JP7299623B2 - キシロース誘導性プロモーター及びその使用 - Google Patents
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Description
〔1〕配列番号1に示される塩基配列の変異塩基配列を含む、キシロース誘導性プロモーターであって、前記変異塩基配列が、以下の(a)~(e):
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域に少なくとも1種の変異を有しており、かつ配列番号1に示される塩基配列と比較して転写抑制作用が抑制されている、キシロース誘導性プロモーター。
〔2〕前記変異塩基配列が、配列番号1の(a)~(e)の2つ以上の領域に変異を有している、前記〔1〕に記載のキシロース誘導性プロモーター。
〔3〕前記変異塩基配列が、配列番号1の(a)~(e)以外の領域に追加の変異を有している、前記〔1〕又は〔2〕に記載のキシロース誘導性プロモーター。
〔4〕前記変異塩基配列において、配列番号1の1番目~713番目の領域のすべて又は一部が欠失している、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター。
〔5〕前記変異が、配列番号1の
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、
(d’)1061番目~1113番目、
(e)1297番目~1302番目、及び
(e’)1224番目~1303番目
の少なくとも1つの領域のすべて又は一部の欠失である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター。
〔6〕前記(a)~(e’)の5’側又は3’側に連なる塩基配列も欠失している、前記〔5〕に記載のキシロース誘導性プロモーター。
〔7〕前記変異が、配列番号1の
(a)822番目~827番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域のすべて又は一部の置換である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター。
〔8〕前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーターを含む、ベクター又は核酸分子。
〔9〕前記キシロース誘導性プロモーターの下流に、目的のタンパク質をコードする塩基配列をさらに含む、前記〔8〕に記載のベクター又は核酸分子。
〔10〕前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター、又は、前記〔8〕又は〔9〕に記載のベクター又は核酸分子を含む、微生物。
〔11〕担子菌である、前記〔10〕に記載の微生物。
〔12〕目的のタンパク質の生産方法であって、
配列番号1に示される塩基配列の変異塩基配列を含むキシロース誘導性プロモーターを含み、かつ、前記キシロース誘導性プロモーターの下流に目的のタンパク質をコードする塩基配列を含む微生物を用意する工程と、
前記微生物を培養して、目的のタンパク質を発現させる工程と
を含み、前記変異塩基配列が、以下の(a)~(e):
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域に少なくとも1種の変異を有しており、かつ配列番号1に示される塩基配列と比較して転写抑制作用が抑制されている、生産方法。
本明細書に記載の「シュードザイマ・アンタクティカ(P.アンタクティカ)」とは、イネやムギなどのイネ科植物の葉面に生息し得るシュードザイマ属菌(酵母)の一種であり、生分解性プラスチック分解酵素などを産生し得るものである。P.アンタクティカに由来するキシラナーゼプロモーターPxyn1は、配列番号1で示される以下の配列を有している。
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域に少なくとも1種の変異を有しており、かつ配列番号1に示される塩基配列と比較して転写抑制作用が抑制されている。本明細書に記載の「変異」とは、配列番号1に示される塩基配列において、1又は複数個の塩基が欠失、置換、又は付加されていることをいう。特定の理論に拘束されるものではないが、配列番号1の(a)~(e)の領域には転写抑制因子が結合すると考えられ、当該領域内の1又は複数個の塩基が欠失若しくは置換されるか、又は、当該領域内に1又は複数個の塩基が付加されることより、当該転写抑制因子の結合が妨げられて、結果として下流の遺伝子の転写及び発現が亢進すると考えられる。
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、
(d’)1061番目~1113番目、
(e)1297番目~1302番目、及び
(e’)1224番目~1303番目
の少なくとも1つの領域のすべて又は一部の欠失である。さらなる態様では、前記変異塩基配列においては、前記(a)~(e’)の5’側又は3’側に連なる塩基配列も連続して欠失されていてもよく、例えば、前記領域のすべて又は一部を含む全体で約100塩基以内又は約80塩基以内の領域が欠失されていてもよい。より具体的には、前記変異は、配列番号1の
(a)822番目~827番目、並びに、その3’末端側45塩基以内若しくは35塩基以内及び/又はその5’末端側45塩基以内若しくは35塩基以内の塩基配列、
(b)905番目~963番目、並びに、その3’末端側20塩基以内若しくは10塩基以内及び/又はその5’末端側20塩基以内若しくは10塩基以内の塩基配列、
(c)1014番目~1060番目、並びに、その3’末端側25塩基以内若しくは15塩基以内及び/又はその5’末端側25塩基以内若しくは15塩基以内の塩基配列、
(d)1064番目~1069番目、並びに、その3’末端側45塩基以内若しくは35塩基以内及び/又はその5’末端側45塩基以内若しくは35塩基以内の塩基配列、
(d’)1061番目~1113番目、並びに、その3’末端側25塩基以内若しくは15塩基以内及び/又はその5’末端側25塩基以内若しくは15塩基以内の塩基配列、
(e)1297番目~1302番目、並びに、その3’末端側45塩基以内若しくは35塩基以内及び/又はその5’末端側45塩基以内若しくは35塩基以内の塩基配列、及び/又は、
(e’)1224番目~1303番目、並びに、その3’末端側10塩基以内及び/又はその5’末端側10塩基以内の塩基配列
の欠失であってもよい。好ましくは、前記変異は、前記(a)、(d)、(d’)、(e)、及び/又は(e’)の領域全体の欠失であり、特に好ましくは、前記(d)又は(d’)の領域全体と、(e)又は(e’)の領域全体との欠失である。
(a)822番目~827番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域のすべて又は一部の置換である。置換後の塩基配列は、キシロース誘導性プロモーター活性が向上する限り特に制限されないが、例えば、「5’-SYGGRG-3’」(「S」はC又はG、「Y」はC又はT、「R」はA又はGを表す。)の条件を満たさない配列が好ましい。
前記変異塩基配列を含むキシロース誘導性プロモーターを含み、かつ、前記キシロース誘導性プロモーターの下流に目的のタンパク質をコードする塩基配列を含む微生物を用意する工程と、
前記微生物を培養して、目的のタンパク質を発現させる工程と
を含んでいる。前記目的のタンパク質は、特に制限されず、例えば、前記微生物自体に由来するタンパク質であってもいいし、異種タンパク質であってもよい。前記キシロース誘導性プロモーターの活性により前記目的のタンパク質の発現効率が向上するため、本発明の方法は、当該目的のタンパク質の大量生産に有用である。
(1)内部配列に欠失変異を有するプロモーター及びレポーターカセット導入株の作製
P.アンタクティカGB-4(0)株のゲノムDNAから取得した野生型キシラナーゼプロモーターPxyn1の配列をpCR2.1TOPO TAベクターへサブクローニングした。これを鋳型とし、以下の表1に示す各プライマーセットを用いてインバースPCRを行い、増幅された各断片を再環化することで、Pxyn1内の内部配列を削除した変異型プロモーターを含むサブクローニングプラスミドを複数種類作製した。
*レポーターカセットの構造
5’-[PaE遺伝子上流配列]-[URA3(マーカー)]-[変異型プロモーター]-[PaE]-[キシラナーゼターミネーター]-[PaE遺伝子下流配列]-3’
上記(1)で作製したレポーターカセット導入株又はPaE遺伝子を含まないレポーターカセットを導入したPaE非産生株を、YM液体培地(グルコース2%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、及び麦芽エキス0.3%を含む)を用いて30℃で24時間振盪培養し、種母培養液を作製した。この種母培養液を、96穴2mL容ディープウェルプレートに分注した800μLの3xFMMX液体培地(酵母エキス0.3%、硝酸ナトリウム0.2%、リン酸二水素カリウム0.06%、硫酸マグネシウム七水和物0.06%、及びキシロース8%を含む)中に植菌し、ディープウェルプレートミキサー(タイテック株式会社製)を用いて30℃、1500rpmで72時間振盪培養した。そして、培養液を遠心分離して、菌体及び培養上清を取得した。
変異型P4に対してプライマーセット6を使用して上記項目(1)の工程を繰り返し、二重変異型プロモーター(変異型P4P6)及びそれを含むレポーターカセット導入株を作製した。そして、このレポーターカセット導入株、及び、変異型P4又は変異型P6を含むレポーターカセット導入株を培養し、上記項目(2)と同様にしてそれぞれのプロモーター活性を測定した。結果を表3に示す。
プライマーセットとして次の表4に記載のプライマーセット4a、6a、及び7を使用して部位特異的突然変異導入法により対象塩基配列を別の塩基配列に置換した以外は、上記項目(1)と同様にして変異型プロモーター(変異型P4a、P6a、及びP7)及びそれを含むレポーターカセット導入株を作製した。そして、これらのレポーターカセット導入株を培養し、上記項目(2)と同様にしてそれぞれのプロモーター活性を測定した。結果を表5に示す。
プライマーセットとして次の表6に記載のプライマーセット4bを使用して部位特異的突然変異導入法により対象塩基配列を別の塩基配列に置換した以外は、上記項目(1)と同様にして変異型プロモーター(変異型P4b)及びそれを含むレポーターカセット導入株を作製した。そして、変異型P4a又はP4bを含むレポーターカセット導入株を培養し、上記項目(2)と同様にしてそれぞれのプロモーター活性を測定した。結果を表7に示す。
(1)短縮型プロモーターの作製及び評価
プライマーセットとして次の表8に記載のプライマー8~12のいずれかと共通プライマーの組合せを使用した以外は、上記項目1の(1)と同様にして変異型プロモーター(変異型P8~P12)及びそれを含むレポーターカセット導入株を作製した。そして、これらのレポーターカセット導入株を培養し、上記項目1の(2)と同様にしてそれぞれのプロモーター活性を測定した。結果を表9に示す。
変異型P10に対してプライマーセット4及び6を使用して上記項目1の(1)の工程を順次繰り返し、短縮型二重変異型プロモーター(変異型P10+P4P6)及びそれを含むレポーターカセット導入株を作製した。そして、このレポーターカセット導入株、及び、変異型P10を含むレポーターカセット導入株を培養し、上記項目1の(2)と同様にしてそれぞれのプロモーター活性を測定した。結果を表10に示す。
(1)複数コピー導入株の作製及び評価
次の表11に示すプライマーセット13を使用して、上記項目1の(1)で作製した変異型P4を含むレポーターカセット中のURA3(マーカー)からキシラナーゼターミネーターまでの部分を増幅し、DpnIによる制限酵素処理及びアガロースゲル抽出によってPaE生産カセットを精製した。
*PaE生産カセットの構造
5’-[URA3(マーカー)]-[変異型P4]-[PaE]-[キシラナーゼターミネーター]-3’
上記(1)で取得した細胞株h及び公知のPaE高生産株としてPGB474株(特許文献2)を、常法に従って(非特許文献1を参照)、3Lジャーファーメンターで培養した。培養開始後24時間以降に培養液を適宜サンプリングし、培養上清及び菌体を遠心分離して回収した。そして、上記項目(1)と同様にして、培養上清中のPaE活性を測定した。また、回収した菌体を105℃で6時間乾熱処理し、乾燥菌体重量を測定した。
次の表12に記載のプライマーセット14を用いて、P.アンタクティカGB-4(0)株のコドン頻度に応じて塩基配列を最適化したGFP遺伝子(PaGFP)断片を増幅した。制限酵素EcoRV及びEcoRIを使用して、上記項目1の(1)及び(3)で作製した変異型プロモーター(変異型P4又は変異型P4P6)を含むレポーターカセットのPaE遺伝子部分を、増幅したPaGFP遺伝子断片で置き換え、GFP発現カセットを作製した。そして、このGFP発現カセットを、前掲のプライマーセット13を用いて増幅し、制限酵素DpnI処理及びアガロースゲル抽出によって精製した。
*GFP発現カセットの構造
5’-[URA3(マーカー)]-[変異型P4又は変異型P4P6]-[GFP]-[キシラナーゼターミネーター]-3’
Claims (12)
- 配列番号1に示される塩基配列の変異塩基配列を含む、キシロース誘導性プロモーターであって、前記変異塩基配列が、以下の(a)~(e):
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域に少なくとも1種の変異を有しており、かつ配列番号1に示される塩基配列と比較して転写抑制作用が抑制されている、キシロース誘導性プロモーター。 - 前記変異塩基配列が、配列番号1の(a)~(e)の2つ以上の領域に変異を有している、請求項1に記載のキシロース誘導性プロモーター。
- 前記変異塩基配列が、配列番号1の(a)~(e)以外の領域に追加の変異を有している、請求項1又は2に記載のキシロース誘導性プロモーター。
- 前記変異塩基配列において、配列番号1の1番目~713番目の領域のすべて又は一部が欠失している、請求項1~3のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター。
- 前記変異が、配列番号1の
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、
(d’)1061番目~1113番目、
(e)1297番目~1302番目、及び
(e’)1224番目~1303番目
の少なくとも1つの領域のすべて又は一部の欠失である、請求項1~4のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター。 - 前記(a)~(e’)の5’側又は3’側に連なる塩基配列も欠失している、請求項5に記載のキシロース誘導性プロモーター。
- 前記変異が、配列番号1の
(a)822番目~827番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域のすべて又は一部の置換である、請求項1~4のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター。 - 請求項1~7のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーターを含む、ベクター又は核酸分子。
- 前記キシロース誘導性プロモーターの下流に、目的のタンパク質をコードする塩基配列をさらに含む、請求項8に記載のベクター又は核酸分子。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載のキシロース誘導性プロモーター、又は、請求項8又は9に記載のベクター又は核酸分子を含む、微生物。
- 担子菌である、請求項10に記載の微生物。
- 目的のタンパク質の生産方法であって、
配列番号1に示される塩基配列の変異塩基配列を含むキシロース誘導性プロモーターを含み、かつ、前記キシロース誘導性プロモーターの下流に目的のタンパク質をコードする塩基配列を含む微生物を用意する工程と、
前記微生物を培養して、目的のタンパク質を発現させる工程と
を含み、前記変異塩基配列が、以下の(a)~(e):
(a)822番目~827番目、
(b)905番目~963番目、
(c)1014番目~1060番目、
(d)1064番目~1069番目、及び
(e)1297番目~1302番目
の少なくとも1つの領域に少なくとも1種の変異を有しており、かつ配列番号1に示される塩基配列と比較して転写抑制作用が抑制されている、生産方法。
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JP2020156191A JP7299623B2 (ja) | 2020-09-17 | 2020-09-17 | キシロース誘導性プロモーター及びその使用 |
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JP2022049902A JP2022049902A (ja) | 2022-03-30 |
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Citations (2)
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---|---|---|---|---|
WO2014109360A1 (ja) | 2013-01-09 | 2014-07-17 | 独立行政法人農業環境技術研究所 | 高効率な異種タンパク質の製造方法 |
JP2018157814A (ja) | 2017-03-21 | 2018-10-11 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | シュードザイマ・アンタクティカの新規菌株 |
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2020
- 2020-09-17 JP JP2020156191A patent/JP7299623B2/ja active Active
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Non-Patent Citations (4)
Title |
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APPLIED GENETICS AND MOLECULAR BIOTECHNOLOGY,2015年12月23日,Vol. 100,p. 3207-3217 |
BIOSCIENCE, BIOTECHNOLOGY, AND BIOCHEMISTRY,2019年,Vol. 83, No. 8,p. 1547-1556 |
日本農芸化学会2015年度大会講演要旨集 (オンライン),2015年03月05日,3B33a11 |
日本農芸化学会2019年度大会講演要旨集 (オンライン),2019年03月05日,3D7p12 |
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