(実施形態)
以下、本技術の実施形態に係る編網装置10及びこれに用いる位置調整具90について、図面を参照しつつ説明する。図1に示す編網装置10は、概略、駆動部20、経糸保持部22、経糸供給部23、経糸ローラー部24、目締レバー部25、結節機構部26、網送り部27、網巻取部28等を備えている。後述する変形形態1~3も同様である。
このうち、駆動部20は、駆動軸21のほか、電動モータ、電動モータの回転を減速して駆動軸21に伝達する減速機、駆動軸21に取付けられた駆動カム、ギヤ等の駆動部材を備えている(図1では、電動モータ、減速機、駆動カムの駆動部材は図示しない)。駆動カムなどの駆動部材は、駆動軸21により駆動され、種々の連結機構(図示しない)を介して、経糸保持部22、経糸供給部23、経糸ローラー部24、目締レバー部25、結節機構部26、網送り部27、網巻取部28等を作動させる。
なお、本実施形態及び後述する変形形態1~8では、編網装置10等における各方向を図1、図3等に示す方向とする。即ち、図1において、紙面上下方向を高さ方向HDとし、このうち上方向を上側HDUと、下方向を下側HDDとする。また、紙面左右方向を奥行き方向DDとし、このうち、紙面左方向を前側DDFとし、紙面右方向を奥側DDBとする。また、図1の紙面に垂直な方向、及び、図3において左上から右下に延びる方向を幅方向WDとする。このうち、図1において手前側及び図3において右下方向を、一方側WD1とする。また、図1において奥側及び図3において左上方向を、他方側WD2とする。
図1に示すように、経糸保持部22のうちクリルスタンド22Sには、経糸WAが捲回された経糸ボビン22Bが多数(例えば612個)保持されており、各経糸ボビン22Bから引き出された多数(例えば612本)の経糸WA(一点鎖線で示す)は、クリルスタンド22Sの上部を経由して、互いに平行に経糸供給部23に供給される。そして、経糸供給部23を通じて、さらに下流側の経糸ローラー部24に供給される。経糸ローラー部24では、経糸WAに所定のテンションを付与するほか、下流側への経糸WAの供給と停止をコントロールする。
経糸ローラー部24から供給された経糸WAは、目締レバー部25を経由して結節機構部26に送られ、緯糸WEと所定間隔毎に結節されて、長尺状の網NT(太線の一点鎖線で示す)が編まれる。なお、目締レバー部25は、下流側DADの結節機構部26に経糸WAを送るほか、経糸WAと緯糸WEとで結節部NDを形成する際に、経糸WAを上流側DAUに引き戻すように作動する。
結節機構部26で編まれた網NTは、網送り部27により下流側DNDに送られ、網巻取部28でロール状に巻き取られる。
次いで、結節機構部26における経糸WAと緯糸WEとの結節及び編網について説明する。但し、本実施形態では、まず、後述する位置調整具90を取り付けていない状態での、結節機構部26の説明及び編網動作の説明を、図2~図15を参照して行う。そしてその後に、位置調整具90を取り付けた本実施形態の編網装置10における結節機構部26及び編網動作を、図16~図21を参照して説明する。
結節機構部26は、図2に示すように(図9,図17等も参照)、リード機構部30、巻鈎機構部40、引鈎機構部50、ガイドフック60、多数の緯糸ボビン70、この緯糸ボビン70を各々収容する多数のシャトル80、解放プレート65などからなる。
緯糸ボビン70を収容した多数(経糸WAの数よりも1つ多い数。例えば613個)のシャトル80は、シャトル80の板厚方向SDに重なった一列に列置される。編網装置10等では、列置された多数のシャトル80は、板厚方向SDが前述の幅方向WDに一致する形態(図1において紙面に直交する方向)で、保持されている(図9参照)。また、この図9に示すように、本実施形態等では、板厚方向SDの一方側SD1は幅方向WDの一方側WD1に一致し、板厚方向SDの他方側SD2は幅方向WDの他方側WD2に一致するとする。
結節機構部26のうち、リード機構部30は、幅方向WDに延び前側DDFで立ち上がるL字状に屈曲したリード31を有しており、このリード31には、ピッチPHで幅方向WDに並んだリード孔31Hが多数形成されている。このリード孔31Hには、それぞれ、奥側DDBから前側DDFに向かって延びる経糸WAが、各々1本ずつ貫通している。なお、図3~図9及び図11~図13では、図示の明瞭化を目的として、経糸WAを1本のみ図示する。リード31及びそのリード孔31Hは、リード機構部30によって、高さ方向HD、幅方向WD及び奥行き方向DDに立体的に移動する。
巻鈎機構部40は、リード孔31Hと同じピッチPHで幅方向WDに並んだ多数の巻鈎41と、巻鈎保持駆動部42を有している。巻鈎保持駆動部42は、多数の巻鈎41をそれぞれの軸線41Xの周りに回動可能(例えば図3参照)に、かつ、巻鈎41を前側DDFに跳ね上げ移動可能(図13参照)に保持する。巻鈎41は、経糸WA毎に設けられている。巻鈎41の下側HDDの端部には、鈎状の巻鈎部41Mが形成されている。この巻鈎部41Mには、図3に示されている回転位置とした姿勢において、奥行き方向DDに延びる巻鈎溝部41MGが形成されている。巻鈎41は、巻鈎保持駆動部42の、図示しないラックやピニオン等を用いた回転機構に駆動されて、互いに同期して軸線41Xの周りにそれぞれ回転する。
引鈎機構部50(図17も参照)は、多数の引鈎51、引鈎支持体52、及び、引鈎支持体52と共に引鈎51を幅方向WDに直交する方向(高さ方向HD及び奥行き方向DD)に移動させる引鈎移動機構54等を備える。引鈎51は、直棒状の本体部51B、及び、本体部51Bに先端部に形成された引鈎部51Fを有する。引鈎支持体52は、引鈎支持本体52Bと引鈎51を保持し引鈎支持本体52Bに取り付けられた取付部材53を有しており、この取付部材53は、引鈎51のうち本体部51Bの基端部分を保持している。図2に示す状態において、多数の引鈎51も、経糸WA毎に設けられており、リード孔31Hと同じピッチPHで幅方向WDに並んで配置されている。なお本実施形態では、図17にも示すように、取付部材53は、断面L字状で幅方向WDに延びる取付部材本体53Bと、取付部材本体53Bに取り付けられ、幅方向WDに並んだ複数の引鈎51の本体部51Bをそれぞれ固定して支持する引鈎固定部材53Sとからなる。
ガイドフック60は、図2に示す状態において、巻鈎41の概ね下側HDDに位置し、幅方向WDに延び、多数の逆V字状のガイド溝61が、リード孔31Hと同じピッチPHで幅方向WDに並んで形成されている(図3参照)。多数のガイド溝61には、それぞれ経糸WA及び緯糸WEが重なって挿入されている(多数の緯糸WEのうち、幅方向WDの両端の緯糸WEのいずれかは緯糸のみ)。
緯糸ボビン70(図9参照)は、薄い2枚の円板を中央部で連結した形態を有し、2枚の円板の間には、緯糸WEが捲回された状態で収容されている。緯糸ボビン70のうち、ボビン軸線70Xに沿うボビン軸線方向BDの厚みは、ピッチPH及び次述するシャトル80より薄くされている。
シャトル80(図9参照)は、樹脂やアルミニウム(本実施形態では、ガラス繊維フィラー入りポリアミド)からなる環状板形状であり、緯糸ボビン70の径方向外側DOを囲んでこの緯糸ボビン70を収容している。このシャトル80は、上部80Uに、幅方向WDの断面が三角山形状にされた振り分け部81を有している。この振り分け部81は、後述するようにして、この振り分け部81に当接した2本の経糸WAを、板厚方向SDの一方側SD1と他方側SD2にそれぞれ1本ずつに振り分ける部位である。また、シャトル80の板厚方向SD(緯糸ボビン70のボビン軸線方向BDに一致する)の厚さであるシャトル厚さTHSは、前述のピッチPHより薄く(THS<PH)されている。
多数のシャトル80は、それぞれ板厚方向SDを幅方向WDに一致する姿勢とし、それぞれ複数のサポート部材(図17、図31、図35のサポート部材66~68参照)により、ピッチPHの間隔で並ぶように下側HDDから支持されている。このため、多数のシャトル80は、ピッチPHの間隔で、幅方向WDに、相互に幅方向WDのシャトル間隙GP(図20参照)を空けて列置されている。このシャトル間隙GPは、計算上は、ピッチPHとシャトル厚さTHSとの差(GP=PH-THS)で与えられる。但し、複数のサポート部材(例えばサポート部材66~68)による、各シャトル80の幅方向WDへの位置範囲の規制は厳密では無い。また前述したように、各シャトル80には、歪みや曲がりが生じている場合も有る。このため、サポート部材上に載置されて列置された各シャトル80の幅方向WDの位置は、複数のサポート部材により概ね定まる。しかし、各シャトル80の幅方向WDの実際の位置は、ピッチPHで定まる位置を中心として、概ね計算上のシャトル間隙GPの大きさの位置範囲内で変動し得る。
緯糸ボビン70を収容したシャトル80は、経糸WAの数(例えば612本)に対し、これよりも1枚多い数(例えば613枚)だけ用意する。なお、シャトル80に収容された緯糸ボビン70に捲回された緯糸WEは、シャトル80の緯糸取出し部82から奥行き方向DDの奥側DDBに引き出され、ガイドフック60のガイド溝61を経由して下流側DEDに延びている。
前述のリード31のリード孔31H、巻鈎41、引鈎51等が、所定の動作を所定のタイミングで行うことにより、経糸WAと緯糸WEとが結節されて結節部NDが形成され、網NTが形成される。形成された網NTは、結節機構部26から網送り部27に供給される。
ついで、結節機構部26の動作について説明する。まず図3に示す状態から、図4に示すように、巻鈎41を軸線41X周りに180度回転させるとともに、リード31を下側HDDに降下させる。これにより、巻鈎41の先端部分の巻鈎部41Mに経糸WAが巻付けられる。さらに巻鈎41をさらに180度回転させると共に、リード31を上側HDUに移動させる。これにより、図5に示すように、巻鈎41の巻鈎部41Mに経糸WAの一重のループが形成される。さらに図6に示すように、巻鈎41を回転させる一方、リード31を下側HDDに降下させ、図7に示すように巻鈎41を合計2回転させ終えると、巻鈎41の巻鈎部41Mには、経糸WAが二重に巻かれた経糸ループWALが形成される。
続いて、図8に示すように、引鈎移動機構54により、引鈎51の先端部分の引鈎部51F及び本体部51Bを、奥側DDBに移動させ、巻鈎部41Mに設けた巻鈎溝部41MGを通過させて、巻鈎部41Mに形成された経糸ループWAL内を貫通させる。これと共に、リード31を巻鈎部41Mよりも上側HDUまで上昇させる。その後、さらに幅方向WDの一方側WD1(図中、右下側)に移動させながら下側HDDに降下させる。このリード31の動作によって、経糸ループWALよりも奥側DDBに突出する引鈎51の本体部51Bに、経糸ループWALよりも上流側DAUでリード孔31Hよりも下流側DADの経糸WAを巻付ける。
続いて、図9に示すように、引鈎51を奥行き方向DDの前側DDF(図中、左下方向)に移動させ、引鈎51の先端部分の引鈎部51Fに、経糸ループWALよりも上流側DAUでリード孔31Hよりも下流側DADの経糸WAを係合させて、引鈎部51Fと共に、経糸ループWAL内を通した形態で前側DDFに引き出す。これにより、引鈎部51Fへの係合部位WAUEを底とするU字形状に折り返されたU字状経糸WAUを形成する。このU字状経糸WAUは、シャトル80の板厚方向SDの一方側SD1(幅方向WDの一方側WD1に一致)の一辺をなす第1辺経糸WAU1と、板厚方向SDの他方側SD2(幅方向WDの他方側WD2に一致)の一辺をなす第2辺経糸WAU2とを有する。
なお、引鈎51が経糸WAを引っ張ってU字状経糸WAUを形成しているときには、ガイドフック60よりも下流側DAD(図9において下側HDD)の経糸WAは、網送り部27(図1参照)によって上流側DAUへの移動を拘束されている。このため、ガイドフック60のガイド溝61から、ガイドフック60よりも下流側DADの経糸WAが、上流側DAU(経糸ループWAL側)に引き戻されることはない。
一方、リード孔31Hより上流側DAUの経糸WAは、経糸WAに生じたテンションの増加に応じた、目締レバー部25の回動(図1において反時計方向への回動)によって、必要な長さ分だけ繰り出されてU字状経糸WAUとして利用される。なお、目締レバー部25は、図示しない機構によって、図1において時計方向に付勢されている。
更に、U字状経糸WAUが係合している引鈎部51Fを前側DDFに移動させて経糸WAを引き出しつつ、引鈎部51Fを下側HDDに移動させ、U字状経糸WAUをシャトル80の上側HDUから、シャトル80の上部80Uに設けた振り分け部81に当接させる。そして、振り分け部81により、U字状経糸WAUのうち、第1辺経糸WAU1をシャトル80の板厚方向SDの一方側SD1(幅方向WDの一方側WD1)に、第2辺経糸WAU2を他方側SD2(他方側WD2)に振り分ける。
但し、前述したように、多数のシャトル80は、相互に幅方向WDのシャトル間隙GPを空けて、ピッチPHの間隔で列置されている。このため、一部のシャトル80では、幅方向WDの位置ズレやシャトル80に生じた歪み曲がりなどによって、振り分け部81の位置が幅方向WDに位置ズレを生じている場合があり得る。この場合、当該位置ズレを生じたシャトル80では、振り分け部81による第1辺経糸WAU1と第2辺経糸WAU2の振り分けが適切に行えず、第1辺経糸WAU1と第2辺経糸WAU2の二本とも、シャトル80の一方側SD1に振り向けてしまう場合、或いは他方側SD2に振り向けてしまう場合が生じ、結節部ND不形成の不具合となる場合があり得る。
振り分け部81による振り分けの後、更に引鈎部51Fを、シャトル80の前側端部80Fよりも下方まで移動させ、U字状経糸WAUのうち、第1辺経糸WAU1をシャトル80の一方側面80S1に沿って、一方側面80S1の一方側SD1を移動させる。即ち、シャトル80とこのシャトル80の一方側SD1(一方側WD1)に隣在する他のシャトル80(図9において図示しない)との間のシャトル間隙GPを通して、第1辺経糸WAU1を移動させる。また同様に、U字状経糸WAUのうち、第2辺経糸WAU2をシャトル80の他方側面80S2に沿って、他方側面80S2の他方側SD2を移動させる。即ち、シャトル80とこのシャトル80の他方側SD2(他方側WD2)に隣在する更に他のシャトル80(図9において図示しない)との間のシャトル間隙GPを通して、第2辺経糸WAU2を移動させる。
その後、経糸WAが係合している引鈎部51Fから、経糸WAを解放する。具体的には、図10に示すように、U字状経糸WAUが係合している引鈎部51Fを、解放プレート65に接近させ、解放プレート65の先端65SにU字状経糸WAUを当接させる。さらに、引鈎51を図中矢印で示す奥側DDBかつ下側HDDに移動させ、引鈎部51FからU字状経糸WAUを解放させる。
すると、付勢されている目締レバー部25が、図1において時計方向に回動し、図11及び図12に示すように、リード31のリード孔31Hを通じて経糸WAが上流側DAUに引き戻される。これによりU字状経糸WAUがシャトル80の下側HDDをくぐり、シャトル80から延びる緯糸WEに巻き付き(図12参照)、さらに、経糸WAと共にU字状の緯糸WEを巻鈎部41Mの巻鈎溝部41MG内に引き込んで、経糸ループWAL内を通す。
さらに、図13に示すように、巻鈎保持駆動部42(図2参照)により巻鈎41を、前側DDF及び上側HDUに跳ね上げるように回動させ、巻鈎41の巻鈎部41Mを経糸ループWALから抜き去る。なおこれと共に、リード31を上側HDUかつ奥側DDBに移動させ、巻鈎部41Mが経糸ループWALから抜け出し易くする。この状態からさらに上流側DAUに経糸WAが引き戻され、経糸WAと緯糸WEとが結節する。かくして、図14に示す多数(例えば612個)の結節部NDが幅方向WDに並んで形成される。
その後、網送り部27により、編み上がった網NT(図15参照)は所定の送り量だけ下流側DNDに送られ網巻取部28で巻き取られる。これと共に、経糸保持部22、経糸供給部23、経糸ローラー部24を通じて、所定の長さだけ経糸WAが下流側DADに送り出される。また、経糸WAの送り出しと共に、リード機構部30により、リード31はリード孔31HのピッチPH(1ピッチ分)だけ、幅方向WDの一方側WD1或いは他方側WD2に水平移動する。この状態で次のサイクルの編網動作が再び行われ、さらに次のサイクルの編網動作では、リード31は再び元の位置に戻される。このようなリード31の幅方向WDの移動が繰返されることにより、1本の経糸WAが隣り合う緯糸WEと交互に結節される。なお、網送り部27における送り量を変化させることで、網NTにおける網目の大きさを調整することができる。
次いで、本実施形態に係る、位置調整具90を取り付けた編網装置10における結節機構部26及び編網動作を、図16~図21を参照して説明する。なお、図16に示す位置調整具90については、図17に示すように、引鈎支持体52のうち取付部材53の下側HDDに取り付けて、図17に示す状態としたときの姿勢を基本姿勢として、各方向を説明する。
位置調整具90は、幅方向WDに延びる矩形板状の保持板94と、これに着脱可能に保持されて下側HDDに突出し、奥行き方向DDに延び、幅方向WDに調整部ピッチPCの間隔で並ぶ多数の調整部材91とからなる、可動部を有しない固定型の位置調整具である。なお、調整部ピッチPCは、リード孔31HのピッチPHに等しい大きさとされている。
このうち、調整部材91は、断面円形の金属線材(本実施形態では、具体的にはステンレス鋼線)を、調整部92の外形を縁取る形態に屈曲成形した成形線材である。この調整部材91は、破線で示すように保持板94内に保持された被保持部93と、保持板94から下側HDDに概ねU字状に突出する調整部92からなる。本実施形態の調整部92は、保持板94よりも奥側DDBに突出する突出調整部92Pを有する形態としてなる。図20に示すように、調整部92の調整部厚みTC(幅方向WDの寸法)、即ち、調整部材91の線径は、シャトル間隙GPの寸法よりも小さくしてある(TC<GP)。調整部92が、列置されたシャトル80同士の間に生じるシャトル間隙GP内を、容易に通過できるようにするためである。但し、調整部厚みTC(線径)が小さすぎる場合には、後述する残存隙間RGの寸法が大きくなり、調整部92によりシャトル80の幅方向WDの位置を整える作用が少なくなる。
一方、保持板94は、矩形状のベース板95と、ベース板95とほぼ同寸の平面形状を有する保持カバー96とからなる。保持カバー96のうち、幅方向WDに延びる2つの長辺部96P1,96P2には、それぞれ奥行き方向DDの内側に窪む係止溝96Gが、調整部ピッチPC毎に形成されている。そして、調整部材91の被保持部93を、係止溝96Gに係止すると共に、ベース板95と保持カバー96とで高さ方向HDに挟み、図示しない締結ネジで、ベース板95と保持カバー96とを締結して、多数の調整部材91を固定している。このため、一部の調整部材91に変形や破損が生じた場合にも、容易に新たな調整部材91と交換することができる。保持板94には、位置調整具90を引鈎支持体52の取付部材53にネジ締結で取り付けるための取付孔94Hが貫通して形成されている。
図16には、幅方向WDに18個の調整部92を設けた位置調整具90を示した。従って、多数の経糸WAを用いた網NTを編網する場合には、複数の位置調整具90を幅方向WDに列置して引鈎支持体52(取付部材53)に取り付けるようにすれば良い。一方、調整部厚みTC及び調整部ピッチPCを保ちつつ位置調整具90の幅方向WDの寸法を変更して、1つの位置調整具90に設ける調整部92の数を適宜変更することもできる。
次いで、編網装置10のうち、位置調整具90を取り付けた結節機構部26について、図17~図21を参照して説明する。前述したように、本実施形態の編網装置10では、結節機構部26のうち、取付部材53の下側HDDに位置調整具90を取り付けて用いる。さらに詳細には、取付部材53のうち、断面L字状の取付部材本体53Bに取り付けられた引鈎固定部材53Sの下側HDDに位置調整具90を取り付けている。一方、取付部材53には、多数の引鈎51が、幅方向WD(図17において紙面に直交する方向)にピッチPH毎に、奥行き方向DD(図17において左右方向)に延びる姿勢で固定されている。そこで、これらの引鈎51に対し、調整部92が、ピッチPHの半分だけ幅方向WDにズレるようにして、位置調整具90を取付部材53の取付部材本体53Bに固定する。即ち、幅方向WDに並んだ引鈎51と調整部92とを平面視した場合に、2つの調整部92の幅方向WDの中央に、引鈎51及び引鈎部51Fが位置するように、位置調整具90を取付部材53に固定する(後述する変形形態1~5の位置調整具90Aも同様)。
このように位置調整具90の調整部92を配置することで、2つの調整部92同士の間にシャトル80を位置させた場合に、当該シャトル80が取り得る幅方向WDの位置を狭い位置範囲に制限することができる。なお、幅方向WDに列置した多数(例えば613個)のシャトル80に対し、これよりも少なくとも1つ以上多い数(例えば614個以上)の調整部92を設けておく。すべてのシャトル80について、幅方向WDの両側から、一対の調整部92で挟み得るようにするためである。
図17は、引鈎51の引鈎部51F及び本体部51Bを、巻鈎部41Mの巻鈎溝部41MGを通過させて、巻鈎部41Mに形成された経糸ループWALを貫通させ、さらに、本体部51Bに、経糸ループWALよりも上流側DAUでリード孔31Hよりも下流側DADの経糸WAを巻付けた時点の状態を示す図である(経糸WA及び経糸ループWALは記載省略した。図8参照)。
このタイミングでは、位置調整具90の調整部92は、シャトル80と幅方向WD(図17において紙面に垂直な方向)に重なっていない。即ち、シャトル80同士の間に調整部92は存在しない。このため、各シャトル80の幅方向WDの位置は、サポート部材66,67によって定まる。このため、各シャトル80の上部80Uに設けた、三角山状の振り分け部81部の幅方向WDの実際の位置は、前述したように、概ね計算上のシャトル間隙GPの大きさの位置範囲内で変動し得る。
この後、図18に示すように、引鈎51を前側DDF(図中、左方向)に移動させ、引鈎部51Fに、経糸WAを係合させて、引鈎部51Fと共に、経糸ループWAL内を通した形態で前側DDFに引き出す。これにより、引鈎部51Fへの係合部位WAUEを底とするU字形状で、幅方向WDの一方側WD1(紙面手前側)の一辺をなす第1辺経糸WAU1と、幅方向WDの他方側WD2(紙面奥側)の一辺をなす第2辺経糸WAU2とを有するU字状経糸WAUを形成する(図9も参照)。
このタイミングでは、位置調整具90の一対の調整部92は、シャトル80の上部80Uのうち被規制部80Rに対して、幅方向WDの一方側WD1(紙面手前側)と、幅方向WDの他方側WD2(紙面奥側)にそれぞれ位置している。即ち、被規制部80Rは、一対の調整部92により幅方向WDに挟まれている。このため、各シャトル80のうち、被規制部80Rの取り得る幅方向WDの位置範囲は、対応する一対の調整部92に規制される(図20参照)。
次いで、図19に示すように、さらに引鈎部51Fを前側DDF(図中、左方向)に移動させると共に、下側HDDにも移動させる。すると、この図19に示す振り分けタイミングで、U字状経糸WAUが、シャトル80の上側HDUから、シャトル80の上部80Uの振り分け部81に当接する。
此処でもし、引鈎部51F及びU字状経糸WAUの幅方向WDの位置(基本位置とする)に対し、振り分け部81の幅方向WDの位置が、上述の基本位置を中心とする幅方向WDに適切な位置範囲内であれば、U字状経糸WAUのうち、第1辺経糸WAU1をシャトル80の板厚方向SDの一方側SD1(幅方向WDの一方側WD1と同じ、図19において紙面手前側)に、第2辺経糸WAU2を他方側SD2(他方側WD2と同じ、図19において紙面奥側)に、正しく振り分けることができる。
そこで本実施形態では、図19で示される振り分けタイミングでも、一対の調整部92を、具体的には、一対の調整部92の突出調整部92Pを、シャトル80の上部80Uのうち被規制部80Rにおいて、幅方向WDの一方側WD1(紙面手前側)と、幅方向WDの他方側WD2(紙面奥側)にそれぞれ位置させている。即ち、幅方向WDに並ぶ一対の調整部92の突出調整部92P同士の間に、被規制部80Rを位置させている。
このため、各シャトル80の被規制部80Rの幅方向WDの位置は、一対の調整部92(一対の突出調整部92P)に規制される。具体的には、図20に示すように、概ねピッチPHで並んだシャトル厚さTHSのシャトル80同士の間、即ち、シャトル間隙GP内に、調整部ピッチPC(PC=PH)で調整部厚みTC(線径)の突出調整部92Pがそれぞれ挿入されている。容易に理解できるように、各シャトル80の被規制部80Rには、第1残存隙間RG1と第2残存隙間RG2の和である残存隙間RG(RG=RG1+RG2=PH-THS-TC)分しか、被規制部80Rに許容される位置範囲の幅が存在しない。この残存隙間RGは、シャトル間隙GPの間隙寸法GPTに比して小さい(RG<GPT)。このため、シャトル80に、幅方向WDの位置ズレや歪み、曲がりなどが生じていても、調整部92によって、被規制部80Rにおける、幅方向WDの位置ズレや歪み等が矯正されて、幅方向WDの位置範囲が規制される。
そしてこれに伴い、同じシャトル80の振り分け部81における幅方向WD(板厚方向SD)の位置範囲も規制される。なお前述したように、幅方向WDに並んだ引鈎51と調整部92とを平面視した場合に、2つの調整部92の幅方向WDの中央に、引鈎51が位置するように、位置調整具90が引鈎支持体52の取付部材53に固定されている。従って、引鈎部51F及びU字状経糸WAUに対して、シャトル80の振り分け部81が取り得る幅方向WD(板厚方向SD)の位置範囲が限定され、適切な位置範囲内に位置させることができる。かくして、U字状経糸WAUの第1辺経糸WAU1及び第2辺経糸WAU2を正しく振り分けることができる。
振り分け部81による振り分けの後、更にシャトル80の前側端部80Fよりも下方まで移動させて、図21に示すように、U字状経糸WAUを解放プレート65の先端65Sに当接させ、さらに、引鈎部51FからU字状経糸WAUを解放させる(図10も参照)。以降は、図11~図13を用いて説明したように、経糸WAを上流側DAUに引き戻し、経糸ループWALから巻鈎部41Mを引き抜き、図14に示す結節部NDを形成する。
かくして、この位置調整具90が取り付けられた本実施形態の編網装置10では、シャトル80の振り分け部81における第1辺経糸WAU1と第2辺経糸WAU2の振り分け不具合発生を抑制し、結節部NDが形成できない不具合の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態の編網装置10では、各調整部92は、少なくとも図19に示す振分けタイミングに、各シャトル80のうち、上部80U同士の間に位置している。即ち、被規制部80Rがシャトル80の上部80Uに存在している。このため、同じ上部80Uに含まれて、被規制部80Rの近くに位置する振り分け部81における幅方向WD(板厚方向SD)の位置をも、より適切な位置範囲内に整えることができる。かくして、振り分け不具合発生をさらに抑制し、結節部NDの形成具不具合をさらに抑制することができる。
また、本実施形態の編網装置10では、引鈎51を支持する引鈎支持体52(具体的には取付部材53)に位置調整具90を設けており、位置調整具90は、引鈎支持体52及び引鈎51と共に移動する。このため、引鈎部51F及びU字状経糸WAUの幅方向WDの位置と、調整部92の位置との関係を正確に定めやすい。このため、引鈎部51F及びU字状経糸WAUに対する、各シャトル80の振り分け部81の幅方向WDに一致する板厚方向SDの位置を、さらに適切な位置範囲内に整えることができ、振り分け不具合による結節部ND不形成の発生をさらに抑制できる。
さらに、編網装置10では、調整部92を成形線材で構成しているので、調整部92による振り分け部81の板厚方向SDの位置を整える作用を維持したまま、調整部92を軽量にできる。また、調整部92のうちシャトル80に接触する部位の面積を小さくして、調整部92自身及び調整部92によって位置調整されるシャトル80の摩耗を低減できる。
本実施形態では、前述したように、引鈎支持体52とは別体の位置調整具90を、引鈎支持体52に設置している。具体的には、引鈎支持体52の取付部材53の下側HDDに位置調整具90を取り付けている(図17参照)。更に具体的には、取付部材53のうち、取付部材本体53Bに取り付けられた引鈎固定部材53Sの下側HDDに位置調整具90を取り付けており、引鈎機構部50の引鈎移動機構54により、調整部92を引鈎51と共に移動させている。しかし、別体の位置調整具90に代えて、引鈎支持体52と一体とした引鈎支持体兼用の位置調整具を用い、調整部92を引鈎51と共に移動させるようにしても良い。具体的には例えば、引鈎固定部材53Sとベース板95とを一体に形成しておき、この引鈎固定部材兼用ベース板に、複数の引鈎51を固定するほか、保持カバー96を用いて複数の調整部材91を固定して複数の調整部92を設けて引鈎支持体兼用の位置調整具おき、これを取付部材本体53Bに取り付けるようにしても良い(次述する変形形態1の位置調整具90Aについても同様)。
(変形形態1)
次いで、変形形態1に係る編網装置10A及びこれに用いる位置調整具90Aについて、主として図22及び図23を参照して説明する。なお、実施形態の編網装置10では、引鈎支持体52の取付部材53の下側HDDに、成形線材からなる調整部92を複数備えた位置調整具90を取り付けて用いた(例えば、図16,図17参照)。これに対し、本件形態1の編網装置10Aでは、図22に示すように、引鈎支持体52の取付部材53の下側HDDに、中実板状の調整部92Aを複数有する位置調整具90Aを取り付けて用いる点で、実施形態と異なる。そこで異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略或いは簡略化する。
図23に示す本変形形態1の位置調整具90Aは、実施形態の位置調整具90と同様、幅方向WDに延びる矩形板状の保持板94Aと、これに着脱可能に保持されて下側HDDに突出し、奥行き方向DDに延び、幅方向WDに調整部ピッチPCの間隔で並ぶ多数の調整部材91Aとからなる、可動部を有しない固定型の位置調整具である。なお、調整部ピッチPCは、リード孔31HのピッチPHに等しい。
このうち、調整部材91Aは、中実板状であり、樹脂板材(本変形形態1では、ポリアミド板材)を成形してなる。この調整部材91Aは、破線で示すように保持板94A内に挿入され保持された被保持部93A(図24も参照)と、保持板94Aから下側HDDに概ね矩形状に突出する板状の調整部92Aからなる。このうち、被保持部93Aは、調整部92Aから上側HDUに突出する複数(本変形形態1では4つ)の突出部93APを含む。一部(本変形形態1では2つ)の突出部93APには、固定用のフックFKが設けられている。調整部92Aの平面方向の外形形状は、実施形態の調整部92と同様の、保持板94Aよりも奥側DDBに突出する突出調整部92APを有する形態である。調整部92Aは、平板状の平板部92AHとその周縁に位置しR面取りを施した周縁R部92ARとを有する。調整部92A、即ち平板部92AHの調整部厚みTC(幅方向WDの寸法)は、シャトル間隙GPの寸法よりも小さくしてある(TC<GP)。調整部92Aが、シャトル80同士の間のシャトル間隙GP内を、容易に通過できるようにするためである。
一方、保持板94Aは、矩形状のベース板95Aと、ベース板95Aとほぼ同寸の平面形状を有する保持カバー96Aとからなり、各々の調整部材91Aの被保持部93Aを保持板94A内で保持している。具体的には、保持カバー96Aに形成した挿通孔96AHに被保持部93Aの各突出部93APを各々挿通すると共に、2つの突出部93APに形成したフック部FKを保持カバー96Aに係合させる。これにより、保持カバー96Aに対して、調整部材91Aを着脱可能に固定すると共に位置決めを行っている。このため、一部の調整部材91Aが変形や破損した場合にも、新たな調整部材91Aと容易に交換することができる。また、保持板94Aには、位置調整具90Aを引鈎支持体52の取付部材53にネジ締結で取り付けるための取付孔(図示しない)も貫通して形成されている。
なお図23には、幅方向WDに9個の調整部92Aを設けた位置調整具90Aを示した。従って、多数の経糸WAを用いた網NTを編網する場合には、複数の位置調整具90Aを幅方向WDに列置して引鈎支持体52(取付部材53)に取り付ければ良い。一方、調整部厚みTC及び調整部ピッチPCを保ちつつ位置調整具90Aの幅方向WDの寸法を変更して、1つの位置調整具90Aに設ける調整部92Aの数を適宜変更することもできる。
(変形形態2)
実施形態では、位置調整具90に用いる調整部材91として、それぞれ金属線材を成形した成形線材を用いた例を示した(図16参照)。また、変形形態1では、位置調整具90Aに用いる調整部材91Aとして、平板部92AHとその周縁に位置する周縁R部92ARを含む板状の調整部92Aを有する調整部材91Aを用いた例を示した(図23参照)。しかし、図17~図20から理解できるように、幅方向WDに列置されたシャトル80の位置、特に、上部80Uの位置が幅方向WDに大きく位置ズレしている場合には、図19に示す振り分けタイミングに先立ち、図17に示す状態から、図18に示すように、引鈎51と共に調整部材91を前側DDF(図中、左方向)に移動させた際に、調整部材91の調整部92部が、シャトル80同士の間を通ることができず、シャトル80の上部80Uに、例えば振り分け部81に衝突する場合が生じ得る。変形形態1のように、調整部材91Aを用いた場合でも同様である。このような場合には、調整部材91,91Aやシャトル80が変形したり破損したりする虞がある。
そこで本変形形態2では、シャトル80との衝突の虞を減じるため、位置調整具90Aに用いる調整部材として、変形形態1の調整部材91A(図23参照)に代えて、被保持部93Aは同様であるが、調整部92Aに代えて、調整部92B内にテーパ部92BTを有する調整部材91Bを用いる。具体的には、図24の平面図及び図25の側面図に示すように、本変形形態2の調整部材91Bには、調整部材91Aの平板部92AH、周縁R部92AR及び突出調整部92APと概ね同様の平板部92BH、周縁R部92BR及び突出調整部92BPのほか、テーパ部92BTを有する。このテーパ部92BTは、調整部材91Bの調整部92Bのうち、図19に示す振り分けタイミングに先立ち、シャトル80の上部80Uに最も早期に接触する部位であり、かつ最も薄くした最薄部92BTUを含み、この最薄部92BTUから離れるほど、徐々に厚くなる形態を有している。更に具体的には、本変形形態2では、前側DDF且つ下側HDDの部位、図24において左下の部位を、テーパ部92BTのうちで最も厚みの薄い最薄部厚さTU(板厚方向SDの寸法、即ち幅方向WDの寸法、図25において左右方向の寸法)を有する最薄部92BTUとする。そして、テーパ部92BTと平板部92BH(調整部厚さTC)との境界線92BTLに向けてテーパ部厚さTPが徐々に厚くなるテーパ部92BTを設けてある。
このため、位置調整具90Aの調整部材として本変形形態2の調整部材91Bを用いた編網装置10Aでは、幅方向WDに列置されたシャトル80の上部80Uの位置が幅方向WDに大きく位置ズレしている場合でも、調整部92Bの最薄部92BTUがシャトル80の上部80Uに衝突する可能性を低減することができる。これと共に、調整部材91Bの前側DDFへの移動と共に、調整部92Bのテーパ部92BTがシャトル80の上部80U上を摺動して、シャトル80の上部80Uの幅方向WDの位置を調整することができる。
なお、調整部材91Bとして、変形形態1と同様、ポリアミドなどの樹脂で形成することもできるが、本変形形態2では、テーパ部92BTの強度を得るためステンレス鋼板材を用いている。
(変形形態3)
変形形態1では、位置調整具90Aに用いる中実板状の調整部材として、全体が樹脂板材からなる調整部材91Aを用いた例を示した。しかし、変形形態2において説明したように、シャトル80の上部80Uに調整部材91Aが衝突した場合に、調整部材91Aが変形したり破損したりする虞がある。
そこで、本変形形態3では、調整部材の変形や破損を抑制するため、位置調整具90に用いる調整部材として、変形形態1の調整部材91Aに代えて、図26に示す調整部材91Cを用いる。この調整部材91Cは、図26において破線で示す弾性金属線材(具体的には例えば、ピアノ線)を成形した補強線材91CWを、樹脂(例えば、ガラスフィラー入りポリアミド樹脂)からなる樹脂部91CSで被覆してなる。この調整部材91Cは、例えば、予め成形した補強線材91CWを金型(図示しない)内にセットした上で、溶融樹脂を射出成形して製造する。
これにより、位置調整具90Aに用いる本変形形態3の調整部材91Cでは、このうち被保持部93Cのほか、調整部92Cにおいて、平板部92CH内に補強線材部92CWを配置し、補強線材部92CWを樹脂部92CSで被覆したものとなる。
このため、位置調整具90の調整部材に本変形形態3の調整部材91Cを用いた編網装置10Aでは、調整部92Cがシャトル80の上部80Uに衝突して力を受けた場合にも、樹脂部92CS内部に設けた補強線材部92CWにより、調整部92Cの破損や変形を抑制することができる。
(変形形態4)
変形形態3の調整部材91Cでは、補強金属材として、金属線材を所定形状に成形した補強線材91CWを用いた例を示した。しかし、補強金属材として、金属線材のみならず金属板を用い、これを樹脂で被覆しても良い。即ち、本変形形態4では、調整部材の変形や破損を抑制するため、位置調整具90に用いる調整部材として、変形形態1の調整部材91Aに代えて、図27に示す調整部材91Dを用いる。この調整部材91Dは、図27において破線で示す成形した弾性金属板材(具体的には、例えば、バネ用リン青銅板)からなる補強金属板91DMを、樹脂(例えば、ガラスフィラー入りポリアミド樹脂)からなる樹脂部91DSで被覆してなる。この調整部材91Dは、例えば、予め成形した補強金属板91DMを金型(図示しない)内にセットした上で、溶融樹脂を射出成形して製造する。
これにより、位置調整具90Aに用いる本変形形態4の調整部材91Dでは、このうち被保持部93Dのほか、調整部92Dにおいて、平板部92DH内に補強金属板部92DMを配置し、この補強金属板部92DMを樹脂部92DSで被覆したものとなる。
このため、位置調整具90の調整部材に本変形形態4の調整部材91Dを用いた編網装置10Aでも、調整部92Dがシャトル80の上部80Uに衝突して力を受けた場合にも、樹脂部92DS内部に設けた補強金属板部92DMにより、調整部92Dの破損や変形を抑制することができる。
(変形形態5)
変形形態3,4の調整部材91C,91Dでは、補強線材91CWや補強金属板91DMを用いて、調整部92C,92Dの破損や変形を抑制した例を示した。しかしこれらとは逆に、本変形形態5のように、調整部がシャトル80の上部80Uに衝突した場合に、シャトル80の破損や変形を抑制するべく、調整部自身を破断して、シャトル80に掛かる衝撃を吸収できるようにしておくこともできる。本変形形態5では、位置調整具90に用いる調整部材として、変形形態1の調整部材91Aに代えて、図28に示す調整部材91Eを用いる。この調整部材91Eは、調整部92Eのうち、高さ方向HDの上側HDU寄りの部位に、奥行き方向DDに直線状に延びて凹設されたスリット92ELを有している。これにより、調整部92Eは、スリット92ELよりも上側HDUの第1調整部92E1と、スリット92ELよりも下側HDDの第2調整部92E2の2つに分けられる。
なお、本変形形態5の調整部材91Eは、アクリル樹脂からなる。調整部材91Eの材質としては、調整部材91Eに衝撃が掛かった場合にスリット92ELの部位で破断が進行しやすい靱性の低い材質が好ましく、上述のアクリル樹脂のほか、例えば、ポリスチレン樹脂、PET樹脂などが挙げられる。
このため、位置調整具90の調整部材に本変形形態5の調整部材91Eを用いた編網装置10Aでは、調整部92Eがシャトル80の上部80Uに衝突して力を受けた場合に、スリット92ELが破断して、スリット92ELよりも下側HDDの第2調整部92E2が除去される。これにより、シャトル80の上部80Uに掛かる衝撃を軽減して、シャトル80の破損や変形を抑制することができる。
(変形形態6)
前述した実施形態或いは各変形形態に係る編網装置10,10Aでは、編網に当たり、図17~図20から理解できるように、シャトル80の上部80U同士の間を調整部材91,91A等の調整部92,92A等が繰り返し移動する。このため、もしシャトル80の上部80Uが、板厚方向SD、即ち、幅方向WDに位置ズレしていると、調整部92,92A等が移動と共にシャトル80の上部80Uのうち特定の部位について摺動しながら移動する。このため、シャトル80の特定部位が集中して摩耗するので、シャトル80の使用寿命が短くなりコストアップとなる。
これに対し、図30に示す本変形形態6のシャトル80Aでは、その上部80AUに、樹脂(本変形形態6では、例えばガラスフィラー入りポリアミド樹脂)からなる他の部位よりも耐摩耗性の高い金属(本変形形態6では例えばステンレス鋼)からなり、奥行き方向DDに延びる形態の摺動金属部材80AUMを一体に設けてある。そして、シャトル80Aのうち、編網の際に調整部92等が摺動する部位は、ちょうど、この摺動金属部材80AUMの表面である摩耗抑制部80AUSとなるように、摺動金属部材80AUMを設けてある。このため、本変形形形態6のシャトル80Aを用いた編網装置10,10Aでは、編網の際に、調整部92等が摩耗抑制部80AUS上を繰り返し摺動しても、摩耗抑制部80AUSの摩耗が抑制されており、シャトル80Aの使用寿命を長くすることができ、ひいてはコストを抑制することができる。
なお、本変形形態6のシャトル80Aは、例えば、予め成形した摺動金属部材80AUMを金型(図示しない)内にセットした上で、溶融樹脂を射出成形して製造する。
(変形形態7)
次いで、変形形態7に係る編網装置110及びこれに用いる位置調整具190について、主として図31~図34を参照して説明する。なお、本変形形態7の編網装置110は、位置調整具90の代わりに、位置調整具190を用いる点で、実施形態の編網装置10と異なる。そこで異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略或いは簡略化する。
本変形形態7の編網装置110では、実施形態における図17に対応する図31に示すように、結節機構部26のうち、引鈎支持体52の前側DDF及び下側HDDに位置調整具190を取り付けて用いる。この位置調整具190は、奥行き方向DD及び幅方向WDに延びる波板状の調整部材191と、この調整部材191を進退方向ARに進退移動可能に保持する調整部材進退機構195とを有する、可動型の位置調整具である。この位置調整具190は、引鈎51を支持する引鈎支持体52に取り付けられているので、引鈎51と共に移動させることができる。これと共に、引鈎51の移動とは別に、調整部材進退機構195で調整部材191を進退移動させて後述する調整姿勢や退避姿勢にすることができる。
このうち、調整部材191は、弾性を有するステンレス板からなり、奥行き方向DD及び幅方向WDに延びる波板状の本体部193と、本体部193の奥側DDBの先端部分を下側HDDに屈曲して鈎状に設けた鈎状調整部192と有する。鈎状調整部192は、図33に示す、略V字形状の部分と逆U字形状の部分とが交互に形成された断面形状を有する形態であり、V字形状の底部をなし下側HDDに位置する先端部192Sと、V字形状の幅方向WDの一方側WD1の一辺をなす一方側調整部192Aと、V字形状の他方側WD2の一辺をなす他方側調整部192Bと、一方側調整部192Aと他方側調整部192Bとを結ぶ逆U字形状の連結部192Cとが、幅方向WDにシャトル80のピッチPHと等しい調整部ピッチPCの間隔で多数繰り返し形成されてなる。なお、調整部材191は、ステンレス板に限らず、黄銅板など他の金属板や、ポリアミドなどの樹脂プラスチック成形板、FRP成形板で構成することもできる。
本変形形態7の鈎状調整部192は、後述するようにして、この鈎状調整部192を各々のシャトル80の被規制部80Rに当接させた場合に、図33に示すように、各先端部192Sは、シャトル80同士の間に生じるシャトル間隙GPに挿入される。また、一方側調整部192Aは、各被規制部80Rを幅方向WDの一方側WD1に押圧し、他方側調整部192Bは、各被規制部80Rを他方側WD2に弾性的に押圧する。これにより、各シャトル80の被規制部80Rの幅方向WDの位置を整える。
なお、実施形態と同様に、取付部材53には、多数の引鈎51が、幅方向WD(図31において紙面に直交する方向、図33において左右方向)にピッチPH毎に、奥行き方向DD(図31において紙面左右方向、図33において紙面に直交する方向)に延びる姿勢で固定されている(図33において取付部材53及び引鈎51は図示しない)。そこで、これらの引鈎51に対し、鈎状調整部192のうち先端部192Sが、ピッチPHの半分だけ幅方向WDにズレるようにして、位置調整具190を引鈎支持体52に設置する。即ち、幅方向WDに並んだ引鈎51と鈎状調整部192の先端部192Sとを平面視した場合に、2つの先端部192Sの幅方向WDの中央に、引鈎51及び引鈎部51Fが位置するように、位置調整具190を引鈎支持体52に設置する。
一方、調整部材進退機構195は、図示しない駆動機構により、引鈎支持体52及び引鈎51の移動に連動して、調整部材191を後述する移動パターンで進退方向ARに進退移動可能に構成されている。
図17と同様、図31は、引鈎51の引鈎部51F及び本体部51Bを、巻鈎部41Mの巻鈎溝部41MGを通過させて、巻鈎部41Mに形成された経糸ループWALを貫通させ、さらに、本体部51Bに、経糸ループWALよりも上流側DAUでリード孔31Hよりも下流側DADの経糸WAを巻付けた時点の状態を示す図である(経糸WA及び経糸ループWALは記載省略した。図8参照)。
この図31に示すタイミングでは、位置調整具190の鈎状調整部192は、調整部材進退機構195によって、進退方向ARのうち後退方向ARBに引き下げられた退避姿勢とされている。このため、各シャトル80の幅方向WDの位置は、サポート部材66~68によって定まる。このため、各シャトル80の上部80Uに設けた、三角山状の振り分け部81部の幅方向WDの実際の位置は、前述したように、概ね計算上のシャトル間隙GPの大きさの位置範囲内で変動し得る。
次いで、図31に示すように、引鈎51を前側DDF(図中、左方向)に移動させ、引鈎部51Fに、経糸WAを係合させて、引鈎部51Fと共に、経糸ループWAL内を通した形態で前側DDFに引き出す。これにより、引鈎部51Fへの係合部位WAUEを底とするU字形状で、幅方向WDの一方側WD1(紙面手前側)の一辺をなす第1辺経糸WAU1と、幅方向WDの他方側WD2(紙面奥側)の一辺をなす第2辺経糸WAU2とを有するU字状経糸WAUを形成する(図9も参照)。そして、さらに引鈎部51Fを前側DDF(図中、左方向)に移動させると共に、下側HDDにも移動させる。すると、この図32に示す振り分けタイミングで、U字状経糸WAUが、シャトル80の上側HDUから、シャトル80の上部80Uの振り分け部81に当接する。
そこで本変形形態7では、この振り分けタイミングには、調整部材進退機構195を駆動して、調整部材191を進退方向ARのうち突出方向ARPに移動させた調整姿勢とする。具体的には、図33に示すように、鈎状調整部192の各々の先端部192Sを、各シャトル80の被規制部80R同士の間のシャトル間隙GPに各々挿入する。
これにより、各シャトル80の被規制部80Rの幅方向WDの位置は、鈎状調整部192に規制される。具体的には、図33に示すように、概ねピッチPHの間隔で並んだシャトル厚さTHSのシャトル80同士の間、即ち、シャトル間隙GP内に、先端部192Sが挿入され、一方側調整部192Aが各被規制部80Rを幅方向WDの一方側WD1に押圧し、他方側調整部192Bが各被規制部80Rを他方側WD2に弾性的に押圧する。このため、シャトル80に、幅方向WDの位置ズレや歪み曲がりなどが生じていても、一方側調整部192A及び他方側調整部192Bの押圧によって、幅方向WDの位置ズレや歪み等が矯正されて、各シャトル80の被規制部80Rの幅方向WDの位置は、概ね、隣合う先端部192S同士の間に規制される。かくして、各シャトル80の被規制部80Rの幅方向WDの位置を整えられる。
そしてこれに伴い、同じシャトル80の振り分け部81における幅方向WD(板厚方向SD)の位置範囲も規制される。なお前述したように、幅方向WDに並んだ引鈎51と鈎状調整部192とを平面視した場合に、一対の鈎状調整部192の先端部192Sの幅方向WDの中央に、引鈎51が位置するように、位置調整具190が引鈎支持体52に設置されている。従って、引鈎部51F及びU字状経糸WAUに対する、シャトル80の振り分け部81における幅方向WD(板厚方向SD)の位置範囲が限定され、適切な位置範囲内に位置させることができる。かくして、本変形形態7の編網装置110でも、U字状経糸WAUの第1辺経糸WAU1及び第2辺経糸WAU2を正しく振り分けることができる。
振り分けタイミングでの振り分け部81による振り分けの後、調整部材進退機構195を駆動して、調整部材191を進退方向ARのうち後退方向ARBに移動させて退避姿勢とする。これと共に、引鈎部51Fをシャトル80の前側端部80Fよりも下方まで移動させて、図34に示すように、U字状経糸WAUを解放プレート65の先端65Sに当接させ、さらに、引鈎部51FからU字状経糸WAUを解放させる(図10も参照)。以降は、図11~図13を用いて説明したように、経糸WAを上流側DAUに引き戻し、経糸ループWALから巻鈎部41Mを引き抜き、図14に示す結節部NDを形成する。
かくして、この位置調整具190が取り付けられた本変形形態7の編網装置110でも、シャトル80の振り分け部81における第1辺経糸WAU1と第2辺経糸WAU2の振り分け不具合発生を抑制し、結節部NDが形成できない不具合の発生を抑制することができる。
なお、本変形形態7の編網装置110でも、少なくとも図33に示す振分けタイミングに、各シャトル80の上部80Uの被規制部80Rに鈎状調整部192を当接させる。このため、同じ上部80Uに含まれて、被規制部80Rの近くに位置する振り分け部81における幅方向WD(板厚方向SD)の位置をも、より適切な位置範囲内に整えることができる。かくして、振り分け不具合発生をさらに抑制し、結節部NDの形成具不具合をさらに抑制することができる。
また、本変形形態7の編網装置110でも、引鈎51を支持する引鈎支持体52に位置調整具190を設けており、位置調整具190は、引鈎支持体52及び引鈎51と共に移動する。このため、引鈎部51F及びU字状経糸WAUの幅方向WDの位置と、鈎状調整部192の位置との関係を正確に定めやすい。このため、引鈎部51F及びU字状経糸WAUに対する、各シャトル80の振り分け部81の幅方向WDに一致する板厚方向SDの位置を、さらに適切な位置範囲内に整えることができ、振り分け不具合による結節部ND不形成の発生をさらに抑制できる。
(変形形態8)
次いで、変形形態8に係る編網装置210及びこれに用いる位置調整具290について、主として図35~図37を参照して説明する。なお、本変形形態3の編網装置210は、位置調整具90,190の代わりに、位置調整具290を用いる点で、実施形態及び変形形態7の編網装置10,110と異なる。そこで異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略或いは簡略化する。
本変形形態8の編網装置210では、実施形態における図17に対応する図35に示すように、シャトル80の下側HDDに位置する解放プレート65及びサポート部材66を支持する断面L字状の支持アングル69に位置調整具290を取り付けて用いる。この位置調整具290は、幅方向WD(図35において紙面に直交する方向)に延びる板状の調整部材291と、この調整部材291を図中に矢印で示す偏向方向DFに回動可能に保持する調整部材偏向機構295とを有する、可動型の位置調整具である。この位置調整具290は、調整部材偏向機構295で調整部材291を回動させて後述する調整姿勢や退避姿勢にすることができる。
このうち、調整部材291は、ステンレス板からなり、図37に示すように、幅方向WDに延びる平板状の本体部293と、本体部293の上側HDUの先端部分に位置し、幅方向WDに調整部ピッチPCの間隔で櫛歯状に上側HDUに突出する多数の調整部292とを有する。本変形形態8の調整部292の調整部厚みTC(幅方向WDの寸法)は、シャトル間隙GPの間隙寸法GPTよりも大きくしてある(TC<GPT)。調整部292を挿入する被規制部80Rの幅方向WDの寸法である被規制部厚さTRSが、シャトル80の全厚であるシャトル厚さTHSよりも小さくされているからである。なお、調整部材291は、ステンレス板に限らず、黄銅板など他の金属板や、ポリアミドなどの樹脂成形板、FRP成形板で構成することもできる。
本変形形態8の調整部292は、後述する振り分けタイミングにおいて、この調整部292を各々のシャトル80の被規制部80R同士の間に挿入される。これにより、各シャトル80の被規制部80Rが取り得る幅方向WDの位置範囲を規制する(図37参照)。
なお実施形態と同様に、取付部材53には、多数の引鈎51が、幅方向WD(図35において紙面に直交する方向、図37において左右方向)にピッチPH毎に、奥行き方向DD(図35において左右方向、図37において紙面に直交する方向)に延びる姿勢で固定されている。そこで、これらの引鈎51に対し、調整部292が、ピッチPHの半分だけ幅方向WDにズレるようにして、位置調整具290を支持アングル69に設置する。即ち、幅方向WDに並んだ引鈎51と調整部292とを平面視した場合に、2つの調整部292の幅方向WDの中央に、引鈎51及び引鈎部51Fが位置するように、位置調整具290を支持アングル69に設置する。
一方、調整部材偏向機構295は、支持アングル69に取り付けられると共に、図示しない駆動機構により、結節機構部26の動作に連動して、調整部材291を後述する回動パターンで偏向方向DFに偏向移動可能に構成されている。
図17と同様、図35は、引鈎51の引鈎部51F及び本体部51Bを、巻鈎部41Mの巻鈎溝部41MGを通過させて、巻鈎部41Mに形成された経糸ループWALを貫通させ、さらに、本体部51Bに、経糸ループWALよりも上流側DAUでリード孔31Hよりも下流側DADの経糸WAを巻付けた時点の状態を示す図である(経糸WA及び経糸ループWALは記載省略した。図8参照)。
この図35のタイミングでは、位置調整具290の調整部292は、調整部材偏向機構295によって、偏向方向DFのうち離間方向DFRに離間した退避姿勢とされており、シャトル80の被規制部80R同士の間に挿入されていない。このため、各シャトル80の幅方向WDの位置は、サポート部材66~68によって定まる。このため、各シャトル80の上部80Uに設けた、三角山状の振り分け部81部の幅方向WDの実際の位置は、前述したように、概ね計算上のシャトル間隙GPの大きさの位置範囲内で変動し得る。
その後、図36おいて[a]~[d]で示すように引鈎部51Fを移動させる。先ず[a]で示すタイミングの以降、引鈎51を前側DDF(図中、左方向)に移動させ、引鈎部51Fに、経糸WAを係合させて、引鈎部51Fと共に、経糸ループWAL内を通した形態で前側DDFに引き出す。これにより、引鈎部51Fへの係合部位WAUEを底とするU字形状で、幅方向WDの一方側WD1(紙面手前側)の一辺をなす第1辺経糸WAU1と、幅方向WDの他方側WD2(紙面奥側)の一辺をなす第2辺経糸WAU2とを有するU字状経糸WAUを形成する(図9も参照)。
そして、さらに引鈎部51Fを前側DDF(図中、左方向)に移動させると共に、下側HDDにも移動させた図36[b]に示す振り分けタイミングでは、U字状経糸WAUが、シャトル80の上側HDUから、シャトル80の上部80Uの振り分け部81に当接する。
そこで本変形形態8では、この振り分けタイミングには、調整部材偏向機構295を駆動して、調整部材291を偏向方向DFのうち,図中反時計回りの挿入方向DFIに回動させた調整姿勢とする。具体的には、図37に示すように、各調整部292を、各シャトル80の被規制部80R同士の間に各々挿入する。
これにより、各シャトル80の被規制部80Rの幅方向WDの位置は、調整部292に規制される。具体的には、図37に示すように、概ねピッチPHの間隔でシャトル間隙GPの隙間を空けて並んだシャトル80のうち、被規制部厚みTRSが全厚であるシャトル厚さTHSに比して薄くされた被規制部80R同士の間に、調整部ピッチPC(PC=PH)で調整部厚みTCの調整部92をそれぞれ挿入する。容易に理解できるように、各シャトル80の被規制部80Rに許容される位置範囲の幅は、第1残存隙間RG1と第2残存隙間RG2の和である残存隙間RG(RG=RG1+RG2=PC-TRS-TC)である。そして、本変形形態8では、調整部292の調整部厚さTCを大きくしており、残存隙間RGをシャトル間隙GPの間隙寸法GPTに比して小さくしてある(RG<GPT)。このため、シャトル80に、幅方向WDの位置ズレや歪み、曲がりなどが生じていても、調整部292によって、被規制部80Rにおける、幅方向WDの位置ズレや歪み等が矯正されて、各シャトル80の被規制部80Rの幅方向WDの位置範囲が規制される。
そしてこれに伴い、同じシャトル80の振り分け部81における幅方向WD(板厚方向SD)の位置範囲も規制される。なお前述したように、幅方向WDに並んだ引鈎51と調整部292とを平面視した場合に、2つの調整部292の幅方向WDの中央に、引鈎51が位置するように、位置調整具290が支持アングル69に設置されている。従って、引鈎部51F及びU字状経糸WAUに対する、シャトル80の振り分け部81における幅方向WD(板厚方向SD)の位置範囲が限定され、適切な位置範囲内に位置させることができる。かくして、本変形形態8の編網装置210でも、U字状経糸WAUの第1辺経糸WAU1及び第2辺経糸WAU2を正しく振り分けることができる。
図36[b]に示す振り分けタイミングでの振り分け部81による振り分けの後、調整部材偏向機構295を駆動して、調整部材291を偏向方向DFのうち、図中時計方向の離間方向DFRに回動させて退避姿勢とする。これと共に、図36[c]のタイミングを経由して引鈎部51Fをシャトル80の前側端部80Fよりも下方まで移動させて、図36[d]のタイミングで、U字状経糸WAUを解放プレート65に当接させ、さらに、引鈎部51FからU字状経糸WAUを解放させる(図10も参照)。以降は、図11~図13を用いて説明したように、経糸WAを上流側DAUに引き戻し、経糸ループWALから巻鈎部41Mを引き抜き、図14に示す結節部NDを形成する。
かくして、この位置調整具290が取り付けられた本変形形態8の編網装置210でも、シャトル80の振り分け部81における第1辺経糸WAU1と第2辺経糸WAU2の振り分け不具合発生を抑制し、結節部NDが形成できない不具合の発生を抑制することができる。
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1~8に即して説明したが、本発明は実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。例えば、実施形態及び変形形態1~8では、位置調整具90,90A,190,290を、それぞれ単独で取り付けて編網装置10,10A,110,210とした。しかし、変形形態8の位置調整具290を、実施形態の位置調整具90、変形形態1~6の位置調整具90A、或いは変形形態7の位置調整具190と併用して、両者を編網装置に取り付けることもできる。
変形形態7では、位置調整具190の調整部材191として、奥行き方向DD及び幅方向WDに延びる波板状の本体部193と、本体部193の先端部分に設けた鈎状調整部192を有する調整部材191を用いた。
しかし、この調整部材191に代えて、棒状の本体部とこの本体部の奥側DDBの先端部分を下側HDDに屈曲して設けた断面V字状の鈎状調整部とを有する棒状の調整部材を、幅方向WDに調整部ピッチPCの間隔で多数保持して用いるようにしても良い。
変形形態8でも、位置調整具290の調整部材291として、奥行き方向DD及び幅方向WDに延びる平板状の本体部293と、本体部293の先端部分に櫛歯状に設けた多数の調整部292とを有する調整部材291を用いた。
しかし、この調整部材291に代えて、棒状の本体部とこの本体部の先端部分をなす調整部とを有する棒状の調整部材を、幅方向WDに調整部ピッチPCの間隔で多数保持して用いるようにしても良い。
また、調整部材の調整部292について、変形形態2~5で示した調整部92B~92Eと同様、テーパ部を設けてシャトル80の被規制部80Rとの衝突を抑制したり、補強線材や補強金属板によって調整部を補強したり、スリットを設けて破断容易としたりすることもできる。