本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された加工装置の加工水循環ユニットを模式的に示す図である。図3は、図2に示された加工水循環ユニットのタンクを模式的に示す断面図である。図4は、図1に示された加工装置の制御ユニットが加工動作中に繰り返し実行するフローチャートの一例を示す図である。
実施形態1に係る図1に示す加工装置1は、被加工物200を切削(加工に相当する)する切削装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウェーハでもよく、ウェーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、環状フレーム206が装着されたテープ205に表面201の裏側の裏面204が貼着されて、テープ205によって環状フレーム206の開口内に支持されている。
図1に示された加工装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削する装置である。加工装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11に保持するチャックテーブル10と、切削ユニット20と、図示しない撮像ユニットと、制御ユニット100とを備える。
また、加工装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10と切削ユニット20とをチャックテーブル10の保持面11と平行なX軸方向へ相対的に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニットと、チャックテーブル10と切削ユニット20とを保持面11と平行でX軸方向と直交するY軸方向へ相対的に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット30と、チャックテーブル10と切削ユニット20とを保持面11と直交し鉛直方向と平行なZ軸方向へ相対的に移動させる切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット40とを備える。加工装置1は、図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
チャックテーブル10は、被加工物200を保持面11で吸引保持するものである。チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニットにより切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転駆動源によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、図1に示すように、環状フレーム206をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削するものである。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット30によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット40によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
一方の切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット30、Z軸移動ユニット40などを介して、装置本体2から立設した門型の支持フレーム3の一方の柱部4に設けられている。他方の切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット30、Z軸移動ユニット40などを介して、支持フレーム3の他方の柱部5に設けられている。なお、支持フレーム3は、柱部4,5の上端同士を水平梁6により連結している。
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット30及びZ軸移動ユニット40により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット30及びZ軸移動ユニット40によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング23と、スピンドルハウジング23に軸心回りに回転自在に設けられかつモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル22とを備える。切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドルハウジング23は、スピンドル22を回転可能に支持し、図2に示すように、内部にスピンドル22を冷却するための冷却水路24を備えている。
撮像ユニットは、チャックテーブル10の保持面11で保持された被加工物200を撮像するものである。実施形態1では、撮像ユニットは、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニットは、チャックテーブル10に保持された切削前のワーク210の分割すべき領域を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニットは、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
X軸移動ユニットは、チャックテーブル10を加工送り方向であるX軸方向に加工送りするものである。Y軸移動ユニット30は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット40は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に切り込み送りするものである。
X軸移動ユニット、Y軸移動ユニット30及びZ軸移動ユニット40は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ31,41、ボールねじ31,41を軸心回りに回転させる周知のパルスモータ32,42及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール33,43を備える。
また、加工装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するための図示しないZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、X軸移動ユニット又はY軸移動ユニット30によりX軸方向又はY軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドとにより構成することができる。X軸方向位置検出ユニット、及びY軸方向位置検出ユニットは、読み取りヘッドが読み取ったリニアスケールの目盛を示す情報をチャックテーブル10のX軸方向の位置、又は切削ユニット20のY軸方向の位置を示す情報として制御ユニット100に出力する。Z軸方向位置検出ユニットは、ボールねじ41を軸心回りに回転させるパルスモータ42のパルス数で切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出して、検出した切削ユニット20のZ軸方向の位置を示す情報を制御ユニット100に出力する。
また、加工装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット7が載置されるカセットエレベータ8と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット50と、図示しない搬送ユニットと、を備える。搬送ユニットは、切削前後の被加工物200をカセット7、チャックテーブル10、洗浄ユニット50及びカセット7に順に搬送する。
また、加工装置1は、図2に示すように、加工水供給ユニット60と、加工水循環ユニット70とを備える。加工水供給ユニット60は、切削ブレード21及びチャックテーブル10に保持された被加工物200に図2に示された加工水源101から供給された液体である加工水102を供給するものである。加工水供給ユニット60は、加工水102として純水を切削ブレード21及びチャックテーブル10に保持された被加工物200に供給する。
加工水供給ユニット60は、切削ユニット20と1対1で対応し、対応する切削ユニット20に取り付けられている。加工水供給ユニット60は、図1に示すように、切削ユニット20のスピンドルハウジング23の先端に取り付けられて、切削ブレード21の上方を覆うブレードカバー61と、ブレードカバー61に取り付けられたブレード用加工水ノズル62と、ブレードカバー61に取り付けられた被加工物用加工水ノズル63とを備える。ブレード用加工水ノズル62は、X軸方向と平行に延在しかつ互いの間に切削ブレード21を位置付けて、切削ブレード21に向けて加工水102を供給する。被加工物用加工水ノズル63は、チャックテーブル10に保持された被加工物200に向けて加工水102を供給する。
加工水循環ユニット70は、加工水源101から供給された加工水102を貯留するタンク71を備え、タンク71内の加工水102をスピンドルハウジング23の冷却水路24に供給して冷却水路24とタンク71との間で循環させるとともに、タンク71内の加工水102を加工水供給ユニット60に供給して切削ブレード21及び被加工物200とタンク71との間で循環させるものである。なお、加工水供給ユニット60を介して切削ブレード21及び被加工物200に供給された加工水102は、加工装置1の装置本体2に設けられた図2に示す排水路9を通してタンク71に収容される。なお、排水路9のタンク71に取り付けられる先端には、加工水102を霧状に噴射するスプレーノズルが取り付けていない。排水路9を通してタンク71に供給される加工水102は、切削の際に生じた切削屑を含むために、切削屑によりスプレーノズルが詰まる虞があるからである。
加工水循環ユニット70は、図2に示すように、タンク71と、再利用経路72と、温調部73と、を備える。タンク71は、図3に示すように、加工水102を貯留可能な容器である。タンク71は、開閉弁103が設けられた配管104により加工水源101に接続しており、開閉弁103が開くことで、配管104を通して加工水源101から加工水102が供給され、供給された加工水102を一旦貯留する。
タンク71は、各切削ユニット20のスピンドルハウジング23に設けられた冷却水路24と配管74により接続しており、スピンドルハウジング23の冷却水路24から排水された加工水102が供給され、貯留される。なお、実施形態1において、配管74は、切削ユニット20と1対1で対応し、対応する切削ユニット20のスピンドルハウジング23の冷却水路24から排水された加工水102をタンク71に供給する。
タンク71は、排水路9を通して、加工水供給ユニット60から切削ブレード21及びチャックテーブル10に保持された被加工物200に供給された加工水102が供給され、貯留される。なお、図2は、一対の切削ユニット20のうち一方の切削ユニット20のみを示し、他方の切削ユニット20を省略しているが、他方の切削ユニット20は、一方の切削ユニット20と同様に加工水供給ユニット60が取り付けられてスピンドルハウジング23の冷却水路24に加工水102が供給される。
タンク71には、タンク71内の空間に気流を形成する冷却ファン75が設置されている。実施形態1では、冷却ファン75は、タンク71の上壁711の両端部にそれぞれ設けられて、一対設けられている。実施形態1では、一方の冷却ファン75がタンク71外の気体をタンク71内の空間に吸引し、他方の冷却ファン75がタンク71内の気体をタンク71外に排気して、一対の冷却ファン75は、タンク71内の空間において、一方の冷却ファン75から他方の冷却ファン75に向かう図2に矢印で示す気流300を形成する。
また、タンク71内には、気液分離用のフィルタ712が内部に設けられている。フィルタ712は、ステンレス鋼等から構成されたメッシュ状の部材であり、実施形態1では、フィルタ712は、2つ設けられている。一方のフィルタ712は、上壁711の内面の他方の冷却ファン75の隣に一端が取り付けられ、他端が一端からタンク71の底壁713に向かって延びている。また、他方のフィルタ712は、上壁711の内面に他方の冷却ファン75を覆う状態で取り付けられている。
再利用経路72は、タンク71に貯留された加工水102をポンプ721を介して送水するものである。再利用経路72は、図2に示すように、ポンプ721が設けられて、ポンプ721を介して加工水供給ユニット60の各ノズル62,63に接続される配管722と、配管722の途中の分岐部723から分岐して、各切削ユニット20のスピンドルハウジング23の冷却水路24に接続した分岐管724と、フィルターユニット725とを備える。
配管722は、ポンプ721により加圧されたタンク71内の加工水102を各切削ユニット20のスピンドルハウジング23の先端に取り付けられた加工水供給ユニット60の各ノズル62,63に供給する。分岐管724は、ポンプ721により加圧されたタンク71内の加工水102を各切削ユニット20のスピンドルハウジング23の冷却水路24に供給する。フィルターユニット725は、配管722のポンプ721と分岐部723との間に設けられ、配管722内を流れるタンク71から排出された加工水102に含まれる切削屑等の異物を除去するものである。
温調部73は、タンク71内に貯留される加工水102の温度を調整するものである。温調部73は、温度測定器83と、ノズルであるスプレーノズル76と、タンク冷却路77とを備える。温度測定器83は、配管722内を流れる加工水102の温度を測定し、測定結果を制御ユニット100に出力する。実施形態1では、温度測定器83は、フィルターユニット725と分岐部723との間の配管722内を流れる加工水102の温度を測定する。実施形態1では、温度測定器83は、フィルターユニット725と分岐部723との間の配管722に設置されて、フィルターユニット725通過後のスピンドルハウジング23の冷却水路24やノズル62,63に供給する直前の加工水102の温度が測定できるので好適であるが、本発明では、他の配管(排水路9、配管74、冷却路78、分岐管724等)やタンク71内に設置されて、加工水102の温度を測定しても良い。
スプレーノズル76は、図2及び図3に示すように、冷却水路24に接続した配管74の先端に取り付けられて、冷却水路24から排水された加工水102をタンク71内に霧状にして噴射し、霧状に噴射された加工水102の気化熱で、タンク71内の加工水102を冷却するものである。なお、実施形態1では、図3に示すように、配管74は、途中から分岐管741に分岐している。分岐管741は、タンク71に接続し、先端にスプレーノズル76が設けられていない。分岐管741及び配管74は、それぞれ制御ユニット100に制御される開閉弁742,743が設けられている。
このために、温調部73は、制御ユニット100に制御されて開閉弁742,743が開閉されることで、冷却水路24から排水された加工水102を配管74と分岐管741とのうちの一方からタンク71内に供給する状態と、冷却水路24から排水された加工水102を配管74と分岐管741との双方からタンク71内に供給する状態とが切り換えられる。なお、実施形態1では、配管74から分岐しかつスプレーノズル76が設けられていない分岐管741を一つ設けているが、本発明では、配管74から分岐した分岐管741を複数設け、各分岐管741の先端にスプレーノズル76を設けても良く、スプレーノズル76を設けなくても良い。また、本明細書では、開閉弁742,743のうち分岐管741に設けられた開閉弁742を以下、分岐管用開閉弁742と記し、配管74に設けられた開閉弁743を以下、配管用開閉弁743と記す。
タンク冷却路77は、タンク71から再利用経路72に送水された加工水102を再度タンク71内に霧状にして噴射して供給するものである。タンク冷却路77は、温度測定器83と分岐部723との間で配管722に接続しかつタンク71に接続した冷却路78と、冷却路78の先端に取り付けられて、加工水102をタンク71内に霧状にして噴射し、霧状に噴射された加工水102の気化熱で、タンク71内の加工水102を冷却するノズルであるスプレーノズル79とを備える。
実施形態1では、冷却路78は、二つの分岐冷却管781に分岐し、各分岐冷却管781の先端にスプレーノズル79を設けている。また、各分岐冷却管781は、それぞれ制御ユニット100により制御される開閉弁782,783が設けられている。
このために、温調部73は、制御ユニット100に制御されて開閉弁782,783が開閉されることで、タンク71から送水された加工水102を二つの分岐冷却管781とのうちの一方からタンク71内に供給する状態と、タンク71から送水された加工水102を二つの分岐冷却管781との双方からタンク71内に供給する状態とが切り換えられる。タンク冷却路77は、複数のスプレーノズル79から加工水102を霧状に噴射し、制御ユニット100により開閉弁782,783が制御されることで、霧状にして噴射するスプレーノズル79の数を増減させる。
なお、実施形態1では、分岐冷却管781を二つ設けているが、本発明では、冷却路78から分岐した分岐冷却管781を三つ以上設けても良い。また、本明細書では、開閉弁782,783のうち一方の分岐冷却管781に設けられた開閉弁782を以下、第1分岐冷却管用開閉弁782と記し、他方の分岐冷却管781に設けられた開閉弁783を以下、第2分岐冷却管用開閉弁783と記す。なお、図2は、配管74及びタンク冷却路77の一部の構成を省略している。
また、実施形態1において、加工水循環ユニット70は、Co2インジェクタ80と排水路81とを備えている。Co2インジェクタ80は、加工水供給ユニット60に供給される加工水102に二酸化炭素(Co2)を供給するものであって、配管722の分岐部723と加工水供給ユニット60との間に設けられている。
排水路81は、タンク71に連結し、かつ開閉弁82が設けられた配管であって、開閉弁82が開くことでタンク71内の加工水102をタンク71外に排水することができる。
制御ユニット100は、加工装置1及び加工水循環ユニット70の上述した各ユニットをそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を加工装置1に実施させるものである。具体的には、制御ユニット100は、搬送ユニットに切削前の被加工物200をカセット7から取り出してチャックテーブル10の保持面11に載置させ、チャックテーブル10にワーク210を吸引保持した後、X軸移動ユニットにチャックテーブル10を移動させて、撮像ユニットにチャックテーブル10上の被加工物200を撮像させる。制御ユニット100は、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行うアライメントを遂行し、チャックテーブル10と切削ユニット20の切削ブレード21とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させながら分割予定ライン202に切削ブレード21を切り込ませて、被加工物200を分割予定ライン202に沿って切削する。
制御ユニット100は、切削ブレード21を全ての分割予定ライン202に切り込ませて、全ての分割予定ライン202を切削した後、チャックテーブル10の吸引保持を解除し、搬送ユニットにチャックテーブル10上の被加工物200を洗浄ユニット50に搬送させる。制御ユニット100は、洗浄ユニット50に被加工物200を洗浄させて、搬送ユニットに洗浄ユニット50から被加工物200をカセット7まで搬送させて、カセット7内に搬入させる。
制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して加工装置1の上述した各ユニットに出力する。
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や撮像ユニットが撮像した画像などを表示する図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとが接続されている。表示ユニットは、液晶表示装置などにより構成される。入力ユニットは、表示ユニットの表示画面に設けられたタッチパネル又はキーボード等の外部入力装置等により構成される。
また、制御ユニット100は、加工動作前に、開閉弁82を閉じた状態で開閉弁103を開いてタンク71内に加工水源101からの加工水102を貯留した後、開閉弁103を閉じ、分岐管用開閉弁742を開き、配管用開閉弁743、第1分岐冷却管用開閉弁782及び第2分岐冷却管用開閉弁783を閉じる。制御ユニット100は、加工動作において、冷却ファン75を駆動し、ポンプ721を駆動してタンク71内の加工水102を加工水供給ユニット60及び冷却水路24とタンク71内との間で循環させる。このとき、配管用開閉弁743が閉じているので、各切削ユニット20のスピンドルハウジング23の冷却水路24から排水された加工水102は、分岐管741を通ってタンク71内に供給され、第1分岐冷却管用開閉弁782及び第2分岐冷却管用開閉弁783が閉じているので、タンク冷却路77を通ってタンク71内に供給されていない。
実施形態1では、制御ユニット100は、加工動作中において、図4に示すフローチャートを繰り返し実行する。制御ユニット100は、温度測定器83の測定結果に基づいて配管722内の加工水102の温度が第1の温度より高いか否かを判定する(ステップST1)。制御ユニット100は、配管722内の加工水102の温度が第1の温度より高くないと判定(ステップST1:No)すると、配管用開閉弁743、第1分岐冷却管用開閉弁782及び第2分岐冷却管用開閉弁783を閉じる、又は閉じた状態を維持(ステップST2)して、ステップST1に戻る。
制御ユニット100は、配管722内の加工水102の温度が第1の温度より高いと判定(ステップST1:Yes)すると、配管用開閉弁743を開(ステップST3)いて、ステップST4に進む。すると、各切削ユニット20のスピンドルハウジング23の冷却水路24から排水された加工水102は、分岐管741及び配管74を通ってタンク71内に供給されるとともに、配管74の先端に設けられたスプレーノズル76により液状に噴射されてタンク71内に供給される。
制御ユニット100は、温度測定器83の測定結果に基づいて配管722内の加工水102の温度が第1の温度よりも高い第2の温度より高いか否かを判定する(ステップST4)。制御ユニット100は、配管722内の加工水102の温度が第2の温度より高くないと判定(ステップST4:No)すると、第1分岐冷却管用開閉弁782及び第2分岐冷却管用開閉弁783を閉じる、又は閉じた状態を維持(ステップST5)して、ステップST1に戻る。
制御ユニット100は、配管722内の加工水102の温度が第2の温度より高いと判定(ステップST4:Yes)すると、第1分岐冷却管用開閉弁782を開(ステップST6)いて、ステップST7に進む。すると、ポンプ721によりタンク71から再利用経路72に送水された加工水102が、タンク冷却路77の一つの分岐冷却管781を通ってタンク71内に供給されるとともに、一つの分岐冷却管781の先端に設けられたスプレーノズル79により液状に噴射されてタンク71内に供給される。
制御ユニット100は、温度測定器83の測定結果に基づいて配管722内の加工水102の温度が第2の温度よりも高い第3の温度より高いか否かを判定する(ステップST7)。制御ユニット100は、配管722内の加工水102の温度が第3の温度より高くないと判定(ステップST7:No)すると、第2分岐冷却管用開閉弁783を閉じる、又は閉じた状態を維持(ステップST8)して、ステップST1に戻る。
制御ユニット100は、配管722内の加工水102の温度が第3の温度より高いと判定(ステップST7:Yes)すると、第2分岐冷却管用開閉弁783を開いて(ステップST9)、ステップST1に戻る。すると、ポンプ721によりタンク71から再利用経路72に送水された加工水102が、タンク冷却路77の二つの分岐冷却管781を通ってタンク71内に供給されるとともに、二つの分岐冷却管781の先端に設けられたスプレーノズル79により液状に噴射されてタンク71内に供給される。こうして、温調部73は、温度測定器83の測定結果である配管722内の加工水102の温度に基づいてタンク71に供給される加工水102を霧状に噴射し、気化熱で加工水102を冷却する。
ステップST9後の加工水循環ユニット70は、図3に示すように、各切削ユニット20のスピンドルハウジング23の冷却水路24から排出された加工水102を分岐管741からタンク71内に供給し、配管74の先端に取り付けられたスプレーノズル76から霧状に噴射して供給する。また、加工水循環ユニット70は、ポンプ721によりタンク71から送水された加工水102をタンク冷却路77の全ての分岐冷却管781の先端に取り付けられたスプレーノズル79から霧状に噴射して供給する。
制御ユニット100は、ステップST9から戻ったステップST1において、温度測定器83の測定結果に基づいて配管722内の加工水102の温度が例えば2℃下がって第1の温度より低くなると、配管用開閉弁743、第1分岐冷却管用開閉弁782及び第2分岐冷却管用開閉弁783を閉じ(ステップST2)て、ステップST1に戻る。
また、制御ユニット100は、ステップST9から戻ったステップST4において、温度測定器83の測定結果に基づいて配管722内の加工水102の温度が第2の温度より低くなると、第1分岐冷却管用開閉弁782及び第2分岐冷却管用開閉弁783を閉じ(ステップST5)て、ステップST1に戻る。制御ユニット100は、ステップST9から戻ったステップST7において、温度測定器83の測定結果に基づいて配管 内の加工水102の温度が第3の温度より低くなると、第2分岐冷却管用開閉弁783を閉じ(ステップST8)て、ステップST1に戻る。こうして、加工水循環ユニット70は、温度測定器83の測定結果である配管722内の加工水102の温度に応じて、タンク71内に供給する加工水102を霧状に噴射するスプレーノズル76,79の数を増減させる。
なお、実施形態1では、加工装置1は、図4に示すフローチャートを繰り返し実行する際には、冷却ファン75を駆動したが、本発明では、冷却ファン75を駆動せずに、図4に示すフローチャートを繰り返し実行し、所定のタイミング(例えば、加工水102の温度が第3の温度よりも高い状態でさらに上昇を続けるタイミング)で冷却ファン75を駆動しても良い。この場合、加工装置1は、加工水102を全てのスプレーノズル76,79から霧状に噴射してタンク71に供給し、冷却ファン75を駆動すると、スプレーノズル76,79からの噴射及び冷却ファン75を停止した状態よりも加工水102の温度を10℃以上冷却することができる。
前述した実施形態1に係る加工装置1は、スピンドル22を冷却する加工水102を循環利用するために加工水102を貯留したタンク71に、加工水102を霧状に噴射して供給することで、スピンドル22の冷却時に上昇した加工水102を冷却することを可能にした。このために、加工装置1は、加工水102の温度を測定するためのチラーチェックなどを増設することなく、加工水102を霧状にしてタンク71に供給するだけで、加工水102の冷却効果が得られる。その結果、加工装置1は、加工水102の冷却に係るコストを抑制できるので、加工水102を循環利用するためのコストを抑制することができるという効果を奏する。
また、加工装置1は、さらなる加工水102の冷却効果を得るため、タンク71内に気流を発生させる冷却ファン75を設置しているので、加工水102の気化熱による冷却効果を増加させることができる。
また、加工装置1は、再利用経路72から分岐させ、タンク71内の加工水102の冷却のためのタンク冷却路77を設けて、加工水102の冷却効果を向上できる。また、加工装置1は、タンク冷却路77を複数の分岐冷却管781に分岐しているので、冷却効果を向上できる。さらに、加工装置1は、温度測定器83の測定結果である配管722内の加工水102の温度に応じて、タンク71内に供給する加工水102を霧状に噴射するスプレーノズル76,79の数を増減させるので、加工水102の温度を適切な温度に維持することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。前述した実施形態では、加工装置1として切削装置を示しているが、本発明では、加工装置1は、切削装置に限定されることなく、被加工物200を研削加工する研削装置等の被加工物200に種々の加工を施す種々の加工装置でも良い。また、実施形態1では、加工装置1は、冷却ファン75を二つ設けたが、本発明では、冷却ファン75を三つ以上設けても良い。また、本発明では、加工水循環ユニット70の動作は、図4に示されたフローチャートに限定されない。また、本発明では、排水路9の経路によるタンク1への加工水102の供給は無くてもあっても良い。