JP5439755B2 - ホログラム記録層形成用組成物、並びにそれを用いたホログラム記録材料及びホログラム光記録媒体 - Google Patents

ホログラム記録層形成用組成物、並びにそれを用いたホログラム記録材料及びホログラム光記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、ホログラム記録層形成用組成物、並びにそれを用いたホログラム記録層形成用材料および、ホログラム光記録媒体に関する。
近年、光記録媒体のさらなる大容量化、高密度化に向けて、光の干渉による光強度分布に応じて記録層の屈折率を変化させ、ホログラムとして情報を記録するホログラム方式の光記録媒体が開発されている。
ホログラム作製に関する一般的原理は、いくつかの文献や専門書(非特許文献1参照)などに記載されている。これらによれば、2光束のコヒーレントなレーザー光の一方を記録対象物に照射し、その光を受け取れる位置に感光性のホログラム記録材料が置かれる。ホログラム記録材料には、対象物からの光の他に、もう一方のコヒーレントな光が、対象物に当たらずに直接照射される。対象物からの光を物体光、また直接記録材料に照射される光を参照光といい、参照光と物体光との干渉縞が画像情報として記録される。次に処理された記録材料に参照光と同じ光(再生光)を照射すると、記録の際に対象物から記録材料に最初に到達した反射光の波面を再現するようにホログラムによって回折され、その結果、対象物の実像とほぼ同じ物体像を3次元的に観測することができる。参照光と物体光を同じ方向からホログラム記録材料に入射させて形成されるホログラムを透過型ホログラム、参照光と物体光を反対側から入射させて形成したホログラムを反射型ホログラムという。干渉縞間隔に対して膜厚が十分に厚い(通常は干渉縞間隔の5倍以上、または1μm以上程度の膜厚を言う)ホログラムを体積型ホログラムといい、膜厚方向に記録を行えるために、膜厚が大きいほうが高密度での記録が可能である。
公知の体積位相型ホログラム記録材料の例としては、湿式処理や漂白処理が不要なライトワンス形式があり、その組成としては、樹脂マトリックスに光活性化合物を相溶させたものが一般的である。例えば、樹脂マトリックスに、ラジカル重合やカチオン重合可能なモノマーを組み合わせたフォトポリマー方式が挙げられる(特許文献1〜4参照)。
情報の記録時は、物体光と参照光が照射されると、記録層には明部と暗部からなる干渉縞が形成される。例えば、光活性化合物がラジカル重合性化合物である場合、明部では、光重合開始剤が光を吸収してラジカル活性種へと変化する。このラジカル活性種は近隣のラジカル重合性化合物に付加反応し、その付加生成物はラジカル活性種へと変化する。さらに、このラジカル活性種となった付加生成物は近隣のラジカル重合性化合物に付加反応する。この一連の光重合反応が繰り返し起こることで記録層に明部のポリマーが生成される。一方、明部の重合反応にともなってラジカル重合性化合物の濃度勾配ができ、記録層中の暗部にあるラジカル重合性化合物は明部へと拡散移動し、反対に、明部にある他の成分は暗部へと拡散移動する。これにより、干渉縞の明部と暗部は異なる化合物により構成されて、異なる屈折率を持つようになる。その結果、ホログラム光記録媒体は、この屈折率差を情報として保持する。屈折率差が大きいほど回折効率が大きくなるため、屈折率差を持たせるために、樹脂マトリックスまたはモノマーのどちらか一方に、芳香環、ヘテロ環、塩素、臭素などを有する化合物を用いるなどの工夫がなされている。
フォトポリマー方式は一般的に樹脂マトリックス、光活性化合物、光重合開始剤の基本組成からなり、高回折効率と乾式処理を両立できうる実用的で有望な方式であるが、記録に際しての高い感度、十分な回折効率、高S/N比を有し、高い多重度を達成するものが求められており、さらに記録信号の安定性や信頼性に優れるものが望まれている。それらを達成するために記録用組成物の組成や媒体の製法について種々検討がなされている。
ところで、フォトポリマー方式によるホログラム光記録媒体への記録時には、干渉露光を行うための光重合開始剤が必須である。青紫色から可視光領域のレーザーを使用する場合、光重合開始剤として該波長領域即ち340から700nmの範囲に吸収を持つものを用いることが好ましく、このような光重合開始剤としては、たとえばチタノセン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、特許文献5に記載の特定構造のオキシムエステル系光重合開始剤などを用いることが知られている。
坪内順平編「ホログラフィックディスプレイ」第2章、産業図書 特許第3737306号 特開2005−43862号公報 特表2005−502918号公報 特開2004−158117号公報 WO02/100903
しかし、従来の光重合開始剤をホログラム記録媒体に使用する場合、感度が十分ではないために光重合開始剤をある程度高濃度で使用したり、増感剤を高濃度で使用する場合がある。一方、重合開始剤自体がホログラム記録に用いる光の波長において吸収を持つことがあるため感度の向上を意図して記録媒体中の重合開始剤濃度を上げると、それにしたがって記録媒体(記録層)の光の透過率は低下してしまう。増感剤を用いる場合も同様に、感度向上を目指し増感剤濃度を上げると媒体自体の光の透過率が低下してしまうことがある。媒体の光透過率が低下すると媒体の厚みを有効に利用できず、その結果十分な記録性能が発揮されないことがある。
また、一般に重合開始剤は光の照射により分解し、それに伴いラジカル種を発生し、そのラジカルが重合開始能を有することにより重合を誘発する。一方、重合開始剤の光分解生成物に由来する副生物により、光照射後にホログラム記録波長における吸収が光照射前に比べ増大してしまうような場合もある。そのような開始剤を用いると、ホログラム記録を続けることにより記録層(媒体)の透過率が低下していくため、記録性能の悪化を招聘することになる。また、記録後の透過率が記録前に比べ低下することになるので、記録の読み出しにも支障が生ずる場合がある。
そのようなことから、感度が高く少量の添加で十分な感度が得られ、また記録前後に渡り、媒体の光透過性も確保できるような光重合開始剤の開発が望まれていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホログラム記録を行う際に、記録感度に優れ、ホログラム記録波長に対する光透過率の高いホログラム光記録媒体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、光活性化合物(a)と、下記一般式(I)の構造を有する光重合開始剤(b)とを含む、ホログラム記録層形成用組成物またはホログラム記録材料を記録層形成に用いることにより、ホログラム光記録媒体の感度を向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は以下を要旨とする。
[1]光活性化合物(a)と、下記一般式(I)の構造を有するケトオキシムエステル系光重合開始剤(b)とを含むことを特徴とするホログラム記録層形成用組成物。
Figure 0005439755
(式中、Xは単結合、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有しても良いアルケニレン基−(CH=CH)n―、置換基を有しても良いアルキニレン基
―(C≡C)n−、及びこれらの組み合わせ(nは1〜5の整数を表す。)からなる群から選ばれる2価の基であり、Rは下記で表される基を表し
Figure 0005439755
12 は、置換されていてもよいアリール基、フリル基、チエニル基又はキノリル基を表し、R 10 は、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、
は、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR32
33、-N(OR34)-CO-R35及び下記一般式(II)で表される基(R30
びR31、R32及びR33、並びにR34及びR35は、それぞれ置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに異なっていてもよい。)からなる群から選ばれる基を表し、Rは、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基及び炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基を表す。)
Figure 0005439755
[2]ホログラム記録層形成用組成物が、さらに樹脂マトリックス(c)を含むことを特徴とする、[1]記載のホログラム記録層形成用組成物。
[3]樹脂マトリックス(c)が、三次元架橋した樹脂マトリックスであることを特徴とする、[2]に記載のホログラム記録層形成用組成物。
[4]光活性化合物(a)が、ラジカル重合性モノマーであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のホログラム記録層形成用組成物。
[5]一般式(I)の構造を有するケトオキシムエステル系光重合開始剤の使用量が、光活性化合物(a)、一般式(I)の構造を有するケトオキシムエステル系光重合開始剤(b)及び樹脂マトリックス(c)の和に対する比率で、0.01重量%以上、10重量%以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のホログラム記録層形成用組成物。
][1]〜[]のいずれかに記載のホログラム記録層形成用組成物を含有することを特徴とするホログラム記録材料。
] []に記載のホログラム記録材料を含有する層を備えることを特徴とするホログラム光記録媒体。
本発明によれば、記録感度に優れホログラム記録波長に対する光透過率の高いホログラム光記録媒体が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について説明する。尚以下の説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本発明の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを現すものではない。
[I.ホログラム記録層形成用組成物]
I−1:光活性化合物(a)
本発明のホログラム記録層形成用組成物に使用される光活性化合物(a)の種類は特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択することが可能であるが、通常は、重合性を有するモノマーが用いられる。重合性モノマーの例としては、カチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマー等が挙げられる。
I−1−1.カチオン重合性モノマー
カチオン重合性モノマーの例としては、オキシラン環を有する化合物、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、ビニルエーテル類、N−ビニル化合物、オキセタン環を有する化合物等を挙げることができる。中でも、少なくともオキセタン環を有する化合物を用いることが好ましく、更には、オキセタン環を有する化合物と共にオキシラン環を有する化合物を併用することが好ましい。
オキシラン環を有する化合物としては、1分子内に2個以上のオキシラン環を含有するプレポリマーを挙げることができる。このようなプレポリマーの例としては、脂環式ポリエポキシ類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物及びエポキシ化ポリブタジエン類等が挙げられる。これらのプレポリマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スチレン及びその誘導体の例としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
ビニルナフタレン及びその誘導体の例としては、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等が挙げられる。
ビニルエーテル類の例としては、イソブチルエーテル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
N−ビニル化合物の例としては、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン等が挙げられる。
オキセタン環を有する化合物の例としては、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報等に記載されている、公知の各種のオキセタン化合物が挙げられる。
上記例示のカチオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
I−1−2.アニオン重合性モノマー
アニオン重合性モノマーの例としては、炭化水素モノマー、極性モノマー等が挙げられる。
炭化水素モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、ビニルピリジン、ビニルアントラセン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
極性モノマーの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル類;メチルビニルケトン、イソプロピルビニルケトン、シクロヘキシルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類;メチルイソプロペニルケトン、フェニルイソプロペニルケトン等のイソプロペニルケトン類;アクリロニトリル、アクリルアミド、ニトロエチレン、メチレンマロン酸エステル、シアノアクリル酸エステル、シアン化ビニリデン等のその他の極性モノマー;などが挙げられる。
上記例示のアニオン重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
I−1−3.ラジカル重合性モノマー
ラジカル重合性モノマーとは、1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、例としては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニル化合物、スチレン類等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(
メタ)アクリレート、(n−又はi−)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アダマンチル、クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェネチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシフェネチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、スルファモイルフェニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシフェニルベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール環を有する(メタ)アクリル化合物、(メタ)アクリロキシフェニルチアンスレン、(メタ)アクリロキシフェニルビスチアンスレンなどチアンスレン骨格を有する(メタ)アクリル化合物、(メタ)アクリロキシフェニルジベンゾチオフェン(メタ)アクリロキシフェニルビスジベンゾチオフェンなどジベンゾチオフェン骨格を有する(メタ)アクリル化合物、(メタ)アクリロキシフェニルジベンゾフランなどのジベンゾフラン骨格を有する(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−トリル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)(メタ)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)(メタ)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート、安息香酸ビニル、t−ブチル安息香酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、4−エトキシ安息香酸ビニル、4−エチル安息香酸ビニル、4−メチル安息香酸ビニル、3−メチル安息香酸ビニル、2−メチル安息香酸ビニル、4−フェニル安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル等が挙げられる。ビニルエステル類以外のビニル化合物としては、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン、p−アセチルスチレン、p−ベンゾイルスチレン、2−ブトキシメチルスチレン、4−ブチルスチレン、4−sec−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、ジクロロスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、p−エトキシスチレン、2−エチルスチレン、2−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェノキシスチレン、p−フェニルスチレン等が挙げられる。
上記例示のラジカル重合性モノマーは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記例示したカチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーは、何れを使用することもでき、また、二種以上を併用してもよい。但し、樹脂マトリックスを形成する反応を阻害しにくいという理由から、光活性化合物としては、ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
本発明のホログラム記録層形成用組成物に用いる光活性化合物は、光照射時の架橋に伴う収縮率低減の点および記録層中の移動度の確保という観点などから、通常分子量200以上、中でも300以上、通常分子量2500以下、中でも2000以下であることが好ましい。
また、該光活性化合物は、記録媒体等の保存安定性を向上させる理由から、通常水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることを言う。
I−2: 光重合開始剤(b)
本発明のホログラム記録層形成用組成物に使用される光重合開始剤は、活性光線の照射を受けたときに、ラジカル、酸、又は塩基等の活性種を発生し、前記の光活性化合物を重合に至らしめる化合物である。本発明のホログラム記録層形成用組成物においては、少なくとも一般式(I)の構造を有するケトオキシムエステル系光重合開始剤を含有することが必要である。この場合それ以外の1種または2種以上の重合開始剤を併用することもできる。
I−2−1.光重合開始剤の吸収波長域
本発明のホログラム記録層形成用組成物を構成する前記光重合開始剤の吸収波長域としては、通常340nm以上、好ましくは350nm以上であり、通常700nm以下、好ましくは650nm以下に吸収を有するものである。例えば、光源が青色レーザーの場合は少なくとも350〜430nmに吸収を有するのが好ましく、緑色レーザーの場合は少なくとも500〜550nmに吸収を有するのが好ましい。吸収波長域が上述の範囲と異なる場合は、照射された光エネルギーを効率的に光重合反応に使いにくくなるため感度が低下しやすい傾向がある。
尚、光重合開始剤の吸収スペクトルは、例えば光重合開始剤を約10-5モル濃度となるようにテトラヒドロフラン溶媒に溶解させた溶液を通常の紫外、可視光吸収スペクトルメーターで測定するなどにより容易に求められる。
I−2−2.光重合開始剤の必須成分の構造
本発明のホログラム記録層形成用組成物にかかる上記光重合開始剤は、下記一般式(I)で表されることが特徴である。
Figure 0005439755
(式中、Xは単結合、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有しても良いアルケニレン基−(CH=CH)n―、置換基を有しても良いアルキニレン基
―(C≡C)n−、及びこれらの組み合わせ(nは1〜5の整数を表す。)からなる群から選ばれる2価の基であり、Rは芳香環及び/またはヘテロ芳香環を含む1価の有機基を
表し、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR3233、-N(OR34)-CO-R35及び下記一般式(II)で表される基(R
30及びR31、R32及びR33、並びにR34及びR35は、それぞれ置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに異なっていてもよい。)からなる群から選ばれる基を表し、Rは、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基及び炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基を表す。)
Figure 0005439755
<置換基R
一般式(I)において置換基Rは芳香環及び/またはヘテロ芳香環を含む1価の有機基を表す。具体的にはナフタレン環、アントラセン環、クリセン環、フェナントレン環、アズレン環、フルオレン環、アセナフチレン環、インデン環などの芳香族炭化水素環からなる縮合環由来の基、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、カルバゾール環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、ベンゾチアゾール環、などの芳香族炭化水素環と芳香族複素環からなる縮合環由来の基などが挙げられる。これらは、いずれも置換基を有していてもよい。この「置換基」については後述する。
また一般式(I)で表される化合物の中でも特にRが下記一般式(III)であらわ
されるケトオキシムエステル系化合物が好ましい。
Figure 0005439755
(式中、R〜Rは互いに独立に、それぞれ置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールメチル基、炭素数7〜20のアリールカルボニル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数1〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基、炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、−SR90,−SOR91,−SO92、または−NR1011を表し、且つR、R、R、R、Rの少なくともひとつは、−SR90又は−NR1011である。またR90、R91及びR92は水素原子、またはそれぞれ置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカ
ノイル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、及び炭素数3〜15のトリアルキルシリル基からなる群から選ばれる基を表し、R10及びR11は互いに独立して水素原子、またはそれぞれ置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基、及び炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれる基を表し、R〜Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
〜Rの炭素数1〜12のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数5〜8のシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダセニル基、アセナフチル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数7〜20のアリールメチル基の具体例としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェナントレニルメチル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数7〜20のアリーロイル基の具体例としては、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、インデニルカルボニル基、アントラセニルカルボニル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数2〜12のアルカノイル基の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、イソブチリル基、イソプロパノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、デカノイル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数1〜20のヘテロアリーロイル基の具体例としては、フラニルカル
ボニル基、チオフェニルカルボニル基、ピロリルカルボニル基、ピリジルカルボニル基、ビチオフェニルカルボニル基、チアゾリルカルボニル基、ピラジルカルボニル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基の具体例としては、メトキシカルボニルメチルカルボニル基、メトキシカルボニルエチルカルボニル基、メトキシカルボニルプロピルカルボニル基、メトキシカルボニルヘキシルカルボニル基、エトキシカルボニルメチルカルボニル基、エトキシカルボニルエチルカルボニル基、エトキシカルボニルプロピルカルボニル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基の具体例としては、フェノキシカルボニルアセチル基、フェノキシカルボニルプロパノイル基、フェノキシカルボニルブタノイル基、フェノキシカルボニルヘキサノイル基、ナフトキシカルボニルアセチル基、ナフトキシカルボニルプロパノイル基、ナフトキシカルボニルヘキサノイル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数3〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基の具体例としては、フラニルオキシカルボニルアセチル基、チオフェニルオキシカルボニルアセチル基、ピロリルオキシカルボニルアセチル基、ピリジルオキシカルボニルアセチル基、ビチオフェニルオキシカルボニルアセチル基、チアゾリルオキシカルボニルアセチル基、ピラジルオキシカルボニルアセチル基、フラニルオキシカルボニルプロパノイル基、チオフェニルオキシカルボニルプロパノイル基、ピロリルオキシカルボニルプロパノイル基、ピリジルオキシカルボニルプロパノイル基、ビチオフェニルオキシカルボニルプロパノイル基、チアゾリルオキシカルボニルプロパノイル基、ピラジルオキシカルボニルプロパノイル基、フラニルオキシカルボニルブチロイル基、チオフェニルオキシカルボニルブチロイル基、ピロリルオキシカルボニルブチロイル基、ピリジルオキシカルボニルブチロイル基、ビチオフェニルオキシカルボニルブチロイル基、チアゾリルオキシカルボニルブチロイル基、ピラジルオキシカルボニルブチロイル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
〜Rの炭素数2〜12のアリールオキシカルボニル基の具体例としては、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等が挙げられる。
(これらの基は、それぞれ置換されていてもよい。置換されていてもよい置換基としては、後述の置換基群Zに例示したものが挙げられる。)
〜Rのハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
〜Rの−SR90 の具体例としては、チオール基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビニルチオ基、アリルチオ基、プロペニルチオ基、ブテニルチオ基等が挙げられる。
〜Rの−SOR91の具体例としては、メトキシチオ基、エトキシチオ基、プロポキシチオ基、ブトキシチオ基、フェノキシチオ基、ナフトキシチオ基等が挙げられる。
〜Rの−SO92の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられる。
〜Rの−NR1011の具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ(ヒドロキシエチル)アミノ基等が挙げられる。
なお、R90、R91及びR92は、水素原子、またはそれぞれ置換されていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアル
ケニル基、炭素数6〜20のアリール基、及び炭素数3〜15のトリアルキルシリル基からなる群から選ばれる基を表し、R10及びR11は互いに独立して水素原子、またはそれぞれ置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基、または炭素数6〜20のアリール基を表す。
90、R91及びR92の炭素数1〜12のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
90、R91及びR92の炭素数2〜8のアルカノイル基の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、イソブチリル基、イソプロパノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、エチルヘキサノイル基、デカノイル基等が挙げられる。
90、R91及びR92の炭素数3〜12のアルケニル基の具体例としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等が挙げられる。
90、R91及びR92の炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダセニル基、アセナフチル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。
90、R91及びR92の炭素数3〜15のトリアルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、メチルジーt−ブチルシリル基等が挙げられる。
10及びR11の炭素数1〜12のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
10及びR11の炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
10及びR11の炭素数3〜5のアルケニル基の具体例としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。
10及びR11の炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダセニル基、アセナフチル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。
90、R91及びR92、並びにR10及びR11が有してもよい置換基としては、後述の置換基群Zに例示したものが挙げられる。
<置換基R
一般式(I)において、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR3233、-N(OR34)-CO-R35及び下記一般式(II)で表される基(R30及びR31、R32及びR33、並びにR34及びR35は、それぞれ置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに異なっていてもよい。)からなる群から選ばれる基を表す。
として、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−プチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ドデシルチオ基などの炭素数1〜12のアルキルチオ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシ力ルボニル基、n−プトキシカルボニル基、t−プトキシカルボニル基、n−ペ
ンチルオキシカルボニル基、t−アミルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボ
ニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−デカニルオキシカルボニル基、n−ドデカニルオキシカルボニル基などの炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基などの炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基;
プロパルギルオキシカルボニル基などの炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基;
フェニルオキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基などの炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基;
2−フラニルオキシカルボニル基、3−フラニルオキシカルボニル基、2−ピリジルオキシカルボニル基、3−ピリジルオキシカルボニル基、4−ピリジルオキシカルボニル基、2−ベンゾチアゾリルオキシカルボニル基などの炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基;
メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基、n−プロピルチオカルボニル基、イソプロピルチオカルボニル基、n−プチルチオカルボニル基、n−ヘキシルチオカルボニル基、n−オクチルチオカルボニル基、n−ドデシルチオカルボニル基などの炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基;
ビニルチオカルボニル基、アリルチオカルボニル基などの炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基;
プロパギルチオカルボニル基などの炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基;
フェニルチオカルボニル基、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基などの炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基;
2−フラニルチオカルボニル基、3−フラニルチオカルボニル基、4−ピリジルチオカルボニル基、2−ベンゾオキサゾリルチオカルボニル基、2−ベンゾチオアゾリルカルボニル基などの炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基;
メチルチオメトキシ基、エチルチオメトキシ基、n−プロピルチオメトキシ基、イソプロピルチオメトキシ基、n−ブチルチオメトキシ基、n−ヘキシルチオメトキシ基、n−オクチルチオメトキシ基、n−デシルチオメトキシ基、メチルチオエトキシ基、エチルチオエトキシ基、n−プロピルチオエトキシ基、イソプロピルチオエトキシ基、n−ブチルチオエトキシ基、n−ヘキシルチオエトキシ基、n−オクチルチオエトキシ基、n−デシルチオエトキシ基、メチルチオプロポキシ基、エチルチオプロポキシ基、n−プロピルチオプロポキシ基、イソプロピルチオプロポキシ基、n−ブチルチオプロポキシ基、n−ヘ
キシルチオプロポキシ基、n−オクチルチオメプロポキシ基、メチルチオブトキシ基、エチルチオブトキシ基、n−プロピルチオブトキシ基、イソプロピルチオブトキシ基、n−ブチルチオブトキシ基、n−ヘキシルチオブトキシ基、n−オクチルチオブトキシ基などの炭素数2〜12のアルキルチオアルコキシ基;
Figure 0005439755
等の−O−N=CR2021で表わされる基;
(アルカノイル)アルコキシアミノ基、ベンゾイルアルコキシアミノ基、アルカノイルアル力ノイルオキシアミノ基、ベンゾイルアルコキシアミノ基、アルカノイルアリールオキシアミノ基、アルカノイルアルキルアミノ基、アルカノイルアリールアミノ基、ヘテロアリーロイルアルカノイルオキシ基等の、-N(OR22)-CO-R23で表される基;
Figure 0005439755
などの前述の一般式(II)で表される基
を挙げることができる。
ここで、−O−N=CR3233、−N(OR34)-CO-R35および前述の一般
式(II)におけるR30及びR31、R32及びR33、並びにR34及びR35はそれぞれ独立に置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基を表す。炭素数1〜12のアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられる。
として、好ましくはアルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ力
ルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルチオアルコキシ基、(アルカノイル)アルコキシアミノ基、ベンゾイルアルコキシアミノ基、ベンゾイルアルコキシアミノ基、アルカノイルアリールオキシアミノ基、ヘテロアリールオキシアルカノイル基、ヘテロアリーロイルアルコキシアミノ基及び下記構造式で表される基である。
Figure 0005439755
<置換基R
一般式(I)において、Rは、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基及び炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基を表す。
一般式(I)におけるRの炭素数2〜12のアルカノイル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基等の炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜7のア
ルカノイル基である。
の炭素数3〜25のアルケノイル基としては、クロトノイル基、アクリロイル基等が挙げられ、好ましくはクロトノイル基等の炭素数3〜12、より好ましくは炭素数3〜7のアルケノイル基である。
の炭素数3〜8のシクロアルカノイル基としては、シクロヘキシルカルボニル基、メチルシクロヘキシルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基等が挙げられ、好ましくはシクロヘキシルカルボニ
ル基等の炭素数4〜8、より好ましくは炭素数4〜7のシクロアルカノイル基である。
の炭素数7〜20のアリーロイル基としては、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられ、好ましくはナフトイル等の炭素数7〜12、より好ましくは炭素数7〜10のアリーロイル基である。
の炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基としては、チオフェンカルボニル基、ピロリルカルボニル基、ピリジンカルボニル基等が挙げられ、好ましくはチオフェンカルボニル基等の炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜10のヘテロアリーロイル基であ
る。
の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポシキカルボニル基等が挙げられ、好ましくはメトキシカルボニル基等の炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基である。
の炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、インデニルオキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、テトラヒドロナフチルオキシカルボニル基、インダセニルオキシカルボニル基、アセナフチルオキシカルボニル基、アセナフテニルオキシカルボニル基、フェナントレニルオキシカルボニル基、アントラセニルオキシカルボニル基、トリフェニレニルオキシカルボニル基、ピレニルオキシカルボニル基、クリセニルオキシカルボニル基、テトラフェニルオキシカルボニル基、ナフタセニルオキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはフェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、アントラセニルオキシカルボニル等の炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基である。
上述した各基のうち、露光感度の点から、Rとしてはアカノイル基、シクロアルカノイル基、アリーロイル基が好ましく、アカノイル基、アリーロイル基がより好ましい。
なお、Rとして上述した各基が有しうる置換基については後述するが、上述した各基としては、置換基を有さないものが特に好ましい。
<Xについて>
一般式(I)におけるXは、単結合、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有しても良いアルケニレン基−(CH=CH)n―、置換基を有しても良い
アルキニレン基―(C≡C)n−、及びこれらの組み合わせ(nは1〜5の整数を表す。)からなる群から選ばれる2価の基である。好ましくはnは1〜3である。
アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、及び下記構造式で表される基等が挙げられる。
Figure 0005439755
アルケニレン基としてはエチニレン基のほか、下記構造式で表される基が挙げられる。―CH=CH-CH=CH―
―CH=CH-CH=CH-CH=CH−
―CH=CH-CH=CH-CH=CH−CH=CH-CH=CH−
Figure 0005439755
さらに、アルキニレン基としては、アセチレン基のほか、下記構造式で表される基が挙げられる。
―CH≡CH-CH≡CH―
―CH≡CH-CH≡CH-CH≡CH−
―CH≡CH-CH≡CH-CH≡CH−CH≡CH-CH≡CH−
さらにこれらの組み合わせとしては、下記構造式で表される基が挙げられる。
―CH2-CH=CH―
―CH2-CH=CH-CH2
―CH2-CH≡C―
―CH2-CH≡C-CH2
―CH2-CH=CH-CH2-CH=CH−
前述した一般式(I)におけるR及びR、R20〜R23、R30及びR31、並びにXが有しうる置換基、一般式(III)におけるR〜R、R90〜R92、並び
にR10及びR11が有しうる置換基としては、各々独立に次の置換基群Zから選ばれるものが挙げられる。
<置換基群Z>
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シ
アノ基;任意の有機基などを挙げることができる。
その任意の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−プチル基、イソプチル基、t−プチル基、アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐の
アルキル基;
シクロプロピル基、シクロプチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;
ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−プトキシ基、s−プトキシ基、t−プトキシ基、n−アミルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基等の炭
素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−プチルチオ基、s−プチルチオ基、t−プチルチオ基、n−アミルチオ基、t−アミルチオ基、n
−ヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、t−オクチルチオ基等の
炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアルキル基で置換されていてもよいアリール基;
ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基;
ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基;
ビニルチオ基、プロペニルチオ基、ヘキセニルチオ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルチオ基;
−COR12で表されるアシル基;
カルボキシル基;
−OCOR13で表されるアシルオキシ基;
−NR1415で表されるアミノ基;
−NHCOR16で表されるアシルアミノ基;
−NHCOOR17で表されるカーバメート基;
−CONR1819で表されるカルバモイル基;
−COOR20で表されるカルボン酸エステル基;
−SONR2122で表されるスルファモイル基;
−SO23で表されるスルホン酸エステル基;
2−チェニル基、2−ピリジル基、フリル基、オキサゾリル基、ベンゾキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和もしくは不飽和の芳香族模索環基;
トリメチルシリル基などのトリアルキルシリル基等が挙げられる。
なお、前記のR12〜R23は、各々水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルカノイル基、置換されていてもよいアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を表す。これらの位置関係は特に限定されず、複数の置換基を有する場合、同種でも異なっていてもよい。
ここでR12〜R23のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−プチル基、イソプチル基、t−プチル基、アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基等の炭素数
1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
12〜R23のアルカノイル基の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基等の炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜7のアルカノイル基が挙げられる。
12〜R23のアルキルカルボニルオキシ基の具体例としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、sec-ブチルカルボニルオキシ基、tert-
ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜21の直鎖または分岐のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。
12〜R23のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基が挙げられる。
12〜R23のアリール基の具体例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダセニル基、アセナフチル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基等の炭素数6〜20基が挙げられる。
12〜R23のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基が挙げられる。
なお、これらの基が有していてもよい置換基としては前述の置換基群Zに例示したものが挙げられる。
上記において、複数の置換基同士が結合して環を形成してもよく、形成された環は飽和あるいは不飽和の芳香族炭化水素環あるいは芳香族模索環であってもよく、環上にさらに各々置換基を有していてよく、置換基がさらに環を形成してもよい。
<分子量、水溶性>
本発明の一般式(I)で表される光重合開始剤の分子量は、通常1500以下、好ましくは1000以下である。また、本発明の一般式(I)で表される光重合開始剤は、記録媒体等の保存安定性を向上させる理由から、通常水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることを言う。
<具体例>
本発明に好適な光重合開始剤の具体例を、R,R,R及びXの組み合わせに基づき、以下の表1に例示するが、本発明で用いる光重合開始剤は、何ら以下のものに限定するものではない。なお、以下において、Meはメチル基を表す。
Figure 0005439755
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<使用量>
本発明の一般式(I)で示される光重合開始剤は、少ない使用量で十分な活性を有するものである。これは、従来の光重合開始剤に比し、発生ラジカルの分子量が小さいため、ホログラム記録層中における移動が容易であることが一因と考えられる。
本発明の一般式(I)の化合物の使用量は、ホログラム記録層形成用組成物の構成成分(a)+(b)+(c)に対する比率で、通常0.01重量%以上、中でも0.1重量%以上、また、通常10重量%以下、中でも5重量%以下の範囲とすることが好ましい。使用量が少な過ぎると、ラジカルの発生量が少なくなるため、光重合の速度が遅くなり、ホログラム記録感度が低くなる場合がある。一方、使用量が多過ぎると、光照射により発生したラジカル同士が再結合したり、不均化を生じたりするため、光重合に対する寄与が少なくなり、やはりホログラム記録感度が低下する場合がある。さらに、(I)の使用量が多すぎると、(I)の光吸収によりホログラム記録波長における記録層(媒体)の光透過率が低下してしまい、十分な記録性能が得られなくなる場合がある。
<光重合開始剤の任意成分>
本発明のホログラム記録層形成用組成物を構成する(b)成分の光重合開始剤は、前記の光重合開始剤を単独で用いることも出来るが、必要に応じて、その他の光重合開始剤を併用して用いることも出来る。
その他の光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ヒドロキシベンゼン類、チオキサントン類、アントラキノン類、ケタール類、ヘキサアリール
ビイミダゾール類、チタノセン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ハロゲン化炭化水素誘導体類、有機硼素酸塩類、有機過酸化物類、オニウム塩類、スルホン化合物類、カルバミン酸誘導体類、スルホンアミド類、トリアリールメタノール類などが挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
その他の光重合開始剤の配合量(2種以上を組み合わせる場合にはその合計量)は、本発明の光重合開始剤の機能を損なわない範囲であれば任意であるが、ホログラム記録層形成用組成物の構成成分(a)+(b)+(c)に対する比率で、通常0.01%以上、中でも0.1重量%以上、また、通常20重量%以下、中でも15重量%以下の範囲とする。更に、本発明の光重合開始剤との合計量が25重量%を超えないようにする。
光開始剤は、公知の光ラジカル重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては、アゾ系化合物、アジド系化合物、有機過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体等が用いられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。中でも、光開始剤としては、可視光領域で重合反応が生じるという理由から、チタノセン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物等が好ましい。
・チタノセン化合物
光開始剤としてチタノセン化合物を使用する場合、その種類は特に限定はされないが、例えば、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報等に記載されている各種のチタノセン化合物の中から、適宜選択して使用することができる。
チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタ

ジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)−フェニ−1−イル等が挙げられる。
・アシルフォスフィンオキサイド化合物
アシルフォスフィンオキサイド化合物の具体例としては、1分子中に光による開烈点を1ヶ所しか持たない単官能開始剤、1分子中に光による開烈点を2ヵ所有する2官能性開始剤が挙げられる。
このような単官能開始剤としては、例えば、トリフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
2官能性開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオイサイド、ビス(2,6ジクロルベンゾイル)−2,5ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
・オキシムエステル系化合物
オキシムエステル系化合物の具体例としては、以下の構造を有するものが挙げられる。
Figure 0005439755
具体的には、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]−1,2−オクタンジオン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾ
ール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)エタノン等が挙げられる。
I−3: 樹脂マトリックス
ホログラム記録媒体の記録層を構成する樹脂マトリックスは、光の照射によって化学的かつ物理的に大きく変化しない有機物であり、主に有機の重合物で構成される。
マトリックス樹脂は、前述した重合性の反応性化合物と相溶性を有し、膜状に保ち、記録層を保護しかつ補強した上で平板状に形状を保つ基板との密着性を担う役割を有し、重合性の反応性化合物や光開始剤等との相溶性に優れることが強く求められる。マトリックス樹脂とこれらの成分との相溶性が低いと、材料同士の間で界面を作り、界面で光が屈折したり反射することで必要でない部分に光が漏れるので干渉縞が歪んだり切れたりして不適当な部分に記録されることにより情報の劣化を起す。マトリックス樹脂と他の成分との相溶性は、例えば、特許第3737306号公報などに記載があるように、サンプルに対して、透過する光と角度をもって検出器を設置することにより得られる散乱光強度などに基づいて評価することができる。
本発明において、ホログラム記録媒体の記録形成用組成物を構成する樹脂マトリックスとしては、溶剤に溶解可能な樹脂を用いても、三次元架橋させた樹脂を用いてもよい。
I−3−1.溶剤に溶解可能な樹脂
樹脂マトリックスとして溶剤に溶解可能な樹脂(熱可塑性樹脂)を用いる場合、ホログラム記録媒体の記録層は、全部の材料を混合して均一に分散した後、プレスや射出成形など熱加工工程で形成することができる。この際、熱で樹脂を溶融させる必要があるので一般的には高温を必要とし、重合性の反応性化合物の劣化に注意が必要である。
また、溶媒に溶かして基板の上に溶液を供給し、回転や機械的なならし作業で厚みを整え、溶剤を除去した後に別の基板を重ねて張り合わせることでホログラム記録媒体の記録層を形成することもできる。また、異なる基板の上で上記のように形成した後、一旦基板から剥がして別の基板の上に移して別の基板と挟んで張り合わせることもできる。何れにしても溶剤を除く必要があり、一回の操作で厚い膜を作るのは困難であり、複数回の作業が必要になるので、経済的に懸念される。
溶剤に溶解可能な樹脂としては、塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他のアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロースなどが挙げられる。この中で好ましくは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラールである。
これらの樹脂の溶剤としてはこれらを溶かすものであれば特に制約はないが、アセトンやメチルエチルケトンといったケトン類、酢酸ブチルやプロピレングリコールメチルエーテルアセテートといったエステル類、トルエンやキシレンといった芳香族炭化水素、テトラヒドロフランや1,2−ジメトキシエタンといったエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミドやN−メチルピロリドンといったアミド類などを挙げることができる。また、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
I−3−2.三次元架橋した樹脂マトリックス
マトリックス樹脂として三次元架橋した樹脂マトリックスを用いることもできる。一般に、三次元架橋させた樹脂は溶剤不溶性であり、常温で液状である重合性化合物と重合性化合物に対し反応活性な化合物との反応硬化物を含む。三次元架橋させた樹脂は、高温でも形状が保持されやすく、物理的な障害となるため、記録時における体積変化を抑制しやすい。即ち、記録後の記録層では、明部は膨張し暗部は収縮し、体積ホログラム光記録媒体表面に凹凸が生じてしまう。この体積変化を抑制するために、記録層には三次元架橋させた樹脂マトリックスを用いるのがより好ましい。
この中で、相溶性や基板との密着性の観点で、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましく、中でもイソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン樹脂が好ましい。
三次元架橋樹脂マトリックスを形成するのに使用できる反応の例としては、これらに限定されるものではないが、ラジカル重合、カチオンエポキシ重合、カチオンビニルエーテル重合、カチオンアルケニルエーテル重合、カチオンアレンエーテル重合、カチオンケテンアセタール重合、エポキシ−アミン付加重合、エポキシ−チオール付加重合、不飽和エステル−アミン付加重合(マイケル付加による)、不飽和エステル−チオール付加重合(マイケル付加による)、ビニル−シリコンヒドリド付加重合(ヒドロシリル化)、イソシアネート−ヒドロキシル付加重合(ウレタン形成)、イソシアネート−チオール付加重合およびイソシアネート−アミン付加重合(ウレア形成)等がある。
上記の反応は、適当な触媒により可能になり、または促進される。例えば、カチオンエポキシ重合は、BFを主成分にした触媒を用いて室温で速く起こり、他のカチオン重合はプロトン存在下で進行し、エポキシ−メルカプタン反応とマイケル付加はアミン等の塩基により促進され、ヒドロシリル化は白金などの遷移金属触媒の存在化で速く進行し、ウレタンとウレア形成はスズ触媒が用いられるときに速く進行する。またラジカル重合は適当な熱もしくは光重合開始剤を用いることにより進行させることが可能である。なお、樹脂マトリックスの形成に光重合開始剤を用いる場合、ホログラム記録媒体の記録時にも光を照射するので、マトリックス形成時の光硬化波長と記録する時の波長が異なることが重要であり、波長の差としては小さくとも10nm、好ましくは30nmである。開始剤の選択は概ね開始剤の吸収波長から予想することができる。
上述した三次元架橋樹脂マトリックスを形成するのに使用できる反応のうち、イソシアネート−ヒドロキシル付加反応、イソシアネート−アミン付加反応、イソシアネート−チオール付加反応、エポキシ−アミン付加反応、エポキシ−チオール付加反応などは適当な温度範囲で反応が進行することなどから反応制御が容易で、また工業的な生産性(相溶性、基板との密着性など)も良好なため好ましく用いられる。
以下これらの反応に用いることが出来る原料化合物について説明する。
(1)ポリイソシアネート
イソシアネート−ヒドロキシル反応、イソシアネート−アミン反応、イソシアネート−チオール反応で使用できるポリイソシアネートは、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば、その種類は特に制限されない。1分子中のイソシアネート基の数としては、通常2以上であれば特に制限されない。イソシアネート基の数が少ないとマト
リックスとして必要な硬さが得られなくなる場合がある。一方、イソシアネート基の数の上限は特に制限されないが、通常5以下が好ましい。イソシアネート基がマトリックス中に多く残存すると、マトリックスの保存安定性を悪化させる可能性がある。
発明で使用するポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族イソシアネート;トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,5-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ
ート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5’−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;及びこれらの多量体等が挙げられ、中でも3〜7量体が好ましい。また、水、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類との反応物、なども挙げられる。これらの中では、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びこれらの多量体、若しくはその誘導体が特に好ましい。また、上記のイソシアネート類と、分子内に2個以上の活性水素を有する化合物とを反応させ、多官能の末端イソシアネート基を有するポリイソシアネート(プレポリマー)なども使用することができる。分子内に2個以上の活性水素を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、および後述のポリオール類等などを用いることが出来る。
イソシアネート基を有する化合物の平均的な分子量は、数平均で100以上50000以下が好ましく、より好ましくは150以上10000以下、更に好ましくは150以上5000以下である。100以下だと、架橋密度が上がるためにマトリックスの硬度やガラス転移温度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、10000以上だと他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるためにマトリックスの硬度やガラス転移温度が低くなりすぎ記録内容が不安定となったり、消失する場合がある。
なお、イソシアネート基を有する化合物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、イソシアネート基以外の構成要素を含んでいてもよい。
(2)ポリオール
イソシアネート−ヒドロキシル反応で使用できるポリオールは、1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するものであれば、その種類は特に制限されない。1分子中のヒドロキシル基の数としては、通常2以上であれば特に制限されない。ヒドロキシル基の数が少ないとマトリックスとして必要な硬さが得られなくなる場合がある。一方、ヒドロキシル基の数の上限は特に制限されないが、通常7以下が好ましい。ヒドロキシル基がマトリックス中に多く残存すると、マトリックスの吸湿性が高くなり、記録の保存安定性に影響を及ぼす場合もある。
ポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエンチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等がある。
ポリオールの平均的な分子量は、数平均で100以上50000以下が好ましく、より好ましくは150以上10000以下、更に好ましくは150以上5000以下である。
100以下だと、架橋密度が上がるためにマトリックスの硬度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、50000以上だと他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるためにマトリックスの硬度が低くなりすぎ記録内容が消失する場合がある。
なお、ポリオールの使用量は、イソシアネート基のモル数に対する割合で通常0.1当量以上、中でも0.7当量以上、また通常2.0当量以下、中でも1.5当量以下の範囲が好ましい。使用量が少なすぎても多過ぎても、未反応の官能基数が多く、保存安定性を失ってしまう場合がある。
(3)エポキシ
エポキシ−アミン反応、エポキシ−チオール反応に使用できるエポキシ化合物は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものであれば、その種類は特に制限されない。1分子中のエポキシ基の数としては、通常2以上であれば特に制限されない。エポキシ基の数が少ないとマトリックスとして必要な硬さが得られなくなる場合がある。一方、エポキシ基の数の上限は特に制限されないが、通常5以下が好ましい。エポキシ基がマトリックス中に多く残存すると、記録の保存安定性に影響を及ぼす場合もある。
1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物の例としては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオールのポリグリシジジルエーテル化合物、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート等の4〜7員環の環状脂肪族基を有する脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物の平均的な分子量は、数平均で100以上50000以下が好ましく、より好ましくは150以上10000以下、更に好ましくは150以上5000以下である。100以下だと、架橋密度が上がるためにマトリックスの硬度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、50000以上だと他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるためにマトリックスの硬度が低くなりすぎ記録内容が消失する場合がある。
(4)アミン
イソシアネート−アミン付加反応、エポキシ−アミン付加反応に使用できる化合物の例としては、1分子中に2つ以上のアミノ基を有するものであればその種類は特に制限されない。
1分子中に2つ以上のアミノ基を有する化合物の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂環族アミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミンなどの芳香族アミン等がある。
アミノ基を有する化合物の平均的な分子量は、数平均で100以上50000以下が好ましく、より好ましくは150以上10000以下、更に好ましくは150以上5000以下である。100以下だと、架橋密度が上がるためにマトリックスの硬度が高くなりすぎ、記録速度が低下する可能性がある。また、50000以上だと他成分との相溶性が低下したり、架橋密度が下がるためにマトリックスの硬度が低くなりすぎ記録内容が消失する場合がある。
なお、アミンの使用量は、イソシアネート基またはエポキシ基のモル数に対する割合で通常0.1当量以上、中でも0.7当量以上、また通常2.0当量以下、中でも1.5当量以下の範囲が好ましい。使用量が少なすぎても多過ぎても、未反応の官能基数が多く、保存安定性を失ってしまう場合がある。
(5)チオール
イソシアネート−チオール付加反応、エポキシ−チオール付加反応に使用できる化合物の例としては、1分子中に2つ以上のチオール基を有するものであればその種類は特に制限されない。
1分子中に2つ以上のチオール基を有する化合物の例としては、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール等が挙げられる。
なお、チオールの使用量は、イソシアネート基またはエポキシ基のモル数に対する割合で通常0.1当量以上、中でも0.7当量以上、また通常2.0当量以下、中でも1.5当量以下の範囲が好ましい。使用量が少なすぎても多過ぎても、未反応の官能基数が多く、保存安定性を失ってしまう場合がある。
(6)マトリックス樹脂形成のための触媒
前述の通り、これらの樹脂マトリックスを形成する場合、適当な触媒を用いることによりその形成を容易に進行させることができたり、その形成が促進される場合がある。そのような触媒の例として、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−
ブタンスルホン酸、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホン
酸、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、(4
−ブロモフェニル)ジフェニルスフホニウムトリフラート、(4−t−ブチルフェニル)
ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホン酸、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスホン酸などのオニウム塩類、塩化亜鉛、塩化すず、塩化鉄、塩化アルミニウム、BF、などのルイス酸を主成分にした触媒、塩酸、リン酸、などのプロトン酸、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチエレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、ジアザビシクロウンデセンなどのアミンルイ、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、トリメリット酸1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリルウム、などのイミダゾール類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムなどの塩基類、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート、ジブチルスズオクトエートなどのスズ触媒などが挙げられる。また、ラジカル重合は、適当な熱もしくは光重合開始剤を用いることにより進行させることが可能である。重合開始剤の具体例としては、後述のI−4.に例示するものなどが挙げられる。これらの触媒は、樹脂マトリックス形成成分の総量に対し通常0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上、また通常10%以下、好ましくは5%以下の範囲で用いられる。
I−4.その他の成分
その他、本発明のホログラム記録層形成用組成物は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、上述の光活性化合物(a)、光重合開始剤(b)、樹脂マトリックス(c)以外に、その他の成分を含有していてもよい。
例えば、ホログラム記録に関しては、記録時の明部で生じる光反応を制御することが重要になるため、重合を制御することができる添加剤等を添加するのが好ましい。重合を制御することができる添加剤としては、テルペノイド骨格を有する化合物、少なくとも2個以
上の二重結合を有し、さらにその二重結合の位置が相対的1,4位に存する環状、もしくは
非環状化合物、アリル化合物、メルカプト化合物、アミン系化合物、フェノール類等が挙げられる。
また、本発明のホログラム記録層形成用組成物には、増感体の励起波長や励起エネルギーの制御、反応の制御、特性の改良等の必要に応じて、任意の添加剤を配合することができる。
そのような添加剤の例としては、以下の化合物が挙げられる。
増感体の励起を制御する化合物の例としては、増感剤、増感補助剤等が挙げられる。
増感剤としては、公知の各種の増感剤の中から、任意に選択して用いることができ、記
録に使用するレーザー光の波長と使用する開始剤の種類にもよるが、緑色レーザーを用いる系の場合、好ましい増感剤の具体例としては、特開平5−241338号公報、特開平2−69号公報、特公平2−55446号公報等に記載されている化合物が、青色レーザーを用いる系の場合は、特開2000−10277号公報、特開2004−198446号公報、特開2005−62415号公報、特開2005−91593号公報、特開2004−191938号公報、特開2004−272212号公報、特開2004−212958号公報、特開2004−252421号公報、特開2005−107191号公報、特開2004−264834号公報等に記載されている化合物が挙げられる。上記例示の各種の増感剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
尚、得られるホログラム記録媒体ないしホログラム記録材料に無色透明性が要求される場合には、増感剤としてシアニン系色素を使用することが好ましい。即ち、シアニン系色素は一般に光によって分解し易いため、後露光を行なう、即ち、室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することで、ホログラム記録媒体ないしホログラム記録材料中のシアニン系色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明なホログラム記録媒体ないしホログラム記録材料が得られる。
増感剤の量は、形成される記録層の厚さによって増減する必要があるが、I−2.光重
合開始剤に対する比率で、通常0.01重量%以上、中でも0.1重量%以上、また、通常10重量%以下、中でも5重量%以下の範囲とすることが好ましい。増感剤の使用量が少な過ぎると、開始効率が低下し、記録に多大な時間を要する場合がある。一方、増感剤の使用量が多過ぎると、記録や再生に使用する光の吸収が大きくなり、深さ方向へ光が届き難くなる場合がある。2以上の増感剤を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにする。
上記以外の添加剤として、反応効率の向上や記録層の物性調整のための可塑剤、記録層の吸水率制御のためなどの添加剤などを用いることができる。
可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシルなどのフタル酸エステル類、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジ−n−ブチルなどのアジピン酸エステル類、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどのセバシン酸エステル類、リン酸トリクレシルなどのリン酸エステル類、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル類、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル類、エポキシ化大豆油、塩素化パラフィン、アセトキシメトキシプロパンなどのアルコキシ化(ポリ)アルキレングリコールエステル、ジメトキシポリエチレングリコールなどの末端アルコキシ化ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
これらの可塑剤は光活性組成物の全固形分に対する比率で通常0.01重量%以上50
重量%以下、好ましくは0.05重量%以上20重量%以下の範囲で用いられる。これらの可塑剤の使用量がこれより少ないと、反応効率の向上や物性の調整に対する効果が発揮されず、これより多いと記録層の透明性が低下したり、可塑剤のブリードアウトが顕著になったりして好ましくない。
更に、反応の制御に使用する化合物を添加することもできる。この場合の例としては、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、相溶化剤、反応補助剤等が挙げられる。
これらの具体例としては、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、アニリンなどのアミン化合物、p-メトキシフェノール、2,6−ジーt−ブチルーp−クレゾール、2,4,6−トリメチルフェノール、ベンジルアミノフェノール、ジヒドロキシベンゼン、ピロガロール、レゾルシノールなどのフェノール類、ベンゾキノン、ヒドロキノン、などのキノン類、ニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼンなどのニトロ化合物、酢酸アリル、ブタン酸アリル、、ジアリルマロン酸ジエチル、アリルベンゼン、アリルアルコール、アリルアミンなどのアリル化合物、ベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン、ドデカンチオールなどのチオール類、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ブチルジスルフィドなどのスルフィド類、テルピノレン、α―テルピネンなどのテルペノイド、1,4−シクロヘキサジエンなどの1,4−ジエン類などが挙げられる。
その他、特性改良上必要とされ得る添加剤の例としては、分散剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせお

よび比率で併用してもよい。
これらの添加剤の使用量は、本実施の形態の光活性組成物の全固形分に対する比率で、通常0.0005重量%以上、中でも0.001重量%以上、また、通常30重量%以下、中でも10重量%以下の範囲とすることが好ましい。2以上の添加剤を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにする。
[II.ホログラム記録材料]
本発明のホログラム記録層形成用組成物を用いたホログラム記録材料を以下「本発明のホログラム記録材料」という。
本発明のホログラム記録材料は、本発明のホログラム記録層形成用組成物のみからなっていてもよく、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分に特に制限は無いが、例としては光分散剤、色材等の各種の添加剤が挙げられる。その他の成分の含有量も、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて任意である。
また、本発明のホログラム記録層形成用組成物は、光の干渉によって生じる干渉縞を三次元的に記録することが可能であり、体積型ホログラム方式の光記録媒体に用いるのが好適である。
[III.ホログラム光記録媒体]
本発明のホログラム光記録媒体は、前記一般式(1)で表されるケトオキシムエステル系光重合開始剤(b)の1種又は2種以上を含む本発明のホログラム記録材料を含有する層を少なくとも備えてなる。本発明のホログラム記録材料を含有する層は任意であるが、通常は、情報の記録が行われる層(これを「記録層」という)である。本発明のホログラム光記録媒体におけるその他の具体的な構成に制限は無く、任意である。以下、本発明の一実施形態に係るホログラム光記録媒体(これを「本実施形態の光記録媒体」という場合がある。)について詳しく説明する。
本実施形態の光記録媒体は、少なくとも本発明のホログラム記録材料を用いて形成された記録層を備えて構成される。また、本実施形態の光記録媒体は、必要に応じて、支持体及びその他の層を備えて構成される。
なお、後述の記録方法の項に詳述するとおり、該記録層中に含まれる光活性化合物(a)は、ホログラム記録などによってその一部が重合等の化学的な変化を生じるものである。従って、記録後のホログラム記録媒体においては、光活性化合物の一部が消費され、重合体など反応後の化合物として存在する。該光活性化合物の消費量は、記録情報量によっても変動すると考えられるが、データ記録後に、記録部分に一様な光を当てて、残存する光活性化合物をあえて消費させる、いわゆる「後露光」のような工程を経る場合には、該光活性化合物の大半が反応後の化合物に変化するものである。
III−1:記録層
記録層は、情報が記録される層である。情報は通常、ホログラムとして記録される。本実施形態の光記録媒体において、記録層は、本発明のホログラム記録材料を用いて形成されたものであれば、その他に特に制限はない。記録層の厚みにも特に制限は無く、記録方法等を考慮して適宜定めればよいが、一般的には、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常2cm以下、好ましくは1.5cm以下の範囲である。記録層が厚過ぎ
ると、光記録媒体における多重記録の際、各ホログラムの選択性が低くなり、多重記録の度合いが低くなる場合がある。また、記録層が薄過ぎると、記録層全体を均一に成形することが困難であり、各ホログラムの回折効率が均一で且つS/N比の高い多重記録が難しくなる場合がある。
III−2:支持体
通常、光記録媒体は支持体を有し、記録層やその他の層は、この支持体上に積層されて光記録媒体を構成する。ただし、記録層又はその他の層が必要な強度や耐久性を有する場合には、光記録媒体は支持体を有していなくてもよい。
支持体は、必要な強度及び耐久性を有しているものであれば、その詳細に特に制限はなく、任意の支持体を使用することができる。
具体的に、支持体の形状に制限は無いが、通常は平板状又はフィルム状に形成される。
また、支持体を構成する材料にも制限は無く、透明であっても不透明であってもよい。支持体の材料として透明なものを挙げると、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフトエート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アモルファスポリオレフィン、ポリスチレン、酢酸セルロースなどの有機材料;ガラス、シリコン、石英などの無機材料が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、アモルファスポリオレフィン、ガラスなどが好ましく、特に、ポリカーボネート、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ガラスがより好ましい。
一方、支持体上の材料として不透明なものを挙げると、アルミ等の金属;前記の透明支持体上に金、銀、アルミ等の金属、又は、フッ化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の誘電体をコーティングしたものをなどが挙げられる。
支持体の厚みにも特に制限は無いが、通常は0.1mm以上、1cm以下の範囲とすることが好ましい。支持体が薄過ぎると光記録媒体の機械的強度が不足し基板が反る場合があり、厚過ぎると光の透過量が減りさらにコストが高くなる場合がある。
また、支持体の表面に表面処理を施してもよい。この表面処理は、通常、支持体と記録層との接着性を向上させるためになされる。表面処理の例としては、支持体にコロナ放電処理を施したり、支持体上に予め下塗り層を形成したりすることが挙げられる。ここで、下塗り層の組成物としては、ハロゲン化フェノール、又は部分的に加水分解された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
更に、表面処理は、接着性の向上以外の目的で行なってもよい。その例としては、例えば、金、銀、アルミ等の金属を素材とする反射コート層を形成する反射コート処理;フッ化マグネシウムや酸化ジルコニウム等の誘電体層を形成する誘電体コート処理などが挙げられる。また、これらの層は、単層で形成してもよく、2層以上を形成してもよい。
また、支持体は、本発明の光記録媒体の記録層の上側及び下側の何れか一方にのみ設けてもよく、両方に設けてもよい。但し、記録層の上下両側に支持体を設ける場合、支持体の少なくとも何れか一方は、活性エネルギー線(励起光、参照光、再生光など)を透過させるように、透明に構成する。
記録層の片側又は両側に透明支持体を有する光記録媒体の場合、透過型又は反射型のホログラムが記録可能である。また、片側に反射特性を有する支持体を用いる場合は、反射型のホログラムが記録可能である。
更に、支持体にデータアドレス用のパターニングを設けてもよい。パターニング方法に制限は無いが、例えば、支持体自体に凹凸を形成してもよく、反射層(後述する)にパターンを形成してもよく、これらを組み合わせた方法により形成してもよい。
本実施形態の光記録媒体には、上述した記録層及び支持体以外に、その他の層を設けてもよい。その他の層の例としては、保護層、反射層、反射防止層(反射防止膜)等が挙げられる。
III−3:保護層
保護層は、酸素や水分による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための層である。保護層の具体的構成に制限は無く、公知のものを任意に適用することが可能である。例えば、水溶性ポリマー、有機/無機材料等からなる層を保護層として形成することができる。
III−4:反射層
また、反射層は、光記録媒体を反射型に構成する際に形成される。反射型の光記録媒体の場合、反射層は支持体と記録層との間に形成されていてもよく、支持体の外側面に形成されていてもよいが、通常は、支持体と記録層との間にあることが好ましい。
更に、透過型及び反射型の何れの光記録媒体についても、記録光及び読み出し光が入射及び出射する側や、或いは記録層と支持体との間に、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつゴースト像の発生を抑制する働きをする。
III−5:製造方法
本実施形態の光記録媒体の製造方法に特に制限は無く、任意の方法で製造することが可能である。例としては、本発明のホログラム記録材料を支持体に無溶剤で塗布し、記録層を形成して製造することができる。この際、塗布方法としては任意の方法を使用することができる。具体例を挙げると、スプレー法、スピンコート法、ワイヤーバー法、ディップ法、エアーナイフコート法、ロールコート法、及びブレードコート法、ドクターロールコート法等が挙げられる。
また、特に膜厚の厚い記録層を形成する場合には、本発明のホログラム記録材料を型に入れて成型する方法や、離型フィルム上に塗工して型を打ち抜く方法を用いて、記録層を形成することもできる。
またたとえばイソシアネート化合物と活性水素を有する化合物との反応により三次元架橋樹脂マトリックスを成型するような場合は、成型直前にイソシアネート化合物を主とする組成物と活性水素を有する化合物を主とする組成物とを混合し、そのまま成型し記録層を形成させるような手法を取ることもできる。
また、本発明のホログラム記録材料を溶剤と混合して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布し、乾燥して記録層を形成してもよい。この場合も、塗布方法としては任意の方法を使用することができる。例としては、上述した塗布方法と同様の方法が挙げられる。
また、溶剤の種類にも特に制限はないが、通常は、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与え、且つ、支持体を侵さないものを使用することが好ましい。
溶剤の例を挙げると、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶剤;或いはこれらの混合溶剤などが挙げられる。
なお、これらの溶剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、溶剤の使用量にも特に制限は無い。但し、塗布効率や取り扱い性等の面から、塗布液の固形分濃度が1重量%以上、100重量%以下程度となるように、溶剤の使用量を調整することが好ましい。
更に、本発明のホログラム記録材料に揮発性成分が少ない場合は、本発明のホログラム記録材料を、例えば、射出成形法やホットプレス法などによって成形して製造することができる。この場合、成形体が十分な厚み、剛性、強度などを有する場合には、当該成形体をそのまま本実施形態の光記録媒体とすることができる。
また、上述の樹脂マトリックスを所望の形状に成形してから、光活性化合物、その他添加剤等を含浸させることにより、本発明のホログラム記録材料からなる記録層を作製してもよい。
上述の手順で製造された本実施形態の光記録媒体は、自立型スラブ又はディスクの形態をとることができ、三次元画像表示装置、回折光学素子、大容量メモリ等の用途に使用できる。
III−5:情報の記録及び再生方法
本実施形態の光記録媒体に対する情報の書き込み(記録)及び読み出し(再生)は、何れも光の照射によって行なわれる。
まず、情報の記録時には、光活性化合物の重合及び濃度変化を生じさせることが可能な光を、物体光(記録光とも呼ばれる。)として用いる。特に、本実施形態の光記録媒体では、情報をホログラムとして記録するため、物体光を参照光と共に記録層に対して照射し、記録層において物体光と参照光とを干渉させるようにする。これによってその干渉光が、記録層内の光活性化合物の重合及び濃度変化を生じさせ、その結果、干渉縞が記録層内に屈折率差を生じさせ、前記の記録層内に記録された干渉縞により、記録層にホログラムとして記録されるのである。
一方、記録層に記録されたホログラムを再生する場合は、所定の再生光(通常は、参照光)を記録層に照射する。照射された再生光は前記干渉縞に応じて回折を生じる。この回
折光は前記記録層と同様の情報を含むものであるので、前記回折光を適当な検出手段によって読み取ることにより、記録層に記録された情報の再生を行なうことができる。
なお、記録光、再生光及び参照光は、その波長領域はそれぞれの用途に応じて任意であり、可視光領域でも紫外領域でも構わない。これらの光の中でも好適なものとしては、例えば、ルビー、ガラス、Nd−YAG、Nd−YVO4等の固体レーザー;GaAs、I
nGaAs、GaN等のダイオードレーザー;ヘリウム−ネオン、アルゴン、クリプトン、エキシマ、CO2等の気体レーザー;色素を有するダイレーザー等の、単色性と指向性に優れたレーザーなどが挙げられる。
また、記録光、再生光及び参照光の照射量には何れも制限は無く、記録及び再生が可能な範囲であればその照射量は任意である。但し、極端に少ない場合には光活性化合物の化学変化が不完全過ぎて記録層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない虞があり、逆に極端に多い場合は、記録層の成分(本発明のホログラム記録材料)が劣化を生じる虞がある。したがって、記録光、再生光及び参照光は、記録層の形成に用いた本発明のホログラム記録材の組成や、重合開始剤の種類、及び配合量等に合わせて、通常1mJ/cm2以上、20J/cm2以下の範囲で照射する。
また、ホログラム記録方式としては、偏光コリニアホログラム記録方式、参照光入射角多重型ホログラム記録方式等があるが、本発明のホログラム記録層形成用組成物を記録媒体として使用する場合にはいずれの記録方式でも良好な記録品質を提供することが可能である。
III−6:性能
本発明のホログラム記録媒体は、記録感度に優れ、回折効率および、ホログラム記録波長に対する光透過率が高いという特徴を有する。
III−6−1.M/#(エムナンバー)
ホログラム記録によって生じる記録部と未記録部の屈折率の差は、投入する露光エネルギーごとの回折効率となって測定される。投入する露光エネルギーは多重に記録する手順により測定される。多重の方法は、角度の固定された交差する光を入射角を変えながら行う角度多重、入射角度は変えずに場所を異動させながら行うシフト多重、波長を変えながら行う波長多重といった方法により行われるが、角度多重が簡便であり、これにより材料や各成分の性能を把握することができる。
多重に記録することで得られた回折効率の和であるM/#(エムナンバー)は、記録の容量の目安になる数値であるから、大きい方が媒体として良い性能であるといえる。
一般的に光活性化合物の含有率が高いほど回折効率は大きくなり、M/#も大きくなる。
本実施の形態のホログラム記録媒体の記録層のM/#は、500μm厚の記録層として評価した場合、通常10以上、好ましくは12以上、特に好ましくは15以上である。
なお、上述の通り、M/#の値は大きいほど好ましく、明確な上限は存在しないが、例えば記録容量1TBを達成するためにはM/#100程度の値が必要となる。
なお、上述の如く、本発明に係る記録層のM/#(エムナンバー)は、厚さ500μmの記録層について評価した値である。
即ち、あるホログラム記録媒体について設けてある記録層を厚さ500μmとしたこと以外は同様にして後述の実施例の項に示す評価用の媒体を作製し、この評価用の媒体がM/#(エムナンバー)10以上、特に12以上、中でも15以上となるものであれば、本発明に好適なホログラム記録媒体と言うことができる。
このM/#(エムナンバー)は、後述の実施例の項に示す方法で測定される。
或いは、記録層膜厚が500μmではない記録媒体の場合、その媒体について同様の方
法でM/#を評価し、記録層膜厚500μmでの値に換算した結果が、10以上、特に12以上、中でも15以上となるものであれば、本発明に好適なホログラム記録媒体と言うことができる。
M/#は、一般に記録層膜厚が大きくなるにつれ、値が大きくなる傾向がある。
記録層膜厚200〜700μmにおいては記録層膜厚とM/#とはほぼ比例関係を示すので、この膜厚範囲内の記録層を有する媒体について評価した結果は、比例換算で膜厚補正することで対比することが可能となる。
一方、記録層膜厚が1000μmを超える範囲については記録層膜厚に対するM/#の増加は緩やかとなり、単純に比例計算で膜厚補正したのでは、対比が難しい。この場合には、500μm厚において上記数値範囲となることが予め判っている記録層組成を選び、500μm厚と、評価対象である実際の媒体の記録層厚みに相当する膜厚とで媒体を作製し、この両者の相関に基づいて、実際の媒体のM/#値を500μm厚でのM/#値に換算することが可能となる。
また、基板や保護層、反射層など、ホログラム記録媒体を構成する記録層以外の層は、M/#の値に大きく影響しないので、記録層以外の層構成が異なる媒体についても、M/#の直接の対比が可能である。
III−6−2.感度
本発明において、感度とは、サンプルが示す最大M/#の80%に達するまでの平均感度を表すものとし、次のように算出される。
感度=(0.8×(M/#))/(I×ts×L)
ここで、Iは入射光強度(mW/cm)、tsはM/#が80%に達するまでの総露光時間(秒)、Lは記録層厚み(cm)である。
本実施の形態のホログラム記録媒体の記録層の感度は、通常0.05cm/mJ以上、30cm/mJ以下、より好ましくは0.1cm/mJ以上、10cm/mJ以下である。
記録層厚みで規格化した値であるため、感度の記録層厚み依存が明示的に示されるわけではない。一方、感度の値は記録層の光透過率、開始剤種、開始剤量、光活性化合物、マトリックスのガラス転移温度、弾性率、添加剤の有無、種類、その他各種要因で変動しうる値である。
III−6−3.光透過率
光透過率の測定は光による記録を行う上で重要な指標である。記録の前に高い光透過率であることはより深い記録層まで記録して容量を向上させる上で、よい性能であるといえる。
同様に記録の後でも高い光透過率であることは記録の再生において誤りを少なくできるので、よい性能であるといえる。
この光透過率の測定に用いる光としては、記録する波長あるいはその近傍であることが望ましいが、記録前の記録層内の光開始剤の化学変化が顕著となり透過度が時間的に変化するため、十分に短い時間で測定しなければならない。その点を注意さえすれば、問題なく測定し信頼と再現性のある測定値を得ることが出来る。十分に短い時間とは概ね1秒程 度以下である。記録後であれば、光開始剤が消費されて時間的な変化を引き起こすことがないので測定時間を気にすることはない。
一般に、この光透過率は100%に近い程好ましいが、概ね60%以上、特に80%以上であることが好ましい。本実施の形態のホログラム記録媒体であれば、記録層膜厚500μmとして評価した場合に、記録前光透過率として、通常60%以上、好ましくは70%以上、記録後光透過率として通常60%以上、好ましくは70%以上を達成することができる。なお、この光透過率は、具体的には後述の実施例の項に記載した方法で測定される。
また、記録層膜厚が500μmではない記録媒体の場合、その媒体について同様の方法で光透過率を評価し、記録層膜厚500μmでの値に換算した結果が、光透過率60%以上、好ましくは70%以上となるものであれば、本発明に好適なホログラム記録媒体と言うことができる。
光透過率は一般に記録層膜厚の影響を受け、光透過率100%である場合を除き、記録層膜厚が厚くなるほど、光透過率は低下する傾向がある。記録層膜厚200〜700μmにおいては記録層膜厚と光透過率はほぼ反比例関係を示すので、この膜厚範囲内の記録層を有する媒体について評価した結果は、反比例換算で膜厚補正することで対比が可能となる。
一方、記録層膜厚が1000μmを超える範囲については記録層膜厚に対する光透過率の減少は100%である場合を除き、記録層膜厚200〜700μmにおける反比例関係よりも急激に減少し、単純な換算は難しい。
なお、基板や保護層など、ホログラム記録媒体を構成する記録層以外の透明層は、通常記録層に対して十分大きな光線透過率を有しており、媒体としての光線透過率の値は実質記録層の透過率と見なすことができる。反射層などの不透明層を有する記録媒体の場合には、反射層の厚さは記録層や基板などに比べて十分の一以下と十分に薄いので媒体への光透過率の影響は無視できる。このようにして、記録層以外の層構成が異なる媒体についても、光線透過率の直接の対比が可能である。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
・光重合開始剤の合成
1)モノケトン体の合成
エチルカルバゾール(5g、25.61mmol)と、o−トルオイルクロリド(4.15g、26.89mmol)を30mlのジクロロメタンに溶解し、氷水バスにて2℃に冷却して攪拌し、塩化アルミニウム(3.41g、25.61mmol)を添加した。さらに室温にて3時間攪拌した。反応液を氷水200mlにあけ、ジクロロメタン200ml添加し、有機層を分液した。回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートし、白色固体(10g)を得た。反応式は下記に示した。
Figure 0005439755
2)ジケトン体の合成
上記で合成したモノケトン体(10g、31.91mmol)とエチルグルタリルクロリド(5.84g、32.69mmol)を100mlのジクロロメタンに溶解し、氷水バスにて2℃に冷却して攪拌し、塩化アルミニウム(13.62g、102.11mmol)を添加した。さらに室温にて3.5時間攪拌した。反応液を氷水500mlにあけ、
ジクロロメタン200mlを添加し有機層を分液した。回収した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートして濃縮した。得られたオイルを酢酸エチル/n−ヘキサン(
重量比1/1)で再結晶し、白色固体9.8gを得た。反応式は下記の通りである。
Figure 0005439755
3)ケトオキシム体の合成
上記で得られたジケトン体(3.82g、8.61mmol)を50mlのジクロロメタンに溶解し、-5℃に冷却して攪拌し、亜硝酸イソアミル(1.36g、11.62m
mol)を添加した。さらに、-13℃に冷却し、トリメチルシリルクロリド(3.12
g、27.72mmol)を滴下した。滴下終了後、室温まで1時間かけて昇温した。反
応液をエバポレートし濃縮した。残渣を酢酸エチル/n-ヘキサン(重量比=2/1)の混
合溶媒を使用してカラムクロマトグラフィーにより精製して淡黄色結晶2.0gを得た。
反応式は下記の通りである。
Figure 0005439755
4)オキシムエステル体(X1)の合成
上記で得られたケトオキシム体(5.0g、10.32mmol)とアセチルクロリド(1.62g、20.64mmol)をジクロロメタン50gに溶解して氷冷し、トリエチルアミン(2.09g、20.64mmol)を滴下して、さらに室温で4時間反応した。薄層クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した後、水を入れて有機層を分液し、飽和塩化アンモニウム水溶液で2回、5% 炭酸ナトリウム水溶液で3回洗浄後、飽和
食塩水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、エバポレートした。残渣を酢酸エチル/n-ヘキサン(重量比=2/1)の混合溶媒を使用してカラムクロマトグラフィーで精製して1.6gの白色結晶を得た。
該白色結晶のNMRシフト値は次の通りであった。
NMR:σ=1.17(t, 3H), 1.45(t, 3H), 2.30(s, 3H), 2.37(s, 3H), 2.75(t, 2H),3.15(t, 2H), 4.15(q, 2H), 4.38(q, 2H), 7.3−7.5(m, 6H), 8.18(dd, 1H), 8.37(dd, 1H), 8.60(d, 1H), 8.82(d, 1H)
また反応式は下記の通りである。
Figure 0005439755
・媒体の作成
サンプル瓶1にヘキサメチレンジイソシアネート 9.66g,N−ビニルカルバゾール 1.08g、4)で得られたオキシムエステル体(X1)構造を有する光重合開始剤0.055gを秤量し、各成分が溶解するまで攪拌した。
Figure 0005439755
次に、サンプル瓶2に分子量約700のポリカーボネートポリオール(旭化成社製、T−5650J) 22.8g、トリメチロールプロパン2.54g、およびジオクチル錫ジラウレート0.007gを秤量し、各成分が溶解するまで攪拌した。
その後、サンプル瓶2をベルジャーに入れ、3時間真空で脱気した後、サンプル瓶1,2の液を混ぜ合わせて攪拌混合し、ベルジャーで数分間、真空で脱気した。
続いて、スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスに上に、真空脱気した液を流し込み、その上にスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して測定用ホログラム記録媒体を作製した。この測定用ホログラム記録媒体は、図2に示すように、カバー層21,23としてのスライドガラス間に、厚さ500μmの記録層22が形成されたものである。
このようにして得られたサンプルについてホログラム記録性能を評価を行った。評価の条件は次の通りである。評価結果は表1に記した。
[ホログラム記録]
得られたホログラム記録媒体を使用し、以下に説明する手順でホログラム記録を実施した。
波長405nmの半導体レーザを用いて、ビーム1本あたりの露光パワー密度6.0mW/cmで図1の如き露光装置を使用して二光束平面波のホログラム記録を行った。媒体を−30度から30度まで1度おきに同一箇所に61多重記録し、その時の回折効率の平方根の合計をM/#(エムナンバー)とする。また上記の記録前後で記録波長での光透
過率を測定した。以下、詳細に説明する。
図1(a)は、ホログラム記録に用いた装置の概要を示す構成図であり、図1(b)はLEDユニットの表面を示す構成図であり、図1(c)は、LEDユニット表面のLEDの配列を示す構成図である。
図1中、Sはホログラム記録媒体のサンプルを示し、M1〜M3は何れもミラーを示し、PBSは偏光ビームスプリッタを示し、L1は波長405nmの光を発する記録光用レーザ光源(405nm付近の光が得られるソニー製シングルモードレーザーダイオードを用いた(図1の中「L1」))を示し、L2は波長633nmの光を発する再生光用レーザ光源を示し、PD1、PD2はフォトディテクタを示す。また、1はLEDユニットを示し、2はアームを示し、3は支柱を示す。
通常の記録、再生の場合、LEDユニットは実線の位置にあり、一様露光の場合、破線で示すように、支柱3が回転して取り付けられたアーム2とLEDユニット1のLEDがサンプルSの記録部分の前面側に移動した後、LEDが一定時間点灯する。LED1Bは、図1(c)に示すように、LEDユニット表面1Aにさいころの5の目の様に配列されている。光源L1、L2、フォトディテクタPD1、PD2、LEDユニット1には電源が接続されている。
図1に示すように、405nmの光を偏光ビームスプリッタ(図中「PBS」)により分割し、2本のビームのなす角が50.00度になるように記録面上にて交差させた。このとき、2本のビームのなす角の2等分線が記録面に対して垂直になるようにし、更に、分割によって得られた2本のビームの電場ベクトルの振動面は、交差する2本のビームを含む平面と垂直になるようにして照射した。
ホログラム記録後、He−Neレーザで633nmの光を得られるもの(メレスグリオ社製V05−LHP151:図中「L2」)を用いて、その光を記録面に対し30.19度の角度で照射し、回折された光をパワーメータおよびディテクタ(ニューポート社製2930−C、918−SL:図中「PD1」および「PD2」)を用いて検出することにより、ホログラム記録が正しく行なわれているか否かを判定した。ホログラムの回折効率は、回折された光の強度の透過光強度と回折光強度の和に対する比で与えられる。
<M/#の測定>
M/#は多重記録の目安とする値であるので、記録1回ごとの回折効率では大きすぎない方がよく、余りに小さいと記録ができない。よって1回の記録の回折効率を概ね数%とし、できるだけ多くの多重度で記録することにより得られたM/#を求めることで妥当な多重記録の目安となりうる。多重の方式には角度、シフトなどがあるが、角度多重が簡便といえるので材料の実力を知る上で適当な方式と言える。サンプルを光軸に対して動かす角度(二光束、すなわち図1のミラーM1およびM2からの入射光が交わる点における内角の二等分線とサンプルからの法線とがなす角度)を−20度から20度まで1度刻みで記録すれば41多重、−30度から30度まで0.5度刻みで記録すれば121多重とすることができる。回折効率には入射光と回折光の比(外部回折効率ともいう。)と透過光と回折光の和と回折光の比(内部回折効率ともいう。)の2つの表現がある。本発明においてはサンプル表面の反射やサンプル内部の拡散を無視でき材料の記録性能を問える内部回折効率を回折効率とする。ここでは−30度から30度まで1度刻みで61多重の記録を行い、得られた回折効率の平方根を多重記録全域にわたって合計したものをM/#とした。
具体的には、各実施例ごとに、始めに複数用意した光学記録媒体の1つを用いて、二光束が交わる点における内角の二等分線と媒体の法線がなす角度がゼロの状態で、回折効率
が一定になるまで二光束すなわち図1におけるミラーM1およびM2からの入射光405nmを照射し、一定になった最小のエネルギーを測定する(この際、回折効率の評価はミラーM3からの光633nmを用いて行なう)。
次いで別の媒体について、先に求めた最少エネルギーの値を61回多重記録の際の合計照射エネルギーの目安として、多重記録を行う。この際、照射エネルギーは記録回数に応じて適宜調整しながら、記録ごとの回折効率数%を維持するようにする。61回多重記録後、引き続き図1におけるミラーM1からの光(405nm)を照射し、角度−30から30度までの回折効率を計測し、各角度の回折効率の平方根の合計をM/#とする。
ここで、合計照射エネルギーの量が少なすぎるとモノマーが残存してしまい、記録回数が若い段階で照射エネルギーが多すぎると多重記録ができないため、何れもM/#を過少評価する可能性がある。そのため、サンプルを変えて、記録初期の照射エネルギーの増減、合計照射エネルギーの増減など、照射エネルギー条件を変えた複数回の評価を行い、記録1回ごとに数%以上の回折効率を維持しつつ、61回記録までに含有モノマーをほぼ消費しつくす(61回記録までにM/#がほぼ平衡に達する)条件を模索し、M/#として最大値が得られるようにした。そして、得られた最大値をその媒体のM/#とした。なお、M/#の値は厚みやサンプルの構成による影響を別途受けることとなる。厚みは実験作業上、自由に変えることができるが、ここでは記録層の厚みが500μmである時の実測値をもって比較することとする。
<感度>
また、サンプルの感度は、上記M/#計測において、サンプルが示す最大M/#の80%に達するまでの平均感度を表すものであり、次のように算出される。
感度=(0.8×(M/#))/(I×ts×L)
ここで、Iは入射光強度(mW/cm)、tsはM/#が80%に達するまでの総露光時間(秒)、Lは記録層厚み(cm)である。
<記録前光透過率、記録後光透過率>
サンプルや記録層が厚いと光が内部で吸収、散乱され光の強度が不足するために記録の性能が劣るという場合がある。また光の照射により光開始剤が化学的に変化して記録光の波長において吸収強度が大きく変化するので、記録の前後で透過度を測定する。光透過率はサンプルが何もない状態で光の強度を測定した後、サンプルを、光路にその板面を垂直にして置いて化学変化が起こらない程度の短い時間で再び光の強度を測定しその比を光透過率とした。記録後の場合、サンプルは光路に垂直にかつ回折が起こらない角度で記録した部分を光が通るように置いて測定した。波長は記録と同じ波長の405nm、強度は6mW/cm2とし、記録層の厚みは500μmとした。
[実施例2]
・媒体の作製
実施例1で合成したX1構造を有する重合開始剤を0.01g使用した以外は、実施例1記載の媒体の作製条件と同様の手法で記録層を作製した。本サンプルについてもホログラム記録性能評価を行いその結果は表2に示した。
[比較例1]
・媒体の作製
重合開始剤として、下図に示した構造を有する開始剤(チバ・スペシャルティケミカルズ社製、IRGACURE OXE02)を0.11g用いた以外は実施例1記載の媒体の作製条件に従い記録層を作製した。本サンプルについてもホログラム記録性能評価を行い、その結果は表2に示した。
Figure 0005439755
評価結果のまとめを表−2に示す。
Figure 0005439755
*表中、開始剤使用量は媒体組成物全体に対する開始剤の処方量(重量%)を記した
表―2の実施例1〜2からわかるように、本発明による重合開始剤を使用する場合は、その使用量が少量でも、その媒体のM/#、記録感度ともに高水準の値を示し、さらには記録前後の光透過率も70%以上を維持できた。一方、比較例1ではM/#および透過率こそ一定のレベルを維持しているが、感度が著しく小さくなり、記録は可能であったが、記録信号の読み取りが不安定であった。
また、通常M/#は主に光活性物質の種類および配合量による変動が大きい指標であるが、光開始剤のみが異なる実施例2と比較例1において、実施例2のM/#が明らかに大きかった。このことから、本発明の重合開始剤には、M/#を高める効果も期待できることが判る。
本発明のホログラム記録層形成用組成物及びそれを用いたホログラム記録材料は、ホログラム光記録媒体等の用途に好適に使用される。
実施例1において、ホログラム記録に用いた装置の構成の概要を示す模式図であり、(a)図は装置全体を示す図、(b)図はLEDユニットの表面を示す図、(c)図はLEDの配列を示す図である。 実施例で作製した測定用の媒体の構成を示す模式図である。
符号の説明
1 LEDユニット
1A LEDユニットの表面
1B LED
2 アーム
3 支柱
S サンプル
M1,M2,M3 ミラー
PBS 偏光ビームスプリッタ
L1 記録光用レーザ光源
L2 再生光用レーザ光源
PD1,PD2 フォトディテクタ
21 カバー層
22 記録層
23 カバー層

Claims (7)

  1. 光活性化合物(a)と、下記一般式(I)の構造を有するケトオキシムエステル系光重合開始剤(b)とを含むことを特徴とするホログラム記録層形成用組成物。
    Figure 0005439755
    (式中、Xは単結合、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有しても良いアルケニレン基−(CH=CH)n―、置換基を有しても良いアルキニレン基
    ―(C≡C)n−、及びこれらの組み合わせ(nは1〜5の整数を表す。)からなる群から選ばれる2価の基であり、Rは下記で表される基を表し
    Figure 0005439755
    12 は、置換されていてもよいアリール基、フリル基、チエニル基又はキノリル基を表し、R 10 は、置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、
    は、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、アルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR32
    33、-N(OR34)-CO-R35及び下記一般式(II)で表される基(R30
    びR31、R32及びR33、並びにR34及びR35は、それぞれ置換されていてもよ
    い炭素数1〜12のアルキル基を表し、互いに異なっていてもよい。)からなる群から選ばれる基を表し、Rは、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基及び炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基からなる群から選ばれる基を表す。)
    Figure 0005439755
  2. ホログラム記録層形成用組成物が、さらに樹脂マトリックス(c)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のホログラム記録層形成用組成物。
  3. 樹脂マトリックス(c)が、三次元架橋した樹脂マトリックスであることを特徴とする、請求項2に記載のホログラム記録層形成用組成物。
  4. 光活性化合物(a)が、ラジカル重合性モノマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のホログラム記録層形成用組成物。
  5. 一般式(I)の構造を有するケトオキシムエステル系光重合開始剤の使用量が、光活性化合物(a)、一般式(I)の構造を有するケトオキシムエステル系光重合開始剤(b)及び樹脂マトリックス(c)の和に対する比率で、0.01重量%以上、10重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のホログラム記録層形成用組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載のホログラム記録層形成用組成物を含有することを特徴とするホログラム記録材料。
  7. 請求項6記載のホログラム記録材料を含有する層を備えることを特徴とするホログラム光記録媒体。
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