく再現することができる。
また、本実施の形態では、匙のつぼ部が力点となり、支持部511が支点となって、圧力センサには作用点の力が働くので、検体の粘度の違いによる圧力変化を増幅して受けられ、粘度測定は精度の高いものとなる。
また、所定の測定条件で精度高く算出した圧力値の実効値をとろみ段階の判定に使用するので、検体のとろみが日本摂食・嚥下リハビリテーション学会分類2013(とろみ)のいずれの段階であるかを正確に知ることができる。
さらに、本実施の形態におけるとろみ判別器は匙501と操作デバイス502のみが一体となった構成であるので携帯性に優れ、かつ、操作デバイス510の電源もバッテリーであるのでどこでも使用することができる。
また、撹拌部材として匙を用いているので、検体を掬う荷重が大きくなり、荷重の変化を検知し易い。さらに、検体を掬って落下させることによりとろみ程度を把握することも容易にできる。
なお、本実施の形態では、匙の振り子動作を行う範囲を傾き角プラス45度からマイナス45度としたが、これに限られるものではなく、たとえば、プラス20度からマイナス20度とすることも可能である。その場合は、とろみ判別器に予め記憶させておく圧力値・粘度相関表(表3)を作成するときの傾き角も、プラス20度からマイナス20度の範囲として測定したものであることが必要である。
なお、本実施の形態では、所定の条件を満たした1周期あるいは半周期で算出した実効値を粘度測定に用いたが、これに限らず、算出した実効値の複数回分の平均値を粘度算出のための実効値とすることや、複数の実効値の内、一定のばらつきの範囲から外れた実効値を除外するといった処理を加えることが好ましい。
また、匙を反転するタイミングを通知するために音を出力したが、これに限らず、誘導用のLEDを設けてこれを点灯させて通知することも可能である。誤嚥を起こしやすい高齢者は聴力も衰えていることが多いのでこのような聴力に障害のある患者には特に有効である。
また、検体の濃度がとろみ段階の判定領域(50から500までの範囲)から外れた場合に、最も近いとろみ段階のLEDの点滅を行ったが、これに限らず、測定不可としてすべてのLEDを点滅、あるいは消灯のまま、スピーカー111からの音のみ通常よりも長い時間発生させることも可能である。
なお、本実施の形態では、撹拌部材として匙を用いたがこれに限らず、つぼ部を有しないへら形状とすることも可能である。この場合は、検体中でへらを振ることによる圧力検出は、正方向、逆方向共に発生するので、圧力値の実効値は1周期分で算出するのが好ましい。
(実施の形態3)
本実施の形態において、とろみ判別器は振り子動作ではなく水平往復動作により検体のとろみを判定するところが実施の形態2と異なる。
図11(a)は本実施の形態におけるとろみ判別器の正面図であり、図11(b)はとろみ判別器の右側面図であり、図11(c)はとろみ判別器の背面図である。
図で示すように、本実施の形態におけるとろみ判別器は、目盛り505、506がつぼ部503に近い位置に2本あり、検体中でこの目盛り505と目盛り506の間に液面があるようにとろみ判別器を水平移動動作することを指示している。
また、本実施の形態においても、図6と同じように加速度センサ112がプリント基板601に実装されているが、制御部700が加速度センサ112のZ軸方向の加速度を測定して往復動作1周期分の動作条件を規定する点が、実施の形態2の加速度センサを用いた傾き角を測定して動作条件を規定するのと異なる。
また、本実施の形態におけるとろみ判別器の制御部700の構成は、第2の実施の形態のものと同じであるが、テーブル701に記憶している相関表が加速度・圧力値・粘度相関表である点が異なる。
表4はこの加速度・圧力値・粘度相関表である。
表4において、加速度a0iは加速度センサ112のZ軸出力値の実効値を表し、圧力値c0iは圧力センサ515の出力値の実効値を表し、粘度v0ijは加速度実効値a0i、圧力値実効値c0jのときの検体の粘度を表す。なお、この表4で示す加速度・圧力値・粘度相関表は、粘度の判明している複数の液体を用いて本発明に係るとろみ判別器の使用法で、加速度を変化させながら圧力センサからの出力の実効値を測定して予め作成したものである。
また、テーブル701に同じく記憶されているとろみ段階を規定する粘度・とろみ段階表(表2)は実施の形態1のものと同一である。
次に、この制御部の動作、作用を図12を用いて説明するが、実施の形態1とはセンサの出力値が歪センサからの出力ではなく圧力センサの出力値である点が異なるのみでその他の部分は同じである。
図12において、まず、CPU304はアプリケーションプログラムに従って、測定開始スイッチ110がオンすると(ステップS1201)、タイマー305に所定時間を設定することで一定周期で音発生部308から音(リズム音)を出力する(ステップS1202)。そして、CPU304は加速度センサ112と圧力センサ515からのZ軸出力値の受信を開始し、所定時間ごとにサンプリングしてメモリ302に書き込む(ステップS1203)。
次に、CPU304は、加速度センサ112からのZ軸出力値を監視し、そのZ軸出力値の変化が正弦曲線に近づき、また周期が所定時間範囲内、例えば10パーセント以内のばらつきとなったとき出力安定状態と判断し(ステップS1204)、加速度センサ112からのZ軸出力値と圧力センサ515からの出力値を抽出する。そして、その安定した周期での両出力値の実効値を算出する(ステップS1205)。本実施形態では、加速度センサ112からのZ軸出力値の実効値がa01以上a0m以下であり、圧力センサ515の出力値の実効値がc01以上c0n以下のときに有効な測定データとして扱う。
次に、CPU304は算出した加速度実効値が表4のいずれの範囲に属するかを判定する。すなわち、加速度実効値が、a0i以上、a0(i-1)未満のときは加速度a0iとし、また圧力値実効値も、c0j以上、c0(j+1)未満のときは圧力実効値c0jとし、そのときの粘度v0ijを表4から求める(ステップS1206)。
次に、CPU304は求めた粘度が表2のいずれの範囲に属するかを判定する。すなわち、粘度が50以上150未満のときはとろみ段階1と判定し、150以上300未満のときはとろみ段階2と判定し、300以上500未満のときはとろみ段階3と判定する(ステップS1207)。なお、粘度が50未満のときはとろみなし、粘度が500以上のときはとろみ段階3超とする。
次に、CPU304は、表示部307にとろみ段階に該当するLEDの点灯を指示する。すなわち、とろみ段階1のときは「薄い」を示すLED107の点灯を指示し、とろみ段階2のときは「中間」を示すLED108の点灯を指示し、とろみ段階3のときは「濃い」を示すLED109の点灯を指示する。なお、とろみ段階がとろみなしと判定したときは、例えば「薄い」を示すLED107の点滅を指示し、とろみ段階がとろみ段階3超と判定していたときは、例えば「濃い」を示すLED109の点滅を指示する。そして、指示を受信した表示部307は指示されたLEDを点灯、あるいは点滅する(ステップS1208)。
次に、CPU304は、タイマー305の設定時間をクリアしてカウントを停止させ、音発生部308への出力が停止する(ステップS1209)。
以上が本実施の形態での制御部の動作である。
次に、このように構成された、本実施の形態におけるとろみ判別器の使用方法を説明する。
まず、測定者は、とろみ判別器の匙を柄504に付されている目盛り505まで検体中に差し込む。
次に、操作デバイス502の測定開始スイッチ110を押すとスピーカー111から一定の時間間隔で音(リズム音)が出力されるので、それに合わせて測定者は操作デバイス502を把持して匙のつぼ部503が検体を押し出す方向に水平に往復動する。このとき、柄504の目盛り505と目盛り506との間に検体の液面を維持するようにし、反転時にはできるだけ静止時間を設けないように注意する。
その後、測定が完了すると、とろみ段階を示す3つのLEDのいずれかが点灯し、とろみ段階を知らせるとともに、スピーカー111から通常より長く音を出力し、測定終了を知らせる。これにより測定者はとろみ判別器を往復動する動作を終了する。
以上のように音発生部308から出力される音に合わせて一定のリズムで匙を水平に往復動することにより、測定動作が規定されるので、表4を作成したときの測定動作とほぼ同一の動作を再現することができる。
また、本実施の形態では、匙のつぼ部が力点となり、支持部511が支点となって、圧力センサには作用点の力が働くので、検体の粘度の違いによる圧力変化を増幅して受けられ、粘度測定はより精度の高いものとなる。
また、所定の測定条件で精度高く算出した圧力値の実効値をとろみ段階の判定に使用するので、検体のとろみが日本摂食・嚥下リハビリテーション学会分類2013(とろみ)のいずれの段階であるかを正確に知ることができる。
さらに、本実施の形態におけるとろみ判別器は匙501と操作デバイス502のみが一体となった構成であるので携帯性に優れ、かつ、操作デバイス510の電源もバッテリーであるのでどこでも使用することができる。
また、撹拌部材として匙を用いているので、検体を掬う荷重が大きくなり、荷重の変化を検知し易い。さらに、検体を掬って落下させることによりとろみ程度を把握することも容易にできる。
なお、とろみ判別器を往復動したときの一周期分の測定データを用いて表4から粘度を求めることは可能であるが、掬う方向の半周期分のデータを抽出し、そのデータを用いて表4から粘度を求めるのが好ましい。ただし、予め準備する表4のテーブルはそれぞれの測定方法と同一の方法で予め測定したものを用意する必要がある。
また、安定状態での複数の周期の実効値を算出し、それらの平均値を粘度算出のための実効値とすることや、複数の実効値の内、一定のばらつきの範囲から外れた実効値を除外することが好ましい。
また、一定のリズムで匙を振る動作を誘導するために音を出力したが、これに限らず、誘導用のLEDを設けてこれを一定周期で点灯することも可能である。誤嚥を起こしやすい高齢者は聴力も衰えていることが多いのでこのような聴力に障害のある患者には特に有効である。
また、検体の濃度がとろみ段階の判定領域(50から500までの範囲)から外れた場合に、最も近いとろみ段階のLEDの点滅を行ったが、これに限らず、測定不可としてすべてのLEDを点滅、あるいは消灯のまま、スピーカー111からの音のみ通常よりも長い時間発生させることも可能である。
なお、本実施の形態では、撹拌部材として匙を用いたがこれに限らず、つぼ部を有しないへら形状とすることも可能である。この場合は、検体中でへらを振ることによる圧力検出は、正方向、逆方向共に発生するので、圧力値の実効値は1周期分で算出するのが好ましい。
(実施の形態4)
図13(a)は本実施の形態におけるとろみ判別器の正面図であり、図13(b)はとろみ判別器の右側面図であり、図13(c)はとろみ判別器の背面図である。また、図14(a)は本発明の実施の形態におけるとろみ判別器の匙と操作デバイスのみからなるとろみ判別器本体の正面図であり、図14(b)はとろみ判別器本体の右側面図であり、図14(c)はとろみ判別器本体の背面図である。
図で示すように、本発明の第4の実施の形態におけるとろみ判別器は、とろみ判別器本体が操作デバイスの軸受け部811を貫通した回転軸114によりガイド102に軸支した構造をしている。
ガイド102は、第1の実施の形態におけるとろみ判別器と同様に、匙の柄104を挟むように平行に並んだ2本の支柱113と、それらを結合する横木115と、スペーサー117と、回転軸114とからなり、回転軸114の両端を各支柱113の中央に固定している。そして、回転軸114は操作デバイス510の端面から延出した軸受け811を貫通して、操作デバイスと匙とからなるとろみ判別器本体を回転可能に支持している。
また、とろみ判別器本体の構成は上記した点以外は実施の形態3と同じであるが、制御部700のテーブル701には、実施の形態3で示した加速度・圧力値・粘度相関表(表4)とは異なる、匙を振り子動作したときの加速度・圧力値・粘度相関表(表5)を記憶している。
表5において、加速度a1iは加速度センサ112のZ軸出力値の実効値を表し、圧力値c1iは圧力センサ515の出力値の実効値を表し、粘度v1ijは加速度実効値a1i、圧力値実効値c1jのときの検体の粘度を表す。なお、この表5で示す加速度・圧力値・粘度相関表は、粘度の判明している複数の液体を用いて本発明に係るとろみ判別器の使用法で、加速度を変化させながら圧力センサからの出力の実効値を測定して予め作成したものである。
また、テーブル701に同じく記憶されているとろみ段階を規定する粘度・とろみ段階表は実施の形態1のものと同一である。
また、本実施の形態の制御部が行う動作、作用は、図12に示す実施の形態3のフローチャート図と同じであるが、ステップS1206において、CPU304は粘度を加速度・圧力値・粘度相関表(表5)から求める。
なお、本実施形態では、加速度センサ112からのZ軸出力値の実効値がa11以上a1m以下であり、圧力センサ515の出力値の実効値がc11以上c1n以下のときに有効な測定データとして扱う。
そこでCPU304は、算出した加速度実効値が表5のいずれの範囲に属するかを判定する。すなわち、加速度実効値が、a1i以上、a1(i+1)未満のときは加速度a1iとし、また圧力値実効値も、c1j以上、c1(j+1)未満のときは圧力実効値c1jとし、そのときの粘度v1ijを表5から求める(ステップS1206)。
なお、本実施の形態のとろみ判別器は、匙を振り子動作して測定するものであるので、実施の形態2で示した図10と同様の荷重特性となるので、往復動したときの一周期分のサンプリング測定データを用いて圧力値の実効値を算出するよりも、匙の傾き角をマイナスの角度からプラスの角度へ振ったときの半周期分で算出するのが好ましい。
ただし、測定方法を一周期分とするか半周期分とするかにより、予め記憶しておく表5の相関表はそれぞれの測定方法で行ったもので作成しておくことが必要である。
また、実施の形態1と同様に、安定状態での複数の周期の実効値を算出し、それらの平均値を粘度算出のための実効値とすることや、複数の実効値の内、一定のばらつきの範囲から外れた実効値を除外することが好ましい。
次に、このように構成された、本実施の形態におけるとろみ判別器の使用方法は、実施の形態1で示した使用方法と同じである。
すなわち、まず、測定者は、とろみ判別器のガイド102を検体の入った容器の口縁に固定して、匙を垂直に差し込む。このときに検体の水面が図14に示す匙の柄の目盛り505の位置となるように検体の量を調整しておく。
次に、操作デバイス502の測定開始スイッチ110を押すとスピーカー111から一定の時間間隔で音(リズム音)が出力されるので、それに合わせて測定者は操作デバイス502をつまんで匙のつぼ部503が検体を押し出す方向とその逆方向に往復動する。このとき、ガイド102には、横木115が付いているので、これにより匙の振り幅が規制される。
その後、測定が完了すると、とろみ段階を示す3つのLEDのいずれかが点灯し、とろみ段階を知らせるとともに、スピーカー111から通常より長く音を出力し、測定終了を知らせる。これにより測定者はとろみ判別器を往復動する動作を終了する。
以上のように音発生部308から出力される音に合わせて一定のリズムで匙を振り子動作することと、ガイド102により振り幅と検体中のつぼ部の移動する深さが規制されることで、測定動作が表5を作成したときと同一の動作を再現することができる。
また、実施の形態3や実施の形態4と同じく、匙のつぼ部が力点となり、支持部511が支点となって、圧力センサには作用点の力が働くので、圧力センサは検体の粘度の違いによる圧力変化を増幅して受けられ、粘度測定はより精度の高いものとなる。
このように、所定の測定条件で精度高く算出した圧力値の実効値から求めた粘度をとろみ段階の判定に使用するので、検体のとろみが日本摂食・嚥下リハビリテーション学会分類2013(とろみ)のいずれの段階であるかを正確に知ることができる。
さらに、本実施の形態におけるとろみ判別器は、匙501と操作デバイス502とガイド102が図13(b)で示すようにほぼ一直線上に一体となった構成であるので携帯性に優れ、かつ、操作デバイス510の電源もバッテリーであるのでどこでも使用することができる。
また、撹拌部材として匙を用いているので、検体を掬う荷重が大きくなり、荷重の変化を検知し易い。さらに、検体を掬って落下させることによりとろみ程度を把握することも容易にできる。
また、一定のリズムで匙を振る動作を誘導するために音を出力したが、これに限らず、誘導用のLEDを設けてこれを一定周期で点灯することも可能である。
また、検体の濃度がとろみ段階の判定領域(50から500までの範囲)から外れた場合に、最も近いとろみ段階のLEDの点滅を行ったが、これに限らず、測定不可としてすべてのLEDを点滅、あるいは消灯のまま、スピーカー111からの音のみ通常よりも長い時間発生させることも可能である。
なお、本実施の形態では、撹拌部材として匙を用いたがこれに限らず、つぼ部を有しないへら形状とすることも可能である。この場合は、検体中でへらを振ることによる圧力検出は、正方向、逆方向共に発生するので、圧力値の実効値は1周期分で算出するのが好ましい。