JP7299689B2 - 核小体の蛍光染色方法、核小体蛍光染色液、がん細胞検出液及び光学顕微鏡 - Google Patents

核小体の蛍光染色方法、核小体蛍光染色液、がん細胞検出液及び光学顕微鏡 Download PDF

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Description

本発明は、核小体の蛍光染色方法、核小体蛍光染色液、がん細胞検出液及び光学顕微鏡に関する。
病理学では従来から、薄切組織をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色し、光学顕微鏡により観察してきた。この方法では、細胞の分布や大きさ、核の形状などを鮮明に可視化できる。このような形態情報は組織の病理診断に不可欠である。しかし、組織の薄切とHE染色は高いスキルと長い時間を要する。そのため、術中の迅速診断のように速さと正確さを求められる用途には適さない。
最近HE染色に対して、より簡易かつ迅速な手順が可能な蛍光染色と深紫外励起の組み合わせが注目されている。深紫外光は多くの蛍光色素を同時励起できるとともに組織の深くまで入らないため、薄切を行わなくても組織の構造をコントラストよく、簡単かつ迅速に可視化できるためである(非特許文献1)。しかし、この観察法に適した染色法は未だ確立されていない。現在の染色法では、汎用的な色素を用いており、細胞及び組織の構造を鮮明に可視化できていない。
Nature Biomedical Engineering volume 1, pages 957-966 (2017)
本発明は、核小体を蛍光染色し、それにより切除組織などの試料におけるがん細胞の有無を検出する蛍光染色液及び蛍光染色方法、並びに装置を提供することを目的とする。
本発明者は、以下の核小体の蛍光染色方法、核小体蛍光染色液、がん細胞検出液及び光学顕微鏡を提供するものである。
項1. 下記の工程1~3を含む、核小体の蛍光染色方法:
工程1:細胞を含む試料を膜透過処理液で処理する工程、
工程2:工程1で得られた試料にテルビウムイオンを含む核小体蛍光染色液で処理する工程、
工程3:工程2で得られた試料に紫外励起光の照射下に核小体を蛍光染色する工程。
項2. 前記核小体蛍光染色液が緩衝液である、項1に記載の核小体の蛍光染色方法。
項3. 前記核小体蛍光染色液が重水を含む、項1又は2に記載の核小体の蛍光染色方法。
項4. 紫外励起光が、深紫外光である、項1に記載の核小体の蛍光染色方法。
項5. 核小体蛍光染色液のテルビウムイオン濃度が0.1mM以上である、項4に記載の核小体の蛍光染色方法。
項6. 前記試料が外科および内視鏡的切除臓器もしくは組織、生検サンプル、細胞診サンプル(リンパ液、血液、唾液、涙液、胃液、胆汁、膵液、脳脊髄液、痰、尿、胸水、腹水(洗浄腹水を含む)など)、培養細胞である、項1に記載の核小体の蛍光染色方法。
項7. テルビウムイオンを含む核小体蛍光染色液。
項8. 前記核小体蛍光染色液が緩衝液である、項7に記載の核小体蛍光染色液。
項9. 前記核小体蛍光染色液が重水を含む、項8に記載の核小体蛍光染色液。
項10. (i)テルビウムイオン及び(ii) DNA結合染色試薬を含む、がん細胞検出液。
項11. さらに(iii)重水を含む、項10に記載のがん細胞検出液。
項12. 前記DNA結合染色試薬が4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)及びHoechst色素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、項10又は11に記載のがん細胞検出液。
項13. 細胞を含む試料を載置するステージと、
前記ステージ上に載置された試料に向けた観察中心軸を有する受光部と、
前記試料に対し紫外励起光を照射する投光部を有し、
前記投光部がテルビウムイオンの紫外励起光を照射する光源を含み、
前記受光部がテルビウムイオンの緑色蛍光を検出することができる、細胞の核小体検出用の光学顕微鏡。
項14. 前記受光部が検出器を備え、前記ステージと検出器の間にデュアルバンドパスフィルターを備えている、項13に記載の光学顕微鏡。
本発明によれば、迅速かつ鮮明に細胞の核小体を蛍光染色することができ、癌の診断に重要な情報が、核小体の観察によって得られる。
深紫外励起光(波長285nm)とテルビウムイオンTb3+緩衝液を用いて得られた試料(培養乳癌細胞)の顕微鏡写真。 RNaseで処理した試料(培養乳癌細胞)と処理しなかった試料(培養乳癌細胞)の深紫外励起光(波長285nm)を用いた顕微鏡写真。 核小体蛍光染色液での処理温度を25℃、40℃、50℃とした試料(培養乳癌細胞)の深紫外励起光(波長285nm)を用いた顕微鏡写真。加熱によりDNAは1本鎖に解離。DUV吸収は1本鎖>2本鎖(1本鎖:2本鎖 = 1.3:1) TbClとともにDAPIを含む核小体蛍光染色液を用いて得た試料(胃癌転移リンパ節)の深紫外励起光(波長285nm)を用いた顕微鏡写真。緑:Tb3+、青:DAPI(Hoechstによる代用も可) 実施例1と同様にして作成した蛍光画像とそれをもとに作成した擬似HE画像並びに画像変換プロトコルを示す。 核小体検出用の光学顕微鏡の1例を示す正面図。 (上段)デュアルバンドパスフィルターを試料と検出器の間に入れない場合と入れた場合の蛍光画像、(下段)デュアルバンドパスフィルターの透過スペクトル、カラー検出器の感度スペクトル、およびTb3+およびHoechst33342により染色された甲状腺細胞(Nthy-ori 3-1)の蛍光スペクトル(励起波長285nm)を示す。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下に説明される特定の実施形態に限定されるものではない。また当業者であれば、以下に説明する実施形態の各要素を本発明の範囲内において容易に変更することが可能である。
本明細書において、細胞を含む試料は、単一の細胞からなる試料であってもよいが、好ましくは複数の細胞を含む。細胞は脊椎動物細胞が好ましく、より好ましくは哺乳動物細胞である。哺乳動物としては、ヒト、サル、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウスなどが挙げられ、好ましくはヒトである。1つの好ましい実施形態において、細胞を含む試料は脊椎動物、哺乳動物などから外科的に摘出もしくは切除した臓器、組織或いはこれらの一部が挙げられる。他の好ましい実施形態では、細胞を含む試料は、培養細胞、リンパ液、血液、血漿、血清、唾液、涙液、胃液、痰、尿、胸水、腹水、生検サンプル、穿刺細胞サンプル(穿刺細胞診用)などが挙げられる。臓器又は組織としては、食道、胃、小腸、大腸、十二指腸、直腸、肝臓、膵臓、胆嚢、膀胱、腎臓、前立腺、子宮、卵巣、乳房、肺、気管支、甲状腺、副甲状腺、副腎、皮膚、脳・脊髄、骨、筋肉、平滑筋など軟部組織、骨髄、リンパ節、腹膜、横隔膜などが挙げられる。
本発明で蛍光染色される核小体の情報は、人工知能(AI)により解析することで、癌に関するより多くの情報(がんの悪性度、転移の可能性など)が得られる可能性がある。例えば、外科手術でがんを切除する場合、切除した組織にがん細胞が含まれているか否かを本発明の方法により検出することができる。外科手術の対象となるがんとしては、胃癌、肺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、食道癌、胆嚢癌、胆管癌、甲状腺癌、膀胱癌、腎臓癌などが挙げられる。
細胞を含む試料は、ホルマリンなどで固定された試料であってもよい。
試料が外科的に摘出もしくは切除した臓器、組織の場合、洗浄後に膜透過処理を行うことが好ましい。
本発明の方法は、紫外励起光、特に深紫外励起光を使用することにより組織の薄切標本を作成する必要がないので、外科手術中に容易にがん細胞の有無を検出することができ、がんの取り残しをなくし、かつ、がんを含まない臓器もしくは組織の部分はできるだけ摘出しないためのツールとして使用することができる。
膜透過処理液としては、膜透過処理剤の溶液が挙げられる。膜透過処理剤としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、レシチン、オレイン酸、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン2オレイルエーテル、ポリオキシエチレン10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル、プルロニックF77等のプルロニック、及びスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(Aerosol OT))、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミトイルカルニチン、ホスファチジルコリン、シクロデキストリン、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、及びフシジン酸ナトリウム等の胆汁酸塩、EDTA、クエン酸及びサリチル酸塩等のキレート化剤、アシルカルニチン類、高級脂肪酸のモノ-及びジ-グリセリド類、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノール、n-プロパノ-ル、イソプロパノールなどの低級アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、CHAPS(3-(3-コラミドプロピル)-ジメチルアンモニオ-1-プロパン-スルホネート)、BigCHAPS(N,N-ビス-(3-D-グルコナミド-プロピル)-コラミド)、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾールが挙げられる。好ましい膜透過処理液は低級アルコールを含み、より好ましくはエタノールを含む。膜透過処理剤の好ましい濃度は0.001~100(w/v)%程度である。膜透過処理剤がエタノールの場合、エタノール濃度は70~100(w/v)%であり、好ましくは95%エタノールが使用される。
膜透過処理液のpHは5~10であることが好ましく、5.5~9がより好ましい。また、膜透過処理液は緩衝液であることが好ましい。緩衝液としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、炭酸緩衝液、重炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等が挙げられる。緩衝液を使用することで、再現性良く、明るく、コントラスト良く、核小体を光らせることができる。
膜透過処理液での処理は、細胞を含む試料を膜透過処理液に浸漬して行ってもよく、膜透過処理液を細胞を含む試料に噴霧又は滴下して、試料の表面を膜透過処理液で濡らすことで行ってもよい。細胞を含む試料が培養細胞、リンパ液、血液、血清、血漿、腹水、胸水などの液体を含む場合、液体に膜透過処理液を添加するか、或いは、固体の膜透過処理剤を添加して溶解させてもよい。膜透過処理液での処理時間は、30秒以上であればよく、処理温度は-30~40℃程度である。
本発明で使用する核小体蛍光染色液は、テルビウムイオン(Tb3+)を含む。テルビウムイオンを含む核小体蛍光染色液は、テルビウム供給源を水などの溶媒に溶解することで調製できる。テルビウム供給源としては、酢酸テルビウム、乳酸テルビウム、クエン酸テルビウムなどの有機酸テルビウム、塩化テルビウム、臭化テルビウム、フッ化テルビウム、ヨウ化テルビウムなどのハロゲン化テルビウム、硝酸テルビウム、硫酸テルビウム、酸化テルビウム、テルビウム錯体が挙げられる。また、核小体蛍光染色液中のテルビウムイオン濃度は、0.1mM以上である。テルビウムイオン濃度が1000mMの場合に組織の核小体を問題なく染色できることを本発明者は確認しているので、テルビウムイオン濃度が1000mMよりさらに高くても核小体を蛍光染色することができると推定される。テルビウムイオンは核酸(DNA、RNA)に結合する。テルビウムイオンによりRNAはDNAよりも強く光る。核小体の形態、数はがんの診断に有用である。テルビウムイオンは核内の核酸(DNA,RNA)に結合して核小体を蛍光染色できるが、核以外に存在する核酸(例えばミトコンドリアDNA、リボゾームのRNAなど)も染色されている。これらの核小体以外の核酸の染色は、がん等の診断に役立つ可能性がある。
核小体検出液は、重水を含む場合、蛍光強度が高くなるので好ましい。
核小体蛍光染色液は、テルビウムイオンとともにDNA結合染色試薬を含んでいてもよい。テルビウムイオンとDNA結合染色試薬を併用することで、がん細胞の検出がより容易になる。DNA結合染色試薬としては、4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、Hoechst色素、TOPRO-3などが挙げられる。本発明の核小体の蛍光染色液およびがん細胞検出液は、さらにエオジンB(アシッドレッド91)、ローダミンなどの染色剤を含んでいてもよい。
テルビウムイオンは核小体を緑色に染色し、DAPI又はHoechst色素は核内構造を青色に染色し、エオジンBは細胞質及び線維を赤色に染色することができる。核小体とともに核内構造、及び/又は細胞質・線維を染色することで、がん細胞をより明瞭に検出することができる。
本発明のがん細胞検出液の各成分の好ましい濃度は:
(i)テルビウムイオン:20~100mM程度、
(ii)DAPI:10~20μg/mL程度、
(iii)Hoechst色素:10~20μg/mL程度、
(iv)エオジンB:1~20mM程度
である。
テルビウムイオン+DAPI、テルビウムイオン+DAPI+eosinBの好ましい染色プロトコルを下記に示す。
Tb3+ + DAPI
1. 試料を緩衝液で30秒間リンス
2. 試料をエタノールに60秒間浸漬
3. 試料を緩衝液に30秒間浸漬
4. 試料をDAPI 10-20 μg/ml + Tb3+ 20-100 mM 水溶液に3分間浸漬
Tb3+ + DAPI + eosin B
1. 試料を緩衝液で30秒間リンス
2. 試料を10 mM eosin B/エタノールに60秒間浸漬
3. 試料を緩衝液に30秒間浸漬
4. 試料をDAPI 10-20 μg/ml + Tb3+ 20-100 mM水溶液に3分間浸漬
上記以外の染色剤を使用する場合も上記のプロトコルを参考にして当業者は試料の処理条件を決定できる。
本発明のがん細胞検出液は、核小体蛍光染色液と同様の条件(温度、時間等)で処理することで、がん細胞を検出することができる。なお、本発明の核小体蛍光染色液は、核小体のみでがん細胞の検出に有用であるので、がん細胞検出液にもなり得る。
核小体蛍光染色液による処理は、膜透過液で処理された細胞を含む試料に核小体蛍光染色液を噴霧又は滴下して行ってもよく、細胞を含む試料を核小体蛍光染色液に浸漬して行ってもよい。
なお、本発明の核小体の蛍光染色方法は、試料の表面近くに存在する細胞の核小体を主に蛍光染色するので、膜透過処理液での処理及び核小体蛍光染色液での処理は、全体の細胞の処理を行ってもよく、表面近くの細胞を処理してもよい。
核小体蛍光染色液での好ましい処理時間は、1~5分程度であり、処理温度は4~60℃程度、好ましくは室温である。
核小体蛍光染色液で処理された細胞を含む試料は、紫外励起光の照射下に処理された細胞を観察することで核小体を検出することができる。
紫外励起光の波長は、200~400nmであり、好ましくは250~350nm、より好ましくは250~320nm、さらに好ましくは250~300nmである。紫外励起光は波長250-300nm以下の深紫外光が好ましい。紫外励起光として深紫外線を用いた場合、深紫外線は試料の表面近くの細胞で吸収、散乱もしくは反射されて内部に到達しないので表面細胞の核小体の鮮明な画像が得られる。紫外励起光の波長が長くなるにつれて複数の層もしくはより内部の細胞の核小体を検出することになる。
紫外励起光の光源としては、LED光源(200-400nmの任意の波長)、レーザ光源(200-400nmの任意の波長)、高圧水銀UVランプ(主波長365nm)、メタルハライドUVランプ(200nm~400nm連続波長)、低圧水銀UVランプ(254nm)、オゾンランプ(254nmと185nm)、キセノン光源(200nm~400nm連続波長)、重水ランプ(200nm~400nm連続波長)などが挙げられ、深紫外LEDが好ましい。
また、高強度超短パルスレーザーを使用した場合、紫外光以外に可視光または赤外光を使用し、多光子吸収により核酸の紫外吸収帯を励起しTbを発光させることが可能である。
核小体の検出は、例えば光学顕微鏡により行うことができる。
本発明の好ましい光学顕微鏡1は、図6に示すように細胞を含む試料5を載置するステージ4と、前記ステージ4上に載置された試料5に向けた観察中心軸を有する受光部と、前記試料5に対し斜めに紫外励起光を照射する投光部を有し、前記受光部はレンズユニット6並びに検出器としてのカメラ7を含み、前記投光部はテルビウムイオンの紫外励起光を照射する光源8、ミラー3、複数のレンズを含むレンズユニットから構成され、前記受光部がテルビウムイオンの緑色蛍光を検出することができるものである。
試料5と検出器(カメラ)7の間には、光学フィルターを入れてもよい。光学フィルターは、長波長透過フィルター、短波長透過フィルター、バンドパスフィルターのいずれでもよい。また、これらを組み合わせても良い。その効果は、試料の自家蛍光の影響の軽減、及び光学系の設計範囲からはずれた波長の光を除去することである。
バンドパスフィルターを用いる場合、Hoechst色素(最大蛍光波長460nm)またはDAPI(最大蛍光波長455nm)とTb(最大蛍光波長545nm)の発光スペクトル及びカラーカメラのスペクトル特性に合わせた特殊なデュアルバンドパスフィルターを用いた場合、Tbとhoechst或いはTbとDAPIのコントラストを向上できる。
例えば、甲状腺細胞(Nthy-ori 3-1)に285nmの励起光を照射し、緑と青のチャネルを有するデュアルバンドパスフィルター(パスバンド:λ=450-480&530-570nm)を試料と検出器(カメラ)7の間の光路に入れた場合と入れない場合の蛍光画像測定結果を図7に示す。Hoechst色素(Hoechst 33342)を青のチャネルだけで検出し、Tbを緑のチャネルだけで検出する。Hoechst色素で染色された部分はより純粋な青色として観察され、Tb染色された部分はより純粋な緑色として観察され、画像のコントラストが向上する。ステージ4上に細胞を含む試料が載置される。前記ステージ4は、Z軸方向に上下する昇降機構のアームの先端部に支持されていてもよく、受光部の対物レンズの位置を上下させてもよい。好ましいステージ4は試料の位置を移動させることが可能なXYステージであり、さらに前記試料を回転可能なθxzステージを備えていてもよい。XYステージの位置制御とθxzステージの制御により試料表面が斜面であっても試料表面の細胞の核小体を検出することができる。
投光部から細胞を含む試料に励起光を照射し、受光部で取得した計測用画像を所定のアルゴリズムで処理することで、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色と同等の画像に変換してもよい。
本発明の光学顕微鏡は、落射蛍光顕微鏡であってもよい。落射型では、紫外励起光とテルビウムに基づく蛍光が同じ対物レンズを通る。蛍光と励起光は、ダイクロイックミラーによって分離される。
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の特定の実施例に限定されるものではない。
以下の全ての実施例において、細胞を含む試料として、培養ヒト乳癌細胞株(MCF-7)及びヒト胃癌転移リンパ節薄切標本を使用した。また、光源として深紫外LED (波長:285nm)を使用した。
実施例1
細胞を含む試料をエタノールに1分間室温で浸漬して膜透過処理し、次いで、20-100mMのTbClと10mMのHEPESを重水に溶解したHEPES緩衝液を含む核小体蛍光染色液50-200μlで室温、3分間処理した。深紫外励起光の光源として深紫外LED(波長285 nm)を用いた光学顕微鏡写真を図1に示す。
図1の結果から、テルビウムイオンにより核小体が蛍光染色されることが明らかになった。
実施例2
RNase処理した以外は実施例1と同様に処理した試料と、BSAを含む緩衝液を使用した以外は実施例1と同様に処理した試料について、実施例1と同様にして得た顕微鏡写真を図2に示す。
図2の結果から、テルビウムイオンがRNAに結合して核小体が染まることが明らかになった。
実施例3
核小体蛍光染色液での処理温度を25℃、40℃、50℃にした以外は実施例1と同様に処理した試料について得た顕微鏡写真を図3に示す。
図3の結果から、DNAは2本鎖であるのでテルビウムイオンにより染まらず、特に50℃での加熱により一本鎖になったDNAはRNAと同様にテルビウムイオンにより染まることが明らかになった。
実施例4
核小体蛍光染色液が、20-100mMのTbClとともに10-20μg/mlのDAPIを含む溶液である以外は実施例1と同様に処理した試料について得た顕微鏡写真を図4に示す。
図4の結果から、核小体(緑色)と核内構造(青色)との高いコントラストが明らかになった。
実施例5
細胞を含む試料としてヒトリンパ節薄切標本を用いた以外は実施例1と同様にして染色した試料を得た。得られた試料について、図5に示す画像変換プロトコル1.~5.により、HE染色に類似した画像を作成した。結果を画像変換前の蛍光画像とともに図5に示す。
1 光学顕微鏡
2 投光部
3 ミラー
4 ステージ
5 試料
6 レンズユニット
7 カメラ(検出器)
8 光源

Claims (12)

  1. 下記の工程1~3を含む、核小体内核酸の蛍光染色方法:
    工程1:細胞を含む試料を膜透過処理液で処理する工程、
    工程2:工程1で得られた試料にテルビウムイオンを含む核小体内核酸蛍光染色液で処理する工程、
    工程3:工程2で得られた試料に紫外励起光の照射下に核小体内核酸を蛍光染色する工程。
  2. 前記核小体内核酸蛍光染色液が緩衝液である、請求項1に記載の核小体内核酸の蛍光染色方法。
  3. 前記核小体内核酸蛍光染色液が重水を含む、請求項1又は2に記載の核小体内核酸の蛍光染色方法。
  4. 紫外励起光が、深紫外光である、請求項1に記載の核小体内核酸の蛍光染色方法。
  5. 前記核小体内核酸蛍光染色液のテルビウムイオン濃度が0.1mM以上である、請求項4に記載の核小体内核酸の蛍光染色方法。
  6. 前記試料が外科および内視鏡的切除臓器もしくは組織、生検サンプル、細胞診サンプル、又は培養細胞である、請求項1に記載の核小体内核酸の蛍光染色方法。
  7. 前記試料が外科および内視鏡的切除臓器もしくは組織、生検サンプル、リンパ液、血液、唾液、涙液、胃液、胆汁、膵液、脳脊髄液、痰、尿、胸水、腹水、又は培養細胞である、請求項6に記載の核小体内核酸の蛍光染色方法。
  8. テルビウムイオンを含む核小体内核酸蛍光染色液。
  9. 前記核小体内核酸蛍光染色液が緩衝液である、請求項に記載の核小体内核酸蛍光染色液。
  10. 前記核小体内核酸蛍光染色液が重水を含む、請求項に記載の核小体内核酸蛍光染色液。
  11. さらにDNA結合染色試薬を含む、請求項8~10のいずれかに記載の核小体内核酸蛍光染色液
  12. 前記DNA結合染色試薬が4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)及びHoechst色素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載の核小体内核酸蛍光染色液
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