JP7290072B2 - ホログラム記録媒体用組成物、ホログラム記録媒体用硬化物、及びホログラム記録媒体 - Google Patents

ホログラム記録媒体用組成物、ホログラム記録媒体用硬化物、及びホログラム記録媒体 Download PDF

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Description

本発明はホログラム記録媒体用組成物と、このホログラム記録媒体用組成物を硬化させてなるホログラム記録媒体用硬化物、及びこのホログラム記録媒体用組成物を用いたホログラム記録媒体に関する。
光記録媒体のさらなる大容量化、高密度化に向けて、光の干渉による光強度分布に応じて記録層の屈折率を変化させ、ホログラムとして情報を記録するホログラム方式の光記録媒体が開発されている。
また、近年、メモリ用途向けに開発されていたホログラム記録媒体を、ARグラス導光板の光学素子用途へ適用する検討が行われている(例えば特許文献1)。
ホログラム記録媒体において、記録後の透過スペクトルは重要な指標である。メモリ用途においては、信号の再生に用いる波長405nmでの吸収が小さいほうが信号転送速度が高くなり、好ましい。また、ARグラス導光板の光学素子用途においては、ARグラスを通して視野の着色につながるため、可視光域での吸収が小さいほうが好ましい。
ホログラム記録媒体に使用される光重合開始剤としては、従来、記録波長である405nmの感度が高いことから、オキシムエステル系光重合開始剤が好ましいとされている。記録波長の405nmに感度を有する光重合開始剤としては、オキシムエステル系光重合開始剤の他に2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(TPO)が知られているがTPOは感度が低い。感度が低いと、メモリ用途では信号記録速度が低下し、ARグラス導光板の光学素子用途ではホログラム記録工程のタクト性悪化や縦散乱の問題が起こる。
しかし、オキシムエステル系開始剤は、記録後の光の照射で着色することが課題であった。これは、オキシムエステル系光重合開始剤の光分解生成物に由来する副生成物が原因と考えられている。
特許文献2には、特定構造のオキシムエステル系光重合開始剤を用いることでこの課題を解決することが開示されている。
米国特許出願公開第2017/0059759号明細書 特開2016-206488号公報
しかし、本発明者らの更なる検討に拠り、上記特定構造のオキシムエステル系光重合開始剤を用いた場合でも、後露光後に450nm以下の波長域に吸収端が残ることで、ホログラム記録後に着色する課題があることが分かった。この原因としては、記録時および/または後露光時の重合時に働く重合開始剤のイミニルラジカルがダイマーを形成することが考えられている。
本発明は、オキシムエステル系光重合開始剤を用いた場合の上記ホログラム記録後の着色が抑制されるホログラム記録媒体用組成物及びその硬化物と、ホログラム記録媒体を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、オキシムエステル系光重合開始剤に、安定ニトロキシルラジカル基を有する化合物を併用して用いることで、ホログラム記録後の着色を抑制することができることを見出した。本発明の作用機構に特に限定されないが、本発明の効果はおそらくはイミニルラジカルが安定ニトロキシルラジカルにトラップされることによるものと考えられる。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記成分(a-1)~(e-1)を含有することを特徴とするホログラム記録媒体用組成物。
成分(a-1):イソシアネート基を有する化合物
成分(b-1):イソシアネート反応性官能基を有する化合物
成分(c-1):重合性モノマー
成分(d-1):オキシムエステル系光重合開始剤を含む光重合開始剤
成分(e-1):安定ニトロキシルラジカル基を有する化合物
[2] 前記オキシムエステル系光重合開始剤が下記式(4)で表される化合物である、[1]に記載のホログラム記録媒体用組成物。
Figure 0007290072000001
(式(4)中、R21は、アルキル基を示し、
22は、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示し、
23は、-(CH)-基を示し、mは、1以上6以下の整数を示し、
24は、水素原子、又は任意の置換基を示し、
25は、結合するカルボニル基に対して共役する多重結合を有しない、任意の置換基を示す。)
[3] 式(4)中のR24が、アルキル基、アルコキシカルボニル基、芳香環基、及び複素環基のいずれかを示し、R25が、置換基を有していてもよいアルキル基を示す、[2]に記載のホログラム記録媒体用組成物。
[4] 成分(c-1)の重合性モノマーが(メタ)アクリル系モノマーである、[1]ないし[3]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
[5] 成分(c-1)の重合性モノマーの分子量が300以上である、[1]ないし[4]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
[6] 成分(e-1)が、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、[1]ないし[5]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
[7] 組成物中の成分(e-1)と成分(d-1)のモル比(成分(e-1)/成分(d-1))が0.1以上10以下である、[1]ないし[6]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
[8] 組成物中の成分(c-1)の含有量が0.1重量%以上80重量%以下であり、成分(d-1)の含有量が成分(c-1)に対して0.1重量%以上20重量%以下である、[1]ないし[7]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
[9] 組成物中の成分(a-1)と成分(b-1)の合計の含有量が0.1重量%以上99.9重量%以下であり、成分(a-1)に含まれるイソシアネート基数に対する成分(b-1)に含まれるイソシアネート反応性官能基数の比率が0.1以上10.0以下である、[1]ないし[8]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
[10] さらに下記成分(f-1)を含む、[1]ないし[9]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
成分(f-1):硬化触媒
[11] [1]ないし[10]のいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物を硬化させてなるホログラム記録媒体用硬化物。
[12] [11]に記載のホログラム記録媒体用硬化物よりなる記録層と支持体とを有するホログラム記録媒体用積層体。
[13] [11]に記載のホログラム記録媒体用硬化物または[12]に記載のホログラム記録媒体用積層体に露光してなるホログラム記録媒体。
[14] イルミナントC光源で測定した2度視野でのCIE XYZ表色系色度のブランクからの変化量Δx及びΔyがいずれも0.0040以下である、[13]に記載のホログラム記録媒体。
[15] ARグラス導光板である[13]または[14]に記載のホログラム記録媒体。
本発明によれば、光重合開始剤として感度の向上に有効なオキシムエステル系光重合開始剤を用いたホログラム記録媒体におけるホログラム記録後の着色を抑制することができる。
このため、特に、ARグラス導光板用途において、感度に優れ、視野角の拡大、色ムラの低減、輝度の向上を図った上で、着色のない視野を提供することができる。
また、メモリ用途においても、記録再生光の吸収を低減して転送速度の向上を図ることができる。
実施例におけるホログラム記録に用いた装置の概要を示す構成図である。 実施例1~4と比較例1におけるTEMPOL/光重合開始剤モル比とΔx,Δyとの関係を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に例示する物や方法等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。
[ホログラム記録媒体用組成物]
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、下記成分(a-1)~(e-1)を含有することを特徴とする。
成分(a-1):イソシアネート基を有する化合物
成分(b-1):イソシアネート反応性官能基を有する化合物
成分(c-1):重合性モノマー
成分(d-1):オキシムエステル系光重合開始剤を含む光重合開始剤
成分(e-1):安定ニトロキシルラジカル基を有する化合物
<成分(a-1)>
成分(a-1)のイソシアネート基を有する化合物は、好ましくは後述の硬化触媒(成分(f-1))の存在下で、イソシアネート反応性官能基を有する化合物(成分(b-1))と反応し、樹脂マトリックスを構成する成分である。
イソシアネート基を有する化合物の分子内のイソシアネート基の割合は、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは47重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下である。この下限は、通常0.1重量%であり、好ましくは1重量%である。イソシアネート基の割合が上記上限値以下であればホログラム記録媒体とした際に濁りが生じにくくなり、光学的均一性が得られる。イソシアネート基の割合が上記下限値以上であれば樹脂マトリックスの硬度やガラス転移温度が高くなり、記録の消失を防ぐことができる。
本発明におけるイソシアネート基の割合は、使用するイソシアネート基を有する化合物の全体の中のイソシアネート基の割合を示し、イソシアネート基を有する化合物に占めるイソシアネート基の割合は次式から求められる。イソシアネート基の分子量は42である。
(42×イソシアネート基の数/イソシアネート基を有する化合物の分子量)×100
イソシアネート基を有する化合物の種類に特に制限はなく、例えば芳香族、芳香脂肪族、脂肪族、または脂環式の骨格を有し得る。イソシアネート基を有する化合物は分子内にイソシアネート基を1つ有するものであってもよく、2つ以上有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物(成分(a-1))と分子内に3つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物(成分(b-1))、または分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する化合物(成分(a-1))と分子内に2つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物(成分(b-1))で得られる三次元架橋マトリックスによれば、優れた記録保持性を有する記録層を得ることができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソシアン酸、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸オクチル、ジイソシアン酸ブチル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4-及び/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタン及び任意の所望の異性体含量を有するその混合物、イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/またはトリフェニルメタン4,4’,4’’-トリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ウレタン、ウレア、カルボジイミド、アクリルウレア、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレットジオン及び/またはイミノオキサジアジンジオン構造を有するイソシアネート誘導体の使用も可能である。
これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記の中でも着色し難いため、イソシアネート基を有する脂肪族系または脂環族化合物が好ましい。
<成分(b-1)>
成分(b-1)のイソシアネート反応性官能基を有する化合物とは、成分(a-1)のイソシアネート基を有する化合物との鎖延長反応に関与する活性水素(イソシアネート反応性官能基)を有する化合物である。イソシアネート反応性官能基としては例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基が挙げられる。イソシアネート反応性官能基を有する化合物は分子内にイソシアネート反応性官能基を1つ有するものであってもよく、2つ以上を有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。2つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する場合には、1つの分子に含まれるイソシアネート反応性官能基は1種類であってもよく、複数種類であってもよい。
イソシアネート反応性官能基を有する化合物の数平均分子量は通常50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また通常50000以下であり、10000以下、より好ましくは5000以下である。イソシアネート反応性官能基を有する化合物の数平均分子量が上記下限値以上の場合は、架橋密度が下がり、記録速度の低下を防止することができる。イソシアネート反応性官能基を有する化合物の数平均分子量が上記上限値以下の場合は、他成分との相溶性が向上し、および架橋密度が上がるため、記録内容の消失を防止することができる。
成分(b-1)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された値である。
(水酸基を有する化合物)
イソシアネート反応性官能基として水酸基を有する化合物は1分子中に水酸基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上の水酸基を有するものが好ましい。その例として、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール(TMG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のジオール類;ビスフェノール類、またはこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物;多官能ポリオキシブチレン;多官能ポリカプロラクトン;多官能ポリエステル;多官能ポリカーボネート;多官能ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
水酸基を有する化合物の数平均分子量は通常50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また通常50000以下であり、10000以下、より好ましくは5000以下である。水酸基を有する化合物の数平均分子量が上記下限値以上の場合は、架橋密度が下がり、記録速度の低下を防止することができる。水酸基を有する化合物の数平均分子量が上記の上限値以下の場合は、他成分との相溶性が向上し、架橋密度が上がるために、記録内容の消失を防止することができる。
(アミノ基を有する化合物)
イソシアネート反応性官能基としてアミノ基を有する化合物は1分子中にアミノ基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上のアミノ基を有するものが好ましい。その例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン;イソホロンジアミン、メンタンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂環族アミン;m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミンなどの芳香族アミン;等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アミノ基を有する化合物の数平均分子量は通常50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また通常50000以下であり、10000以下、より好ましくは5000以下である。アミノ基を有する化合物の数平均分子量が上記下限値以上の場合は、架橋密度が下がり、記録速度の低下を防止することができる。アミノ基を有する化合物の数平均分子量が上記の上限値以下の場合は、他成分との相溶性が向上し、架橋密度が上がるために、記録内容の消失を防止することができる。
(メルカプト基を有する化合物)
イソシアネート反応性官能基としてメルカプト基を有する化合物は1分子中にメルカプト基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上のメルカプト基を有するものが好ましい。その例としては、1,3-ブタンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,9-ノナンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
メルカプト基を有する化合物の数平均分子量は通常50以上であり、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また通常50000以下であり、10000以下、より好ましくは5000以下である。メルカプト基を有する化合物の数平均分子量が上記下限値以上の場合は、架橋密度が下がり、記録速度の低下を防止することができる。メルカプト基を有する化合物の数平均分子量が上記の上限値以下の場合は、他成分との相溶性が向上し、および架橋密度が上がるため、記録内容の消失を防止することができる。
(本発明に好適な成分(b-1))
本発明者らは、成分(e-1)として後述のTEMPOLのようなイソシアネート反応性官能基と安定ニトロキシルラジカル基とを有する化合物を用いた場合、成分(b-1)に含まれるプロピレングリコール(PG)ユニットとテトラメチレングリコール(TMG)ユニットに起因してホログラム記録媒体が着色することを見出した。ホログラム記録媒体の着色を抑制する観点から、成分(b-1)に含まれるPGユニットとTMGユニットの合計重量の割合(以下「(PG+TMG)/((a-1)+(b-1))」と記載する場合がある。)は少ないほど着色を低減することができることから、本発明のホログラム記録媒体用組成物の(PG+TMG)/((a-1)+(b-1))は、30重量%以下、特に27重量%以下、とりわけ25重量%以下で、0重量%(PGユニットおよびTMGユニットを含まない)であることが最も好ましい。
(PG+TMG)/((a-1)+(b-1))を上記上限以下とするために、成分(b-1)として、ポリプロピレングリコール(PPG)やポリテトラメチレングリコール(PTMG)のようなPGユニット、TMGユニットを有する化合物を用いることは好ましくなく、これらPGユニットやTMGユニットを有する化合物を用いる場合は、組成物中の(PG+TMG)/((a-1)+(b-1))が上記上限以下となるように用いる。
成分(b-1)としては、着色を抑制する観点から、ポリカプロラクトン類を用いることが好ましく、成分(b-1)として、ポリカプロラクトン類を用いることで、本発明のホログラム記録媒体用組成物中の成分(a-1)と成分(b-1)の合計重量に対する成分(b-1)に含まれるカプロラクトン(CL)ユニットの重量割合(以下「(CL)/((a-1)+(b-1))」と記載する場合がある。)が20重量%以上、特に25重量%以上、とりわけ30~70重量%となるように配合組成を設計することが好ましい。なお、ここで、CLユニットとはポリカプロラクトンに含まれるカプロラクトン由来のユニット(開環鎖状ユニット)をさす。
成分(b-1)として用いるポリカプロラクトン類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、メチルペンタンジオール、2,4-ジエチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールやポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のジオール類の存在下でε-カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール(ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオールなど)等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、成分(b-1)として上記のポリカプロラクトンポリオールを含むことが好ましい。例えば、成分(b-1)としてポリカプロラクトンポリオールのみを用いる、或いはポリカプロラクトンポリオールと他の成分(b-1)とを併用することが好ましい。特に成分(b-1)としてポリカプロラクトンポリオールのみを用いることで、組成物中の(CL)/((a-1)+(b-1))を上記下限以上とすることが好ましい。
組成物中の(PG+TMG)/((a-1)+(b-1))が上記上限以下であれば、成分(b-1)として、ポリプロピレングリコール等のPGユニットやTMGユニットを有するポリオールをε-カプロラクトン等で変性することで、CLユニットを導入したものを用いることもできる。
<成分(c-1)>
成分(c-1)の重合性モノマーとは後述の成分(d-1)の光重合開始剤によって重合され得る化合物である。成分(c-1)は、記録時および/または後露光時において重合されるモノマー化合物である。
本発明のホログラム記録媒体用組成物に使用される重合性モノマーの種類は特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択することが可能である。重合性モノマーの例としては、カチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマー等が挙げられる。これらは、何れを使用することもでき、また2種以上を併用してもよい。イソシアネート基を有する化合物及びイソシアネート反応性官能基を有する化合物がマトリックスを形成する反応を阻害しにくいという理由から、成分(c-1)としてはラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
(カチオン重合性モノマー)
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和結合化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。上記のカチオン重合性モノマーは、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(アニオン重合性モノマー)
アニオン重合性モノマーの例としては、炭化水素モノマー、極性モノマー等が挙げられる。
炭化水素モノマーの例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、ビニルピリジン、ビニルアントラセン、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
極性モノマーの例としては、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、ビニルケトン類、イソプロペニルケトン類、その他の極性モノマーなどが挙げられる。
上記例示のアニオン重合性モノマーは、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(ラジカル重合性モノマー)
ラジカル重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニル化合物、スチレン類、スピロ環含有化合物等が挙げられる。上記例示のラジカル重合性モノマーは、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本明細書において、メタクリル及びアクリルの総称を(メタ)アクリルと記載する。
上記の中でも、ラジカル重合する際の立体障害の点から(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
(重合性モノマーの分子量)
本発明のホログラム記録媒体用組成物に用いる重合性モノマーの分子量は通常80以上、好ましくは150以上、より好ましくは300以上で、通常3000以下、好ましくは2500以下、より好ましくは2000以下である。分子量が上記下限値以上であることで、ホログラムの情報記録時の光照射の重合に伴う収縮率を小さくすることができる。分子量が上記上限値以下であることで、ホログラム記録媒体用組成物を用いた記録層中での重合性モノマーの移動度が高く、拡散が起こりやすくなり、十分な回折効率を得ることができる。
(重合性モノマーの屈折率)
上記重合性モノマーは、ホログラム記録媒体への照射光波長(記録波長等)における屈折率が通常1.50以上、好ましくは1.52以上、さらに好ましくは1.55以上であり、通常1.80以下、好ましくは1.78以下である。屈折率が過度に小さいと回折効率が十分でなく、多重度が十分とならない場合がある。屈折率が過度に大きいと樹脂マトリックスとの屈折率差が大きくなりすぎて散乱が大きくなることにより透過度が低下して、記録や再生に際してより大きなエネルギーを要することになる。
屈折率は短い波長で評価すると大きい値を示すが、短波長で相対的に大きい屈折率を示すサンプルは、長波長でも相対的に大きい屈折率を示し、その関係が逆転することはない。従って、記録波長以外の波長で屈折率を評価し、記録波長での屈折率を予測することも可能である。
重合性モノマーの屈折率は、試料が液体の場合、最小偏角法、臨界角法、Vブロック法等によって測定できる。試料が固体の場合、重合性モノマーの屈折率は、適当な溶媒に化合物を溶解して溶液とし、この溶液の屈折率を測定し、化合物が100%の場合の屈折率を外挿により求めることができる。
屈性率の高い重合性モノマーとして、分子内にハロゲン原子(ヨウ素、塩素、臭素など)を有する化合物やヘテロ原子(窒素、硫黄、酸素など)を有する化合物が好ましい。中でも複素環構造を有するものがより好ましい。
これらの化合物は溶媒やマトリックスへの溶解性を確保するために、分子内に含まれる複素環構造中のヘテロ原子は2個以下であることが好ましい。分子内のヘテロ原子が2個以下であることで、溶解性が向上し、均一な記録層を得ることができる。分子内の複素環の構造規則性が高いとスタッキングによる着色や溶解性低下が起こる場合があることから、中でも2以上の環が縮合したヘテロアリール基であることがより好ましい。
(化合物i)
好ましい重合性モノマーの例として、特開2010-018606号公報に記載の、下記(式a)で表される(メタ)アクリル系モノマーである化合物iが挙げられる。
Figure 0007290072000002
((式a)において、Aは置換基を有していてもよい環である。Arは置換基を有していてもよい、2以上の環が縮合した(ヘテロ)アリール基である。Rは水素原子又はメチル基である。pは1~7の整数であり、pが2以上の場合、複数のArは同一であっても異なっていてもよい。但し、Aが芳香族複素環であり、かつ、Arが置換基を有していてもよい、2以上の環が縮合したヘテロアリール基である場合には、AおよびArの各々が連結している構造において、互いに直接連結している、AおよびArの各々の構造中の部分構造は、ヘテロ原子を含まない。)
上記(式a)で表される(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-(1-チアンスレニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2-(2-ベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2-(4-ジベンゾフラニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2-(4-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、3-(3-ベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、3-(4-ジベンゾフラニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、3-(4-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、4-(1-チアンスレニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、4-(4-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2,4-ビス(1-チアンスレニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2,4-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2,4-ビス(3-ベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2,4-ビス(4-ジベンゾフラニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、2,4-ビス(4-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、4-メチル-2,6-ビス(1-チアンスレニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、4-メチル-2,6-ビス(2-ベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、4-メチル-2,6-ビス(3-ベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、4-メチル-2,6-ビス(4-ジベンゾフラニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート、4-メチル-2,6-ビス(4-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル系モノマーは、設計の自由度が高く、成分(c-1)として工業的に有利である。
(化合物ii)
重合性モノマーの別の好ましい例として、特開2016-222566公報に記載の、少なくとも下記式(1)で表される化合物iiが挙げられる。
Figure 0007290072000003
(式(1)において、Qは置換基を有していてもよい含チオフェン環スルフィド基である。Gはアクリロイル又はメタクリロイル基である。Lは置換基を有していてもよいQとGを接続するr+s価の連結基又は直接結合である。rは1以上5以下の整数を表す。sは1以上5以下の整数を表す。)
以下、上記式(1)で表される化合物iiについて説明する。
<式(1)中のLについて>
Lは置換基を有していてもよいQとGを連結するr+s価の任意の連結基、又は直接結合である。高い屈折率を付与するためには、Lは環状化合物由来の基であることが好ましい。相溶性を付与するためには、Lは脂肪族化合物由来の基であることが好ましい。材料の目的に合わせてこれらの構造を組み合わせてもよく、C-C結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-及び-CONH-から選ばれる連結基を有していても良い。
化合物全体の相溶性を上げるためには、Lは炭素数2~18、好ましくは3~6の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。化合物全体に占める大きさを小さく保ちつつ、高い相溶性を維持するためには、Lは鎖状又は環状の飽和炭化水素基であることが好ましく、更に分枝構造を有する炭化水素基であることがより好ましい。
直鎖飽和炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基などが挙げられる。分枝構造を有する炭化水素基としては、例えばイソプロピレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン基、1-エチル-n-プロピレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基等が挙げられる。環状炭化水素基としては、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基などが挙げられる。
化合物全体の屈折率を上げるためには、Lは好ましくは3~8員、さらに好ましくは5~6員の環状化合物である。Lの有する環は単環構造であっても縮合環構造であってもよい。Lを構成する環の数は1~4、好ましくは1~3、更に好ましくは1~2である。Lを構成する環に芳香族性は必ずしも必要ないが、分子全体に占める大きさを小さく保ちつつ、高い屈折率を維持するためには不飽和結合が含まれることが好ましく、更に芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基であることが好ましい。ホログラム記録および再生時の光透過性を確保するためには、着色が少ないことが好ましく、この点から芳香族炭化水素環基であることがより好ましい。
Lを構成する芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、アセナフチレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環などの炭素数6~14、好ましくは6~12の芳香族炭化水素環が挙げられる。着色回避、溶解性確保の点から特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などの炭素数6~10の芳香族炭化水素環である。
Lを構成する環が芳香族複素環の場合、ヘテロ原子としては特に限定されず、S、O、N、Pなどの各原子を用いることができる。相溶性確保の点から、S,O,Nの各原子が好ましい。着色回避、溶解性確保の点からヘテロ原子の数は分子中に1~3であることが好ましい。
Lを構成する芳香族複素環としては、具体的には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、チアンスレン環、ジベンゾチオキサン環、ジベンゾベンゾチオフェン環、オキサゾリジン環、チアゾリジン環などの炭素数2~18、好ましくは3~6の芳香族複素環が挙げられる。化合物全体に占める大きさを小さく保ちつつ、高い屈折率を維持するためには、チオフェン環、フラン環、ピロール環が好ましい。
<Lが有していてもよい置換基>
Lは、上記以外に更に置換基を有していてもよい。例えば、さらに溶解性を向上させるために、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルコキシ基、アルカノイルオキシ基を置換基として有していてもよい。屈折率を上昇させるために、アリール基、アルキルチオ基、アルキルチオアルキル基、アリールオキシ基、アリールアルコキシル基を置換基として有していてもよい。経済的な合成の達成のためには無置換であることが好ましい。
ここでアルキル基とは、好ましくは炭素数1~4の鎖状アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、s-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基などが挙げられる。
アルコキシ基とは、好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
アルコキシアルキル基とは、好ましくは炭素数2~6のアルコキシアルキル基であり、具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基などが挙げられる。
アルコキシカルボニル基とは、好ましくは炭素数2~5のアルコキシカルボニル基であり、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
アルコキシアルコキシ基とは、好ましくは炭素数3~6のアルコキシアルコキシ基であり、具体的にはメトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、ブトキシエトキシ基などが挙げられる。
アルカノイルオキシ基とは、好ましくは炭素数2~5のアルカノイルオキシ基であり、具体的にはアセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロキシ基、バレロキシ基などが挙げられる。
アリール基とは、好ましくは炭素数6~14の単環又は縮合環からなるアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。
アルキルチオ基とは、好ましくは炭素数2~4のアルキルチオ基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基などが挙げられる。
アルキルチオアルキル基とは、好ましくは炭素数2~4のアルキルチオアルキル基であり、具体的にはメチルチオメチル基、メチルチオエチル基、エチルチオメチル基、エチルチオエチル基などが挙げられる。
アリールオキシ基とは、炭素数6~14の単環又は縮合環からなるアリールオキシ基であり、具体的にはフェノキシ基などが挙げられる。
アリールアルコキシ基とは、炭素数7~5のアリールアルコキシ基であり、具体的にはベンジルオキシ基などが挙げられる。
<式(1)中のQについて>
Qは置換基を有していてもよい含チオフェン環スルフィド基であり、好ましくは下記式(2)又は式(3)で表される含チオフェン環スルフィド基である。
Figure 0007290072000004
式(2),(3)において、スルフィド基は、含チオフェン環のどの位置で結合していてもよい。Qは、式(1)で表される化合物を高屈折率化するための要となる基であり、Q単独としての屈折率が高い構造であることが好ましい。
Q単独としての屈折率は、原子団寄与法で推算することができる。化合物を構成する原子団ごとに分子屈折[R],モル体積Vを用いてn={(1+2[R]/V)/(1-[R]/V)}0.5を計算し、和をとることで推算することができる。
Qは、光の吸収波長がより短波長側にあり、可視光による着色が少ないという観点から、透明性を要求される用途においては、式(2)で表されるジベンゾチオフェン環がより好ましい。
Qは、光照射時の架橋に伴う収縮率低減の観点から、ある程度分子量が大きいことが好ましい。Q部分の分子量は、通常50以上、好ましくは70以上である。光記録時の移動性を確保する観点から、Q部分の分子量は、通常300以下、好ましくは250以下である。
<Qが有していてもよい置換基>
Qは更に置換基を有していてもよい。Qが有していてもよい置換基としては、相溶性を低下させないものや屈折率を低下させないものであれば特に限定されない。具体的には、メチルチオ基などの炭素数1~3のアルキルチオ基や、メチルチオメチル基などの炭素数2~6のアルキルチオアルキル基が挙げられる。
<式(1)中のGについて>
Gはアクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
<LとQの結合位置について>
Lが環状基の場合、QのLに対する好ましい置換位置は、rが1の場合はどこでもよく、rが2以上の場合は合成収率が高いとの理由により互いに隣接しないことが好ましい。
Lがヘテロアリール環基である場合には、LおよびQの各々が連結している構造において、互いに直接連結している、LおよびQの各々の構造中の部分構造は、ヘテロ原子を含まないことが好ましい。言い換えると、LおよびQが連結している構造において、LおよびQの構造中の、ヘテロ原子を含む部分構造同士は直接連結していないことが好ましい。LおよびQの構造中の、ヘテロ原子を含む部分構造同士が直接連結している構造は、可視光領域に吸収を持ちやすく、この着色によって記録再生時の光透過を妨げる可能性が高く、好ましくない。
<r及びsについて>
rは1以上5以下の整数であり、rが2以上の場合、複数のQは同一であっても異なっていてもよい。rは、溶剤やマトリックスとの良い溶解性を得るためには、好ましくは1~3であり、より好ましくは2又は3である。
sは、1以上5以下の整数を表し、光硬化による収縮を低く抑えるために1が好ましい。
<例示化合物>
化合物iiの具体例を以下に例示する。化合物iiは以下の例示物に限定されるものではない。
Figure 0007290072000005
Figure 0007290072000006
Figure 0007290072000007
化合物iiとしては、上記構造式で示したように、S-4-ジベンゾチオフェニルチオアクリレート、S-7-ベンゾチオフェニルチオアクリレート、S-(1,3-ジフェニル)-4-ジベンゾチオフェニルチオアクリレート、S-(1,3-ジフェニル)-7-ベンゾチオフェニルチオアクリレート、6-フェニル-2,4-ビス(4-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニルアクリレート、6-フェニル-2,4-ビス(7-ベンゾチオフェニル)-1-フェニルアクリレート、7-(3-(4-ジベンゾチオフェニル)-2,6-ジオキサー[3,3,0]ビシクロオクチル)アクリレート、7-(3-(7-ベンゾチオフェニル)-2,6-ジオキサー[3,3,0]ビシクロオクチル)アクリレート、2,4-ビス(4-ジベンゾチオフェニル)-1-シクロヘキシルアクリレート、2,4-ビス(7-ベンゾチオフェニル)-1-シクロヘキシルアクリレート、3,3-ビス(4-ジベンゾチオフェニルチオ)メチルフェニルアクリレート、3,3-ビス(7-ベンゾチオフェニルチオ)メチルフェニルアクリレート、4-(1,2-ビス(4-ジベンゾチオフェニルチオ)エチルフェニルアクリレート、4-(1,2-ビス(7-ベンゾチオフェニルチオ)エチルフェニルアクリレート、2,3-ビス(4-ジベンゾチオフェニルチオ)プロピルアクリレート、2,3-ビス(7-ベンゾチオフェニルチオ)プロピルアクリレート、2-(4-ジベンゾチオフェニルチオ)エチルアクリレート、2-(7-ベンゾチオフェニルチオ)エチルアクリレート、1,3-ビス(4-ジベンゾチオフェニルチオ)-2-プロピルアクリレート、1,3-ビス(7-ベンゾチオフェニルチオ)-2-プロピルアクリレート、2,2-ビス(4-ジベンゾチオフェニルチオメチル)-3-(4-ジベンゾチオフェニルチオ)プロピルアクリレート等が挙げられる。
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、成分(c-1)として、化合物iまたは化合物iiの1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
(重合性モノマーのモル吸光係数)
上記重合性モノマーは、ホログラムの記録波長における、モル吸光係数が100L・mol-1・cm-1以下であることが好ましい。モル吸光係数が100L・mol-1・cm-1以下であることにより、媒体の透過率が低くなることを防ぎ、厚みに対して十分な回折効率を得ることができる。
<成分(d-1)>
光重合開始剤とは、光によって化学反応を起こすカチオン、アニオン、ラジカルを発生するものをいい、上述の重合性モノマーの重合に寄与する。光重合開始剤の種類は特に制限はなく、重合性モノマーの種類等に応じて適宜選択することができる。
本発明においては、光重合開始剤として、少なくともオキシムエステル系光重合開始剤を1種以上用いる。
本発明においては、光重合開始剤の全量に対して、オキシムエステル系光重合開始剤を0.003重量%以上用いることが好ましく、より好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1~100重量%である。
光重合開始剤として、オキシムエステル系光重合開始剤と共にその他の光重合開始剤を用いる場合、その他の光重合開始剤としては、後述のカチオン光重合開始剤、アニオン光重合開始剤、ラジカル光重合開始剤が挙げられる。その他の光重合開始剤のうち、マトリックスを形成する反応を阻害しにくいという理由から、ラジカル光重合開始剤を使用することが好ましく、中でも、ホスフィンオキシド化合物がより好ましい。
光重合開始剤としては特に記録波長におけるモル吸光係数が1000L・mol-1・cm-1以下である化合物がより好ましい。モル吸光係数が1000L・mol-1・cm-1以下であることにより、十分な回折効率を得られる量を混合した場合に生じる、記録波長におけるホログラム記録媒体の透過率の低下を抑制することができる。
(オキシムエステル系光重合開始剤)
オキシムエステル系光重合開始剤は、構造の一部に-C=N-O-を有していればよく、中でも記録感度が優れているため、下記(式d)または(式f)で表される化合物が好ましい。
Figure 0007290072000008
((式d)中、Xは単結合;置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有しても良いアルケニレン基-(CH=CH)-、置換基を有しても良いアルキニレン基-(C≡C)-、及びこれらの組み合わせ(nは1~5の整数を表す。)からなる群から選ばれる2価の基;を表す。
は芳香環及び/またはヘテロ芳香環を含む1価の有機基を表す。
は、水素原子、或いはそれぞれ置換基を有してもよい、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数2~12のアルコキシカルボニル基、炭素数3~12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3~12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7~12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3~12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2~12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3~12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3~12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7~12のアリールチオカルボニル基、炭素数3~12のヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルチオアルコキシ基、-O-N=CR3233、-N(OR34)-CO-R35及び下記(式e)で表される基(R32及びR33、並びにR34及びR35は、それぞれ置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基を表し、互いに異なっていてもよい。)からなる群から選ばれる基を表す。
Figure 0007290072000009
((式e)中、R30及びR31は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基を表す。)
は、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2~12のアルカノイル基、炭素数3~25のアルケノイル基、炭素数3~8のシクロアルカノイル基、炭素数7~20のアリーロイル基、炭素数3~20のヘテロアリーロイル基、炭素数2~10のアルコキシカルボニル基及び炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基を表す。)
Figure 0007290072000010
((式f)中、Rは、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~25のアルケニル基、炭素数3~20のヘテロアリール基又は炭素数4~25のヘテロアリールアルキル基;もしくはYまたはZと結合し、環を形成する基を示す。
は、炭素数2~20のアルカノイル基、炭素数3~25のアルケノイル基、炭素数4~8のシクロアルカノイル基、炭素数7~20のアリーロイル基、炭素数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2~20のヘテロアリール基、炭素数3~20のヘテロアリーロイル基または炭素数2~20のアルキルアミノカルボニル基を示し、これらはいずれも置換基を有していてもよい。
は、置換基を有していてもよい、2個以上の環が縮合してなる、2価の芳香族炭化水素基、及び/又は芳香族複素基を示す。
Zは、置換基を有していてもよい芳香族基を示す。)
オキシムエステル系光重合開始剤の具体例としては、1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(Oーベンゾイルオキシム)グルタル酸メチル、1-(9-エチル-6-シクロヘキサノイル-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(Oーアセチルオキシム)グルタル酸メチル、1-(9-エチル-6-ジフェニルアミノー9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)ヘキサン、1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、1-(9-エチル-6-ベンゾイル-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)エタノン、1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-クロロアセチルオキシム)グルタル酸メチル、1-(9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)-3,3-ジメチルブタン酸、1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)グルタル酸エチル、1-(4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム))-1,2-オクタンジオンもしくは特開2010-8713号公報、特開2009-271502号公報に記載の化合物などが挙げられる。
上記の(式d)または(式f)で示される化合物の中でも、ケトオキシム構造を有するものがより好ましい。
(好適なオキシムエステル系光重合開始剤)
上記オキシムエステル系光重合開始剤の中でも、特に、下記式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」と称す場合がある。)を用いることは好ましい態様である。
Figure 0007290072000011
(式(4)中、R21は、アルキル基を示す。R22は、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。R23は、-(CH)-基を示す。mは、1以上6以下の整数を示す。R24は、水素原子、又は任意の置換基を示す。R25は、結合するカルボニル基に対して共役する多重結合を有しない、任意の置換基を示す。)
化合物(4)は、上記式(4)中のR25がカルボニル基と共役しない構造であることで、記録後に光照射しても透過率が下がらないという長所を有する。化合物(4)は、メモリとしてのホログラム記録媒体において、再生を繰り返しても転送速度が低下しない、ARグラス導光板用途において屋外で使用しても着色しないという利点がある。
以下、式(4)中の各基について詳述する。
<R21>
21はアルキル基を示す。R21が、例えば芳香環基等のアルキル基以外の場合、R21が結合する窒素原子のsp性が高まり、式(4)のカルバゾール環からR21への共役が延長されることから、光照射後の分解物による発光が生じる。従って、R21はこのような共役系を有しないアルキル基が好ましい。
21のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル基、4-ブチルメチルシクロヘキシル基等の直鎖、分岐鎖及び環状のアルキル基が挙げられる。この中でも、炭素数が好ましくは1以上、より好ましくは2以上で、好ましくは18以下、より好ましくは8以下であること、特に直鎖で炭素数が1から4の範囲のアルキル基が、化合物(4)の結晶性の点から好ましい。
21のアルキル基は置換基を有していても良い。有していても良い置換基としては、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、芳香環基、及び複素環基等が挙げられる。この中でも、アルコキシ基が化合物の溶解性調節の容易さの点で好ましい。
好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
またフッ素原子で置換されたアルキル基は撥水性が高まり化合物の耐水性向上の点から好ましい。
<R22>
22はアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。R22は光重合開始剤が光照射されて発生するラジカル部位であり、ホログラム記録媒体用組成物中のラジカルの移動容易性の観点から分子量の小さいアルキル基であることが好ましい。
22のアルキル基の具体例としては、前述したR21と同義であり、有していても良い置換基も同義である。この中でも、炭素数が好ましくは1以上、4以下、より好ましくは2以下であることが、ラジカル移動度の点から好ましい。
化合物(4)の耐水性向上の観点からはR22はアリール基が好ましい。
22のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、インデニル基等が挙げられる。ラジカル移動度の点からはフェニル基が好ましい。
22のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。ベンジル基、ナフチルメチル基等のラジカルは特異な反応性が期待され好ましい。
22のアリール基、アラルキル基のアリール環部位への置換基としてはアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられるが、ラジカル移動度の点からは無置換が好ましい。
<R23及びm>
23は、-(CH-基を示す。R23が式(4)のカルバゾール環と共役可能な置換基の場合、カルバゾール環からR23の共役が延長されることから、光重合開始剤の吸収波長の長波長化が生じてしまう。したがって、R23は、このような共役系を有しない-(CH-基が好ましい。
また、mは、1以上6以下の整数を示す。この中でも好ましくは2以上、4以下である。mが上記好ましい範囲であることで、その先に置換している置換基R24の電子的効果が反映されやすくなる傾向がある。
<R24>
24は、水素原子、又は任意の置換基を示す。任意の置換基は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、アルキル基、アルコキシカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、芳香環基、及び複素環基等が挙げられる。
24は、これらの中でも、アルキル基、アルコキシカルボニル基、芳香環基、複素環基のいずれかであることが原料入手や合成容易さの点から好ましく、アルコキシカルボニル基であることが遠い電子的効果発現の点から特に好ましい。
24のアルキル基の具体例としては、前述したR21と同義であり、有していても良い置換基も同義である。この中でも、炭素数が好ましくは1以上、8以下、より好ましくは4以下であることが、化合物の溶解性調整の点から好ましい。
24のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数が好ましくは2以上、19以下、より好ましくは7以下であることが、化合物の溶解性調整の点から好ましい。
該アルコキシカルボニル基は置換基を有していても良く、有していても良い置換基としては、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。この中でも、アルコキシ基が溶解性調整の容易さの点で好ましい。
24のモノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基のアルキル基部分の具体例としては、前述したR21のアルキル基と同義であり、有していても良い置換基も同義である。この中でも、アミノ基に結合したアルキル基部分の炭素数が、好ましくは1以上、8以下、より好ましくは4以下のものである。アミノ基に結合したアルキル基部分の炭素数が上記好ましい範囲にあることで、溶解性が得られる傾向にある。
24の芳香環基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等の単環または縮合環が挙げられる。この中でも、炭素数は6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下であることが、化合物の溶解性の点から好ましい。
該芳香環基は置換基を有していても良く、有していても良い置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。この中でも、アルキル基が溶解性調整の容易さの点で好ましい。
好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基等が挙げられる。
24の複素環基としては、環中に1以上のヘテロ原子を有する複素環構造を少なくとも含む基が好ましい。複素環基に含まれるヘテロ原子は特に限定されず、S、O、N、Pなどの各原子を用いることができる。原料入手や合成容易さの点から、S、O、Nの各原子が好ましい。
24の複素環基としては、具体的には、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、キノリル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾチアゾリル基、等の単環または縮合環が挙げられる。この中でも、炭素数は1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下であることが、原料入手や合成容易さの点から好ましい。
該複素環基は置換基を有していても良く、有していても良い置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。この中でも、アルキル基が溶解性調整の容易さの点で好ましい。
好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基等が挙げられる。
<R25>
25は、結合するカルボニル基に対して共役する多重結合を有しない、任意の置換基を示す。これらの基であることでカルバゾール環以上に共役系が伸びない。よって、光照射後に生成する分解遺物の共役系が長くならないため、分解物の吸収波長が長波長化しない。これにより、記録後の吸収抑制効果が得られる。
25としては、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基等が挙げられる。これらの中でもアルキル基が化合物安定性の点で好ましい。
25のアルキル基の具体例としては、前述したR21と同義であり、有していても良い置換基も同義である。この中でも、炭素数が好ましくは1以上、より好ましくは2以上で、好ましくは18以下、より好ましくは10以下で、かつ分岐のアルキル基であることが、化合物の製造の容易さの点から好ましい。具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、アダマンチル基、1-エチルペンチル基が特に好ましい。
25のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、アルキルスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基のアルキル部分の具体例は、前述したR21と同義であり、有していても良い置換基も同義である。この中でも、炭素数が好ましくは3以上、18以下、より好ましくは8以下であることが、化合物の結晶性の点から好ましい。
化合物(4)の吸収波長域は、好ましくは340nm以上、さらに好ましくは350nm以上で、好ましくは700nm以下、さらに好ましくは650nm以下に吸収を有するものである。例えば、光源が青色レーザーの場合は少なくとも350~430mに吸収を有することが好ましい。緑色レーザーの場合は少なくとも500~550nmに吸収を有することが好ましい。吸収波長域が上述の範囲と異なる場合は、照射された光エネルギーを効率的に光重合反応に使いにくくなるため感度が低下しやすい傾向がある。
化合物(4)は、ホログラムの記録波長における、モル吸光係数が10L・mol-1・cm-1以上であることが好ましく、50L・mol-1・cm-1以上であることがより好ましい。このモル吸光係数は、20000L・mol-1・cm-1以下であることが好ましく、10000L・mol-1・cm-1以下であることがより好ましい。モル吸光係数が上記範囲であることで、有効な記録感度を得ることができ、媒体の透過率が低くなりすぎることを防ぎ、厚みに対して十分な回折効率を得ることができる傾向にある。
化合物(4)の溶解度は、25℃、1気圧の条件下における成分(a-1)及び成分(b-1)への溶解度が0.01重量%以上であることが好ましく、中でも0.1重量%以上であることがさらに好ましい。
一般的に用いられるオキシムエステル系開始剤のうち、上述の吸収極大を有するものは、一般にイソシアネート類、ポリオール類など成分(a-1)及び成分(b-1)を構成する材料や、(メタ)アクリル酸エステル等の成分(c-1)に対する溶解性が悪いことが多い。化合物(4)は、イソシアネート類、ポリオール類や(メタ)アクリル酸エステル等の成分(a-1)~(c-1)に対する優れた溶解性を有しているため、ホログラム記録媒体用組成物に好適に使用することができる。
化合物(4)で示される光重合開始剤の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
Figure 0007290072000012
Figure 0007290072000013
Figure 0007290072000014
Figure 0007290072000015
化合物(4)の合成方法は特に限定されず、一般的な合成方法の組み合わせにより製造可能である。具体的には、国際公開2009/131189号等に記載の方法が挙げられる。
例えば、以下の化学式に示すように、カルバゾール環へのR、R及びRを含むアシル基の導入は、フリーデルクラフツ反応により導入が可能である。フリーデルクラフツ反応については、
Andrew Streitwieser.Jr. et.al, Introduction to Organic Chemistry, Macmillan Publishing Company,NewYork,P652-653、
及び
Bradford p. Mundy et.al.,Name Reactions and Reagents in Organic Synthesis,A Wiley-Interscience Publication,P82-83
等に記載されている。
Figure 0007290072000016
メチレンへのニトロソ化は亜硝酸や亜硝酸エステルを用いた方法で可能である。
水酸基のアシル化は対応する酸ハライドや無水物と塩基を用いる方法を用いることができる。
以下の化学式に示すニトソロ化、アシル化については、特許公表2004-534797号公報、Organic Reaction VolumeVII, KRIEGER PUBLISHING COMPANY MALABAR, Florida,Chapter6等にも記載されている。
Figure 0007290072000017
上記R21~R25は、式(4)のR21~R25と同義である。
(カチオン光重合開始剤)
オキシムエステル系光重合開始剤とともに用いてもよいカチオン光重合開始剤は、公知のカチオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては芳香族オニウム塩等が挙げられる。芳香族オニウム塩の具体例としては、SbF 、BF 、AsF 、PF 、CFSO 、B(C 等のアニオン成分と、ヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物が挙げられる。中でも、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩等が好ましい。上記例示したカチオン光重合開始剤は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(アニオン光重合開始剤)
オキシムエステル系光重合開始剤とともに用いてもよいアニオン光重合開始剤は、公知のアニオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としてはアミン類等が挙げられる。アミン類の例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のアミノ基含有化合物、およびこれらの誘導体;イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、およびその誘導体;等が挙げられる。上記例示したアニオン光重合開始剤は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(ラジカル光重合開始剤)
オキシムエステル系光重合開始剤とともに用いてもよいラジカル光重合開始剤は、公知のラジカル光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては、ホスフィンオキシド化合物、アゾ化合物、アジド化合物、有機過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体等が用いられる。上記例示したラジカル光重合開始剤は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。前述したように、中でもホスフィンオキシド化合物が好ましい。
ホスフィンオキシド化合物としては、本発明の目的及び効果を損なわない限り、その種類に特に制限はないが、中でもアシルホスフィンオキシド化合物であることが好ましい。
アシルホスフィンオキシド化合物の例としては、下記(式b)で示されるモノアシルホスフィンオキシド、または下記(式c)で示されるジアシルホスフィンオキシドが挙げられる。これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
Figure 0007290072000018
((式b)中、Rは、炭素数1~18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1~4のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数7~9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、もしくはビフェニル基;ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基および炭素数1~12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基;を表す。
は、フェニル基;ナフチル基;ビフェニル基;ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基および炭素数1~12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基;炭素数1~18のアルコキシ基;フェノキシ基;ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基もしくは炭素数1~4のアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基;を示す。R及びRはリン原子と一緒になって環を形成していてもよい。
は、炭素数1~18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1~4のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数7~9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基;ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基および炭素数1~12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基;または、下記(式b-I)で示される基;である。
Figure 0007290072000019
((式b-I)中、Bは炭素数2~8のアルキレン基もしくはシクロへキシレン基;非置換またはハロゲン、炭素数1~4のアルキル基もしくは炭素数1~4のアルコキシ基で置換されているフェニレン基またはビフェニレン基;を表す。
7'及びR8'は、上述の(式b)におけるR7及びRで説明したものと同様の基を示す。
(式b)、(式b-I)で示される分子中において、R7及びR7'、R及びR8'は同一であってもよく、また異なっていてもよい。))
Figure 0007290072000020
((式c)中、R10は、炭素数1~18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1~4のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数7~9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、もしくはビフェニル基;ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基および炭素数1~12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基、炭素数1~18のアルコキシ基、もしくはフェノキシ基;ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基もしくは炭素数1~4のアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、もしくはシクロヘキシルオキシ基;を示す。
11およびR12は互いに独立に炭素数1~18のアルキル基;ハロゲンもしくは炭素数1~6のアルコキシ基で置換されている、炭素数1~4のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数7~9のフェニルアルキル基、フェニル基、ナフチル基、もしくはビフェニル基;ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基および炭素数1~12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、OまたはSを含有する5員または6員の複素環の基;を表す。)
上記(式b)または(式c)で示される化合物の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルエトキシホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンタ-1-イル)-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ジペンチルオキシフェニル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
上記の中でも、優れた記録感度を得られるため、モノアシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
<成分(e-1)>
成分(e-1)は、安定ニトロキシルラジカル基を有する化合物である。本発明のホログラム記録媒体用組成物が成分(e-1)を含むことで、成分(d-1)としてオキシムエステル系光重合開始剤を用いた場合のホログラム記録後のホログラム記録媒体の着色を抑制することができる。
また、成分(e-1)がイソシアネート反応性官能基を有する場合、このイソシアネート反応性官能基が成分(a-1)のイソシアネート基と反応して樹脂マトリックスに固定化されると共に、成分(e-1)の含有する安定ニトロキシルラジカル基により、記録感度を向上させて高いM/#を実現することができる。
成分(e-1)が有するイソシアネート反応性官能基としては、成分(b-1)が有するイソシアネート反応性官能基と同様のものが挙げられる。
成分(e-1)としては、その種類は特に限定されないが、具体例としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、4-スルファニル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メルカプト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-カルバモイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-(2,3-エポキシプロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-ヒドロキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、3-スルファニル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン1-オキシル、3-メルカプト-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン1-オキシル、3-カルボキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、3-カルバモイル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、3-(2,3-エポキシプロポキシ)-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、3-ヒドロキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル、3-スルファニル-2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル、3-メルカプト-2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル、3-カルボキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル、3-カルバモイル-2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシル、3-(2,3-エポキシプロポキシ)-2,2,5,5-テトラメチルピロリン-1-オキシルなどの安定ニトロキシルラジカル化合物が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
また、成分(e-1)としては、9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-N-オキシル(ABNO)、2-アザアダマンタン-N-オキシル(AZADO)、1-メチル-2-アザアダマンタン-N-オキシル(1-Me-AZADO)、2-アザノルアダマンタン-N-オキシル(nor-AZADO)等のAZADO類を用いることもできる。
これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
これらのうち、化合物の安定性およびイソシアネート基との反応性の観点から、TEMPOL、4-スルファニル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メルカプト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを用いることが好ましく、特にTEMPOLを用いることが好ましい。
<成分(f-1)>
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、成分(a-1)のイソシアネート基を有する化合物と成分(b-1)のイソシアネート反応性官能基を有する化合物との反応を促進する硬化触媒を成分(f-1)として更に含むことが好ましい。成分(f-1)の硬化触媒としては、ルイス酸として働くビスマス系触媒を用いることが好ましい。
ビスマス系触媒の例として、トリス(2-エチルヘキサナート)ビスマス、トリベンゾイルオキシビスマス、三酢酸ビスマス、トリス(ジメチルジオカルバミン酸)ビスマス、水酸化ビスマス、トリフェニルビスマス(V)ビス(トリクロロアレタート)、トリス(4-メチルフェニル)オキソビスマス(V)、トリフェニルビス(3-クロロベンゾイルオキシ)ビスマス(V)等が挙げられる。
中でも触媒活性の面から3価のビスマス化合物が好ましく、カルボン酸ビスマス、一般式Bi(OCOR)(Rは直鎖、分岐のアルキル基、シクロアルキル基、あるいは置換または無置換の芳香族基)で表されるものがより好ましい。ビスマス系触媒は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
硬化触媒としては、反応速度の調整のために、上記のビスマス系触媒とともに他の硬化触媒を併用することもできる。併用可能な触媒としては、本発明の主旨に反しない限り特に制限はないが、触媒の相乗効果を得るためには、構造の一部にアミノ基を有する化合物を使用することが好ましい。その例としては、トリエチルアミン(TEA)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(DMEDA)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン(TMHMDA)、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレン-トリアミン(PMDPTA)、トリエチレンジアミン(TEDA)、N,N’-ジメチルピペラジン(DMP)、N,-メチル、N’-(2ジメチルアミノ)-エチルピペラジン(TMNAEP)、N-メチルモルホリン(NMMO)、N・(N’,N’-ジメチルアミノエチル)-モルホリン(DMAEMO)、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(BDMEE)、エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル(TMEGDA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)等のアミン化合物を挙げることができる。これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<その他の成分>
本発明のホログラム記録媒体用組成物は上述の成分(a-1)~(f-1)以外に、本発明の主旨に反しない限り、その他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、ホログラム記録媒体の記録層を調製するための、溶媒、可塑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、接着促進剤などや、記録の反応制御のための、連鎖移動剤、重合停止剤、相溶化剤、反応補助剤、増感剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
その中でも連鎖移動剤を用いることが好ましい。中でもテルペノイド骨格を有する化合物を用いることがより好ましい。テルペノイド骨格を有する化合物は、テルペノイド骨格を有するものであればどのような化合物でもよい。具体的には、モノテルペン類(例えば、カンファー、メントール、リモネン、テルピネロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、テルピノレン、α,β,γ-テルピネン等);セスキテルペン類(例えば、ファルネソール、ネロリドール、カリオフィレン等);ジテルペン類(例えば、アビエチン酸、タキソール、ピマール酸、ゲラニルゲラニオール、フィトール等);トリテルペン類(例えば、スクアレン等);カロテノイド類等が挙げられる。これらの中では、テルピノレン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン等が特に好ましい。上記例示のテルペノイド骨格を有する化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
<ホログラム記録媒体用組成物における各成分の組成比>
本発明のホログラム記録媒体用組成物における各成分の含有量は、本発明の主旨に反しない限り任意であるが、各成分の含有量は以下の範囲であることが好ましい。
本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分(a-1)と成分(b-1)の含有量は、合計で通常0.1重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上で、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下である。この含有量を上記下限値以上とすることで、記録層を形成することが容易となり、上記の上限値以下とすることで、他の必須成分の含有量を確保することができる。
成分(a-1)のイソシアネート基数に対する成分(b-1)のイソシアネート反応性官能基数の比は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.5以上で、通常10.0以下、好ましくは2.0以下である。この比率が上記範囲内となることで、未反応の官能基が少なく、保存安定性が向上する。
本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分(c-1)の含有量は通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上で、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。成分(c-1)の量が上記下限値以上であることで十分な回折効率が得られ、上記上限値以下であることで記録層の相溶性が保たれる。
本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分(d-1)の含有量は、成分(c-1)の含有量に対して通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上で、通常20重量%以下、好ましくは18重量%以下、より好ましくは16重量%以下である。成分(d-1)の割合が上記下限値以上であることで、十分な記録感度が得られ、上記上限値以下であると過剰なラジカル発生による二分子停止反応に起因する感度低下を抑制できる。
本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分(e-1)の含有量は、成分(e-1)と成分(d-1)のモル比(成分(e-1)/成分(d-1))が通常0.1以上、特に0.2以上、とりわけ0.3以上で、通常10以下、特に8以下、とりわけ6以下となるような量であることが好ましい。
成分(e-1)/成分(d-1)が上記下限以上であれば、成分(e-1)を含有することによるM/#の向上効果を有効に得ることができ、上記上限以下であれば、記録目的の露光時にラジカル重合反応を進行させて、回折格子の形成に必要な屈折率変調度を得、十分な記録感度を得ることができる。
本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分(f-1)の含有量は成分(a-1)及び成分(b-1)の反応速度を考慮して決定することが好ましく、通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下で、好ましくは0.001重量%以上である。
本発明のホログラム記録媒体用組成物中の成分(a-1)~(f-1)以外の、その他の成分の総量は、30重量%以下であればよく、15重量%以下が好ましく、5重量%がより好ましい。
<ホログラム記録媒体用組成物の製造方法>
本発明のホログラム記録媒体用組成物の製造に当たり、成分(a-1)~(e-1)、好ましくは成分(a-1)~(f-1)はどのような組み合わせ、順序で混合してもよく、またその際に、その他の成分を組み合わせて混合してもよい。
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、例えば以下のような方法で製造することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
成分(b-1)及び成分(f-1)以外の全ての成分を混合し、A液とする。成分(b-1)と成分(f-1)を混合したものをB液とする。それぞれの液は脱水・脱気を行うことが好ましい。脱水・脱気を行わなかったり、脱水・脱気が不十分であると、媒体作成時に気泡が生成し、均一な記録層を得ることができないことがある。この脱水・脱気の際には各成分を損なわない限り、加熱、減圧を行ってもよい。
成分(e-1)については、少量成分であることから、組成物中の均一分散性を高めると共に、成分(a-1)との化学結合を確実に得るために、予め成分(a-1)の一部、例えば10~90重量%と、成分(f-1)の一部、例えば10~90重量%と成分(e-1)とを混合したマスターバッチとして、成分(b-1)、成分(e-1)及び成分(f-1)以外のすべての成分(成分(a-1)については上記マスターバッチの残部)を混合したA液と、成分(b-1)と成分(f-1)(成分(f-1)については上記マスターバッチの残部)を混合したB液と、混合することが好ましい。
A液及びB液の混合、或いはA液、B液及び成分(e-1)のマスターバッチの混合は、成形直前に行う。この際、従来法による混合技術を用いることも可能である。A液及びB液の混合時、或いはA液、B液及び成分(e-1)のマスターバッチの混合時には、残留ガスの除去のために、必要に応じて脱気を行ってもよい。さらにA液とB液或いは更に成分(e-1)のマスターバッチはそれぞれ、または混合後に異物、不純物を取り除くために、ろ過工程を経ることが好ましく、それぞれの液を別々にろ過することがより好ましい。成分(a-1)’として、過剰の成分(a-1)と成分(b-1)の反応による、イソシアネート官能性プレポリマーを使用することもできる。さらに成分(b-1)’として過剰の成分(b-1)と成分(a-1)の反応による、イソシアネート反応性プレポリマーを使用することもできる。
[ホログラム記録媒体用硬化物]
本発明のホログラム記録媒体用組成物を硬化させることで、本発明のホログラム記録媒体用硬化物を得ることができる。
本発明のホログラム記録媒体用硬化物の製造方法としては特に制限はなく、本発明のホログラム記録媒体用組成物の製造に当たり、前述のA液とB液、或いはA液とB液と成分(e-1)のマスターバッチを混合することで、これを硬化させてホログラム記録媒体用硬化物とすることができる。
この際、硬化反応を促進するために30~100℃で1~72時間程度加熱してもよい。
本発明のホログラム記録媒体用硬化物は、後述の本発明のホログラム記録媒体の製造方法における記録層の形成方法に従って製造することもできる。
本発明のホログラム記録媒体用組成物を硬化させてなる本発明のホログラム記録媒体用硬化物は、本発明のホログラム記録媒体用組成物におけると同様の理由から、成分(a-1)と成分(b-1)とで形成されるマトリックス中の成分(b-1)由来のPGユニットとTMGユニットとの合計含有量が30重量%以下、好ましくは27重量%以下、特に好ましくは25重量%以下であり、PGユニットとTMGユニットを含まないことが最も好ましい。
また、本発明のホログラム記録媒体用硬化物は、成分(a-1)と成分(b-1)とで形成されるマトリックス中の成分(b-1)に由来するCLユニットの含有量が20重量%以上、特に25重量%以上、とりわけ30~70重量%であることが好ましい。
本発明のホログラム記録媒体用硬化物中の成分(b-1)に由来するPGユニット、TMGユニット、CLユニットの含有量は、例えばホログラム記録媒体用硬化物をアルカリ加水分解を行い、得られたポリオール成分を核磁気共鳴(NMR)やガスクロマトグラフィ質量分析法(GC/MS)により分析して定量することができる。
[ホログラム記録媒体用積層体]
本発明のホログラム記録媒体用硬化物を記録層として支持体と積層することによりホログラム記録媒体用積層体とすることができる。支持体はホログラム記録媒体用硬化物よりなる記録層の一方の面に設けてもよく、両面に設けてもよい。
記録層及び支持体の詳細については後述する。
支持体にホログラム記録媒体用硬化物よりなる記録層を形成する方法は、本発明のホログラム記録媒体の製造方法におけると同様である。
[ホログラム記録媒体]
本発明のホログラム記録媒体用組成物に干渉露光することで、本発明のホログラム記録媒体を得ることができる。
以下に、本発明のホログラム記録媒体の好適態様について説明する。
本発明のホログラム記録媒体は、記録層と、必要に応じて、更に支持体やその他の層を備える。通常、ホログラム記録媒体は支持体を有し、記録層やその他の層は、この支持体上に積層されてホログラム記録媒体を構成する。ただし、記録層またはその他の層が、媒体に必要な強度や耐久性を有する場合には、ホログラム記録媒体は支持体を有していなくてもよい。その他の層の例としては、保護層、反射層、反射防止層(反射防止膜)等が挙げられる。
本発明のホログラム記録媒体の記録層は、好ましくは本発明のホログラム記録媒体用組成物により形成される。
<記録層>
本発明のホログラム記録媒体の記録層は、本発明のホログラム記録媒体用組成物により形成される層であり、情報が記録される層である。情報は通常、ホログラムとして記録される。後述の記録方法の項に詳述するとおり、該記録層中に含まれる重合性モノマーは、ホログラム記録などによってその一部が重合等の化学的な変化を生じるものである。従って、記録後のホログラム記録媒体においては、重合性モノマーの一部が消費され、重合体など反応後の化合物として存在する。
記録層の厚みには特に制限は無く、記録方法等を考慮して適宜定めればよいが、一般的には、通常1μm以上、好ましくは10μm以上で、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下の範囲である。記録層の厚みを上記下限値以上とすることで、ホログラム記録媒体における多重記録の際、各ホログラムの選択性が高くなり、多重記録の度合いを高くすることができる。記録層の厚みを上記の上限値以下とすることで、記録層全体を均一に成形することが可能となり、各ホログラムの回折効率が均一で且つS/N比の高い多重記録を行うことができる。
情報の記録、再生の際の露光による記録層の収縮率は0.5%以下であることが好ましい。
<支持体>
支持体は、媒体に必要な強度および耐久性を有しているものであれば、その詳細に特に制限はなく、任意の支持体を使用することができる。
支持体の形状にも制限は無いが、通常は平板状またはフィルム状に形成される。
支持体を構成する材料にも制限は無く、透明であっても不透明であってもよい。
支持体の材料として透明なものを挙げると、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフトエート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アモルファスポリオレフィン、ポリスチレン、酢酸セルロース等の有機材料;ガラス、シリコン、石英等の無機材料が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、アモルファスポリオレフィン、ガラス等が好ましく、特に、ポリカーボネート、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ガラスがより好ましい。
一方、支持体の材料として不透明なものを挙げると、アルミニウム等の金属;前記の透明支持体上に金、銀、アルミニウム等の金属、または、フッ化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の誘電体をコーティングしたものなどが挙げられる。
支持体の厚みにも特に制限は無いが、通常は0.05mm以上、1mm以下の範囲とすることが好ましい。支持体の厚みが上記下限値以上であれば、ホログラム記録媒体の機械的強度を得ることができ、基板の反りを防止できる。支持体の厚みが上記上限値以下であれば、光の透過量が保たれ、コストの上昇を抑えることができる。
支持体の表面に表面処理を施してもよい。この表面処理は、通常、支持体と記録層との接着性を向上させるためになされる。表面処理の例としては、支持体にコロナ放電処理を施したり、支持体上に予め下塗り層を形成したりすることが挙げられる。下塗り層の組成物としては、ハロゲン化フェノール、または部分的に加水分解された塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
支持体の表面処理は、接着性の向上以外の目的で行なってもよい。その例としては、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属を素材とする反射コート層を形成する反射コート処理;フッ化マグネシウムや酸化ジルコニウム等の誘電体層を形成する誘電体コート処理等が挙げられる。これらの層は、単層で形成してもよく、2層以上を形成してもよい。
支持体の表面処理は、基板の気体や水分の透過性を制御する目的で行っても良い。例えば記録層を挟む支持体にも気体や水分の透過性を抑制する働きを持たせることによりより一層媒体の信頼性を向上させることができる。
支持体は、本発明のホログラム記録媒体の記録層の上側および下側の何れか一方にのみ設けてもよく、両方に設けてもよい。但し、記録層の上下両側に支持体を設ける場合、支持体の少なくとも何れか一方は、活性エネルギー線(励起光、参照光、再生光など)を透過させるように、透明に構成する。
記録層の片側または両側に支持体を有するホログラム記録媒体の場合、透過型または反射型のホログラムが記録可能である。記録層の片側に反射特性を有する支持体を用いる場合は、反射型のホログラムが記録可能である。
支持体にデータアドレス用のパターニングを設けてもよい。この場合のパターニング方法に制限は無いが、例えば、支持体自体に凹凸を形成してもよく、後述する反射層にパターンを形成してもよく、これらを組み合わせた方法により形成してもよい。
<保護層>
保護層は、記録層の酸素や水分による感度低下や保存安定性の劣化等の影響を防止するための層である。保護層の具体的構成に制限は無く、公知のものを任意に適用することが可能である。例えば、水溶性ポリマー、有機/無機材料等からなる層を保護層として形成することができる。
保護層の形成位置は、特に制限はなく、例えば記録層表面や、記録層と支持体との間に形成してもよく、また支持体の外表面側に形成してもよい。保護層は支持体と他の層との間に形成してもよい。
<反射層>
反射層は、ホログラム記録媒体を反射型に構成する際に形成される。反射型のホログラム記録媒体の場合、反射層は支持体と記録層との間に形成されていてもよく、支持体の外側面に形成されていてもよいが、通常は、支持体と記録層との間にあることが好ましい。
反射層としては、公知のものを任意に適用することができ、例えば金属の薄膜等を用いることができる。
<反射防止膜>
透過型および反射型の何れのホログラム記録媒体についても、物体光および読み出し光が入射および出射する側や、あるいは記録層と支持体との間に、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつゴースト像の発生を抑制する働きをする。
反射防止膜としては、公知のものを任意に用いることができる。
<ホログラム記録媒体の製造方法>
本発明のホログラム記録媒体の製造方法に制限は無い。例えば、無溶剤で支持体上に本発明のホログラム記録媒体用組成物を塗布し、記録層を形成して製造することできる。塗布方法としては任意の方法を使用することができる。具体例を挙げると、スプレー法、スピンコート法、ワイヤーバー法、ディップ法、エアーナイフコート法、ロールコート法、及びブレードコート法、ドクターロールコート法などが挙げられる。
特に膜厚の厚い記録層を形成する場合、本発明のホログラム記録媒体用組成物を型に入れて成型する方法や、離型フィルム上に塗工して型を打ち抜く方法を用いることもできる。
本発明のホログラム記録媒体用組成物と溶剤又は添加剤とを混合して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥して記録層を形成して製造しても良い。この場合も塗布方法としては任意の方法を使用することができ、例えば、上述したのと同様の方法を採用することができる。
上記塗布液に用いる溶剤に制限はないが、通常は、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与え、樹脂基板等の支持体を侵さないものを使用することが好ましい。溶剤の例を挙げると、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;テトラフルオロプロパノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤;n-ヘキサン等の鎖状炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶剤;或いはこれらの混合溶剤などが挙げられる。
溶剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶剤の使用量に制限は無い。ただし、塗布効率、取り扱い性の面から、固形分濃度として1~1000重量%程度の塗布液を調製することが好ましい。
本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分(a-1)及び(b-1)からなる樹脂マトリックスが熱可塑性の場合は、例えば射出成形法、シート成形法、ホットプレス法などによって本発明のホログラム記録媒体用組成物を成形して記録層を形成することができる。
成分(a-1)及び(b-1)からなる樹脂マトリックスが揮発性成分の少ない光又は熱硬化性の場合は、例えば反応射出成形法、液体射出成形法によって本発明のホログラム記録媒体用組成物を成形して記録層を形成することができる。この場合、成形体が十分な厚み、剛性、強度などを有するならば、当該成形体をそのままホログラム記録媒体とすることができる。
ホログラム記録媒体の製造方法としては、例えば、熱により融解したホログラム記録媒体用組成物を支持体に塗布し、冷却して固化させて記録層を形成して製造する方法、液状のホログラム記録媒体用組成物を支持体に塗布し、熱重合させることで硬化させて記録層を形成して製造する方法、液状のホログラム記録媒体用組成物を支持体に塗布し、光重合させることで硬化させて記録層を形成して製造する方法なども挙げられる。
このようにして製造されたホログラム記録媒体は、自立型スラブまたはディスクの形態をとることができ、三次元画像表示装置や回折光学素子、及び大容量メモリ、その他に使用できる。
特に本発明のホログラム記録媒体用組成物を用いた本発明のホログラム記録媒体は、高いM/#を有すると共に、着色が抑制されたものであり、ARグラス導光板として有用である。
<大容量メモリ用途>
本発明のホログラム記録媒体に対する情報の書き込み(記録)および読み出し(再生)は、何れも光の照射によって行なわれる。
情報の記録時には、重合性モノマーの化学変化、すなわち、その重合および濃度変化を生じさせることが可能な光を、物体光(記録光とも呼ばれる。)として用いる。
例えば、情報を体積ホログラムとして記録する場合には、物体光を参照光と共に記録層に対して照射し、記録層において物体光と参照光とを干渉させるようにする。これによってその干渉光が、記録層内の重合性モノマーの重合および濃度変化を生じさせ、その結果、干渉縞が記録層内に屈折率差を生じさせ、前記の記録層内に記録された干渉縞により、記録層にホログラムとして記録される。
記録層に記録された体積ホログラムを再生する場合は、所定の再生光(通常は、参照光)を記録層に照射する。照射された再生光は前記干渉縞に応じて回折を生じる。この回折光は前記記録層と同様の情報を含むものであるので、前記回折光を適当な検出手段によって読み取ることにより、記録層に記録された情報の再生を行なうことができる。
物体光、再生光および参照光の波長領域はそれぞれの用途に応じて任意であり、可視光領域でも紫外領域でも構わない。これらの光の中でも好適なものとしては、例えば、ルビー、ガラス、Nd-YAG、Nd-YVO等の固体レーザー;GaAs、InGaAs、GaN等のダイオードレーザー;ヘリウム-ネオン、アルゴン、クリプトン、エキシマ、CO等の気体レーザー;色素を有するダイレーザー等の、単色性と指向性に優れたレーザー等が挙げられる。
物体光、再生光および参照光の照射量には何れも制限は無く、記録および再生が可能な範囲であればその照射量は任意である。照射量が極端に少ない場合には重合性モノマーの化学変化が不完全過ぎて記録層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない可能性があり、逆に極端に多い場合は、記録層の成分(本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分)が劣化を生じる可能性がある。従って、物体光、再生光および参照光は、記録層の形成に用いた本発明のホログラム記録媒体用組成物の組成や、光重合開始剤の種類、および配合量等に合わせて、通常0.1J/cm以上、20J/cm以下の範囲で照射する。
ホログラム記録方式としては、偏光コリニアホログラム記録方式、参照光入射角多重型ホログラム記録方式等がある。本発明のホログラム記録媒体を記録媒体として使用する場合にはいずれの記録方式でも良好な記録品質を提供することが可能である。
本発明のホログラム記録媒体は、M/#、光透過率が高く、色度の変化量が小さいという特徴を有する。
ホログラム記録によって生じる屈折率変調は、回折効率となって測定される。ホログラム記録は多重に記録することができる。多重の方法は、角度の固定された交差する光の入射角を変えながら行う角度多重、入射角度は変えずに場所を異動させながら行うシフト多重、波長を変えながら行う波長多重といった方法により行われるが、角度多重が簡便であり、これにより材料や各成分の性能を把握することができる。
回折効率の平方根を全多重に亘って合計した数値であるM/#は、記録容量の目安になる数値であるから、大きい方が媒体として良い性能であるといえる。一般的に重合性モノマーの含有率が高いほど回折効率は大きくなり、M/#も大きくなる。
本発明のホログラム記録媒体の記録層のM/#は、500μm厚の記録層として評価した場合、20以上、好ましくは30以上、更に好ましくは35以上である。なお、上述の通り、M/#の値は大きいほど好ましく、必要な記録容量に応じて上限は変わり得る。
このM/#は、後述の実施例で示される方法で測定される。
また、基板や保護層、反射層など、ホログラム記録媒体を構成する記録層以外の層は、M/#の値に大きく影響しないので、記録層以外の層構成が異なる媒体についても、M/#の直接の対比が可能である。
本発明のホログラム記録媒体における光透過率は重要な指標である。記録前の透過率は基板-空気界面の反射率と記録媒体中の未反応開始剤の吸収を起源とするため、基板-空気界面の反射率とホログラム記録媒体中の開始剤のモル吸光係数と濃度、ホログラム記録媒体の厚みから計算することができる。計算により算出された光透過率を設計透過率という。
ホログラム記録媒体の設計透過率は、基板-空気界面の反射率とホログラム記録媒体中の光重合開始剤のモル吸光係数とホログラム記録媒体中の光重合開始剤の濃度、及びホログラム記録媒体の厚さから次式により計算される。
T=R×10(-ε×c×d)
ここでTは設計透過率、Rは基板と空気界面での反射率、εは光重合開始剤のモル吸光係数、cはホログラム記録媒体中の重合開始剤の濃度、dはホログラム記録媒体の厚さをそれぞれ表す。
測定される記録前透過率が設計透過率より低い場合には、他の要因でのホログラム記録媒体が着色していることを示唆している。ホログラム記録媒体の着色はARグラス用導光板として使用したときの画質の低下につながる。したがって設計透過率と記録前透過率の差が小さいものほどよい性能のホログラム記録媒体であるといえる。
この光透過率の測定に用いる光としては、記録する波長あるいはその近傍であることが望ましい。但し、記録前は、ホログラム記録媒体を構成する記録層内における光重合開始剤の化学変化が顕著となるため、透過度が時間的に変化する。そのため、記録前の光透過率は、信頼と再現性のある測定値を得るため十分に短い時間(概ね1秒程度)で測定する必要がある。他方、記録後であれば、光重合開始剤が消費され、時間的な変化を引き起こすことがないので、光透過率の測定時間を気にすることはない。
一般に、設計透過率と記録前透過率は一致することが望ましいが、両者に差がある場合、その差は概ね3%以内であることが好ましく、2%以内であることがより好ましく、1%以内であることがさらに好ましい。本発明のホログラム記録媒体であれば、記録層の膜厚500μmとして評価した場合、記録前透過率は上記範囲内として通常3%以下、好ましくは1%以下を達成することができる。なお、この光透過率は、具体的には後述の実施例に示される方法で測定される。
本発明のホログラム記録媒体は、光重合開始剤としてオキシムエステル系光重合開始剤を用いた場合であっても、後掲の実施例に記載の方法で測定される色度の変化量Δx値、Δy値が0.0040以下であることが好ましく、0.0030以下がより好ましく、0.0025以下であることが更に好ましい。Δx値、Δy値が上記上限以下であれば、後露光後の着色が少なく、例えば、ARグラス導光板用途において、視野角の拡大、色ムラの低減、輝度の向上を図った上で、着色のない視野を提供することができる。
<ARグラス導光板用途>
本発明のホログラム記録媒体に対して、前述の大容量メモリ用途と同様にして体積ホログラムが記録される。
記録層に記録された体積ホログラムに対しては、所定の再生光を記録層に照射する。照射された再生光は前記干渉縞に応じて回折を生じる。この際、再生光の波長が記録光の波長と一致していなくても、前記干渉縞とブラッグ条件が成立すれば回折を生じる。したがって回折させたい再生光の波長と入射角に応じて、対応した干渉縞を記録しておけば、広い波長域の再生光に対して回折を生じさせることができ、ARグラスの表示色域を広げることができる。
再生光の波長と回折角に応じて、対応した干渉縞を記録しておけば、ホログラム記録媒体の外部から入射した再生光をホログラム記録媒体内部に導波させたり、ホログラム記録媒体内部を導波してきた再生光を反射、分波、拡大、縮小させたり、ホログラム記録媒体内部を導波してきた再生光をホログラム記録媒体の外部へ出射させることができ、ARグラスの視野角を広げることができる。
物体光、再生光の波長領域はそれぞれの用途に応じて任意であり、可視光領域でも紫外領域でも構わない。これらの光の中でも好適なものとしては、前述のレーザー等が挙げられる。再生光としてはレーザー等に限定されず、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)等の表示デバイスも好適なものとして挙げられる。
物体光、再生光および参照光の照射量には何れも制限は無く、記録および再生が可能な範囲であればその照射量は任意である。照射量が極端に少ない場合には重合性モノマーの化学変化が不完全過ぎて記録層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない可能性があり、逆に極端に多い場合は、記録層の成分(本発明のホログラム記録媒体用組成物の成分)が劣化を生じる可能性がある。従って、物体光、再生光および参照光は、記録層の形成に用いた本発明のホログラム記録媒体用組成物の組成や、光重合開始剤の種類、および配合量等に合わせて、通常0.1J/cm以上、20J/cm以下の範囲で照射する。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[使用原料]
実施例及び比較例で用いた組成物原料は以下の通りである。
成分(a-1):イソシアネート基を有する化合物
・デュラネート(登録商標)TSS-100:ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(NCO17.6%)(旭化成社製)
成分(b-1):イソシアネート反応性官能基を有する化合物
・プラクセルPCL-205U:ポリカプロラクトンジオール(分子量530)(ダイセル社製)
・プラクセルPCL-305:ポリカプロラクトントリオール(分子量550)(ダイセル社製)
成分(c-1):重合性モノマー
・2,4-ビス(4-ジベンゾチオフェニル)-1-フェニルアクリレート(BDTPA:分子量512.64)
・HLM101:2,2-ビス(4-ジベンゾチオフェニルチオメチル)-3-(4-ジベンゾチオフェニルチオ)プロピルアクリレート(分子量785.10)
成分(d-1):光重合開始剤
・HLI02: 1-(9-エチル-6-シクロヘキサノイル-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)グルタル酸メチル
・PIO16:1-(9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル)-1-(O-アセチルオキシム)グルタル酸メチル
成分(e-1):安定ニトロキシルラジカル基を有する化合物
・4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(TEMPOL):東京化成社製
・2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TEMPO)
・2-アザノルアダマンタン-N-オキシル(nor-AZADO)
成分(f-1):硬化触媒
・トリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマスのオクチル酸溶液(有効成分量56重量%)
成分(g-1):その他
・リノール酸メチル(LM):東京化成社製
リノール酸メチルは比較例1~3において、成分(e-1)の代替として用いた。
[ホログラム記録と評価方法]
実施例及び比較例で作製されたホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを使用して、以下に説明する手順でホログラム記録と、ホログラム記録媒体のホログラム記録性能の評価を実施した。
ホログラム記録は、波長405nmの半導体レーザーを用いて、ビーム1本あたりの露光パワー密度7.5mW/cmで図1に示す露光装置を使用して、二光束平面波のホログラム記録を行った。
媒体を-30°から30°まで、1°おきに同一箇所に61多重記録し、その時の回折効率の平方根の合計をM/#(エムナンバー)とした。
以下詳細に説明する。
(ホログラム記録)
図1は、ホログラム記録に用いた装置の概要を示す構成図である。
図1中、Sはホログラム記録媒体のサンプルであり、M1~M3は何れもミラーを示す。PBSは偏光ビームスプリッタを示し、L1は波長405nmの光を発する記録光用レーザー光源(波長405nm付近の光が得られるTOPTICA Photonics製シングルモードレーザー(図1中「L1」))を示し、L2は波長633nmの光を発する再生光用レーザー光源を示し、PD1、PD2、及びPD3はフォトディテクタを示す。また、1はLEDユニットを示す。
図1に示すように、波長405nmの光を偏光ビームスプリッタ(図中「PBS」)により分割し、2本のビームのなす角が37.3°になるように記録面上にて交差させた。このとき、2本のビームのなす角の2等分線が記録面に対して垂直になるようにし、更に、分割によって得られた2本のビームの電場ベクトルの振動面は、交差する2本のビームを含む平面と垂直になるようにして照射した。
ホログラム記録後、He-Neレーザーで波長633nmの光を得られるもの(メレスグリオ社製V05-LHP151:図中「L2」)を用いて、その光を記録面に対し30.0°の角度で照射し、回折された光をフォトダイオード及びフォトセンサアンプ(浜松ホトニクス社製S2281、C9329:図中「PD1」)を用いて検出することにより、ホログラム記録が正しく行なわれているか否かを判定した。ホログラムの回折効率は、回折された光の強度の透過光強度と回折光強度の和に対する比で与えられる。
(M/#の測定)
サンプルを光軸に対して動かす角度(二光束、すなわち図1のミラーM1及びM2からの入射光が交わる点における内角の二等分線とサンプルからの法線とがなす角度)を-30°から30°まで1度刻みで61多重の記録を行った。
61多重記録後、LEDユニット(図中1、中心波長405nm)を一定時間点灯させることで残存する開始剤とモノマーを消費しつくした。この工程を後露光と呼ぶ。LEDのパワーは50mW/cmとし積算エネルギーが3J/cmとなるように照射した。
続いて、図1におけるミラーM1からの光(波長405nm)を照射し、角度-30°から30°までの回折効率を計測した。得られた回折効率の平方根を多重記録全域にわたって合計したものをM/#とした。
複数用意した光学記録媒体を用いて、記録初期の照射エネルギーの増減、合計照射エネルギーの増減など、照射エネルギー条件を変えた複数回の評価を行い、記録1回ごとに数%以上の回折効率を維持しつつ、61多重記録までに含有モノマーをほぼ消費しつくす(61多重記録までにM/#がほぼ平衡に達する)条件を模索し、M/#として最大値が得られるようにした。そして、得られた最大値をその媒体のM/#とした。
(感度の計算)
前述のM/#に0.8を乗じた数値を、前述のM/#が80%に達するまでに照射したエネルギーで除した数値を感度と定義した。
(記録前透過率、記録後透過率の測定)
記録前の評価用サンプルの、入射光パワーに対する透過光パワーの比率を測定することで記録前透過率を測定した。
またホログラム記録後、後露光した評価用サンプルの、入射光パワーに対する透過光パワーの比率を測定することで記録後透過率を測定した。
(色度)
記録後の評価用サンプルの記録部分の色度をカラーコンピューター(スガ試験機社製SM-5)で測定した。光源は測色用標準イルミナントCを用い2度視野でCIEのXYZ表色系で測定し、ブランク(0.3101,0.3162)からの変化量Δx,Δyを求めた。
実施例及び比較例で作製したホログラム記録媒体を上記方法で評価した結果を以下の表に示す。M/#の測定には記録層厚さ0.5mmのホログラム記録媒体を用いた。
[実施例1]
<TEMPOLマスターバッチの調製>
デュラネート(TM)TSS-100:2.7gに、TEMPOL:0.3gを溶解させた。次いでここへトリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマスのオクチル酸溶液:0.002gを溶解させた後、減圧下、45℃で撹拌し、2時間反応させた。FT-IRでTEMPOLの水酸基由来の3450cm-1ピークの消失の観測により、TEMPOLの水酸基のイソシアネート基への反応を確認した。
<ホログラム記録媒体用組成物の調製>
デュラネート(TM)TSS-100:3.76gに、重合性モノマーHLM101:0.386g、光重合開始剤HLI02:0.0154gを溶解させてA液とした。
別に、プラクセルPCL-205U(ポリカプロラクトンジオール(分子量530)):3.00gとプラクセルPCL-305(ポリカプロラクトントリオール(分子量550)):0.33gを混合し(プラクセルPCL-205U:プラクセルPCL-305=90:10(重量比))、トリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマスのオクチル酸溶液:0.0004gを溶解させてB液とした。
A液、B液をそれぞれ減圧下、45℃で2時間脱気した後、A液とB液とTEMPOLマスターバッチを攪拌混合し、さらに数分間、真空で脱気した。
続いて、厚さ0.5mmのスペーサーシートを対向する2端辺部にのせたスライドガラスの上に、真空脱気した上記混合液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して80℃で24時間加熱してホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルは、カバーとしてのスライドガラス間に、厚さ0.5mmの記録層が形成されたものである。
このホログラム記録媒体用組成物は、(PG+TMG)/((a-1)+(b-1))が0重量%、(CL)/((a-1)+(b-1))が49.8重量%であり、成分(c-1)の重合性モノマーの含有量が4.6重量%、成分(d-1)の光重合開始剤が成分(c-1)の重合性モノマーに対して4重量%、成分(e-1)のTEMPOLと成分(d-1)の光重合開始剤の含有モル比が0.24であり、成分(a-1)のイソシアネート基に対する成分(b-1)の水酸基の比(OH/NCO)は1.0であった。
[実施例2~4]
TEMPOLマスターバッチを、TEMPOLと成分(d-1)の光重合開始剤の含有モル比が表1に示す値となるように配合したこと以外は実施例1と同様にホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
これらのホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表1に示す通りである。
[実施例8]
成分(d-1)のHLI02の代りにPIO16を、成分(c-1)の光重合開始剤に対するPIO16の含有割合が4.7重量%となるように配合したこと以外は実施例2と同様にホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
これらのホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表1に示す通りである。
[比較例1]
TEMPOLの代りに成分(g-1)のリノール酸メチルを用い、成分(d-1)の光重合開始剤に対するリノール酸メチルのモル比が0.72となるように配合したこと以外は実施例1と同様にしてホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
このホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表1に示す通りである。
[比較例3]
TEMPOLの代りに成分(g-1)のリノール酸メチルを用い、成分(d-1)の光重合開始剤に対するリノール酸メチルのモル比が0.72となるように配合したこと以外は実施例8と同様にしてホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
このホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表1に示す通りである。
[実施例5]
成分(c-1)の重合性モノマーとしてBDTPAを組成物中の成分(c-1)の含有量が3重量%となるように配合し、また、成分(c-1)に対する成分(d-1)の光重合開始剤含有割合が6.1重量%となるように配合したこと以外は実施例1と同様にしてホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
このホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表2に示す通りである。
[実施例6]
成分(e-1)のTEMPOLの代りにTEMPOを用い、TEMPOマスターバッチの製造に当たり、硬化触媒を混合しなかったこと、また、成分(c-1)に対する成分(d-1)の含有割合が4重量%となるように配合したこと以外は実施例1と同様にしてホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
このホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表2に示す通りである。
[実施例7]
成分(e-1)のTEMPOLの代りにnor-AZADOを用い、成分(c-1)の光重合開始剤に対するnor-AZADOのモル比が0.81となるように配合したこと以外は実施例1と同様にしてホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
このホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表2に示す通りである。
[比較例2]
成分(e-1)のTEMPOLの代りに成分(g-1)のリノール酸メチルを用いたこと以外は実施例5と同様にしてホログラム記録媒体用組成物及びホログラム記録媒体用組成物評価用サンプルを作製した。
このホログラム記録媒体用組成物の各成分組成は表2に示す通りである。
[実施例1~8、及び比較例1~3で作製したホログラム記録媒体の評価結果]
実施例1~8、及び比較例1~3で作製したホログラム記録媒体を上記方法で評価した結果を、下記表1,2に示す。
また、実施例1~4及び比較例1におけるTEMPOL/光重合開始剤モル比とΔx,Δyとの関係をグラフ化したものを図2に示す。なお、比較例1はTEMPOLを用いておらず、TEMPOL/光重合開始剤モル比は0となる。
Figure 0007290072000021
Figure 0007290072000022
表1,2より次のことが分かる。
実施例1~8、及び比較例1~3いずれの組成物も、記録前透過率が70%(設計透過率-1~-2%)となるよう、光重合開始剤濃度を調整して配合しており、測定値も配合を反映している。
比較例1では、露光後の色度のブランクからの変化量Δx、Δyが(0.0027,0.0043)である。この結果は後露光後のホログラム記録媒体がブランクと比べて黄色に着色していることを示している。ARグラス導光板の光学素子用途では媒体の着色は視野の着色につながり好ましくない。またメモリ用途では、405nmレーザーで信号の記録再生を行うため、着色による透過率の低下は転送速度の低下を招く。
一方、実施例1~8では成分(e-1)であるTEMPOL、TEMPO又はnor-AZADOの添加によって色度の変化量(Δx,Δy)が低下した。この結果は後露光後のホログラム記録媒体の着色が抑制されたことを示しており、上記のようなARグラス装着時の視野の着色や、メモリの転送速度低下を抑制できる。
比較例1と実施例1~8の結果から、この効果はTEMPOL、TEMPO又はnor-AZADOの添加によって発現したことが明らかである。
比較例2と実施例5の結果から、この効果は成分(c-1)の重合性モノマーの種類によらず発現することが分かる。
また、比較例3と実施例8の結果から、この効果は成分(d-1)のオキシムエステル系光重合開始剤の種類によらず発現することが分かる。
比較例1、実施例1~8の結果から、この効果は成分(e-1)の安定ニトロキシルラジカルの種類によらず発現することが分かる。
後露光後の着色は、成分(d-1)のオキシムエステル系光重合開始剤の開裂で生成したイミニルラジカル同士がダイマー(複合体)を形成するためと考えられるが、組成物中に配合した成分(e-1)の安定ニトロキシルラジカルがイミニルラジカルをトラップしてダイマーの形成を抑制することで、後露光後の着色が抑制されたと考えられる。
S ホログラム記録媒体
M1,M2,M3 ミラー
L1 記録光用半導体レーザー光源
L2 再生光用レーザー光源
PD1,PD2,PD3 フォトディテクタ
PBS 偏光ビームスプリッタ
1 LEDユニット

Claims (14)

  1. 下記成分(a-1)~(e-1)を含有することを特徴とするホログラム記録媒体用組成物。
    成分(a-1):イソシアネート基を有する化合物
    成分(b-1):イソシアネート反応性官能基を有する化合物
    成分(c-1):重合性モノマー
    成分(d-1):下記式(4)で表される化合物であるオキシムエステル系光重合開始剤を含む光重合開始剤
    成分(e-1):安定ニトロキシルラジカル基を有する化合物
    Figure 0007290072000023
    (式(4)中、R 21 は、アルキル基を示し、
    22 は、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示し、
    23 は、-(CH ) -基を示し、mは、1以上6以下の整数を示し、
    24 は、水素原子、又は任意の置換基を示し、
    25 は、結合するカルボニル基に対して共役する多重結合を有しない、任意の置換基を示す。)
  2. 式(4)中のR24が、アルキル基、アルコキシカルボニル基、芳香環基、及び複素環基のいずれかを示し、R25が、置換基を有していてもよいアルキル基を示す、請求項に記載のホログラム記録媒体用組成物。
  3. 成分(c-1)の重合性モノマーが(メタ)アクリル系モノマーである、請求項1又は2に記載のホログラム記録媒体用組成物。
  4. 成分(c-1)の重合性モノマーの分子量が300以上である、請求項1ないしのいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
  5. 成分(e-1)が、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項1ないしのいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
  6. 組成物中の成分(e-1)と成分(d-1)のモル比(成分(e-1)/成分(d-1))が0.1以上10以下である、請求項1ないしのいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
  7. 組成物中の成分(c-1)の含有量が0.1重量%以上80重量%以下であり、成分(d-1)の含有量が成分(c-1)に対して0.1重量%以上20重量%以下である、請求項1ないしのいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
  8. 組成物中の成分(a-1)と成分(b-1)の合計の含有量が0.1重量%以上99.9重量%以下であり、成分(a-1)に含まれるイソシアネート基数に対する成分(b-1)に含まれるイソシアネート反応性官能基数の比率が0.1以上10.0以下である、請求項1ないしのいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
  9. さらに下記成分(f-1)を含む、請求項1ないしのいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物。
    成分(f-1):硬化触媒
  10. 請求項1ないしのいずれかに記載のホログラム記録媒体用組成物を硬化させてなるホログラム記録媒体用硬化物。
  11. 請求項10に記載のホログラム記録媒体用硬化物よりなる記録層と支持体とを有するホログラム記録媒体用積層体。
  12. 請求項10に記載のホログラム記録媒体用硬化物または請求項11に記載のホログラム記録媒体用積層体に露光してなるホログラム記録媒体。
  13. イルミナントC光源で測定した2度視野でのCIE XYZ表色系色度のブランクからの変化量Δx及びΔyがいずれも0.0040以下である、請求項12に記載のホログラム記録媒体。
  14. ARグラス導光板である請求項12または13に記載のホログラム記録媒体。
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