JP2016190895A - 感光性材料、ホログラフィック記録媒体およびホログラフィック記録方法 - Google Patents

感光性材料、ホログラフィック記録媒体およびホログラフィック記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ホログラフィック記録用材料として用いた場合に大きなM#、高い記録感度、高い透過率が得られ、多重記録時のスケジューリングが不要で、予備露光を行う必要がなく、ノイズグレーティングの形成が少ない感光性材料を提供する。
【解決手段】ポリマーマトリックス、ラジカル重合性モノマー、光ラジカル重合開始剤および安定ラジカル種を含むホログラフィック記録用の感光性材料であって、記録露光終了時点から未反応で残存する記録可能成分を消費するためのポスト露光開始時点までの最大回折効率をηw、ポスト露光後の最大回折効率をηpとしたとき、比率ηp/ηwが10以上である感光性材料。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホログラフィック記録用材料として用いた場合に大きなM#、高い記録感度、高い透過率が得られ、ノイズグレーティングの形成が少ない感光性材料、それを用いた大容量(高密度)記録、高転送レートを実現可能なホログラフィック記録媒体およびホログラフィック記録方法に関する。
ホログラフィック記録は、コヒーレントな信号光および参照光を同時に照射(以下、記録露光という。)して生じる干渉縞を、記録媒体に回折格子として記録することにより行われる。情報の記録は、信号光にイメージ情報を持たせることによって行われる。情報の再生は、イメージ情報が記録された記録媒体に再生参照光を照射し、このイメージ情報を回折格子からの再生信号光として読み出すことによって行われる。
上記イメージ情報を1ページとして、ページ単位で一括記録、再生でき、かつ、記録媒体の同一箇所にページを重畳させて記録すること(以下、多重記録という。)ができることから、ホログラフィック記録は、従来のCD、DVD、ブルーレイディスクで用いられるビット・バイ・ビットの記録方式に替わる、高転送レートでかつ大容量の光記録方式として期待される技術である。
ホログラフィック記録用材料としては、記録媒体製造の簡便性、原料選択の多様性などが考慮され、ラジカル重合性のフォトポリマーが用いられる場合が多い。ラジカル重合性のフォトポリマーを用いたホログラフィック記録媒体では、一般的に、干渉縞の明部において、光強度に応じてラジカル重合性モノマー(以下、単にモノマーともいう。)の重合が進行してポリマーが生じるとともに、重合によるモノマー消費に伴って生じる濃度勾配を補償するように、干渉縞の暗部および露光周辺部から干渉縞の明部に向かってモノマーが拡散移動する。このようにして干渉縞の光強度パターンが屈折率変調回折格子として記録されるため、フォトポリマーを用いたホログラフィック記録媒体はライトワンス型が一般的である。
ホログラフィック記録媒体において、大容量(高密度)化のためには大きなM#(エムナンバー)が必要である。M#とは多重記録性能を表す指標であり、m多重記録された信号においてiページ目の回折効率をηiとしたとき、次式(I)で表される数値として定
義される。
Figure 2016190895
また、ホログラフィック記録媒体において、高転送レート化のためには短時間の記録露光で十分な回折効率が得られる必要があるため、高い記録感度および高い透過率が求められる。
フォトポリマーを用いたライトワンス型のホログラフィック記録媒体を用いて多重記録が行なわれる場合、一般的に、1ページ目の記録によってモノマーがある割合で重合して消費されるとともに濃度勾配を補う形で拡散移動し、2ページ目の記録によって残りの未反応のモノマーがある割合で重合して消費されるとともに濃度勾配を補う形で拡散移動し、3ページ目の記録によって更に残りの未反応のモノマーがある割合で重合して消費されるとともに濃度勾配を補う形で拡散移動し、というような操作又は現象が順次繰り返されて多重記録が行なわれる。
多重記録が繰り返されるほど残存モノマーは減少し、それに伴って記録感度が低下する。すなわち、各ページを同じ露光エネルギーで記録すると、多重記録の後半のページになるほど再生信号強度が減少することになり、記録再生システム上不都合が生じる場合がある。
多重記録された複数ページの一まとまりをブックと呼ぶことがある。一つのブックを記録するのに要する時間を、上記のモノマーがある割合で重合して消費されることによる濃度勾配を補うように拡散移動するために要する時間に比べて大幅に短くすることが、例えば、角度多重方式を採用し、高速で記録するなどの方法によって、技術的に可能となっている。
この場合、上記の残存モノマーの減少に伴う記録感度の低下という問題は、(少なくとも一つのブックを記録する限りにおいては)ある程度は緩和されるものと考えられる。
しかしながら、複数ブックの記録を考慮すると、各ブック間における記録媒体上の位置移動(一般的には直前に記録されたブックの隣接位置への移動)に要する時間を含む、あるブックの記録終了から次のブックの記録開始までに要する時間は、上記のモノマーがある割合で重合して消費されるとともに濃度勾配を補う形で拡散移動するのに要する時間に比べて無視できない程度に長い。そのため、ブックの記録が繰り返されるほど残存モノマーは減少し、それに伴って記録感度が低下する。すなわち、各ブックを同じ露光エネルギーで記録すると、後から記録されるブックになるほど再生信号強度が減少することになり、記録再生システム上不都合が生じる場合がある。
上記の不都合を解消するために、スケジューリングと呼ばれる手法が用いられる。これは、多重による再生信号強度の変化、つまり記録感度の変化を予測して、露光エネルギーをページ毎またはブック毎に変化させながら多重記録を行なうもので、これによって各ページまたは各ブックからの再生信号強度を均一化しようとするものである。
スケジューリングを行う場合、感度の低下が予測されるページまたはブックに対しては高い露光エネルギーで記録することになる。露光パワーと露光時間の積である露光エネルギーを変えるには、露光パワーと露光時間の少なくとも一方を変化させることが必要である。しかしながら、露光パワーをページ毎またはブック毎に変化させるには記録システム上複雑な制御が要求されるため、露光時間を調整することで露光エネルギーを変えるのが一般的である。つまり、高い露光エネルギーで記録するためには露光時間を長くすることになり、これは記録システムの転送レートの低下を引き起こすという問題につながる。
したがって、簡便な記録再生システムで大容量(高密度)記録、高転送レートを実現させるためには、スケジューリングを行わなくても各ページまたは各ブックからの再生信号強度が均一化される記録媒体であることが望ましい。
フォトポリマーを用いたホログラフィック記録媒体では、一般的に、記録目的の露光以外の要因により重合が生じてモノマーが意図せず消費されることを避けるため、少量の重合禁止剤を記録材料中に添加することが行なわれる。このような記録媒体では、新たに記録または追記しようとする領域において、記録に先立って重合禁止剤を失活させる予備露光と呼ばれる操作が別途必要となる。
記録媒体上の新たに記録または追記しようとする領域における重合禁止剤の濃度は、記録媒体の保管条件や保管期間、既に露光を行った領域の全記録領域に対する割合、最後に行った露光からの経過時間などにより複雑な影響を受けるため、通常、予備露光の条件を正確に予測して適切に設定することは困難である。予備露光の条件が不足であった場合、特に多重記録の初期において、記録感度が低下して必要な再生信号強度が得られず、記録したイメージ情報の一部が再生時に欠落するおそれがある。逆に、予備露光の条件が過剰であった場合、モノマーが浪費され、当初見込んでいた記録容量が得られなくなるおそれがある。
したがって、記録にかかる総所要時間を短縮し、また、記録媒体の性能を不足なく引き出すためには、予備露光を行う必要のない記録媒体であることが望ましい。
フォトポリマーを用いたホログラフィック記録媒体では、記録終了後に記録可能成分(光ラジカル重合開始剤およびラジカル重合性モノマーを指す。)が残存したままであると、再生参照光の照射によってノイズホログラムが記録されるなどの問題が生じるおそれがある。そのため、記録後に残存記録可能成分を消費し尽くすポスト露光と呼ばれる操作が別途必要となる。
フォトポリマーを用いたホログラフィック記録媒体に記録露光を行うと、一般的に、モノマーの重合とそれに伴う拡散移動が停止せず継続する、いわゆる暗反応と呼ばれる現象によって、露光終了後も暫くの間は露光箇所の屈折率変調度が徐々に上昇する。暗反応の進行中にポスト露光を行うと屈折率変調度の上昇が妨げられるため、再生に必要な信号強度を得るには、ポスト露光前に十分な暗反応の待ち時間(以下、拡散時間という。)が必要となる。記録箇所が変わるたびにポスト露光が必要となるホログラフィック記録システムでは、信号強度を大きくするために拡散時間を長くすることは、記録システムの転送レートの低下につながることから、短い拡散時間で再生に必要な信号強度が得られる記録媒体であることが望ましい。
特開2010−66326号公報 米国特許公開2010/273096号明細書 特開2013−103984号公報 特開2008−134623号公報 特開2005−099753号公報
特許文献1には、ラジカル重合性モノマー、光ラジカル重合開始剤、ポリマーマトリックス、および重合禁止剤を含む記録層を有し、重合禁止剤が、フェノール誘導体、ヒンダードアミンおよびニトロキシド化合物からなる群から選択され、共有結合を介してポリマーマトリックスに結合して構成されたホログラフィック記録媒体が開示されている。これに記載のホログラフィック記録媒体を用いると、予備露光を一定の条件で(特別な予備露光スケジュールなしに)行うことができるものの、予備露光自体は依然として必要である。また、多重記録時のスケジューリングに関して特に開示はない。
特許文献2には、ポリウレタンからなるマトリックス、光重合性モノマー、光重合開始剤、およびラジカル捕捉基(a radical trap group)とマトリックスに結合可能な固定化基(an immobilizing group)を含む少量の添加剤からなるフォトポリマーで構成されたホログラフィック記録媒体が開示されている。これに記載のホログラフィック記録媒体を用いると、マトリックスや光重合性モノマーの屈折率を操作することなく、あるいは光重合性モノマーの量を増やすことなく、M#を大きくすることができる。その理由は、光重合性モノマーの利用効率が向上するためであると説明されている。しかしながら、多重記録時のスケジューリングや予備露光の必要性に関して特に開示はない。
特許文献3には、ポリマーマトリックス、ラジカル重合性モノマー、および光ラジカル重合開始剤を含み、ポリマーマトリックスが側鎖に安定ニトロキシルラジカルを有し、安定ニトロキシルラジカルのラジカル重合性モノマーに対するモル比が所定の範囲内となるように構成されたホログラフィック記録媒体が開示されている。これに記載のホログラフィック記録媒体を用いると、多重記録時のスケジューリングや予備露光を行うことなくホログラフィック記録を行うことができる。しかしながら、記録感度をさらに向上させる目的で光ラジカル重合開始剤の添加量を増やすと、再生信号強度の均一性が崩れて多重記録時のスケジューリングが必要となる場合があり、十分なものではなかった。
特許文献4には、記録1分後と記録5分後の回折効率の比R1が≦4の範囲となる体積ホログラム記録媒体が開示され、記録媒体はテルペノイド骨格を持つ化合物と、1,1-ジメチルエテニル基を有する化合物又は少なくとも2個の二重結合を有し、この二重結合のうち2個の二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状もしくは非環状化合物を含む体積ホログラム記録媒体が開示されている。これに記載の体積ホログラム記録媒体を用いると、暗反応が抑制され、重合の進行が適度に抑えられることから、記録の安定性や信頼性を高めることができるとされているものの、拡散時間の短縮に関して特に開示はない。
フォトポリマーを用いたホログラフィック記録媒体では、重合によって生じたポリマーが微細なドメイン相の形成またはサイズ増大に関与して、散乱源が生じるおそれがある。多重記録を行う場合に、先行する記録露光の過程で散乱源が生じると、後続の記録露光において入射光(信号光および/または参照光を指す。)の一部が散乱源によって散乱され、散乱された光と入射光が干渉してノイズ干渉縞を生じることによって形成されるノイズグレーティング(以下、散乱ノイズグレーティングという。)の問題が生じる。散乱ノイズグレーティングは、記録時にはモノマーを浪費し、再生時には所謂ホログラフィック散乱を生じて記録媒体の透過率を低下させるとともに、読み出されるイメージ情報の品質を劣化させる。
他にも、前述の暗反応が過度に進行することにより、回折格子の屈折率変調構造が、記録露光時に与えられた干渉縞の光強度パターンからずれを生じることによって形成されるノイズグレーティング(以下、暗反応ノイズグレーティングという。)の問題が生じ得る。暗反応ノイズグレーティングは、記録時にはモノマーを浪費し、再生時には読み出されるイメージ情報の品質を劣化させる。
これらのノイズグレーティングの強度は、変調構造の屈折率差(Δn)に依存する。そのため、記録材料のM#が大きくなるほどノイズグレーティングによる悪影響を受け易くなるというジレンマがあった。
したがって、読み出されるイメージ情報の品質劣化を抑え、また、記録媒体の性能を不足なく引き出すためには、これらのノイズグレーティングの形成が少ない記録媒体であることが望ましい。
散乱ノイズグレーティングの形成を抑制するための方策としては、記録露光時には潜像を記録しておき、その後、例えばポスト露光の際に顕像化処理を行う方法が考えられる。この方法によれば、多重記録を行う場合に、先行する記録露光の過程で散乱源が生じるおそれが少なくなり、後続の記録露光において散乱光と入射光が干渉して生じるノイズ干渉縞を減らすことができるため、散乱ノイズグレーティングの形成を抑制することができる。
特許文献5には、記録露光(ホログラム露光)により潜像を生成する第1の工程と、その潜像の存在により重合が起こることによって干渉縞を屈折率変調として形成する第2の工程を有し、それらを乾式処理にて行うホログラム記録方法により記録する、増感色素、色素前駆体、重合開始剤、重合性化合物、およびバインダーから構成されたホログラフィック記録媒体が開示されている。
しかしながら、これに記載のホログラフィック記録媒体では、潜像の顕像化処理に熱印加、または記録露光とは実質的に異なる波長の光照射が必要であり、記録・再生システムが複雑になるという問題があった。また、顕像化処理前後の回折効率の比率((第2の工程後の最大回折効率η)/(第1の工程後の回折効率η))は5前後の例が示されているに過ぎず、十分なものではなかった。
本発明は、ホログラフィック記録用材料として用いた場合に大きなM#、高い記録感度、高い透過率が得られ、多重記録時のスケジューリングが不要で、予備露光を行う必要がなく、ノイズグレーティングの形成が少ない感光性材料、それを用いた大容量(高密度)記録、高転送レートを実現可能なホログラフィック記録媒体およびホログラフィック記録方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明者らは種々検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ポリマーマトリックス、ラジカル重合性モノマー、光ラジカル重合開始剤および安定ラジカル種を有する化合物を含むホログラフィック記録用の感光性材料であって、記録露光によるホログラム記録操作終了時点から未反応で残存する記録可能成分を消費するためのポスト露光開始時点までの時間内の最大回折効率をηw、ポスト露光終了後の回折効率をηpとしたとき、比率ηp/ηwが10以上であることを特徴とする感光性材料に関する。
また、本発明は、少なくとも一つの透明基板と、上記感光性材料からなる情報記録層とを具えることを特徴とするホログラフィック記録媒体に関する。
また、本発明は、上記ホログラフィック記録媒体に対し、記録露光終了から60秒以内にポスト露光を行うことを特徴とするホログラフィック記録方法に関する。
また、本発明は、上記ホログラフィック記録媒体に対し、重畳する複数の屈折率変調回折格子を、それぞれ本質的に同一の露光エネルギーで逐次的に記録露光を行った後、ポスト露光を行うことにより一括して形成させることを特徴とするホログラフィック記録方法に関する。
さらに、本発明は、上記ホログラフィック記録媒体に対し、少なくとも一の屈折率変調回折格子を、記録に先立って重合禁止剤を失活させるための予備露光を行うことなく形成させることを特徴とするホログラフィック記録方法に関する。
本発明の感光性材料を、ホログラフィック記録材料として用いた場合に高いM#が得られ、スケジューリングおよび拡散時間を不要とすることができ、更に予備露光を不要とすることができる記録材料を提供することができる。また、この記録材料を用いた記録媒体は、大容量(高密度)、高転送レートを実現可能なホログラフィック記録媒体及びホログラフィック記録方法を提供することができる。
多重記録用光学系の概略構成図である。 再生用光学系の概略構成図である。
本発明において、記録露光終了からポスト露光開始までの間は回折効率が低く抑えられ、かつ、ポスト露光後に回折効率が向上する理由については、以下のような仮説を考えることができる。
本発明の感光性材料およびそれを用いたホログラフィック記録媒体に記録露光を行うと、干渉縞の光強度パターンに応じて光ラジカル重合開始剤から重合開始可能なラジカル種(以下、重合開始種という。)が発生し、この重合開始種は近傍に存在する安定ラジカル種と速やかに結合するか、または、モノマーと反応して炭素ラジカル生長種を生成し、これが近傍に存在する安定ラジカル種と速やかに結合することにより、相対的に安定化される。そのため、記録露光終了からポスト露光開始までの間はモノマーの重合が実質的に殆ど進まず回折効率が低く抑えられる、言い換えれば、干渉縞の光強度パターンが潜像として記録される。
記録露光後に行われるポスト露光の過程においては、残存する光ラジカル重合開始剤から重合開始種が発生し、近傍にフリーな安定ラジカル種が残存するうちは、重合開始種は近傍に残存するフリーな安定ラジカル種と速やかに結合するか、または、モノマーと反応して炭素ラジカル生長種を生成し、これが近傍に残存するフリーな安定ラジカル種と速やかに結合することにより、相対的に安定化される。しかし、近傍にフリーな安定ラジカル種が略無くなると、残存する光ラジカル重合開始剤から発生する重合開始種は、モノマーと反応して炭素ラジカル生長種を生成するか、または、既存の相対的に安定化された重合開始種または炭素ラジカル生長種と交換反応を起こす。いずれにしても、重合開始種または炭素ラジカル生長種が安定化されずに存在するようになり、モノマーの重合が進行しポリマーを生じる。
記録露光時に干渉縞の暗部であった箇所では、フリーな安定ラジカル種が相対的に多く残存するため、炭素ラジカル生長種がモノマーと重合してポリマーを生じるようになるまでに要するポスト露光量が必然的に多くなる。すなわち、記録露光時の干渉縞の光強度パターンに応じて、ポリマーを生じるようになるまでに要するポスト露光量(露光パワーが一定の場合はポスト露光時間)に差異が生じる。
前述のように、モノマーは重合による消費に伴って生じる濃度勾配を補償するように拡散移動するので、より早くポリマーを生じるようになった箇所により多くのモノマーが供給されることになる。そのため、ポスト露光の過程において屈折率変調構造が形成されて回折効率が向上する、言い換えれば、潜像として記録された干渉縞の光強度パターンが顕像化されると考えられる。
多重記録を行う場合、それぞれの記録露光を本質的に同一の露光量で行うことにより、ポリマーを生じるようになるまでに要するポスト露光量を揃えることができる。すなわち、それぞれの記録露光に対応する屈折率変調構造を一括して(一斉かつ均一に)形成させることができる。
本発明によって、記録露光時には潜像を記録しておき、その後に顕像化処理を行うことが可能となることから、散乱ノイズグレーティングの形成を抑制することができる。
本発明によって、また、暗反応ノイズグレーティングの形成を抑制することも可能となる。その理由については、以下のような仮説を考えることができる。
安定ラジカル種と他のラジカル種との結合は平衡状態にあることが知られている。近傍にフリーな安定ラジカル種が略無くなると、残存する光ラジカル重合開始剤から発生する重合開始種、この重合開始種がモノマーと反応して生成する炭素ラジカル生長種、さらにこの炭素ラジカル生長種がモノマーと重合して生じるポリマーのラジカル生長末端は、既に安定ラジカル種と結合している他のラジカル種との間で交換反応することが可能となる。これらのうち、重合開始種や炭素ラジカル生長種は、交換反応によって安定ラジカル種と結合しても、再度の交換反応によって元の重合開始種または炭素ラジカル生長種をそれぞれ再生することができる。
一方、ポリマーのラジカル生長末端が交換反応によって安定ラジカル種と結合した場合、平衡によって元のポリマーのラジカル生長末端と安定ラジカル種とに開裂するが、ポリマーの拡散速度が相対的に遅いために、ポリマーのラジカル生長末端は高い確率で安定ラジカル種と再結合するであろう。この再結合の確率は、ラジカル生長末端を有するポリマーの相対的な拡散速度、すなわち分子量に依存し、当該ポリマーの分子量が大きいほど安定ラジカル種と結合している確率が高くなる。逆に言えば、拡散速度が相対的に速ければ、すなわち分子量が小さければ、安定ラジカル種と結合している確率は下がり、モノマーと重合できる確率は上がることになる。結果として、ポリマーの分子量分布は狭くなり、回折格子の屈折率変調構造が記録露光時に与えられた干渉縞の光強度パターンから生じるずれを小さくすることができるため、暗反応ノイズグレーティングの形成を抑制することができる。
以下、本発明の詳細並びにその他の特徴について、実施の形態に関連させて詳細に説明する。
本発明の感光性材料は、通常は、ポリマーマトリックス中に、ラジカル重合性モノマー、光ラジカル重合開始剤および安定ラジカル種を有する化合物を含む。
ポリマーマトリックスとしては、溶剤に溶解可能な樹脂を用いても、三次元架橋させた樹脂を用いてもよく、記録特性の点では三次元架橋させた樹脂を用いることが好ましい。
前記三次元架橋樹脂としては、イソシアネート−ヒドロキシル重付加物、イソシアネート−アミン重付加物、イソシアネート−チオール重付加物、エポキシ−アミン重付加物、エポキシ−チオール重付加物、エピスルフィド−アミン重付加物およびエピスルフィド−チオール重付加物などを挙げることができ、特に比較的穏やかな温度条件下での反応が可能で、生じるポリマーマトリックスの光学特性に優れ、臭気が比較的少ないイソシアネート−ヒドロキシル重付加物であることが好ましい。
イソシアネート−ヒドロキシル重付加物を構成するポリイソシアネート成分としては、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物またはその混合物が使用される。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、シクロヘキサン−1,3,5−トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネート化合物から得られる三量体、ビウレット体、アダクト体、プレポリマーなどが挙げられる。これらの1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イソシアネート−ヒドロキシル重付加物を構成するポリオール成分としては、1分子中に2以上のヒドロキシル基を有する化合物またはその混合物が使用される。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコールなどのジオール類;ビスフェノール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオールなどのトリオール類;これらの化合物のヒドロキシル基をポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、などが挙げられる。これらの1分子中に2以上のヒドロキシル基を有する化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい
上記ポリマーマトリックスは、芳香環を有し、かつ重合反応性基およびヒドロキシル基を有する化合物を構成単位として含むことができる。このような反応性芳香族化合物は、例えば下記式(1)、(2)または(3)に示すようなものであることができる。
Figure 2016190895
(式中、Arは1以上の芳香環を有する1または2価の基を表し、Z1、Z2はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、L1は酸素原子、硫黄原子または−(OZ3nO−を表し、Z3は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表し、L2は芳香環を有してもよい2価の基を表し、mは1〜2の整数を表わす。)
Figure 2016190895
(式中、Z1はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Z2はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。L1は酸素原子、硫黄原子または−(OZ3nO−を表し、Z3は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表し、L2は芳香環を有してもよい2価の基を表す。L3は単結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、炭素数1〜4のアルキレン基または9,9−フルオレニレン基を表す。)
Figure 2016190895
(式中、Z1はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Z2はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。L1は酸素原子、硫黄原子または−(OZ3nO−を表し、Z3は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表す。L2は単結合、または芳香環を有してもよい2価の基を表す。)
上記式(1)、(2)または(3)で表される反応性芳香族化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、同3−ブテン酸付加物、同ビニル安息香酸付加物、同ビニルフェノール付加物、同ビニルチオフェノール付加物、同ビニルアニリン付加物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、同3−ブテン酸付加物、同ビニル安息香酸付加物、同ビニルフェノール付加物、同ビニルチオフェノール付加物、同ビニルアニリン付加物、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、同3−ブテン酸付加物、同ビニル安息香酸付加物、同ビニルフェノール付加物、同ビニルチオフェノール付加物、同ビニルアニリン付加物、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、同3−ブテン酸付加物、同ビニル安息香酸付加物、同ビニルフェノール付加物、同ビニルチオフェノール付加物、同ビニルアニリン付加物、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、同3−ブテン酸付加物、同ビニル安息香酸付加物、同ビニルフェノール付加物、同ビニルチオフェノール付加物、同ビニルアニリン付加物などが挙げられる。
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物の主成分は、式(3)中のZ1が水素原子、Z2が水素原子、L1が酸素原子、L2が単結合で表される化合物である。
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルのメタクリル酸付加物の主成分は、化学式(3)中のZ1がメチル基、Z2が水素原子、L1が酸素原子、L2が単結合で表される化合物である。
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルの3−ブテン酸付加物の主成分は、化学式(3)中のZ1が水素原子、Z2が水素原子、L1が酸素原子、L2がメチレン基で表される化合物である。
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルのビニル安息香酸付加物の主成分は、化学式(3)中のZ1が水素原子、Z2が水素原子、L1が酸素原子、L2がフェニレン基で表される化合物である。
上記式(1)、(2)または(3)で表される反応性芳香族化合物の使用量は、ポリマーマトリックスに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましく、0.3〜5質量%が更に好ましい。これらの化合物の含有率が高過ぎると、前駆体の粘度が高くなってホログラフィック記録用材料の製造が煩雑になることがある。一方、これらの化合物を含有しないかまたは含有率が低過ぎると、ポリマーマトリックスとラジカル重合性モノマーやそれから生じる重合体との相溶性が低下し、ホログラフィック記録用材料に濁りを生じる場合がある。
本発明の感光性材料に含まれるラジカル重合性モノマーは、その種類には特に制限はないが、分子中に芳香環を有する高屈折率のラジカル重合性モノマーが好ましい。
分子中に芳香環を有する高屈折率のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、インデン、アセナフチレン、ジベンゾフルベン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンのジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンのジ(メタ)アクリレート、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィドなどが挙げられる。
好ましくは、スチレン系モノマーである。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ジビニルビフェニル、ビニルターフェニル、ビニルピレン、フェニル(ビニルフェニル)スルフィド、ベンジル(ビニルベンジル)スルフィド、N−ビニルカルバゾール、ビス(4−ビニルチオフェニル)スルフィド、2,4−ビス(フェニルチオ)スチレン、2−フェニルチオ−4−(2−ナフチルチオ)スチレン、2−(2−ナフチルチオ)−4−フェニルチオスチレン、2,4−ビス(2−ナフチルチオ)スチレンなどが挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーは、単独で用いても2種以上を組み合せてもよい。
ラジカル重合性モノマーの配合量は、感光性材料の全体に対して0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
なお、本明細書において、“モノマー”とは重合性を示すオリゴマーを含む。
本発明の感光性材料に含まれる光ラジカル重合開始剤は、記録時において上記ラジカル重合性モノマーの重合を開始させるためのものであって、光ラジカル重合開始機能を有するものであれば、何れを用いることもできるが、使用する光の波長に応じて適宜選択して用いることがよい。
光ラジカル重合開始剤の例としては、アゾ系化合物、アジド系化合物、有機過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物などが用いられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。中でも、増感剤を必要とせずに可視光領域で重合反応が生じるという理由から、チタノセン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物などが好ましい。
チタノセン化合物としては、その種類は特に限定はされないが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ジクロライド、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ジフェニル、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,4−ジフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ビスシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)などが挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、その種類は特に限定されないが、具体例としては、トリフェニルフォスフィンオキサイド、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオイサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
オキシムエステル系化合物としては、その種類は特に限定されないが、具体例としては、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)−1,2−オクタンジオン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)−3−シクロペンチル−1,2−プロパンジオン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−2−(O−アセチルオキシム)−4−シクロペンチル−1,2−ブタンジオンなどが挙げられる。
本発明の感光性材料に含まれる安定ラジカル種を有する化合物としては、公知の安定ラジカル種を有する化合物を用いることができる。
安定ラジカル種を有する化合物としては、分子量が400以上であるものが好ましく、より好ましくは分子量が500以上のものである。また、共有結合を介してポリマーマトリクスと結合できるものも好適に使用できる。
安定ラジカル種を有する化合物としては、その種類は特に限定されないが、具体例としては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−スルファニル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メルカプト−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルバモイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、3−ヒドロキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−スルファニル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン1−オキシル、3−メルカプト−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン1−オキシル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−カルバモイル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−(2,3−エポキシプロポキシ)−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−ヒドロキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル、3−スルファニル−2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル、3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル、3−メルカプト−2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル、3−カルバモイル−2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル、3−(2,3−エポキシプロポキシ)−2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシルなどの安定ニトロキシルラジカル化合物、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、1,3,5−トリフェニルフェルダジル、2,6−ジ−t−ブチル−α−(3,5−ジ−t−ブチル)−4−オキソ−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン−p−トリオキシル等の化合物が挙げられる。入手の容易さから、安定ニトロキシルラジカル化合物が好ましい。
安定ラジカル種を有する化合物は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用しても良い。
安定ラジカル種を有する化合物の含有率としては、この化合物の光ラジカル開始剤に対するモル比が0.01〜5.0の範囲であることが好ましく、0.1〜3.0の範囲であることがより好ましく、0.15〜2.0の範囲であることが更に好ましい。光ラジカル開始剤に対して安定ラジカル種を有する化合物の含有率が低すぎると記録露光終了前に平衡状態が大きく崩れラジカル重合性モノマーの反応が起こることがあるので好ましくない。また、安定ラジカル種を有する化合物の含有率が高過ぎると、ポスト露光時にホログラムが十分に成長せず、回折格子の形成に必要な屈折率変調度が得られない。
本発明の感光性材料は、特にホログラフィック記録媒体用の記録材料として好適に使用することができる。ホログラフィック記録媒体においては、低屈折率のポリマーマトリックスに加えて、高屈折率のラジカル重合性モノマーを含み、記録時にラジカル重合性モノマーを重合させることによって媒体中に屈折率変調構造を形成し、この屈折率変調構造によって複数の回折格子を高いコントラストで形成することができる。したがって、複数の回折格子に応じた複数のページ情報を高いSNRで記録し、再生することができる。
本発明のホログラフィック記録媒体は、上記感光性材料からなる情報記録層を有する。情報記録層とするために、上記感光性材料にはその他の成分を配合することができる。情報記録層となる感光性材料を、ホログラフィック記録用材料ともいう。
上記ホログラフィック記録用材料に必要に応じて配合される成分としては、光増感剤、可塑剤、相溶化剤、連鎖移動剤、重合促進剤、重合抑制剤、重合禁止剤、ラジカル補足剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、剥離剤、安定化剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤を更に含んでもよい。これらの添加剤は単独で用いても良いし、2種以上を任意の組み合わせおよび割合で使用しても良い。
次に、上記ホログラフィック記録用材料の製造方法について説明する。
最初に、マトリックス樹脂形成成分、例えば、イソシアネート−ヒドロキシル重付加物を構成するポリイソシアネート成分及びポリオール成分、ラジカル重合性モノマー、光重合開始剤、その他の成分、さらには必要に応じて、上記式(1)等で表わされる反応性芳香族化合物などを配合する。次いで、マトリックス樹脂形成成分に対し、前記ラジカル重合性モノマーあるいは反応性芳香族化合物の重合反応性基が重合する反応以外の反応による重合を生ぜしめてマトリックス樹脂を形成する。この場合、マトリックス樹脂は、マトリックス樹脂形成成分が重合性化合物及び光重合開始剤の共存下で重合することによって形成され、ラジカル重合性モノマーは実質的に未反応で残る。
ホログラフィック記録用材料においては、低屈折率のマトリックス樹脂に加えて高屈折率の重合性化合物を含み、記録時に重合性化合物を重合させることによって媒体中に回折格子を屈折率変調構造として形成することが好ましい。ホログラフィック記録用材料は、(1)マトリックス形成成分(イソシアネート、ポリオール、反応触媒(スズ含有触媒)など)、(2)ラジカル重合性モノマー、(3)光ラジカル重合開始剤、(4)安定ラジカル種、(5)その他の成分を適宜混合、溶解し、(1)マトリックス形成成分の反応のみを独立して行わせることにより行い、この時、(2)ラジカル重合性モノマー、(3)光ラジカル重合開始剤、(4)安定ラジカル種、(5)その他の成分は基本的に影響を受けず、そのままの形でマトリックス樹脂中に分散されているようにすることが好ましい。このホログラフィック記録用材料を2枚の基板に挟んだ形のもの等をホログラフィック記録媒体という。このホログラフィック記録用材料またはホログラフィック記録媒体に情報を記録する際、光を照射すると(3)光重合開始剤が開裂するなどして重合開始種(ラジカルなど)が形成され、(2)ラジカル重合性モノマーが重合する。
一方、ラジカル重合性モノマーや光重合開始剤が反応して減少してしまうと、ホログラフィック記録用材料としての性能が低下するので、これらを減少させることなくマトリックス樹脂を形成させることが好ましい。したがって、マトリックス樹脂を形成させる重合では、前記ラジカル重合性モノマーが重合する反応とは別の反応形態での重合が優先的に生じるように、反応触媒などを配合したり、反応温度を調整したりすることがよい。
上記反応触媒としては、例えば、イソシアネート−ヒドロキシル重付加反応の触媒として、スズ含有触媒、チタン含有触媒、亜鉛含有触媒、ジルコニウム含有触媒、アルミニウム含有触媒、コバルト含有触媒、ニッケル含有触媒、銅含有触媒及び鉄含有触媒などの各種金属含有触媒が使用できる。なかでも反応速度の点からスズ含有触媒が好ましい。スズ含有触媒としては、例えば、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレートなどのスズ含有触媒が使用できる。また、非金属含有触媒としては、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、イミダゾール誘導体、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルベンジルアミンなどの三級アミン化合物などを用いることができる。これらの触媒は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、本発明のホログラフィック記録媒体について説明する。ホログラフィック記録媒体は、透明基板と上記の感光性材料、すなわち上記ホログラフィック記録用材料からなる記録層を具える。本発明のホログラフィック記録媒体は、必要に応じて、上側基板、下側基板、反射膜などのその他の層を有することができる。
本発明のホログラフィック記録媒体は、透過型及び反射型のいずれであってもよい。
以下に、本発明のホログラフィック記録媒体に含まれ得る各基板、記録層の詳細な紹介をする。
基板材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性、コストの点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂が特に好ましい。また、基板表面をUV硬化樹脂などでハードコート処理したものや反射防止処理をしたものも適宜使用することができる。また記録再生方式に応じて、予め反射層が設けられた基板を用いることもできる。
記録層は、上記ホログラフィック記録用材料からなり、ホログラフィック記録を利用して情報が記録され得るものである。記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。記録層の厚みが1〜3000μmの範囲であれば、記録波長領域350nm〜800nmでの透過率が高く有利である。前記基板を用いない場合は、記録層表面にUV硬化樹脂などでハードコート処理したものや反射防止処理を施したものも適宜使用することができる。
ホログラフィック記録再生装置の一例を図1及び2を参照して説明する。
図1は多重記録用光学系の概略構成図を示すものであり、レーザ発生装置(波長405nmの半導体レーザ)1から発せられたレーザ光は、ミラー2で反射され 1/2波長板(HWP)3および偏光ビームスプリッタ(PBS)4でパワーの調整を受けた後、ビームエキスパンダ5(ビームエキスパンダ5は、スペイシャルフィルタを有しており、出射ビームが平面波となるように調整されている。)でビーム径が拡大された後、シャッタ6を通過して絞り7(開口径6mmφ)でビーム径が狭窄され、HWP8を通ってPBS9に至る。PBS9において、レーザ光は二つに分割され、分割された一方の光はシャッタ10を通過してミラー11で反射され、記録信号光Lsとしてホログラフィック記録媒体Sに照射される。PBS9で分割された他方の光は、1/4波長板(QWP)12を通ってミラー13で反射された後、再度QWP12、PBS9を通過し、記録参照光Lwとしてホログラフィック記録媒体Sに照射される。
この際、ホログラフィック記録媒体Sが取り付けられた回転ステージ14の角度θを所定の値に設定し、所定の時間シャッタ6を開いて露光させ、ホログラフィック記録媒体Sに1つめのホログラムを記録する。次に、θを次の所定の値に設定して、所定の時間シャッタ6を開いて露光させ、ホログラフィック記録媒体Sの同一箇所に2つめのホログラムを記録する。以下、所定の多重度になるまで上記の操作を繰り返すことで多重記録を行うことができる。
HWP3は光学系全体のパワー調整を、HWP8は、信号光と参照光のパワー比率調整を行うためのものである。QWP12は記録参照光Lw(または後述の再生参照光Lr)の偏光軸を調整するためのものである。
図2は再生用光学系の概略構成図を示すものであり、図1と同一の記号は同じ意味を有する。レーザ発生装置1から発せられたレーザ光は、ミラー2、HWP3、PBS4、ビームエキスパンダ5、シャッタ6、絞り7を経由してPBS9に至る。PBS9においてレーザ光は二つに分割され、分割された一方の光はシャッタ10によって遮断される。PBS9で分割された他方の光は、QWP12を通ってミラー13で反射された後、再度QWP12、PBS9を通過し、絞り15(開口径2.7mmφ)によりビーム径が狭窄され、再生参照光Lrとしてホログラフィック記録媒体Sに照射される。
この際、ホログラフィック記録媒体Sが取り付けられた回転ステージ14の角度θを所定の(再生したい)ホログラムに対応する値に設定し、所定の時間シャッタ6を開いて再生参照光Lrを媒体に照射する。記録されたホログラムによって回折された光(再生信号光)の強度を光パワーメータ16で、媒体を透過した光(透過光)の強度を光パワーメータ17で、それぞれ測定する。
本発明の感光性材料およびこれを使用した記録媒体はホログラフィック記録再生に好ましく用いられるが、ホログラフィック記録方法に関してはどの様な記録方法であっても構わない。例えば、二光束干渉法に基づくホログラフィック記録再生方法や、同軸上に参照光と情報光を配置し集光させるコアキシャルホログラフィック記録再生方法が好ましく用いられる。これらの記録方法において、ホログラフィック記録媒体に対し、重畳する複数の屈折率変調回折格子を、それぞれ本質的に同一の露光エネルギーで形成させることが好ましい。また、記録媒体への処理方法として、少なくとも一の屈折率変調回折格子を、予備露光を行うことなく形成させる方法をとることが好ましい。
重畳する複数の屈折率変調回折格子を、それぞれ本質的に同一の露光エネルギーで形成させる方法をとった場合、材料の特性としては、同一露光エネルギーで多重記録する場合の最大感度Smaxと平均感度Saveとの比(Save/Smax)が0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい
本発明の感光性材料は、記録露光によるホログラム記録操作終了時点から、未反応で残存する記録可能成分を消費するためのポスト露光開始時点までの最大回折効率をηw、ポスト露光後の回折効率をηpとしたとき、比率ηp/ηwが10以上である。
詳しくは、干渉露光によりホログラムを記録した後、未反応の前記ラジカル重合性モノマー及び光ラジカル重合開始剤を反応させるポスト露光を行うまでの時間内に測定される最大回折効率をηw、ポスト露光後の最大回折効率をηpとするとき、比率ηp/ηwが10以上である。より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上である。先に形成されたホログラムから回折される光と入射光との干渉によるノイズホログラムの生成を抑制するという点から、ηwは10%以下が好ましく、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下である。
ηpを大きくして、ηwを小さくするために、次のようなことを行うことが好ましい。
ηw、ηpは光ラジカル開始剤と安定ラジカル種を有する化合物のモル比によって変動させることができる。光ラジカル開始剤に対して安定ラジカル種を有する化合物の含有率が低すぎると記録露光終了前に平衡状態が大きく崩れ、ラジカル重合性モノマーの反応が起こりηwが大きくなる。一方、安定ラジカル種を有する化合物の含有率が高過ぎると、ポスト露光時にホログラムが十分に成長せずηpが低くなる。このため安定ラジカル種を有する化合物の含有率としては、この化合物の光ラジカル開始剤に対するモル比が0.01〜4.5の範囲であることが好ましく、0.1〜3.0の範囲であることがより好ましく、0.15〜2.0の範囲であることが更に好ましい。
また、ηpを大きくするにはラジカル重合性モノマーの添加量を多くすることで達成できる。ただし、ラジカル重合性モノマー添加量を多くすると、収縮率が増加するため、ラジカル重合性モノマーの添加量は収縮率を0.2%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.1%以下である。
そして、記録露光終了時点からポスト露光開始時点までの回折効率が、光ラジカル重合開始剤が感度を持たない波長の光で測定されたものであることがよい。これは再生光照射がポスト露光として働くのを防ぐためである。
本発明のホログラフィック記録方法は、上記した方法により行うことができるが、ホログラフィック記録媒体に対し、重畳する複数の屈折率変調回折格子を、それぞれスケジューリングをすることなく記録露光を行った後、60秒以内にポスト露光を行うことにより一括して形成させることが好ましい。記録露光終了後からポスト露光までの間隔は30秒以内であることがより好ましい。ポリマーの生長反応はポスト露光中に成されることから、60秒以内にポスト露光を行うことで従来型のホログラフィック記録材料では必須であったポリマー生長反応を待つための拡散時間を短縮することができる。
また、ポスト露光を記録露光波長とほぼ同じ波長、具体的には±50nm以内の波長で行うことが好ましく、30nm以内で行うことがより好ましい。
ポスト露光中は光ラジカル重合開始剤から重合開始種を発生させることでポリマー生長反応が促進されることから、ポスト露光は光ラジカル重合開始剤が感度を持つ波長で行わなければならない。一方で、ポスト露光に記録露光とは実質的に異なる波長の光照射が必要となると、記録・再生システムが複雑になる。
更に、ホログラフィック記録媒体に対し、少なくとも一の屈折率変調回折格子を、予備露光を行うことなく形成させることがよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
ホログラフィック記録用材料の調製例における略号等の説明。
HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製、屈折率nD=1.453)
G−400:ポリエーテルトリオール((株)ADEKA製、G−400、平均分子量430、屈折率nD=1.469)
OFHDO:2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール(東京化成工業(株)製、屈折率nD=1.342)
反応性芳香族化合物A:9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルの3−ブテン酸付加物(新日鉄住金化学(株)製)
マトリックス樹脂形成触媒:ジブチルスズジラウレート(東京化成工業(株)製)
光重合開始剤:1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−2−(o−アセチルオキシム)−3−シクロペンチル−1,2−プロパンジオン
可塑剤:o−アセチルクエン酸トリブチル(東京化成工業(株)製、屈折率nD=1.443)
重合禁止剤B:N−tert−ブチル−α−フェニルニトロン(東京化成工業(株)製)
連鎖移動剤C:2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(東京化成工業(株)製)
モノマーM(ラジカル重合性モノマー):フェニル(4−ビニルフェニル)スルフィド(新日鉄住金化学(株)製、屈折率nD=1.648)
BPEF−TEMPO(安定ラジカル種を有する化合物):下記式(4)で表わされる9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシとを脱水縮合させた化合物(新日鉄住金化学(株)製)。
Figure 2016190895
実施例1
マトリックス樹脂形成成分として、HMDI 34.5部(質量部)、G−400 46.1部、OFHDO 10.0部、及びマトリックス樹脂形成触媒 0.06部を配合し、安定ラジカル種を有する化合物として、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.1部、反応性芳香族化合物A 1.0質量部、モノマーM 2.0質量部、光重合開始剤 0.3部、及び可塑剤 6.0部を配合して、感光性材料の中間体を調製した。
この感光性材料の中間体を、シリコンフィルムスペーサー(厚み0.5mm)を介して貼り合わせた2枚のガラス基板(30mm×30mm)の空隙に導入した。窒素雰囲気下、60℃で2時間加熱処理を施し、ポリマーマトリックスを形成させて感光性材料とした。2枚のガラス基板の間に感光性材料からなる情報記録層が厚さ0.5mmで形成されたホログラフィック記録媒体を得た。
実施例2
マトリックス樹脂形成成分として、HMDI 34.4部、G−400 46.2部、安定ラジカル種を有する化合物として、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.05部を用いた以外は実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体を得た。
実施例3
マトリックス樹脂形成成分として、HMDI 34.4部、G−400 46.1部、安定ラジカル種を有する化合物として、BPEF−TEMPO 0.23部を用いた以外は実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体を得た。
実施例4
マトリックス樹脂形成成分として、HMDI 34.4部、G−400 46.2部、安定ラジカル種を有する化合物として、BPEF−TEMPO 0.12部を用いた以外は実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体を得た。
比較例1
マトリックス樹脂形成成分として、HMDI 34.5部、G−400 46.2部を用い、安定ラジカル種を有する化合物として、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを除いた以外は実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体を得た。
比較例2
安定ラジカル種を有する化合物として、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.5部を用いた以外は実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体を得た。
比較例3
安定ラジカル種を有する化合物としての4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの代わりに、重合禁止剤B 0.1部を用いた以外は実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体を得た。
比較例4
安定ラジカル種を有する化合物としての4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの代わりに、連鎖移動剤C 0.1部を用いた以外は実施例1と同様にしてホログラフィック記録媒体を得た。
実施例1〜4のホログラフィック記録用材料の組成を表1に、比較例1〜4のホログラフィック記録材料の組成を表2に示す。表1、2中の配合量の数字は質量部である。
Figure 2016190895
Figure 2016190895
ホログラフィック記録再生評価は、二光束干渉法に基づくホログラフィック記録再生評価機を用いて行なった。多重記録は、角度多重を用いて行った。
(単一記録評価方法)
ηw、ηpの評価は、図1、図2に示す記録・再生の光学系を用いて行った。記録には波長405nmの連続発振(CW)半導体レーザを用いた。記録光の記録媒体上での光強度(二光束の合計)を18mW/cm2とし、露光エネルギーが6mJ/cm2(露光時間=333ミリ秒)となるようにして干渉露光を行い、材料が影響を受けない波長である、波長633nmのHe−Arレーザを用い回折効率をモニターした。干渉露光後、30分経過後に波長405nmのLEDを用い、光強度を100mW/cm2としポスト露光を行い、ポスト露光中の回折効率の変化を波長633nmのHe−Arレーザを用いモニターした。干渉露光後30分経過時の回折効率をηw、ポスト露光を10分間行った後の回折効率をηpとし、回折効率増幅率ηp/ηwを算出した。
また、記録露光終了後、ポスト露光までの時間を60秒とし、ポスト露光を10分間行った後に得られる回折効率をη60、記録露光終了後、ポスト露光までの時間を30秒とし、ポスト露光を10分間行った後に得られる回折効率をη30、記録露光終了後、ポスト露光までの時間を15秒とし、ポスト露光を10分間行った後に得られる回折効率をη15とし、それぞれηpとの比η15/ηp、η30/ηp、η60/ηpを算出した。
(多重記録再生方法)
M#及び記録感度の評価には、図1、図2に示す記録・再生の光学系を用いて行った。尚、記録・再生には波長405nmの連続発振(CW)半導体レーザを用いた。記録光の記録媒体上での光強度(二光束の合計)を18mW/cm2とし、角度多重記録(101多重)を総露光エネルギーが600mJ/cm2となるようにして行った。記録されたホログラムの回折効率は、再生時の回折光及び透過光それぞれの強度を光パワーメータで読み取った値を用いて、次式により算出した。
回折効率(η)=〔回折光強度/(透過光強度+回折光強度)〕×100 (%)
この回折効率の値を用い、ホログラム記録媒体の多重記録性の指標として、M#(エムナンバー)の値を前述の式(I)によって計算した。
また、得られた回折効率の値を用い、記録感度を式(II)によって計算し、その最大値を最大感度(Smax)、記録開始からM/#が最大値の80%に達するまでの間の平均値を平均感度(Save)とした。
Figure 2016190895
ここで
ηは回折効率
Eは露光エネルギー [mJ/cm2
Lは媒体厚み [cm]
を表わす。
(多重記録条件)
予備露光:無し
記録スケジューリング:無し
多重度:100多重
角度方向:100多重(−29.7〜+29.7°、ステップ 0.6°)
記録光強度:18mW/cm2
記録総露光エネルギー:600mJ/cm2
ポスト露光エネルギー:LEDにて、90J/cm2
実施例及び比較例による媒体のηw、ηp、回折効率増幅率(ηp/ηw)、M#、最大感度(Smax)、平均感度(Save)、感度の均一性(Save/Smax)、を数値で比較した結果を表3、4に示す。
Figure 2016190895
Figure 2016190895
表3、4より明らかに、増幅率(ηp/ηw)が低く、ηwが高い場合(比較例1)は感度の均一性(Save/Smax)が損なわれ、実質的にスケジューリングを必要とすることがわかる。
また、増幅率が低く、ηwが低い場合(比較例2)は感度の均一性(Save/Smax)は高くスケジューリングを必要としないものの、増幅が行われないためにM/#が著しく低く、多重記録特性に劣ることがわかる。
安定ラジカル種が無いもの(比較例1)ではηwが高くなり増幅率が低くなることがわかる。また、光ラジカル開始剤に対して安定ラジカル種を有する化合物のモル比が高すぎる場合(比較例2)ηpが低くなり、増幅率が低下することがわかる。また安定ラジカル種に変え、連鎖移動剤(比較例3)、重合禁止剤(比較例4)を用いた場合はηp、ηwともに低く、増幅率も低い。
表5に、実施例1、2および比較例3、4におけるη15/ηp、η30/ηp、η60/ηpを示す。
Figure 2016190895
表5に示すように実施例1、2ではη15/ηp、η30/ηp、η60/ηpの値がそれぞれ0.9以上あり、記録露光後からポスト露光までの時間を短くしてもポスト露光後の回折効率に変化が無いことがわかる。これと比較して、比較例3、4ではη15/ηp、η30/ηp、η60/ηpが0.3以下となり、記録露光後からポスト露光までの時間を短くすると得られる回折効率が低下することがわかる。

Claims (12)

  1. ポリマーマトリックス、ラジカル重合性モノマー、光ラジカル重合開始剤および安定ラジカル種を有する化合物を含むホログラフィック記録用の感光性材料であって、記録露光終了時点からポスト露光開始時点までの最大回折効率をηw、ポスト露光後の最大回折効率をηpとしたとき、比率ηp/ηwが10以上であることを特徴とする感光性材料。
  2. 安定ラジカル種が、安定ニトロキシルラジカルである請求項1に記載の感光性材料。
  3. ラジカル重合性モノマーが、スチレン系モノマーである請求項1または2に記載の感光性材料。
  4. 比率ηp/ηwが30以上である請求項1〜3のいずれか一に記載の感光性材料。
  5. 比率ηp/ηwが50以上である請求項1〜3のいずれか一に記載の感光性材料。
  6. 記録露光終了時点からポスト露光開始時点までの回折効率が、光ラジカル重合開始剤が感度を持たない波長の光で測定されたものである請求項1〜5のいずれか一に記載の感光性材料。
  7. 少なくとも一つの透明基板と、請求項1〜6のいずれか一に記載の感光性材料からなる情報記録層とを具えることを特徴とするホログラフィック記録媒体。
  8. 請求項7に記載のホログラフィック記録媒体に対し、記録露光終了時点から60秒以内にポスト露光を開始することを特徴とするホログラフィック記録方法。
  9. 記録露光終了時点から30秒以内にポスト露光を開始することを特徴とする請求項8に記載のホログラフィック記録方法。
  10. 請求項7に記載のホログラフィック記録媒体に対し、重畳する複数の屈折率変調回折格子を、それぞれスケジューリングをすることなく記録露光を行った後、ポスト露光を行うことにより一括して形成させることを特徴とするホログラフィック記録方法。
  11. ポスト露光を記録露光波長の±50nm以内の波長で行うことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一に記載のホログラフィック記録方法。
  12. 請求項7に記載のホログラフィック記録媒体に対し、少なくとも一の屈折率変調回折格子を、予備露光を行うことなく形成させることを特徴とするホログラフィック記録方法。
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