JP7285816B2 - 負極活物質および該負極活物質を備えたリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
即ち、ここで開示される負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な炭素材料と、該炭素材料の表面に形成された炭素被覆層と、を備えており、該炭素被覆層は、炭素原子と、リン原子とを備えている。さらに、該炭素被覆層において、X線光電子分光法(XPS)によって測定されるP2pスペクトルのピークを波形分離したとき、結合エネルギーが131eVの位置にピークを有し、かつ、ラマンスペクトルにおける1580cm-1のピーク強度IGと、1360cm-1のピーク強度IDとの強度比(ID/IG)が0.4以上0.7以下である。
かかる構成によれば、リチウムイオン二次電池に優れた低温特性を付与する負極活物質を提供することができる。
かかる構成によれば、リチウムイオン二次電池に優れた低温特性をより好適に付与することができる。
かかる構成によれば、低温特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
また、本明細書において、「正極活物質」および「負極活物質」とは、リチウムイオン二次電池において、電荷担体となる化学種(即ちリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および脱離)可能な物質をいう。
正極活物質層54は、正極活物質と必要に応じて用いられる材料(導電材、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電体52の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
負極活物質層64は、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電体62の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
炭素被覆層84の平均厚みは特に限定されるものではないが、概ね2nm以上2μm以下であり、典型的には5nm以上1μm以下である。
回転式CVD法を用いて、黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製のSG-BH8)の表面に炭素被覆層を形成した。なお、回転式CVD装置は、ヒートテック社製の回転式管状雰囲気炉を使用した。例1~6におけるCVD法の条件を表1に示す。
(例1)
黒鉛(SG-BH8)20gを管状炉に収容し、該管状炉内をArガスに置換した。該管状炉内を800℃とした後、該管状炉を10rpmの速度で回転させながら、プリカーサガスとしてC2H2ガスと、POCl3ガスとを10:1のモル比で混合した混合ガスを200sccmの流量で60分間供給し、炭素被覆層を形成した。なお、かかる操作中はArガスを常に300sccmの流量で供給した。
(例2)
黒鉛(SG-BH8)20gを管状炉に収容し、該管状炉内をArガスに置換した。該管状炉を950℃とした後、該管状炉を10rpmの速度で回転させながら、プリカーサガスとしてCH4ガスを150sccmの流量で80分間供給し、炭素被覆層を形成した。なお、かかる操作中はArガスを常に50sccmの流量で供給した。その後、Arガス雰囲気化で、1000℃の追加焼成を2時間行った。
(例3)
例1と同様に負極活物質を作製した後、該負極活物質をAr雰囲気化で1000℃の追加焼成を2時間行った。
(例4)
例3の追加焼成を4時間に変更した以外は例3と同様に実施した。
(例5)
例3の追加焼成を8時間に変更した以外は例3と同様に実施した。
(例6)
例3の追加焼成を10時間に変更した以外は例3と同様に実施した。
(例7)
例2の方法で作製した負極活物質50gを準備し、Li3PO4を用いたバレル式スパッタリングにより該負極活物質の表面を加工した。なお、スパッタリングレートを0.01g/hとし、3時間実施した。
上記作製した負極活物質それぞれの表面(炭素被覆層)をX線光電子分光法(XPS)により測定した。具体的な測定条件は以下の通りである。
測定装置:走査型X線光電子分光分析器(u―XPS)QuanteraII(アルバックPHI株式会社製)
使用X線源:mono―AlKa線(1486.6V)
光電子取り出し角:35°
X線ビーム径:約100μm
中和銃条件:1.0V、20μA
かかるXPSにより得られたC1sスペクトルのピーク面積Ac、O1sスペクトルのピーク面積Ao、およびP2pスペクトルのピーク面積Apを算出した。これらAcと、Aoと、Apとの和を100%としたときの、Acの割合(表2中のC1s欄)、Aoの割合(表2中のO1s欄)、Apの割合(表2中のP2p欄)を表2に示した。
また、上記P2pスペクトルのピークをアルバックPHI社製のソフトウェア「MultiPak」を用いて波形分離し、131eV、133eV、135eVの位置のピークに分離した。そして、上記Ac+Ao+Apの合計に対するそれぞれのピーク面積の割合を表2に示した。
正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、以下「NCM」ともいう。)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、NCM:AB:PVdF=92:5:3の質量比となるようにN-メチル-2ピロリドン中で混合し、正極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを厚さ15μmのアルミニウム箔集電体に塗布し、乾燥した後プレスすることにより、シート状の正極を作製した。
上記作製した負極活物質(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=99:0.5:0.5の質量比となるようにイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを厚さ10μmの銅箔集電体に塗布し、乾燥した後プレスすることにより、シート状の負極を作製した。
また、セパレータとしてPP/PE/PPの三層構造を有する厚さ24μmの多孔性ポリオレフィンシートを2枚用意した。該セパレータの正極と対向する面には、アルミナ、ベーマイトを備える厚み4μmのHRL層を形成した。
上記作製したシート状の正極と負極とをセパレータを介して対向させて積層し、捲回させることにより捲回電極体を作製した。該捲回電極体に電極端子と接合した集電板を接合し、電池ケースに収容した。そして、該電池ケースの注液口から非水電解液を注液し、密閉した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。以上のようにして、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
上記作製した評価用リチウムイオン二次電池を25℃環境下に置いた。定電流―定電圧方式とし、各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で4.1Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cとなるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。なお、ここで「1C」とは、1時間でSOC(state of charge)を0%から100%まで充電できる電流の大きさのことをいう。
上記活性化処理を行った各評価用リチウムイオン二次電池を-10℃環境下に置いた。各評価用リチウムイオン二次電池をSOC0%とし、5Cの電流値で定電流充電を行い、SOC100%となるまでに要した時間を測定した。例1における該時間を1.00としたときの各例の当該時間の相対値を「-10℃受け入れ性」として表2に示した。なお、上記時間が長いほど-10℃環境下におけるLiの受け入れ容量が大きいことを示すため、-10℃受け入れ性の数値が高いほど、良好な電池性能を示す。
また、例3および例4が特に優れた―10℃受け入れ性を示したことから、ID/IGの値は0.6以上0.7以下であることがより好ましいことがわかる。
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
70 セパレータ
80 負極活物質粒子
82 炭素材料
84 炭素被覆層
100 リチウムイオン二次電池
Claims (4)
- リチウムイオン二次電池用の負極活物質であって、
リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な炭素材料と、
前記炭素材料の表面に形成された炭素被覆層と、
を備えており、
前記炭素被覆層は、炭素原子と、リン原子とを備えており、
ここで、前記炭素被覆層において、X線光電子分光法(XPS)によって測定されるP2pスペクトルのピークを波形分離したとき、結合エネルギーが131eVの位置にピークを有し、かつ、ラマンスペクトルにおける1580cm-1のピーク強度IGと、1360cm-1のピーク強度IDとの強度比(ID/IG)が0.4以上0.7以下である、
負極活物質。 - 前記炭素被覆層において、XPSによって測定されるC1sスペクトルのピーク面積と、O1sスペクトルのピーク面積と、前記P2pスペクトルのピーク面積との和を100%としたとき、前記131eVの位置のピーク面積の割合が0.4%以上0.7%以下である、請求項1に記載の負極活物質。
- 正極と、負極と、非水電解質とを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記負極は、負極活物質層を備えており、
前記負極活物質層は、請求項1または2に記載の負極活物質を備えている、
リチウムイオン二次電池。 - リチウムイオン二次電池用の負極活物質を製造する方法であって、
リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な炭素材料を準備する工程と、
前記炭素材料の表面に炭素原子とリン原子とを備えた炭素被覆層であって、X線光電子分光法(XPS)によって測定されるP2pスペクトルのピークを波形分離したとき、結合エネルギーが131eVの位置にピークを有する炭素被覆層をCVD法により形成する工程と、
前記炭素被覆層を備えた炭素材料を焼成し、該炭素被覆層のラマンスペクトルにおける1580cm-1のピーク強度IGと、1360cm-1のピーク強度IDとの強度比(ID/IG)が0.4以上0.7以下となるように調整する工程と、
を包含する、負極活物質製造方法。
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