JP5998722B2 - ホログラム記録媒体用組成物及びこれを用いたホログラム記録媒体 - Google Patents
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Description
中でも、干渉縞間隔に対して膜厚が十分に厚い(通常は干渉縞間隔の5倍以上、又は1μm以上程度の膜厚を有する)ホログラムを体積型ホログラムという。なお、膜厚が大きい方が膜厚方向に記録を行えるために、高密度での記録が可能である。公知の体積型ホログラム記録材料の例としては、湿式処理や漂白処理が不要なライトワンス形式があり、その組成としては、樹脂マトリックスに光活性化合物を相溶させたものが一般的である。例えば、樹脂マトリックスに、光活性化合物として、ラジカル重合やカチオン重合可能なモノマーを組み合わせたフォトポリマー方式が挙げられる(例えば特許文献1及び2参照)。
ここで、樹脂マトリックスとしてポリウレタン樹脂等を採用する場合、マトリックスポリマーの生成を促進するために、ジラウリン酸ジブチル錫等の錫(Sn)系の硬化触媒が用いられることが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献3参照)。
以上に鑑み、本発明の課題は、記録特性に優れ、保存による記録特性の変化が少なく、保存安定性に優れたホログラム記録媒体用組成物及びこれを用いたホログラム記録媒体を提供することにある。
本発明の要旨は、イソシアネート基を有する化合物、イソシアネート反応性官能基を有する化合物、重合性モノマー、光重合開始剤、及び希土類系触媒を含有することを特徴とするホログラム記録媒体用組成物に存する。
本発明の別の要旨は、記録層に上述のホログラム記録媒体用組成物を用いたことを特徴とするホログラム記録媒体に存する。
1.ホログラム記録媒体用組成物
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、
(1)イソシアネート基を有する化合物(以下、「成分(1)」と記載することがある。)、
(2)イソシアネート反応性官能基を有する化合物(以下、「成分(2)」と記載することがある。)、
(3)重合性モノマー(以下、「成分(3)」と記載することがある。)、
(4)光重合開始剤(以下、「成分(4)」と記載することがある。)、
(5)希土類系触媒(以下、「成分(5)」と記載することがある。)を含有することを特徴とする。
1−1.イソシアネート基を有する化合物
イソシアネート基を有する化合物は、後述の硬化触媒(成分(5))の存在下で、イソシアネート反応性官能基を有する化合物(成分(2))と反応し、樹脂マトリックスを構成する。
イソシアネート基を有する化合物に占めるイソシアネート基の割合は次式から求められる。
イソシアネート基を有する化合物の種類に特に制限はなく、例えば芳香族、芳香脂肪族、脂肪族、又は脂環式の骨格を有し得る。また、イソシアネート基を有する化合物は分子内にイソシアネート基を1つ有するものであってもよく、2つ以上有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物及び分子内に3つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物、又は分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する化合物及び分子内に2つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する化合物で得られる三次元架橋マトリックスによれば、優れた記録保持性を有する記録層を得ることができる。
上記の中でも着色し難いため、脂肪族のものが好ましい。
本発明におけるイソシアネート反応性官能基を有する化合物とは、イソシアネート基を有する化合物との鎖延長反応に関与する活性水素(イソシアネート反応性官能基)を有する化合物のことである。イソシアネート反応性官能基としては例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基が挙げられる。イソシアネート反応性官能基を有する化合物は分子内にイソシアネート反応性基を1つ有するものであってもよく、2つ以上を有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。なお、2つ以上のイソシアネート反応性官能基を有する場合には、1つの分子に含まれるイソシアネート反応性官能基は1種類であってもよく、また複数種類であってもよい。
水酸基を有する化合物は1分子中に水酸基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上の水酸基を有するものが好ましい。その例として、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、又はこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物;多官能ポリオキシブチレン;多官能ポリカプロラクトン;多官能ポリエステル;多官能ポリカーボネート;多官能ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アミノ基を有する化合物は1分子中にアミノ基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上のアミノ基を有するものが好ましい。その例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン;イソホロンジアミン、メンタンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂環族アミン;m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミンなどの芳香族アミン;等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
がるために、樹脂マトリックスの硬度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、上限値より大きいと、他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるために樹脂マトリックスの硬度が低くなりすぎ記録内容が消失する場合がある。
メルカプト基を有する化合物は1分子中にメルカプト基を1つ以上有するものであればよいが、2つ以上のメルカプト基を有するものが好ましい。その例としては、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
重合性モノマーとは後述の光重合開始剤によって重合され得る化合物をいう。本発明のホログラム記録媒体用組成物に使用される重合性モノマーの種類は特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択することが可能である。重合性モノマーの例としては、カチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマー等が挙げられる。これらは、何れを使用することもでき、また二種以上を併用してもよい。ただし、イソシアネート基を有する化合物及びイソシアネート反応性官能基を有する化合物がマトリックスを形成する反応を阻害しにくいという理由から、ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
カチオン重合性モノマーの例としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和結合化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。上記のカチオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アニオン重合性モノマーの例としては、炭化水素モノマー、極性モノマー等が挙げられる。
炭化水素モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、ビニルピリジン、ビニルアントラセン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
ケトン類、イソプロペニルケトン類、その他の極性モノマーなどが挙げられる。
上記例示のアニオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ラジカル重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニル化合物、スチレン類、スピロ環含有化合物等が挙げられる。上記例示のラジカル重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、本明細書において、メタクリル及びアクリルの総称を(メタ)アクリルと記載する。
上記の中でも、ラジカル重合する際の立体障害の点から(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
本発明のホログラム記録媒体用組成物に用いる重合性モノマーは、通常分子量が80以上であり、好ましくは150以上、より好ましくは300以上である。また通常3000以下であり、好ましくは2500以下、より好ましくは2000以下である。分子量が小さすぎると、ホログラムの情報記録時の光照射の重合に伴う収縮率が大きくなってしまう可能性がある。また分子量が大きすぎると、ホログラム記録媒体用組成物を用いた記録層中での重合性モノマーの移動度が低く、拡散が起こりにくくなり、十分な回折効率が得られない場合がある。
上記重合性モノマーは、ホログラム記録媒体への照射光波長(記録波長等)における屈折率が通常1.50以上、好ましくは1.52以上、さらに好ましくは1.55以上であり、通常1.80以下、好ましくは1.78以下である。屈折率が過度に小さいと回折効率が十分でなく、多重度が十分とならない場合がある。また、屈折率が過度に大きいとマトリックス樹脂との屈折率差が大きくなりすぎて散乱が大きくなることにより透過度が低下して、記録や再生に際してより大きなエネルギーを要することになる。なお、屈折率は短い波長で評価すると大きい値を示すが、短波長で相対的に大きい屈折率を示すサンプルは、長波長でも相対的に大きい屈折率を示し、その関係が逆転することはない。従って、記録波長以外の波長で屈折率を評価し、記録波長での屈折率を予測することも可能である。
なお、これらの化合物は溶媒やマトリックスへの溶解性を確保するために、分子内に含まれる複素環構造中の複素原子は2個以下であることが好ましい。3個以上である場合には、溶解性が低下し、均一な記録層を得られなくなる可能性がある。また分子内の複素環の構造規則性が高いとスタッキングによる着色や溶解低下が起こる場合があることから、中でも2以上の環が縮合したヘテロアリール基であることがより好ましい。
Arは置換基を有していてもよい、2以上の環が縮合した(ヘテロ)アリール基であり、R1は水素又はメチル基であり、
nは1〜7の整数であり、
nが2以上の場合、複数のArは同一であっても異なっていてもよい。
但し、Aが芳香族複素環であり、かつ、Arが置換基を有していてもよい、2以上の環が縮合したヘテロアリール基である場合には、A及びArの各々が連結している構造において、互いに直接連結している、A及びArの各々の構造中の部分構造は、ヘテロ原子を含まない。)
上記重合性モノマーは、ホログラムの記録波長における、モル吸光係数が100L・mol−1・cm−1以下であることが好ましい。モル吸光係数が100L・mol−1・cm−1より大きいと、媒体の透過率が低くなってしまい、厚みに対して十分な回折効率を得ることができなくなってしまう可能性がある。
光重合開始剤とは、光によって化学反応を起こすカチオン、アニオン、ラジカルを発生するものをいい、上述の重合性モノマーの重合に寄与する。光重合開始剤の種類は特に制限はなく、重合性モノマーの種類等に応じて適宜選択することができる。
本発明においては、光重合開始剤として、少なくともオキシムエステル系光重合開始剤及び/又はホスフィンオキシド系光重合開始剤を1種以上用いる。
上記のオキシムエステル系光重合開始剤は、構造の一部に−C=N−O−を有していればよく、中でも記録感度が優れているため、下記(式d)又は(式f)で表される化合物が好ましい。
レン基―(C≡C)n−、及びこれらの組み合わせ(nは1〜5の整数を表す。)からなる群から選ばれる2価の基;を表す。
2R33、−N(OR34)−CO−R35及び下記(式e)で表される基(R32及びR33、並びにR34及びR35は、それぞれ置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに異なっていてもよい。)からなる群から選ばれる基を表す。
R4は、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基及び炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基を表す。)
R6は、炭素数2〜20のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基又は炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基を示し、これらはいずれも置換基を有していてもよい。
Y1は、置換基を有していてもよい、2個以上の環が縮合してなる、2価の芳香族炭化水素基、及び/又は芳香族複素基を示す。
Zは、置換基を有していてもよい芳香族基を示す。)
ル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバソール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)グルタル酸メチル、もしくは特開2010−8713号公報、特開2009−271502号公報に記載の化合物などが挙げられる。
光重合開始剤として、上記オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤を併用することができる。例えば、下記のカチオン光重合開始剤、アニオン光重合開始剤、及びラジカル光重合開始剤は、使用する重合性モノマーに対応するものであれば、何れを使用することもできる。これらは何れかを単独で、又は二種以上を併用してもよい。
また、光重合開始剤としては特に記録波長におけるモル吸光係数が1000L・mol−1・cm−1以下である化合物がより好ましい。モル吸光係数が1000L・mol−1・cm−1より大きいと十分な回折効率を得られる量を混合した場合、記録波長におけるホログラム記録媒体の透過率が低下してしまう可能性がある。
カチオン光重合開始剤は、公知のカチオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体例としては、SbF6 −、BF4 −、AsF6 −、PF6 −、CF3SO3 −、B(C6F5)4 −等のアニオン成分と、ヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物が挙げられる。中でも、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩等が好ましい。上記例示したカチオン光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アニオン光重合開始剤は、公知のアニオン光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としてはアミン類等が挙げられる。アミン類の例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のアミノ基含有化合物、及びこれらの誘導体;イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、及びその誘導体;等が挙げられる。上記例示したアニオン光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ラジカル光重合開始剤は、公知のラジカル光重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては、ホスフィンオキシド化合物、アゾ化合物、アジド化合物、有機過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体等が用いられる。上記例示したラジカル光重合開始剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上述したように、中でもホスフィンオキシド化合物が好ましい。
アシルホスフィンオキシド化合物の例としては、下記(式b)で示されるモノアシルホスフィンオキシド、又は下記(式c)で示されるジアシルホスフィンオキシドが挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
れている、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、O又はSを含有する5員又は6員の複素環の基;炭素数1〜18のアルコキシ基;フェノキシ基;ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されている、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基;を示す。なお、R8及びR7はリン原子と一緒になって環を形成していてもよい。
される基;である。
置換又はハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されているフェニレン基又はビフェニレン基;を表す。R7'及びR8'は、上述の(式b)におけるR7及びR8で説明したものと同様の基を示す。なお、(式b)で示される
分子中において、R7及びR7'、R8及びR8'は同一であってもよく、また異なってい
てもよい。))
くはビフェニル基;ハロゲン、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されているフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基;一価のN、O又はSを含有する5員又は6員の複素環の基;を表す。)
上記の中でも、優れた記録感度を得られるため、モノアシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
マトリックス硬化触媒として作用する希土類系触媒としては、希土類元素を含有する構造を有し、イソシアネート基を有する化合物及びイソシアネート反応性官能基を有する化合物の反応を促進するものが好適に用いられる。
ホン酸プラセオジム、クロラニル酸プラセオジム、塩化プラセオジム、ヨウ化プラセオジム、フッ化プラセオジム、臭化プラセオジム、酸化プラセオジム、水酸化プラセオジム、メトキシプラセオジム、エトキシプラセオジム、イソプロポキシプラセオジム、ブトキシプラセオジム、エチレンジアミン四酢酸プラセオジム、エチレンジアミン五酢酸プラセオジム、ニトリロ三酢酸プラセオジム、2,4−ペンタンジオナトプラセオジム、3−メチルー2,4−ペンタンジオナトプラセオジム、2,3-ペンタンジオナトプラセオジム等が挙げられる。
1−6.その他
本発明におけるホログラム記録媒体用組成物は上述の成分(1)〜(5)を含むことを特徴とするが、本発明の主旨に反しない限り、その他の成分を含有することができる。
本発明のホログラム記録媒体用組成物は、反応速度の調整のために、前記のマトリックス硬化触媒とともに他の硬化触媒を用いることもできる。併用可能な触媒としては、本発明の主旨に反しない限り特に制限はないが、ビスマス系触媒や、構造の一部にアミノ基を有する化合物を使用することが好ましい。
その他の成分としては、ホログラム記録媒体の記録層を調製するための、溶媒、可塑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、接着促進剤などや、記録の反応制御のための、連鎖移動剤、重合停止剤、相溶化剤、反応補助剤、増感剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分はいずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明のホログラム記録媒体用組成物における各成分の使用量は、本発明の主旨に反しない限り任意であるが、各成分の割合は組成物の全質量を基準に以下の範囲であることが好ましい。成分(1)と成分(2)の使用量は、合計で通常0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。また通常99.9質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。この使用量が下限値未満では、記録層を形成することが困難となってしまう可能性がある。
成分(3)の使用量は通常0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。また通常80質量%以下であり、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。成分(3)の量が少なすぎると十分な回折効率を得られず、多すぎると記録層の相溶性が損なわれる可能性がある。
成分(5)の使用量は成分(1)及び成分(2)の反応速度を考慮して決定することが好ましく、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。また0.005質量%以上用いることが好ましい。
1−8.ホログラム記録媒体用組成物の製造方法
本発明において、成分(1)〜(5)はどのような組み合わせ、順序で混合してもよく、またその際に、その他の成分を組み合わせて混合してもよい。
成分(2)及び成分(5)以外の全ての成分を混合し、A液とする。成分(2)と成分(5)を混合したものをB液とする。それぞれの液は脱水・脱気を行うことが好ましい。脱水・脱気を行わなかったり、不十分であると、媒体作成時に気泡が生成し、均一な記録層を得ることができないことがある。この脱水・脱気の際には各成分を損なわない限り、
加熱、減圧を行ってもよい。
本発明において、光重合開始剤と、マトリックス硬化触媒とは、任意に組み合わせることができる。オキシムエステル系光重合開始剤単体、若しくはオキシムエステル系光重合開始剤及びホスフィンオキシド化合物と、希土類系触媒との組み合わせが好ましく、より好ましくは、オキシムエステル系光重合開始剤単体、若しくはオキシムエステル系光重合開始剤及びホスフィンオキシド化合物と、ランタン系触媒及び/又はプラセオジム系触媒との組み合わせである。
本発明のホログラム記録媒体は、記録層と、必要に応じて、更に支持体やその他の層を備える。通常、ホログラム記録媒体は支持体を有し、記録層やその他の層は、この支持体上に積層されてホログラム記録媒体を構成する。ただし、記録層又はその他の層が、媒体に必要な強度や耐久性を有する場合には、ホログラム記録媒体は支持体を有していなくてもよい。その他の層の例としては、保護層、反射層、反射防止層(反射防止膜)等が挙げられる。
本発明のホログラム記録媒体の記録層は、好ましくは本発明のホログラム記録媒体用組成物により形成される。
本発明のホログラム記録媒体の記録層は、本発明のホログラム記録媒体用組成物により形成される層であり、情報が記録される層である。情報は通常、ホログラムとして記録される。後述の記録方法の項に詳述するとおり、該記録層中に含まれる重合性モノマーは、ホログラム記録などによってその一部が重合等の化学的な変化を生じるものである。従って、記録後のホログラム記録媒体においては、重合性モノマーの一部が消費され、重合体など反応後の化合物として存在する。
また、情報の記録、再生の際の露光による記録層の収縮率が0.25%以下であることが好ましい。
支持体は、媒体に必要な強度及び耐久性を有しているものであれば、その詳細に特に制限はなく、任意の支持体を使用することができる。また、支持体の形状にも制限は無いが、通常は平板状又はフィルム状に形成される。また、支持体を構成する材料にも制限は無
く、透明であっても不透明であってもよい。支持体の材料として透明なものを挙げると、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフトエート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アモルファスポリオレフィン、ポリスチレン、酢酸セルロース等の有機材料;ガラス、シリコン、石英等の無機材料が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、アモルファスポリオレフィン、ガラス等が好ましく、特に、ポリカーボネート、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ガラスがより好ましい。
支持体の厚みにも特に制限は無いが、通常は0.05mm以上、1mm以下の範囲とすることが好ましい。支持体が薄過ぎるとホログラム記録媒体の機械的強度が不足し、基板が反る場合があり、厚過ぎると光の透過量が減りさらにコストが高くなる場合がある。
また、これらの表面処理は、基板の気体や水分の透過性を制御する目的で設けても良い。例えば記録層を挟む支持体にも気体や水分の透過性を抑制する働きを持たせることによりより一層媒体の信頼性を向上させうる。
また、記録層の片側又は両側に支持体を有するホログラム記録媒体の場合、透過型又は反射型のホログラムが記録可能である。また、記録層の片側に反射特性を有する支持体を用いる場合は、反射型のホログラムが記録可能である。
保護層は、記録層の酸素や水分による保存安定性の劣化等の影響を防止するための層である。保護層の具体的構成に制限は無く、公知のものを任意に適用することが可能である。例えば、水溶性ポリマー、有機/無機材料等からなる層を保護層として形成することができる。
保護層の形成位置は、特に制限はなく、例えば記録層表面や、記録層と支持体との間に形成してもよく、また支持体の外表面側に形成してもよい。また支持体と他の層との間に形成してもよい。
反射層は、ホログラム記録媒体を反射型に構成する際に形成される。反射型のホログラム記録媒体の場合、反射層は支持体と記録層との間に形成されていてもよく、支持体の外側面に形成されていてもよいが、通常は、支持体と記録層との間にあることが好ましい。
反射層としては、公知のものを任意に適用することができ、例えば金属の薄膜等を用いることができる。
透過型及び反射型の何れのホログラム記録媒体についても、物体光及び読み出し光が入射及び出射する側や、あるいは記録層と支持体との間に、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつゴースト像の発生を抑制する働きをする。
反射防止膜としては、公知のものを任意に用いることができる。
本発明のホログラム記録媒体の製造方法に制限は無い。例えば、無溶剤で支持体上に本発明のホログラム記録媒体用組成物を塗布し、記録層を形成して製造することできる。この際、塗布方法としては任意の方法を使用することができる。具体例を挙げると、スプレー法、スピンコート法、ワイヤーバー法、ディップ法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、及びドクターロールコート法などが挙げられる。また、記録層の形成に際し、特に膜厚の厚い記録層を形成する場合、型に入れて成型する方法や、離型フィルム上に塗工して型を打ち抜く方法を用いることもできる。また、本発明のホログラム記録媒体用組成物と溶剤又は添加剤とを混合して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥して記録層を形成して製造しても良い。この場合も塗布方法としては任意の方法を使用することができ、例えば、上述したのと同様の方法を採用することができる。
記録媒体用組成物を支持体に塗布し、冷却して固化させて記録層を形成して製造する方法、液状のホログラム記録媒体用組成物を支持体に塗布し、熱重合させることで硬化させて記録層を形成して製造する方法、液状のホログラム記録媒体用組成物を支持体に塗布し、光重合させることで硬化させて記録層を形成して製造する方法なども挙げられる。
本発明のホログラム記録媒体に対する情報の書き込み(記録)及び読み出し(再生)は、何れも光の照射によって行なわれる。
先ず、情報の記録時には、重合性モノマーの化学変化、すなわち、その重合及び濃度変化を生じさせることが可能な光を、物体光(記録光とも呼ばれる。)として用いる。
例えば、情報を体積ホログラムとして記録する場合には、物体光を参照光と共に記録層に対して照射し、記録層において物体光と参照光とを干渉させるようにする。これによってその干渉光が、記録層内の重合性モノマーの重合及び濃度変化を生じさせ、その結果、干渉縞が記録層内に屈折率差を生じさせ、前記の記録層内に記録された干渉縞により、記録層にホログラムとして記録される。
また、ホログラム記録方式としては、偏光コリニアホログラム記録方式、参照光入射角多重型ホログラム記録方式等があるが、本発明のホログラム記録媒体を記録媒体として使用する場合にはいずれの記録方式でも良好な記録品質を提供することが可能である。
[実施例1]
・ホログラム記録媒体用組成物の調製
ヘキサメチレンジイソシアネートアダクト体2.89gに、ジベンゾチオフェニルフェニルアクリレート(2、4−ビス(4−ジベンゾチオフェニル)−1−フェニル(メタ)アクリレート)0.22g、及び1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバソール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)グルタル酸メチル0.0
23gを溶解させ、A液とした。
B液を減圧下で3時間脱気した後、A液とB液を混ぜ合わせて攪拌混合し、さらに数分間、真空で脱気した。
続いて、厚さ500μmのスペーサーシートを2方の端にのせたスライドガラスに上に、真空脱気した上記混合液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で48時間加熱して測定用ホログラム記録媒体を作製した。この測定用サンプルは、カバーとしてのスライドガラス間に、厚さ500μmの記録層が形成されたものである。
このようにして得られたサンプルについてホログラム記録特性の評価を行った。評価の条件は次の通りである。
得られたホログラム記録評価サンプルを使用し、以下に説明する手順でホログラム記録を実施した。
波長405nmの半導体レーザを用いて、ビーム1本あたりの露光パワー密度6.0mW/cm2で図2に示す露光装置を使用して、二光束平面波のホログラム記録を行った。
媒体を−30°から30°まで1°おきに同一箇所に61多重記録し、その時の回折効率の平方根の合計をM/#(エムナンバー)とする。また上記の記録前後で記録波長での光透過率を測定した。以下、詳細に説明する。
図2(a)中、Sはホログラム記録媒体のサンプルを示し、M1〜M3は何れもミラーを示し、PBSは偏光ビームスプリッタを示し、L1は波長405nmの光を発する記録光用レーザ光源(波長405nm付近の光が得られるソニー製シングルモードレーザーダイオードを用いた(図2(a)中「L1」))を示し、L2は波長633nmの光を発する再生光用レーザ光源を示し、PD1、PD2はフォトディテクタを示す。また、1はLEDユニットを示し、2はアームを示し、3は支柱を示す。
9°の角度で照射し、回折された光をパワーメータ及びディテクタ(ニューポート社製2930−C、918−SL:図中「PD1」及び「PD2」)を用いて検出することにより、ホログラム記録が正しく行なわれているか否かを判定した。ホログラムの回折効率は、回折された光の強度の透過光強度と回折光強度の和に対する比で与えられる。
サンプルを光軸に対して動かす角度(二光束、すなわち図2(a)のミラーM1及びM2からの入射光が交わる点における内角の二等分線とサンプルからの法線とがなす角度)を−30°から30°まで1度刻みで61多重の記録を行い、得られた回折効率の平方根を多重記録全域にわたって合計したものをM/#とした。
測定用のサンプルの感度は、上記M/#計測において、サンプルが示す最大M/#の80%に達するまでの平均感度を表すものであり、次のように算出される。
感度=(0.8×(M/#))/(I×ts×L)
ここで、Iは入射光強度(mW/cm2)、tsはM/#が80%に達するまでの総露光時間(秒)、Lは記録層厚み(cm)である。
光透過率はサンプルが何もない状態で光の強度を測定した後、サンプルを、光路にその板面を垂直にして置いて化学変化が起こらない程度の短い時間で再び光の強度を測定しその比を光透過率とした。記録後の場合、サンプルは光路に垂直にかつ回折が起こらない角度で記録した部分を光が通るように置いて測定した。波長は記録と同じ波長405nm、強度は6mW/cm2とし、記録層の厚みは500μmとした。
サンプルの保存安定性試験は、未記録サンプルを80℃で保存後に記録を行い、保存前と比較した。M/#及び感度は、保存前を100%とした残存率で評価した。この結果を、表1及び図1に示す。また、評価サンプルの記録前透過率は保存後と保存前の差で評価した。この結果を表1に示す。
実施例1の硬化触媒に代えて、2,4−ペンタンジオナトプラセオジムを硬化触媒として用いた以外は、実施例1と同様の方法でホログラム記録媒体用組成物を調整し、測定用サンプルを作製して、測定及び評価を行った。これらの結果を、表1及び図1に示す。
実施例1の硬化触媒に代えて、ジオクチル錫ジラウレート0.0007gを溶解させて用いた以外は、実施例1と同様の方法でホログラム記録用組成物を調整し、測定サンプルを作製して、測定及び評価を行った。これらの結果を、表1及び図1に示す。
[評価]
以上の結果から、本発明のホログラム記録媒体用組成物及びこれを用いたホログラム記録媒体は、記録特性に優れ、保存による記録特性の変化が少なく、保存安定性(シェルフライフ)に優れることが裏付けられた。
1A LEDユニットの表面
1B LED
2 アーム
3 支柱
S サンプル
M1,M2,M3 ミラー
PBS 偏光ビームスプリッタ
L1 記録光用レーザ光源
L2 再生光用レーザ光源
PD1,PD2 フォトディテクタ
Claims (6)
- イソシアネート基を有する化合物、
イソシアネート反応性官能基を有する化合物、
重合性モノマー、
光重合開始剤、
及び、希土類系触媒
を含有することを特徴とする、ホログラム記録媒体用組成物。 - 前記希土類系触媒が、ランタノイド系触媒であることを特徴とする、請求項1に記載のホログラム記録媒体用組成物。
- 前記ランタノイド系触媒が、ランタン系触媒であることを特徴とする、請求項2に記載のホログラム記録媒体用組成物。
- 前記ランタノイド系触媒が、プラセオジム系触媒であることを特徴とする、請求項2に記載のホログラム記録媒体用組成物。
- 前記重合性モノマーが、ラジカル重合性モノマーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のホログラム記録媒体用組成物。
- 記録層に請求項1〜5のいずれか一項に記載のホログラム記録媒体用組成物を用いたことを特徴とする、ホログラム記録媒体。
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