以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
まず、本明細書で用いられる置換基について説明する。ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)、及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数5のアルキル基、及び炭素原子数4のアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数5のアルキル基、及び炭素原子数4のアルキル基の例は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、3-エチルブトキシ基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチルオキシ基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられる。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
<電子写真感光体>
本実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1~図3を参照して、本実施形態の感光体1について説明する。図1~図3は、各々、感光体1の部分断面図を示す。
図1に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層である。感光体1は、単層の感光層3を備える単層型電子写真感光体である。
図2に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図2に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。
図3に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層5とを備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。図1及び図2に示すように、感光層3が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。或いは、図3に示すように、保護層5が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。
感光層3は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、電子輸送剤とを含有する。感光層3は、必要に応じて、添加剤を更に含有していてもよい。
感光層3の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1~図3を参照して、感光体1について説明した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。感光層は、電荷発生剤の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン、及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、化学式(CGM-1)で表される。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM-2)で表される。
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有していない。
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、且つCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることがより好ましい。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載することがある)を含む。感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)を含有する。
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、且つR1が表わす基の炭素原子数とR2が表わす基の炭素原子数との和は2である。R3及びR4は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、且つR3が表わす基の炭素原子数とR4が表わす基の炭素原子数との和は2である。
以下、「R1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、且つR1が表わす基の炭素原子数とR2が表わす基の炭素原子数との和は2であり、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、且つR3が表わす基の炭素原子数とR4が表わす基の炭素原子数との和は2である」ことを、「所定置換基である」と記載することがある。また、「R1がフェニル基のパラ位に、R2がフェニル基のオルト位に、R3がフェニル基のパラ位に、R4がフェニル基のオルト位に位置する」ことを「所定位置に位置する」と記載することがある。
感光層が、正孔輸送剤として化合物(1)を含有することにより、感光体の帯電安定性を向上させ、感光層の結晶化を抑制できる。その理由は、以下のように推測される。なお、帯電安定性は、記録媒体に画像を繰り返し形成した場合であっても、所定範囲の帯電電位に、感光体を帯電できる特性である。説明の便宜上、下記一般式(1)中にA及びBを示し、A及びBによって示されるフェニル基を、各々、フェニル基A及びBと記載する。
第1の理由を説明する。一般式(1)中のR1~R4は所定置換基であり、かさ高い置換基ではない。R1~R4で表されるかさ高くない置換基が、感光層の微小な空隙を埋める傾向がある。また、R1~R4が所定位置に位置することにより、感光層の微小な空隙を埋め易くなる。このため、R1~R4が所定置換基でありR1~R4が所定位置に位置することにより、記録媒体に画像を繰り返し形成する際に、感光体の外部から感光体の品質低下を招く成分(例えば、ガス等)が、感光層内に侵入することを防ぐことができる。これにより、感光体の帯電安定性が向上する。
第2の理由を説明する。一般式(1)中のR1~R4は、所定置換基であり、R1~R4は所定位置に位置する。一般式(1)中のR1~R4が所定置換基ではない場合(例えば、メトキシ基、又はブチル基である場合)、及びR1~R4が所定位置に位置しない場合には、正孔輸送剤の正孔輸送能が低下し、帯電安定性が低下する。一般式(1)中のR1~R4が所定置換基でありR1~R4が所定位置に位置することで、化合物(1)の正孔輸送能が向上し、感光体の帯電安定性が向上する。
第3の理由を説明する。一般的に、ターフェニル構造を有する化合物は、感光層の結晶化を引き起こし易い。本発明者らは鋭意検討し、一般式(1)中のR1~R4が所定置換基でありR1~R4が所定位置に位置し、且つフェニル基A及びBがパラ位にメチル基を有することで、感光層の結晶化を抑制できることを見出した。所定位置に位置する所定置換基、並びにフェニル基A及びBがパラ位に有するメチル基によって、感光層に含有される他の分子と、化合物(1)との間に、分子間力が強くなり過ぎない程度の適度な距離が設けられる。このため、感光層の結晶化を抑制できる。
第4の理由を説明する。既に述べたように、一般式(1)中のR1~R4は所定置換基であり、かさ高い置換基ではない。かさ高い置換基(例えば、フェニルブタジエニル基、又はブチル基)を有する化合物は、感光層の結晶化を引き起こす傾向がある。また、R1~R4は、所定位置に位置する。R1~R4がかさ高くない所定置換基でありR1~R4が所定位置に位置することで、感光層の結晶化を抑制できる。以上、感光体の帯電安定性を向上させ、感光層の結晶化を抑制できる理由について説明した。特に、感光層が、化合物(1)と、後述するポリアリレート樹脂(PA)と、後述するで電子輸送剤である化合物(20)、(21)、又は(22)とを含有することにより、これらの利点は顕著となる。
化合物(1)の好適な例としては、化学式(1-1)、(1-2)、及び(1-3)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(1-1)、(1-2)、及び(1-3)と記載することがある)が挙げられる。感光体の帯電安定性を特に向上させ、感光層の結晶化を特に抑制するためには、化合物(1)としては、化合物(1-1)及び(1-2)が、より好ましい。
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、65質量部以上であることが更に好ましい。正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることが更に好ましい。
感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)の1種のみを含有してもよい。或いは、感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)の2種以上を含有してもよい。また、感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)のみを含有してもよい。或いは、感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)に加えて、化合物(1)以外の正孔輸送剤(以下、その他の正孔輸送剤と記載することがある)を更に含有してもよい。
その他の正孔輸送剤としては、例えば、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
化合物(1)は、例えば、下記反応式(r1)で表される反応(以下、反応(r1)と記載することがある)に従って、製造することができる。反応式(r1)で示される一般式(a)中のYは、ハロゲン原子を表す。一般式(b)及び(c)中のR1、R2、R3、及びR4は、各々、一般式(1)中のR1、R2、R3、及びR4と同義である。一般式(a)、(b)、及び(c)で表される化合物の各々を、化合物(a)、(b)、及び(c)と記載することがある。
反応(r1)では、1モル当量の化合物(a)と、1モル当量の化合物(b)と、1モル当量の化合物(c)とを反応させて、1モル当量の化合物(1)を得る。一般式(1)中のR1とR3とが互いに同じであり、R2とR4とが互いに同じである場合には、1モル当量の化合物(b)及び1モル当量の化合物(c)の代わりに、2モル当量の化合物(b)を使用する。
反応(r1)は、パラジウム触媒の存在下で行われてもよい。パラジウム触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)が挙げられる。
反応(r1)は、配位子の存在下で行われてもよい。配位子としては、例えば、(4-ジメチルアミノフェニル)ジ-tertブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、及びメチルジフェニルホスフィンが挙げられる。
反応(r1)は、塩基の存在下で行われてもよい。塩基としては、例えば、ナトリウムtert-ブトキシド、リン酸三カリウム、及びフッ化セシウムが挙げられる。塩基の添加量は、1モル当量の化合物(b)に対して、1モル当量以上10モル当量以下であることが好ましい。
反応(r1)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
反応(r1)の反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましい。反応(r1)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(r1)は、不活性ガス(例えば、アルゴンガス)の雰囲気下で行われてもよい。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、少なくとも1種の一般式(10)で表される繰り返し単位と、少なくとも1種の一般式(11)で表される繰り返し単位とを有するポリアリレート樹脂を含む。以下、「少なくとも1種の一般式(10)で表される繰り返し単位と、少なくとも1種の一般式(11)で表される繰り返し単位とを有するポリアリレート樹脂」を、「ポリアリレート樹脂(PA)」と記載することがある。また、一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(10)及び(11)と記載することがある。
一般式(10)中、R11及びR12は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表す。一般式(10)中、Wは、一般式(W1)、一般式(W2)、又は化学式(W3)で表される二価の基を表す。
一般式(W1)中、R13は、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R14は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。一般式(W2)中、tは、1以上3以下の整数を表す。
一般式(11)中、Xは、化学式(X1)、化学式(X2)、又は化学式(X3)で表される二価の基を表す。
ポリアリレート樹脂(PA)が所定の化学構造を有することで、感光体の帯電安定性を向上させ、感光層の結晶化を抑制できる。また、ポリアリレート樹脂(PA)の一般式(10)中のR11及びR12が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、感光層の微小な空隙を埋める傾向がある。このため、記録媒体に画像を繰り返し形成する際に、感光体の外部から感光体の品質低下を招く成分(例えば、ガス等)が、感光層内に侵入することを防ぎ、感光体の帯電安定性を更に向上できる。
一般式(10)中のR11及びR12が表わす炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。一般式(10)中のR11及びR12は、各々、メチル基を表すことが好ましい。
一般式(W1)中のR13及びR14が表わす炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。一般式(W1)中のR13が水素原子を表し、R14がメチル基を表わすことが好ましい。一般式(W2)中のtは、2を表すことが好ましい。
繰り返し単位(10)の好適な例としては、化学式(10-1)、及び(10-2)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを繰り返し単位(10-1)、及び(10-2)と記載することがある)が挙げられる。
繰り返し単位(11)の好適な例としては、化学式(11-1)、及び(11-2)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを繰り返し単位(11-1)、及び(11-2)と記載することがある)が挙げられる。
ポリアリレート樹脂(PA)は、少なくとも1種(例えば、1種、2種、又は3種)の繰り返し単位(10)と、少なくとも2種(例えば、2種、又は3種)の繰り返し単位(11)を有することが好ましい。少なくとも2種の繰り返し単位(11)を有する場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(11)として、繰返し単位(11-1)及び(11-2)を少なくとも有することが好ましい。
ポリアリレート樹脂(PA)は、1種の繰り返し単位(10)と2種の繰り返し単位(11)とを有することがより好ましい。2種の繰り返し単位(11)を有する場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(11)として、繰返し単位(11-1)及び(11-2)を有することが好ましい。
ポリアリレート樹脂(PA)が繰返し単位(11-1)及び(11-2)を有する場合、繰返し単位(11-1)及び(11-2)の総数に対する、繰り返し単位(11-1)の数の比率(以下、比率pと記載することがある)は、10%以上90%以下であることが好ましく、20%以上80%以下であることがより好ましく、30%以上70%以下であることが更に好ましく、40%以上60%以下であることが一層好ましく、50%であることが特に好ましい。
ポリアリレート樹脂(PA)の好適な例としては、第1ポリアリレート樹脂、及び第2ポリアリレート樹脂が挙げられる。第1ポリアリレート樹脂は、下記化学式で示すように、繰り返し単位(10-1)と、繰り返し単位(11-1)と、繰り返し単位(11-2)とを有する。
第2ポリアリレート樹脂は、下記化学式で示すように、繰り返し単位(10-2)と、繰り返し単位(11-1)と、繰り返し単位(11-2)とを有する。
第1ポリアリレート樹脂の好適な例としては、下記化学式(R-1)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(R-1)と記載することがある)が挙げられる。第2ポリアリレート樹脂の好適な例としては、下記化学式(R-2)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(R-2)と記載することがある)が挙げられる。化学式(R-1)及び(R-2)において、繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂が有する繰り返し単位の総数に対する、該当する繰り返し単位の数の比率(単位:%)を示す。
ポリアリレート樹脂(PA)において、芳香族ジオール由来の繰り返し単位(10)と、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位(11)とが、隣接して互いに結合している。ポリアリレート樹脂(PA)が共重合体である場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、及びブロック共重合体の何れであってもよい。
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10)及び(11)のみを有していてもよい。また、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(10)及び(11)に加えて、繰り返し単位(10)及び(11)以外の繰り返し単位を更に有していてもよい。
感光層は、バインダー樹脂として、1種のポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよく、2種以上のポリアリレート樹脂(PA)を含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよく、ポリアリレート樹脂(PA)に加えて、それ以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。
その他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂(PA)以外のポリアリレート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、40,000以上であることが特に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であると、バインダー樹脂の耐摩耗性が高まり、感光層の摩耗を抑制できる。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下であると、バインダー樹脂が感光層形成用の溶剤に溶解し易くなり、感光層の形成が容易となる。
ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法として、例えば、繰返し単位(10)を形成するための芳香族ジオールと、繰り返し単位(11)を形成するための芳香族ジカルボン酸とを、縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させる方法としては、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合又は界面重合等)を採用できる。
繰返し単位(10)を形成するための芳香族ジオールは、一般式(BP-10)で表される化合物(以下、化合物(BP-10)と記載することがある)である。繰返し単位(11)を形成するための芳香族ジカルボン酸は、一般式(DC-11)で表される化合物(以下、化合物(DC-11)と記載することがある)である。一般式(BP-10)及び(DC-11)中のR11、R12、W、及びXは、各々、一般式(10)及び(11)中のR11、R12、W、及びXと同義である。
化合物(BP-10)の好適な例としては、化学式(BP-10-1)及び(BP-10-2)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BP-10-1)及び(BP-10-2)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(DC-11)の好適な例としては、化学式(DC-11-1)及び(DC-11-2)(以下、それぞれを化合物(DC-11-1)及び(DC-11-2)と記載することがある)が挙げられる。
芳香族ジオール(例えば、化合物(BP-10))を、芳香族ジアセテートに変形して使用してもよい。芳香族ジカルボン酸(例えば、化合物(DC-11))を、誘導体化して使用してもよい。芳香族ジカルボン酸の誘導体の例としては、芳香族ジカルボン酸ジクロライド、芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸ジエチルエステル、及び芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、芳香族ジカルボン酸の2個の「-C(=O)-OH」基が各々「-C(=O)-Cl」基で置換された化合物である。
芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方を添加してもよい。塩基及び触媒は、公知の塩基及び触媒から適宜選択することができる。塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒の例としては、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン及びトリメチルアミンが挙げられる。
(電子輸送剤)
感光体の帯電安定性を向上させつつ、感光層の結晶化を抑制するために、電子輸送剤は、一般式(20)、(21)、又は(22)で表される化合物を含む。以下、一般式(20)、(21)、及び(22)で表される化合物を、各々、化合物(20)、(21)、及び(22)と記載することがある。感光層は、電子輸送剤として、化合物(20)、(21)、又は(22)を含有する。
一般式(20)中、Q1及びQ2は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。r及びsは、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
一般式(20)中、rが2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ3は互いに同一であっても、異なっていてもよい。sが2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ4は互いに同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(20)中、Q1及びQ2は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数5のアルキル基を表すことが更に好ましく、1,1-ジメチルプロピル基を表すことが特に好ましい。r及びsは、各々、0を表すことが好ましい。
一般式(21)中、Q5及びQ6は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。Q7は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。uは、0以上4以下の整数を表す。
一般式(21)中、uが2以上4以下の整数を表す場合、複数のQ7は互いに同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(21)中、Q5及びQ6は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素原子数4のアルキル基を表すことが更に好ましく、tert-ブチル基を表すことが特に好ましい。uは、0を表すことが好ましい。
一般式(22)中、Q8及びQ9は、各々独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。Q10は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
一般式(22)中、Q8及びQ9は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数4のアルキル基を表すことがより好ましく、tert-ブチル基を表すことが特に好ましい。Q10は、ハロゲン原子で置換された炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、ハロゲン原子で置換されたフェニル基を表すことがより好ましく、クロロフェニル基を表すことが更に好ましく、4-クロロフェニル基を表すことが特に好ましい。
感光体の帯電安定性を向上させ、感光層の結晶化を抑制するためには、電子輸送剤のより好適な例としては、化学式(E-1)、(E-2)、及び(E-3)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(E-1)、(E-2)、及び(E-3)と記載することがある)が挙げられる。化合物(20)の好適な例が、化合物(E-1)である。化合物(21)の好適な例が、化合物(E-2)である。化合物(22)の好適な例が、化合物(E-3)である。
電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、20質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
感光層の質量に対する電子輸送剤の含有率は、18.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、23.0質量%以上30.0質量%以下であることがより好ましく、25.0質量%以上30.0質量%以下であることが更に好ましい。感光層の質量に対する電子輸送剤の含有率が18.0質量%以上であると、感光体の帯電安定性が更に向上する。感光層の質量に対する電子輸送剤の含有率が30.0質量%以下であると、感光層の結晶化を更に抑制できる。
感光層は、1種の電子輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の電子輸送剤を含有してもよい。感光層は、電子輸送剤として、化合物(20)、(21)、又は(22)のみを含有してもよい。或いは、感光層は、化合物(20)、(21)、又は(22)に加えて、これら以外の電子輸送剤(以下、その他の電子輸送剤と記載することがある)を更に含有してもよい。
その他の電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
(添加剤)
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、電子アクセプター化合物、及びレベリング剤が挙げられる。
(材料の組み合わせ)
感光体の帯電安定性を向上させつつ、感光層の結晶化を抑制するためには、正孔輸送剤及びバインダー樹脂の組み合わせが、表1に示す組み合わせ例B1~B12の各々であることが好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤及びバインダー樹脂の組み合わせが、表1に示す組み合わせ例B1~B12の各々であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
なお、表1及び後述する表2~表3中、「例」は「組み合わせ例」を示し、「HTM」は「正孔輸送剤」を示し、「ETM」は「電子輸送剤」を示し、「樹脂」は「バインダー樹脂」を示し、「第1樹脂」は「第1ポリアリレート樹脂」を示し、「第2樹脂」は「第2ポリアリレート樹脂」を示す。
感光体の帯電安定性を向上させつつ、感光層の結晶化を抑制するためには、正孔輸送剤及び電子輸送剤の組み合わせが、表2に示す組み合わせ例C1~C9の各々であることが好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤及び電子輸送剤の組み合わせが、表2に示す組み合わせ例C1~C9の各々であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
感光体の帯電安定性を向上させつつ、感光層の結晶化を抑制するためには、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂の組み合わせが、表3に示す組み合わせ例D1~D36の各々であることが好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂の組み合わせが、表3に示す組み合わせ例D1~D36の各々であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
(導電性基体)
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
(中間層)
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂の例は、上述したバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有されるその他の添加剤の例と同じである。
(感光体の製造方法)
次に、感光体の製造方法の一例を説明する。感光体の製造方法は、感光層形成工程を含む。感光層形成工程では、感光層を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。感光層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して感光層を形成する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含有する。感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。感光層用塗布液は、必要に応じて、添加剤を更に含有していてもよい。
感光層用塗布液に含有される溶剤は、感光層用塗布液に含有される各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
感光層用塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
感光層用塗布液を塗布する方法は、感光層用塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上120分以下である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
<画像形成装置>
次に、本実施形態の感光体1を備える、画像形成装置について説明する。以下、図4を参照しながら、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて説明する。図4は、画像形成装置の一例を示す断面図である。
図4に示す画像形成装置110は、画像形成ユニット40a、40b、40c、及び40dと、転写ベルト50と、定着装置52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c、及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、像担持体100と、帯電装置42と、露光装置44と、現像装置46と、転写装置48と、クリーニング装置54とを備える。像担持体100は、本実施形態の感光体1である。
既に述べたように、本実施形態の感光体1によれば、感光体1の帯電安定性の向上及び感光層3の結晶化の抑制が可能となる。従って、像担持体100として感光体1を備えることで、画像形成装置110は、記録媒体Pに良好な画像を形成することができる。
画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体100が設けられる。像担持体100は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体100の周囲には、像担持体100の回転方向の上流側から記載された順に、帯電装置42と、露光装置44と、現像装置46と、転写装置48と、クリーニング装置54とが設けられる。
画像形成ユニット40a~40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
帯電装置42は、像担持体100の表面(例えば、周面)を、正極性に帯電させる。帯電装置42は、例えば、スコロトロン帯電器である。
露光装置44は、帯電された像担持体100の表面に露光光を照射する。即ち、露光装置44は、帯電された像担持体100の表面を露光する。これにより、像担持体100の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置110に入力された画像データに基づいて形成される。
現像装置46は、像担持体100の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。現像装置46は、像担持体100の表面と接触しながら静電潜像をトナー像として現像する。即ち、画像形成装置110は、接触現像方式を採用している。現像装置46は、例えば、現像ローラーである。現像剤が一成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体100に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。現像剤が二成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体100に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含有されるトナーとキャリアとのうち、トナーを供給する。このようにして、像担持体100は、トナー像を担持する。
転写ベルト50は、像担持体100と転写装置48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写装置48は、現像装置46によって現像されたトナー像を、像担持体100の表面から、被転写体である記録媒体Pへ転写する。詳しくは、像担持体100の表面と記録媒体Pとが接触した状態で、転写装置48は、トナー像を像担持体100の表面から記録媒体Pへ転写する。即ち、画像形成装置110は、直接転写方式を採用している。転写装置48は、例えば、転写ローラーである。
クリーニング装置54は、像担持体100の表面に付着しているトナーを回収する。クリーニング装置54は、ハウジング541、及びクリーニングローラー542を備える。なお、クリーニング装置54は、クリーニングブレードを備えていない。クリーニングローラー542は、ハウジング541内に配置される。クリーニングローラー542は、像担持体100の表面に当接するように、配置される。クリーニングローラー542は、像担持体100の表面を研磨して、像担持体100の表面に付着しているトナーをハウジング541内に回収する。
転写装置48によってトナー像が転写された記録媒体Pは、転写ベルト50によって、定着装置52へ搬送される。定着装置52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。転写装置48によって転写された未定着のトナー像が、定着装置52によって、加熱及び/又は加圧される。トナー像が加熱及び/又は加圧されることにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
以上、画像形成装置の一例について説明したが、画像形成装置は、上述した画像形成装置110に限定されない。上述した画像形成装置110はカラー画像形成装置であったが、画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上述した画像形成装置110はタンデム方式を採用していたが、画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。帯電装置42としてスコロトロン帯電器を例に挙げて説明したが、帯電装置はスコロトロン帯電器以外の帯電装置(例えば、帯電ローラー、帯電ブラシ、又はコロトロン帯電器)であってもよい。上述した画像形成装置110は接触現像方式を採用していたが、画像形成装置は非接触現像方式を採用してもよい。上述した画像形成装置110は直接転写方式を採用していたが、画像形成装置は中間転写方式を採用してもよい。画像形成装置が中間転写方式を採用する場合、被転写体は中間転写ベルトに相当する。上述したクリーニング装置54はクリーニングローラー542を備えクリーニングブレードを備えていなかったが、クリーニングローラー542とクリーニングブレードとを備えるクリーニング装置であってもよい。なお、上述した画像形成ユニット40は除電装置を備えていなかったが、画像形成ユニットは除電装置を更に備えていてもよい。
<プロセスカートリッジ>
次に、図4を引き続き参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジの一例について説明する。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a~40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、像担持体100を備える。像担持体100は、本実施形態の感光体1である。プロセスカートリッジは、像担持体100に加えて、帯電装置42、及びクリーニング装置54のうちの少なくとも一方を更に備える。
既に述べたように、本実施形態の感光体1によれば、感光体1の帯電安定性の向上及び感光層3の結晶化の抑制が可能となる。従って、像担持体100として感光体1を備えることで、プロセスカートリッジは、記録媒体Pに良好な画像を形成できる。
プロセスカートリッジには、像担持体100、帯電装置42、及びクリーニング装置54に加えて、露光装置44、現像装置46、及び転写装置48のうちの少なくとも1つが更に備えられてもよい。プロセスカートリッジには、除電装置(不図示)が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置110に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体100の感度特性等が劣化した場合に、像担持体100を含めて容易且つ迅速に交換することができる。以上、図4を参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジについて説明した。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
まず、感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂、及び電子輸送剤を準備した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べたY型チタニルフタロシアニンを準備した。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(1-1)~(1-3)を準備した。化合物(1-1)~(1-3)の各々は、以下の方法で合成した。
(化合物(1-1)の合成)
容量500mLの三口フラスコに、4,4’’-ジブロモ-p-ターフェニル(11.98g、30.9mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.069g、0.307mmol)、(4-ジメチルアミノフェニル)ジ-tertブチルホスフィン(0.205g、0.772mmol)、及びナトリウムtert-ブトキシド(7.702g、80.15mmol)を入れた。フラスコ内の脱気及び窒素ガス置換を2回繰り返すことにより、フラスコ内の空気を窒素ガスに置換した。次いで、フラスコ内に、(2,4-ジメチルフェニル)(4’-メチルフェニル)アミン(13.85g、63.3mmol)及びキシレン(100mL)を入れた。還流させながら、フラスコ内容物を120℃で3時間攪拌した。次いで、フラスコ内容物の温度を50℃まで低下させた。フラスコ内容物を濾過して灰分を除去し、濾液を得た。濾液に活性白土(日本活性白土株式会社製「SA-1」、24g)を入れて、80℃で10分間攪拌して混合物を得た。次いで、混合物を濾過し、濾液を得た。濾液を減圧留去して、残渣を得た。残渣にトルエン20gを加えて100℃まで加熱した。加熱により、残渣をトルエンに溶解させて、溶液を得た。溶液がわずかに白濁するまで、溶液にn-ヘキサンを添加した。次いで、溶液を5℃まで冷却し、濾過により析出した結晶を取り出した。得られた結晶を乾燥させて、化合物(1-1)を得た。化合物(1-1)の収量は18.2gであった。4,4’’-ジブロモ-p-ターフェニルからの化合物(1-1)の収率は、90.8モル%であった。
(化合物(1-2)の合成)
63.3mmolの(2,4-ジメチルフェニル)(4’-メチルフェニル)アミンを、63.3mmolの(2-エチルフェニル)(4’-メチルフェニル)アミンに変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同じ方法で、化合物(1-2)を得た。
(化合物(1-3)の合成)
63.3mmolの(2,4-ジメチルフェニル)(4’-メチルフェニル)アミンを、63.3mmolの(4-エチルフェニル)(4’-メチルフェニル)アミンに変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同じ方法で、化合物(1-3)を得た。
プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、合成した化合物(1-1)~(1-3)の1H-NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。化合物(1-1)~(1-3)のうちの代表例として、化合物(1-1)の化学シフト値を以下に示す。化学シフト値から、化合物(1-1)が得られていることを確認した。化合物(1-2)及び(1-3)についても同じ方法で、化合物(1-2)及び(1-3)が得られていることを確認した。
化合物(1-1):1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=7.57(s, 4H), 7.42-7.45(m, 4H), 7.01-7.07(m, 18H), 2.34(s, 6H), 2.29(s, 6H), 2.03(s, 6H).
次に、比較例で使用する正孔輸送剤として、下記化学式(H-4)~(H-14)で表される化合物を準備した。
(バインダー樹脂)
正孔輸送剤として、実施形態で述べたポリアリレート樹脂(R-1)~(R-2)を準備した。ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-2)の各々は、以下の方法で合成した。
(ポリアリレート樹脂(R-1))
反応容器として、温度計、三方コック、及び容量200mLの滴下ロートを備えた容量1Lの三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP-10-1)41.2ミリモルと、tert-ブチルフェノール0.062g(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム3.92g(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.120g(0.384ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水300mLを加えた。反応容器の内容物を50℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
化合物(DC-11-1)のジクロライド16.2ミリモルと、化合物(DC-11-2)のジクロライド16.2ミリモルとを、クロロホルム150mLに溶解させた。このようにして、クロロホルム溶液Bを得た。
滴下ロートからクロロホルム溶液Bを、アルカリ性水溶液Aに110分間かけてゆっくりと滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を15±5℃に調節しながら、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量1Lの三角フラスコに、イオン交換水400mLを入れた。フラスコ内容物に、得られた有機層を加えた。フラスコ内容物に、クロロホルム400mL及び酢酸2mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。その後、デカントを用いてフラスコ内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水1Lで洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量1Lのビーカーに1Lのメタノールを入れた。ビーカー内のメタノールに得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂(R-1)が得られた。ポリアリレート樹脂(R-1)の粘度平均分子量は、47500であった。
(ポリアリレート樹脂(R-2))
41.2ミリモルの化合物(BP-10-1)を、41.2ミリモルの化合物(BP-10-2)に変更したこと以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-2)を得た。ポリアリレート樹脂(R-2)の粘度平均分子量は、52400であった。
また、比較例で使用するバインダー樹脂として、下記化学式(R-3)で表されるポリアリレート樹脂を準備した。ポリアリレート樹脂(R-3)の粘度平均分子量は、53300であった。なお、繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂が有する繰り返し単位の総数に対する、該当する繰り返し単位の数の比率(単位:%)を示す。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(E-1)~(E-3)の各々を準備した。
また、比較例で使用する電子輸送剤として、下記化学式(E-4)で表される化合物を準備した。
<感光体の製造>
上述した電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂、及び電子輸送剤を用いて、感光体(A-1)~(A-13)及び(B-1)~(B-13)を製造した。
(感光体(A-1)の製造)
電荷発生剤であるY型チタニルフタロシアニン3質量部、正孔輸送剤である化合物(1-1)70質量部、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂(R-1)100質量部、電子輸送剤である化合物(E-1)39質量部、及び溶剤であるテトラヒドロフラン800質量部を、ボールミルを用いて50時間混合し、感光層用塗布液を得た。ディップコート法により、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体)上に、感光層用塗布液を塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。このようにして、導電性基体上に感光層(膜厚28μm)を形成し、感光体(A-1)を得た。感光体(A-1)において、導電性基体上に単層の感光層が備えられていた。
(感光体(A-2)~(A-13)及び(B-1)~(B-13)の製造)
表4に示す種類の正孔輸送剤、バインダー樹脂、及び電子輸送剤を使用したこと、並びに感光層の質量に対する電子輸送剤の含有率が表4に示す値になるように電子輸送剤の添加量を変更したこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法で、感光体(A-2)~(A-13)及び(B-1)~(B-13)の各々を製造した。
<感光体の感度特性の評価>
感光体(A-1)~(A-13)及び(B-1)~(B-13)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度15%RHの環境下で、感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を+750Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.7μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から70ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の露光後電位VL(単位:+V)とした。感光体の露光後電位VLを、表4に示す。
<感光体の帯電安定性の評価>
感光体(A-1)~(A-13)及び(B-1)~(B-13)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度15%RHの環境下で、帯電安定性を評価した。帯電安定性の評価には、評価機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS-C5250DN」の改造機)を使用した。評価機は、スコロトロン帯電器及びクリーニングローラーを備え、クリーニングブレードを備えていなかった。評価機は、現像ローラーを備えた接触現像方式、及び直接転写方式を採用していた。露光-現像間時間を、70ミリ秒に設定した。
まず、評価機を用いて、3枚の記録媒体(A4サイズ用紙)に、画像A(全面白紙画像)を印刷した。各用紙に印刷する際に、現像ローラーと対向する位置(現像位置)において、感光体の表面電位を測定した。なお、白紙画像を印刷する際には露光が行われないため、測定された表面電位は、帯電電位に相当する。1枚の用紙の印刷につき1回、合計3回、表面電位を測定した。測定された3回の表面電位の平均値を、印字試験前の帯電電位V01(単位:+V)とした。
次いで、印字試験を行った。印字試験は、評価機を用いて、10,000枚の記録媒体(A4サイズ用紙)に、15秒間隔で、画像B(印字率5%の印字パターン画像)を印刷する試験であった。印字試験の直後に、3枚の記録媒体(A4サイズ用紙)に、画像A(全面白紙画像)を印刷した。各用紙に印刷する際に、現像位置において、感光体の表面電位を測定した。1枚の用紙の印刷につき1回、合計3回、表面電位を測定した。測定された3回の表面電位の平均値を、印字試験後の帯電電位V02(単位:+V)とした。
印字試験前の帯電電位V01から印字試験後の帯電電位V02を引いた値(V01-V02)を、帯電電位低下量ΔV0(単位:V)とした。帯電電位低下量ΔV0を、表4に示す。帯電電位低下量ΔV0(単位:V)が小さいほど、感光体の帯電安定性が優れていることを示す。なお、帯電電位低下量ΔV0(単位:V)が20V以上である感光体を、帯電安定性が不良であると評価した。
<感光体の結晶化抑制の評価>
感光体(A-1)~(A-13)及び(B-1)~(B-13)の各々の表面(感光層)全域を、肉眼で観察した。そして、感光層における結晶化した部分の有無を確認した。確認結果に基づき、下記評価基準で結晶化が抑制されているか否かを評価した。評価結果を表4に示す。なお、評価がCである感光体を、感光層の結晶化が抑制されていないと評価した。
(結晶化抑制の評価基準)
評価A:結晶化した部分が確認されなかった。
評価B:結晶化した部分が若干確認された。
評価C:結晶化した部分が明確に確認された。
表4中、HTM、樹脂、ETM、VL、及びΔV0は、各々、正孔輸送剤、バインダー樹脂、電子輸送剤、露光後電位、及び帯電電位低下量を示す。表4中、含有率は、感光層の質量に対する電子輸送剤の含有率(単位:wt%、即ち質量%)を示す。
表4に示すように、感光体(A-1)~(A-13)の感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)(より具体的には、化合物(1-1)~(1-3)の何れか)を含有していた。感光体(A-1)~(A-13)の感光層は、少なくとも1種の繰り返し単位(10)と少なくとも1種の繰り返し単位(11)とを有するポリアリレート樹脂(PA)(より具体的には、ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-2)の何れか)を含有していた。感光体(A-1)~(A-13)の感光層は、電子輸送剤として、化合物(20)、(21)、又は(22)(より具体的には、化合物(E-1)~(E-3)の何れか)を含有していた。このため、感光体(A-1)~(A-13)の帯電電位低下量ΔV0は19V以下であった。また、感光体(A-1)~(A-13)の結晶化抑制の評価は、A又はBであった。よって、感光体(A-1)~(A-13)は、帯電安定性の向上及び感光層の結晶化の抑制の両方を達成できていた。また、感光体(A-1)~(A-13)の露光後電位VLは+83V以上+129V以下であり、感光体(A-1)~(A-13)は、感度特性を損なうことなく、帯電安定性の向上及び感光層の結晶化の抑制の両方を達成できていた。
以上のことから、本発明に係る感光体は、帯電安定性の向上及び感光層の結晶化の抑制の両方を達成できることが示された。本発明に係る感光体は帯電安定性の向上及び感光層の結晶化の抑制の両方を達成できるため、本発明に係る感光体を備えるプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、良好な画像を形成することができる。