JP7294303B2 - ノイズフィルタ - Google Patents
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図1にノイズフィルタ1の斜視図、図2にその分解斜視図を示す。ノイズフィルタ1は、3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制する3相フィルタである。ノイズフィルタ1は、第1入力端子IN1と第1出力端子OUT1とを接続している第1導電線11を備える。第2入力端子IN2と第2出力端子OUT2とを接続している第2導電線12を備える。第3入力端子IN3と第3出力端子OUT3とを接続している第3導電線13を備える。第1導電線11、第2導電線12および第3導電線13の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる磁性体30を備える。第1導電線11、第2導電線12および第3導電線13は、互いに絶縁された状態で積層されている。
ノイズフィルタ1のコモンモードに対する等価回路を図3Aおよび図3Bに示す。第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aの各々には、その配線パターンに起因したインダクタンスL11A~L13Aが存在している。第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bの各々にも、その配線パターンに起因したインダクタンスL11B~L13Bが存在している。第1分岐線11C~第3分岐線13Cには、その配線パターンに起因したインダクタンスと第1コンデンサ21~第3コンデンサ23の等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)の合計である、インダクタンスL11C~L13Cが存在している。
磁性体30を配設することにより、第1分岐線11C~第3分岐線13Cの寄生インダクタンスを、コモンモード電流に対して減少させることができる。第1分岐線11C~第3分岐線13Cを、コモンモードに対しては低インピーダンスを示し、ノーマルモードに対しては高インピーダンスを示すように構成することができる。不要成分であるコモンモード電流のみをグラウンドへバイパスし、必要成分であるノーマルモード電流を選択的に負荷に伝えるという、モード選択的な動作が可能となる。すなわち、コモンモード電流に対してのみ、高周波でのフィルタ性能を向上させることができる。
まず、課題について説明する。ノーマルモード電流はコモンモード電流に比べて大きいため、ノーマルモード電流が第1分岐線11C~第3分岐線13Cへ流れると、第1コンデンサ21~第3コンデンサ23が焼損する恐れがある。また、ノーマルモード電流は電力変換用半導体素子の出力であるため、フィルタを通すと(すなわち、第1分岐線11C~第3分岐線13Cへ流れると)、電圧変化がなまり、半導体素子の発熱が大きくなってしまう。したがって、コモンモードフィルタの性能は高くする(すなわちコモンモード電流を第1分岐線11C~第3分岐線13Cへ流す)必要があるが、ノーマルモードフィルタの性能は低くする(すなわちノーマルモード電流を第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bへ流す)必要がある。換言すると、ノーマルモードフィルタ性能に対するコモンモードフィルタ性能の比率(コモン/ノーマルフィルタ性能比)を高くする必要がある。しかし実施例1のノイズフィルタ1(図1)では、コモン/ノーマルフィルタ性能比を十分に高くすることができない場合がある。
図9にコモンモード電流の流れ方を示す。図9では、磁性体30および第1チョークコイル磁性体31b~第3チョークコイル磁性体33bは、記載を省略している。コモンモードでは、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aのすべてで同じ向きにu相、v相、w相の電流UI、VI、WIが流れる。第1チョークコイル磁性体31bに囲まれている領域R11において、第1分岐線11Cおよび第2分岐線12Cにはコモンモードの電流UIおよびVIが互いに逆向きに流れる。これにより第1チョークコイル磁性体31bには、互いに逆向きに流れる磁束UFおよびVFが発生する。第2チョークコイル磁性体32bに囲まれている領域R12において、第2分岐線12Cおよび第3分岐線13Cにはコモンモードの電流VIおよびWIが互いに逆向きに流れる。これにより第2チョークコイル磁性体32bには、互いに逆向きに流れる磁束VFおよびWFが発生する。第3チョークコイル磁性体33bに囲まれている領域R13において、第3分岐線13Cおよび第1分岐線11Cにはコモンモードの電流WIおよびUIが互いに逆向きに流れる。これにより第3チョークコイル磁性体33bには、互いに逆向きに流れる磁束WFおよびUFが発生する。従って磁束を打ち消し合うため、コモンモード電流に対してはほとんどインダクタンスを示さない。
図12および図13の各々に、ノーマルモードフィルタ性能NMおよびコモンモードフィルタ性能CMを示す。図12は、実施例3のノイズフィルタ1bの測定結果の一例である。図13は、比較例のノイズフィルタの測定結果の一例である。比較例のノイズフィルタは、実施例3のノイズフィルタ1bから、磁性体30および第1チョークコイル磁性体31b~第3チョークコイル磁性体33bを除去したフィルタである。縦軸のフィルタ性能は、入力端子に入力された電流が出力端子へどの程度伝達されたかを示している。フィルタ性能の値がマイナスになるほど、出力端子への伝達が少なくなるため、フィルタ性能が高いことを示している。
磁性体130によって、第1入力側導電線111A~第3入力側導電線113Aから生じる磁束と第1出力側導電線111B~第3出力側導電線113Bから生じる磁束とを互いに強め合うことができる。実施例1の磁性体30と同様の効果を得ることができる。また、第1入力側導電線111A~第3入力側導電線113Aおよび第1出力側導電線111B~第3出力側導電線113Bが磁性体130を貫通している部分(第1重複領域A1~第3重複領域A3)を、直線形状にすることができる。実施例1の磁性体30(図2参照)に比して、磁性体130の形状を簡略化できる。磁性体130の体積を縮小することや、磁性体130の製造コストを削減することが可能となる。
磁性体230によって、以下の3つの機能が実現できる。第1に、第1分岐線211C~第3分岐線213Cのコモンモード電流に対する寄生インダクタンスを減少させる機能である(実施例1と同様)。第2に、ノーマルモードチョークコイルを、第1分岐線211C~第3分岐線213Cに配置する機能である(実施例3と同様)。第3に、コモンモードチョークコイルの機能である。以下に説明する。
磁性体230では、上述の3つの機能を1つの磁性体で実現できるため、ノイズフィルタ1dを小型化することが可能となる。また、第1導電線211~第3導電線213を対称配置できるため、それぞれの線のインピーダンスの誤差を小さくすることができる。ノイズフィルタ1dの性能を高めることが可能となる。
実施例3の第1チョークコイル磁性体31b~第3チョークコイル磁性体33b(図8)の形状は、様々な変形が可能である。例えば図20に示す磁性体330のように、一体型であってもよい。櫛形状の下側部分330Aと櫛形状の上側部分330Bとを組み合わせることで、環状構造を3つ備えた磁性体330を形成することができる。実施例3と同様にして、領域R11~R13を形成することが可能となる。
Claims (7)
- 3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制するノイズフィルタであって、
第1入力端子と第1出力端子とを接続している第1導電線と、
第2入力端子と第2出力端子とを接続している第2導電線と、
第3入力端子と第3出力端子とを接続している第3導電線と、
前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる磁性体と、
を備えており、
前記第1導電線は、
前記第1入力端子と第1分岐部との間を延びている第1入力側導電線と、
前記第1分岐部と前記第1出力端子との間を延びている第1出力側導電線と、
前記第1分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第1コンデンサが介挿されている第1分岐線と、を備えており、
前記第2導電線は、
前記第2入力端子と第2分岐部との間を延びている第2入力側導電線と、
前記第2分岐部と前記第2出力端子との間を延びている第2出力側導電線と、
前記第2分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第2コンデンサが介挿されている第2分岐線と、を備えており、
前記第3導電線は、
前記第3入力端子と第3分岐部との間を延びている第3入力側導電線と、
前記第3分岐部と前記第3出力端子との間を延びている第3出力側導電線と、
前記第3分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第3コンデンサが介挿されている第3分岐線と、を備えており、
前記磁性体は、前記第1入力側導電線と前記第1出力側導電線との磁気結合、前記第2入力側導電線と前記第2出力側導電線との磁気結合、および前記第3入力側導電線と前記第3出力側導電線との磁気結合、を発生させることで、これらの間に生じる相互インダクタンスによって前記第1分岐線、前記第2分岐線および前記第3分岐線の寄生インダクタンスを減ずるように構成されており、
第1分岐線、第2分岐線、および第3分岐線に配置されている、ノーマルモード電流の流入を抑制するノーマルモードチョークコイルをさらに備える、ノイズフィルタ。 - 前記磁性体は、第1下側部分と第2下側部分と第1上側部分と第2上側部分とを備えており、
前記第1下側部分は、前記第1入力側導電線、前記第2入力側導電線および前記第3入力側導電線の下方を横断して延びており、
前記第2下側部分は、前記第1出力側導電線、前記第2出力側導電線および前記第3出力側導電線の下方を横断して延びており、
前記第1上側部分は、前記第1分岐部、前記第2分岐部および前記第3分岐部の上方を通過して前記第1下側部分の一方の端部と前記第2下側部分の一方の端部の間を延びており、
前記第2上側部分は、前記第1分岐部、前記第2分岐部および前記第3分岐部の上方を通過して前記第1下側部分の他方の端部と前記第2下側部分の他方の端部の間を延びており、
前記第1上側部分と前記第2上側部分は、前記第1分岐部、前記第2分岐部および前記第3分岐部の上方で交差している、請求項1に記載のノイズフィルタ。 - 前記ノーマルモードチョークコイルは、
前記第1分岐線および前記第2分岐線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる第1のチョークコイル磁性体と、
前記第2分岐線および前記第3分岐線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる第2のチョークコイル磁性体と、
前記第3分岐線および前記第1分岐線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる第3のチョークコイル磁性体と、
を備えており、
前記第1分岐線および前記第2分岐線に流れるコモンモード電流によって、前記第1のチョークコイル磁性体に互いに逆向きに流れる磁束が発生し、
前記第2分岐線および前記第3分岐線に流れるコモンモード電流によって、前記第2のチョークコイル磁性体に互いに逆向きに流れる磁束が発生し、
前記第3分岐線および前記第1分岐線に流れるコモンモード電流によって、前記第3のチョークコイル磁性体に互いに逆向きに流れる磁束が発生する、請求項1に記載のノイズフィルタ。 - 前記第1のチョークコイル磁性体、第2のチョークコイル磁性体および第3のチョークコイル磁性体は、互いに一体である、請求項3に記載のノイズフィルタ。
- 前記第1分岐線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる第1の分岐線磁性体と、
前記第2分岐線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる第2の分岐線磁性体と、
前記第3分岐線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる第3の分岐線磁性体と、
をさらに備えている、請求項1または2に記載のノイズフィルタ。 - 3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制するノイズフィルタであって、
第1入力端子と第1出力端子とを接続している第1導電線と、
第2入力端子と第2出力端子とを接続している第2導電線と、
第3入力端子と第3出力端子とを接続している第3導電線と、
前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる磁性体と、
を備えており、
前記第1導電線は、
前記第1入力端子と第1分岐部との間を延びている第1入力側導電線と、
前記第1分岐部と前記第1出力端子との間を延びている第1出力側導電線と、
前記第1分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第1コンデンサが介挿されている第1分岐線と、を備えており、
前記第2導電線は、
前記第2入力端子と第2分岐部との間を延びている第2入力側導電線と、
前記第2分岐部と前記第2出力端子との間を延びている第2出力側導電線と、
前記第2分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第2コンデンサが介挿されている第2分岐線と、を備えており、
前記第3導電線は、
前記第3入力端子と第3分岐部との間を延びている第3入力側導電線と、
前記第3分岐部と前記第3出力端子との間を延びている第3出力側導電線と、
前記第3分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第3コンデンサが介挿されている第3分岐線と、を備えており、
前記磁性体は、前記第1入力側導電線と前記第1出力側導電線との磁気結合、前記第2入力側導電線と前記第2出力側導電線との磁気結合、および前記第3入力側導電線と前記第3出力側導電線との磁気結合、を発生させることで、これらの間に生じる相互インダクタンスによって前記第1分岐線、前記第2分岐線および前記第3分岐線の寄生インダクタンスを減ずるように構成されており、
前記第1分岐部は、前記第1入力側導電線の一部と前記第1出力側導電線の一部とが同一方向に電流が流れる向きで重複する第1重複領域を形成するようにループ形状を備えており、
前記第2分岐部は、前記第2入力側導電線の一部と前記第2出力側導電線の一部とが同一方向に電流が流れる向きで重複する第2重複領域を形成するようにループ形状を備えており、
前記第3分岐部は、前記第3入力側導電線の一部と前記第3出力側導電線の一部とが同一方向に電流が流れる向きで重複する第3重複領域を形成するようにループ形状を備えており、
前記磁性体は、前記第1重複領域、前記第2重複領域および前記第3重複領域の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる、ノイズフィルタ。 - 3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制するノイズフィルタであって、
第1入力端子と第1出力端子とを接続している第1導電線と、
第2入力端子と第2出力端子とを接続している第2導電線と、
第3入力端子と第3出力端子とを接続している第3導電線と、
前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる磁性体と、
を備えており、
前記第1導電線は、
前記第1入力端子と第1分岐部との間を延びている第1入力側導電線と、
前記第1分岐部と前記第1出力端子との間を延びている第1出力側導電線と、
前記第1分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第1コンデンサが介挿されている第1分岐線と、を備えており、
前記第2導電線は、
前記第2入力端子と第2分岐部との間を延びている第2入力側導電線と、
前記第2分岐部と前記第2出力端子との間を延びている第2出力側導電線と、
前記第2分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第2コンデンサが介挿されている第2分岐線と、を備えており、
前記第3導電線は、
前記第3入力端子と第3分岐部との間を延びている第3入力側導電線と、
前記第3分岐部と前記第3出力端子との間を延びている第3出力側導電線と、
前記第3分岐部から分岐してグラウンドに接続しているとともに第3コンデンサが介挿されている第3分岐線と、を備えており、
前記磁性体は、前記第1入力側導電線と前記第1出力側導電線との磁気結合、前記第2入力側導電線と前記第2出力側導電線との磁気結合、および前記第3入力側導電線と前記第3出力側導電線との磁気結合、を発生させることで、これらの間に生じる相互インダクタンスによって前記第1分岐線、前記第2分岐線および前記第3分岐線の寄生インダクタンスを減ずるように構成されており、
前記ノイズフィルタは、前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線が垂直に貫通している基板をさらに備えており、
前記基板に垂直な方向からみたときに、前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の各々は三角形の頂点の位置に配置されており、
前記基板の第1面側には、前記第1入力側導電線、前記第2入力側導電線および前記第3入力側導電線が配置されており、
前記基板の第2面側には、前記第1出力側導電線、前記第2出力側導電線および前記第3出力側導電線が配置されており、
前記第1導電線と前記基板との接触部には、前記第1分岐部が形成されており、
前記第2導電線と前記基板との接触部には、前記第2分岐部が形成されており、
前記第3導電線と前記基板との接触部には、前記第3分岐部が形成されており、
前記第1分岐線は、前記第1分岐部から延びているとともに前記基板上に配置されている渦巻き状の第1コイルパターンであり、
前記第2分岐線は、前記第2分岐部から延びているとともに前記基板上に配置されている渦巻き状の第2コイルパターンであり、
前記第3分岐線は、前記第3分岐部から延びているとともに前記基板上に配置されている渦巻き状の第3コイルパターンであり、
前記磁性体は、
前記第1コイルパターンの中心を通り前記基板を垂直に貫通している第1ピラー部分と、
前記第2コイルパターンの中心を通り前記基板を垂直に貫通している第2ピラー部分と、
前記第3コイルパターンの中心を通り前記基板を垂直に貫通している第3ピラー部分と、
前記基板の第1面側において前記第1入力側導電線、前記第2入力側導電線および前記第3入力側導電線の周囲を取り囲んでいるとともに、前記第1ピラー部分、前記第2ピラー部分および前記第3ピラー部分の前記基板の第1面側の端部を互いに接続している第1環状部と、
前記基板の第2面側において前記第1出力側導電線、前記第2出力側導電線および前記第3出力側導電線の周囲を取り囲んでいるとともに、前記第1ピラー部分、前記第2ピラー部分および前記第3ピラー部分の前記基板の第2面側の端部を互いに接続している第2環状部と、
を備えている、ノイズフィルタ。
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