JP2008134623A - 体積ホログラム光記録媒体、体積ホログラム記録層形成用組成物及び体積ホログラム記録材料 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、明部の重合反応にともなってラジカル重合性化合物の濃度勾配ができ、記録層中の暗部にあるラジカル重合性化合物は明部へと拡散移動し、反対に、明部にある他の成分は暗部へと拡散移動する。これにより、干渉縞の明部と暗部は異なる化合物により構成されて、異なる屈折率を持つようになる。
しかしながら、これらの化合物の添加によって、光反応の遅延や重合開始までの誘導期間の延長等の影響は出るものの、記録信号の経時変化抑制や信号のS/N比向上等に対する効果は十分ではなかった。
これも重合遅延、連鎖移動剤としての働きを期待して添加されているものと考えられるが、信号強度の変動や媒体の安定性、信頼性等に関しては、何の効果も言及されていない。
しかしながら、具体的な信号品質等については述べられておらず、また媒体組成物中にアミンを添加することから、媒体の耐久性低下等も懸念される。
特許文献5によれば、媒体に浸透する酸素がラジカル重合反応を停止することにより記録品質を向上し、多重記録性能に優れた媒体が得られるとされている。
しかしながら、酸素が媒体に均一に浸透しにくいため効果が発揮されなかったり、また浸透した酸素や水分が媒体の寿命を短くするという懸念があり、期待した効果が十分に得られるとは思われない。
そのため光重合反応を的確に制御することが信号記録の品質の向上に寄与すると考えられ、上に挙げた例は該重合反応を調整する働きを有すると思われる化合物を添加すること等の検討の一例といえる。上に挙げた例ではフェノール類やメルカプト化合物、アリル化合物、アミン系化合物に代表される一般に連鎖移動剤、重合遅延剤と称される化合物の添加について述べられているが、これらの化合物の添加によっても光反応の遅延や重合開始までの誘導期間の延長等の影響は出るものの、記録信号の経時変化抑制や信号のS/N比向上等に対する効果は十分ではなかった。
特に、明部以外での反応もしくは光照射後にも継続する反応等所謂、暗反応と呼ばれる反応によって招聘される回折効率の経時変化については、今まで十分制御、抑制されていたとはいえない。一旦記録された回折効率が経時と共に変動することは信号記録の信頼性の低下や、光活性化合物の効率的な使用を妨げることになる。
即ち、本発明の目的は、記録後の回折効率の比を適切な範囲とすることにより、信号記録後の回折効率等の強度変動を抑え、安定して高いS/N比を発現する、安定性・信頼性に優れる体積ホログラム光記録媒体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記体積ホログラム光記録媒体に用いられる体積ホログラム記録層形成用組成物を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記体積ホログラム光記録媒体に用いられる体積ホログラム記録材料を提供することにある。
本発明者らの検討によると、特にテルペノイド骨格を有する化合物(A1)と、下記一般式(I)で表される化合物(A2)と、少なくとも2個の二重結合を有し、さらに当該二重結合のうち2個の二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状もしくは非環状化合物(A3)と、から選ばれる少なくとも1つの構造を含む化合物が、暗反応を抑制し、適度に重合の進行を抑え、回折効率の比をR1≦4の範囲とすることができることを発見した。これによって、記録時に光が照射された時に、照射された部分だけが反応を生じ、未照射部では反応を生じないため、ビットエラーレートが向上し、記録品質が良好な記録媒体が得られるものと考えられる。また未照射部の無駄な光活性化合物の消費を抑えるために記録のダイナミックレンジを高くすることが可能であり、記録を書き込んだ後の回折効率の変化も抑制することができるため、高いS/N比を有し、記録の安定性や信頼性を高めることができるのではないかと思われる。
ここで、回折効率の比R1は、0.1≦R1≦4の範囲であることが好ましい。また、記録1分後と記録1日後の回折効率の比R2が0.1≦R2≦5であることが好ましく、さらに、R2が0.7≦R2≦4の範囲であることが好ましい。
そして少なくとも2個の二重結合を有し、さらに当該二重結合のうち2個の二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状もしくは非環状化合物(A3)が、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、リノール酸若しくはその誘導体、リノレン酸若しくはその誘導体から選ばれることがさらに好ましい。
そして、体積ホログラム記録層形成用組成物に、さらに樹脂マトリックス(C)及び光重合開始剤(D)を含むことがさらに好ましい。また重合性を有する光活性化合物(B)が、ラジカル重合性モノマーであることがさらに好ましい。
なお回折効率とは、記録された回折格子に対し光を照射した際に、回折された光の強度の入射光強度に対する比で与えられる数値である。
本実施の形態に用いられる回折効率の比R1は、記録1分後の回折効率(D/E1min)と、記録5分後の回折効率(D/E5min)の比をR1=(D/E5min)/(D/E1min)として算出した。R1が4より過度に大きい場合、記録信号の経時変化が大きくS/N比が低くなり、記録の安定性や信頼性が低下する。
さらに、本実施の形態の体積ホログラム光記録媒体は、体積ホログラム光記録において、記録1分後と記録1日後の回折効率の比R2が0.1≦R2≦5、より好ましくは0.3≦R2≦4、さらに好ましくは0.3≦R2≦3である。
即ち、記録後の回折効率の変動は必ずしも暗反応を抑制するのみにより達成されるものではない。暗反応を抑制できたとしても、重合性モノマーが光反応によって重合した重合体が、マトリックス中で拡散してしまうような場合、分解等の挙動を示す場合は結果として回折効率が変動する可能性がある。また、暗反応抑制効果を重視する結果、重合性の低下や、記録感度の著しい低下、等を招くこともあり、単に一般に言われる重合抑制剤や連鎖移動剤を用いれば良いというものでもない。
このように、重合制御のための添加剤は、重合体の分子量、重合性に大きな影響を与えうる。よって、回折効率の変動を抑制するためには、マトリックス樹脂や重合性モノマーの適切な選択に加え、重合制御のための添加剤を正しく選ぶ必要がある。
(1)上述の化合物(A1)、化合物(A2)、化合物(A3)(以下、これらをまとめて(A)成分と記すことがある。)に代表される特定の連鎖移動剤等を適量用い、暗反応を抑制する。
(2)光活性化合物(B)として、重合したときにマトリックス中に拡散しない重合性モノマーを用いる。
(3)樹脂マトリックス(C)として、ガラス転移温度(Tg)が適正な温度範囲となる系を選択する。
以下、(1)〜(3)を踏まえ、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
R1≦4の体積ホログラム光記録媒体を得るためには、記録層に、テルペノイド骨格を有する化合物(A1)と、前述した一般式(I)で表される化合物(A2)と、少なくとも2個の二重結合を有し、さらに当該二重結合のうち2個の二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状もしくは非環状化合物(A3)と、から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。
本実施の形態に使用するテルペノイド骨格を有する化合物(A1)は、テルペノイド骨格を有するものであればどのような化合物でもよい。
具体的には、例えば、モノテルペン類(例えば、カンファー、メントール、リモネン、テルピネロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、テルピノレン、α,β,γ−テルピネン等);セスキテルペン類(例えば、ファルネソール、ネロリドール、カリオフィレン等);ジテルペン類(例えば、アビエチン酸、タキソール、ピマール酸、ゲラニルゲラニオール、フィトール等);トリテルペン類(例えば、スクアレン等);カロテノイド類等が挙げられる。これらの中では、テルピノレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン等が特に好ましい。
本実施の形態における体積ホログラム記録層形成用組成物に使用される一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(I)の構造で表される化合物であれば特に限定されない。
本実施の形態において使用するのが好ましい、少なくとも2個の二重結合を有し、さらに当該二重結合のうち2個の二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状もしくは非環状化合物(A3)としては、具体的には以下のものが挙げられる。
また、光照射後の重合反応(暗反応)も抑制されるために、一旦記録した信号の強度変動も抑えられる。このため、記録信号の経時変化等を防ぐことができ、信頼性が向上する。さらに、記録部以外の反応が抑えられるために、光活性化合物が効率的に使用される。この結果、記録のダイナミックレンジも増大すると考えられる。
本実施の形態の体積ホログラム記録層形成用組成物に使用される重合性を有する光活性化合物(B)の種類は特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択することが可能であるが、生成する重合体の分子量が著しく小さく、記録後にマトリックス中に拡散してしまうような場合には記録後の回折効率が変動してしまう場合があるため、通常はモノマー重合体の分子量が500以上となるモノマーを用いる。ここでモノマー重合体の分子量は、記録後の光記録媒体から溶媒にて記録層を抽出し、抽出されたモノマー重合体の分子量をGPC等の公知の方法で測定することによって評価できる。重合性モノマーの例としては、以下のカチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマー等が挙げられる。
カチオン重合性モノマーの例としては、オキシラン環を有する化合物、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、ビニルエーテル類、N−ビニル化合物、オキセタン環を有する化合物等を挙げることができる。
中でも、少なくともオキセタン環を有する化合物を用いることが好ましく、さらには、オキセタン環を有する化合物と共にオキシラン環を有する化合物を併用することが好ましい。
このようなプレポリマーの例としては、脂環式ポリエポキシ類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物及びエポキシ化ポリブタジエン類等が挙げられる。
これらのプレポリマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記例示のカチオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アニオン重合性モノマーの例としては、炭化水素モノマー、極性モノマー等が挙げられる。
上記例示のアニオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ラジカル重合性モノマーとは、1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、例としては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。
上記例示のラジカル重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記例示したカチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーは、何れを使用することもでき、また、二種以上を併用してもよい。但し、樹脂マトリックスを形成する反応を阻害し難いという理由から、光活性化合物としては、ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
本実施の形態の樹脂マトリックス(C)は、溶剤に溶解可能な樹脂を用いても、三次元架橋させた樹脂を用いてもよい。
溶剤に溶解可能な樹脂としては、塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他のアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロース等が挙げられる。この中で好ましくは、ポリメチルメタクリレートである。
これらを総合的に勘案すると樹脂マトリックスのガラス転移温度Tgは通常−45℃以上、好ましくは−40℃以上、通常200℃以下の範囲にあることが好ましい。ガラス転移温度Tgが低すぎると、記録後の信号安定性(回折効率の安定性)が不足し、高すぎると記録がしにくかったり記録が出来ないことがある。
ここで、樹脂マトリックスのガラス転移温度Tgは実質ホログラム記録層のガラス転移温度Tgに等しく、ホログラム記録媒体から記録層のみを取り出し、適当な大きさに切り出したものを、動的粘弾性測定装置等公知の方法を用いて測定することによって評価できる。
1)樹脂マトリックスを構成するポリオール、ポリイソシアネート、エポキシ等の構造
2)樹脂マトリックスの架橋密度
3)樹脂マトリックスを構成するポリオール、ポリイソシアネート、エポキシ等の分子量
一般に、樹脂マトリックスの架橋密度が増大すると、樹脂マトリックスのガラス転移温度Tgは上昇する。即ち、架橋に寄与する3官能以上のポリオール、ポリイソシアネート等の割合を制御することによって、樹脂マトリックスのガラス転移温度Tgを調整することができる。3官能以上のポリオール、ポリイソシアネート等の割合は、通常、全マトリックス重量に対して0.1重量%以上であり、樹脂マトリックスの構造、樹脂マトリックス原材料の分子量等を考慮して100重量%までの範囲で適当な配合割合が選択される。
また、一般に、原材料の分子量が大きいほど樹脂マトリックスのガラス転移温度Tgは低下する。よって、原材料の分子量を所定の範囲に制御することによって、樹脂マトリックスのガラス転移温度Tgを調整することができる。
例えば、カチオンエポキシ重合は、BF3を主成分にした触媒を用いて室温で速く起こり、他のカチオン重合はプロトン存在下で進行し、エポキシ−メルカプタン反応とマイケル付加はアミン等の塩基により促進され、ヒドロシリル化は白金等の遷移金属触媒の存在化で速く進行し、ウレタンとウレア形成はスズ触媒が用いられるときに速く進行する。
これらのうち、適度な温度、時間で架橋反応することが可能である、イソシアネート−ヒドロキシル付加反応、イソシアネート−アミン付加反応、イソシアネート−チオール付加反応、エポキシ−アミン付加反応、エポキシ−チオール付加反応が好ましい。
以下これらの反応に用いることができる原料化合物について説明する。
イソシアネート−ヒドロキシル反応、イソシアネート−アミン反応、イソシアネート−チオール反応で使用できるポリイソシアネートは、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば、その種類は特に制限されない。1分子中のイソシアネート基の数としては、通常2以上であれば特に制限されないが、イソシアネート基の数が過度に少ないとマトリックスとして必要な硬さが得られなくなる場合がある。一方、イソシアネート基の数の上限は特に制限されないが、通常5以下が好ましい。イソシアネート基がマトリックス中に過度に多く残存すると、マトリックスの保存安定性を悪化させる可能性がある。
また、上記のイソシアネート類と、分子内に2個以上の活性水素を有する化合物とを反応させ、多官能の末端イソシアネート基を有するポリイソシアネート(プレポリマー)等も使用することができる。分子内に2個以上の活性水素を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、及び後述のポリオール類等等を用いることができる。
尚、イソシアネート基を有する化合物は、本実施の形態の効果を著しく損なわない範囲において、イソシアネート基以外の構成要素を含んでいてもよい。
イソシアネート−ヒドロキシル反応で使用できるポリオールは、1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するものであれば、その種類は特に制限されない。1分子中のヒドロキシル基の数としては、通常2以上であれば特に制限されないが、ヒドロキシル基の数が過度に少ないとマトリックスとして必要な硬さが得られなくなる場合がある。一方、ヒドロキシル基の数の上限は特に制限されないが、通常5以下が好ましい。ヒドロキシル基がマトリックス中に過度に多く残存すると、マトリックスの吸湿性が高くなり、記録の保存安定性に影響を及ぼす場合もある。
エポキシ−アミン反応、エポキシ−チオール反応に使用できるエポキシ化合物は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものであれば、その種類は特に制限されない。1分子中のエポキシ基の数としては、通常2以上であれば特に制限されないが、エポキシ基の数が過度に少ないとマトリックスとして必要な硬さが得られなくなる場合がある。一方、エポキシ基の数の上限は特に制限されないが、通常5以下が好ましい。エポキシ基がマトリックス中に過度に多く残存すると、記録の保存安定性に影響を及ぼす場合もある。
イソシアネート−アミン付加反応、エポキシ−アミン付加反応に使用できる化合物の例としては、1分子中に2つ以上のアミノ基を有するものであればその種類は特に制限されない。
イソシアネート−チオール付加反応、エポキシ−チオール付加反応に使用できる化合物の例としては、1分子中に2つ以上のチオール基を有するものであればその種類は特に制限されない。
光重合開始剤(D)は、公知の光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては、アゾ系化合物、アジド系化合物、有機過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、アルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物等の有機りん化合物、オキシムエステル系化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体等が用いられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、光重合開始剤としては、可視光領域で重合反応が生じるという理由から、チタノセン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル系化合物等が好ましい。
光重合開始剤としてチタノセン化合物を使用する場合、その種類は特に限定はされないが、例えば特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報等に記載されている各種のチタノセン化合物の中から、適宜選択して使用することができる。
アシルフォスフィンオキサイド化合物の具体例としては、トリフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドの様に1分子中に光による開裂点を一ヶ所しか持たない単官能開始剤と、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6ジクロルベンゾイル)−2,5ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド等の様に1分子中に光による開裂点を二ヶ所有する2官能性の開始剤が挙げられる。
オキシムエステル系化合物の具体例としては、以下の構造を有するものが挙げられる。
具体的には、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
上記の各種の光重合開始剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
光重合開始剤の使用量が過度に少ないと、ラジカルの発生量が少なくなるため、光重合の速度が遅くなり、ホログラム記録感度が低くなる場合がある。一方、光重合開始剤の使用量が過度に多いと、光照射により発生したラジカル同士が再結合したり、不均化を生じたりするため、光重合に対する寄与が少なくなり、やはりホログラム記録感度が低下する場合がある。
また、光重合開始剤が多すぎる場合は、一時に発生するラジカル量が不必要に多くなる結果、生成する重合体の分子量の著しい低下を招く場合もある。このような場合は、前述したような重合体の樹脂マトリックス中での拡散が生じやすくなり、回折効率の変動の原因となりうる。2以上の光重合開始剤を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにする。
樹脂マトリックス(C)100重量部に対する光活性化合物(B)の割合は、0.5重量部以上100重量部以下、中でも、1重量部以上50重量部以下であることが好ましい。光活性化合物の使用量が過度に少ないと、屈折率の変化が小さく、記録効率が低くなる場合がある。一方、光活性化合物の使用量が過度に多いと、未反応の光活性化合物が多く残り、記録材料とした時にブリードアウトの原因となる場合がある。
本実施の形態の体積ホログラム記録層形成用組成物は、本実施の形態の趣旨に反しない限りにおいて、上述の成分の他に、その他の成分を含有していてもよい。
例えば、本実施の形態の体積ホログラム記録層形成用組成物には、増感体の励起波長や励起エネルギーの制御、反応の制御、特性の改良等の必要に応じて、任意の添加剤を配合することができる。
例えば、増感体の励起を制御する化合物を添加することができる。この場合の例として、増感剤、増感補助剤等が挙げられる。
増感剤としては、公知の各種の増感剤の中から、任意に選択して用いることができ、記録に使用するレーザー光の波長と使用する開始剤の種類にもよるが、緑色レーザーを用いる系の場合、好ましい増感剤の具体例としては、特開平5−241338号公報、特開平2−69号公報、特公平2−55446号公報等に記載されている化合物が、青色レーザーを用いる系の場合は、特開2000−10277号公報、特開2004−198446号公報等に記載されている化合物が挙げられる。上記例示の各種の増感剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、反応の制御に使用する化合物を添加することができる。この場合の例としては、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、相溶化剤、反応補助剤等が挙げられる。
その他、特性改良上必要とされ得る添加剤の例としては、分散剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
添加剤の使用量は、本実施の形態の体積ホログラム記録層形成用組成物の全構成成分((A)+(B)+(C)+(D)+(その他))に対する比率で、通常0.001重量%以上、中でも0.01重量%以上、また、通常30重量%以下、中でも10重量%以下の範囲とすることが好ましい。二以上の添加剤を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにする。
本発明の一実施形態に係る体積ホログラム記録層形成用組成物を用いた体積ホログラム記録材料を以下「本実施の形態の体積ホログラム記録材料」という。
本実施の形態の体積ホログラム記録材料は、本実施の形態の体積ホログラム記録層形成用組成物のみからなっていてもよく、その他の成分を含有していてもよい。本実施の形態の体積ホログラム記録層形成用組成物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。また、その他の成分に特に制限は無いが、例としては光分散剤、色材等の各種の添加剤が挙げられる。その他の成分の含有量も、本実施の形態の効果を著しく損なわない限りにおいて任意である。
本実施の形態の体積ホログラム光記録媒体は、合成樹脂を含有して構成される記録層を少なくとも備えてなる。本実施の形態の体積ホログラム光記録媒体におけるその他の具体的な構成に制限は無く、任意である。以下、本発明の一実施形態に係る体積ホログラム光記録媒体(これを「本実施形態の光記録媒体」という場合がある。)について詳しく説明する。
記録層は、情報が記録される層である。記録層の厚みにも特に制限は無く、記録方法等を考慮して適宜定めればよいが、一般的には、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常1cm以下、好ましくは2,000μm以下の範囲である。記録層が過度に厚過ぎると、光記録媒体における多重記録の際、各ホログラムの選択性が低くなり、多重記録の度合いが低くなる場合がある。また、記録層が過度に薄過ぎると、記録層全体を均一に成形することが困難であり、各ホログラムの回折効率が均一で且つS/N比の高い多重記録が難しくなる場合がある。
支持体は、必要な強度及び耐久性を有しているものであれば、その詳細に特に制限はなく、任意の支持体を使用することができる。
具体的に、支持体の形状に制限は無いが、通常は平板状又はフィルム状に形成される。
支持体の厚みにも特に制限は無いが、通常は0.1mm以上、3mm以下の範囲とすることが好ましい。支持体が過度に薄過ぎると光記録媒体の機械的強度が不足し基板が反る場合があり、過度に厚過ぎると光の透過量が減りさらにコストが高くなる場合がある。
さらに、表面処理は、接着性の向上以外の目的で行なってもよい。
また、支持体は、本実施形態の光記録媒体の記録層の上側及び下側の何れか一方にのみ設けてもよく、両方に設けてもよい。但し、記録層の上下両側に支持体を設ける場合、支持体の少なくとも何れか一方は、活性エネルギー線(励起光、参照光、再生光等)を透過させるように、透明に構成する。
さらに、支持体にデータアドレス用のパターニングを設けてもよい。パターニング方法に制限は無いが、例えば、支持体自体に凹凸を形成してもよく、反射層(後述する)にパターンを形成してもよく、これらを組み合わせた方法により形成してもよい。
保護層は、酸素や水分による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための層である。保護層の具体的構成に制限は無く、公知のものを任意に適用することが可能である。例えば、水溶性ポリマー、有機/無機材料等からなる層を保護層として形成することができる。
さらに、透過型及び反射型の何れの光記録媒体についても、記録光及び読み出し光が入射及び出射する側や、或いは記録層と支持体との間に、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつゴースト像の発生を抑制する働きをする。
また、溶剤の種類にも特に制限はないが、通常は、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与え、且つ、支持体を侵さないものを使用することが好ましい。
また、溶剤の使用量にも特に制限は無い。但し、塗布効率や取り扱い性等の面から、塗布液の固形分濃度が1重量%以上、100重量%以下程度となるように、溶剤の使用量を調整することが好ましい。
この場合、成形体が十分な厚み、剛性、強度等を有する場合には、当該成形体をそのまま本実施形態の光記録媒体とすることができる。
また、上述の樹脂マトリックスを所望の形状に成形してから、その他成分等を含浸させることにより、本実施の形態の体積ホログラム記録材料からなる記録層を作製してもよい。
先ず、情報の記録時には、光活性化合物の重合及び濃度変化を生じさせることが可能な光を、物体光(記録光とも呼ばれる。)として用いる。特に、本実施形態の光記録媒体では、情報を体積ホログラムとして記録するため、物体光を参照光と共に記録層に対して照射し、記録層において物体光と参照光とを干渉させるようにする。これによってその干渉光が、記録層内の光活性化合物の重合及び濃度変化を生じさせ、その結果、干渉縞が記録層内に屈折率差を生じさせ、前記の記録層内に記録された干渉縞により、記録層にホログラムとして記録される。
[実施例1]
サンプル瓶1に、ヘキサメチレンジイソシアネート多量体に2−エチルヘキサノールを付加した化合物7.892g、パラクミルフェノールEO変性(n≒1)アクリレート1.667g、(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム0.083g、テルピノレン0.0083gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
その後、サンプル瓶1,2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて撹拌混合し、ベルジャーで数分間、真空で脱気した。
続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端においたアルミ蒸着をしたガラス板の上(アルミ蒸着面側)に、上述の真空脱気した液を流し込み、その上にさらにAR(反射防止)コートされたガラスをARコート面が上になるようにかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製した。
実施例1と同様に、サンプル瓶1に、ヘキサメチレンジイソシアネート4.743g、トリブロモフェニルアクリレート1.667g、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム0.083g、テルピノレン0.0083gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
また、サンプル瓶2には、分子量500のポリカプロラクトントリオール10.257g、ジオクチル錫ジラウレート0.003gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
続いて、実施例1と同様な操作を行って記録層を作製した。
実施例1と同様に、サンプル瓶1に、ヘキサメチレンジイソシアネート多量体に2−エチルヘキサノールを付加した化合物7.892g、トリブロモフェニルアクリレート1.667g、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム0.083g、γ−テルピネン0.0083gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
また、サンプル瓶2には、分子量500のポリカプロラクトントリオール7.108g、ジオクチル錫ジラウレート0.003gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
続いて、実施例1と同様な操作を行って記録層を作製した。
実施例1において、テルピノレンを入れないこと以外は実施例1と同様の操作を行って記録層を作製し、記録した。
実施例2において、テルピノレンを入れないこと以外は実施例2と同様の操作を行って記録層を作製し、記録した。
サンプル瓶1にヘキサメチレンジイソシアネートの多量体に2−エチルヘキサノールを付加した化合物8.418g、トリブロモフェニルアクリレート1.778g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.089g、テルピノレン8.9mgを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
次に、サンプル瓶2に分子量500のポリカプロラクトントリオール7.582g、ジオクチル錫ジラウレート0.0032gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
その後、サンプル瓶1,2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて撹拌混合し、ベルジャーで数分間、真空で脱気した。
続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスの上に、真空脱気した液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製した。
実施例4でテルピノレンをγ−テルピネンに替えた以外は同様の手順により、記録層を作製した。
実施例4でテルピノレンを1,4−シクロヘキサジエンに替えた以外は同様の手順により、記録層を作製した。
サンプル瓶1にヘキサメチレンジイソシアネート2.087g、ベンゾトリアゾリルチオエチルアクリレート0.421g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.042g、テルピノレン0.42mgを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
次に、サンプル瓶2に分子量約1000の1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール成分1:1からなるポリカーボネートポリオール5.440g、トリメチロールプロパン0.473g、ジオクチル錫ジラウレート0.0016gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
その後、サンプル瓶1,2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて撹拌混合し、数分間、真空で脱気した。続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスの上に、真空脱気した液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製した。
サンプル瓶1にヘキサメチレンジイソシアネートの多量体に2−エチルヘキサノールを付加した化合物6.21g、フルオレンアクリレート(オグソールEA−0200(大阪ガスケミカル社製)1.667g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.089g、テルピノレン8.3mgを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
次に、サンプル瓶2に分子量約800のポリカプロラクトントリオール8.79g、ジオクチル錫ジラウレート0.003gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
その後、サンプル瓶1,2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて撹拌混合し、数分間、真空で脱気した。
続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスの上に、真空脱気した液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製した。
サンプル瓶1にヘキサメチレンジイソシアネート2.785g、トリブロモフェニルアクリレート0.309g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.031g、リノール酸メチル6.18mgを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
次に、サンプル瓶2に分子量約1000の1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール成分1:1からなるポリカーボネートポリオール6.493g、トリメチロールプロパン0.721g、ジオクチル錫ジラウレート0.002gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
その後、サンプル瓶1,2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて撹拌混合し、数分間、真空で脱気した。続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスの上に、真空脱気した液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製した。
実施例4と同様に、サンプル瓶1に、ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体に2−エチルヘキサノールを付加した化合物8.418g、パラクミルフェノールEO変性(n≒1)アクリレート1.778g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.089g、1,4−シクロヘキサジエン0.0089gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
また、サンプル瓶2には、分子量500のポリカプロラクトントリオール7.582g、ジオクチル錫ジラウレート0.0032gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
続いて、実施例4と同様な操作を行って記録層を作製した。
実施例4でテルピノレンを入れないこと以外は同様の手順により、記録層を作製した。
実施例4でテルピノレンをBHTに替えた以外は同様の手順により、記録層を作製した。
サンプル瓶1にヘキサメチレンジイソシアネート2.785g、トリブロモフェニルアクリレート0.526g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.042g、ニトロベンゼン0.618mgを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
次に、サンプル瓶2に分子量約1000の1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール成分1:1からなるポリカーボネートポリオール6.493g、トリメチロールプロパン0.721g、ジオクチル錫ジラウレート0.002gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
その後、サンプル瓶1,2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて撹拌混合し、数分間、真空で脱気した。続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスの上に、真空脱気した液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製した。
サンプル瓶1にヘキサメチレンジイソシアネート1.501g、トリブロモフェニルアクリレート0.309g、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.062g、テルピノレン0.309mgを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
次に、サンプル瓶2に分子量約1000のポリプロピレンジオール6.751g、分子量約1000のポリプロピレントリオール(グリセリンで重合開始したもの)1.688g、ジオクチル錫ジラウレート0.002gを秤量し、各成分が溶解するまで撹拌した。
その後、サンプル瓶1,2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて撹拌混合し、数分間、真空で脱気した。続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスの上に、真空脱気した液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製した。
上述の体積ホログラム記録層のサンプルからホログラム記録層のみ(厚さおよそ500μm)を取り出し、幅1cm、長さ2cm程度の短冊状に切り出したものをサンプルとした。これを動的粘弾性測定装置(エスアイアイナノテクノロジー社製DMS−6100)を用いて温度範囲−100℃〜120℃、測定周波数10Hzで貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E’’)の温度依存性を測定した。この時のE’とE’’の比E’’/E’=tanδ値がピークを示す温度をマトリックス樹脂のガラス転移温度Tgとした。
上述の体積ホログラム記録層のサンプルの中、実施例1〜3及び比較例1、2には緑色レーザを用い、実施例4〜10及び比較例3〜6には青色レーザを用いて、それぞれ以下に説明する手順でホログラム記録を実施し、S/N比又は回折効率の比を判定した。
・データ記録
上記手順により記録層を形成した記録媒体を用い、コリニアホログラム法記録装置(パルステック工業株式会社製SHOT−1000)を用いて、以下の条件で情報記録を行った。
記録再生時のレーザ照射を、記録媒体の上面方向(ARコート面の上方向)から行うように記録媒体をホルダーにセットし、アルミ蒸着層(反射層)で焦点を結ぶように位置を調整した。読み取りは、書込み直後から120秒後に行った。尚、情報パターンは標準装備(約1600バイトのテスト情報パターン)のものを用いた。
記録再生用レーザ波長:532nm(Nd:YVO4)
記録レーザ強度:0.2mW〜0.4mW(パルス幅10nsec、繰返し間隔50μsec)
情報光/参照光強度比=0.63
記録パルス数:10パルス〜10,000パルス
読み取りレーザ強度:0.05mW〜0.2mW(パルス幅10nsec、繰返し間隔50μsec、CMOS画像の強度により調整)
読み取りパルス数:10〜200パルス
書込強度:0.4mW、200パルス
読込強度:0.05mW、200パルス
の時のS/N比を算出した。
・データ記録
図1は、ホログラム記録に用いた装置の概要を示す図である。
図1中、Sは体積ホログラム光記録媒体のサンプルを示し、M1〜M3は何れもミラーを示し、PBSは偏光ビームスプリッタを示し、L1は波長405nmの光を発する記録光用レーザー光源を示し、L2は波長633nmの光を発する再生光用レーザー光源を示し、PD1、PD2はフォトディテクタを示す。
ホログラム記録用の光源として、405nm付近の青色の光が得られるもの(ソニー社製シングルモードレーザーダイオード:図中「L1」)を用いた。
記録1分後の回折効率(D/E1min)と、記録5分後の回折効率(D/E5min)/の比R1は、R1=(D/E5min)/(D/E1min)として算出した。
また、記録1分後の回折効率(D/E1min)と、記録1日後の回折効率(D/E1day)の比R2は、R2=(D/E1day)/(D/E1min)として算出した。
TBPA:トリブロモフェニルアクリレート
BTTEA:ベンゾチアゾリルチオエチルアクリレート
PCP:パラクミルフェノールEO変性アクリレート
PCL1:ポリカプロラクトン系マトリックス(ヘキサメチレンジイソシアネート多量体+ポリカプロラクトントリオール(分子量500))
PCL1’:ポリカプロラクトン系マトリックス(ヘキサメチレンジイソシアネート多量体+ポリカプロラクトントリオール(分子量800))
PCL2:ポリカプロラクトン系マトリックス(ヘキサメチレンジイソシアネート+ポリカプロラクトントリオール)
PC:ポリカーボネート系マトリックス(ヘキサメチレンジイソシアネート+1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなるポリカーボネートポリオール+トリメチロールプロパン)
表2に示すように、実施例1〜実施例3では、比較例1,2に比べ、S/N比が明らかに高く、記録品質に優れた体積ホログラム光記録媒体であることが分かる。
図2は、実施例4、5について光照射後の回折効率の経時変化を示す図である。
また図3は、比較例3、4について光照射後の回折効率の経時変化を示す図である。
また、表3に、実施例4〜10、比較例3〜6におけるR1を示す。さらに、表4に、実施例4、比較例3、6におけるR2を示す。
これと比較して、比較例3,4では、回折効率の比がR1は4より大きく、R2は5より大きい。また比較例5ではニトロベンゼンの添加により信号記録がほとんど出来なくなった。さらに、比較例6ではR1は0.1≦R1≦4の範囲となり、回折効率の上昇が抑制されているが、経時での回折効率の低下が見られ1日後の回折効率は大幅に低下しR2の値は0.7を下回ってしまった。暗反応の抑制がなされても、マトリックス、モノマー等の選択が不適切な場合は回折効率の値が安定せず、ひいては信号品質の安定性が担保できないことが分かる。
Claims (14)
- 体積ホログラム光記録において、記録1分後と記録5分後の回折効率の比R1がR1≦4の範囲となることを特徴とする体積ホログラム光記録媒体。
- 記録1分後と記録5分後の前記回折効率の比R1が0.1≦R1≦4の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の体積ホログラム光記録媒体。
- 記録1分後と記録1日後の回折効率の比R2が0.1≦R2≦5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の体積ホログラム光記録媒体。
- 記録1分後と記録1日後の前記回折効率の比R2が0.7≦R2≦4の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の体積ホログラム光記録媒体。
- 前記テルペノイド骨格を有する化合物(A1)が、テルピノレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネンから選ばれることを特徴とする請求項5に記載の体積ホログラム光記録媒体。
- 前記少なくとも2個の二重結合を有し、さらに当該二重結合のうち2個の二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状もしくは非環状化合物(A3)が、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、リノール酸若しくはその誘導体、リノレン酸若しくはその誘導体から選ばれることを特徴とする請求項5に記載の体積ホログラム光記録媒体。
- 前記テルペノイド骨格を有する化合物(A1)が、テルピノレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネンから選ばれることを特徴とする請求項8に記載の体積ホログラム記録層形成用組成物。
- 前記少なくとも2個の二重結合を有し、さらに当該二重結合のうち2個の二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状もしくは非環状化合物(A3)が、1,4−シクロヘキサジエン及び1,4−シクロヘプタジエンから選ばれることを特徴とする請求項8に記載の体積ホログラム記録層形成用組成物。
- 前記体積ホログラム記録層形成用組成物が、さらに樹脂マトリックス(C)及び光重合開始剤(D)を含むことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録層形成用組成物。
- 前記重合性を有する光活性化合物(B)が、ラジカル重合性モノマーであることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の体積ホログラム記録層形成用組成物。
- 請求項8乃至12の何れか1項に記載の体積ホログラム記録層形成用組成物を含有することを特徴とする体積ホログラム記録材料。
- 請求項13に記載の体積ホログラム記録材料を含有する層を備えることを特徴とする体積ホログラム光記録媒体。
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